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明細書 :ヌクレオチド除去修復阻害剤、抗腫瘍剤および紫外線治療の増強剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6004422号 (P6004422)
公開番号 特開2013-221018 (P2013-221018A)
登録日 平成28年9月16日(2016.9.16)
発行日 平成28年10月5日(2016.10.5)
公開日 平成25年10月28日(2013.10.28)
発明の名称または考案の名称 ヌクレオチド除去修復阻害剤、抗腫瘍剤および紫外線治療の増強剤
国際特許分類 A61K  31/5365      (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI A61K 31/5365
A61P 43/00 111
A61P 43/00 121
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 22
全頁数 15
出願番号 特願2012-094534 (P2012-094534)
出願日 平成24年4月18日(2012.4.18)
審査請求日 平成27年4月16日(2015.4.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
発明者または考案者 【氏名】松永 司
【氏名】西永 真理
【氏名】斉藤 臣雄
【氏名】長田 裕之
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査官 【審査官】長岡 真
参考文献・文献 米国特許第03142676(US,A)
調査した分野 A61K 31/5365
A61P 35/00
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1)
【化1】
JP0006004422B2_000008t.gif
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、~Cアルキル基もしくは水素原子を示し、互いに結合して環を形成してもよい(ただし、RおよびRの両方が水素原子であることは除く)。Rは、~Cアルコキシ基を示す。)
で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を含有する、ヌクレオチド除去修復阻害剤。

【請求項2】
およびRは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基または水素原子である(ただし、RおよびRの両方が水素原子であることは除く)請求項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。

【請求項3】
およびRは、互いに結合して5~7員環を形成している請求項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。

【請求項4】
は、炭素数1~3のアルコキシ基である、請求項1~3のいずれか一に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。

【請求項5】
は、メトキシ基である、請求項4に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。

【請求項6】
はメチル基、Rはメチル基及びRはメトキシ基である請求項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。

【請求項7】
はエチル基、Rは水素原子及びRはメトキシ基である請求項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。

【請求項8】
はメチル基、Rは水素原子及びRはメトキシ基である請求項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。

【請求項9】
はプロピル基、Rは水素原子及びRはメトキシ基である請求項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。

【請求項10】
及びRは互いに結合して6員環を形成し、Rはメトキシ基である請求項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。

【請求項11】
腫瘍の治療用である、請求項1~10のいずれか一に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。

【請求項12】
一般式(1)
【化2】
JP0006004422B2_000009t.gif
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、~Cアルキル基もしくは水素原子を示し、互いに結合して環を形成してもよい(ただし、RおよびRの両方が水素原子であることは除く)。Rは、~Cアルコキシ基を示す。)
で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分とする、抗腫瘍剤の増強剤または紫外線治療の増強剤。

【請求項13】
およびRは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基または水素原子である(ただし、RおよびRの両方が水素原子であることは除く)請求項12に記載の増強剤。

【請求項14】
およびRは、互いに結合して5~7員環を形成している請求項12に記載の増強剤。

【請求項15】
は、炭素数1~3のアルコキシ基である、請求項12~14のいずれか一に記載の増強剤。

【請求項16】
は、メトキシ基である、請求項15に記載の増強剤。

【請求項17】
はメチル基、Rはメチル基及びRはメトキシ基である請求項12に記載の増強剤。

【請求項18】
はエチル基、Rは水素原子及びRはメトキシ基である請求項12に記載の増強剤。

【請求項19】
はメチル基、Rは水素原子及びRはメトキシ基である請求項12に記載の増強剤。

【請求項20】
はプロピル基、Rは水素原子及びRはメトキシ基である請求項12に記載の増強剤。

【請求項21】
及びRは互いに結合して6員環を形成し、Rはメトキシ基である請求項12に記載の増強剤。

【請求項22】
抗腫瘍剤の投与前または紫外線治療前に、該化合物が投与されるように用いられることを特徴とする、請求項12~21のいずれか一に記載の増強剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオチド除去修復阻害剤、ならびに、抗腫瘍剤の増強剤及び紫外線治療の増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヌクレオチド除去修復(NER)は、太陽光紫外線で生じるシクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)や6-4光産物(6-4PP)などの二量体型ピリミジン損傷や、アフラトキシンB1、ベンゾ[a]ピレン、アセチルアミノフルオレン、シスプラチンなど多様な化学物質で生じる塩基付加体を取り除く普遍的なDNA修復機構である。この修復反応は、DNA損傷の認識、損傷部位の二本鎖巻き戻し、DNA損傷の両側切断、一本鎖ギャップのDNA合成、親鎖との連結からなり、試験管内の再構成反応系においても、1個のDNA損傷の修復に約30種類ものポリペプチドが必要となる複雑な反応である。また、細胞内ではクロマチンリモデリング因子やユビキチンE3リガーゼなどさらに多くの因子が関与することが知られている。この修復機構に先天的異常があると高発がん性の劣性遺伝疾患・色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum)を発症し、健常人の数千倍もの頻度で太陽露光部に皮膚癌を生じ、内部の癌も数倍から数十倍頻度が高い。
【0003】
紫外線損傷に特異的なモノクローナル抗体を用いた多くの免疫測定法が開発され、細胞ヌクレオチド除去修復活性の分析のために広く使われている。本発明者等は、近赤外蛍光画像処理システムと連動する損傷特異抗体を用いた間接的免疫蛍光染色に基づく、マイクロプレートフォーマット細胞ベース免疫測定法(microplate-formatted cell-based immunoassay for NER of UV photoproducts、M-CINUP)を開発した。この免疫測定法は、少量の細胞であっても迅速で定量分析可能なNER活性測定方法である(特許文献1)。
【0004】
抗腫瘍剤の種類やその作用機序は数多く知られており、DNAのアルキル化、架橋化等もその一つである。シスプラチンは広く用いられている抗腫瘍剤であり、90%以上のDNA鎖内架橋、5%以下のDNA鎖間架橋からなる塩基付加体を形成する(非特許文献1、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2010-164337号公報
【0006】

【非特許文献1】Jung, Y. and S. J. Lippard(2007) Chem. Rev. 107, 1387-1407
【非特許文献2】Koberle, B., M. T. Tomicic, S. Usanova, B. Kaina (2010) Biochim. Biophys. Acta 1806, 172-182
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
新規ヌクレオチド除去修復阻害剤、新規抗腫瘍剤の増強剤、および新規紫外線治療の増強剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下からなる。
1.一般式(1)
【化1】
JP0006004422B2_000002t.gif
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいC~Cアルキル基もしくは水素原子を示し、互いに結合して環を形成してもよい。Rは、置換基を有していてもよいC~Cアルコキシ基を示す。)
で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を含有する、ヌクレオチド除去修復阻害剤。
2.RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基または水素原子である前項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。
3.RおよびRは、互いに結合して5~7員環を形成している前項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。
4.Rは、炭素数1~3のアルコキシ基である、前項1~3のいずれか一に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。
5.Rは、メトキシ基である、前項4に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。
6.Rはメチル基、Rはメチル基及びRはメトキシ基である前項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。
7.Rはエチル基、Rは水素原子及びRはメトキシ基である前項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。
8.Rはメチル基、Rは水素原子及びRはメトキシ基である前項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。
9.Rはプロピル基、Rは水素原子及びRはメトキシ基である前項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。
10.R及びRは互いに結合して6員環を形成し、Rはメトキシ基である前項1に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。
11.腫瘍の治療用である、前項1~10のいずれか一に記載のヌクレオチド除去修復阻害剤。
12.一般式(1)
【化2】
JP0006004422B2_000003t.gif
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいC~Cアルキル基もしくは水素原子を示し、互いに結合して環を形成してもよい。Rは、置換基を有していてもよいC~Cアルコキシ基を示す。)
で表される化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分とする、抗腫瘍剤または紫外線治療の増強剤。
13.RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基または水素原子である前項12に記載の増強剤。
14.RおよびRは、互いに結合して5~7員環を形成している前項12に記載の増強剤。
15.Rは、炭素数1~3のアルコキシ基である、前項12~14のいずれか一に記載の増強剤。
16.Rは、メトキシ基である、前項15に記載の増強剤。
17.Rはメチル基、Rはメチル基及びRはメトキシ基である前項12に記載の増強剤。
18.Rはエチル基、Rは水素原子及びRはメトキシ基である前項12に記載の増強剤。
19.Rはメチル基、Rは水素原子及びRはメトキシ基である前項12に記載の増強剤。
20.Rはプロピル基、Rは水素原子及びRはメトキシ基である前項12に記載の増強剤。
21.R及びRは互いに結合して6員環を形成し、Rはメトキシ基である前項12に記載の増強剤。
22.抗腫瘍剤の投与前または紫外線治療前に、該化合物が投与されるように用いられることを特徴とする、前項12~21のいずれか一に記載の増強剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明のヌクレオチド除去修復剤は、ヌクレオチド除去修復効果に優れ、単独で腫瘍の治療剤として用いることができる。さらに、他の抗腫瘍剤の抗腫瘍効果を増強することができる。また、皮膚の腫瘍の紫外線治療の効果を増強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】化合物ライブラリーからヌクレオチド除去修復阻害活性を有する物質をスクリーニングするシステムの説明図である。
【図2】NPD4005の6-4PP修復阻害効果を表すグラフである。96ウェルマイクロプレート中のHeLa細胞を50μg/ml(◆)もしくはl00μg/ml(■)のNPD4005、またはDMSO(□)で前処理し、6-4PPの修復動態を分析した。
【図3】NPD13405の胃癌細胞における6-4PP修復動態と細胞毒性を表すグラフである。(A)KKLS細胞をNPD13405(50μg/ml)(■)またはDMSO(□)により12時間前処理し、10J/mのUV-Cを照射し、6—4PP修復動態をELISAにより分析した。各値は3つの独立した実験の平均値であり、エラーバーは標準偏差を示す。(B)KKLS細胞を60mmプレートに播種(200細胞/プレート)し、6時間培養後、種々の濃度のNPD13405を添加した。7~8日間培養した後固定しギムザ染色液で染色してコロニー数を計測した。各値は3つの独立した実験の平均値であり、エラーバーは標準偏差を示す。
【図4】NPD13405前処理によるUVとシスプラチンの細胞毒性効果増強作用を表すグラフである。KKLS細胞をNPD13405(10μg/ml)(■)またはDMSO(□)で12時間前処理し、60mmプレートに播種した。6時間培養後、種々の線量のUV-Cを照射し(A)、または、種々の濃度のシスプラチンで24時間処理した(B)。培地を交換後さらに7~8日間培養してコロニー数を計測した。各値は3つの独立した実験の平均値であり、エラーバーは標準偏差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ヌクレオチド除去修復は普遍的なDNA修復機構であり、1個のDNA損傷の修復に約30種類ものポリペプチドが必要となる複雑な反応である。また、細胞内ではクロマチンリモデリング因子やユビキチンE3リガーゼなどさらに多くの因子が関与することが知られている。本発明における、ヌクレオチド除去修復阻害剤(NER阻害剤)は、NER機構そのものか、その調節機構を直接的あるいは間接的に阻害してDNA損傷の修復を阻害するものである。

【0012】
本発明のヌクレオチド除去修復阻害剤の有効成分、ならびに本発明の抗腫瘍剤または紫外線治療の増強剤の有効成分は、下記の一般式(1)で表される化合物である。

【0013】
【化3】
JP0006004422B2_000004t.gif

【0014】
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいC~Cアルキル基もしくは水素原子を示し、互いに結合して環を形成してもよい。Rは、置換基を有していてもよいC~Cアルコキシ基を示す。)

【0015】
本明細書において、「置換基を有していてもよいC~Cアルキル基」の「C~Cアルキル基」とは、直鎖または分枝鎖の炭素数1~3のアルキル基である。置換基は限定されるものではないが、1または複数個のハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基等が挙げられる。Rとしてはメチル基、エチル基またはプロピル基が好ましい。Rとしては好ましくはメチル基または水素原子である。好ましくは、RおよびRのいずれかが水素であるときは、他方はアルキル基である。

【0016】
本明細書において、「互いに結合して環を形成してもよい」とは、RとRの炭素原子が互いに結合して環を形成してもよいという意味であり、5~8員環の形成が挙げられる。5~7員環が好ましく6員環がより好ましい。これら環は置換基を有していてもよく、置換基は限定されるものではないが、1または複数個のハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基等が挙げられる。

【0017】
本明細書において、「置換基を有していてもよいC~Cアルコキシ基」の「C~Cアルコキシ基」とは、直鎖または分枝鎖の炭素数1~6のアルコキシ基である。置換基は限定されるものではないが、1または複数個のハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基等が挙げられる。Rとしては炭素数1~3のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは、メトキシ基である。

【0018】
さらに一般式(1)の化合物は次の下記群から選ばれる化合物であることが好ましい。NPD4005、P2000N-37924およびNPD13405がより好ましく、NPD13405が最も好ましい。

【0019】
【化4】
JP0006004422B2_000005t.gif

【0020】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、所望により医薬的に許容される塩とすることができる。その医薬的に許容される塩とは、塩を形成し得るに十分な塩基性度または酸性度を有する場合の医薬的に許容される塩を意味し、例えば無機酸又は有機酸との酸付加塩が挙げられる。無機酸との塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩又はリン酸塩等が挙げられる。有機酸との塩としては、例えば、ぎ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩又はベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。また、式(1)で表される化合物にカルボキシル基等の酸性官能基が存在する場合は、塩基との塩とすることもできる。塩基との塩としては、例えばアルギニン、リジン又はトリエチルアンモニウム等の有機塩基との塩、アルカリ金属(ナトリウム又はカリウム等)又はアルカリ土類金属(カルシウム又はバリウム等)等の無機塩基との塩、又はアンモニウム塩等が挙げられる。式(1)で表される化合物、又はその医薬的に許容される塩は、それらの水和物等の溶媒和物の形態をとってもよい。

【0021】
一般式(1)で表される代表的な化合物の合成方法を以下に示す。下記化合物の合成方法から得られた化合物を、自体公知の方法により、置換基を変更することにより、一般式(1)で表される化合物を合成することができる。また、植物など天然物質の誘導体{参照:理化学研究所 ケミカルバイオロジー研究領域 天然化合物バンク(RIKEN NPDepo)の化合物データベース(http://npd.riken.jp/npedia/)}から合成してもよい。

【0022】
【化5】
JP0006004422B2_000006t.gif

【0023】
本発明のヌクレオチド除去修復阻害剤の有効成分である一般式(1)で表される化合物は、ヌクレオチド除去修復阻害活性を有する。ヌクレオチド除去修復の阻害活性は、当業者に通常用いられる方法(例えば、免疫学的手法等)を用いて検出することができる。免疫学的手法を用いて調べる方法としては、例えば、ELISA(enzyme-linked immune sorbent assay)(Mutat.Res.235,187-194)、ISBA(immunoslot blot assay)(J.Photochem.Photobiol.B24,25-31)、免疫蛍光染色法(Mutat.Res.236,99-105)が挙げられる。本発明者等が開発したM-CINUP(microplate-formatted cell-based immunoassay for NER of UV photoproducts)も用いることができる。

【0024】
本発明に係るヌクレオチド除去修復阻害剤は、腫瘍の治療に使用することができる。有効成分として一般式(1)で表される化合物を単独で腫瘍の治療に使用することができるヌクレオチド除去修復阻害剤である。また、他の抗腫瘍剤と混合または併用して腫瘍の治療に使用することができるヌクレオチド除去修復阻害剤である。一般式(1)で表される化合物を有効成分とする抗腫瘍剤も本発明に包含される。

【0025】
抗腫瘍活性は、当業者に通常用いられる増殖阻害試験法を用いて調べることができる。細胞の増殖阻害活性は、試験化合物の存在下または非存在下における細胞(例えば、腫瘍細胞)の増殖の程度を比較することによって実施することができる。増殖の程度は、例えば、生細胞を測定する試験系を用いて調べることができる。生細胞の測定方法としては、例えば、[H]-チミジンの取り込み試験、BrdU法またはMTTアッセイまたはコロニー形成試験等が挙げられる。

【0026】
また、in vivoでの抗腫瘍活性は、当業者に通常用いられる抗腫瘍試験法を用いて調べることができる。例えば、マウス、ラット等に各種腫瘍細胞を移植し、移植細胞の生着が確認された後に、対象化合物を経口投与、静脈内投与等し、数日~数週間後に、薬剤無投与群における腫瘍増殖と化合物投与群における腫瘍増殖とを比較することによりin vivoでの抗腫瘍活性を確認することができる。

【0027】
一般式(1)で表される化合物は、抗腫瘍剤の作用を増強することができる。抗腫瘍剤の作用増強は、抗腫瘍剤の抗腫瘍活性を増強する作用であり、この作用増強作用には、腫瘍細胞の抗腫瘍剤感受性を増強する作用、抗腫瘍剤の投与量を低減する作用、および抗腫瘍剤の副作用軽減作用も含まれる。

【0028】
抗腫瘍剤の作用増強作用は、当業者に通常用いられる方法を用いて検出することができる。試験化合物の存在下または非存在下において抗腫瘍剤と腫瘍細胞を接触させ、腫瘍細胞の増殖の程度を比較することによって検出することができる。増殖の程度は、例えば、生細胞を測定する試験系を用いて調べることができる。生細胞の測定方法としては、例えば、[H]-チミジンの取り込み試験、BrdU法またはMTTアッセイまたはコロニー形成試験等が挙げられる。例えば、本発明に係る化合物で腫瘍細胞を前処理した後に、抗腫瘍剤で処理して腫瘍細胞の増殖の程度を測定する方法が挙げられる。

【0029】
また、in vivoでの抗腫瘍剤の作用増強効果は、当業者に通常用いられる方法を用いて調べることができる。例えば、マウス、ラット等に各種腫瘍細胞を移植し、移植細胞の生着が確認された後に、対象化合物と抗腫瘍剤を投与(経口投与、静脈内投与等)し、数日~数週間後に、化合物無投与群における腫瘍増殖と化合物投与群における腫瘍増殖とを比較することによりin vivoでの抗腫瘍剤の作用増強作用を確認することができる。対象化合物と抗腫瘍剤の投与は、同時または異なる時間に投与することが可能であり、投与経路も同一であっても異なっていてもよい。

【0030】
本発明の抗腫瘍剤の増強剤は、DNAに損傷を作るタイプの抗腫瘍剤の作用を増強することができる。特に大きな塩基付加体を誘発する抗腫瘍剤の作用を増強することができる。例えば、アルキル化剤、抗がん性抗生物質、プラチナ製剤があげられる。具体的には、アルキル化剤であるイホスファミド、シクロホスファミド、ダカルバジン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、メルファラン等、プラチナ製剤であるオキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン等が例示される。

【0031】
本発明の抗腫瘍剤の増強剤は、抗腫瘍剤の投与と同時、抗腫瘍剤の投与の前、または後に投与することができる。抗腫瘍剤と混合して一つの製剤とすることもできる。好ましくは、抗腫瘍剤の投与前に投与される。より好ましくは、抗腫瘍剤投与の1~24時間前、さらに好ましくは、2~18時間前に投与される。

【0032】
本発明の抗腫瘍剤の増強剤はさらに他の抗腫瘍剤と併用して用いてもよい。

【0033】
本発明のヌクレオチド除去修復阻害剤および抗腫瘍剤の増強剤は、腫瘍または癌、例えば、肺癌、消化器癌、卵巣癌、子宮癌、乳癌、肝癌、頭頚部癌、血液癌、腎癌、睾丸腫瘍、前立腺癌、大腸癌、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、および肉腫の治療に使用することができるがこれらの癌に限定されない。

【0034】
一般式(1)で表される化合物は、紫外線治療の作用を増強することができる。特に皮膚の腫瘍に対する紫外線治療の作用を増強することができる。紫外線治療はUB-BやUVレーザーによる治療が例示される。皮膚の腫瘍の紫外線治療の作用増強作用には、腫瘍細胞の紫外線感受性を増強する作用、紫外線照射量を低減する作用、および紫外線治療の副作用軽減作用も含まれる。

【0035】
紫外線治療の作用増強作用は、当業者に通常用いられる方法を用いて検出することができる。試験化合物の存在下または非存在下において紫外線照射した腫瘍細胞の増殖の程度を比較することによって検出することができる。増殖の程度は、例えば、生細胞を測定する試験系を用いて調べることができる。生細胞の測定方法としては、例えば、[H]-チミジンの取り込み試験、BrdU法またはMTTアッセイまたはコロニー形成試験等が挙げられる。例えば、本発明に係る化合物で腫瘍細胞を前処理した後に、紫外線を照射して腫瘍細胞の増殖の程度を測定する方法が挙げられる。

【0036】
また、in vivoでの紫外線治療の作用増強効果は、当業者に通常用いられる方法を用いて調べることができる。例えば、マウス、ラット等に皮膚腫瘍細胞を移植し、移植細胞の生着が確認された後に、対象化合物を投与または塗布し、紫外線を照射し、数日~数週間後に、化合物無投与群における腫瘍増殖と化合物投与群における腫瘍増殖とを比較することによりin vivoでの作用増強作用を確認することができる。対象化合物の投与と紫外線照射は、同時でもよいが、異なる時間に行ってもよい。

【0037】
本発明の紫外線治療の増強剤は、紫外線照射と同時、紫外線照射前、または紫外線照射後に投与することができる。好ましくは、紫外線照射の前に投与される。より好ましくは、紫外線照射の1~24時間前、さらに好ましくは、2~18時間前に投与される。

【0038】
本発明の紫外線治療の増強剤はさらに抗腫瘍剤と併用して用いてもよい。

【0039】
(投与経路)
本発明のヌクレオチド除去修復阻害剤、ならびに抗腫瘍剤または紫外線治療のための増強剤の投与経路は限定されない。例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経口、経皮、経粘膜が挙げられる。皮膚腫瘍の場合は、経皮、直接塗布等も挙げられる。投与経路は抗腫瘍剤と同一であっても異なっていてもよい。

【0040】
(製剤)
本発明のヌクレオチド除去修復阻害剤ならびに抗腫瘍剤または紫外線治療の増強剤は、一般式(1)で表される化合物と薬学的に許容し得る担体を含み製剤化することができる。薬学的に許容し得る担体とは、例えば、賦形剤、希釈剤、添加剤、溶媒等である。

【0041】
製剤の調製方法としては投与経路に応じ適当な製剤(例えば、経口剤または注射剤)を選択し、通常用いられている各種製剤の調製法にて調製できる。経口剤としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、または油性ないし水性の懸濁液等を例示できる。経口投与の場合では遊離体のままでも、塩の型のいずれでもよい。水性製剤は薬学的に許容される酸と酸付加物を形成させるか、ナトリウム等のアルカリ金属塩とすることで調製できる。注射剤の場合は製剤中に安定剤、防腐剤または溶解補助剤等を使用することもできる。液状製剤としてよく、また、容器に収納後凍結乾燥等によって固形製剤として用時調製の製剤としてもよい。また、一回投与量を一の容器に収納してもよく、また複数回投与量を一の容器に収納してもよい。

【0042】
固形製剤としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、またはトローチ剤が挙げられる。これらの固形製剤は、本発明の化合物とともに薬学的に許容し得る添加物を含んでもよい。添加物としては、例えば、充填剤類、増量剤類、結合剤類、崩壊剤類、溶解促進剤類、湿潤剤類または滑沢剤類が挙げられ、これらを必要に応じて選択して混合し、製剤化することができる。

【0043】
液体製剤としては、例えば、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、または懸濁剤が挙げられる。これらの液体製剤は、本発明の化合物とともに薬学的に許容し得る添加物を含んでもよい。添加物としては、例えば、懸濁化剤または乳化剤が挙げられ、これらを必要に応じて選択して混合し、製剤化することができる。

【0044】
(投与方法)
本発明の化合物は、哺乳類、特にヒトの腫瘍の治療に用いることができる。投与量および投与間隔は、疾患の場所、患者の身長、体重、性別または病歴によって、医師の判断により適宜選択され得る。本発明に係る化合物をヒトに投与する場合、例えば、投与量の範囲として、1日当たり、約0.01μg/kg体重~約5mg/kg体重、好ましくは、約0.1μg/kg体重~約1mg/kg体重が挙げられる。ヒトに投与する場合、1日あたり1回、あるいは2回から4回、2~3日に1回、1週間に1回、数週間に1回など、医師等の判断により適当な間隔で繰り返すのが好ましい。

【0045】
以下に示す実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
理化学研究所化合物バンクNPDepoからパイロットライブラリー(376化合物を含有する化合物ライブラリー)を入手し、ヌクレオチド除去修復阻害活性を有する化合物のスクリーニングに供した。
【実施例1】
【0047】
96ウェルマイクロプレート3セットの各ウェルにHeLa細胞3×10を接種し2日培養した後、各化合物(4μg/mlまたは40μg/ml)で2h前処理した。UV-Bを照射し、直後に、または、各化合物の存在下1時間または2時間の修復期間後に細胞を固定した。6-4PPの修復動態をM-CINUPにより分析した(図1)。対照にはDMSOで処理した細胞を用いた。M-CINUPは本発明者等が開発したマイクロプレートフォーマット細胞ベース免疫測定法である(参照:特開2010-164337)。
【実施例1】
【0048】
上記スクリーニングにより選択された21化合物について、各化合物の前処理条件を高濃度(10μg/mlまたは50μg/ml)、長時間(12h)にした以外は前記と同様に再スクリーニングを行ったところ、顕著に高い阻害活性を示す化合物NPD4005を見出した。さらに、HeLa細胞をNPD4005(50μg/mlまたはl00μg/ml)で12h前処理して、ヌクレオチド除去修復阻害活性について分析し、強い阻害活性を確認した(図2)。
【実施例1】
【0049】
NPD4005の誘導体を理化学研究所NPDepoから80化合物入手し、さらに、9化合物をナミキ商事を介して海外のサプライヤー(Pharmeks、Princeton、Vitas-Mの3社)から購入した。
【実施例1】
【0050】
入手した化合物をさらにスクリーニングしたところ、NPD13405、STK887670、NPD13403及びP2000N-37924が強い阻害活性を示した。特に、NPD13405およびP2000N-37924は、NPD4005、STK887670、およびNPD13403より高い活性を示した。阻害活性の高い順は、NPD13405、P2000N-37924、NPD4005、STK887670、NPD13403であった。各々の化合物の構造を以下に示す。これら化合物は類似の構造を有しており、ピラノンの置換基がそれぞれ、エチル、ジメチル、メチル、テトラメチレンまたはプロピルであった。水素原子、ブチル基を有する化合物は阻害活性を有していなかった。
【実施例1】
【0051】
【化6】
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【実施例1】
【0052】
(試験例1)腫瘍細胞内のヌクレオチド除去修復阻害活性
HeLa細胞で最も高い活性を示したNPD13405の胃癌細胞株(KKLS)内のヌクレオチド除去修復阻害活性について検討した。KKLSは金沢大学がん進展制御研究所から入手した。KKLSは、10%熱不活化ウシ胎児血清および50μg/mlゲンタマイシン添加RPMI1640培地で37度、5%COインキュベーター内で培養した。KKLS細胞を60mmプレートで培養し、50μg/mlの濃度のNPD13405により12時間前処理し、10J/mのUV-C(東芝GL-10)を照射した。1時間または2時間培養後にゲノムDNAを抽出(DNeasyキット(Qiagen))し、6—4PPの量を64M-5抗体を用いてELISAにより測定した(Photochem. Photobiol. 54, 225-232; J. Cell Sci. 120, 1104-1112)。NPD13405前処理によって6—4PP修復の著しい阻害効果が観察され(図3A)、これによりKKLS細胞内でのヌクレオチド除去修復に対するNPD13405の強い阻害作用が確認された。
【実施例1】
【0053】
(試験例2)抗腫瘍活性
コロニー形成試験によって、胃癌細胞株KKLS細胞に対するNPD13405の細胞障害活性を検討した。KKLS細胞を60mmプレートに200細胞を播種し、6時間培養後、種々の濃度のNPD13405を添加した。37℃、5%COインキュベーター内で7~8日間培養した後、99%エタノールで細胞を固定しギムザ染色液で染色してコロニー数を計測した。NPD13405のLD50は約10μg/mlであり、17.5μg/mlを超えるとコロニーを観察することはできなかった(図3B)。NPD13405は抗腫瘍活性を有することが示された。
【実施例1】
【0054】
(試験例3)紫外線作用増強効果
KKLS細胞を10μg/mlのNPD13405で12時間前処理し、60mmプレートに播種した(200細胞/プレート)。6時間培養後、種々の線量のUV-Cを照射し、培地を交換後さらに7~8日培養してコロニーを形成させた。試験例2と同様に固定および染色してコロニー数を測定した。UV-C照射に対する感受性はNPD13405によって顕著に増強され(図4A)、D37(生存率を37%まで減少させるのに必要な放射線量)は、NPD13405存在下では、4.5J/m、非存在下では8.5J/mであった。
【実施例1】
【0055】
(試験例4)抗腫瘍剤の作用増強効果
NPD13405のシスプラチン感受性増強作用を分析した。KKLS細胞を10μg/mlのNPD13405で12時間前処理し、60mmプレートに播種した(200細胞/プレート)。6時間培養後、NPD13405(10μg/ml)存在下、種々の濃度のシスプラチンで24時間処理した。培地を交換後さらに7~8日培養してコロニーを形成させた。試験例2と同様に固定および染色してコロニー数を計測した。NPD13405によってシスプラチン感受性は増強され、抗腫瘍作用が増強された(図4B)。
つ。
【産業上の利用可能性】
【0056】
一般式(1)で表される化合物は、ヌクレオチド除去修復阻害活性を有することより医薬に適応できる。特に腫瘍の治療に適用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3