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明細書 :制御装置および電力変換回路の制御装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5858533号 (P5858533)
公開番号 特開2013-215029 (P2013-215029A)
登録日 平成27年12月25日(2015.12.25)
発行日 平成28年2月10日(2016.2.10)
公開日 平成25年10月17日(2013.10.17)
発明の名称または考案の名称 制御装置および電力変換回路の制御装置
国際特許分類 H02M   3/155       (2006.01)
FI H02M 3/155 H
請求項の数または発明の数 10
全頁数 16
出願番号 特願2012-083410 (P2012-083410)
出願日 平成24年3月31日(2012.3.31)
審査請求日 平成27年3月30日(2015.3.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
発明者または考案者 【氏名】黒川 不二雄
【氏名】高橋 司
【氏名】番匠 宏太
【氏名】田中 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】100174643、【弁理士】、【氏名又は名称】豊永 健
【識別番号】100095485、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 千賀志
審査官 【審査官】三澤 哲也
参考文献・文献 国際公開第2011/122686(WO,A1)
国際公開第2011/093500(WO,A1)
特開2006-136169(JP,A)
特開2007-318914(JP,A)
国際公開第2013/039250(WO,A2)
前田雄輝,外6名,DC-DCコンバータのための高速比例ディジタル制御回路について,電子情報通信学会技術研究報告,日本,2011年 1月20日,Vol.110,No.393,p.73-77
小道義彦,外1名,新しいディジタルピーク電流制御を用いたDC-DCコンバータの動特性改善について,電子情報通信学会技術研究報告,日本,2012年 1月18日,Vol.111,No.111,No.400,p.1-5
梶原一宏,外6名,ピーク電流を用いたディジタル制御方式DC-DCコンバータについて,電子情報通信学会技術研究報告,日本,2012年 5月18日,Vol.112,No.60,p.19-22
調査した分野 H02M 3/155
特許請求の範囲 【請求項1】
スイッチ切り替え信号を繰り返し送出することにより制御対象の出力を制御する制御装置であって、
入力段に第1A/D変換器を有する第1制御部は、前記制御対象のサンプリング情報に基づき第1制御量である時間量を生成し、所定の基準時刻から前記第1制御量にかかる時間を経過したときに第2制御部または第2A/D変換器に動作開始信号を与え、
入力段に前記第2A/D変換器を有する前記第2制御部は、前記動作開始信号を入力したとき、または前記動作開始信号により動作開始した第2A/D変換器からディジタル信号を受け取ったときは、前記制御対象のサンプリング情報に基づき第2制御量である時間量を生成し、前記動作開始信号の入力時から前記第2制御量にかかる時間を経過したときに前記スイッチ切り替え信号を出力し、
前記第1制御量が、前記第2制御部が持つ前記第2サンプリング情報の検出遅れを補償し、
前記第2制御量が、前記第1制御部が持つ過去のサンプリングに由来する第1制御量の応答遅れを補償する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第1制御量またはさらに前記第2制御量がフィードバック制御量であることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
スイッチ切り替え信号を繰り返し送出することにより制御対象の出力を制御する制御装置であって、
入力段にA/D変換器を有する第1制御部は、前記制御対象のサンプリング情報に基づき第1制御量である時間量を生成し、基準時刻から前記第1制御量にかかる時間を経過したときに第2制御部に動作開始信号を与え、
入力段にアナログ積分回路を有する前記第2制御部は、前記動作開始信号を入力したときは、前記制御対象から取得したアナログ信号に基づき第2制御量である時間量を生成し、前記動作開始信号の入力時から前記第2制御量にかかる時間を経過したときに前記スイッチ切り替え信号を生成することで、
前記第1制御量が、前記第2制御部が持つ前記アナログ信号の検出遅れを補償し、
前記第2制御量が、前記第1制御部が持つ過去のサンプリングに由来する第1制御量の応答遅れを補償する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
前記第1制御量またはさらに前記第2制御量がフィードバック制御量であることを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
スイッチ切り替え信号を繰り返し送出することにより電力変換回路の出力を制御する制御装置であって、
入力段に第1A/D変換器を有する第1制御部は、前記電力変換回路のサンプリング情報に基づき第1制御量である時間量を生成し、基準時刻から前記第1制御量にかかる時間を経過したときに前記第2制御部または第2A/D変換器に動作開始信号を与え、
入力段に前記第2A/D変換器を有する第2制御部は、前記動作開始信号を入力したとき、または前記動作開始信号により動作開始した第2A/D変換器からディジタル信号を受け取ったときは、前記電力変換回路のサンプリング情報に基づき第2制御量である時間量を生成し、前記動作開始信号の入力時から前記第2制御量にかかる時間を経過したときに前記スイッチ切り替え信号を生成することで、
前記第1制御量が、前記第2制御部が持つ前記第2サンプリング情報の検出遅れを補償し、
前記第2制御量が、前記第1制御部が持つ過去のサンプリングに由来する第1制御量の応答遅れを補償する、
ことを特徴とする電力変換回路の制御装置。
【請求項6】
前記第1制御量がフィードバック制御量であることを特徴とする請求項5に記載の電力変換回路の制御装置。
【請求項7】
前記電力変換回路がインダクタへのエネルギーの蓄積および放出を繰り返し、
前記第1サンプリング情報が、少なくとも、出力電圧の過去のサンプリング値であり、前記第1制御部は、前記第1サンプリング情報から前記第1制御量をフィードバック制御量として生成し、
前記第2サンプリング情報が、前記インダクタを流れる電流の前記動作開始信号の入力時におけるサンプリング値であり、前記第2制御部は、前記サンプリング値と前記出力電圧の増・減に応じて減・増する参照値(EB-A(Eo-Er))との偏差を前記第2制御量として生成する、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の電力変換回路の制御装置。
【請求項8】
スイッチ切り替え信号を繰り返し送出することにより電力変換回路の出力を制御する制御装置であって、
入力段にA/D変換器を有する前記第1制御部は、前記電力変換回路のサンプリング情報に基づき第1制御量である時間量を生成し、所定の基準時刻から前記第1制御量にかかる時間を経過したときに前記第2制御部に動作開始信号を与え、
入力段にアナログ積分回路を有する前記第2制御部は、前記動作開始信号を入力したときは、前記電力変換回路から取得したアナログ信号に基づき第2制御量である時間量を生成し、前記動作開始信号の入力時から前記第2制御量にかかる時間を経過したときに前記スイッチ切り替え信号を生成することで、
前記第1制御量が、前記第2制御部が持つ前記アナログ信号の検出遅れを補償し、
前記第2制御量が、前記第1制御部が持つ過去のサンプリングに由来する第1制御量の応答遅れを補償する、
ことを特徴とする電力変換回路の制御装置。
【請求項9】
前記第1制御量またはさらに前記第2制御量がフィードバック制御量であることを特徴とする請求項8に記載の電力変換回路の制御装置。
【請求項10】
前記電力変換回路がインダクタへのエネルギーの蓄積および放出を繰り返し、
前記サンプリング情報が、少なくとも、出力電圧のサンプリング値であり、前記第1制御部は、前記サンプリング情報から前記第1制御量をフィードバック制御量として生成し、
前記電力変換回路から取得したアナログ信号が、前記インダクタを流れる電流の前記動作開始信号の入力時における電流値であり、前記第2制御部は、前記電流値と前記出力電圧の増・減に応じて減・増する参照値(EB-A(Eo-Er))との偏差を前記第2制御量として生成する、
ことを特徴とする請求項8または9に記載の電力変換回路の制御装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、第1制御部と当該第1制御部からの信号(トリガ)により動作を開始する第2制御部とを備え、第1制御部が第2制御部の検出遅れを補償し、第2制御部が第1制御部の応答遅れを補償する制御装置および電力変換回路の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11に、従来のDC/DCコンバータ8および制御装置91を示す。
図11のDC/DCコンバータ8は降圧型である。図12に、出力電圧eoとインダクタ電流iLとスイッチSWの動作状態を示す。
制御装置91は、DC/DCコンバータ8の出力電圧eoおよびインダクタ電流iL(インダクタ電流検出用抵抗rLの電圧降下)を検出する。
出力電圧eoのディジタル検出値をEoとし、インダクタ電流iLのディジタル検出値ILをとする。
制御装置91は、これらの検出値の乗算値(Eo×IL)に基づきPID制御量を求める。具体的には、制御装置91は、スイッチSWのオフタイミングTonを決定し、ドライブ回路92を介してスイッチSWを制御する。
【0003】
図11のDC/DCコンバータ8において、出力電圧eoが高くなるかインダクタ電流iLが目標値iL*(出力電圧eoをインダクタ電流iLに換算した値)よりも大きくなる兆候を示したとする。この場合には、制御装置91はスイッチSWのオフタイミングを早めることで出力電圧eoの上昇を抑制する。
一方、図11のDC/DCコンバータ8において、出力電圧eoが低くなるかインダクタ電流iLが目標値iL*よりも小さくなる兆候を示したとする。この場合には、制御装置91はスイッチSWのオフタイミングを遅らすことで出力電圧eoの低下を抑制する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図11に示した制御装置91では、PID制御量のうち、D要素やI要素には、今回のスイッチング周期以前における、切り替えタイミングにかかる情報(出力電圧eoの過去の検出値)が必然的に含まれる。このため、D要素・I要素に基づく制御要素の応答に遅れが生じる。
【0005】
図11に示した制御装置91の制御部では、インダクタ電流iLをA/D変換回路(図11では「A/D」で示す)を用いて検出し、この検出値をインダクタ電流の目標値IL*とディジタル比較することができるが、A/D変換回路の動作には検出遅れが生じる。
もちろん、検出遅れが問題にならない高速のA/D変換回路を用いることで、検出遅れは緩和される。しかし、上記の要求に応えることができるA/D変換回路(A/D変換器)は極めて高価であるため、「検出遅れが問題にならない高速のA/D変換回路を用いること」は、現実的ではない。
【0006】
図11に示した制御装置91の制御部では、インダクタ電流iLと、インダクタ電流の目標値iL*(図示しない)をアナログ積分回路を使用して比較することもできるが、この場合にも検出遅れが生じる。
【0007】
本発明の目的は、第1制御部が第2制御部のA/D変換回路の検出遅れを補償し、第2制御部が第1制御部の積分要素や微分要素の応答遅れを補償する制御装置および電力変換回路の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)
スイッチ切り替え信号を繰り返し送出することにより制御対象の出力を制御する制御装置であって、
入力段に第1A/D変換器を有する第1制御部は、前記制御対象のサンプリング情報に基づき第1制御量である時間量を生成し、所定の基準時刻から前記第1制御量にかかる時間を経過したときに第2制御部または第2A/D変換器に動作開始信号を与え、
入力段に前記第2A/D変換器を有する前記第2制御部は、前記動作開始信号を入力したとき、または前記動作開始信号により動作開始した第2A/D変換器からディジタル信号を受け取ったときは、前記制御対象のサンプリング情報に基づき第2制御量である時間量を生成し、前記動作開始信号の入力時から前記第2制御量にかかる時間を経過したときに前記スイッチ切り替え信号を出力し、
前記第1制御量が、前記第2制御部が持つ前記第2サンプリング情報の検出遅れを補償し、
前記第2制御量が、前記第1制御部が持つ過去のサンプリングに由来する第1制御量の応答遅れを補償する、
ことを特徴とする制御装置。
【0009】
本発明では、第1制御部が第2制御部が動作開始するタイミングを決定する。
このタイミングは、第1制御部が第2制御部に動作開始信号を出力することで、実現される。
すなわち、第1制御部の役割は、第2制御部の動作開始の時点を変更している。
本発明では、第2制御部が持つ第2サンプリング情報の検出遅れを補償したい。実際には、第2制御部は、動作開始信号を受け取ってからある時間経過しないと値が出せない。
この「ある時間」の開始時刻を第1制御部が決定する。
すなわち、第1制御部は、第2A/D変換器のサンプリング開始時刻を変更する。
A/D変換結果(ILの値)が第2サンプリング情報の目標値に達しないとき、第1制御部521はA/D変換の開始タイミングを遅くする(動作開始信号の出力を遅らせる)ことで、第2制御量である時間量を長くすることができる。また、A/D変換結果(ILの値)が目標値を超えているときは、第1制御部521はA/D変換の開始タイミングを早める(動作開始信号の出力を早める)ことで、第2制御量である時間量を短くすることができる。
【0010】
(2)
前記第1制御量またはさらに前記第2制御量がフィードバック制御量であることを特徴とする(1)に記載の制御装置。
【0011】
(3)
スイッチ切り替え信号(スイッチは制御対象に含まれていてもよいし、制御装置に含まれていてもよい)を繰り返し送出することにより制御対象の出力を制御する制御装置であって、
入力段にA/D変換器を有する第1制御部は、前記制御対象のサンプリング情報(典型的には過去のサンプリング時におけるサンプリング情報:第1サンプリング情報)に基づき第1制御量である時間量を生成し、所定の(通常予め設定されている)基準時刻から前記第1制御量にかかる時間を経過したときに第2制御部に動作開始信号を与え、
入力段にアナログ積分回路を有する前記第2制御部は、前記動作開始信号を入力したときは、前記制御対象から取得したアナログ信号(典型的には前記動作開始信号の入力時以降に取得したアナログ信号)に基づき第2制御量である時間量を生成し、前記動作開始信号の入力時から前記第2制御量にかかる時間を経過したときに前記スイッチ切り替え信号を生成することで、
前記第1制御量が、前記第2制御部が持つ前記アナログ信号の検出遅れを補償し、
前記第2制御量が、前記第1制御部が持つ過去のサンプリングに由来する第1制御量の応答遅れを補償する、
ことを特徴とする制御装置。
【0012】
第1制御部は、第2制御部のアナログ積分回路の積分開始点を変更する。
すなわち、積分値が第2サンプリング情報により定められる目標値(この目標値は任意に設定できる)に達し、第1制御部は第2制御部のアナログ積分回路の積分開始タイミングを遅くする(動作開始信号の出力を遅らせる)ことで、第2制御量である時間量を長くすることができる。
また、A/D変換結果(ILの値)が目標値を超えているときは、第1制御部521はA/D変換の開始タイミングを早める(動作開始信号の出力を早める)ことで、第2制御量である時間量を短くすることができる。
【0013】
(4)
前記第1制御量またはさらに前記第2制御量がフィードバック制御量であることを特徴とする(3)に記載の制御装置。
【0014】
(5)
スイッチ切り替え信号を繰り返し送出することにより電力変換回路の出力を制御する制御装置であって、
入力段に第1A/D変換器を有する第1制御部は、前記電力変換回路のサンプリング情報に基づき第1制御量である時間量を生成し、基準時刻から前記第1制御量にかかる時間を経過したときに前記第2制御部または第2A/D変換器に動作開始信号を与え、
入力段に前記第2A/D変換器を有する第2制御部は、前記動作開始信号を入力したとき、または前記動作開始信号により動作開始した第2A/D変換器からディジタル信号を受け取ったときは、前記電力変換回路のサンプリング情報に基づき第2制御量である時間量を生成し、前記動作開始信号の入力時から前記第2制御量にかかる時間を経過したときに前記スイッチ切り替え信号を生成することで、
前記第1制御量が、前記第2制御部が持つ前記第2サンプリング情報の検出遅れを補償し、
前記第2制御量が、前記第1制御部が持つ過去のサンプリングに由来する第1制御量の応答遅れを補償する、
ことを特徴とする電力変換回路の制御装置。
【0015】
(6)
前記第1制御量またはさらに前記第2制御量がフィードバック制御量であることを特徴とする(5)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0016】
(7)
前記電力変換回路がインダクタへのエネルギーの蓄積および放出を繰り返し、
前記第1サンプリング情報が、少なくとも、出力電圧の過去のサンプリング値であり、前記第1制御部は、前記第1サンプリング情報から前記第1制御量をフィードバック制御量として生成し、
前記第2サンプリング情報が、前記インダクタを流れる電流の前記動作開始信号の入力時におけるサンプリング値であり、前記第2制御部は、前記サンプリング値と前記出力電圧の増・減に応じて減・増する参照値(EB-A(Eo-Er))との偏差を前記第2制御量として生成する、
ことを特徴とする(5)または(6)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0017】
(8)
スイッチ切り替え信号を繰り返し送出することにより電力変換回路の出力を制御する制御装置であって、
入力段にA/D変換器を有する前記第1制御部は、前記電力変換回路のサンプリング情報(典型的には過去のサンプリング時におけるサンプリング情報:第1サンプリング情報)に基づき第1制御量である時間量を生成し、所定の(予め設定されている)基準時刻から前記第1制御量にかかる時間を経過したときに前記第2制御部に動作開始信号を与え、
入力段にアナログ積分回路を有する前記第2制御部は、前記動作開始信号を入力したときは、前記電力変換回路から取得したアナログ信号(典型的には前記動作開始信号の入力時以降に取得したアナログ信号)に基づき第2制御量である時間量を生成し、前記動作開始信号の入力時から前記第2制御量にかかる時間を経過したときに前記スイッチ切り替え信号を生成することで、
前記第1制御量が、前記第2制御部が持つ前記アナログ信号の検出遅れを補償し、
前記第2制御量が、前記第1制御部が持つ過去のサンプリングに由来する第1制御量の応答遅れを補償する、
ことを特徴とする電力変換回路の制御装置。
【0018】
(9)
前記第1制御量またはさらに前記第2制御量がフィードバック制御量であることを特徴とする(8)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0019】
(10)
前記電力変換回路がインダクタへのエネルギーの蓄積および放出を繰り返し、
前記サンプリング情報が、少なくとも、出力電圧のサンプリング値であり、前記第1制御部は、前記サンプリング情報から前記第1制御量をフィードバック制御量として生成し、
前記電力変換回路から取得したアナログ信号が、前記インダクタを流れる電流の前記動作開始信号の入力時における電流値であり、前記第2制御部は、前記電流値と前記出力電圧の増・減に応じて減・増する参照値(EB-A(Eo-Er))との偏差を前記第2制御量として生成する、
ことを特徴とする(8)または(9)に記載の電力変換回路の制御装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1制御部が第2制御部の検出遅れを補償し、第2制御部が第1制御部の応答遅れを補償することができる。
すなわち、第1制御部と第2制御部とは、それぞれが持つ弱点(第1制御部では応答遅れ、第2制御部では検出遅れ)を相互に補完することができる。
これにより、高速のA/D変換回路を使用することなく、高速に応答できる制御装置を実現できる。
本発明は、電力制御回路の制御装置として使用できることはもちろん、アクチュエータ等のための制御装置として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の制御装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の電力変換回路の制御装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【図3】第1制御部および第2制御部を示す説明図である。
【図4】第2制御部を詳しく示す説明図である。
【図5】図2に示した制御装置が生成するスイッチ駆動信号を示す図である。
【図6】出力電圧eoと、インダクタ電流iLと、スイッチング周期同期信号SCSYNCと、スイッチSWの動作状態と、動作開始信号S1との関係を示す図である。
【図7】DC/DCコンバータ4の制御装置5′を示す回路図である。
【図8】(A)は第2実施形態の第2制御部を示す説明図であり、(B)アナログ積分回路の動作説明図である。
【図9】第2実施形態における、出力電圧eoと、インダクタ電流iLと、スイッチSWの動作状態と、動作開始信号S1との関係を示す図である。
【図10】第2制御部が、VCOとカウンタとからなる。第2実施形態の変更例を示す図である。
【図11】従来技術を説明するための電力変換回路および従来の制御装置の説明図である。
【図12】図11に示した従来の制御装置に入力される出力電圧およびインダクタ電流、および制御装置が生成するスイッチ駆動信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
《第1実施形態》
図1は本発明の実施形態の基本構成を示す図である。
制御対象1はアクチュエータ,電力変換回路等であり、この制御対象1は制御装置2により制御される。

【0023】
制御装置2は、第1制御部212と第2制御部222とを備えている。
第1制御部212の前段には第1A/D変換器211が接続されている。
第1制御部212は、制御対象1からサンプリング情報Aを第1A/D変換器211を介して受け取り、このサンプリング情報に基づき、第1制御量である時間量を生成する。そして、第1制御部212は、予め設定されている基準時刻から第1制御量にかかる時間が経過したときに第2制御部222に動作開始信号S1を与える。

【0024】
第2制御部222の前段には第2A/D変換器221が接続されている。
第2制御部222は、第1制御部212から動作開始信号S1を受け取ると、サンプリング情報Bを第2A/D変換器221を介して受け取る。
そして、このサンプリング情報に基づき、第2制御量である時間量を生成する。そして、動作開始信号S1の入力時から第2制御量にかかる時間を経過したときに第2時間量を決定する信号S2を出力する。
なお、第1制御部212は、予め設定されている基準時刻から第1制御量にかかる時間が経過したときに第2A/D変換器221に動作開始信号S1を与えるようにもできる。

【0025】
ドライバ3は、スイッチSWを駆動する。図1ではSWを1つだけ図示してあるがこれには限定されない。
たとえば、制御対象が三相のインバータ等を含む場合には、スイッチは複数(たとえば、3個または6個)である。

【0026】
上記の制御の結果、出力電圧eoが出力電圧目標値eo*の許容範囲を超えて大きくなる場合がある。この場合には、第1制御部212は、第1制御量を小さくするように動作する。すなわち、第1制御部212は、動作開始信号S1の出力タイミングを早めるように動作する。
また、上記の制御の結果、出力電圧eoが出力電圧目標値eo*の許容範囲を超えて小さくなる場合がある。この場合には、第1制御部212は、第1制御量を大きくするように動作する。すなわち、第1制御部212は、動作開始信号S1の出力タイミングを遅らせるように動作する。
これに相乗して、第1制御部212が出力する目標値信号SH(B*)に基づく信号Aの制御が行われる。
すなわち、第2A/D変換器221の制御遅れは動作開始信号S1により補償される。
また、第1制御部が持つ過去のサンプリングに由来する第1制御量の応答遅れは、第2制御量の値により補償される。

【0027】
図1では、第1制御量が、第2制御部222が持つ第2サンプリング情報の検出遅れを補償することができる。また、第2制御量が、第1制御部212が持つ過去のサンプリングに由来する第1制御量の応答遅れを補償することができる。
以下、図1の回路を詳細に説明する。

【0028】
図2はDC/DCコンバータ4の制御装置5を示す回路図である。DC/DCコンバータ4は図1の制御対象1に対応し、制御装置5は図1の制御対象1に対応する。
以下、降圧型のDC/DCコンバータを使用した実施形態を説明するが、図2の制御装置5は昇圧型や昇降圧型のDC/DCコンバータにも適用できる。
DC/DCコンバータ4では、入力端子a1,a2(a2はグランド端子)に、直流電源DC(電圧Ei)が接続されている。
入力端子a1はスイッチSWに接続され、スイッチSWは転流用のダイオードDFを介して接地されている。スイッチSWとダイオードDFとの接続点は、インダクタLに接続されている。インダクタLには直列にインダクタ電流検出用抵抗rLが接続されている。
さらに、インダクタ電流検出用抵抗rLの他方端子は、出力端子b1に接続されるとともに、キャパシタCを介して接地されている。
出力端子b1,b2(b2はグランド端子)には負荷LOADが接続されている。

【0029】
図2では、制御装置5は、出力電圧eoと、インダクタ電流iLの電圧変換値eiLとを入力している。
制御装置5は、第1制御部521と第2制御部522からなる。出力電圧eoはA/D変換器511を介して第1制御部521に入力され、インダクタ電流iLはA/D変換器512を介して第2制御部522に入力される。
制御装置5は、スイッチSWのオン・オフ制御信号Sをドライバ6(図1のドライバ3に相当する)に送出し、ドライバ6はこのオン・オフ制御信号Sに基づき、スイッチSWを駆動する。

【0030】
本実施形態では、第1制御部521は、図3に示すように、PID制御量演算部5211と、基本時間量生成部5212とからなり、基準タイミング信号SCLKを、制御量に応じた遅れ時間だけ遅延させることにより動作開始信号S1を発生する。
PID制御部2211は、PID制御を行っており、たとえば、次の(1)式により、PID制御量を計算している。
B-KP(Er-Eo,N)-KIΣ(Er-Eo,j
-KP(dEo,N/dt) ・・・(1)

【0031】
P,KI,KPは比例定数、Eo,NはN回目のサンプリングにおける出力電圧ディジタル値、Erは比較電圧(参照電圧)ディジタル値、EBはベース電圧である。また、Σ(Er-Eo,j)はN回目のサンプリングまでの出力電圧ディジタル値Eo,jと比較電圧Erとの偏差の累積値である。

【0032】
このPID制御量から、次式で表される基本時間量N1が決定される。
1=NEB-kP(NEr-No,N)-kIΣ(NEr-No,j
-kD(dNo,N/dt) ・・・(2)
P,kI,kDは上記したKP,KI,KDに相当する比例定数、No,NはN回目のサンプリングにおける出力電圧ディジタル値Eo,Nに相当する数値、NErは比較電圧Erに相当する数値、NEBはベース電圧に相当する数値である。

【0033】
これとともに、PID制御量演算部5211は、インダクタ電流の目標値IL*を生成する。本実施形態でも、第1制御部512は、第1制御量を小さくするように動作する。すなわち、第1制御部212は、動作開始信号S1の出力タイミングを早めるように動作する。
これに相乗して、第1制御部212が出力する目標値信号SH(B*)に基づく信号Aの制御が行われる。
すなわち、第2A/D変換器221の制御遅れは動作開始信号S1により補償される。
また、第1制御部が持つ過去のサンプリングに由来する第1制御量の応答遅れは、第2制御量の値により補償される。

【0034】
本実施形態では、第2制御部522は、図2に示すように第2制御量生成部5221とPWM信号生成部5224とを備えている。
第2制御量生成部5221は、具体的には図3に示すように第1制御部521からの動作開始信号S1により起動し、入力信号であるインダクタ電流iLと、予め設定されているインダクタ電流目標値iL*から、第2時間量N2を生成する。

【0035】
図4に示すように、ディジタル値比較回路は、インダクタ電流iLに対応するディジタル値(NIL)と、インダクタ電流iLの目標値(iL*:ディジタル値はNIL_SH)とを比較し、比較結果(ディジタル値NC)を出力する。遅延回路は、ディジタル値NCを、動作開始信号S1により決定される時間だけ遅らせて信号S00として生成する。信号S00はPWM信号生成部5224に入力され、PWM信号生成部5224は第2時間量を決定する信号S2を生成する。
なお、本実施形態では、動作開始信号S1は第2A/D変換器221により動作し、第2制御部522は第2A/D変換器221からの信号に基づき信号S00を生成した。ただし、図2,図3,図4に破線で示すように、第2制御部522が動作開始信号S1を受け取りそのタイミングで駆動するようにしてもよい。

【0036】
本実施形態では、図5(A)に示すように、第1制御部521は、今回の切り替えタイミングにかかるスイッチングサイクルTCNの開始前(前回のスイッチングサイクルTCN-1の終了前)に制御を開始するようにしてもよい。
また、図5(B)に示すように、スイッチングサイクルTCNの開始と同時または開始後(図5(B)では開始後)に制御を開始するようにしてもよい。

【0037】
図6に出力電圧eoと、インダクタ電流iLと、スイッチSWの動作状態と、動作開始信号S1との関係を示す。
図6では、スイッチングサイクルTCを生成する信号SCに同期するスイッチング周期同期信号SCSYNCにより第1制御部521は動作を開始し、第1制御量である時間量に対応する時間が経過したときに動作開始信号S1を発生する。
本実施形態では、第2制御部522は第1制御部521からの動作開始信号S1により起動し、第2制御部522はインダクタ電流iLから、第2時間量N2を生成する。第2制御部522は、スイッチ電流iSW,電流iFD,出力電圧eo,出力電流iOから検出信号を生成することもできる。

【0038】
なお、本実施形態では、リアクトル電流iLを変数とした(第1制御量演算部5211が生成した)が、リアクトル電流iLを定数とすることもできる。

【0039】
《第2実施形態》
図7はDC/DCコンバータ4の制御装置5を示す回路図である。
本実施形態では、第2制御部522は、図8(A)に示すように、第2制御量生成部(アナログ積分回路5225)とPWM信号生成部5224とを備えている。
アナログ積分回路5225は、第1制御部521からの動作開始信号S1により起動し、入力信号であるインダクタ電流iLに相当する電流の積分を開始する。

【0040】
アナログ積分回路5225は、図8(B)に示すように、連続的に信号S2を出力することができる。
アナログ積分回路5225は、動作開始信号S1により動作を開始する。図8(A)の回路では、アナログ積分回路5225の出力が閾値VTHに達するとPWM信号生成部5224が、第2時間量を決定する信号S2を生成する。この後、アナログ積分回路5225のリセット信号RSTによりリセットされる。
図8(A)では、キャパシタC1の端子電圧VCRが閾値VTHに達したときが、第2時間量N2に対応する時間である。
このときに、PWM信号生成部5224がS2を出力する。なお、本実施形態では、閾値VTHは定電圧である。

【0041】
図9に出力電圧eoと、インダクタ電流iLと、スイッチSWの動作状態と、動作開始信号S1との関係を示す。
図9でも、図6の場合と同様、スイッチングサイクルTCを生成する信号SCに同期するスイッチング周期同期信号SCSYNCにより第1制御部521は動作を開始し、第1制御量である時間量に対応する時間が経過したときに動作開始信号S1を発生する。
なお、本実施形態では、図7に破線で示したように、第1制御部521に、しきい値生成部5213を追加することができる。
しきい値生成部5213は、積分回路5223のしきい値を変更することで、

【0042】
本実施形態では、積分開始の時刻を制御する動作開始信号S1に相乗して、積分回路5223による制御が行われる。

【0043】
以上述べたように、本発明では、スイッチSWのTON期間の終了時点を、第1制御部212における離散値制御と、第2制御部222における連続値制御とを組み合わせることで、応答が速く、かつ精度が高い制御を行うことができる。

【0044】
本発明では、積分変換の入力範囲が広いときは、時定数が異なる複数の積分器を並列接続して積分器の可動範囲を変更することができる。この場合には、積分器への入力を切り替えるか、複数の積分器の出力から適宜のものを選択することができる。

【0045】
また、単一の積分器の積分範囲の中心を、インダクタ電流iLの設定値(NIL_SH)に位置するように設定することもできる。
この場合に、積分結果(ILの値)が積分器のレンジの有効範囲に達しないときは、第1制御部521は積分開始タイミングを早めることができる。また、A積分結果(ILの値)が積分器のレンジの有効範囲を超えているときは、第1制御部521は積分開始のタイミングを遅らせることができる。

【0046】
図10は、第2実施形態の変更例を示す図である。図10では、第2制御部522が、VCO5226とカウンタ5227とからなる。
VCO5226は、リアクトル電圧eILを取り込んでいる。VCO5226は、動作開始信号S1により駆動を開始する。
一方、カウンタ5227には、プリセット値Npstが、スイッチングサイクルとごとに入力される。
カウンタ5227は、カウントアップ信号(または、ボロー信号)をPWM信号S2として出力する。
本実施形態でも、積分開始の時刻を制御する動作開始信号S1に相乗して、VCO5226と、カウンタ5227とによる制御が行われる。
【符号の説明】
【0047】
1,5 制御対象
2,5′ 制御装置
3,6 ドライバ
4,8 DC/DCコンバータ
91 制御装置
92 ドライブ回路
211 第1A/D変換器
212,521 第1制御部
221 第2A/D変換器
222,522 第2制御部
511,512 A/D変換器
2211,5211 PID制御量演算部
5212 基本時間量生成部
5221 第2制御量生成部
5224 PWM信号生成部
5225 アナログ積分回路
5226 VCO
5227 カウンタ
C,C1 キャパシタ
DC 直流電源
F ダイオード
L ディジタル検出値
L インダクタ
LOAD 負荷
SW スイッチ
L インダクタ電流検出用抵抗
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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