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明細書 :電気化学反応器及びそれを使用した燃料ガスの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5376381号 (P5376381)
登録日 平成25年10月4日(2013.10.4)
発行日 平成25年12月25日(2013.12.25)
発明の名称または考案の名称 電気化学反応器及びそれを使用した燃料ガスの製造方法
国際特許分類 C25B   1/02        (2006.01)
C25B   9/00        (2006.01)
FI C25B 1/02
C25B 9/00 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 14
出願番号 特願2010-518027 (P2010-518027)
出願日 平成21年6月23日(2009.6.23)
国際出願番号 PCT/JP2009/061426
国際公開番号 WO2009/157454
国際公開日 平成21年12月30日(2009.12.30)
優先権出願番号 2008169449
優先日 平成20年6月27日(2008.6.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年5月25日(2011.5.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】平田 好洋
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査官 【審査官】瀧口 博史
参考文献・文献 特開平11-241195(JP,A)
特開2002-047591(JP,A)
特表2007-527468(JP,A)
調査した分野 C25B 1/00
C25B 9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
ルテニウム又はニッケルを含有し、二酸化炭素から一酸化炭素及び酸化物イオンを生成するカソード電極と、
前記カソード電極に向けて供給されたメタン及び前記カソード電極により生成された酸化物イオンを透過させる多孔質の電解質膜と、
ルテニウムを含有し、前記電解質膜を透過したメタン及び酸化物イオンから水素及び一酸化炭素を生成するアノード電極と、
を有することを特徴とする電気化学反応器。
【請求項2】
前記電解質膜は、セリウム-希土類元素系酸化物、ジルコニウム-イットリウム系酸化物、及びランタン-ガリウム系酸化物からなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学反応器。
【請求項3】
前記アノード電極は、金属ルテニウム、ルテニウム酸化物及びストロンチウムルテニウム酸化物からなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気化学反応器。
【請求項4】
前記カソード電極は、前記電解質膜を構成する材料及びニッケル又はルテニウムを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気化学反応器。
【請求項5】
前記電解質膜の厚さは、10μm乃至100μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気化学反応器。
【請求項6】
ルテニウムを含有するアノード電極と、ルテニウム又はニッケルを含有するカソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に設けられ、酸化物イオン導電性を示す金属酸化物を含有する多孔質の電解質膜と、を有する電気化学反応器を用いた燃料ガスの製造方法であって、
前記アノード電極と前記カソード電極との間に電圧を印加する工程と、
前記カソード電極に向けてメタン及び二酸化炭素を含むガスを供給する工程と、
を有することを特徴とする燃料ガスの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化還元反応を利用した燃料ガスの合成に好適な電気化学反応器及びそれを使用した燃料ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜排泄物及び下水処理場のメタン発酵で発生するバイオガスはメタン(CH)60%及び二酸化炭素(CO)40%を含んでいる。これらの反応により生成する水素及び一酸化炭素は種々の燃料として利用できる。また、二酸化炭素をバイオガスと再度混合することで、燃料のクローズドシステムの確立が可能となる。
【0003】
従来、電極での酸化還元反応を利用して、CH-CO系ガスからH-CO系燃料ガスを合成する方法として、Ni触媒を用いたメタンのCOドライリフォーミングがある。このドライリフォーミングは(1)式で表される。
CH+CO→2H+2CO・・・(1)
【0004】
しかしながら、ドライリフォーミングでは、(2)式に示すように、600℃未満の温度で一酸化炭素(CO)がCO及びCに不均化反応を起こす。このため、600℃以上の高温で処理を行う必要がある。
2CO→CO+C・・・(2)
【0005】
一方、高温下では、(3)式に示すように、CHの熱分解が進行し、析出する炭素がNi触媒を覆う。このため、触媒能が時間の経過とともに低下する。また、析出した炭素により、反応ガスの閉塞が生じる。
CH→2H+C・・・(3)
【0006】
このように、従来のドライリフォーミングでは、どのような温度で処理を行っても、高効率で燃料ガスを合成することができない。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】セラミックス、39巻、No.3、pp.199-204 (2004)
【非特許文献2】74th CATSJ MeetingAbstract,vol.36、No.1B06、pp.452-455(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高い効率で燃料ガスを合成することができる電気化学反応器及びそれを使用した燃料ガスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0010】
本発明に係る電気化学反応器は、ルテニウム又はニッケルを含有し、二酸化炭素から一酸化炭素及び酸化物イオンを生成するカソード電極と、前記カソード電極に向けて供給されたメタン及び前記カソード電極により生成された酸化物イオンを透過させる多孔質の電解質膜と、ルテニウムを含有し、前記電解質膜を透過したメタン及び酸化物イオンから水素及び一酸化炭素を生成するアノード電極と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る燃料ガスの製造方法は、ルテニウムを含有するアノード電極と、ルテニウム又はニッケルを含有するカソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に設けられ、酸化物イオン導電性を示す金属酸化物を含有する多孔質の電解質膜と、を有する電気化学反応器を用いた燃料ガスの製造方法であって、前記アノード電極と前記カソード電極との間に電圧を印加する工程と、前記カソード電極に向けてメタン及び二酸化炭素を含むガスを供給する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アノード電極及びカソード電極において酸化還元反応を生じさせることができる。従って、メタン及び二酸化炭素を含むガスから水素ガス及び一酸化炭素ガスを高温化で製造する場合であっても、炭素の析出を抑制することができ、高い効率で燃料ガスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る電気化学反応器の構成を示すフローチャートである。
【図2】図2は、GDC電解質粉体を作製する方法を示す図である。
【図3】図3は、SrRuO粉体を作製する方法を示す図である。
【図4】図4は、電気化学反応器を製造する方法を示す図である。
【図5】図5は、第1の実験の結果を示すグラフである。
【図6A】図6Aは、第2の実験の内容を示す図である。
【図6B】図6Bは、第2の実験の結果を示す図である。
【図7】図7は、第3の実験の結果を示すグラフである。
【図8】図8は、第4の実験の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、第5の実験の結果を示すグラフである。
【図10】図10は、第6の実験の結果を示すグラフである。
【図11】図11は、第7の実験の結果を示すグラフである。
【図12】図12は、第8の実験の結果を示すグラフである。
【図13】図13は、同じく、第8の実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電気化学反応器の構成を示すフローチャートである。

【0015】
本実施形態に係る電気化学反応器では、図1に示すように、アノード電極1とカソード電極2との間に電解質膜3が挟持されている。アノード電極1は、例えばSrRuOとCe0.8Gd0.21.9(以下、GDCともいう)との混合物から構成され、カソード電極2は、例えばNiとGDCとの混合物から構成されている。また、電解質膜3は、例えばGDCの多孔質体から構成されている。また、電解質膜3の厚さは、10μm~100μm程度、例えば50μmである。このようにして、電気化学反応器が構成されている。このような電気化学反応器は、例えば管4に入れられて使用される。

【0016】
ここで、本実施形態に係る電気化学反応器の動作について説明する。この電気化学反応器では、アノード電極1とカソード電極2との間に1V~5V程度の電圧が印加される。そして、カソード電極2に向けて、CH及びCO系の原料ガスが供給されると、カソード電極2において、(4)式に示すように、還元反応が生じる。
CO+2e→CO+O2-・・・(4)

【0017】
この還元反応で生じた酸化物イオン(O2-)は電解質膜3を透過し、アノード電極1まで到達する。アノード電極1にはCHガスも到達する。そして、酸化物イオン及びCHガスがアノード電極1に到達すると、アノード電極1において、(5)式に示すように、酸化反応が生じる。
CH+O2-→CO+2H+2e・・・(5)

【0018】
従って、この電気化学反応器における全反応の反応式は、(6)式で表わされる。
CH+CO→2H+2CO・・・(6)

【0019】
つまり、本実施形態によれば、CH-CO系ガスからH-CO系燃料ガスを合成することができる。また、(5)式に示されるように、輸送された酸化物イオン(O2-)とメタンとの反応が進行するため、従来のドライリフォーミングのようなCHの熱分解を抑制することができる。従って、高い効率でH-CO系燃料ガスを製造することができる。

【0020】
次に、上述のような電気化学反応器を製造する方法について説明する。

【0021】
先ず、アノード電極1及びカソード電極2に用いるGDC電解質粉体を作製する方法について説明する。図2は、GDC電解質粉体を作製する方法を示す図である。GDC電解質粉体の粉体では、先ず、0.2MのCe(NO水溶液及び0.2MのGd(NO水溶液を、Ce及びGdのモル比を4対1として混合する(Ce:Gd=4:1)。次いで、この混合液を0.4Mのシュウ酸水溶液に加え、共沈させる。その後、ろ過及び乾燥を行う。例えば、乾燥の温度は100℃とし、その時間は24時間とする。続いて、600℃での仮焼を2時間行う。次いで、直径が3mmのアルミナ球を用いたボールミルにより粉化を行い、GDC粉体を得る。

【0022】
次に、アノード電極1に用いるSrRuO粉体を作製する方法について説明する。図3は、SrRuO粉体を作製する方法を示す図である。先ず、0.2MのSr(NO水溶液及び0.2MのRuCl水溶液を、Sr2+及びRu3+のモル比を1対1として混合する(Sr2+:Ru3+=1:1)。次いで、この混合液を1.0Mのアンモニア水溶液に加え、共沈させる。その後、凍結乾燥を行う。続いて、1000℃での仮焼を2時間行い、SrRuO粉体を得る。

【0023】
次に、電気化学反応器を製造する方法について説明する。図4は、電気化学反応器を製造する方法を示す図である。先ず、アノード電極1及びカソード電極2を個別に作製する。

【0024】
アノード電極1の作製では、SrRuO粉体及びGDC電解質粉体を30対70の体積比で混ぜ合わせ、この混合物の懸濁液(サスペンジョン)を作製する。このサスペンジョンにおける固体量は、10体積%程度とする。次いで、凍結乾燥を行い、更に600℃での焼成を1時間行う。この結果、アノード電極1が作製される。

【0025】
カソード電極2の作製では、Ni(NO及びGDC電解質粉体をNi量に換算してNi:GDC=30:70の体積比で混ぜ合わせ、この混合物の懸濁液(サスペンジョン)を作製する。このサスペンジョンにおける固体量は、10体積%程度とする。次いで、凍結乾燥を行い、更に600℃での焼成を1時間行う。この結果、カソード電極2が作製される。

【0026】
そして、アノード電極1とカソード電極2との間に電解質膜3としてGDCフィルムを挟み込み、200MPaの一軸プレス成形を1分間行う。なお、GDCフィルムとしては、GDCを30体積%含有している非水系サスペンションのドクターブレード法で成膜されたものを用いることができる。前ブレードの高さを150μm、後ブレードの高さを80μmとしたドクターブレードにより、厚さが50μm程度のGDCフィルムを作製することができる。

【0027】
電解質膜3の挟み込み後には、1200℃での焼結を2時間行う。次いで、50ml/分の水素雰囲気下、800℃で24時間の還元処理を行うことにより、カソード電極2中のNiOをNiに還元する。これらの一連の処理により、電気化学反応器を製造することができる。

【0028】
なお、アノード電極の材料は、Ruが含まれていれば上記のものに限定されない。例えば、金属Ru又はRu酸化物とGDCとの混合物から構成されていてもよい。更に、金属Ru、Ru酸化物及びSrRuOの2種以上が含まれていてもよい。

【0029】
また、電解質膜の材料は、酸化物イオン導電性を示す金属酸化物を含有していれば上記のものに限定されない。このような金属酸化物としては、例えば、セリウム-希土類元素(イッテルビウム、イットリウム、ガドリニウム、サマリウム、ネオジム、ランタン等)系酸化物、ジルコニウム-イットリウム系酸化物、及びランタン-ガリウム系酸化物が挙げられる。

【0030】
次に、本発明者らが行った実験について説明する。

【0031】
(第1の実験)
第1の実験では、図1のカソード側からCH(25cm/分)及びCO(25cm/分)の混合ガスを流通させ、アノード側から流れ出たガスの流量の経時変化を測定した。なお、1.25V/cmの電場を印加し、反応温度は400℃-700℃とした。この結果を図5(b)に示す。

【0032】
また、比較のための実験も行った。この比較のための実験では、Ni(NO及びAl粉体を30vol%Ni-70vol%Alの割合で混合し、これを直径16mm、高さ10mmに成形した。成形体は800℃で1時間焼成した。更に、70vol%H-30vol%Arガス中、700℃で10時間加熱して、NiOをNiへ還元した。一部の実験では、Niを含まないAl成形体のみを作製した。これに50vol%CH-50vol%COの混合ガスを流し、ドライリフォーミングを行った。この結果を図5(a)に示す。

【0033】
図5(a)に示すように、Al焼結体のみに混合ガスを流すと、流量の変化は起きなかった。これは、CH及びCOの分解反応が進行しないためで、炭素析出が起こらず閉塞が生じない。一方、Ni/Al触媒を用いた場合(500℃-700℃)、温度によらず、30分後には出口ガスの流量が減少した。これはNi触媒によりCH及びCOの分解反応が進行し、炭素析出により触媒内でガスの閉塞が生じたためである。

【0034】
一方、1.25V/cmの電場を印加したNi/GDC-GDC-SrRuO/GDC反応器では、測定した時間(1.5時間-6時間)では流量の減少は見られず、ガスの閉塞は起こらなかった。これは電場を印加したことによる電気化学反応が進行し、炭素析出が抑制されたためである。

【0035】
(第2の実験)
第2の実験では、図6Aに示すように、カソード電極2の長さを4mmとし、その端部から0.5mm、1.5mm、2.5mm、3.5mm離間した4ヵ所(位置A~D)において、燃料ガスの合成後の炭素のEPMA分析(Electron Probe Micro-Analysis)を行った。この結果を図6Bに示す。

【0036】
なお、EPMA分析では、50vol%CH-50vol%COの分解反応を1.25V/cmの電場下、400℃-700℃で行い、通算11時間後のカソード表面を分析した。

【0037】
図6Bに示すように、4点(位置A~D)のいずれにおいても、炭素量は、リファレンスとして測定した炭素100%粉末に対して13%-18%であった。この結果は、カソード内部で均一に炭素析出が起きているものの、その量はガス閉塞を起こすほどではないことを示している。

【0038】
(第3の実験)
第3の実験では、電場1.25V/cmを印加したNi/GDC-GDC-SrRuO/GDC反応器を使用して、50vol%CH-50vol%COの分解反応を400℃-700℃で行い、出口ガスの割合を調べた。この結果を図7に示す。

【0039】
図7に示すように、温度の上昇にともない、導入したCH及びCOの分解が進行し、その結果、H及びCOの量が増加した。また、各温度でのガス割合は時間によらずほぼ一定であった。700℃で残存するCH及びCOはそれぞれ10%程度であった。更なる分解には700℃以上の温度が必要である。

【0040】
(第4の実験)
第4の実験では、Ni/GDC-GDC-SrRuO/GDC反応器を800℃、印加電場を1.25V/cm又は6.25V/cmとして、作動させた。そして、導入するCH及びCOの混合ガスの割合を30/70、40/60、50/50、60/40、又は70/30として、出口ガスの割合を測定した。この結果を図8に示す。

【0041】
図8に示すように、印加電場を1.25V/cmとした場合、CH及びCOの残量はほぼ0となった。いずれの割合で混合しても、H及びCOが生成した。入口のメタン量が増加すると、水素がより多く生成する。印加電場を6.25V/cmとした場合にも同様の傾向が見られた。但し、CHの割合が小さいとCOの残存が確認された。電場の大きさで反応のメカニズムが異なることが考えられる。これについては後に詳述する。

【0042】
(第5の実験)
第5の実験では、1.25V/cmの電場を印加したNi/GDC-GDC-SrRuO/GDC反応器と、第1の実験で作製したNi/Al触媒を使用して、50vol%CH-50vol%COの分解反応を400℃-700℃で行い、生成するH及びCOのモル比を測定した。この結果を図9に示す。

【0043】
理想的に反応(CH+CO→2CO+2H)が進行すると、H/CO比は1になる。Ni/Al触媒の場合、前述の(3)式も起こり、H/CO比は2以上となる。一方、1.25V/cmの電場を印加した電気化学反応器では、いずれの温度においても理想的な比の1に近くなった。このことは、ガス閉塞が起きないこととも良く一致する。

【0044】
(第6の実験)
第6の実験では、1.25V/cmの電場を印加した電気化学反応器を使用して、50vol%CH-50vol%COの分解反応を400℃-700℃で行い、出口ガスのO分圧を測定した。この結果を図10に示す。

【0045】
図10に示すように、測定した温度範囲で10-29Pa~10-12Paの酸素分圧であった。このことは、メタンの直接酸化(CH+1/2O→CO+H)は起きなかったことを示している。

【0046】
(第7の実験)
第7の実験では、1.25V/cm又は6.25V/cmの電場を印加した電気化学反応器による入口ガスのCH/CO比(A)、及び出口ガスのH/CO比(B)を測定した。反応温度は800℃とした。この結果を図11に示す。

【0047】
ここで、図11中のB、B、及びBについて説明する。

【0048】
上記の(6)式に示す反応と共に、(7)式に示す反応が電気化学的に同時に進行すると、生成するH及びCOの割合Bは、(3A-1)/(A+1)となる。
CH+CO→2H+2CO・・・(6)
CH+3CO→4CO+2H0・・・(7)

【0049】
(7)式におけるカソード反応及びアノード反応は、夫々(8)式、(9)式で表わされる。
3CO+6e→3CO+3O2-・・・(8)
CH+3O2-→CO+2HO+6e・・・(9)

【0050】
一方、(6)式に示す反応及び(3)式に示す反応が同時に進行すると、生成するH及びCOの割合Bは、Aとなる。
CH+CO→2H+2CO・・・(6)
CH→2H+C・・・(3)

【0051】
また、(6)式に示す反応と共に、(10)式に示す反応が電気化学的に同時に進行すると、生成するH及びCOの割合Bは、2/(3-A)となる。(10)式に示す反応はHとアセトアルデヒドとの生成を示す。
CH+CO→2H+2CO・・・(6)
3CH+CO→2H+2CHCHO・・・(10)

【0052】
CHCHOは電気化学的に(6)式に示す反応で生成するCOとCHとの化学反応で生成すると考えられる((11)式)。
CH+CO→CHCHO・・・(11)

【0053】
そして、(11)式に示す反応と(6)式に示す反応との総括反応が(10)式に示す反応である。

【0054】
これらの割合B、B、及びBの計算値を図11に示す。印加電場が6.25V/cmの場合には、H/CO比はBの計算値と一致した。一方、1.25V/cmの電場では、Aが1より小さいとH/CO比はBに近くなった。Aが1より大きいと、H/CO比はBの計算値と傾向が一致した。従って、Aの値で反応の機構が変わったと推察される。

【0055】
(第8の実験)
第8の実験では、シュウ酸塩共沈法でGDC(Ce0.8Gd0.21.9)電解質粉体を作製した。また、溶媒としての1.9mlのイソプロパノール及び0.97mlのトルエン、可塑剤としての0.63gのポリエチレングリコール、並びに結合剤としての0.35gのポリビニルブチラールを混合して混合溶液を作製した。次いで、この混合溶液に、7gのGDC電解質粉体を分散させ、24時間の撹拌を行った。その後、ドクターブレード法により厚さが50μm(±3μm)のGDC電解質膜を作製した。

【0056】
また、電極用に3種類の混合粉体(NiO及びGDCの混合粉体、RuO及びGDCの混合粉体、SrRuO及びGDCの混合粉体)を作製した。NiO及びGDCの混合粉体の作製では、GDC電解質粉体及び1.4MのNi(NO水溶液をNi:GDC=30:70(体積比)となるよう混合して6時間の撹拌を行った。その後、凍結乾燥を行い、空気中で600℃で1時間仮焼した。RuO及びGDCの混合粉体の作製では、GDC電解質粉体及びRuCl・2.7HO粉体をRu:GDC=30:70(体積比)となるよう混合して、これに蒸留水を加えて6時間の撹拌を行った。その後、凍結乾燥を行い、空気中で800℃で1時間仮焼した。SrRuO及びGDCの混合粉体の作製では、GDC電解質粉体及びSrRuO粉体をSrRuO:GDC=30:70(体積比)となるよう混合して、蒸留水を加えて6時間の撹拌を行った。その後、凍結乾燥を行い、空気中で600℃で1時間仮焼した。

【0057】
そして、上記のGDC電解質膜及び電極用の混合粉体を用いて、表1に示す3種類の電気化学セルを作製した。以下、その詳細について説明する。

【0058】
【表1】
JP0005376381B2_000002t.gif

【0059】
先ず、直径が10mmの成型器の中に、カソード電極用の粉体、GDC電解質膜及びアノード電極用の粉体を順に挿入し、100MPaで1分間の一軸加圧成形を行った。その後、298MPaで1分間の等方加圧成形を行った。なお、カソード電極用の粉体及びアノード電極用の粉体の量は、いずれも1.3gとした。

【0060】
等方加圧成形の後、空気中で2時間の共焼結を行った。電気化学セルNo.1の作製では、共焼結の温度を1000℃とし、電気化学セルNo.2及びNo.3の作製では、共焼結の温度を1200℃とした。このように共焼結の温度を相違させたのは、他の実験において、NiO及びGDCの混合粉体の共焼結を1200℃で行うと、RuO及びGDCの混合粉体の共焼結を1200℃で行った場合及びSrRuO及びGDCの混合粉体の共焼結を1200℃で行った場合と比較して収縮率が高くなって、ガスの流量が低くなることが判明していたからである。

【0061】
続いて、共焼結により得られた共焼結体の両面、即ち、電極用の粉体が焼結した部分に、Ptペーストを用いて、Pt線を溶接したPtメッシュ(集電体)を接着させた。次いで、このようなPt線が接続された共焼結体をアルミナ製のホルダーにセットし、これらの間の隙間をガラスリング及びガラス粉体を用いて閉塞した。電気化学セルNo.3はこのようにして完成させた。

【0062】
電気化学セルNo.1及びNo.2の作製では、更に、共焼結体に50ml/分の流量で、97体積%H及び3%HOの混合気体を供給し、700℃で24時間の還元処理を行うことにより、電極用の混合粉体中のNiO、RuOを、夫々Ni、Ruに変化させた。電気化学セルNo.1及びNo.2はこのようにして完成させた。

【0063】
電気化学セルNo.1~No.2の作製後、これらを用いてドライリフォーミングを行った。このドライリフォーミングでは、還元処理の温度である700℃からアルゴンガスを流しながら400℃まで降温した。そして、400℃から800℃までポテンショスタットで電気化学セルNo.1~No.2に1.00Vを印加した。そして、カソード側にCH及びCOを、夫々25ml/分の流量で流した。また、ドライフォーミングの温度は、電気化学セルNo.1では、400℃及び500℃とし、電気化学セルNo.2では、400℃から800℃とし、電気化学セルNo.3では、800℃とした。そして、出口ガスの流量の測定及びガスクロマトグラフによる分析を行い、また、各電気化学セルを流れる電流の電流密度を測定した。これらの結果を図12、図13に示す。図12は、ドライフォーミング(改質)の温度及び時間と、出口ガスの流量及び電流密度との関係を示す。図13は、800℃でのドライフォーミング(改質)の温度及び時間と、出口ガスのガスクロマトグラフによる分析の結果を示す。

【0064】
図12に示すように、アノード電極にRuが含まれていない電気化学セルNo.1では、ドライフォーミングの温度が上昇すると、500℃で出口ガス流量が急激に低下し、電流密度が急激に増加した。

【0065】
一方、アノード電極にRuが含まれている電気化学セルNo.2では、ドライフォーミングの温度の上昇につれて出口ガス流量が増加した。また、図13に示すように、電気化学セルNo.2では、ドライフォーミングの温度の上昇につれてCHガス及びCOガスの量が減少し、Hガス及びCOガスの量が増加した。これは、温度の上昇に伴いドライリフォーミングが促進されたことを示している。

【0066】
更に、図13に示すように、ガスの改質は800℃において、電気化学セルNo.2よりも電気化学セルNo.3で促進された。また、電気化学セルNo.2及びNo.3では、少なくとも10時間の改質まではガスの流量が低下しなかった。そして、生成されたHガス及びCOガスの量は互いに同程度であった。なお、電気化学セルNo.3では、13時間の改質で流量が低下し始め、カソード電極のPtメッシュ上に炭素が析出していた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、酸化還元反応を利用した燃料ガスの合成等に利用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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