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明細書 :酸化物担持体製造方法、酸化物担持体製造用装置、および光触媒フィルター製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5958809号 (P5958809)
公開番号 特開2013-252501 (P2013-252501A)
登録日 平成28年7月1日(2016.7.1)
発行日 平成28年8月2日(2016.8.2)
公開日 平成25年12月19日(2013.12.19)
発明の名称または考案の名称 酸化物担持体製造方法、酸化物担持体製造用装置、および光触媒フィルター製造方法
国際特許分類 B01J  37/02        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  21/08        (2006.01)
B01D  53/86        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
A61L   9/00        (2006.01)
A61L   9/01        (2006.01)
FI B01J 37/02 301P
B01J 35/02 ZABJ
B01J 21/08 M
B01D 53/86
B01D 53/86 110
B01D 53/86 275
B01J 37/08
A61L 9/00 C
A61L 9/01 B
請求項の数または発明の数 15
全頁数 19
出願番号 特願2012-130419 (P2012-130419)
出願日 平成24年6月8日(2012.6.8)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 集会名:平成23年度物質工学科卒業研究発表会(独立行政法人国立高等専門学校機構八戸工業高等専門学校)、開催日:平成24年2月3日(金)、開催場所:八戸工業高等専門学校
審査請求日 平成27年5月16日(2015.5.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
発明者または考案者 【氏名】長谷川 章
個別代理人の代理人 【識別番号】100119264、【弁理士】、【氏名又は名称】富沢 知成
審査官 【審査官】森坂 英昭
参考文献・文献 特開2007-152221(JP,A)
特開2002-253975(JP,A)
特開平10-204323(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
A61L 9/00
A61L 9/01
B01D 53/86
特許請求の範囲 【請求項1】
ジオールと金属アルコキシドを反応させてなる酸化物前駆体を担体の表面上に形成させる前駆体形成過程と、該酸化物前駆体を熱処理して該担体表面上に酸化物を生成させる熱処理過程とからなり、該前駆体形成過程は、該担体に予め含浸させた該ジオールに対して、気化させた該金属アルコキシドを接触させる過程であることを特徴とする、酸化物担持体製造方法。
【請求項2】
前記担体はフィルター、アルミナ繊維、アルミナクロスまたはセラミックスペーパーのいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の酸化物担持体製造方法。
【請求項3】
前記酸化物担持体における前記酸化物の量は0.2重量%以上4.2重量%以下、または、4.5×10-4g/cm以上9.5×10-3g/cm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の酸化物担持体製造方法。
【請求項4】
前記酸化物担持体における前記酸化物の量は1.0重量%以上3.2重量%以下、または、2.3×10-3g/cm以上7.0×10-3g/cm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の酸化物担持体製造方法。
【請求項5】
前記酸化物は前記担体表面上の析出物として生成されることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の酸化物担持体製造方法。
【請求項6】
前記金属アルコキシドに係る金属種はチタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、亜鉛、マグネシウム、ケイ素または鉄のいずれかであることを特徴とする、請求項1ないしのいずれかに記載の酸化物担持体製造方法。
【請求項7】
前記金属アルコキシドはチタンアルコキシドであり、前記酸化物は酸化チタンであることを特徴とする、請求項1ないしのいずれかに記載の酸化物担持体製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の酸化物担持体製造方法により製造することを特徴とする、光触媒フィルター製造方法
【請求項9】
前記担体はシリカ繊維フィルターまたはガラス繊維を用いた物であることを特徴とすることを特徴とする、請求項に記載の光触媒フィルター製造方法
【請求項10】
担体であるフィルターの繊維表面に析出物状に酸化チタン粒子が存在し、真空ポンプを用い通気速度5cm/sにて吸引し測定した際の該フィルターの圧力損失増大が20Pa以下である光触媒フィルターを得ることを特徴とする、請求項8または9に記載の光触媒フィルター製造方法
【請求項11】
請求項ないし10のいずれかに記載の方法により光触媒フィルターを得、これを用いて下記〔P〕に示すいずれかの製品を製造することを特徴とする、製品製造方法。
〔P〕脱臭用製品、空気浄化用製品、水質浄化用製品、抗菌用製品、防汚用製品
【請求項12】
金属アルコキシドを気化する気化室と、気化金属アルコキシドを該気化室から後記反応容器に送る送気管と、担体に含浸させたジオールと該気化金属アルコキシドを反応させて酸化物前駆体である金属ジオレートを該単体表面上に生成させる反応容器と、該反応容器を恒温状態に維持する恒温槽とを備えてなる、酸化物担持体製造用装置。
【請求項13】
請求項12に記載の酸化物担持体製造用装置を用いて酸化物担持体を製造する、酸化物担持体製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の酸化物担持体製造用装置を用いて光触媒フィルターを製造する、光触媒フィルター製造方法。
【請求項15】
ジオールを存在させた物体の表面に気化させた金属アルコキシドを接触させて該物体表面に金属ジオレートを形成し、該金属ジオレートを熱処理することによって該物体表面に酸化物を生成させる、物体表面改質方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は酸化物担持体製造方法、酸化物担持体製造用装置、および光触媒フィルター製造方法に係り、特に、高い光触媒活性と低い圧力損失を兼ね備えた光触媒フィルターを得ることのできる酸化物担持体製造方法、酸化物担持体製造用装置、および光触媒フィルター製造方法に関する。

【背景技術】
【0002】
酸化チタンは化学的に安定で毒性が少なく、さらに、光吸収によって生じる酸化力が防汚、脱臭、空気浄化、水質浄化、抗菌などに対して有効であることが報告されて以来、幅広い分野で応用が拡大している。
【0003】
酸化チタンを光触媒として利用するためには通常、基材に対して何らかの方法で固定化する必要がある。粉末状の酸化チタンの固定化方法としては、シリカなどバインダーを利用する方法が知られている。しかしこの方法では、光触媒機能性を待たないバインダーが光触媒周辺に多量に存在することとなるため、光触媒機能性を大幅に低下させてしまう。これに対して、ゾル-ゲル法など溶液を塗布する方法では、バインダーを利用することなく基材表面に光触媒を固定化することが可能である。
【0004】
一般的に光触媒を面として利用する場合、上述したような固定化法は非常に有効である。しかし、セラミックスフォームやガラス繊維製のフィルター表面に液相法によって酸化チタン光触媒を固定化する場合、光触媒活性を向上させるためには大量の酸化チタン塗布が必要となる。しかし、かかる大量の酸化チタン塗布による光触媒フィルターでは、フィルターに被処理ガスを通過させる場合、大きな圧力損失を発生させてしまう。そこで従来は、非常に目の粗いセラミックスフォームを使用するなどの手段により、圧力損失を低くしている。
【0005】
なお、光触媒フィルターについては従来、多くの技術的提案がなされている。たとえば後掲特許文献1には、光触媒との接触効率が高く、紫外線透過性に優れ、圧力損失の小さい高性能光触媒フィルタを提供するために、表面積を高いレベルに維持可能であるとともに80~90%もの著しく大きな空隙率を確保可能なセラミック多孔体を用い、これに光触媒を担持してなる光触媒フィルタが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、エアフィルターとして必要不可欠な圧力損失に耐えうる強度を備え、かつ有害ガスをすばやく多量に吸着、分解除去できる光触媒担持ガラス繊維布を提供するために、100~400m/gの比表面積を有する多孔質ガラス繊維布の表面に光触媒を担持してなる光触媒担持ガラス繊維布が開示されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2004-351381号公報「光触媒フィルタとこれを用いた脱臭装置及び水処理装置」
【特許文献2】特開2004-2176号公報「光触媒担持ガラス繊維布、その製造方法およびそれを用いたエアフィルター装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて従来、高い光触媒活性を得るために必要な大量の酸化チタンが塗布された光触媒フィルターにおいて圧力損失を低くするには、上述のとおり非常に目の粗いセラミックスフォームを使用するなど、光触媒を担持する担体自体の構造に着目し、適した材料の選択や構造の改良が取り組まれてきた。しかしこれらの方法では、ある程度以上の容積や面積を備えた担体とする必要があるため、光触媒装置を小型化するための障害となっていた。もちろん、光触媒も大量に使用しなくてはならない。これら従来技術の問題は、上記特許文献開示技術においても共通するものである。
【0009】
本発明の課題は、これら従来技術の問題点を解消し、大量の光触媒を用いることなく、高い光触媒活性と低い圧力損失を両立できる光触媒フィルター、およびこれを得ることのできる酸化物担持体製造方法、酸化物担持体製造用装置、酸化物担持体を提供することである。さらに本発明の課題は、圧力損失低下のために光触媒担体の容積や面積を大きくすることがなく、したがって光触媒装置の小型化に支障の生じることのない、光触媒フィルター、およびこれを得ることのできる酸化物担持体製造方法、酸化物担持体製造用装置、酸化物担持体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は上記課題について検討した結果、ジオールを存在させた基材の表面に気化させた金属アルコキシドを接触させて、かかる反応により物体表面に酸化物前駆体(金属ジオレート)を形成し、これを熱処理(熱分解)することによって物体表面において酸化チタンを生成させる方法を編み出し、これを基礎として課題解決可能であることに想到し、本発明の完成に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0011】
〔1〕 ジオールと金属アルコキシドを反応させてなる酸化物前駆体を担体の表面上に形成させる前駆体形成過程と、該酸化物前駆体を熱処理して該担体表面上に酸化物を生成させる熱処理過程とからなり、該前駆体形成過程は、該担体に予め含浸させた該ジオールに対して、気化させた該金属アルコキシドを接触させる過程であることを特徴とする、酸化物担持体製造方法。
〔2〕 前記担体はフィルター、アルミナ繊維、アルミナクロスまたはセラミックスペーパーのいずれかであることを特徴とする、〔1〕に記載の酸化物担持体製造方法。
〔3〕 前記酸化物担持体における前記酸化物の量は0.2重量%以上4.2重量%以下、または、4.5×10-4g/cm以上9.5×10-3g/cm以下であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の酸化物担持体製造方法。

【0012】
〔4〕 前記酸化物担持体における前記酸化物の量は1.0重量%以上3.2重量%以下、または、2.3×10-3g/cm以上7.0×10-3g/cm以下であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の酸化物担持体製造方法。
〔5〕 前記酸化物は前記担体表面上の析出物として生成されることを特徴とする、〔1〕ないし〔4〕のいずれかに記載の酸化物担持体製造方法。
〔6〕 前記金属アルコキシドに係る金属種はチタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、亜鉛、マグネシウム、ケイ素または鉄のいずれかであることを特徴とする、〔1〕ないし〔5〕のいずれかに記載の酸化物担持体製造方法。
〔7〕 前記金属アルコキシドはチタンアルコキシドであり、前記酸化物は酸化チタンであることを特徴とする、〔1〕ないし〔5〕のいずれかに記載の酸化物担持体製造方法。

【0013】
〔8〕 〔7〕に記載の酸化物担持体製造方法により製造することを特徴とする、光触媒フィルター製造方法。
〔9〕 前記担体はシリカ繊維フィルターまたはガラス繊維を用いた物であることを特徴とすることを特徴とする、〔8〕に記載の光触媒フィルター製造方法。
〔10〕 担体であるフィルターの繊維表面に析出物状に酸化チタン粒子が存在し、真空ポンプを用い通気速度5cm/sにて吸引し測定した際の該フィルターの圧力損失増大が20Pa以下である光触媒フィルターを得ることを特徴とする、〔8〕または〔9〕に記載の光触媒フィルター製造方法。
〔11〕 〔8〕ないし〔10〕のいずれかに記載の方法により光触媒フィルターを得、これを用いて下記〔P〕に示すいずれかの製品を製造することを特徴とする、製品製造方法。
〔P〕脱臭用製品、空気浄化用製品、水質浄化用製品、抗菌用製品、防汚用製品

【0014】
〔12〕 金属アルコキシドを気化する気化室と、気化金属アルコキシドを該気化室から後記反応容器に送る送気管と、担体に含浸させたジオールと該気化金属アルコキシドを反応させて酸化物前駆体である金属ジオレートを該単体表面上に生成させる反応容器と、該反応容器を恒温状態に維持する恒温槽とを備えてなる、酸化物担持体製造用装置。
〔13〕 〔12〕に記載の酸化物担持体製造用装置を用いて酸化物担持体を製造する、酸化物担持体製造方法。
〔14〕 〔12〕に記載の酸化物担持体製造用装置を用いて光触媒フィルターを製造する、光触媒フィルター製造方法。
〔15〕 ジオールを存在させた物体の表面に気化させた金属アルコキシドを接触させて該物体表面に金属ジオレートを形成し、該金属ジオレートを熱処理することによって該物体表面に酸化物を生成させる、物体表面改質方法。

【発明の効果】
【0015】
本発明の酸化物担持体製造方法、酸化物担持体製造用装置、および光触媒フィルター製造方法は上述のように構成されるため、これらによれば、大量の光触媒を用いることなく、極めて微量の酸化チタンによって、高い光触媒活性と低い圧力損失をともに兼ね備えた光触媒フィルターを得ることができる。つまり本発明によれば、光触媒としての高い分解性能を有し、その上繰り返し使用にも従来以上に耐える、性能と耐久性に優れ、しかも装置小型化にも支障のない、画期的な光触媒フィルターを得ることができる。

【0016】
また本発明によれば、圧力損失低下のために光触媒担体の容積や面積を大きくする必要がないため、空気清浄機など光触媒装置の小型化にも、何ら支障が生じない。また、本発明によれば、簡便かつ安価な製造方法で上記光触媒フィルターを得ることができる。
【0017】
本発明の酸化物担持体製造方法、酸化物担持体製造用装置、および光触媒フィルター製造方法は、酸化チタン光触媒のみならず広く金属酸化物に用いることができ、上述の種々の効果の多くを、同様に得ることができる。つまり本発明によれば、簡便かつ安価な方法によって、しかもごく少量の原料金属化合物を有効に用いて、触媒や表面処理を初めとする広範な産業・製品分野において、金属酸化物により表面を化学修飾する表面改質技術を提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図P1】本発明の酸化物担持体製造方法の基本構成を示すフロー図である。
【図P2】本発明の酸化物担持体製造用装置の基本構成を示す概念図である。
【図1】実施例の光触媒フィルター作製装置の構成概要を示す説明図である。
【図2】実施例の光触媒活性測定装置の構成概要を示す説明図である。
【図3】CVD法によって合成した光触媒フィルターのSEM像の写真である。
【図4a】CVD法で合成した光触媒フィルターのSEM像の写真である。
【図4bc】CVD法で合成した光触媒フィルターのEDXスペクトルである((b)シリカ繊維表面のEDXスペクトル、(c)球状粒子のEDXスペクトル)。
【図5】光触媒フィルターのXRDパターンを示すグラフである。
【図6ab】酸化チタン前駆体のXRDパターンを示すグラフである((a)150℃乾燥、(b)500℃焼成試料)。
【図7】CVD法によって調製した光触媒のアセトアルデヒド分解性能を示すグラフである。
【図8】TEOT注入量と酸化チタン担持量の関係を示すグラフである。
【図9】酸化チタン担持量と光触媒活性の関係を示すグラフである。
【図10】光触媒フィルターのシリカ繊維上の球状酸化チタン粒子のSEM像の写真である。
【図11】さまざまな条件で調製した酸化チタンの光触媒活性を示すグラフである。
【図12】光触媒フィルターの反射UV-Vis.スペクトルを示すグラフである。
【図13】光触媒フィルターを用いたアセトアルデヒドの連続分解試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について図面を用いつつ、より詳細に説明する。
図P1は、本発明の酸化物担持体製造方法の基本構成を示すフロー図である。図示するように本酸化物担持体製造方法は、ジオール1と金属アルコキシド2を反応させてなる酸化物前駆体3を担体4の表面上に形成させる前駆体形成過程S1と、酸化物前駆体3を熱処理して担体4表面上に酸化物5を生成させる熱処理過程S2とからなることを、主たる構成とする。

【0020】
かかる構成により本製造方法によれば、前駆体形成過程S1において、ジオール1と金属アルコキシド2を反応させてなる酸化物前駆体3が担体4の表面上に形成された酸化物前駆体担持体9が得られ、ついで熱処理過程S2において酸化物前駆体3が熱処理されて、担体4表面上に酸化物5の生成した酸化物担持体10が得られる。なお、前駆体形成過程S1として二通りの過程をとることができるが、これについては後述する。いずれにせよ本発明では、金属アルコキシド2とジオール1を用いて酸化物前駆体3(金属ジオレート)を一旦形成し、これを経由して目的の酸化物5を得る。

【0021】
担体4としてはたとえば、適宜仕様のフィルター、アルミナ繊維、アルミナクロス、ホウケイ酸ガラス製濾紙、その他のガラス繊維、またはセラミックスペーパー等を用いることができる。特に本発明では担体4として、シリカ繊維フィルターなど適宜仕様のフィルターを用いるなど望ましい担体を用いて、本発明製造方法の過程を経て生成される酸化物5の量をごく少量とするようにして、担体の圧力損失増大がほとんど発生しない酸化物担持体を製造することができる。

【0022】
本発明製造方法における前駆体形成過程S1は、担体4に予め含浸させたジオール2に対して、気化させた金属アルコキシド1を接触させる過程とすることができる。つまりこの場合、担体4にジオール2を含浸させておく手順と、金属アルコキシド1を気化させておく手順とが予め準備され、そしてジオール2の含浸した担体4に対して気化金属アルコキシド1が送り込まれる手順がなされ、この手順において金属アルコキシド1がジオール2と接触して反応が進行し、酸化物前駆体3(金属ジオレート)が形成され、本過程S1で目的とする前駆体担持体9が得られる。

【0023】
なお、金属アルコキシド1の気化は加熱処理によって容易に行うことができる。また担体4(基材)へのジオール2の含浸は、基材の表面にジオール2を塗布することでも容易に行うことができる。また、加熱気化した金属アルコキシド1は、N等適宜のキャリアーガスを用いてこれとともに基材表面に対して送り込めばよい。さらに詳細な条件については、公知技術を用いて適宜設計可能である。

【0024】
かかる前駆体形成過程S1を経て基材(4)表面で生成した酸化物前駆体3(金属ジオレート)は、ついで熱処理過程S2において、空気中で熱処理されることにより酸化物5となる。この方法によって基材表面には、ごく微量の金属酸化物5が生成し、これによって修飾された材料(酸化物担持体10)が得られる。なお熱処理過程S2についても、さらに詳細な条件に関しては、公知技術を用いて適宜設計可能である。

【0025】
前駆体形成過程S1としては、これと異なる方法をとることもできる。つまり、ジオール2と金属アルコキシド1とを混合した混合液を調製し、これを担体4に含浸させるという方法である。詳細は実施例に後述するが、かかる方法によっても酸化物前駆体3を形成し、その後の熱処理過程S2に供することによって、目的とする酸化物前駆体10を得ることができる。

【0026】
なお、前駆体形成過程S1として上記いずれの方法をとる場合であっても、得られる金属酸化物5は、担体4表面上に付着した微小サイズの析出物として生成される。これについても、実施例にてさらに後述する。

【0027】
本発明の製造方法において、金属アルコキシドに係る金属種としては、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、亜鉛、マグネシウム、ケイ素または鉄については少なくとも、ジオールの組み合わせによって金属ジオレートの生成とその熱分解による金属酸化物が良好に生成することを確認している。しかしながら本発明の原理であるところの「金属アルコキシドとジオールによる担体上での金属ジオレート(酸化物前駆体)生成およびその熱分解による金属酸化物の生成」は、一部の特定された金属種のみならず、広く適用可能である。したがって本発明の金属種範囲も、上記の各元素に限定されるものではない。

【0028】
なお、好適に用いることのできるジオールの例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールなどがあげられる。これらが良好に利用可能であることは確認済みである。もちろん本発明はこれに限定されず、他のジオールも用いることができる。

【0029】
また本発明製造方法では、目的酸化物を酸化チタンとして、金属アルコキシドにチタンアルコキシドを用いるものとすることができる。好適に用いることのできるチタンアルコキシドの例としては、オルトチタン酸テトラエチル、チタン(IV)n-ブトキシド、チタン(IV)t-ブトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)i-プロポキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)イソプロポキシドなどがあげられる。これらが良好に利用可能であることは確認済みである。もちろん本発明はこれに限定されず、他のチタンアルコキシドも用いることができる。

【0030】
以上のようにして製造することにより、ごく少量の酸化チタンが担持されてなる光触媒フィルターとして、酸化物担持体10を得ることができる。本発明に係る担体4としては上述のように種々のものを用いることができるが、光触媒フィルターの担体としては特に、シリカ繊維フィルター、またはホウケイ酸ガラス製濾紙等のガラス繊維を用いた物を好適に用いることができる。

【0031】
本発明の製造方法によれば、酸化チタンが担持されていることによる圧力損失増大がほとんど発生しない光触媒フィルターを得ることができる。たとえば実施例にも述べるように、真空ポンプを用いて通気速度5cm/sにて吸引し測定した際のフィルターの圧力損失増大が20Pa以下、さらには10Pa以下という極めて低い値に留まる光触媒フィルターを得ることができる。本発明によれば、酸化チタン光触媒粒子は担体であるフィルターの繊維表面に生成し、そのために圧力損失がほとんど増大しないのである。もちろん、光触媒としての性能も高いものが得られることはいうまでもない。

【0032】
このように本発明製造方法によって得られる光触媒フィルターもまた本発明の範囲であるが、光触媒活性の高さと圧力損失の低さを併せ持った画期的な材料であるため、脱臭用製品、空気浄化用製品、水質浄化用製品、抗菌用製品、防汚用製品といった種々の光触媒応用分野の製品に適用することができる。これらの製品もまた、本発明の範囲内である。

【0033】
図P2は、本発明の酸化物担持体製造用装置の基本構成を示す概念図である。図示するように本酸化物担持体製造用装置100は、金属アルコキシドを気化する気化室20と、気化金属アルコキシドを気化室20から反応容器40に送る送気管30と、担体に含浸させたジオールと気化金属アルコキシドを反応させて酸化物前駆体である金属ジオレートを単体表面上に生成させる反応容器40と、反応容器40を恒温状態に維持する恒温槽50とを備えてなることを、主たる構成とする。

【0034】
かかる構成により本発明酸化物担持体製造用装置100においては、恒温槽50によって恒温状態に維持された反応容器40にはジオールが含浸された担体が準備され、一方、気化室20では金属アルコキシドが気化されて気化金属アルコキシドとなり、気化金属アルコキシドは送気管30によって気化室20から反応容器40に送り込まれ、ここで、担体に含浸させたジオールと気化金属アルコキシドとが反応して酸化物前駆体である金属ジオレートが担体表面上に生成せしめられる。

【0035】
本酸化物担持体製造用装置100により得られた酸化物前駆体担持体は、反応容器40から取り出され、必要に応じて適宜の乾燥処理に供された後、所定条件による熱処理がなされ、目的とする酸化物担持体が得られる。なお、本装置を用いて製造された酸化物担持体もまた、本発明の範囲内である。

【0036】
以上述べた「ジオールを存在させた物体の表面に気化させた金属アルコキシドを接触させて物体表面に金属ジオレートを形成し、金属ジオレートを熱処理することによって物体表面に酸化物を生成させる」方法は、新規な物体表面改質方法として一般化することができ、今後さまざまな製品・分野に応用可能な原理である。
【実施例】
【0037】
<実施例>
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明がかかる実施例に限定されるものではない。なお、本発明の典型例の一つである光触媒フィルターを得るための研究開発過程の概要を述べることで、実施例の説明とする。
<1.実験方法>
1.1 光触媒フィルターの作製方法
酸化チタンによるシリカ繊維フィルターの修飾(すなわち、光触媒フィルターの作製)は以下の方法により行った。
1.1.1 CVD法による光触媒フィルターの合成方法
図1は、本実施例の光触媒フィルター作製装置の構成概要を示す説明図である。ガラス製の反応容器を恒温槽内中に設置し、上部にNキャリアガス予熱部およびオルトチタン酸テトラエチル(以下、「TEOT」)を加熱気化するための気化室を備えた構成とした。
【実施例】
【0038】
ADVANTEC(登録商標)製シリカ繊維フィルター(QR-100)を75mm×75mmに裁断して基材に用いた。シリカ繊維は、水分や表面の汚れを取り除くために、500℃で2h焼成して使用した。このシリカ繊維を1,3-ブタンジオール(以下、「13BD」)に浸して13BDを吸収させた後、ガラス製反応容器内に設置した。さらに、ガラス製反応容器を恒温槽内に設置し、気化室との間をテフロン(登録商標)チューブで接続した。
【実施例】
【0039】
恒温槽および気化室を180℃に加熱し、窒素ガスを50ml/minの流速で流通させた。その後、気化室に0.3mlのTEOTをシリンジで注入した。TEOTは気化室内で気化し窒素ガスとともに恒温槽内の反応槽へ導かれ、シリカ繊維フィルター表面の13BDと接触し、酸化チタン前駆体であるチタンジオレートを生じる。反応後、ガラス製反応容器内からシリカ繊維フィルターを取り出し、空気中で150℃で乾燥後、空気中で500℃2h熱処理することによって、酸化チタン修飾シリカ繊維フィルターを得た。
【実施例】
【0040】
1.1.2 ゾルゲル法による酸化チタン粉末の合成(SGP法)
13BD10mlに対してTEOT1mlを加え、30分間室温で撹拌した。ついで、得られた酸化チタン前駆体を含む溶液を150℃で24h乾燥した後、500℃で2h焼成して粉末試料を得た。このようにして得られた粉末試料(以下、本法を「SGP法」)0.1gを、75mm×75mmのシリカ繊維フィルター(QR-100)上に分散させて光触媒活性の評価に供した。
【実施例】
【0041】
1.1.3 ゾル-ゲル法による光触媒フィルター(SGF法)の作製
13BD10mlに対してTEOT1mlを加え、30分間室温で撹拌した。この溶液5gを75mm×75mmのシリカ繊維フィルターに吸収させた後、150℃で2h乾燥し、500℃で2h焼成した(以下、本法を「SGF法」)。
【実施例】
【0042】
1.2 酸化チタンの評価
1.2.1 光触媒活性の評価
1.2.1.1 アセトアルデヒド分解による光触媒活性の評価
図2は、本実施例の光触媒活性測定装置の構成概要を示す説明図である。図示するように、20dmのガラス製デシケーター内に75mm×75mmの酸化チタン修飾シリカ繊維フィルターを設置した。評価の手順は、デシケーター内に試料を設置後、紫外線(東芝製ブラックライト、FL4BLB、ピーク波長352nm、紫外線強度4mW/cm)を30分間照射した。ついで、空気でデシケーター内を置換した後、温度25℃、湿度13g/mに調整した。デシケーターにアセトアルデヒドを20ppm注入して、吸着平衡に達した後、紫外線を照射して濃度の経時変化をINNOVA Air Tech Instruments社製光音響マルチガスモニター1314型で分析した。アセトアルデヒドの分解は一次反応であることから、濃度変化より速度定数を算出した。
【実施例】
【0043】
1.2.1.2 アセトアルデヒド連続分解試験
1.2.1.1に述べた光触媒活性測定装置のデシケーター内に、直径4.5cmの濾過フォルダを設置して光触媒フィルターを固定した。濾過フォルダにエアーポンプを取り付け、通気速度5cm/sでデシケーター内の空気を循環させた。アセトアルデヒド分解による光触媒活性評価の手順は1.2.1.1と同じであるが、濃度が1ppm以下になったところで再度アセトアルデヒドを加え、繰り返し分解反応を行った。
【実施例】
【0044】
1.2.2 粉末X線回折(XRD)測定
酸化チタンおよびその前駆体の結晶構造を決定するために、X線回折装置として、リガク製X線回折装置ULTIMAIII型を用いた。X線源には、CuKα線を使用し、20kV、40mAの管電圧で測定した。
【実施例】
【0045】
1.2.3 走査型電子顕微鏡(SEM)による観察
日立製作所製走査型電子顕微鏡S-4800型を用いて、酸化チタンの表面形状を観察した。
【実施例】
【0046】
1.2.4 圧力損失評価方法
酸化チタン修飾シリカ繊維フィルターを裁断して、円形のフィルターとした。これをステンレス製のろ過フォルダ(面積15.9cm)に固定し、真空ポンプを用いて通気速度5cm/sで吸引し、デジタルマノメーターを用いて圧力損失を求めた。
【実施例】
【0047】
<2. 結果と考察>
2.1 光触媒フィルターの表面構造
図3は、CVD法によって合成した光触媒フィルターのSEM像の写真である。75mm×75mmのシリカ繊維フィルターに酸化チタンとして2.0mg担持した試料では、シリカ繊維表面において、粒子析出と球状粒子の付着を確認することができた。これらの粒子について、エネルギー分散型X線分析(EDX)によって元素分析を行った。
【実施例】
【0048】
図4aは、CVD法で合成した光触媒フィルターのSEM像の写真である。また、図4bcはCVD法で合成した光触媒フィルターのEDXスペクトルである((b)シリカ繊維表面のEDXスペクトル、(c)球状粒子のEDXスペクトル)。元素分析の結果、シリカ繊維表面に付着している球状粒子からは(c)に示すとおり、Tiが明確に検出された。一方、シリカ繊維表面の平滑な部分について元素分析を行ったところ、(b)に示すとおり、微量ながらTiの存在が確認できた。このことから、シリカ繊維表面に微量の酸化チタンが生成(析出)していることが確認できた。なお球状粒子は、シリカ繊維フィルターに含浸した13BDの一部が加熱によって気化し、シリカ繊維フィルターの上方でTEOTと接触して球状粒子を生成し、これがフィルター上に堆積したものと考えられる。
【実施例】
【0049】
2.2 光触媒フィルターの結晶構造
図5は、光触媒フィルターのXRDパターンを示すグラフであり、TEOTの気化室への注入量を変えて酸化チタン担持量を変化させた光触媒フィルターのXRDパターンである。CVD1、2、3はそれぞれ、酸化チタン担持量が3.9mg、6.2mg、26.4mgである。いずれの試料においても、2θ=25.4°付近にアナターゼ型酸化チタンのピークが観察された。なお、2θ=22°付近のブロードなピークは、シリカ繊維に由来するハローパターンである。一方、比較に用いたDegussa製P-25は、アナターゼ型とルチル型が混合した状態であった。以上の結果から、CVD法でシリカ繊維表面に形成した酸化チタンは、アナターゼ型酸化チタンであることが確認できた。
【実施例】
【0050】
図6abは、酸化チタン前駆体のXRDパターンを示すグラフであり((a)150℃乾燥、(b)500℃焼成試料)、CVD法、SGP法ならびにSGF法で調製した試料について、それぞれ150℃で乾燥した試料と500℃焼成後の試料についてXRD測定を行った結果を示したものである。図中、(a)に示した150℃乾燥の試料では、いずれの調製方法でも、TEOTと13BDから生成するチタンジオレートに特有な2θ=10.1°と8.4°が認められた。また、これらの試料を500℃焼成した試料(b)ではいずれも、アナターゼ型酸化チタンの生成が確認できた。以上の結果から、CVD法で調製した場合にもゾル-ゲル法と同様に、チタンジオレートの生成と熱分解によってアナターゼ型酸化チタンが生成することが明らかとなった。
【実施例】
【0051】
2.3 光触媒活性評価
図7は、CVD法によって調製した光触媒のアセトアルデヒド分解性能を示すグラフである。すなわち、CVD法によって調製した光触媒フィルターの紫外線照射下におけるアセトアルデヒド分解試験の結果を示したものであり、試料は酸化チタン6.2mg担持の光触媒フィルターである。20ppmのアセトアルデヒドを20dmのデシケーターに注入し、紫外線ランプを点灯して、濃度変化および二酸化炭素濃度の測定を行った。その結果、アセトアルデヒドは紫外線照射開始直後から急激に濃度低下しており、およそ30分で1ppm以下まで低下した。また、アセトアルデヒドの分解によって二酸化炭素が約40ppm増加していることから、アセトアルデヒドの酸化反応が進行していることが確認できた。アセトアルデヒドの分解は一次反応で進行することから、触媒活性の指標をアセトアルデヒド分解の速度定数で示した。
【実施例】
【0052】
2.4 CVD法による光触媒フィルターの活性発現条件の最適化
2.4.1 気化室へのTEOT注入量と光触媒活性
気化室に注入するTEOTの量を変化させてシリカ繊維(75mm×75mm)上の酸化チタン担持量を変化させた。このとき、気化室の温度は180℃、恒温槽温度180℃、窒素ガス流量は50ml/minとして、調製した。表1に、TEOT量を変化させた際の担持量とアセトアルデヒドの分解速度定数を示した。その結果、TEOT量0.7mlまでは、TEOT量に比例してシリカ繊維上に担持される酸化チタン量が増加する結果となった。また、アセトアルデヒドの分解速度定数は、酸化チタン担持量2mg程度のときに最大となり、それ以上の担持量では、担持量の増加による光触媒活性の増加(速度定数の増大)は認められなかった。
【実施例】
【0053】
【表1】
JP0005958809B2_000002t.gif
【実施例】
【0054】
2.4.2 光触媒活性に及ぼす窒素ガス流量の影響
プレヒーターを通じて反応器に注入する窒素ガスの量を変化させて、光触媒活性の変化を検討した。このとき、TEOT注入量は0.3ml、気化室の温度は180℃、恒温槽温度180℃、窒素ガス流量は50~200ml/minで調製した。表2に示すように、窒素ガス流速の上昇とともに酸化チタン担持量およびアセトアルデヒド分解速度定数は低下しており、TEOTを13BDと接触させるためには、キャリアーガスである窒素の流速は低い方が良いことが明らかとなった。
【実施例】
【0055】
【表2】
JP0005958809B2_000003t.gif
【実施例】
【0056】
2.4.3 光触媒活性に及ぼす恒温槽温度の影響
TEOT注入量0.3ml、気化室の温度180℃、窒素ガス流量は50ml/minで、恒温槽の温度を130~180℃で変化させて光触媒活性の変化を測定した。表3にその結果を示す。気化室で気化したTEOTは、窒素キャリアーガスとともに恒温槽中の反応容器へと導かれる。したがって、恒温槽の温度は反応容器の温度とほぼ等しい。恒温槽温度が150℃のとき、酸化チタンの担持量は3.4mgと最大となった。しかし光触媒活性は、180℃で調製した試料が最も高活性であった。
【実施例】
【0057】
【表3】
JP0005958809B2_000004t.gif
【実施例】
【0058】
2.4.4 光触媒活性に及ぼす気化室温度の影響
TEOT注入量は0.3ml、窒素ガス流量は50ml/minで、恒温槽温度180℃の条件で気化室温度を変化させて、光触媒活性の変化を測定した。表4に示すように、気化室温度が150℃以下では、シリカ繊維表面への酸化チタンの担持はほとんど認められず、光触媒活性も非常に低い結果となった。一方、150℃を超えた温度では、180℃が最も高い光触媒活性を示した。
【実施例】
【0059】
【表4】
JP0005958809B2_000005t.gif
【実施例】
【0060】
2.4.5 最適条件における光触媒の調製
2.4.1から2.4.4の結果より、図1のような光触媒フィルター作製装置を用いた場合、気化室温度180℃、恒温槽温度180℃、窒素ガス流量100ml/minが、最も高活性な光触媒を調製する条件であることが明らかとなった。そこで、かかる条件を用いて、TEOT注入量を変化させ、光触媒活性と担持量の関係を検討した。
【実施例】
【0061】
図8は、TEOT注入量と酸化チタン担持量の関係を示すグラフである。図示するように、およそTEOT量に比例して酸化チタン担持量が増加することが確認できた。
【実施例】
【0062】
図9は、酸化チタン担持量と光触媒活性(アセトアルデヒド分解速度定数)の関係を示すグラフである。図示するように、担持量6mg付近で最高の活性を示しており、以降は担持量が増加しても光触媒活性の増大は認められなかった。
【実施例】
【0063】
図10は、光触媒フィルターのシリカ繊維上の球状酸化チタン粒子のSEM像の写真であり、酸化チタン担持量は20mgである。図示するように、酸化チタン担持量が増加した場合、シリカ繊維の表面には球状粒子が多数確認された。これは、TEOTと13BDが、シリカ繊維表面ではなくシリカ繊維上方の空間で接触することによって球状粒子が生成し、シリカ繊維上に堆積したためと考えられる。
【実施例】
【0064】
したがって、担持量が6mg以下と非常に少ない場合には、シリカ繊維表面におけるTEOTと13BDの直接反応によって、図6abのXRD図にみられるようなジオレートを経由して、極めて高活性な酸化チタンが生成しているものと考えられる。また酸化チタン担持量が多い場合は、上述したように気相で反応した球状粒子が多数シリカ繊維上に堆積していると考えられる。球状粒子は、シリカ繊維上で直接生成した酸化チタンに比べて光触媒活性がやや低く、その結果、酸化チタン担持量が増大しているにも関わらず光触媒活性はさほど高くならなかったものと考えられる。
【実施例】
【0065】
図11は、さまざまな条件で調製した酸化チタンの光触媒活性を示すグラフである。CVD法により酸化チタンを担持した光触媒フィルター、SGF法により酸化チタンを担持した光触媒フィルター、SGP法による酸化チタン粉末を分散させたフィルター、およびDegussa(登録商標)製P-25を分散させたフィルターを試料とし、これらについて、酸化チタン担持量とアセトアルデヒド分解速度定数で示した光触媒活性の関係を示したものである。なお、フィルターには56.3cmのシリカ繊維フィルターを用いた。
【実施例】
【0066】
CVD法では、10mg以下という極めて少量の酸化チタンで分解速度定数0.1min-1付近の試料が得られており、CVD法による酸化チタンは極めて少量で高い光触媒活性を示すことが明らかとなった。また、CVD法と同様の原料を溶液中で混合してシリカ繊維フィルターに塗布するという手順を用いるSGF法も、CVD法と同様に非常に高い光触媒活性を示した。しかしながらSGF法では、10mg以下低担持量の場合、CVD法に比べると低い光触媒活性であった。これは、SGF法の原料溶液においては13BD中にチタンジオレートの結晶が分散した状態となっており、そのために、特に低担持量の場合にはシリカ繊維表面上での担持の均一性ないしは粒子の担持密度が低くなったことが考えられる。したがってSGF法を用いる場合は、CVD法以上の担持量とすることが望ましいと考えられた。
【実施例】
【0067】
一方、粉末試料をシリカ繊維フィルター上に分散させた試料では、P-25、SGP法ともに、酸化チタン担持量に比例して光触媒活性の向上が認められた。しかし、CVD法の試料のように分解速度定数が0.1min-1に達するには100mg程度の大量の酸化チタンの担持が必要である。これらと比較しても、CVD法で得られる酸化チタンは、極めて少量で高い光触媒活性を発揮することが確認された。
【実施例】
【0068】
2.4.6 光触媒フィルターの反射UV-Vis.スペクトル
CVD法で調製した酸化チタン担持量3.9mgの光触媒フィルターと、P-25について、反射UV-Vis.測定を行った。
図12は、それぞれの反射UV-Vis.スペクトルを示すグラフである。図示するように、CVD法の試料はわずかながら吸収端がP-25よりもブルーシフトしていた。しかし、75mm×75mmのフィルターに対して3.9mgという微量の担持にも関わらず、明確な紫外線吸収を示した。したがって、CVD法で調製した酸化チタンは紫外線照射によって十分励起され、光触媒機能性を発現可能なものであることが、確認できた。
【実施例】
【0069】
2.5 光触媒フィルターの圧力損失
表5に、さまざまな方法で調製した光触媒を担持したフィルターについて圧力損失を測定した結果を示した。ここで圧力損失は、酸化チタン担体であるシリカ繊維フィルターを基準に、酸化チタン担持による圧力損失の増加分をΔPとして表した。CVD法で調製した光触媒フィルターでは、酸化チタン担持量が少ないことから圧力損失の増加はわずかであった。また、大量担持が容易なSGF法においても、低担持量の場合には、ΔPは小さな値となった。一方、粉末試料を担持したP-25やSGP法では、酸化チタン担持による圧力損失の増加が顕著であった。以上の結果より、CVD法で調製した光触媒フィルターは極めて少量で高い光触媒活性を示すばかりでなく、酸化チタン担持によって圧力損失の上昇がほとんど起こらないことが明らかとなった。
【実施例】
【0070】
【表5】
JP0005958809B2_000006t.gif
【実施例】
【0071】
2.6 光触媒フィルターの連続反応
CVD法による光触媒フィルターは、低圧力損失、高光触媒活性を示すことが明らかになった。そこで、酸化チタン担持量2mgの試料を用いてアセトアルデヒドの連続分解試験を行った。測定は、1.2.1.1で示した装置内に直径45mmのフォルダを設置して光触媒フィルターを固定した。フォルダにエアーポンプを取り付け、通気速度5cm/sでデシケーター内の空気を循環流通させた。
【実施例】
【0072】
図13は、光触媒フィルターを用いたアセトアルデヒドの連続分解試験の結果を示すグラフであり、20ppmのアセトアルデヒドを分解する実験を4回繰り返した結果を示す。本分解試験において用いた光触媒フィルターの面積は15.9cmであることから、通常使用している光触媒フィルター(56.3cm)に比べておよそ1/4の紫外線照射面積である。そのため、アセトアルデヒド分解には長時間を要するものの、1ppm以下の低濃度までアセトアルデヒドを分解する能力をもつ。また、繰り返しの分解試験で、1回目の反応がやや高い分解速度を示したが、2回目以降もほぼ同じ分解速度を維持しており、被処理ガスをフィルターを通じて分解させる場合であっても十分に高い光触媒活性を維持できることが確認できた。
【実施例】
【0073】
2.7 光触媒活性に及ぼす溶媒の影響
表6に、光触媒フィルターの調製の際に使用した溶媒が及ぼす光触媒活性への影響について検討した結果を示す。光触媒の調製は、気化室温度180℃、恒温槽温度180℃、窒素ガス流量100ml/minで、それぞれの溶媒を75mm×75mmのシリカ繊維フィルターに含浸させ、TEOT注入量0.4mlとして調製した。なお、光触媒活性はアセトアルデヒド分解速度定数で示した。
【実施例】
【0074】
【表6】
JP0005958809B2_000007t.gif
【実施例】
【0075】
光触媒活性評価の結果、ジオール類の中でも、1,2-および1,3-位にOH基を有するジオールが高い活性を示した。特に1,3-プロパンジオールや1,3-ブタンジオールは高い光触媒活性を示した。光触媒活性の高いジオールとTEOTから生成するジオレートはいずれも、XRD測定において2θ=10°付近の低角度側に回折パターンを有しており、安定なチタンジオレートが生成している。これが500℃焼成の過程で急激に分解し、通常とは異なる化学状態の酸化チタンが生成したものと考えられた。
【実施例】
【0076】
一方、1,4-、あるいは1,5-位にOH基を有するジオールでは、OH基間の距離が大き過ぎて、TEOTのTiと安定な配位結合を形成することができないものと考えられた。また、アルコールにおいても、Tiに対して単座配位であることからジオレートの結合安定性が低く、ほとんど活性を示さなかった。水はTEOTの加水分解を進めるが、酸化チタンの担持と光触媒活性発現には寄与しないと認められた。また、溶媒を用いない系では、ほとんど活性を示さない酸化チタンが生成した。このように、光触媒フィルターの調製においてTEOTと接触させる溶媒の種類の選択は極めて重要であり、1,3-ブタンジオールや1,3-プロパンジオールが最も適していることが明らかとなった。
【実施例】
【0077】
2.8 酸化チタン担体の影響
本実施例において、CVD法による酸化チタンの合成には通常、ADVANTEC(登録商標)製QR-100シリカ繊維フィルターを基材として使用しているが、ここでは、さまざまな基材に対してCVD法により酸化チタンの担持を行い、光触媒活性の評価を行った。試料の調製条件は、気化室温度180℃、恒温槽温度180℃、窒素ガス流量100ml/minで、TEOTの量を変化させて評価を行った。基材には、三菱樹脂株式会社アルミナ繊維MAFTEC(登録商標)(厚さ6mm)、アルミナクロス(東京硝子器械 型式AP1111 厚さ0.68mm)、セラミックスペーパー(東京硝子器械 厚さ0.25mm)、およびADVANTEC(登録商標)製GA55ガラス濾紙を使用した。これらの基材を用いてCVD法で酸化チタンを担持した時の光触媒活性を表7に示す。いずれの基材も光触媒フィルターに使用可能であることが確認された。ホウケイ酸ガラス製のガラス濾紙は、熱処理によってナトリウム等が酸化チタン層にマイグレーションするため、光触媒活性が低下することが知られている。しかし、本発明のCVD法によれば、シリカ繊維フィルターを用いた場合と同様に高い光触媒活性を示した。また、その他の担体ではシリカ繊維フィルターやガラス濾紙を基材に用いた場合に比べて低い光触媒活性であった。
【実施例】
【0078】
【表7】
JP0005958809B2_000008t.gif
【実施例】
【0079】
<本発明における酸化物の担持量について>
上述のとおり本発明の酸化物担持体製造方法において、生成される酸化物の量は、担体の圧力損失増大がほとんど発生しない程度のごく微量としつつ、かつ十分に高い光触媒活性を得ることができる。
【実施例】
【0080】
上記実施例で用いたシリカ繊維フィルターのサイズは75mm×75mm×0.38mm(縦×横×厚さ)であり、これに酸化物(酸化チタン)が担持された状態の酸化物担持体全体の重量は、平均0.48g程度であった。図9にも示したとおり本実施例では、光触媒活性は、酸化物担持量およそ10mgをピークとして飽和している。つまり、本発明における最も望ましい担持量は10mg程度であり、これは重量比率では、酸化物担持体において約2wt%に相当する(根拠:0.01/0.48×100=2.08wt%)。また体積比率では、約5×10-3g/cmの担持量に相当する(根拠:0.01/(7.5×7.5×0.038)=4.68×10-3g/cm)。
【実施例】
【0081】
一方、特にCVD法では、光触媒活性の発現は1mg程度の担持量でも十分に認められている。5mg以上であれば、なお良好である。他方、圧力損失の増大をたとえば20Pa以下とするには、担持量20mg以下とすることが望ましく、さらには15mg以下とすることがより望ましい。これらの数値から、それぞれの重量比率、体積比率は次のようになる。
担持量1mgの場合
0.001/0.48×100=0.21wt%
0.001/(7.5×7.5×0.038)=4.68×10-4g/cm
担持量5mgの場合
0.005/0.48×100=1.05wt%
0.005/(7.5×7.5×0.038)=2.34×10-3g/cm
担持量15mgの場合
0.015/0.48×100=3.15wt%
0.015/(7.5×7.5×0.038)=7.02×10-3g/cm
担持量20mgの場合
0.02/0.48×100=4.16wt%
0.02/(7.5×7.5×0.038)=9.36×10-3g/cm
【実施例】
【0082】
以上のことから、本発明において推奨される酸化物担持量については、次のようにまとめられる。
A)重量比率
0.2wt%以上4.2wt%以下が望ましく、1.0wt%以上3.2wt%以下とすることがより望ましい。さらには、2wt%程度とすることがより望ましい。
B)体積比率
4.5×10-4g/cm以上9.5×10-3g/cm以下が望ましく、2.3×10-3g/cm以上7.0×10-3g/cm以下とすることがより望ましい。さらには、5×10-3g/cm程度とすることがより望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の酸化物担持体製造方法、酸化物担持体製造用装置、および光触媒フィルター製造方法によれば、大量の光触媒を用いることなく、極めて微量の酸化チタンによって、高い光触媒活性と低い圧力損失をともに兼ね備えた、画期的な光触媒フィルターを得ることができ、さらに、空気清浄機など光触媒装置の小型化にも有利である。また本発明の適用対象は光触媒だけではなく、簡便かつ安価な方法によって、しかもごく少量の原料金属化合物を有効に用いて、触媒や表面処理を初めとする広範な産業・製品分野における表面改質技術として利用することができる。したがって、当該分野および関連する全ての産業分野において、利用性が高い発明である。

【符号の説明】
【0084】
1…ジオール
2…金属アルコキシド
3…酸化物前駆体
4…担体
5…酸化物
9…酸化物前駆体担持体
10…酸化物担持体
S1…前駆体形成過程
S2…熱処理過程
20…気化室
30…送気管
50…恒温槽
40…反応容器
100…酸化物担持体製造用装置





図面
【図P1】
0
【図P2】
1
【図5】
2
【図6ab】
3
【図7】
4
【図8】
5
【図9】
6
【図11】
7
【図12】
8
【図1】
9
【図2】
10
【図3】
11
【図4a】
12
【図4bc】
13
【図10】
14
【図13】
15