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明細書 :梨地面の形成方法、樹脂成形型及び低密着性材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6049003号 (P6049003)
公開番号 特開2013-215869 (P2013-215869A)
登録日 平成28年12月2日(2016.12.2)
発行日 平成28年12月21日(2016.12.21)
公開日 平成25年10月24日(2013.10.24)
発明の名称または考案の名称 梨地面の形成方法、樹脂成形型及び低密着性材料
国際特許分類 B23H   9/00        (2006.01)
FI B23H 9/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2012-090936 (P2012-090936)
出願日 平成24年4月12日(2012.4.12)
審査請求日 平成27年4月7日(2015.4.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】東 大助
【氏名】福澤 康
【氏名】山下 健
【氏名】花岡 大生
【氏名】竹内 和俊
個別代理人の代理人 【識別番号】100091373、【弁理士】、【氏名又は名称】吉井 剛
【識別番号】100097065、【弁理士】、【氏名又は名称】吉井 雅栄
審査官 【審査官】岩瀬 昌治
参考文献・文献 再公表特許第2003/061890(JP,A1)
特開2008-156160(JP,A)
特許第3536598(JP,B2)
特開2013-139170(JP,A)
調査した分野 B23H 9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
絶縁性セラミックスにエポキシ樹脂との剥離性が良好な梨地面を形成するための梨地面の形成方法であって、絶縁性セラミックスのエポキシ樹脂との接触面を放電加工により表面粗さが0.05~20μmで、且つ、スキューネスが+0.40~+1.50である梨地面に形成することを特徴とする梨地面の形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の梨地面の形成方法において、前記絶縁性セラミックスの前記接触面の表面に導電性材料を設け、この絶縁性セラミックスと工具電極との間に電圧を印加して放電加工を行う補助電極法を用いて前記放電加工を行うことを特徴とする梨地面の形成方法。
【請求項3】
エポキシ樹脂が充填される樹脂成形型であって、型面が請求項記載の梨地面の形成方法を用いて形成された梨地面であることを特徴とする樹脂成形型。
【請求項4】
エポキシ樹脂が接触る低密着性材料であって、表面が請求項記載の梨地面の形成方法を用いて形成された梨地面であることを特徴とする低密着性材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放電加工により梨地面を形成する方法、樹脂成形型及び低密着性材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に放電加工は、加工油中で金属等の導電性の被加工物に導電性の工具電極を非接触状態に近接させ、この被加工物と工具電極との間に電圧を印加することで、極間の狭いギャップに短い周期で繰り返しアーク放電を生じさせ、被加工物を加熱、溶解、除去する加工手段である。
【0003】
しかし、従来、放電加工が行えるのは金属等の導電性を有する材料に限られ、セラミックス等の絶縁材料や、炭化シリコンなどの半導体材料等の非導電性材料では電気的な導通が悪く、放電加工は不可能とされてきた。
【0004】
これに対し、本発明者らは、被加工物である絶縁性セラミックスの表面に導電性材料を密着若しくは蒸着させ、この被加工物と工具電極との間に電圧を印加して放電加工を行う補助電極法を提案した(特許文献1)。
【0005】
この特許文献1の方法は、絶縁性材料や半導体材料のような非導電性材料の被加工物の被加工面に導電性材料(以下、この被加工物に設けた導電性材料を補助電極といい、これを用いた特許文献1の方法を補助電極法という。)を設けて加工油に浸漬し、工具電極をこの補助電極に非接触状態で対置させ、この工具電極と補助電極との間に電圧を印加することで、被加工物の表面の一部を融解し、この融解と加工油の冷却作用による再凝固とを繰り返させることで被加工物への放電加工を可能としたものである。
【0006】
詳細には、次の通りである。
【0007】
この放電加工の初期には、工具電極と補助電極との間で行われる放電により、工具電極に対向する補助電極(導電性材料)の一部分が溶解される(補助電極の除去過程)。次いで、更に放電加工が進むと、被加工物の加工表面から補助電極が除去され、加工部分が絶縁物である被加工物の部分に達するが、この加工中に加工油や被加工物が分解して生じた炭化物が、除去された導電性材料に代わって導電性の炭化膜を形成するようになる。この新たに形成された導電性の炭化膜と、被加工物表面上の除去されずに残った補助電極との間で導通が維持できるようになるため、補助電極と工具電極との間で放電が維持され放電加工が可能となる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第3241936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような補助電極法により、絶縁性セラミックスの表面に所定の表面粗さの梨地面を形成することが可能であるが、本発明者らは種々の繰り返しの実験の結果、この絶縁性セラミックスの表面の梨地面の表面粗さ及びスキューネスを調整することで、この絶縁性セラミックスの剥離性(密着性)、例えば絶縁性セラミックスに対する合成樹脂の剥離性を制御できることを見出した。
【0010】
本発明は上述のような現状に鑑みなされたもので、例えば、樹脂成形型等に優れた離型性・防汚性を有する梨地面を形成することが可能な、極めて実用性に優れた梨地面の形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨を説明する。
【0012】
絶縁性セラミックスにエポキシ樹脂との剥離性が良好な梨地面を形成するための梨地面の形成方法であって、絶縁性セラミックスのエポキシ樹脂との接触面を放電加工により表面粗さが0.05~20μmで、且つ、スキューネスが+0.40~+1.50である梨地面に形成することを特徴とする梨地面の形成方法に係るものである。
【0013】
また、請求項1記載の梨地面の形成方法において、前記絶縁性セラミックスの前記接触面の表面に導電性材料を設け、この絶縁性セラミックスと工具電極との間に電圧を印加して放電加工を行う補助電極法を用いて前記放電加工を行うことを特徴とする梨地面の形成方法に係るものである。
【0014】
また、エポキシ樹脂が充填される樹脂成形型であって、型面が請求項記載の梨地面の形成方法を用いて形成された梨地面であることを特徴とする樹脂成形型に係るものである。
【0015】
また、エポキシ樹脂が接触る低密着性材料であって、表面が請求項記載の梨地面の形成方法を用いて形成された梨地面であることを特徴とする低密着性材料に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のようにするから、例えば、樹脂成形型等に優れた離型性・防汚性を有する梨地面を形成することが可能な、極めて実用性に優れた梨地面の形成方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実験例のサンプルの表面形状等を示す表である。
【図2】実験結果を示すグラフである。
【図3】実験結果を示すグラフである。
【図4】実験結果を示すグラフである。
【図5】実験結果を示す三次元グラフである。
【図6】実験結果を示す写真及びグラフである。
【図7】最大山高さRpの定義を示す説明図である。
【図8】最大谷深さRvの定義を示す説明図である。
【図9】最大山高さRpと最大谷深さRvの和Rzの定義を示す説明図である。
【図10】表面粗さRaの定義を示す説明図である。
【図11】スキューネスRskの定義を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
被加工物たる絶縁性セラミックス(例えば絶縁性ジルコニウム)の表面に、例えば、金属、炭素、炭化物及び導電性高分子等からなる導電性材料を設け、この絶縁性セラミックスに放電加工用の工具電極を対置させた状態で、例えば、加工油に浸漬して放電すると、発生する熱によって被加工物が溶解除去され、被加工物が加工される(補助電極法)。

【0019】
この放電によって、例えば、加工油や被加工物が熱分解して炭化物を生じ、この炭化物が被加工物の表面に導電性の炭化膜を形成するため、被加工物が絶縁性セラミックスの場合にも放電は維持される。

【0020】
このような放電加工により、絶縁性セラミックスの所定の面を、表面粗さ(算術平均粗さ)が0.05~20μm、スキューネス(粗さ曲線のスキューネス。ゆがみ。)が-2.00~+2.00の範囲の梨地面とする。

【0021】
具体的には、上記放電加工による加工条件(放電条件)を種々変化させて、上記表面粗さ及びスキューネスの範囲の梨地面を得る。

【0022】
例えば、スキューネスが+2.00に近づくように梨地面を形成した場合には、接着対象との剥離性が良く離型性・防汚性(汚れの取れ易さ)に優れたもの(接着し難い面質)となり、スキューネスが-2.00に近づくように梨地面を形成した場合には、接着対象と剥離し難く密着性に優れたもの(剥離し難い面質)となる。

【0023】
よって、例えば、より接着し難い面質が要望される樹脂成型金型の流動性樹脂が接触する部分を絶縁性セラミックスで形成し、型面を上記スキューネスが+0.40以上である梨地面とすることで、極めて離型性に優れた金型となり、接着力の高いエポキシ樹脂等を成形する際にも離型剤の塗布が不要となる等、極めて扱い易い金型を実現可能となる。

【0024】
以上から、本発明によれば、剥離性の制御が可能な梨地面を得ることができる。
【実施例】
【0025】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0026】
本実施例は、絶縁性セラミックスに梨地面を形成する梨地面の形成方法であって、絶縁性セラミックスの所定の面を放電加工により表面粗さが0.05~20μmで、スキューネスが-2.00~+2.00の梨地面に形成する梨地面の形成方法である。
【実施例】
【0027】
本実施例は、放電加工装置(図示せず)に、板状の工具電極を装着し、被加工物たる絶縁性セラミックス(絶縁性ジルコニア等)を補助電極法(特許文献1参照)によって放電加工する場合であり、工具電極を被加工物の被加工面に設けた補助電極に対置させ、この被加工面に沿って平行に移動させて放電加工を行うことで、工具電極の対置面の面積より大きい大面積を加工している。
【実施例】
【0028】
この放電加工に用いる工具電極としては、例えば、特願2011-75906号に開示されている被加工物との対置面に複数のスリットが同一ピッチで設けたものを採用できる。これら各スリットは、スリット幅が0.01mm~1.0mm且つ工具電極の移動方向に対して0°~75°の角度で設けられるもので、対置面を直線状に横断するよう設けられた細長い溝である。なお、勿論、上記スリットがない一般的な板状のものを採用しても良い。
【実施例】
【0029】
また、本実施例は、この工具電極を放電加工装置に取り付けて揺動させながら移動させている。この揺動は被加工物の被加工面に対して平行方向への揺動である。
【実施例】
【0030】
上記方法により絶縁性セラミックスの被加工部を放電加工することによって、100mm以上の面積に対しても表面粗さを低下させることなく、均一な状態の梨地面を形成することが可能となる。
【実施例】
【0031】
梨地面は、装飾性を付与したり、指紋を付き難くしたり、製造ラインで光センサを良好に使用したりするため等、種々の目的で使用される。
【実施例】
【0032】
また、本実施例では、絶縁材料に対する放電加工を行うため補助電極法を採用し、被加工物の表面に導電性材料を設けており、この導電性材料は金属、炭素、炭化物若しくは導電性高分子などであり、この導電性材料を薄板、網目材に形成したり、薄膜を蒸着したりしている。
【実施例】
【0033】
即ち、本実施例は、予め、絶縁性材料である被加工物の表面に導電性材料を設けて補助電極を形成し、この補助電極に加工用の工具電極を対置させた状態で加工油中に浸漬し、この補助電極と工具電極との間に電圧を印加して放電させることで被加工物を放電加工している。
【実施例】
【0034】
ここで、加工条件(放電条件)を適宜設定することで、形成される梨地面の表面粗さ及びスキューネスを適宜調整することが可能となる。また、梨地面の表面特性の具体的な評価は従来行われていなかったが、表面粗さだけではその評価は不十分であり、そこで、本発明ではスキューネスという新しい指標を含めて評価している。
【実施例】
【0035】
なお、表面粗さが0.05μm未満か20μmを越えると剥離性の制御はできなくなる。また、スキューネスが-2.00より小さいか+2.00より大きいと剥離性の制御はできなくなる。これらは実験により確認している。
【実施例】
【0036】
具体的には、放電回路におけるV(電圧)、R(電気抵抗)、L(インダクタンス)、C(静電容量)の各成分を適宜設定することで、所望の表面粗さ及びスキューネスの梨地面(所望の加工表面形状)を形成できる。
【実施例】
【0037】
本実施例は上述のようにするから、剥離性の制御が可能な梨地面を得ることができる。
【実施例】
【0038】
従って、より接着し難い面質が要望される樹脂成型金型の流動性樹脂が接触する部分を絶縁性セラミックスで形成し、型面を上記スキューネスが+0.40以上である梨地面とすることで、極めて離型性に優れた金型となり、接着力の高いエポキシ樹脂等を成形する際にも離型剤の塗布が不要となる等、極めて扱い易い金型を実現可能となる。
【実施例】
【0039】
よって、本実施例は、樹脂成形型等に優れた離型性・防汚性を有する梨地面を形成することや、この梨地面を有する低密着性材料等を得ることが可能な極めて実用性に優れた梨地面の形成方法となる。
【実施例】
【0040】
以下に、本実施例の効果を裏付ける実験例について説明する。
【実施例】
【0041】
工具電極材料をグラファイト(極性:-)とし、被加工物である部分安定化ジルコニア(極性:+)に放電加工を行った。また、放電回路は、無負荷電圧Eを140[V]若しくは180[V]、静電容量Cを47[nF]若しくは100[nF]、充電抵抗Rを600[Ω]、1200[Ω]若しくは15000[Ω]とし、これらを適宜組み合わせてサンプルA,B及びCを作製した。
【実施例】
【0042】
実験結果を図1~6に示す。なお、図7~11に、各パラメータの定義を示す。
【実施例】
【0043】
各サンプルの表面粗さRaは同等(概ね2μm程度。図4参照。)であるが、最大山高さRpと最大谷深さRvの割合(図2参照)及びスキューネスRsk(図3参照)が大きく異なり、図1及び図5に示すように、その表面形状は異なるものとなる(図1に示す断面形状は概略形状。)。
【実施例】
【0044】
ここで、各サンプルの離型力は図6に図示したように、スキューネスRskが大きいほど低くなる(剥離性が良くなる)傾向があることが分かる。
【実施例】
【0045】
従って、例えばスキューネスRskが+2.00に近づくように梨地面を形成した場合には、接着対象との剥離性が良く離型性・防汚性に優れた表面となり、スキューネスが-2.00に近づくように梨地面を形成した場合には、接着対象と剥離し難く密着性に優れた表面となる。
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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