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明細書 :水不溶性シクロデキストリンポリマーおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6154163号 (P6154163)
公開番号 特開2014-177602 (P2014-177602A)
登録日 平成29年6月9日(2017.6.9)
発行日 平成29年6月28日(2017.6.28)
公開日 平成26年9月25日(2014.9.25)
発明の名称または考案の名称 水不溶性シクロデキストリンポリマーおよびその製造方法
国際特許分類 C08B  37/16        (2006.01)
FI C08B 37/16
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2013-054019 (P2013-054019)
出願日 平成25年3月15日(2013.3.15)
審査請求日 平成28年3月10日(2016.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
発明者または考案者 【氏名】甲野 裕之
個別代理人の代理人 【識別番号】100087398、【弁理士】、【氏名又は名称】水野 勝文
【識別番号】100067541、【弁理士】、【氏名又は名称】岸田 正行
【識別番号】100103506、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 弘晋
【識別番号】100128473、【弁理士】、【氏名又は名称】須澤 洋
【識別番号】100128783、【弁理士】、【氏名又は名称】井出 真
【識別番号】100160886、【弁理士】、【氏名又は名称】久松 洋輔
審査官 【審査官】福山 則明
参考文献・文献 特表2000-508010(JP,A)
特表2006-506397(JP,A)
特開平07-002906(JP,A)
特開平05-001103(JP,A)
特開平04-081403(JP,A)
特表平06-505039(JP,A)
特表2001-503802(JP,A)
特表2008-519626(JP,A)
中村 太一,甲野 裕之,新規β-シクロデキストリンポリマーの合成とその機能性評価,第47回高分子学会北海道支部研究発表会(2012年度)講演要旨集,2013年 1月29日,第49頁,P22
Journal of Applied Polymer Science,2005年,Vol. 97,pp. 433-442
調査した分野 C08B 37/16
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
シクロデキストリンとポリカルボン酸無水物とを、塩基性溶媒中で、反応温度を180℃以上、シクロデキストリンとポリカルボン酸無水物の比率をシクロデキストリン1モルに対しポリカルボン酸無水物をモル以上として反応させることを含む水不溶性シクロデキストリンポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記ポリカルボン酸無水物が1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸無水物である請求項1に記載の水不溶性シクロデキストリンポリマーの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は水に対して不溶である水不溶性シクロデキストリンポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
シクロデキストリンは、6~8個のグルコピラノースが環状結合した水溶性オリゴ糖である。シクロデキストリンは、分子内部に疎水性空間を有しており、当該疎水性空間内において有機化合物、無機化合物を包接することで、これら化合物を捕捉できる。
そして、このようなシクロデキストリンの性質を備え、且つ水に対して不溶である水不溶性シクロデキストリンポリマーが提案されている。
【0003】
従来、当該水不溶性シクロデキストリンポリマーは、エピクロロヒドリン等の架橋剤をシクロデキストリンに作用させることにより製造することが提案されている(例えば特許文献8~11参照)。
また、水不溶性シクロデキストリンポリマーの用途として、水溶液に含まれるダイオキシン類、界面活性剤等の環境汚染物質の除去技術(特許文献1、特許文献2)、ヨウ素抽出技術(特許文献3)、クロロゲン酸、カフェイン分離技術(特許文献4、特許文献5)、血液中細菌毒素除去技術(特許文献6)、微生物固定化担体構築技術(特許文献7)等が提案されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2007-111630号公報
【特許文献2】特開2008-246287号公報
【特許文献3】特開2008-093545号公報
【特許文献4】特開平07-322823号公報
【特許文献5】特開2004-000229号公報
【特許文献6】国際公開第2007/013122号
【特許文献7】特開2001-149975号公報
【特許文献8】特開昭58-171404号公報
【特許文献9】特開昭60-20924号公報
【特許文献10】特開2006-143953号公報
【特許文献11】特開2009-242556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水不溶性シクロデキストリンポリマーについて、例えば選択肢を拡げるためなどの観点から、新規な水不溶性シクロデキストリンポリマーがさらに開発されることについての要求が存在する。
本発明はこのような事情に基づきなされたものであり、新規な水不溶性シクロデキストリンポリマーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題に関して検討した結果、ポリカルボン酸無水物を架橋剤に使用し、架橋剤のシクロデキストリンに対するモル比および反応時間が所定の関係を満たして製造されることで水不溶性のシクロデキストリンポリマーを合成できること、および得られた水不溶性シクロデキストリンポリマーが水に溶存または分散等している有機化合物や無機化合物を捕捉できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明の要旨は以下のとおりである。
(i)シクロデキストリンとポリカルボン酸無水物とを、塩基性溶媒中で、反応温度を100℃以上、シクロデキストリンとポリカルボン酸無水物の比率をシクロデキストリン1モルに対しポリカルボン酸無水物を3モル以上として反応させることを含む水不溶性シクロデキストリンポリマーの製造方法。
【0008】
(ii) 前記ポリカルボン酸無水物が1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸無水物である(i)に記載の水不溶性シクロデキストリンポリマーの製造方法。
【0009】
(iii) シクロデキストリンとポリカルボン酸無水物の比率が、シクロデキストリン1モルに対しポリカルボン酸無水物3.5モル以上である(i)または(ii)に記載の水不溶性シクロデキストリンポリマーの製造方法。
【0010】
(iv) 反応温度が130℃以上である(i)から(iii)のいずれか1つに記載の水不溶性シクロデキストリンポリマーの製造方法。
【0011】
(v) (i)から(iv)のいずれか1つに記載の方法により製造される水不溶性シクロデキストリンポリマー。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新規な水不溶性シクロデキストリンポリマーおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るシクロデキストリンとポリカルボン酸無水物との反応の概要を示す図である。シクロデキストリンとしてβ-シクロデキストリンを、ポリカルボン酸無水物として1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸無水物を用いた場合を例示している。
【図2】実施例の水不溶性シクロデキストリンポリマーの、ビスフェノールA(BPA)に対する吸着性を示すグラフである。
【図3】実施例の水不溶性シクロデキストリンポリマーの、ビスフェノールA(BPA)に対する吸着性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の水不溶性シクロデキストリンポリマーについて詳細に説明する。なお、以下の説明において、シクロデキストリンポリマーについては、単にCDPとも称す。

【0015】
図1に例示するように、本実施形態の水不溶性CDPは、例えば、シクロデキストリンを、塩基性溶媒中でポリカルボン酸無水物と反応させることにより製造することができる。当該反応は架橋反応であり、シクロデキストリンを構成するグルコピラノースに含まれる水酸基等の官能基とカルボン酸無水物間でエステル化などの反応が進行することによりシクロデキストリン間で架橋が形成される。
なお、本明細書において水不溶性とは、10mgのCDPを10mLの水(25℃)に添加したときに残渣が確認できることをいう。残渣が存在するか否かは、例えば、濾紙(pore size 0.20 μm)を用いて濾過を行い、当該濾紙を乾燥した後に残渣が計量できるか否かによって判定することができる。

【0016】
本実施形態に係るシクロデキストリンは、α、βおよびγ-体のいずれでもよく、特に限定されない。また、本実施形態に係るシクロデキストリンは、α、βおよびγ-体のいずれか単独または2種以上の混合物であってもよい。また、メチル、エチル、ブチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル等のシクロデキストリンエーテル類、アセチル、サクシニル、リン酸、硫酸等のシクロデキストリンエステル類やアミノシクロデキストリンを用いることもできる。

【0017】
本実施形態に係るポリカルボン酸無水物としては、例えばピロメリト酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4,-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。このうち、生産性の観点から、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸無水物を用いることが好ましい。

【0018】
また、本実施形態に係る塩基性溶媒としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の3級アミン類などを挙げることができる。

【0019】
ここで、本実施形態に係る塩基性溶媒中におけるシクロデキストリンとポリカルボン酸無水物との反応においては、反応温度を100℃以上、シクロデキストリンとポリカルボン酸無水物の比率をシクロデキストリン1モルに対しポリカルボン酸無水物を3モル以上として反応を行なう。
当該反応温度および比率の関係を満足することにより、水不溶性であるシクロデキストリンポリマーを得ることができる。なお、反応時間や反応に用いる塩基性溶媒の量などは特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
得られる水不溶性CDPの収率の観点から、反応温度は130℃以上(より好ましくは150℃以上)が好ましい。また、水不溶性CDPの収率の観点から、シクロデキストリンとポリカルボン酸無水物の比率は、シクロデキストリン1モルに対しポリカルボン酸無水物を3.5モル以上(より好ましくは4モル以上、さらにより好ましくは5モル以上)であることが好ましい。
より好ましい態様としては、水不溶性CDPの収率の観点から、反応温度が130℃以上(より好ましくは150℃以上)であるとともに、シクロデキストリンとポリカルボン酸無水物の比率がシクロデキストリン1モルに対しポリカルボン酸無水物を3.5モル以上(より好ましくは4モル以上、さらにより好ましくは5モル以上)であることが好ましい。
なお、特に限定されないが、反応温度が260℃以下であり、シクロデキストリン1モルに対しポリカルボン酸無水物が7モル以下であることが好ましい。

【0020】
また、反応後の生成物の回収においては、生成物の精製処理を合わせて行なうことができるなどの理由から、例えば再結晶を行なうことが好ましい。再結晶を行なうときの溶媒は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。

【0021】
本実施形態の水不溶性CDPは、その構成成分であるシクロデキストリンの内部に様々な有機化合物や無機化合物を包摂できる作用を有している。よって、本実施形態の水不溶性CDPによれば、水に溶存または分散等している有機化合物や無機化合物を捕捉できる。
したがって、本実施形態の水不溶性CDPは、例えば、水からの有機化合物や無機化合物の除去または分離処理に用いることができる。
具体的には、本実施形態の水不溶性CDPは、ビスフェノールA(BPA)、ダイオキシン類、界面活性剤などの人体や環境への悪影響が懸念される物質の除去処理に用いることができる。
さらに、本実施形態の水不溶性CDPは、人体や環境への影響が少ないと考えられているポリカルボン酸無水物を用いて製造されているため、人体や使用される環境等への影響を抑えることができる。そのため、食品分野や医療分野における使用しやすさなども期待される。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明について実施例でもって更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0023】
(実施例および比較例のシクロデキストリンポリマーの製造)
β-シクロデキストリン(β-CD)と1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸無水物(BTCA)とを反応させ、実施例の水不溶性CDPおよび比較例のCDPを得た。
具体的には、β-CD 2.27 g(2.00 mmol) とBTCAをピリジン20 ml中で24時間反応させた。β-CDの添加量に対するBTCAの添加量(モル)、反応温度を表1に示す。
反応後、メタノールと酢酸エチルを用いて反応により合成されたCDPを再結晶させた。続いて、再結晶させたCDPをデシケーター中で減圧乾燥した。
得られたβ-CDの添加量に対するBTCAの添加量(モル)、反応温度と、得られたシクロデキストリンポリマーが水不溶性か否かの関係を表1に示す。
【実施例】
【0024】
なお、得られたCDPの水に対する溶解性に関しては、以下のようにして確認した。
まず、各CDP(10 mg)を蒸留水(10mL、25℃)に添加した後、濾紙(pore size 0.20 μm)を用いて濾過を行なった。当該濾紙を180℃で乾燥した後、MX-50 moisture analyzer (A&D Co. Ltd., Japan)を用いて残渣の計量を行い、水への溶解性を判定した。
【実施例】
【0025】
【表1】
JP0006154163B2_000002t.gif

【実施例】
【0026】
(有害物質除去能に関する試験)
水不溶性CDPの形成
β-CD 2.27 g(2.00 mmol) とBTCAをピリジン20 ml中で24時間反応させ、実施例1および2の水不溶性CDPを得た。実施例1において、β-CDとBTCAのモル比は1:3.5であり、また、反応温度は150℃とした。また、実施例2において、β-CDとBTCAのモル比は1:7であり、また、反応温度は150℃とした。
反応後、メタノールと酢酸エチルを用いて反応により合成された実施例1および2の水不溶性CDPを再結晶させた。続いて、再結晶させた水不溶性CDPをデシケーター中で減圧乾燥した。
有害物質除去能に関する試験
50mL遠沈管に0.5 mM BPA溶液 20 mLを加え,さらに20mgの実施例1、2の水不溶性CDPを入れ、室温下(25℃)で振盪した。所定時間後、波長275 nmにおける試料溶液の上清の吸光度を測定し,あらかじめ作成した検量線からBPA濃度を求め実施例1、2の水不溶性CDPのBPA吸着率を、以下の式(1)をもとに算出した。
【実施例】
【0027】

qt = V(C0 - Ct)/W (1)

式(1)中、qt (mmol/g) はある時間における吸着量、VはBPA溶液量、C0 はBPA初期濃度(mmol L-1)、Ctはある時間tにおけるBPA濃度 (mmol/g)、Wは添加したCDP質量 (g)である。
【実施例】
【0028】
結果を図2に示す。
図2から理解できるように、実施例1、2のCDPのBPAの吸着量は時間とともに増加し、20時間で平衡となった。
また、BPA溶液の濃度のみを変えて、同じ試験を行なった。その結果、図3に示すように、BPA濃度の上昇に従い吸着量は大きくなった。
当該試験結果とLangmuirの吸着等温式に基づき、実施例1、2のCDPの最大吸着量は、それぞれ0.250 mmol g-1、0.169 mmol g-1と推定され、極めて高い値を示すと考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2