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明細書 :オピオイド鎮痛剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5308352号 (P5308352)
登録日 平成25年7月5日(2013.7.5)
発行日 平成25年10月9日(2013.10.9)
発明の名称または考案の名称 オピオイド鎮痛剤
国際特許分類 C07D 471/14        (2006.01)
A61K  31/4375      (2006.01)
A61P  25/02        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
FI C07D 471/14 CSP
A61K 31/4375
A61P 25/02 101
A61P 29/00
請求項の数または発明の数 12
全頁数 25
出願番号 特願2009-543879 (P2009-543879)
出願日 平成20年11月28日(2008.11.28)
国際出願番号 PCT/JP2008/071689
国際公開番号 WO2009/069764
国際公開日 平成21年6月4日(2009.6.4)
優先権出願番号 2007310939
優先日 平成19年11月30日(2007.11.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年11月25日(2011.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
【識別番号】507330730
【氏名又は名称】学校法人 城西大学
発明者または考案者 【氏名】高山 廣光
【氏名】北島 満里子
【氏名】堀江 俊治
【氏名】松本 健次郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
審査官 【審査官】小川 由美
参考文献・文献 特開平09-291091(JP,A)
米国特許出願公開第2009/0221623(US,A1)
Organic Letters,2006年,8(25),5705-5708
European Journal of Pharmacology,2006年,549,63-70
天然有機化合物討論会講演要旨集,2003年,45,401-406
Tetrahedron,1982年,38(2),271-278
調査した分野 C07D 471/14
A61K 31/4375
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下式(I):
【化1】
JP0005308352B2_000016t.gif
[式中、R1は水素原子またはハロゲン原子;R2、R3、R4およびR5は、独立して、水素原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルカリル基、アルキルアミド基、アミノ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、フッ化アルキル基、フッ化アルコキシ基、ニトロ基、またはシアノ基;R6は、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基またはカルボキシ基である]
で表される化合物またはその塩。
【請求項2】
R3およびR4が水素原子である請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
R2およびR5がメトキシ基である請求項1または2に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
R6がメトキシカルボニル基である請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
R1が水素原子またはフッ素原子である請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
下式(II):
【化2】
JP0005308352B2_000017t.gif
[式中、R1は水素原子またはハロゲン原子;R2およびR3は、独立して、水素原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルカリル基、アルキルアミド基、アミノ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、フッ化アルキル基、フッ化アルコキシ基、ニトロ基、またはシアノ基;R4は、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基またはカルボキシ基である]
で表される化合物またはその塩。
【請求項7】
R2およびR3がメトキシ基である請求項6に記載の化合物またはその塩。
【請求項8】
R4がメトキシカルボニル基である請求項6または7に記載の化合物またはその塩。
【請求項9】
R1が水素原子またはフッ素原子である請求項6から8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を有効成分とし、それらの有効量を含有する医薬組成物。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を有効成分とし、それらの有効量を含有する鎮痛剤。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を有効成分としてそれらの有効量を含有し、モルヒネと比較して副作用が軽減されたオピオイド鎮痛剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鎮痛作用を有する化合物またはその塩に関する。より詳しくは、7-ハイドロキシミトラガイニン誘導体またはその塩に関する。さらに本発明は、前記化合物またはその塩を含有する医薬組成物に関する。また本発明は、前記化合物またはその塩を有効成分として含有する鎮痛剤に関する。さらに本発明は、鎮痛処置および鎮痛剤の製造における前記化合物またはその塩の使用に関する。また本発明は、前記化合物またはその塩を使用することを特徴とする鎮痛処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モルヒネはがん疼痛患者の生活の質(QOL)向上のために欠くことのできない鎮痛剤であるが、バイオアベイラビリティーが低いこと、また、様々な副作用、例えば、連用による鎮痛耐性や身体・精神依存性の形成、悪心嘔吐、便秘、眠気、および呼吸抑制などを示すことなどの問題点を有する。そのため、モルヒネに替わる理想的鎮痛剤の登場が古来熱望されてきた。より優れた鎮痛薬を求めて、モルヒネ分子の化学修飾に始まる合成鎮痛薬の研究が1920年代から開始され、多数の化合物の合成と薬理活性評価が今日も繰り返されている。しかしながら、モルヒネ骨格に替わる有効なオピオイド性鎮痛物質が開発された例は少ない。一方、モルヒネによる鎮痛作用発現に関する研究も近年大きな進展を見せ、オピオイド受容体の分類(δ、μ、κ-受容体)とそれぞれのアミノ酸配列の決定などを基盤に、鎮痛の分子機構解明のための努力が成されている。しかしながら、これら三種の受容体間に複雑な相互作用があり、未だに、鎮痛性と麻薬性などの副作用を分離するための論理的方法論は確立されていない。
【0003】
本発明者らは、モルヒネ代用薬としてタイやマレーシアで用いられてきたアカネ科植物ミトラガイナ スペキオサ(Mitragyna speciosa)に含有されるアルカロイドに強い鎮痛作用が認められることを見出し、そして該アルカロイドの活性本体と考えられる微量成分のインドールアルカロイド、7-ハイドロキシミトラガイニン(7-hydroxymitragynine;7-ヒドロキシミトラガイニンともいう)の分離と効率的不斉全合成を達成している(非特許文献1)。そして、本発明者らは、7-ハイドロキシミトラガイニンが、電気刺激によるモルモット小腸の収縮をオピオイド受容体を介して抑制する(非特許文献1)こと、また、マウスを用いたテールフリック試験やホットプレート試験において皮下投与または経口投与により著しい抗侵害作用を示すことを報告している(非特許文献2)。さらに、本発明者らは、7-ハイドロキシミトラガイニンの誘導体を合成し、その鎮痛作用を検討している(非特許文献3)。
【0004】

【非特許文献1】タカヤマ(Takayama H.)ら、「ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry)」、2002年、第45巻、第9号、p.1949-1956。
【非特許文献2】マツモト(Matsumoto K.)ら、「ライフ サイエンシズ(Life Sciences)」、2004年、第74巻、第17号、p.2143-2155。
【非特許文献3】タカヤマ(Takayama H.)ら、「オーガニック レターズ(Organic Letters)」、2006年、第8巻、第25号、p.5705-5708。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。すなわち、本発明の目的は、モルヒネに替わる強力な鎮痛作用を有する化合物、該化合物を有効成分として含有する医薬組成物や鎮痛剤、該化合物を使用することを特徴とする鎮痛処置方法、該化合物の鎮痛処置における使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行い、7-ハイドロキシミトラガイニンの誘導体が強力な鎮痛作用を示すことを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて達成したものである。
【0007】
即ち、本発明は以下に関する。
(1)下式(I):
【化1】
JP0005308352B2_000002t.gif
[式(I)中、R1は水素原子またはハロゲン原子;R2、R3、R4およびR5は、独立して、水素原子、ヒドロキシ基(ハイドロキシ基ともいう)、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルカリル基、アルキルアミド基、アミノ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、フッ化アルキル基、フッ化アルコキシ基、ニトロ基、またはシアノ基;R6は、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基またはカルボキシ基である]
で表される化合物またはその塩。
(2)R3およびR4が水素原子である上記(1)に記載の化合物またはその塩。
(3)R2およびR5がメトキシ基である上記(1)または(2)に記載の化合物またはその塩。
(4)R6がメトキシカルボニル基である上記(1)から(3)のいずれかに記載の化合物またはその塩。
(5)R1が水素原子またはフッ素原子である上記(1)から(4)のいずれかに記載の化合物またはその塩。
(6)下式(II):
【化2】
JP0005308352B2_000003t.gif
[式(II)中、R1は水素原子またはハロゲン原子;R2およびR3は、独立して、水素原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルカリル基、アルキルアミド基、アミノ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、フッ化アルキル基、フッ化アルコキシ基、ニトロ基、またはシアノ基;R4は、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基またはカルボキシ基である]
で表される化合物またはその塩。
(7)R2およびR3がメトキシ基である上記(6)に記載の化合物またはその塩。
(8)R4がメトキシカルボニル基である上記(6)または(7)に記載の化合物またはその塩。
(9)R1が水素原子またはフッ素原子である上記(6)から(8)のいずれかに記載の化合物またはその塩。
(10)上記いずれかの化合物またはその塩を有効成分とし、それらの有効量を含有する医薬組成物。
(11)上記いずれかの化合物またはその塩を有効成分とし、それらの有効量を含有する鎮痛剤。
(12)上記いずれかの化合物またはその塩を有効成分としてそれらの有効量を含有し、モルヒネと比較して副作用が軽減されたオピオイド鎮痛剤。
(13)上記いずれかの化合物またはその塩を使用することを特徴とする鎮痛処置方法。
(14)上記いずれかの化合物またはその塩の鎮痛処置における使用。
(15)上記いずれかの化合物またはその塩の鎮痛剤の製造における使用。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鎮痛作用を有する化合物、該化合物を有効成分として含有する医薬組成物および鎮痛剤、該化合物を使用することを特徴とする鎮痛処置方法、並びに鎮痛処置および鎮痛剤の製造における該化合物の使用を提供できる。
【0009】
本発明に係る化合物はモルヒネと比べてより強力な鎮痛作用を示す。そのため、本化合物はモルヒネに替わる鎮痛剤として、様々な鎮痛処置において有効に使用できる。さらに、本化合物は経口投与によっても充分な鎮痛作用を示す。また、本化合物は、鎮痛作用用量での消化管運動抑制作用が弱く、そのためモルヒネのように鎮痛作用用量での消化管運動抑制作用が非常に強いオピオイド化合物と比較して、消化管運動抑制により引き起こされる便秘という副作用が軽減されたオピオイド鎮痛剤として使用できる。このように、本化合物は経口投与が可能であり副作用が少ないという特徴を有するため、鎮痛処置を受ける患者への負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】マウス テールフリック試験における、化合物1、化合物2、7-ハイドロキシミトラガイニン、およびモルヒネの経口投与による鎮痛作用の用量作用曲線を示す図である。検体の鎮痛作用は最大許容効果率(%MPE)を用いて定量化した。%MPEは次式により算出した:%MPE=[(薬剤処理後潜時-薬剤処理前潜時)/(最大刺激時間-薬剤処理前潜時)]×100。最大刺激時間(cut-off time)は組織損傷を回避するため10秒とした。各値は、7~9匹のマウスから得たデータの平均値±標準誤差で表している。
【図2】マウス テールフリック試験における、化合物1、化合物2、7-ハイドロキシミトラガイニン、およびモルヒネの皮下投与による鎮痛作用の用量作用曲線を示す図である。検体の鎮痛作用は最大許容効果率(%MPE)を用いて定量化した。%MPEは次式により算出した:%MPE=[(薬剤処理後潜時-薬剤処理前潜時)/(最大刺激時間-薬剤処理前潜時)]×100。最大刺激時間(cut-off time)は組織損傷を回避するため10秒とした。各値は、7~9匹のマウスから得たデータの平均値±標準誤差で表している。
【図3】化合物1をマウスに皮下投与することにより惹起された鎮痛作用に対する、オピオイド受容体アンタゴニストの効果を示す図である。オピオイド受容体アンタゴニストであるβ-フナルトレキサミン(β-FNA、40mg/kg)、ナルトリンドール(NTI、3mg/kg)、およびノル-ビナルトルフィミン(norBNI、20mg/kg)をそれぞれ皮下投与し、それぞれ30分、24時間、および24時間後に、化合物1(0.5mg/kg)を投与し、マウス テールフリック試験を行い、鎮痛作用を測定した。測定は、化合物1を皮下投与して15分後に実施した。各値は、8~9匹のマウスから得たデータの平均値±標準誤差で表す。図中、#は、スチューデントt検定で、溶媒処理マウスと比較して有意差があったことを示す(##、P<0.01)。アステリスクは、一元配置の分散分析に続くボンフェローニの多重比較法で、化合物1のみで処理したマウスと比較して有意差があったことを示す(*、P<0.05;**、P<0.01)。【図6】マウス炭末輸送法における、化合物1、化合物2、7-ハイドロキシミトラガイニン、およびモルヒネの皮下投与による消化管運動抑制作用の用量作用曲線を示す図である。すべての検体は用量依存的に消化管運動を抑制した。この抑制は副作用の便秘を示す指標となる。消化管運動抑制率(Inhibition of gastrointestinal transit)は次式によって算出した:消化管運動抑制率(%)=[(対照群の炭末輸送率-検体の炭末輸送率)/(対照群の炭末輸送率)]× 100。各値は8~10匹のマウスから得られたデータの平均値±標準誤差で表している。
【図7】坐骨神経結紮により作成した神経障害性疼痛モデルマウスにおいて、化合物1の皮下投与により、熱刺激に対する痛覚潜時が延長されたことを示す図である。図中、「Ligation」は坐骨神経結紮手術を施したマウスを、「Sham」は偽手術を施したマウスを示す。縦軸は、後肢足底に熱刺激を与えたときに該後肢を引っ込めるまでの時間を示す。各値は、7~8匹のマウスから得たデータの平均値±標準誤差で表している。「★」および「★★」は、偽手術を施したマウスと比較してそれぞれP<0.05およびP<0.01で有意差があることを示す。【図10】坐骨神経結紮により作成した神経障害性疼痛モデルマウスにおける熱刺激に対する痛覚潜時への、モルヒネ、フェンタニル、7-ハイドロキシミトラガイニン、および化合物3の作用を示す図である(それぞれ左上パネル、右上パネル、左下パネル、および右下パネル)。化合物は皮下投与した。図中、「Ligation」は坐骨神経結紮手術を施したマウスを、「Sham」は偽手術を施したマウスを示す。縦軸は、後肢足底に熱刺激を与えたときに該後肢を引っ込めるまでの時間を示す。各値は、7~8匹のマウスから得たデータの平均値±標準誤差で表している。「★」および「★★」は、偽手術を施したマウスと比較してそれぞれP<0.05およびP<0.01で有意差があることを示す。【図11-B】坐骨神経結紮により作成した神経障害性疼痛モデルマウスおける、化合物1の皮下投与後の、機械的刺激に対する反応の50%閾値の経時変化を示す図である。図中、「Ligation」は坐骨神経結紮手術を施したマウスを、「Sham」は偽手術を施したマウスを示す。
【図12-A】坐骨神経結紮により作成した神経障害性疼痛モデルマウスにおいて、化合物2の皮下投与により機械的刺激に対する反応の50%閾値が増加したことを示す図である。図中、「Ligation」は坐骨神経結紮手術を施したマウスを、「Sham」は偽手術を施したマウスを示す。
【図12-B】坐骨神経結紮により作成した神経障害性疼痛モデルマウスにおける、化合物2の皮下投与後の、機械的刺激に対する反応の50%閾値の経時変化を示す図である。図中、「Ligation」は坐骨神経結紮手術を施したマウスを、「Sham」は偽手術を施したマウスを示す。

【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明によれば、下式(I):
【化3】
JP0005308352B2_000004t.gif
[式(I)中、R1は水素原子またはハロゲン原子;R2、R3、R4およびR5は、独立して、水素原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルカリル基、アルキルアミド基、アミノ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、フッ化アルキル基、フッ化アルコキシ基、ニトロ基、またはシアノ基;R6は、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基またはカルボキシ基である]
で表される化合物またはその塩が提供される。
【0012】
「ハロゲン」は、好ましくはフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素であり、より好ましくはフッ素である。
【0013】
「アルコキシ基」は、単一の末端エーテル結合を通じて結合したアルキル基を意味するする。好ましくは低級アルコキシ基である。低級アルコキシ基とは、炭素数が1~6個の分枝または非分枝のアルコキシ基を意味し、好適な例として、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、s-ペンチルオキシ基、t-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、i-ヘキシルオキシ基、s-ヘキシルオキシ基、t-ヘキシルオキシ基などを挙げることができる。より好ましくは、炭素数が1~4個の分枝または非分枝のアルコキシ基であり、メトキシ基をより好ましく例示できる。
【0014】
「アリールオキシ基」は、エーテル基に環式、多環式または縮合環式の芳香環を有する芳香族炭化水素基が置換して形成される基であって、好適な例としてフェノキシ基、ナフチルオキシ基を挙げることができる。
【0015】
「アルキル基」は、分枝または非分枝の飽和炭化水素基を意味する。好ましくは低級アルキル基である。低級アルキル基とは、炭素数が1~10個の分枝または非分枝の飽和炭化水素基を意味し、好適な例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、n-ヘキシル基、ネオヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ヘプチル基、およびオクチル基などを挙げることができる。好ましくは、炭素数が1~4個の飽和炭化水素基である。
【0016】
「アリール基」は、単環式、多環式または縮合環式の芳香環を有する芳香族炭化水素基を意味する。その炭素数は、好ましくは6~20個、より好ましくは6~12個である。好適な例として、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、およびフェナントリル基などを挙げることができる。
【0017】
「アラルキル基」は、アリール置換基を有するアルキル基を意味し、好適な例としてベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、ナフチルメチル基、およびナフチルエチル基などを挙げることができる。
【0018】
「アルカリル基」は、アルキル置換基を有するアリール基を意味し、好適な例としてトリル基、キシリル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、トリメチルフェニル基、トリエチルフェニル基、およびp-アルキルフェニル基などを挙げることができる。
【0019】
「アルキルアミド基」は、好ましくは低級アルキルアミド基である。低級アルキルアミド基とは、アミド基が上記低級アルキル基で置換されることにより形成される基を意味し、好適な例として、アセトアミド基、エチルアミド基、プロピルアミド基などを挙げることができる。
【0020】
「アルキルアミノ基」は、好ましくは低級アルキルアミノ基である。低級アルキルアミノ基とは、アミノ基が上記低級アルキル基で置換されることにより形成される基を意味し、好適な例として、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、i-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、t-ブチルアミノ基などを挙げることができる。
【0021】
「フッ化アルキル基」は、上記のアルキル基または低級アルキル基にフッ素原子が、好ましくは1~3個、より好ましくは1個置換したものを意味する。
【0022】
「フッ化アルコキシ基」は、上記のアルコキシ基または低級アルコキシ基にフッ素原子が、好ましくは1~3個、より好ましくは1個置換したものを意味する。
【0023】
「アルコキシカルボニル基」は、好ましくは、低級アルコキシカルボニル基である。低級アルコキシカルボニル基は、上記低級アルコキシ基とカルボニル基の結合したものであり、好適な例として、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルカルボニル基、およびブトキシカルボニル基などを挙げることができる。より好ましくはメトキシカルボニル基を例示できる。
【0024】
上記アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アリール基、アラルキル基およびアルカリル基の置換基としては、特に制限されないが、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、例えばフェニル基、ナフチル基などのアリール基、例えばオキシラニル基、ピリジル基、フリル基などの複素環基、例えばメトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などのアルコキシ基、例えばメトキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、スルホン酸基、シアノ基、ニトロ基、例えばトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などのシリル基、ヒドロキシ基、例えば無置換アミド基、メチルアミド基、プロピルアミド基、テトラデシルアミド基などのアミド基、例えばアセチル基、ベンゾイル基などのアシル基、例えばジヒドロキシホスホリル基、ジメトキシホスホリル基などのホスホリル基、例えばメチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基などのスルフィニル基、例えばメチルスルホニル基、フェニルスルホニル基などのスルホニル基、例えばメチルスルホナート基、フェニルスルホナート基などのスルホナート基などを挙げることができる。
【0025】
上記式(I)において、R1は好ましくは水素原子またはハロゲン原子、より好ましくは水素原子またはフッ素原子であり、R3およびR4は好ましくは水素原子であり、R2およびR5は好ましくはメトキシ基であり、R6は好ましくはメトキシカルボニル基である。
【0026】
本発明に係る化合物のより好ましい態様として、下式(II):
【化4】
JP0005308352B2_000005t.gif
[式(II)中、R1は水素原子またはハロゲン原子;R2およびR3は、独立して、水素原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルカリル基、アルキルアミド基、アミノ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、フッ化アルキル基、フッ化アルコキシ基、ニトロ基、またはシアノ基;R4は、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基またはカルボキシ基である]
で表される化合物またはその塩が提供される。
【0027】
上記式(II)において、R1は好ましくは水素原子またはハロゲン原子、より好ましくは水素原子またはフッ素原子であり、R2およびR3は好ましくはメトキシ基であり、R4は好ましくはメトキシカルボニル基である。
【0028】
本発明に係る化合物のさらに好ましい態様として、上記式(II)においてR1が水素原子またはフッ素であり、R2およびR3がメトキシ基であり、かつR4がメトキシカルボニル基である化合物またはその塩を挙げることができる。これら化合物は、それぞれ下記式(III)および(IV)で表される。
【0029】
【化5】
JP0005308352B2_000006t.gif

【0030】
【化6】
JP0005308352B2_000007t.gif

【0031】
本発明に係る化合物の塩としては、薬理学的に許容される塩が好ましく、例えば無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。用語「薬理学的に許容される塩」は、用語「製薬上許容される塩」と同義に用いられ、医薬品として使用され得る塩を意味する。具体的には、無機塩基との塩、有機塩基との塩、および塩基性アミノ酸との塩の好適な例として、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムなどの無機塩基との塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミンなどの有機塩基との塩;リジン、オルニチンなどの塩基性アミノ酸との塩およびアンモニウム塩を挙げることができる。無機酸との塩、有機酸との塩、および酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの鉱酸との塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などの有機酸との塩;アスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸との塩を挙げることができる。上記した塩の中でもナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩などが好ましい。
【0032】
さらに、本発明に係る化合物には、水和物、薬理学的に許容される各種溶媒和物や結晶多形なども含まれる。
【0033】
本発明に係る化合物は、下記式(V)で表される7-ハイドロキシミトラガイニンの誘導体であり、7-ハイドロキシミトラガイニンまたはその誘導体を原料として製造することができる。
【0034】
【化7】
JP0005308352B2_000008t.gif

【0035】
例えば、上記式(III)で表される化合物は、7-ハイドロキシミトラガイニンにテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加して反応させることにより製造できる(実施例1参照)。また、上記式(IV)で表される化合物は、10-フルオロ-7-ハイドロキシミトラガイニンをテトラヒドロホウ酸ナトリウムと反応させることにより製造できる(実施例1参照)。10-フルオロ-7-ハイドロキシミトラガイニンの代わりに、10位にフッ素とは異なる置換基を有する7-ハイドロキシミトラガイニンを用い、同様の反応を実施することにより、上記式(IV)で表される化合物において10位にフッ素とは異なる置換基を有する化合物を合成できる。7-ハイドロキシミトラガイニンは、天然からの分離あるいは化学合成により入手できる(ポングラックス(Ponglux D.)ら、「プランタ メディカ(Planta Medica)」、1994年、第60巻、第6号、p.580-581;イシカワ(Ishikawa H.)ら、「テトラへドロン レターズ(Tetrahedron Letters)」、2002年、第43巻、第32号、p.5637-5639;および非特許文献1)。10位に置換基を有する7-ハイドロキシミトラガイニン、例えば10-フルオロ-7-ハイドロキシミトラガイニンは、ミトラガイニンを原料として化学合成により入手できる(非特許文献3)。ミトラガイニンは、天然からの分離あるいは化学合成により入手できる(ポングラックス(Ponglux D.)ら、「プランタ メディカ(Planta Medica)」、1994年、第60巻、第6号、p.580-581;タカヤマ(Takayama H.)ら、「テトラへドロン レターズ(Tetrahedron Letters)」、1995年、第36巻、第51号、p.9337-9340)。
【0036】
本発明に係る化合物またはその塩は、医薬組成物の製造において使用できる。すなわち、本発明において、本化合物またはその塩を有効成分として、それらの有効量を含む医薬組成物を提供できる。本発明に係る医薬組成物は、上記化合物またはその塩のうち1種または2種以上を組み合わせて含むことができる。また、上記化合物またはその塩のほか、治療に必要な薬剤をさらに含むことができる。
【0037】
本発明に係る化合物は、強力な鎮痛作用を有する。具体的には、上記式(III)で表される化合物および上記式(IV)で表される化合物は、鎮痛効果の評価方法としてよく知られているマウス テールフリック試験において、経口投与および皮下投与のいずれによっても、用量依存的に強い鎮痛作用を示した。これら化合物の鎮痛作用は、モルヒネの効力と比べて経口投与においてそれぞれ約50倍および約240倍であった(実施例2参照)。これら化合物の鎮痛作用に対するオピオイド受容体アンタゴニストの効果を検討した結果から、これら化合物の強い鎮痛作用は、μおよびδ両オピオイド受容体へのアゴニスト作用が相加あるいは協力されたものであると考えることができる。具体的には、これら化合物の鎮痛作用はいずれも、非選択的オピオイドアンタゴニストであるナロキソンにより完全に抑制された。また、これら化合物の鎮痛作用はいずれも、μオピオイド受容体選択的アンタゴニストであるβ-フナルトレキサミンにより顕著に抑制され、δオピオイド受容体選択的アンタゴニストであるナルトリンドールにより中程度に抑制された。一方、選択的κオピオイド受容体選択的アンタゴニストであるノル-ビナルトルフィミンはこれら化合物の作用に何も影響しなかった。
【0038】
さらに、上記式(III)で表される化合物および上記式(IV)で表される化合物は、神経障害性疼痛モデルマウスにおいて、経口投与および皮下投与のいずれによっても強い鎮痛作用を示した。神経障害性疼痛は、神経の損傷に起因する痛みであり、痛覚過敏、アロディニア、自発痛などの症状を示す難治性の病態である。アロディニアとは、本来疼痛をもたらさない刺激でも全て疼痛として受容される感覚異常をいう。これら化合物はいずれも、神経障害性疼痛モデルマウスの痛覚過敏およびアロディニアを抑制し、強い鎮痛作用を示した。上記式(III)で表される化合物および上記式(IV)で表される化合物の皮下投与による本モデルマウスにおける鎮痛作用は、モルヒネの効力と比べてそれぞれ約50倍および約200倍であった(実施例4参照)。本結果から、これら化合物がいずれも、神経障害性疼痛の鎮痛に著しく有効であることが明らかになった。神経障害性疼痛には、モルヒネなどのオピオイド鎮痛剤や非ステロイド性鎮痛剤は効果を奏しないことが知られている。したがって、これら化合物は、神経障害性疼痛の治療において極めて有用であると考えることができる。
【0039】
したがって、本発明に係る化合物またはその塩は、鎮痛剤の製造において使用できる。すなわち、本発明において、本化合物またはその塩を有効成分として、それらの有効量を含む鎮痛剤を提供できる。本発明に係る鎮痛剤は、上記化合物またはその塩のうち1種または2種以上を組み合わせて含むことができる。また、上記化合物またはその塩のほか、鎮痛効果を有する他の薬剤をさらに含むことができる。
【0040】
本発明に係る化合物はモルヒネより強力な鎮痛作用を有するため、モルヒネに替わる鎮痛剤として、様々な鎮痛処置において有効に使用できる。さらに、本化合物は経口投与により充分な鎮痛作用を示す。そのため、鎮痛処置を受ける患者への負担を軽減できる。このように、本発明によれば、上記化合物またはその塩を使用することを特徴とする鎮痛処置方法を実施できる。上記化合物またはその塩を使用することは、例えば、上記化合物またはその塩を含む鎮痛剤を、鎮痛処置を必要とする対象、具体的には疼痛を有する対象に投与することにより達成できる。
【0041】
用語「鎮痛」は本明細書において使用される限り、疼痛の軽減または除去を意味する。
【0042】
用語「疼痛」は、組織の実質的あるいは潜在的な損傷に関連するか、またはそのような損傷に関して説明された不快な感覚と感情経験を意味する。疼痛には、癌性疼痛、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、術後疼痛、および原因不明の疼痛である特発性疼痛、例えば幻想肢痛が包含される。より具体的には、癌疾患、ヘルペスウイルス感染、ヒト免疫不全ウイルス感染、糖尿病、甲状腺機能低下症、尿毒症、カウザルギー、末梢神経の外傷、神経叢捻除、四肢切断、および血管炎による疼痛が例示できる。
【0043】
用語「処置」は本明細書において使用される限り、症状の重篤度および/または頻度の軽減を意味する。したがって、「鎮痛処置」とは、個体における疼痛の重篤度および/または頻度の軽減を意味する。
【0044】
用語「対象」は、用語「生体」または用語「患者」と置換可能に使用される。
【0045】
本発明に係る化合物はまた、副作用の点においてもモルヒネと比較して優れた特徴を有する。用語「副作用」は、薬剤を疾病の予防・診断・治療または生理学的機能の修正を目的として通常の使用量で使用したときに、該目的を達成する該薬剤の主作用とは別に、該薬剤によってその投与対象に引き起こされる何らかの有害な反応を意味する。モルヒネなどオピオイド鎮痛薬は連用するため様々な副作用が伴い、例えば強力な消化管運動抑制作用が現れ、そのため便秘という患者にとって大きな苦痛となる副作用が現れる。モルヒネをマウスに投与してその鎮痛作用と消化管運動抑制作用とを測定したところ、経口投与および皮下投与のいずれでも、鎮痛作用用量は消化管運動抑制作用用量の約5倍であった(実施例3参照)。このことはモルヒネの鎮痛作用は便秘を起こす用量の約5倍の用量を摂取しないと得られないことを示している。一方、上記式(III)で表される化合物および上記式(IV)で表される化合物では、経口投与による鎮痛作用用量が消化管運動抑制作用用量の約半分程度であった(実施例3参照)。このことはこれら化合物が鎮痛作用を引き起こす用量の約2倍の用量を摂取しないと便秘が現れないことを示している。また、これら化合物の皮下投与による鎮痛作用用量は消化管運動抑制作用用量と同程度であった(実施例3参照)。このように、本発明に係る化合物は、鎮痛作用用量での消化管運動抑制作用が弱く、そのためモルヒネのように鎮痛作用用量での消化管運動抑制作用が非常に強いオピオイド化合物と比較して、消化管運動抑制により引き起こされる便秘という副作用が軽減されたオピオイド鎮痛剤として使用できる。
【0046】
本発明に係る医薬組成物および鎮痛剤は、上記化合物またはその塩を有効成分として含むほか、必要に応じて、一般的に医薬品製造に用いられる医薬用担体を含み得る。医薬用担体としては、賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、結合剤、安定剤、コーティング剤などを例示できる。
【0047】
投与経路は、全身投与または局所投与のいずれも選択することができる。この場合、疾患、症状などに応じた適当な投与経路を選択する。本発明に係る鎮痛剤は、経口経路、非経口経路のいずれによっても投与できるが、モルヒネと比較してバイオアベイラビリティーが高く、経口投与によっても充分な鎮痛効果が得られること、また経口投与は患者の負担が少ないことから、好ましくは経口経路で投与される。非経口経路としては、通常の静脈内投与、動脈内投与の他、皮下、皮内、筋肉内などへの投与を挙げることができる。さらに、経粘膜投与または経皮投与を実施することができる。
【0048】
剤形は、特に限定されず、種々の剤形、例えば、経口投与のためには、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁液、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤とすることができる。非経口剤としては、例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤などの注射剤;経皮投与のための貼付剤、軟膏またはローション;口腔内投与のための舌下剤、口腔貼付剤;経鼻投与のためのエアゾール剤;並びに坐剤とすることができるが、これらに限定されない。また、持続性剤形または徐放性剤形であってもよい。これらの製剤は、製剤工程において通常用いられる公知の方法により製造することができる。
【0049】
経口用固形製剤を調製する場合は、上記化合物またはその塩に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤などを加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などを製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されるものでよく、例えば、賦形剤としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸などを、結合剤としては、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどを、崩壊剤としては乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖などを、滑沢剤としては精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどを、矯味剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸などを例示できる。
【0050】
経口用液体製剤を調製する場合は、上記化合物またはその塩に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤などを加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤などを製造することができる。この場合矯味剤としては上記に挙げられたものでよく、緩衝剤としてはクエン酸ナトリウムなどが、安定化剤としてはトラガント、アラビアゴム、ゼラチンなどを挙げることができる。
【0051】
注射剤を調製する場合は、上記化合物またはその塩にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤などを添加し、常法により皮下、筋肉内および静脈内用注射剤を製造することができる。この場合のpH調節剤および緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどを挙げることができる。安定化剤としてはピロ亜硫酸ナトリウム、 エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオグリコール酸、チオ乳酸などを挙げることができる。局所麻酔剤としては塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどを挙げることができる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが例示できる。
【0052】
坐剤を調製する場合は、上記化合物またはその塩に公知の製剤用担体、例えば、ポリエチレングリコール、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセライドなどを、さらに必要に応じてツイーン(登録商標)のような界面活性剤などを加えた後、常法により製造することができる。
【0053】
軟膏剤を調製する場合は、上記化合物またはその塩に通常使用される基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤などが必要に応じて配合され、常法により混合、製剤化される。基剤としては、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィンなどを挙げることができる。保存剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどを挙げることができる。クリーム、ゲル、ペーストなども同様に製剤化され得る。
【0054】
貼付剤を製造する場合は、通常の支持体に前記軟膏、クリーム、ゲル、ペーストなどを常法により塗布すればよい。支持体としては、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布や軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタンなどのフィルムあるいは発泡体シートが適当である。
【0055】
用量範囲は特に限定されず、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無など)、および担当医師の判断など応じて適宜選択される。一般的には適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり約0.01μg乃至100mg程度、好ましくは約0.1μg乃至1mg程度の範囲であることが好ましい。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量の変更を行うことができる。上記投与量は1日1回乃至数回に分けて投与することができる。あるいは、疼痛発生時に投与するといった投与形態をとることも可能である。
【0056】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0057】
化合物1および化合物2を合成した。以下に説明する。
【化8】
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【0058】
原料である7-ハイドロキシミトラガイニンおよび10-フルオロ-7-ハイドロキシミトラガイニンは既報に記載の方法に準じて化学合成により得た(イシカワ(Ishikawa H.)ら、「テトラへドロン レターズ(Tetrahedron Letters)」、2002年、第43巻、第32号、p.5637-5639 、非特許文献1、および非特許文献3)。
【0059】
化合物1は下記のように合成した。7-ハイドロキシミトラガイニン(37.5mg,0.091mmol)を乾燥メタノール(1.1mL)に加えて撹拌した溶液にテトラヒドロホウ酸ナトリウム(4.3mg,0.11mmol)を0℃にてアルゴン雰囲気下で添加した。30分後、蒸留水を反応混合物に添加した。反応混合物を減圧下で濃縮して飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、そして全混合物を5% メタノール/クロロホルムで3回抽出した。抽出物を合わせてブリンで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして蒸発させて得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(エチルアセテート/n-ヘキサン=35:65)により精製し、次いでエチルアセテートで結晶化して、26.3mgの化合物1を得た(収率70%)。
【0060】
生成物の分析データを以下に記す。化合物1;融点:219-223℃(ethyl acetate). UV(MeOH)λmax nm(log ε):288(3.13),277(3.06),239(4.16),232(4.14),214(4.50). IR(KBR)νmax cm-1:3341,2954,1698,1614,1467,1283. 1H-NMR(500 MHz,CDCl3)δppm:7.40(1H,s,H-17),7.00(1H,dd,J=8.1,8.1 Hz,H-11),6.35(1H,d,J=7.9 Hz,H-12),6.31(1H,d,J=8.2 Hz,H-10),3.87(1H,br.s,Na-H),3.83(3H,s,9-OCH3),3.80(3H,s,17-OCH3),3.70(3H,s,22-OCH3),3.47(1H,br.s,H-2),2.95(2H,m,H-15 and H-21),2.94(1H,s,7-OH),2.53(2H,m,H-5 and H-14),2.25(1H,ddd,J=12.3,12.3,2.3 Hz,H-5),2.16(2H,m,H-3 and H-21),2.03(1H,d,J=14.3 Hz,H-6),1.92(1H,ddd,J=13.6,13.6,4.3 Hz,H-6),1.79(1H,m,H-19),1.58(1H,br.d,J=11.3 Hz,H-20),1.39(1H,d,J=12.8 Hz,H-14),1.23(1H,m,H-19),0.85(3H,dd,J=7.3,7.3 Hz,H3-18). 13C-NMR(125 MHz,CDCl3)δppm:169.1(C-22),160.3(C-17),155.9(C-9),149.9(C-13),129.3(C-11),121.3(C-8),111.8(C-16),105.2(C-12),101.9(C-10),77.1(C-7),69.8(C-2),61.6(17-OCH3),61.6(C-3),58.5(C-21),55.1(9-OCH3),51.2(22-OCH3),50.7(C-5),40.7(C-20),40.2(C-15),35.2(C-6),28.5(C-14),19.1(C-19),13.1(C-18). EI-MS(%)m/z:416(M+,61),400(96),399(100),398(97),397(78),383(41),256(64),214(84). Anal. Calcd for C23H32O5N2:C,66.32;H,7.74;N,6.73. Found:C,66.08;H,7.77;N,6.71. CD(c=0.29 mM,MeOH,24℃),Δε(λnm):0(318),+1.4(293),0(257),-1.0(248),0(233),+0.2(231),0(227),-7.7(215),+0.1(208).
【0061】
化合物2は下記のように合成した。10-フルオロ-7-ハイドロキシミトラガイニン(23.7mg,0.055mmol)を乾燥メタノール(0.5mL)に加えて撹拌した溶液にテトラヒドロホウ酸ナトリウム(2.1mg,0.056mmol)を0℃にてアルゴン雰囲気下で添加し、反応混合物を30分間撹拌した。蒸留水を添加した後、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注いだ。全混合物を5% メタノール/クロロホルムで3回抽出した。抽出物を合わせてブリンで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして蒸発させて得られた残留物をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィ(エチルアセテート/n-ヘキサン=1:1)により精製し、22.6mgの化合物2を得た(収率95%)。
【0062】
生成物の分析データを以下に記す。化合物2;UV(MeOH)λmax nm(log ε):297(3.13),276(3.10),240(4.22),226(4.11),205(4.60). IR(KBr)νmax cm-1:3364,2947,1701,1626,1490,1284,1240. 1H-NMR(500 MHz,CDCl3)δppm:7.41(1H,s,H-17),6.76(1H,dd,J=12.8,8.2 Hz,H-11),6.28(1H,dd,J=8.5,3.1 Hz,H-12),4.01(3H,d,J=2.7 Hz,9-OCH3),3.79(3H,s,17-OCH3),3.69(3H,s,22-OCH3),3.46(1H,d,J=3.1 Hz,H-2),2.95(2H,m,H-15 and H-21),2.77(1H,br.s,7-OH),2.52(2H,m,H-5 and H-14),2.25(1H,m,H-5),2.15(2H,m,H-3 and H-21),1.95(2H,m,H-6),1.76(1H,m,H-19),1.58(1H,br.d,J=11.3 Hz,H-20),1.37(1H,d,J=12.8 Hz,H-14),1.23(1H,m,H-19),0.84(3H,dd,J=7.3,7.3 Hz,H3-18). 13C-NMR(125 MHz,CDCl3)δppm:169.0(C-22),160.3(C-17),148.4(d,J=237.4 Hz,C-10),145.1(C-13),143.2(d,J=11.9 Hz,C-9),126.8(C-8),116.4(d,J=21.5 Hz,C-11),111.7(C-16),105.8(d,J=6.9 Hz,C-12),77.4(C-7),70.0(C-2),61.6(17-OCH3),61.4(C-3),61.2(d,J=7.8 Hz,9-OCH3),58.4(C-21),51.2(22-OCH3),50.5(C-5),40.7(C-20),40.1(C-15),35.2(C-6),28.4(C-14),19.0(C-19),13.1(C-18). CD(c=0.26 mM,MeOH,24℃),Δε(λnm):0(337),+2.7(297),0(255),-4.2(236),-3.8(227),-8.4(214),+0.1(207). FAB-MS(NBA)m/z:435[M+H]+. HR-FAB-MS(NBA/PEG):calcd. for C23H32O5N2F:435.2295,found:435.2301.
【実施例2】
【0063】
実施例1で合成した化合物1および化合物2の鎮痛作用を検討した。以下に説明する。
【0064】
(実験材料と方法)
1.動物
体重25~33gの雄性ddY系マウス(日本エスエルシー株式会社)および体重320~550gの雄性ハートレイ系モルモット(日本エスエルシー株式会社)を使用した。
【0065】
2.化合物
モルモット回腸収縮試験用に、化合物1および化合物2をそれぞれ100% ジメチルスルホキシドに溶解して5mM溶液を得、次いで蒸留水で希釈した。マウス テールフリック試験用に、化合物1および化合物2をそれぞれ25mM リン酸バッファー(pH5.3~5.5)に溶解した。コントロールとして、モルヒネ、および7-ハイドロキシミトラガイニンを用いた。
【0066】
3.モルモット回腸収縮試験
モルモット回腸を摘出し、クレブス-ヘンセライト溶液(112.08mM NaCl;5.90mM KCl;1.97mM CaCl2;1.18mM MgCl2;1.22mM NaH2PO4;25.00mM NaHCO3;および11.49mM グルコース)中においた。栄養溶液を含む5ml器官槽内で、回腸に1gの張力を掛けた。器官槽は37℃に保ち、95% O2と5% CO2との混合物を継続的に通気した。組織はプラチナ製ニードルリング電極(リングは5mm長ニードルの基部の20mm上方に置いた)で刺激した。平衡化後、回腸を単相パルス(0.2Hzおよび継続時間0.1ms)で刺激装置(SEN-7203、日本光電工業株式会社)により経壁刺激した。収縮はディスプレースメント トランスデューサー(NEC 45347型、NEC三栄株式会社)を用いて等張性に記録した。リング電極を通じて引き起こされた経壁刺激により惹起された単収縮への薬剤処理効果を検討した。経壁刺激に対する単収縮反応の高さを、薬剤処理の前後に測定した。反応は、薬剤処理前の経壁刺激に対する単収縮反応の抑制率(%)として表した。
【0067】
4.テールフリック試験
テールフリック試験は、マウスやラットの尾に侵害性刺激、例えば熱刺激を与え、該刺激による逃避反射を指標として、化合物の鎮痛効果を評価する方法である。マウスは熱刺激に反応して刺激経路から尾を振ったり動かしたりするため、それにより尾直下のテールフリック式鎮痛効果測定装置(Ugo Basile Tail-flick Unit 7360、Ugo Basile社)に設置されたフォトセルに尾がさらされる。反応時間は自動記録される。薬剤、溶媒、または生理食塩水による処理に先立って、侵害受容閾値を3回測定し、各マウスについて反応時間の平均値を薬剤処理前潜時(pre-drug latency)として用いた。組織損傷を防ぐために、最大刺激時間(cut-off time)を10秒とした。鎮痛は最大許容効果率(%MPE)を用いて定量化した。%MPEは次式により算出した:%MPE=[(薬剤処理後潜時-薬剤処理前潜時)/(最大刺激時間-薬剤処理前潜時)]×100。
【0068】
5.統計解析
データは平均値±標準誤差で表した。統計解析は、2群の比較にはスチューデントの両側t検定を実施し、そして2群以上の比較には一元配置の分散分析に続いてボンフェローニの多重比較法を実施した。P値が<0.05の場合、総計的に有意であると判定した。ED値および95%信頼限界は、リッチフィールド-ウィルコクソン法を用いて決定した。
【0069】
(結果)
1.モルモット回腸収縮への効果
化合物1および化合物2は、モルモット回腸収縮試験においてモルヒネの効力と比較してそれぞれ約12倍および約45倍の収縮抑制作用を示した(表1)。これらの抑制作用は非選択的オピオイドアンタゴニストであるナロキソンにより完全に抑制された(データ未記載)。本結果から、化合物1および化合物2の鎮痛作用にオピオイド受容体が関与することが示された。また、これらの作用の最大抑制率をモルヒネと比較すると、ほぼ同程度であった(表1)。本結果から化合物1および化合物2の作用は完全活性薬(full agonist)であることが判明した。このことから、化合物1および化合物2がいずれも強い鎮痛作用を有すると推定した。
【0070】
【表1】
JP0005308352B2_000010t.gif

【0071】
表1は、モルモット摘出回腸における電気刺激により誘導される単収縮への、化合物のオピオイド作用を示す。効果は、各化合物の最大反応の50%を生じるのに必要な濃度(EC50)の負対数であるpD2値で表している。相対効果は、各化合物のpD2値のモルヒネのpD2値に対する割合として表している。最大抑制(%)は、化合物により引き起こされる反応が横ばい状態に達したときの抑制であり、単収縮を100%として算出した。相対最大活性は、オピオイド受容体に対する内在活性を意味し、モルヒネの最大抑制に対する各化合物による最大抑制の割合として表している。各値は、5~6匹の動物から得られたデータの平均値±標準誤差で表している。
【0072】
2.テールフリック試験における効果
化合物1および化合物2は、経口投与で、テールフリック試験において用量依存的に強い鎮痛作用を示した(図1)。化合物1、化合物2、7-ハイドロキシミトラガイニン、およびモルヒネの経口投与による鎮痛作用に必要なED50値を95%信頼限界と共に表2に示す。
【0073】
【表2】
JP0005308352B2_000011t.gif

【0074】
化合物1および化合物2は、経口投与で、モルヒネの効力と比較してそれぞれ約50倍および約240倍強い鎮痛作用を示した。
【0075】
また、化合物1および化合物2は、皮下投与でも同様に、モルヒネの効力と比較してそれぞれ約15倍および約70倍強い鎮痛作用を示した(図2)。化合物1、化合物2、7-ハイドロキシミトラガイニン、およびモルヒネの皮下投与による鎮痛作用に必要なED50値を95%信頼限界と共に表3に示す。
【0076】
【表3】
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【0077】
3.作用部位
化合物1および化合物2により惹起される鎮痛効果のオピオイド受容体タイプ選択性を、非選択的または選択的オピオイド受容体アンタゴニストを用いてマウス テールフリック試験で検討した。その結果、皮下投与した化合物1および化合物2の鎮痛作用はいずれも、非選択的オピオイドアンタゴニストであるナロキソンにより完全に抑制された(データ未記載)。本結果から、化合物1および化合物2の鎮痛作用にオピオイド受容体が関与することが示された。また、化合物1および化合物2の鎮痛作用はμオピオイド受容体選択的アンタゴニストであるβ-フナルトレキサミンにより顕著に拮抗されたが、δオピオイド受容体選択的アンタゴニストであるナルトリンドールによっては中程度に拮抗された(それぞれ図3および図4)。一方、選択的κオピオイド受容体選択的アンタゴニストであるノル-ビナルトルフィミンはこれらの作用に何も影響しなかった。これら結果から、化合物1および化合物2の強い鎮痛作用は、μおよびδ両オピオイド受容体へのアゴニスト作用が相加あるいは協力されたものであることが明らかになった。
【実施例3】
【0078】
実施例1で合成した化合物1および化合物2の副作用をモルヒネの副作用と比較検討した。モルヒネなどオピオイド鎮痛薬は連用するため、強力な消化管運動抑制作用(inhibitory effects on gastrointestinal transit;IGIT)が現れ、便秘という患者にとって大きな苦痛となる副作用が現れる。したがって、化合物1および化合物2ではこの副作用が軽減されていることが期待される。そこで、マウス炭末輸送法を用い、化合物1および化合物2を経口投与することにより観察される消化管抑制作用をモルヒネの作用と比較検討した。以下に説明する。
【0079】
(実験材料と方法)
1.化合物
化合物1および化合物2は実施例2に記載の方法と同様の方法で調製した。比較検体として、モルヒネ、および7-ハイドロキシミトラガイニンを用いた。
【0080】
2.マウス小腸炭末輸送能の測定
自由飲水下で18時間絶食したマウスに検体を皮下投与または経口投与した。塩酸モルヒネ経口投与の場合は30分後、他の検体は皮下投与または経口投与の15分後に5% アラビアゴム、10% 活性炭末の懸濁剤(チャーコール・ミール)をマウスに0.25mlずつ経口投与した。対照群のマウスには各検体の溶媒を皮下投与または経口投与し、それぞれの検体投与群と同じ一定時間後にチャーコール・ミールを経口投与した。チャーコール・ミール経口投与の30分後、頸椎脱臼し、ただちに開腹、全小腸(胃幽門部から回盲部まで)を摘出し、小腸全長および胃幽門部からチャーコール・ミールの先端の移動距離を測定した。小腸全長に対するチャーコール・ミールの移動距離の割合(炭末輸送率%)を求め、次式により消化管運動抑制率を算出した。消化管運動抑制率(%)=[(対照群の炭末輸送率-検体の炭末輸送率)/(対照群の炭末輸送率)]× 100。
【0081】
(結果)
図5に示されるように、化合物1および化合物2の経口投与はモルヒネより強力な消化管抑制作用を示した。このことは、化合物1および化合物2においてもモルヒネと同様に便秘の副作用が現れるだろうことを示唆している。しかし、この消化管運動抑制作用は鎮痛作用の用量との関連で比較し、評価しなければならない。
【0082】
化合物1、化合物2、7-ハイドロキシミトラガイニン、およびモルヒネの鎮痛作用と消化管運動抑制作用に必要な経口投与量のED50(mg/kg)値を95%信頼限界(括弧内に示す)とともに表4に示す。表4中、tail-flickはマウス テールフリック試験により測定した鎮痛作用を示し、IGITはマウス端末輸送法により測定した消化管運動抑制作用を示す。
【0083】
【表4】
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【0084】
表4に示されるように、モルヒネの鎮痛作用用量は消化管運動抑制作用用量の約5倍であり、このことはモルヒネの鎮痛作用は便秘を起こす用量の約5倍の用量を摂取しないと得られないことを示している。
【0085】
一方、化合物1および化合物2では、どちらも鎮痛作用用量が消化管運動抑制作用用量の約半分程度であり、このことは化合物1および化合物2が鎮痛作用を引き起こす用量の約2倍の用量を摂取しないと便秘が現れないことを示している。
【0086】
また同様に、マウス炭末輸送法を用い、化合物1および化合物2を皮下投与することにより観察される消化管抑制作用をモルヒネの作用と比較検討した。図6に示されるように化合物1および化合物2の皮下投与においても類似の結果が得られた。すなわち、化合物1および化合物2の経口投与はモルヒネより強力な消化管抑制作用を示した。
【0087】
化合物1、化合物2、7-ハイドロキシミトラガイニン、およびモルヒネの鎮痛作用と消化管運動抑制作用に必要な皮下投与量のED50(mg/kg)値を95%信頼限界(括弧内に示す)とともに表5に示す。表5中、tail-flickはマウス テールフリック試験により測定した鎮痛作用を示し、IGITはマウス端末輸送法により測定した消化管運動抑制作用を示す。
【0088】
【表5】
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【0089】
表5に示されるように、モルヒネの鎮痛作用用量は消化管運動抑制作用用量の約5倍であった。一方、化合物1および化合物2では、どちらも鎮痛作用用量と消化管運動抑制作用用量が同程度であった。
【0090】
これら結果から、化合物1および化合物2はモルヒネと比較し便秘の副作用が軽減されたオピオイド鎮痛薬になり得ることが明らかになった。
【実施例4】
【0091】
実施例1で合成した化合物1および化合物2の鎮痛作用を、神経障害性疼痛モデルマウスを用いて検討した。以下に説明する。
【0092】
(実験材料と方法)
1.神経障害性疼痛モデルマウス
神経障害性疼痛モデルマウスは、雄性ddY系マウス(日本エスエルシー株式会社)を使用して、その右側の坐骨神経をその直径の1/3から1/2を囲むように8-0シルク縫合糸でしっかりと結紮することにより作成した。コントロールマウスとして、坐骨神経を露出させるが結紮を行わない偽手術を施したマウスを用いた。マウスは手術より7日後に各試験に用いた。
【0093】
2.化合物
化合物1および化合物2をそれぞれ25mM リン酸バッファー(pH5.3~5.5)に溶解して用いた。また、モルヒネ、および7-ハイドロキシミトラガイニン、および7-ハイドロキシミトラガイニン誘導体である下記式(VI)で表される化合物(以下、化合物3と称する)についても同様の検討を行った。コントロールとして、生理的食塩水を用いた。
【0094】
【化9】
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【0095】
3. 熱刺激による痛覚過敏性試験
神経障害性疼痛モデルマウスの痛覚過敏性に対する鎮痛作用を、熱刺激に対するマウスの感受性、すなわち熱刺激を与えてから後肢を引っ込めるまでの時間(以下、痛覚潜時と称する)を指標として評価した。具体的には、拘束したマウスの施術同側後肢の足底に熱刺激を加え、熱刺激を与えてから後肢を引っ込めるまでの時間を、熱刺激鎮痛効果測定装置(UGO-BASILE、Biological research apparatus社製)を用いて測定した。熱刺激の強度は、無処理マウスにおける痛覚潜時の平均の基準が10秒になるように調節した。歩行に関連する肢の動作や体重移動は反応として算入しなかった。熱刺激後の痛覚潜時は、2回または3回測定し、その平均で示した。
【0096】
4.機械的刺激によるアロディニア試験
神経障害性疼痛モデルマウスのアロディニアに対する鎮痛作用を、機械的刺激に対するマウスの反応、刺激による逃避反射を指標として評価した。具体的には、マウスを、透明パースペックス(登録商標)製で金属メッシュの底を有する個々の小部屋に配置し、一連の基準化したフォンフレイ フィラメント(North Coast Medical社製)を用いて、ディクソンのアップダウン法(ディクソン(Dixon WJ )「アニュアル レビュー オブ ファーマコロジー アンド トキシコロジー(Annual Review of Pharmacolgy and Toxicology)」、1980年、第20巻、p. 441-462)により後肢を引っ込める反応の50%閾値を測定した。選択した8本のフォンフレイ フィラメントは、それらの曲げ強度がおよそ同じ割合で対数増加する(フォンフレイ番号:2.36、2.44、2.83、3.22、3.61、3.84、4.08、および4.17;それぞれ0.02、0.03、0.07、0.17、0.41、0.69、1.20、および1.48 gの強度に相当する)。測定は、0.17gのフィラメントを用いて開始し、そして各フィラメントを右後肢の足底表面に垂直に接触させ、該フィラメントを曲げるのに充分な力を3~4秒間かけた。肢を持ち上げることは反応が陽性であることを示し、その場合、次のより弱い、すなわちより軽いフィラメントを用いて試験した。後肢を引っ込める反応が認められないときは、次のより強い、すなわちより重いフィラメントを用いて試験した。このような実験を、最初の行動変化後4回の測定を達成するまで、あるいは、4回連続して陰性スコア(スコア0.01g)または5回の陽性スコア(スコア1.5 g)が得られるまで継続した。得られたスコアを用いて、チャプランらの報告に記載された方法(チャプラン(Chaplan SR)ら、「ジャーナル オブ ニューロサイエンス メソッズ(Journal of Neuroscience Methods)」、1994年、第53巻、p. 55-63)により、50%閾値を算出した。
【0097】
(結果)
1.熱刺激による痛覚過敏性試験における効果
神経障害性疼痛モデルマウスでは、コントロールマウスと比較して熱刺激に対して反応性が高く、痛覚潜時が短い。化合物1および化合物2はいずれも、皮下投与により、神経障害性疼痛モデルマウスの熱刺激に対する反応性を低下させた(それぞれ図7および図8)。具体的には、化合物1および化合物2はそれぞれ0.2mg/kgおよび0.05mg/kgの皮下投与で、神経障害性疼痛モデルマウスの痛覚潜時をコントロールマウスの痛覚潜時と同程度にまで延長した。さらに、化合物1および化合物2はそれぞれ0.4mg/kgおよび0.1mg/kgの皮下投与で、神経障害性疼痛モデルマウスの痛覚潜時をコントロールマウスの痛覚潜時より延長した。一方、モルヒネおよびフェンタニルは、皮下投与により、それぞれ5mg/kgおよび0.04 mg/kgで神経障害性疼痛モデルマウスの痛覚潜時をコントロールマウスの痛覚潜時と同程度にまで延長した。また、化合物3は、皮下投与により、0.25mg/kgで神経障害性疼痛モデルマウスの痛覚潜時をコントロールマウスの痛覚潜時と同程度にまで延長した。
【0098】
化合物2の上記効果を、経口投与により検討したところ、0.5mg/kgの経口投与で、神経障害性疼痛モデルマウスの神経障害性疼痛モデルマウスにおける痛覚潜時をコントロールマウスの痛覚潜時より延長した(図9-A)。この効果は、化合物2を投与して1時間後でも認められた(図9-B)。
【0099】
上記のように、化合物1および化合物2がいずれも神経障害性疼痛モデルマウスの痛覚潜時を延長したことから、これら化合物がいずれも該モデルマウスの痛覚過敏を抑制し、鎮痛作用を示すことが判明した。また、これら化合物の鎮痛作用はいずれもモルヒネよりも強いことが明らかになった。
【0100】
2.機械的刺激によるアロディニア試験における効果
神経障害性疼痛モデルマウスでは、コントロールマウスと比較して機械的刺激に対して反応性が高く、50%閾値が低い。化合物1および化合物2はいずれも、皮下投与により、神経障害性疼痛モデルマウスの機械的刺激に対する反応性の50%閾値を増加させた(それぞれ図11-Aおよび図11-B、並びに図12-Aおよび図12-B)。具体的には、化合物1および化合物2はそれぞれ0.8mg/kgおよび0.2mg/kgの皮下投与で、神経障害性疼痛モデルマウスにおいて、50%閾値をコントロールマウスの50%閾値と同程度あるいはそれ以上にまで増加させた。
【0101】
上記のように、化合物1および化合物2がいずれも神経障害性疼痛モデルマウスの機械的刺激に対する50%閾値を増加させたことから、これら化合物がいずれも該モデルマウスのアロディニアを抑制し、鎮痛作用を示すことが判明した。
【0102】
神経障害性疼痛モデルマウスに対する鎮痛作用を検討した上記結果は、化合物1および化合物2がいずれも神経障害性疼痛の鎮痛に有効であることを示唆する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9-A】
8
【図9-B】
9
【図10】
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【図11-A】
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【図11-B】
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【図12-A】
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【図12-B】
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