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明細書 :破砕キット、破砕装置および破砕物の集積方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5691108号 (P5691108)
公開番号 特開2012-198148 (P2012-198148A)
登録日 平成27年2月13日(2015.2.13)
発行日 平成27年4月1日(2015.4.1)
公開日 平成24年10月18日(2012.10.18)
発明の名称または考案の名称 破砕キット、破砕装置および破砕物の集積方法
国際特許分類 G01N   1/28        (2006.01)
B02C  17/10        (2006.01)
B02C  17/14        (2006.01)
B02C  19/08        (2006.01)
FI G01N 1/28 T
B02C 17/10
B02C 17/14 Z
B02C 19/08
請求項の数または発明の数 2
全頁数 15
出願番号 特願2011-063299 (P2011-063299)
出願日 平成23年3月22日(2011.3.22)
審査請求日 平成26年2月14日(2014.2.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
発明者または考案者 【氏名】濱本 宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】長谷 潮
参考文献・文献 米国特許第05829696(US,A)
米国特許第05533683(US,A)
米国特許第02602596(US,A)
特開2005-246155(JP,A)
特開2007-218903(JP,A)
特開2000-333669(JP,A)
特開昭63-112974(JP,A)
特開2004-053301(JP,A)
実開平07-041382(JP,U)
調査した分野 G01N 1/28
B02C 17/10
B02C 17/14
B02C 19/08
特許請求の範囲 【請求項1】
破砕キットと遠心分離装置とを含む試料の破砕・集積装置であって、
前記破砕キットは、
一方の端部が開放された有底円筒状であり、かつ、遠心分離装置のホルダーに保持される破砕容器と、
この破砕容器の内部に挿入可能であるとともに、破砕容器の内部に投入された試料を破砕可能な破砕棒と、
を有し、
前記破砕容器は遠心分離装置のホルダーに保持され、かつ、破砕容器の内部に挿入されて試料を破砕した破砕棒は、機構的係合手段によってその先端部が破砕容器の底部と離間した状態で保持され、この状態において、破砕棒と破砕容器を含む前記破砕キットに対して遠心分離装置による遠心分離処理が行われることで、破砕棒に付着していた試料が振り落とされて破砕容器の内部に集積されることを特徴とする試料の破砕・集積装置。
【請求項2】
一方の端部が開放された有底円筒状であり、かつ、遠心分離装置のホルダーに保持される破砕容器と、この破砕容器の内部に挿入可能であるとともに、破砕容器の内部に投入された試料を破砕可能な破砕棒とを有し、前記破砕棒は、機構的係合手段によってその先端部が破砕容器の底部と離間した状態で保持可能とされている破砕キットによって試料を破砕して集積する方法であって、
以下の工程:
(1)破砕容器の内部に試料を投入する工程;
(2)破砕容器の内部に破砕棒を挿入し、破砕容器の底部の試料を破砕する工程;および
(3)機構的係合手段によって破砕棒の先端部が破砕容器の底部の試料と離間した状態で保持し、この破砕棒と破砕容器を含む前記破砕キットを遠心分離処理する工程を含むことを特徴とする方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を破砕するための破砕キット、破砕装置およびこの破砕装置を用いた破砕物の集積方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織、微生物、プラスチック材料、鉱物材料等の試料を破砕し、化学的に分析・分離するための方法、装置が知られている。一般的には、乳鉢に投入した試料を乳棒によってすり潰す方法等を例示することができる。例えば、具体的には、試料と破砕媒体とを収納した破砕容器に往復移動を加えることにより、試料に破砕媒体とを衝突させ、圧縮と回転による摩砕とによって試料を破砕する装置等が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の破砕装置では、破砕容器を保持する破砕ホルダが遠心分離装置にも着脱できるように設計され、被破砕物の遠心分離処理が可能とされている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の破砕装置を含め、破砕装置の場合の多くは、通常、破砕処理後の破砕媒体(乳棒)に試料が少なからず付着した状態となる。特に、試料の粘度が高い場合には、破砕媒体(乳棒)への試料の付着量が多く、試料の回収量の低下によって分析に支障をきたす場合がある。このため、予め破砕処理後の分析に必要な量の試料や試薬等を確保するために、投入する試料や試薬等を増量するなどの調整が必要があり、コストの増加を招いているという問題がある。また、破砕媒体(乳棒)に試料が付着した状態では、試料の成分などの定量的な分析を行うことは困難であるという問題がある。そこで、例えば、破砕媒体(乳棒)を液体洗浄すること等も考慮されるが、洗浄作業の手間が大きく、また、洗浄による試料の飛沫による試料回収量の低下や、試料同士のコンタミネーションなどの危険性があり、実際的な方法であるとは言い難い。
【0004】
一方で、特許文献2では、破砕媒体により試料を粉砕した後、緩衝液を注入した破砕容器に磁石を当てて強磁性体で形成された破砕媒体を吸着し、磁石により破砕媒体を蓋体の内側に保持した状態で遠心分離し、遠心分離後には、蓋体を開き破砕媒体を外部に取り出す方法が提案されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2004-188309号公報
【特許文献2】特開2004-53301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献2では、蓋体を開放することによるコンタミネーション等のリスク回避を主目的としている。引用文献2には、破砕媒体に付着した試料による試料回収量の減少について言及されてはいるが、その具体的な解決手段については明確に記載されていない。また、特許文献2の破砕装置では、破砕容器に磁石を当てて強磁性体で形成された破砕媒体を吸着する構造であるため、破砕装置のコストを抑制することが難しい。さらに、特許文献2の処理方法では、磁石により破砕媒体を蓋体の内側に保持した状態で遠心分離処理を行っているため、磁力による保持が遠心力に耐えられずに破砕媒体が蓋体から脱落する恐れがある。この場合、脱落した破砕媒体は、破砕容器の底部の試料に接触して試料が付着するのみならず、遠心力によって破砕媒体が破砕容器から飛び出したり、破砕容器が破損したりする等の危険性もあり、十分な安全性が確保されているとは言い難い。
【0007】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、破砕処理後の破砕媒体(乳棒)に付着した試料を破砕容器内へ容易に集積することができ、試料の定量的な分析が可能であるとともに、コストも安価で、安全性にも優れた破砕キット、破砕装置および破砕物の集積方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の試料の破砕・集積装置は、破砕キットと遠心分離装置とを含む試料の破砕・集積装置であって、前記破砕キットは、一方の端部が開放された有底円筒状であり、かつ、遠心分離装置のホルダーに保持される破砕容器と、この破砕容器の内部に挿入可能であるとともに、破砕容器の内部に投入された試料を破砕可能な破砕棒と、を有し、前記破砕容器は遠心分離装置のホルダーに保持され、かつ、破砕容器の内部に挿入されて試料を破砕した破砕棒は、機構的係合手段によってその先端部が破砕容器の底部と離間した状態で保持され、この状態において、破砕棒と破砕容器を含む前記破砕キットに対して遠心分離装置による遠心分離処理が行われることで、破砕棒に付着していた試料が振り落とされて破砕容器の内部に集積されることを特徴としている。また、本発明の試料を破砕して集積する方法は、一方の端部が開放された有底円筒状であり、かつ、遠心分離装置のホルダーに保持される破砕容器と、この破砕容器の内部に挿入可能であるとともに、破砕容器の内部に投入された試料を破砕可能な破砕棒とを有し、前記破砕棒は、機構的係合手段によってその先端部が破砕容器の底部と離間した状態で保持可能とされている破砕キットによって試料を破砕して集積する方法であって、以下の工程:(1)破砕容器の内部に試料を投入する工程;(2)破砕容器の内部に破砕棒を挿入し、破砕容器の底部の試料を破砕する工程;および(3)機構的係合手段によって破砕棒の先端部が破砕容器の底部の試料と離間した状態で保持し、この破砕棒と破砕容器を含む前記破砕キットを遠心分離処理する工程を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の破砕キットによれば、破砕処理後の破砕媒体(乳棒)に付着した試料を破砕容器内へ容易に集積することができる。また、本発明の破砕キットは、試料の定量的な分析が可能であるとともに、コストも安価で、安全性にも優れている。さらに、本発明の破砕・集積装置および破砕・集積方法によれば、前記効果が確実に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の破砕キットの第1の実施形態を例示した斜視図である。
【図2】第1の実施形態に示した本発明の破砕キットによる試料の破砕、集積の工程を例示した概略図である。
【図3】本発明の破砕キットの第2の実施形態を例示した斜視図である。
【図4】第2の実施形態の破砕キットの使用形態を例示した縦断面図である。
【図5】(A)は、図3、図4に例示した第2の実施形態において異なる形態を例示した縦断面図であり、(B)は、キャップに破砕棒を挿通した状態を例示した縦断面図である。
【図6】本発明の破砕キットの第3の実施形態を例示した斜視図である。
【図7】本発明の破砕キットの第4の実施形態を例示した斜視図である。
【図8】本発明の破砕キットの第5の実施形態を例示した斜視図である。
【図9】図8に例示した嵌合部材とその嵌合構造を示した斜視図である。
【図10】(A)は、本発明の破砕キットの第6の実施形態を例示した斜視図である。(B)は、破砕キットを遠心分離装置に装着した状態を例示した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の破砕キットは、試料を破砕する破砕キットであって、一方の端部が開放された有底円筒状の破砕容器と、この破砕容器の内部に挿入可能であるとともに、破砕容器の内部に投入された試料を破砕可能な破砕棒と、を有し、破砕容器の内部に挿入された破砕棒は、機構的係合手段によって、先端部が破砕容器の底部と離間した状態で、保持可能とされている。

【0018】
ここで、「機構的係合」とは、少なくとも、破砕棒に対して、破砕容器、破砕容器に取り付けられるキャップ、またはその他の部材との直接的な接触を伴う係合をいう。したがって、例えば、破砕容器の外部からの磁性的な力を利用するもの等は含まれない。

【0019】
本発明の破砕キットの第1、第2の実施形態では、破砕キットは、破砕容器の開放端部に着脱自在に装着されるキャップを備えている。このキャップは、破砕棒を挿通可能な開口部を有するとともに、破砕棒は、キャップの開口部の開口縁に当接支持されることで、先端部が破砕容器の底部と離間した状態で係止可能とされている。

【0020】
図1は、本発明の破砕キットの第1の実施形態を例示した斜視図である。

【0021】
破砕キット1は、破砕容器2、破砕棒3およびキャップ4を有している。

【0022】
破砕容器2は、一方の端部が開放された有底円筒状であり、破砕容器2の底部は、滑らかに湾曲した形状に設計されている。破砕容器2の内径、長さ、厚さ等は、投入される試料や破砕棒3の形状等に応じて適宜設計することができる。また、破砕容器2の材料は、安価で耐久性に優れた材料が好ましく、例えば、ガラスやプラスチック等を例示することができる。プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の成形が容易で可撓性を有する樹脂を例示することができる。破砕容器2の具体例としては、例えば、エッペンドルフサンプリングチューブ(1.5ml)を例示することができる。

【0023】
破砕容器2の内部には、所望の試料を投入することができる。試料は、例えば、植物や動物の生体組織、微生物、鉱物材料等を例示することができる。また、試料は、必要に応じて洗浄等の前処理を行ったものを適宜使用することができる。

【0024】
破砕棒3は、長尺な略円筒状であり、破砕容器2の内部に挿入可能である。破砕棒3は、破砕容器2の内部での上下動、左右方向への回動が自在であり、破砕容器2の内部に投入された試料を破砕可能とされている。具体的には、破砕棒3の全長長さは、破砕容器2の長さ方向全長Lより長く、破砕棒3の平断面の直径R1は、破砕容器2の内径R2よりも小さく設計されている。また、破砕棒3の先端部は、試料の破砕効率性を考慮して、丸く膨出した形状に設計されている。さらに、破砕棒3は、少なくとも、先端部から、破砕容器2の長さ方向の全長Lに相当する長さhの範囲内において、先端部から後端側に向かって次第に太く(平断面の直径R1が大きく)なっている。

【0025】
破砕棒3の材料は、試料に応じて公知の材料から適宜選択することができるが、安価で耐久性に優れた材料が好ましく、例えば、ガラスやプラスチック等を例示することができる。

【0026】
キャップ4は、中央に円形の開口部41を有する円盤状に設計されている。キャップ4の開口部41の開口径R3(開口部41の直径)は、破砕容器2の内径R2よりもやや小さく、破砕棒3の平断面の最大径(R1MAX)よりも小さく設計されている。キャップ4の裏面には、キャップ4の外縁の内側に、破砕容器2の開放端部の形状に対応する円形の溝42が設けられている。破砕容器2の上側からキャップ4を押し込むことで、キャップ4の溝42に破砕容器2の開放端部21が着脱自在に嵌着され、破砕容器2にキャップ4を装着一体化することができる。

【0027】
キャップ4の材料は、試料に応じて公知の材料から適宜選択することができるが、安価で耐久性に優れた材料が好ましく、例えば、プラスチックやゴム等を例示することができる。

【0028】
図2は、第1の実施形態に示した本発明の破砕キットによる試料の破砕、集積の工程を例示した概略図である。

【0029】
<1>破砕容器2の内部に試料Sを投入する(図2(A))。このとき、試料とともに緩衝液や試薬等を適宜注入することができる。
<2>破砕容器2の内部に破砕棒3を挿入し、破砕容器2の内部の試料Sを破砕する(図2(B))。破砕棒3は、破砕容器2の内部での上下動や、左右方向への回動によって、試料Sを破砕することができる。
<3>破砕容器2から破砕棒3を取り出し、破砕容器2の開放端部にキャップ4を装着する。(図2(C))。このとき、破砕棒3の先端部には、破砕した試料Sの一部が付着している。
<4>破砕容器2の開放端部21に装着されたキャップ4の開口部41に破砕棒3を挿入する(図2(D))。破砕棒3は、先端部から後端側へ次第に太く設計されている。このため、破砕棒3を挿入するに従って、開口部41の開口径R3と破砕棒3の平断面の直径R1が略等しくなった位置で、破砕棒3の外周面とキャップ4の開口部41の開口縁41a(図1に図示)とが当接、嵌合し、破砕棒3の先端部が破砕容器2の底部から離間した状態で保持される。したがって、破砕棒3の先端部は、破砕容器2の底部の試料Sとは、非接触状態となる。破砕棒3の保持に複雑な構造、操作が不要であり、簡便かつ安価に破砕棒3を所定の位置で安定に保持することができる。
<5>図2(D)に示したように、破砕棒3の先端部が破砕容器2の底部から離間した状態のまま、破砕容器2と破砕棒3を遠心分離装置(図示していない)にセットし、適宜の回転数で遠心する(図2(E))。遠心分離装置は、従来公知の装置を適宜使用することができる。キャップ4の開口部に破砕棒3が安定的に挿嵌されているため、遠心分離処理によって破砕棒3が脱離する恐れがなく、安全に操作を行うことができる。これによって、破砕棒3に付着していた試料Sは遠心力によって破砕棒3から振り落とされるため、投入された試料Sをロスすることなく破砕容器2の内に集積することができる(図2(F))。従って、試料Sの投入量を低減することができ、コストが抑制されるとともに、試料Sの定量的な分析が可能となる。

【0030】
図3は、本発明の破砕キットの第2の実施形態を例示した斜視図である。図4は、第2の実施形態の破砕キットの使用形態を例示した縦断面図である。第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、以下では説明を省略する。

【0031】
キャップ4は、蓋体と嵌着片とが一体に形成されている。蓋体43は、円盤部43aと、円盤部43aの外周の一部が外方へ延出した延出部43bとが一体に形成されている。延出部43bは、キャップ4の着脱等の操作性を向上させるために設けられている。円盤部43aは、破砕容器2の開放端部21(図4に図示)よりも一回り大きく設計されている。円盤部43aの中央には、円盤部43aを貫通する円形の開口部45が設けられている。

【0032】
円盤部43aの裏面からは、嵌着片44が下方に向かって延びている。嵌着片44は円筒状であり、嵌着片44の内側の空間は、円盤部43aの開口部45と連通している。嵌着片44の外径は、破砕容器2の内径R2と対応しており、破砕容器2の開放端部21にキャップ4の嵌着片44を挿入することで、嵌着片44の外周面と破砕容器2の開放端部21側の内周面が当接し、破砕容器2の開放端部21にキャップ4が着脱自在に嵌着される。

【0033】
破砕棒3は、長尺な略円柱状の棒部31と、この棒部の先端において膨大する破砕部32とを有している。破砕部32は、試料の破砕に適した形状に設計されている。棒部31は、後端部31a側から長さ方向の中央へ向かって次第に太さが肥大した膨出部33が形成されている。棒部31は、後方端部31a付近の平断面の径R5がキャップ4の蓋部43の開口部45の開口径R4よりも小さく、膨出部33の平断面の直径R6がキャップ4の蓋部43の開口部45の開口径R4よりも大きく設計されている。

【0034】
図4(A)に例示したように、キャップ4を外した状態で破砕棒3によって試料を破砕した後、破砕棒3を破砕容器2に挿入したまま、破砕棒3の後方端部31にキャップ4の蓋体43の開口部45を通す。そして、キャップ4の開口部45に破砕棒3の後方端部31a側が挿通した状態で、キャップ4の嵌着片44を破砕容器2の開放端部21の内側に挿入して、キャップ4を破砕容器2の開放端部21に嵌着する。この状態では、破砕棒3とキャップ4の蓋体43の開口部45の間には隙間が生じている。

【0035】
あるいは、予めキャップ4の開口部45に破砕棒3の後方端部31a側が挿通した状態で、キャップ4の嵌着片44を破砕容器2の開放端部21の内側に挿入して、キャップ4を破砕容器2の開放端部21に嵌着する。この状態で、破砕棒3をキャップ4の開口部45を通じて上下させて試料を破砕する。このようにすれば、試料の破砕中においてもキャップ4によって破砕した試料の飛散、コンタミネーションが防止され、より定量性の高い分析が可能となる。

【0036】
そして、図4(B)に例示したように、破砕棒3を後方(図4中の上矢印方向)へ引き上げる。破砕棒3を引き上げるに従って、破砕棒3の膨出部33の平断面の直径R6とキャップ4の蓋体43の開口部45の開口径R4とが一致した位置で、キャップ4の蓋体43の開口部45の開口縁45aに膨出部33が当接、嵌合し、破砕棒3は、その先端部が破砕容器2の底部から離間した状態で簡便かつ安定に保持される。破砕棒3の保持に複雑な構造、操作が不要であり、安価かつ簡便に破砕棒3を所定の位置で保持することができる。したがって、この状態で破砕容器2、破砕棒3を遠心分離装置にセットして遠心分離処理を行うことで、破砕棒3の先端に付着した試料を破砕容器2の内部に集積することができる。また、この形態の場合、破砕棒3を破砕容器2から取り出す必要がないため、作業がより効率化するとともに、破砕棒3に付着した試料が飛散等してロスする恐れがない。したがって、試料や緩衝液等の投入量を低減することができ、コストが抑制されるとともに、極めて精度の高い試料の定量的な分析が可能となる。

【0037】
図5(A)は、図3、図4に例示した第2の実施形態において異なる形態を例示した縦断面図であり、図5(B)は、キャップに破砕棒を挿通した状態を例示した縦断面図である。

【0038】
図5(A)に例示したように、キャップ4の開口部45の内周縁45aの全周に亘って、開口部45の中心に向かって延びる延在部46が配設されている。延在部46は、開口部45の中心に向かうほど厚さが薄くなるように設計されている。延在部46は、キャップ4と一体に形成することが好ましく、キャップ4と同じく可撓性を有する樹脂であることが好ましい。

【0039】
キャップ4の開口部45に破砕棒3を後方端部31a側から挿通すると、図5(B)に例示したように、延在部46は破砕棒3の外周面と接触し、その摩擦力によって上向きに引き上げられて、破砕棒3の外周面と延在部46とが密着した状態となる。このため、図3、図4に例示した形態と同様に、キャップ4の蓋体43の開口部45の開口縁45aに膨出部33が当接、嵌合した状態において、破砕棒3を、その先端部が破砕容器2の底部から離間した状態でより強固に保持することができる。

【0040】
本発明の第3の実施形態では、破砕容器2の内部には内側へ突出する嵌合部が設けられ、破砕棒3には、破砕容器2の嵌合部と嵌合可能な被嵌合部が設けられ、嵌合部と被嵌合部の嵌合によって、破砕棒3は、先端部が破砕容器2の底部と離間した状態で係止可能とされている。

【0041】
図6は、本発明の破砕キットの第3の実施形態を例示した斜視図である。第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、以下では説明を省略する。

【0042】
図6(A)に例示したように、破砕容器2には、破砕容器2の長さ方向の中央付近に、破砕容器2の内側に向かって突出した山状の凸部22(嵌合部)が周方向に亘って設けられている。破砕棒3には、先端側の外周面に内側に窪む略V字状の凹部34(被嵌合部)が周方向に亘って設けられている。破砕棒3の凹部34の位置は、先端部から凹部34までの長さNが、破砕容器2の底部から凸部22までの長さMよりも小さく設計されている。また、破砕容器2の凸部22の突出長さは、破砕容器2の内部に挿入された破砕棒3の外周面と当接する程度の長さに設計されている。

【0043】
そして、図6(B)に例示したように、破砕容器2の内部に投入された試料Sを破砕棒3で破砕した後、破砕棒3を後方(図6中の上矢印方向)へ引き上げる。これによって、破砕棒3に設けられている凹部34が破砕容器2の凸部22の位置までくると、破砕棒3の凹部34と破砕容器2の凸部22が相互に嵌合する構造となっている。また、このとき、破砕棒3の外周面とキャップ4の開口部41の開口縁41aとが当接している。キャップ4は、第1の実施形態と同様のものを使用することができる。破砕棒3の凹部34と破砕容器2の凸部22との嵌合およびキャップ4による保持によって、破砕棒3は、その先端部が破砕容器2の底部から離間した状態で簡便かつ安定に保持される。破砕棒3の保持に複雑な構造、操作が不要であり、安価かつ簡便に破砕棒3を所定の位置で保持することができる。したがって、この状態で破砕容器2、破砕棒3を遠心分離装置にセットして遠心分離処理を行うことで、破砕棒3の先端に付着した試料を破砕容器2の内部に集積することができる。従って、試料や緩衝液等の投入量を低減することができ、コストが抑制されるとともに、試料の定量的な分析が可能となる。

【0044】
なお、第3の実施形態においては、破砕棒3の凹部と破砕容器2の凸部とが嵌合する構造であるため、キャップ4の配設を省略することもできる。

【0045】
図7は、本発明の破砕キットの第4の実施形態を例示した斜視図である。第1~3の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、以下では説明を省略する。

【0046】
図7(A)に例示したように、破砕容器2には、破砕容器2の長さ方向の中央位置よりもやや上側に、破砕容器2の内側に向かって突出した山状の第1の凸部23が周方向に亘って設けられている。第1の凸部23には破砕容器2の長さ方向に沿って、めねじ部24が設けられている。一方、破砕棒3には、先端側の外周面に外側に突出する第2の凸部35が周方向に亘って設けられている。第2の凸部35には破砕容器の長さ方向に沿って、おねじ部36が設けられている。

【0047】
破砕棒3の第2の凸部35の位置は、先端部から第2の凸部23までの長さNが、破砕容器2の底部から第1の凸部23までの長さMよりも小さく設計されている。また、破砕容器2の第1の凸部23および破砕棒3の第2の凸部35は、破砕容器2の内部で相互に当接可能な突出長さに設計されている。

【0048】
そして、図7(B)に例示したように、破砕容器2の内部に投入された試料Sを破砕棒3で破砕した後、破砕棒3を後方(図6中の上矢印方向)へ引き上げ、破砕棒3に設けられている第2の凸部35が破砕容器2の第1の凸部23の付近に位置させる。そして、破砕棒3を周方向に回転させることで、破砕容器2のめねじ部24と、破砕棒3のおねじ部36を螺合させることができる。また、このとき、破砕棒3の外周面とキャップ4の開口部45の開口縁とが当接している。キャップ4は、第1の実施形態と同様のものを使用することができる。破砕容器2のめねじ部24と破砕棒3のおねじ部36とを螺合およびキャップ4による保持によって、破砕棒3は、その先端部が破砕容器2の底部から離間した状態で簡便かつ安定に保持される。破砕棒3の保持に複雑な構造、操作が不要であり、安価かつ簡便に破砕棒3を所定の位置で保持することができる。したがって、この状態で破砕容器2、破砕棒3を遠心分離装置にセットして遠心分離処理を行っても、破砕容器2のめねじ部24と破砕棒3のおねじ部36との螺合が解除されることはなく、破砕棒3の先端に付着した試料を破砕容器2の内部に確実に集積することができる。従って、試料や緩衝液等の投入量を低減することができ、コストが抑制されるとともに、試料の定量的な分析が可能となる。

【0049】
なお、第4の実施形態においても、キャップ4の配設を省略することができる。

【0050】
本発明の第5の実施形態では、破砕棒3および破砕容器2とは別体の嵌合部材によって、破砕棒3の先端部が破砕容器2の底部と離間した状態で保持可能とされている。

【0051】
図8は、本発明の破砕キットの第5の実施形態を例示した斜視図である。第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、以下では説明を省略する。

【0052】
図8(A)に例示したように、破砕棒3の破砕容器2の内部に挿入される領域には、外周面から内側に窪んだ嵌合溝部37が周方向に亘って設けられている。嵌合溝部37の内方には破砕棒3の中心を通る円柱状の軸部38が形成されている。

【0053】
図8(B)に例示したように、破砕容器2の内部に投入された試料を破砕棒3で破砕した後、破砕棒3を後方(図5中の上矢印方向)へ引き上げ、破砕棒3の嵌合溝部37をキャップ4の外側に露出させる。そして、この嵌合溝部37に略コ字状の嵌合部材5を嵌め込む。

【0054】
図9は、図8に例示した嵌合部材とその嵌合構造を示した斜視図である。

【0055】
嵌合部材5は、対向する2つの腕部51と、この腕部51を連結する連結部52とを有する略コ字状に設計されている。腕部51および連結部52からは、内側に向かって突出する挿入片53が一体に設けられている。挿入片53の突出長さは、破砕棒3の嵌合溝部57の溝深さ(破砕棒3の外周面から軸部までの長さ)に対応している。また、挿入片53の厚さは、破砕棒3の嵌合溝部37の溝幅(軸部38の長さ)に対応している。さらに、対抗する腕部51の挿入片53同士の間隔Pは、破砕棒3の軸部38の平断面の直径R7(図8に図示)と対応している。

【0056】
したがって、キャップ4の外側に露出した破砕棒3の嵌合溝部37に嵌合部材5の腕部51の挿入片53を差込み、連結部52の挿入片53が破砕棒3の軸部38に当接するまで押し進めることで、軸部38の周囲の嵌合溝部37に嵌合部材5の腕部51および連結部52の挿入片53が嵌合する。このとき、図8(B)に例示したように、嵌合部材5の腕部51および連結部52は破砕棒3の外周面よりも一段突出した状態となる。したがって、破砕棒3は、腕部51および連結部52がストッパーとしてキャップ4の上面に当接するため、先端部が破砕容器2の底部から離間した状態で保持される。また、このとき、破砕棒3の外周面とキャップ4の開口部41の開口縁41とが当接している。キャップは、図1に例示したものと同様のものを使用することができる。破砕棒3の保持に複雑な構造、操作が不要であり、安価かつ簡便に破砕棒3を所定の位置で保持することができる。したがって、この状態で破砕容器2、破砕棒3を遠心分離装置にセットして遠心分離処理を行うことで、破砕棒3の先端に付着した試料を破砕容器2の内部に集積することができる。従って、試料の投入量や緩衝液等を低減することができ、コストが抑制されるとともに、試料の定量的な分析が可能となる。

【0057】
なお、第5の実施形態において、嵌合部材5を破砕容器2の内部に入り込まない形状、大きさに設計することでキャップ4の配設を省略することもできる。

【0058】
本発明の試料の破砕・集積装置は、上記の破砕キットと遠心分離装置とを有している。遠心分離装置は、従来公知の装置を適宜使用することができる。

【0059】
図10(A)は、本発明の破砕キットの第6の実施形態を例示した斜視図である。(B)は、破砕キットを遠心分離装置に装着した状態を例示した概要図である。

【0060】
破砕棒3は、後方端部39にフック状の引掛け部6が配設されている。引掛け部6は、破砕棒3と別体であっても一体成形されたものでもよく、破砕棒3と別体として配設する場合の材料としては、例えば、金属製のワイヤー等を例示することができる。

【0061】
この実施形態では、破砕容器2に投入された試料Sを破砕棒3の先端部で破砕し、遠心分離装置CのホルダーHに破砕容器2を挿入し保持する。遠心分離装置Cの中央のロータ7は円盤状であり、円周方向に複数の穴部71が配設されている。引掛け部6は、遠心分離装置Cの中央のロータ7の穴部71に挿通可能とされており、引掛け部6をロータ7の穴部71に挿通させると、破砕棒3の先端部が破砕容器2の底部と離間した状態となるように、引掛け部6の形状、長さ等が設計されている。したがって、本発明における「機構的係合」には、遠心分離装置Cのロータ7と、引掛け部6を介した係合も含まれる。破砕棒3の先端部が破砕容器2の底部と離間した状態で破砕容器2および破砕棒3を遠心分離処理することで、破砕棒3の先端に付着した試料Sを破砕容器2の内部に集積することができる。従って、試料の投入量や緩衝液等を低減することができ、コストが抑制されるとともに、試料の定量的な分析が可能となる。

【0062】
本発明の破砕キットは、上記の実施形態に限定されることはない。破砕容器、破砕棒、キャップの細部については様々な態様が可能である。
【実施例】
【0063】
<1>実施例1
図1に例示した形態の破砕キットを使用した。具体的には、破砕棒として、自作のミクロサンプル用マイクロ乳棒を使用し、破砕容器として1.5mlサンプリングチューブ(Treff社)を使用した。サンプリングチューブ内に、試料としてコウゾの葉を投入し、ATTO社1×EzApplyサンプリングバッファー(AE-1430:SDS PAGE用タンパク質サンプリングバッファー)中で破砕棒によって破砕した。そして、試料が付着した破砕棒を破砕容器から引き上げた後、破砕容器にキャップをし、キャップの開口部から破砕棒を挿入して、破砕棒を容器の底部の試料から離間した状態で保持した。この破砕棒と破砕容器を遠心分離装置にセットし遠心処理を行った。投入した試料量と、破砕した後にチューブに残った試料量、および、遠心処理後に回収できた試料量を表1に示す。遠心条件は、日立製CF16 RX II、ローター#49で、1,100 rpm (120 g) 1分間である。
【実施例】
【0064】
【表1】
JP0005691108B2_000002t.gif
【実施例】
【0065】
表1より明らかなように、遠心処理を行って、破砕棒に付着した試料を回収することによって、試料のほぼ定量的な回収が可能になる。従って、従来、遠心回収時にマイクロ乳棒とともに捨てていた、マイクロ乳棒に付着した試料(試料+バッファー)が回収でき、回収率はほぼ100%となった。また、遠心処理中に、破砕棒が破砕容器の底部から離間した状態が維持され、破砕棒が脱落等することなく、十分な安全性を確保することができた。
【実施例】
【0066】
<2>実施例2
図3、図4に例示した形態の破砕キットを使用した。具体的には、破砕棒として、市販のマイクロ乳棒(Treff社)を使用し、破砕容器として、1.5mlサンプリングチューブ(Treff社)を使用し、試料としてコウゾの葉を使用した。
【実施例】
【0067】
サンプリングチューブ内にコウゾの葉を投入し、1)粘度の低い0.1Mリン酸バファー中、及び2)粘度が高く泡立つATTO社1×EzApplyサンプリングバッファー(AE-1430:SDS PAGE用タンパク質サンプリングバッファー)中で、破砕した。破砕棒を破砕容器に挿入したまま、破砕棒の後方端部にキャップの蓋体の開口部を通し、キャップの開口部に破砕棒の後方端部側が挿通した状態で、キャップの嵌着片を破砕容器の開放端部の内側に挿入して、キャップを破砕容器の開放端部に嵌着した。続いて、破砕棒を後方へ引き上げて、キャップの蓋体の開口部の開口縁に膨出部を当接、嵌合させ、破砕棒を、その先端部が破砕容器の底部から離間した状態で保持し、この破砕棒と破砕容器を遠心分離装置にセットし遠心処理を行った。投入したチューブにあった試料と、破砕した後にチューブに残った試料、遠心処理後に回収できた試料の量を表2に示す。遠心条件は、日立製CF16 RX II、ローター#49で、1,100 rpm (120 g) 1分間である。
【実施例】
【0068】
【表2】
JP0005691108B2_000003t.gif
【実施例】
【0069】
表2より明らかなように、遠心回収によって、いずれの場合もサンプルの回収率がアップする。遠心処理を行って、破砕棒に付着した試料を回収することによって、試料のほぼ定量的な回収が可能になる。従来、遠心回収時にマイクロ乳棒とともに捨てていた、マイクロ乳棒に付着した試料(試料+バッファー)が回収できた。また、遠心処理中に、破砕棒が破砕容器の底部から離間した状態が維持され、破砕棒が脱落等することなく、十分な安全性を確保することができた。
【実施例】
【0070】
<3>比較例1
実施例1と全く同じ材料および装置、条件により破砕実験を行った。すなわち自作のミクロサンプル用マイクロ乳棒を用いて、コウゾの葉をTreff社の1.5mlサンプリングチューブ中で、ATTO社1×EzApplyサンプリングバッファー(AE-1430:SDS PAGE用タンパク質サンプリングバッファー)中で破砕した。破砕後、試料+バッファーの付着したマイクロ乳棒を棄却し、市販のキャップをチューブに被せて回収した。投入した試料と、破砕した後のサンプリングチューブに回収できた試料量を表3に示す。
【実施例】
【0071】
【表3】
JP0005691108B2_000004t.gif
【実施例】
【0072】
表3より明らかなように、マイクロ乳棒に試料が付着していたため、実施例1と比べて回収率がダウンしていることが判る。
【実施例】
【0073】
本発明は、以上の実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0074】
1 破砕キット
2 破砕容器
3 破砕棒
4 キャップ
5 嵌合部材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9