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明細書 :立体規則性の高い多官能性ポリマー及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5496114号 (P5496114)
登録日 平成26年3月14日(2014.3.14)
発行日 平成26年5月21日(2014.5.21)
発明の名称または考案の名称 立体規則性の高い多官能性ポリマー及びその製造方法
国際特許分類 C08F  24/00        (2006.01)
C08F   8/12        (2006.01)
C08F   8/30        (2006.01)
C08F   8/02        (2006.01)
C08F   8/04        (2006.01)
C07D 317/34        (2006.01)
FI C08F 24/00
C08F 8/12
C08F 8/30
C08F 8/02
C08F 8/04
C07D 317/34
請求項の数または発明の数 8
全頁数 28
出願番号 特願2010-547548 (P2010-547548)
出願日 平成22年1月25日(2010.1.25)
国際出願番号 PCT/JP2010/051301
国際公開番号 WO2010/084997
国際公開日 平成22年7月29日(2010.7.29)
優先権出願番号 2009014816
優先日 平成21年1月26日(2009.1.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年10月30日(2012.10.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
発明者または考案者 【氏名】田中 均
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】岩田 行剛
参考文献・文献 特開平07-069960(JP,A)
特開平07-070106(JP,A)
国際公開第2003/035637(WO,A1)
調査した分野 C08F 24/00
C07D 317/34
C08F 8/00-8/50
特許請求の範囲 【請求項1】
分子内に、一般式(2):
【化1】
JP0005496114B2_000024t.gif
(式中、R及びRは異なって、水素原子、直鎖又は分岐のC1~10のアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示す。*は不斉炭素を示す。)
で表される繰り返し単位を有するポリマーであり、該ポリマー中のメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)が60:40~100:0であるポリマー。
【請求項2】
一般式(1):
【化2】
JP0005496114B2_000025t.gif
(式中、R、R及び*は前記に同じ。)
で表され、R体(S体):S体(R体)=70:30~100:0である化合物を含むモノマーをラジカル重合することを特徴とする、請求項1に記載のポリマーの製造方法。
【請求項3】
分子内に、一般式(3):
【化3】
JP0005496114B2_000026t.gif
(式中、Yは水素原子又はカウンターカチオンを示す。)
で表される繰り返し単位を有するポリマーであり、該ポリマー中のメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)が60:40~100:0であるポリマーの製造方法であって、一般式(1):
【化4】
JP0005496114B2_000027t.gif
(式中、R及びRは異なって、水素原子、直鎖又は分岐のC1~10のアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示す。*は不斉炭素を示す。)
で表され、R体(S体):S体(R体)=70:30~100:0である化合物を含むモノマーをラジカル重合して、請求項1に記載されるポリマーを製造し、次いで該ポリマーを加水分解することを特徴とする製造方法。
【請求項4】
分子内に、一般式(3):
【化5】
JP0005496114B2_000028t.gif
(式中、Yは水素原子又はカウンターカチオンを示す。)
で表される繰り返し単位を有するポリマーであり、該ポリマー中のメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)が60:40~100:0であるポリマーの製造方法であって、請求項1に記載されるポリマーを加水分解することを特徴とする製造方法。
【請求項5】
分子内に、一般式(4):
【化6】
JP0005496114B2_000029t.gif
(式中、R及びRは同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を示し、或いはR及びRは互いに結合して隣接する窒素(N)とともに環を形成してもよい。)
で表される繰り返し単位を有するポリマーであり、該ポリマー中のメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)が60:40~100:0であるポリマーの製造方法であって、請求項1に記載されるポリマーに、一般式(5):
HNR (5)
(式中、R及びRは前記に同じ。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項6】
分子内に、一般式(6):
【化7】
JP0005496114B2_000030t.gif
(式中、R及びRは異なって、水素原子、直鎖又は分岐のC1~10のアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示す。Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を示す。Yは水素原子又はカウンターカチオンを示す。)
で表される繰り返し単位を有するポリマーであり、該ポリマー中のメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)が60:40~100:0であるポリマーの製造方法であって、請求項1に記載されるポリマーに、一般式(7):
-M (7)
(式中、Mは金属原子を示し、Rは前記に同じ。)
で表される結合を有する化合物を反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項7】
分子内に、一般式(8):
【化8】
JP0005496114B2_000031t.gif
(式中、R及びRは異なって、水素原子、直鎖又は分岐のC1~10のアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示す。*は不斉炭素を示す。)
で表される繰り返し単位を有するポリマーであって、該ポリマー中のメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)が60:40~100:0であるポリマーの製造方法であって、請求項1に記載されるポリマーを還元することを特徴とする製造方法。
【請求項8】
一般式(1c):
【化9】
JP0005496114B2_000032t.gif
(式中、R11はエチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基を示し、*は不斉炭素を示す。)
で表される化合物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、立体規則性の高い多官能性ポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニルモノマーのラジカル重合では、立体規則性ポリマー、特にアイソタクチックポリマーを得ることは一般に困難である。これまで、唯一、嵩高いエステル置換基を有するメタクリレートおよびメタクリルアミドポリマーの数種がアイソタクチック構造をとることが報告されているが(非特許文献1)、該ポリマーは製造が難しく数十度の熱でも分解するなど不安定である。また、これらポリマーは、分子内に官能基としてエステル基あるいはアミド基の1種類を有するのみであり、多官能化されたポリマーの製造は困難である。
また、非特許文献2には、モノマー構成単位に水酸基とカルボキシル基を有する二官能性ポリマーの製造方法が記載されている。しかし、得られる二官能性ポリマーは、立体規則性、特に高いアイソタクチシティを有するポリマーではない。しかも、アタクチック構造乃至シンジオタクチック構造に由来する分子内ラクトンが多数形成されており、水酸基とカルボキシル基の機能が有効に発揮された多官能性ポリマーの製造には適していない。
また、特許文献1には、リビングラジカル重合で立体規則性ポリマーを製造することが報告されている。しかし、N-イソプロピルアクリルアミドに代表される単官能性のポリマーであること、またアイソタクチシティが必ずしも高くないことが理解できる。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Hoshikawa,N.;Hotta,Y.;Okamoto,Y.J.Amer.Chem.Soc.2003,125(41),12380
【非特許文献2】Miyagawa,T.:Sanda,F.;Endo,T.J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.2001,39,1629
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高い立体規則性、特にアイソタクチシティを有する多官能性ポリマー、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題に鑑みて鋭意研究を行った結果、L-乳酸乃至発酵乳酸から誘導される2位に不斉炭素を有する5-メチレン-1,3-ジオキソラン-4-オン誘導体を原料モノマーに用いてラジカル重合反応させたところ、高い立体規則性(特にアイソタクチシティ)を有するポリマーが得られることを見出した。得られたポリマーを加水分解することにより、同一炭素上に水酸基とカルボキシル基を有する多官能性のポリマーに変換できることも見出した。かかる知見に基づき、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、多官能性のポリマー及びその製造方法を提供する。
項1. 分子内に、一般式(2):
【化1】
JP0005496114B2_000002t.gif
(式中、R及びRは異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を示し、或いはR及びRは互いに結合して隣接する不斉炭素(C*)とともに非対称な環を形成してもよい。*は不斉炭素を示す。)
で表される繰り返し単位を有するポリマーであり、該ポリマー中のメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)が60:40~100:0であるポリマー。
項2. 一般式(1):
【化2】
JP0005496114B2_000003t.gif
(式中、R、R及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を含むモノマーをラジカル重合することを特徴とする、項1に記載のポリマーの製造方法。
項3. 分子内に、一般式(3):
【化3】
JP0005496114B2_000004t.gif
(式中、Yは水素原子又はカウンターカチオンを示す。)
で表される繰り返し単位を有するポリマーであり、該ポリマー中のメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)が60:40~100:0であるポリマーの製造方法であって、一般式(1):
【化4】
JP0005496114B2_000005t.gif
(式中、R及びRは異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を示し、或いはR及びRは互いに結合して隣接する不斉炭素(C*)とともに非対称な環を形成してもよい。*は不斉炭素を示す。)
で表される化合物を含むモノマーをラジカル重合して、項1に記載されるポリマーを製造し、次いで該ポリマーを加水分解することを特徴とする製造方法。
項4. 分子内に、一般式(3):
【化5】
JP0005496114B2_000006t.gif
(式中、Yは水素原子又はカウンターカチオンを示す。)
で表される繰り返し単位を有するポリマーであり、該ポリマー中のメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)が60:40~100:0であるポリマーの製造方法であって、項1に記載されるポリマーを加水分解することを特徴とする製造方法。
項5. 分子内に、一般式(4):
【化6】
JP0005496114B2_000007t.gif
(式中、R及びRは同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を示し、或いはR及びRは互いに結合して隣接する窒素(N)とともに環を形成してもよい。)
で表される繰り返し単位を有するポリマーであり、該ポリマー中のメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)が60:40~100:0であるポリマーの製造方法であって、項1に記載されるポリマーに、一般式(5):
HNR (5)
(式中、R及びRは前記に同じ。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする製造方法。
項6. 分子内に、一般式(6):
【化7】
JP0005496114B2_000008t.gif
(式中、R及びRは異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を示し、或いはR及びRは互いに結合して隣接する炭素とともに非対称な環を形成してもよい。Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を示す。Yは水素原子又はカウンターカチオンを示す。)
で表される繰り返し単位を有するポリマーであり、該ポリマー中のメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)が60:40~100:0であるポリマーの製造方法であって、項1に記載されるポリマーに、一般式(7):
-M (7)
(式中、Mは金属原子を示し、Rは前記に同じ。)
で表される結合を有する化合物を反応させることを特徴とする製造方法。
項7. 分子内に、一般式(8):
【化8】
JP0005496114B2_000009t.gif
(式中、R及びRは異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を示し、或いはR及びRは互いに結合して隣接する不斉炭素(C*)とともに非対称な環を形成してもよい。*は不斉炭素を示す。)
で表される繰り返し単位を有するポリマーであって、該ポリマー中のメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)が60:40~100:0であるポリマーの製造方法であって、項1に記載されるポリマーを還元することを特徴とする製造方法。
項8. 一般式(1c):
【化9】
JP0005496114B2_000010t.gif
(式中、R11はエチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基を示し、*は不斉炭素を示す。)
で表される化合物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によれば、高い立体規則性、特にアイソタクチシティを有し、かつ、多官能性のポリマーを製造することができる。また、分子量、分子量分布が制御されたポリマーを製造することもできる。さらに、得られたポリマーは多官能であるため多様性のあるポリマーへ化学変換することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は比較例4および実施例8で得られたポリマーの主鎖四級炭素領域の13C-NMRチャートである。
図2は実施例11で得られたポリマーを水(蒸留水)に膨潤させた含水ゲルの写真である。
図3は比較例3および実施例9得られたポリマーを1Nの塩酸(HCl)で処理して得られるポリマーのIRチャートを示す。
図4は実施例15で得られたポリマーのIRチャートを示す。
図5は実施例16で得られたポリマーのIRチャートを示す。
図6は実施例17で得られたポリマーのIRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.ポリマーの製造
本発明のポリマーは、一般式(1)で表される化合物を含むモノマーをラジカル重合反応に供して得られる、分子内に一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマー、及びこのポリマーを化学変換して得られる分子内に一般式(3)、(4)、(6)及び(8)で表される繰り返し単位を有するポリマーを包含するものである。
以下、モノマーのラジカル重合反応によりポリマーを製造する工程、及び得られたポリマーを化学変換(修飾)する工程に分けて説明する。
1.1 ラジカル重合反応
一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、例えば、一般式(1)で表される化合物を、さらに必要に応じて他のラジカル反応性モノマーと反応させて製造することができる。具体的な製造スキームを下記に示す。
【化10】
JP0005496114B2_000011t.gif
(式中、R及びRは異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を示し、或いはR及びRは互いに結合して隣接する不斉炭素(C*)とともに非対称な環を形成してもよい。*は不斉炭素を示す)
及びRで示される置換基を有してもよいアルキル基のアルキル基としては、例えば、直鎖、分岐又は環状のC1~10のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、イソヘキシル等のC1~6のアルキル基が挙げられる。このうち好ましくはエチル又はイソプロピル基であり、特に好ましくはイソプロピル基である。該アルキル基は、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、カルボキシル基、エステル基、アミド基、保護されていてもよい水酸基等の置換基を1~3個有していてもよい。
及びRで示される置換基を有してもよいアリール基のアリール基としては、例えば、単環又は2環以上のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル、トルイル、キシリル、ナフチル、アンスリル、フェナンスリル等が挙げられる。該アリール基は、例えば、アルキル基(例えば、C1~6アルキル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、カルボキシル基、エステル基、アミド基、保護されていてもよい水酸基等の置換基を1~3個有していてもよい。
及びRで示される置換基を有してもよいヘテロアリール基のヘテロアリール基としては、例えば、酸素、窒素及び/又は硫黄原子を環内に含むヘテロアリール基であり、例えば、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、チアゾリル等が挙げられる。該ヘテロアリール基は、例えば、アルキル基(例えば、C1~6アルキル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、カルボキシル基、エステル基、アミド基、保護されていてもよい水酸基等の置換基を1~3個有していてもよい。
及びRは互いに結合して隣接する不斉炭素(C*)とともに非対称な環を形成してもよい。例えば、3~8員環の環状炭化水素を形成し、該環状炭化水素には、非対称となるように、例えば、アルキル基(例えば、C1~6アルキル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、カルボキシル基、エステル基、アミド基、保護されていてもよい水酸基等の置換基を1~4個有している。
なお、R及びRは異なっているため、R及びRが結合する炭素原子は不斉炭素(C*)となる。該不斉炭素における立体構造は、R体及びS体で表記することができるが、本発明で用いる一般式(1)で表される化合物は、R体とS体のモル比が、R体(S体):S体(R体)=70:30~100:0、好ましくは75:25~100:0、より好ましくは80:20~100:0である。
特に、一般式(1)で表されるモノマーとしては、ラジカル重合後のポリマーの立体規則性の観点より、一般式(1c):
【化11】
JP0005496114B2_000012t.gif
(式中、R11はエチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基を示し、*は不斉炭素を示す。)
で示される化合物が好ましい。R11としてはイソプロピル基が好ましい。不斉炭素(C*)の立体構造は上記で示したR体(S体):S体(R体)のモル比のものが挙げられる。
以下、一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーの具体的な製造方法を説明する。
一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、一般式(1)で表されるモノマーをラジカル重合させて製造する。通常、不活性ガスで置換した容器あるいは真空脱気した容器で、一般式(1)で表されるモノマーと必要に応じラジカル重合開始剤を混合し撹拌する。
ラジカル重合反応は、無溶媒、或いはラジカル重合で一般に使用される溶媒(有機溶媒又は水性溶媒)を使用することができる。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、アニソール等が挙げられる。また、水性溶媒としては、水、必要に応じメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチルセロソルブ、ブチロセロソルブ、1-メトキシ-2-プロパノール等を含む溶媒が挙げられる。
溶媒を使用する場合、溶媒の使用量としては、適宜調節すればよいが、例えば、一般式(1)で表されるモノマー1molに対して、又は共重合の場合には一般式(1)で表されるモノマーを含む全モノマー1molに対して、一般に0.1~20リットル、好ましくは0.2~5リットルである。
ラジカル重合反応は、ラジカル重合開始剤の存在下又は不存在下で実施することができる。通常、ラジカル重合開始剤の存在下で実施することが好ましい。もちろん、ラジカル重合開始剤の不在下に自然熱重合したり、ラジカル重合開始剤の存在下又は不在下に光照射によりラジカル重合することも可能である。光照射によるラジカル重合の場合、通常、水銀灯、キセノンランプ等の光源を使用して重合する。光源は、ビニルモノマーの種類、重合開始剤の種類等により適宜選択できる。
ラジカル重合反応は、一般式(1)で表されるモノマーのラジカル単独重合以外に、ラジカル共重合も含まれる。ラジカル共重合、特にリビングラジカル共重合の場合は、ジブロックおよびトリブロック共重合が可能である。ラジカル共重合し得るモノマーとしては、一般式(1)で表されるモノマーのうち異なった構造のモノマーや、一般式(1)で表されるモノマー以外にラジカル重合可能なモノマーを制限なく使用することができる。
一般式(1)で表されるモノマー以外にラジカル重合可能なモノマー(以下、「併用モノマー」とも呼ぶ)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸メンチル等の(メタ)アクリル酸エステル;α-アセトキシアクリル酸、α-アセトキシアクリル酸メチル、α-アセトキシアクリル酸メンチル、α-アセトアミドアクリル酸、α-アセトアミドアクリル酸メチル、α-アセトアミドアクリル酸メンチル、α-メトキシアクリル酸メチル、α-メトキシアクリル酸メンチル等のキャプトデイティブ置換モノマー(α位が電子供与性基及び電子受容性基で同時に置換されたモノマー);(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等のシクロアルキル基含有不飽和モノマー(シクロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル));マレイン酸、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸、イタコン酸エチル、無水マレイン酸、マレインイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等2以上のカルボキシル基含有不飽和モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアミン含有不飽和モノマー((メタ)アクリル酸アミド);スチレン、α-メチルスチレン、α-メトキシスチレン、α-メトキシ-2-メトキシスチレン、2-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-tert-ブトキシスチレン、4-クロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、1-ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、4-スチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)等の芳香族不飽和モノマー;2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルチオフェン、1-ビニル-2-ピロリドン、ビニルカルバゾール等のヘテロ環含有不飽和モノマー;N-ビニルアセトアミド、N-ビニルベンゾイルアミド等のビニルアミド;エチレン、プロピレン、1-ヘキセン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン等のジエンモノマー;ジビニルベンゼン、4,4’-ジビニルビフェニル等の多官能性モノマー;(メタ)アクリロニトリル、メチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、エチルビニルスルフィド、安息香酸ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、α‐シアノアクリル酸エチル、クマリン、インデン、インドン等が挙げられる。
本発明において、一般式(1)で表されるモノマーに加えて併用モノマーを用いる場合、全モノマー中の併用モノマーの仕込割合は、一般に40モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。また、ラジカル重合反応により得られる一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、併用モノマーに由来する単位のモル分率は、通常20モル%以下、好ましくは15モル%以下、より好ましくは12モル%以下である。
ラジカル重合開始剤は、一般にラジカル重合で使用できるものであれば良く、例えば、アゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物、レドックス系重合開始剤等の他、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等の光重合開始剤等を挙げることができる。また、上記の開始剤に加えて、有機ハロゲン物質(例えば、エチル2-ブロモイソブチレート)、ニトロキシド誘導体、チオカルボニル物質、有機テルル物質等を開始剤あるいは添加剤としたリビングラジカル重合開始剤系を挙げることができる。
ラジカル重合の開始剤のうち好ましくはアゾ系重合開始剤であり、具体的には、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の使用量としては、得られるポリマーにより適宜調節すればよいが、一般式(1)で表されるモノマー1molに対して、又は共重合の場合には一般式(1)で表されるモノマーを含む全モノマー1molに対して、通常、1×10-6~1mol、好ましくは1×10-4~1×10-1、更に好ましくは1×10-3~1×10-2である。
上記のラジカル重合法のうち、特にリビングラジカル重合法を採用することにより、分子量、分子量分布、立体構造等がより高度に制御されたポリマーを製造することができるため好適である。
リビングラジカル重合開始剤の好ましいものとしては、有機テルル媒介リビングラジカル重合開始剤系が挙げられ、具体的には、AIBN/ジ-n-ブチルジテルリド(DBT)、AIBN/ジフェニルジテルリド、AIBN/エチル2-メチル-2-メチルテラニル-プロピオネート、AIBN/エチル2-メチル-2-ブチルテラニル-プロピオネート(EMBTP)、AIBN/エチル2-メチル-2-フェニルテラニル-プロピオネート、AIBN/DBT/EMBTP等が挙げられる。
この場合AIBNの使用量としては、得られるポリマーにより適宜調節すればよいが、一般式(1)で表されるモノマー1molに対して、又は共重合の場合には一般式(1)で表されるモノマーを含む全モノマー1molに対して、通常、1×10-6~1mol、好ましくは1×10-4~1×10-1、更に好ましくは1×10-3~1×10-2である。有機テルリウムの使用量は、一般式(1)で表されるモノマー1molに対して、又は共重合の場合には一般式(1)で表されるモノマーを含む全モノマー1molに対して、通常、1×10-6~1mol、好ましくは1×10-4~1×10-1、更に好ましくは1×10-3~1×10-2である。
リビングラジカル重合のうち、特にブロック共重合体の製造方法は以下の通りである。本共重合は、少なくとも一般式(1)で表されるモノマーを1種含むもので、他に上記併用モノマーを使用することができる。AB型のジブロック共重合の場合、例えば、窒素置換したグローブボックスあるいは脱気した容器内で、一般式(1)で表されるモノマーを、溶媒の存在下又は不在下に、上記ラジカル開始剤を添加して反応して、一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーを得る。その後、第2のモノマー(異種の一般式(1)で表されるモノマー又は併用モノマー)を混合して共重合体を得る。また、モノマーの添加順序を逆にして、先に第2のモノマーを反応させた後、一般式(1)で表されるモノマーを反応させてもよい。さらに、ABA型、ABC型等のトリブロック共重合体も、上記のジブロック共重合体を製造後、順次モノマーを混合することにより製造することができる。
反応温度および反応時間は、該ビニルモノマーの種類、重合開始剤の種類により適宜調節すればよいが、通常、0~180℃程度、0.5~100時間程度撹拌すればよい。好ましくは、それぞれ30~100℃、1~30時間撹拌する。この時、圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧或いは減圧しても構わない。この時、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。好ましくは、アルゴン、窒素が良い。特に好ましくは、窒素が良い。
重合反応により、分子内に一般式(2)で表される繰り返し単位を有する立体規則性を有するポリマーが得られる。該ポリマー中のメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)は60:40~100:0であり、(m:r)は65:35~100:0が好ましく、70:30~100:0がより好ましく、75:25~100:0がより好ましく、80:20~100:0が特に好ましい。この比率は、後述の開環反応により得られる一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリマーの13C-NMR分析により確認される。
一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、一般に、m(メソ)の割合が増加するに従って有機溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン等)に対する溶解性も低下する傾向がある。
本発明のラジカル重合反応で得られるポリマーの重合度は、反応時間、開始剤濃度、反応温度、溶媒等により適宜調整可能であるが、数平均重合度10~20,000、特に50~5,000のポリマーである。また、数平均分子量(Mn)は、1,000~4,000,000程度、更に5,000~1,000,000程度である。Mnおよび重量平均分子量(Mw)の測定方法は、実施例に記載されるGPC法が採用される。本発明では、通常、分子量分布(PDI=Mw/Mn)が1.01~4.0、特に1.05~2.5のラジカルポリマーが得られる。ここで中でも、リビングラジカルポリマーの分子量分布(PDI=Mw/Mn)は狭く、1.01~1.5の間で制御され、さらに1.05~1.30、特に1.1~1.25の範囲に制御することができる。
1.2 ポリマーの化学変換(修飾)
上記1.1のラジカル重合反応で得られたポリマーは、開環反応(加水分解、求核置換反応等)および還元反応等により化学変換(修飾)することができる。これにより、ポリマー主鎖が高い立体規則性を保持し、多様な官能基乃至物性を有するポリマーを製造することができる。具体的な変換スキームを下記に示す。
【化12】
JP0005496114B2_000013t.gif
(式中、R及びRは同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を示し、或いはR及びRは互いに結合して隣接する窒素(N)と結合して環を形成してもよい。Yは水素原子又はカウンターカチオンを示す。Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を示す。Mは金属原子を示す。)
[加水分解]
上記で得られた一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、いずれも1,3-ジオキソラン-4-オン骨格を有しており、これを加水分解反応に供してヒドロキシカルボン酸に変換する。必要に応じて、カルボン酸を塩にすることができる。
Yで示されるカウンターカチオンとしては、例えば、金属陽イオン、アンモニウム、含窒素有機化合物のオニウム等が挙げられる。金属陽イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウム、バリウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。含窒素有機化合物のオニウムとしては、例えば、(モノ-、ジ-、トリ-又はテトラ-)アルキルアンモニウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、キノリニウム、チオフェニウム等が挙げられる。
一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーを、水及び有機溶媒(例えば、THF等のエーテル系溶媒、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒等)に溶解あるいは膨潤させ、塩基又は酸を加え加水分解する。反応終了後、反応液から溶媒を留去して残渣に貧溶媒(例えば、メタノールを)加えてポリマーを析出させて、加水分解物を得る。なお、ろ過した加水分解ポリマーの一部が水不溶となる場合には、濾過物に水を加えて水可溶部のみを加水分解物として取り出すことができる。また、反応終了後、必要に応じて、酸(例えば、塩酸等)を用いてカルボキシレートをカルボン酸に変換することもできる。
加水分解試薬としては、酸としては、例えば、塩酸、硫酸、トリフルオロ硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられ、塩基としては、NaOH、KOH等のアルカリ金属の水酸化物;Be(OH)、Mg(OH)等のアルカリ土類金属の水酸化物;硫酸、硝酸、LiCl、BF、SnCl等の酸;CHONa、(CHOK等の金属アルコキシド等が挙げられる。上記酸又は塩基は、必要に応じ水溶液とすることも可能である。
加水分解の反応条件は、公知の方法を用いて実施することができる。例えば、一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマー1gに対し、塩基を1~50g程度用いて、溶媒(例えば、水、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒等)中で、0~150℃で、1~100時間程度反応させることができる。加水分解の反応条件は、公知の方法を用いて実施することができる。
上記の化学的な加水分解試薬以外に、酵素的な加水分解を行うこともできる。用い得る加水分解酵素としては、例えば、リパーゼ、プロテアーゼ、ホスホエステラーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、およびそれらの組合せからなる群等が挙げられる。酵素的な加水分解の条件は、公知の方法を用いて実施できる。
[アミド化(アミノリシス)]
上記で得られた一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、いずれも1,3-ジオキソラン-4-オン骨格を有しており、ラクトンのカルボニル炭素に、一般式:HNR(5)で表されるアミン(式中、R及びRは前記に同じ。)を反応させてアミド化することができる。
及びRで示される置換基を有してもよいアルキル基のアルキル基としては、例えば、直鎖、分岐又は環状のC1~10のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、イソヘキシル等のC1~6のアルキル基が挙げられる。このうち好ましくはエチル又はイソプロピル基であり、特に好ましくはイソプロピル基である。該アルキル基は、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、カルボキシル基、エステル基、アミド基、保護されていてもよい水酸基等の置換基を1~3個有していてもよい。
及びRで示される置換基を有してもよいアリール基のアリール基としては、例えば、単環又は2環以上のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル、トルイル、キシリル、ナフチル、アンスリル、フェナンスリル等が挙げられる。該アリール基は、例えば、アルキル基(例えば、C1~6アルキル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、カルボキシル基、エステル基、アミド基、保護されていてもよい水酸基等の置換基を1~3個有していてもよい。
及びRで示される置換基を有してもよいヘテロアリール基のヘテロアリール基としては、例えば、酸素、窒素及び/又は硫黄原子を環内に含むヘテロアリール基であり、例えば、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、チアゾリル等が挙げられる。該ヘテロアリール基は、例えば、アルキル基(例えば、C1~6アルキル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、カルボキシル基、エステル基、アミド基、保護されていてもよい水酸基等の置換基を1~3個有していてもよい。
及びRは互いに結合して隣接する窒素原子(N)とともに環を形成してもよい。例えば、3~8員環の環状含窒素炭化水素(例えば、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン等)を形成し、該環状含窒素炭化水素には、例えば、アルキル基(例えば、C1~6アルキル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、カルボキシル基、エステル基、アミド基、保護されていてもよい水酸基等の置換基を1~4個有していてもよい。
上記アミド化には、一般式(5)で表される化合物(アミン又はアンモニア)、又は一般式(5’):
LiAl(NR (5’)
で表されるアルミニウム試薬を用いることができる。一般式(5’)で表されるアルミニウム試薬は、例えば、一般式(5)で表される化合物から、Ashby,E.C.;Beach,R.G.Inorg.Chem.1971,10,1888の記載に準じて調製することができる。
また、一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーと、一般式(5)又は(5’)で表される化合物との反応は、例えば一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマー1gに対し、一般式(5)または(5’)で表される試薬を1~50g程度用いて、溶媒(例えば、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒等)中で、-30~80℃で、0.5~20時間程度反応させることができる。加水分解の反応条件は、公知の方法を用いて実施することができる。
[還元反応]
上記で得られた一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、いずれも1,3-ジオキソラン-4-オン骨格を有しており、これを還元反応に付すことにより、1,3-ジオキソラン-4-オールにすることができる。
還元反応に用いる還元試薬としては、Zn(Hg)等のクレメンゼン還元試薬、HNNH(KOH)等のウォルフ-キシュナ-還元試薬、LiAlH、LiAlH(OC、LiAlH(O-tert-C、AlH(iso-C、NaAlH(OCHCHOCH、LiBH、LiBH(C、NaBH、(CSiH、(n-CSiH、ClSiH等が挙げられる。還元反応の反応条件は、公知の方法を用いて実施することができる。
[求核反応]
炭化水素基の求核反応による開環反応の場合、一般式(7):
-M (7)
(式中、Mは金属原子を示し、特にMg、Li又はCuを示す。)
で表される結合を有する化合物(有機金属試薬)を用いる。該有機金属試薬としては、例えば、有機リチウム(RLi)、又はグリニアール試薬(RMgZ;Zは塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を示す。)、或いはこれらとCuCl、CuBr等のハロゲン化銅との混合触媒が挙げられる。
で示される置換基を有してもよいアルキル基のアルキル基としては、例えば、直鎖、分岐又は環状のC1~10のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、イソヘキシル等のC1~6のアルキル基が挙げられる。このうち好ましくはエチル又はイソプロピル基であり、特に好ましくはイソプロピル基である。該アルキル基は、例えば、保護されていてもよい水酸基、フェニル基等の置換基を1~3個有していてもよい。
で示される置換基を有してもよいアリール基のアリール基としては、例えば、単環又は2環以上のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル、トルイル、キシリル、ナフチル、アンスリル、フェナンスリル等が挙げられる。該アリール基は、例えば、アルキル基(例えば、C1~6アルキル基等)、保護されていてもよい水酸基等の置換基を1~3個有していてもよい。
で示される置換基を有してもよいヘテロアリール基のヘテロアリール基としては、例えば、酸素、窒素及び/又は硫黄原子を環内に含むヘテロアリール基であり、例えば、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、チアゾリル等が挙げられる。該ヘテロアリール基は、例えば、アルキル基(例えば、C1~6アルキル基等)、保護されていてもよい水酸基等の置換基を1~3個有していてもよい。
上記の求核反応は、一般式(7)で表される結合を有する化合物(有機金属試薬)を用いて、公知の方法を用いて反応させることができる。例えば、該有機金属試薬と一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーを反応させる。
以上のようにして、一般式(3)、(4)、(6)又は(8)で表される繰り返し単位を有するポリマーが製造される。該ポリマーにおけるメソ二連子(m)とラセモ二連子(r)の比(m:r)、重合度、分子量分布等は、一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーのものが保持される。
2.原料モノマーの製造
式(1)で表されるモノマーは、種々の方法で製造される。例えば、MaGee,D.I.et al.Tetrahedron,62,4153-61(2006)の記載に準じて製造することができる。具体的な製造スキームを説明する。
【化13】
JP0005496114B2_000014t.gif
(式中、Xはハロゲン原子を示す。R、R及び*は前記に同じ。)
一般式(10)で表される乳酸は、例えば、L-乳酸、D-乳酸、発酵乳酸等が挙げられる。上記のスキームは便宜上、L-乳酸を用いているが、そのエナンチオマーであるD-乳酸を用いた場合も同様にして製造することができる。この場合、上記のスキーム中の化合物は不斉炭素の立体配置が反転したものとなる。また、原料として、発酵乳酸を使用することができる(グリーンケミストリー)。特に、発酵乳酸はL-乳酸をリッチに含むため、エナンチオマーの分離過程を省略することができる。即ち、発酵乳酸由来のモノマーからラジカル重合して得られるポリマーは、十分に高い立体規則性(アイソタクチック)が得られる。これは、実際に工業化する上で非常に重要である。
一般式(9)で表されるカルボニル化合物(例えば、イソブチルアルデヒド等)、一般式(10)で表されるL-乳酸を、溶媒(例えば、n-ペンタン等の炭化水素系溶媒等)中、酸触媒(例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸等)の存在下で、Dean-Stark分留器を備えた還流冷却器を用いて水を共沸して除きながら還流する。
一般式(9)で表されるカルボニル化合物は、公知のアルデヒドおよびケトンを広く使用できる。このようなアルデヒドとしては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ピバルアルデヒド、バレルアルデヒド、トリフルオロエタナール、クロラール、スクシンアルデヒド、クロロフルオロアセトアルデヒド、メントン、シクロヘキサンカルバルデヒド、2-ピロールカルバルデヒド、3-ピリジンカルバルデヒド、2-フルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ベンゼンアセトアルデヒド、バニリン、ピペロナール、シトロネラ-ル等が挙げられる。また、ケトンとしては、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、2-ヘキサノン、メチルsec-ブチルケトン、メチルtert-ブチルケトン、アセトフェノン、2-フリルメチルケトン、2-アセトナフトン、2(3H)-ピラジノン、ピロリドン等が挙げられる。このうち、好ましくはアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ピバルアルデヒド等であり、より好ましくはイソブチルアルデヒドである。
縮合反応における生成物は、通常、一般式(11a)及び/又は(11b)で表される2つのジアステレオマーの混合物となる。これらは、例えば、常圧あるいは減圧下で蒸留したり、カラムクロマトグラフィー等により単離及び精製することができる。一般式(11a)及び(11b)で表される化合物の混合物となる場合は、上記の単離及び精製の方法を用いて分離することができる。
縮合反応の温度および時間は、例えば、試薬の種類により適宜調節すればよいが、反応温度は、通常、0~180℃程度、好ましくは0~80℃、より好ましくは0~60℃であり、また、反応時間は、通常、0.5~100時間、好ましくは0.5~30時間、より好ましくは0.5~10時間である。縮合反応の温度及び時間の条件は、(11a)と(11b)の生成比に大きな影響を及ぼし、通常、温度が低く、反応時間が短いとその生成比は高くなる。特に、0~60℃、0.5~10時間の条件で撹拌することにより、高いジアステレオ比が達成される。
一般式(11a)で表される化合物及び(11b)で表される化合物が混合物の場合には、重合後のポリマーの立体規則性の向上を考慮すると、一方の化合物が高純度で(高いジアステレオ比で)含まれていることが好ましい。例えば、一般式(11a)で表される化合物:一般式(11b)で表される化合物のモル比が70:30~100:0、好ましくは80:20~100:0、より好ましくは90:10~100:0、特に好ましくは95:5~100:0である。また、一般式(11b)で表される化合物:一般式(11a)で表される化合物のモル比が70:30~100:0、好ましくは80:20~100:0、より好ましくは90:10~100:0、特に好ましくは95:5~100:0である。
ついで、上記で得た一般式(11)で表される化合物(一般式(11a)及び/又は(11b)で表される化合物の総称とする)を、例えば、溶媒(例えば、四塩化炭素等)の存在下、ハロゲン化剤(例えば、N-ブロモスクシンイミド(NBS)、N-クロロスクシンイミド(NCS)、N-ヨードスクシンイミド(NIS)、N,N-ジブロモヒダントイン(NDBH)、N-ブロモサッカリン(NBSA)、臭素、塩素、ヨウ素等)及びラジカル開始剤(例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)等)を反応させる。通常、還流冷却器を備えたフラスコ中で一定時間還流する。反応後、常法により処理して一般式(12)で表される化合物(一般式(12a)及び/又は(12b)で表される化合物の総称とする)を得る。
その後、一般式(12)で表される化合物に、溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)中、塩基(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、DBU、NaCO、NaOH等)を作用させる。通常、一般式(12)で表される化合物の溶液に塩基を加えて一定時間還流する。反応後、溶媒を留去した後、蒸留により単離及び精製して、一般式(1)で表される化合物(一般式(1a)及び/又は(1b)で表される化合物の総称とする)を得る。
得られた一般式(1)で表される化合物(モノマー)は、R及びRが結合する不斉炭素(C*)のエナンチオ比(即ち、R体とS体のモル比)が、R体(S体):S体(R体)=70:30~100:0、好ましくは80:20~100:0、より好ましくは90:10~100:0、特に好ましくは95:5~100:0である。
特に、一般式(1)で表されるモノマーとしては、ラジカル重合後のポリマーの立体規則性の観点より、前述の一般式(1c)で示される化合物が好ましい。R11としてはイソプロピル基が好ましい。
3.用途
本発明で製造されるポリマーは、分子内に立体規則性を持つ繰り返し単位を有している。特に、一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリマーでは、同一炭素上に親水性の水酸基とカルボキシル基を有するという多官能性ポリマーである。そのため、これに由来した特徴的な性質を有している。
例えば、アタクチック構造やシンジオタクチック構造では、分子内でラクトンを形成しやすいのに対し、本発明のポリマーでは高いアイソタクティック規則構造をもつため、分子内で遊離の水酸基及びカルボキシル基が有効に存在するという特徴を有している。そのため、種々の金属イオンに対して効率よくキレートを形成することが可能である。
また、一般式(1)で表されるモノマーのホモポリマーはもちろん、一般式(1)で表されるモノマーと他のモノマー(併用モノマー)とのコポリマー(共重合体)であっても、極めて水に対し親和性が高いポリマーとなる。水と接触させると、そのポリマーの体積の50~3000倍にまで膨潤する。コポリマーの場合、一般式(1)で表されるモノマー単位が10~100モル%程度であれば上記の性質が発揮される。
さらに、一般式(4)、(6)又は(8)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、その特異な構造を有するため新たな機能性材料となりうる可能性がある。
本発明の一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、上記の特性を有することから、例えば、漂白殺菌助剤、界面活性助剤、高分子凝集剤、キレート剤、高分子電解質、静電防止剤(繊維製品、衣服など)、サニタリー用品(高分子吸水剤、アイス枕など)、曇り防止素材(ガラスの曇り止め)、接着剤、生体機能性材料、医用・環境保全材料、表面改質剤(携帯電話、電子機器など金属表面のコーティング)、保護フィルム、液晶ディスプレイ等の高性能偏光フィルム素材、フォトレジスト材料、光ファイバー材料、インク材料、プラズマディスプレイパネル用光吸収材料、液晶ディスプレイ用スペーサ形成用感光組成物等の用途に用いることができる。
【実施例】
【0009】
本発明を、実施例を用いて更に詳述するが、これに限定されるものではない。
[測定機器]
実施例および比較例において、各種物性測定は以下の機器により測定した。
H-NMRおよび13C-NMR:JEOL EX-400(400MHz)
IR:JASCO FT/IR-230
旋光度:JASCO P-1030
分離、精製:Tosoh HLC-8020
分子量(数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw)および分子量分布(Mw/Mn):GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー):Tosoh HLC-8220(カラム-TSKgel G7000HHR+G5000HHR+G3000)ポリスチレン標準
[モノマーの製造]
製造例1(5-メチレン-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オンの合成)
イソブチルアルデヒド43.6g(0.60mol)、L-乳酸62.5g(0.55mol)、p-トルエンスルホン酸1.06g(0.05mmol)をn-ペンタン50mlに溶解し、Dean-Stark分留器を備えた還流冷却器を500mlのフラスコに取り付け8時間還流した。反応後、反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液で中和、洗浄し、エーテルで抽出後、抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、エーテルを留去し、ジアステレオマー混合物の5-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オン62.7g(収率:79.2%)を得た。
続いて、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/エーテル=20/1)により、生成したシス体/トランス体(メチル基とイソプロピル基との立体構造関係)=80/20の混合物から、光学分割によりシス体のみを単離した。
5-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オン(シス体):
IR(neat、cm-1)1802(C=O)、2883~2974(isopropyl)
H-NMR(CDCl、ppm)1.01(d,J=7.2Hz,6H)、1.49(d,J=6.8Hz,3H)、2.00(m,1H)、4.35(q,J=6.8Hz,1H)、5.28(d,J=4.4Hz,1H)
[α]=+25.7(NaのD線に対する旋光度、[化合物]=0.2g/dl、CHCl中)
上記で得た5-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オンのシス体60.0g(0.41mol)、N-ブロモスクシンイミド73.8g(0.41mol)、2,2’-アゾビス(イソブチロにトリル)(AIBN)180mg(1.1mmol)を四塩化炭素 180mlに溶解し、還流冷却器を備えたフラスコ中で4時間還流した。反応後、濾過により析出した塩を除き、濾液中の四塩化炭素を留去し、5-ブロモ-5-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オン83.0g(0.36mol)を得た。
上記のブロモ体と脱水ベンゼン 350mlを滴下ロート、還流冷却器を備えたフラスコに入れ、窒素雰囲気のもと氷冷下で脱水ベンゼン150mlと混合させたトリエチルアミン46.5g(0.46mol)を1時間かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間還流した。反応後、濾過により析出した塩を除き、濾液中のドライベンゼンを留去した後、蒸留(bp=65℃/7mmHg)により単離、精製することにより5-メチレン-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オン 20.0g(収率:38.9%)を製造した。
5-メチレン-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オン:
IR(neat、cm-1)1668(C=C)、1798(C=O)、2883 ̄2974(isopropyl)
H-NMR(CDCl、ppm)1.00(d,J=0.8Hz,3H)、1.02(d,J=0.8Hz,3H)、2.04(m,1H)、4.86(d,J=2.8Hz,1H)、5.15(d,J=2.8Hz,1H)、5.60(d,J=4.4Hz,1H)
[α]=-6.8(CHCl
製造例2(5-メチレン-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オンの合成)
製造例1と別の方法により5-メチレン-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラ-4-オンを合成した。
イソブチルアルデヒド 43.6g(0.60mol)、発酵乳酸 62.5g(0.55mol)、p-トルエンスルホン酸1.06g(0.05mmol)をn-ペンタン50mlに溶解し、Dean-Stark分留器を備えた還流冷却器を500mlのフラスコに取り付け8時間還流した。反応後、反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液で中和、洗浄し、エーテルで抽出後、エーテル溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エーテルを留去し、反応混合物から目的物の5-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オン65.3g(収率:82.5%)を減圧蒸留により取り出した。この目的物は、シス体/トランス体(製造例1を参照)=80/20のジアステレオマー混合物からなり、光学分割することなく、次の反応に供した。以下の工程はモノマー合成の製造例1に準じて行った。
目的物の生成は、IR、H-NMRにより確認した。この方法により得られた5-メチレン-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オンの旋光度は、[α]=-5.5(CHCl)であった。
製造例3(乳酸のラセミ体を用いた5-メチレン-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オンの合成)
イソブチルアルデヒド 43.6g(0.60mol)、D-乳酸とL-乳酸のラセミ混合物62.5g(0.55mol)、p-トルエンスルホン酸 1.06g(0.05mmol)をn-ペンタン 50mlに溶解し、Dean-Stark分留器を備えた還流冷却器を500mlのフラスコに取り付け8時間還流する。以下の工程はモノマー合成の製造例2に準じて行った。
目的物の生成は、IR、H-NMRにより確認した。この方法により得られた5-メチレン-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オンの旋光度は、[α]=0(CHCl)であった。
製造例4(5-メチレン-2,2-ペンタメチレン-1,3-ジオキソラン-4-オンの合成)
【化14】
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シクロヘキサノン 5.0g(0.05mol)、β-クロロ乳酸 6.9g(0.05mol)、p-トルエンスルホン酸0.1g(6.5mmol)をトルエン30mlに溶解し、Dean-Stark分留器を備えた還流冷却器を100mlのフラスコに取り付け8時間還流した。反応後、反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液で中和、洗浄し、エーテルで抽出後、エーテル溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、エーテルを留去し、残留物を減圧蒸留(bp=84℃/1.5mmHg)により5-クロロメチル-2,2-ペンタメチレン-1,3-ジオキソラン-4-オン6.8g(収率:65.6%)を得た。
5-クロロメチル-2,2-ペンタメチレン-1,3-ジオキソラン-4-オン:
IR(neat、cm-1)1800(C=O)、2880-2975(isopropyl)
H-NMR(CDCl,ppm)1.35-1.95(m,10H)、3.80(d,J=7.0Hz,2H)、4.70(t,J=7.0Hz,1H)
上記で得た5-クロロメチル-2,2-ペンタメチレン-1,3-ジオキソラン-4-オン6.4g(0.03mol)とトルエン 30mlを滴下ロート、還流冷却器を備えたフラスコに入れ、氷冷下でトルエン 10mlと混合させたジイソプロピルアミン 4.4ml(0.03mol)を1時間かけてゆっくり滴下した後、さらに75℃で4時間反応した。反応後、濾過により析出した塩を除き、濾液中のベンゼンを留去した後、蒸留(bp=62℃/1.5mmHg)により単離、精製することにより5-メチレン-2,2-ペンタメチレン-1,3-ジオキソラン-4-オン 4.2g(収率:79.6%)を製造した。
5-メチレン-2,2-ペンタメチレン-1,3-ジオキソラン-4-オン:
IR(neat、cm-1)1668(C=C)、1800(C=O)、2880-2975(isopropyl)
H-NMR(CDCl,ppm)1.30-1.75(m,10H)、4.68(d,J=2.8Hz,1H)、4.97(d,J=2.8Hz,1H)
[ラジカル重合反応]
実施例1
【化15】
JP0005496114B2_000016t.gif
窒素置換したグローブボックス内で、製造例1のモノマー(5-メチレン-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オン) 5ml(0.026mol)とAIBN 8.2mg(0.05mmol)を60℃で2時間撹拌した。反応終了後、その溶液を撹拌している多量のn-ヘキサン(約20倍量)中に注いだ。沈殿したポリマーを室温で吸引濾過、乾燥することにより目的物(白色固体)を得た。結果を表1に示す。
実施例2及び比較例1~2
モノマーの種類、反応条件を表1に示したものに変更した以外は、実施例1と同様にして各ポリマーを得た。結果を表1に示す。
なお、構造によって溶解性が異なり、アイソタクティックポリマー(実施例1および2)は、アタクティックポリマー(比較例1)と異なりベンゼン、トルエン、アセトニトリル等に溶解しない。
実施例3
窒素置換したグローブボックス内で、製造例1のモノマー(5-メチレン-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オン)7ml(52mmol)とスチレン3ml(26mmol)、ならびにAIBN16.4mg(0.1mmol)を60℃で10時間撹拌した。反応終了後、その溶液を撹拌している多量のn-ヘキサン(約20倍量)中に注いだ。沈殿したポリマーを室温で吸引濾過、乾燥することにより目的物(白色固体)を得た。結果を表2に示す。
実施例4
窒素置換したグローブボックス内で、製造例1のモノマー(5-メチレン-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オン)9.5ml(71mmol)とジビニルベンゼン0.5ml(3.5mol)、ならびにAIBN 16.4mg(0.1mmol)を60℃で25時間、重合した。重合終了後、ポリマーを取出し、50℃で50時間かけて乾燥した。結果を表2に示す。
実施例5
エチル 2-メチル-2-ブチルテラニル-プロピオネートを用いたモノマーのリビングラジカル重合の実施例を以下に示す。
窒素置換したグローブボックス内で、製造例1のモノマー(5-メチレン-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オン)1.34ml(10mmol)とエチル 2-メチル-2-ブチルテラニル-プロピオネート 12.9mg(0.05mmol)、ならびにAIBN1.6mg(0.01mmol)を酢酸エチル1.3mlに溶かし、60℃で15時間反応させた。反応終了後、その溶液をTHF 5mlに溶解した後、その溶液を撹拌している多量のn-ヘキサン(約20倍量)中に注いだ。沈殿したポリマーを室温で吸引濾過、乾燥することにより目的物(白色固体)を得た。結果を表3に示す。
実施例6
エチル 2-メチル-2-ブチルテラニル-プロピオネートとジ-n-ブチルジテルリドを用いたモノマーのリビングラジカル重合の実施例を示す。
エチル 2-メチル-2-ブチルテラニル-プロピオネートとジ-n-ブチルジテルリドとを等量(全量は0.05mmol)用いる以外は、上記重合の実施例5に準じて実施した。結果を表3に示す。
実施例7
エチル2-ブロモイソブチレートを用いたリビングラジカル重合の実施例を以下に示す。
窒素置換したグローブボックス内で、製造例1のモノマー(5-メチレン-2-イソプロピル-1,3-ジオキソラン-4-オン)1.34ml(10mmol)に対し、CuBr/CuBr/N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン=8.6mg(0.06mmol)/0.7mg(0.003mmol)/12.1mg(0.07mmol)をアニソール1.66mlに溶かし、続いて開始剤のエチル2-ブロモイソブチレート 11.7mg(0.06mmol)を加えて室温で30分撹拌、その後70℃でさらに1時間反応させた。
反応終了後、反応溶液を撹拌している多量のn-ヘキサン(約20倍量)中に注いだ。沈殿したポリマーを室温で吸引濾過、乾燥することにより目的物(白色固体)を得た。結果を表3に示す。
[開環反応(加水分解)]
実施例8(加水分解)
【化16】
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実施例1で製造したポリマー1.00gとTHF 300mlをフラスコに入れ、攪拌して溶解あるいは膨潤させた。そこにKOH 5gを加え室温で24時間反応させた。反応終了後、エバポレータによってTHFを留去し、残渣にメタノールを加えてポリマーを析出させた。その後、沈殿したポリマーを室温で吸引濾過、乾燥させた。続いて、透析膜(スペクトラム社、スペクトラポア7、分画分子量3,500)を用いてこのポリマーを精製した。精製加水分解ポリマーの収量は0.812g(収率91.5%)であった。
IRにより加水分解ポリマーであることを確認した。
IR(KBr、cm-1)1620(br,C=O)、3450(br,OH)
ポリマーの主鎖四級炭素領域の13C-NMRによる立体規則性(Tacticity)測定の結果を図1および表1に示した。なお、13C-NMRによる立体規則性の決定は、文献(Yamazawa,K.:Kawauchi,S.;Sato,M.J.Polym.Sci.Part B:Polym.Phys.2002,40,1400)に従って行った。
実施例9及び比較例3~4
ポリマーの種類を表1に示したものに変更した以外は、実施例8と同様にして加水分解ポリマーを得た。これらポリマーの主鎖四級炭素領域の13C-NMRによる立体規則性(タクティシティ)測定の結果を図1および表1に示した。なお、m値及びr値は、m=mm+(mr/2)およびr=rr+(mr/2)の式を用いて13C-NMRの吸収強度から算出した。
表1の実施例8と9、及び比較例3~4とを比較すれば明らかなように、キラルなモノマーを使用した重合系からは、立体規則性(アイソタクティク)ポリマーが得られることがわかる。
図3には、比較例3および実施例9で得られたポリマーを1Nの塩酸で処理したポリマーのIRを示した。比較例3のIRには、ラクトン環の生成を示す1790cm-1の吸収が強く現れているのに対し、実施例9のIRでは、ラクトン環よりはカルボン酸の生成を示す1720cm-1の吸収がより強く現れている。本研究で得られたアイソタクチックポリマーは、酸性溶液中でもカルボニル基および水酸基が有効に働くことを示している。これは、COOK基とOH基とが隣接するアタクチックあるいはシンジオタクチックポリマーにはない特長である(Miyagawa,T.:Sanda,F.;Endo,T.J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.2001,39,1629)。
実施例10
実施例3で製造したポリマーを用いて、実施例8と同様にして加水分解ポリマーを得た。13C-NMRによる共重合体中のモノマー連鎖のみに対する立体規則性(Tacticity)の測定結果を表2に示した。
実施例11
実施例4で製造したポリマーを用いて、実施例8と同様にしてTHF中、ポリマーを、膨潤状態のままでKOHを用いて加水分解した。その後、ポリマーを室温で吸引濾過、水で数回洗浄後、乾燥させた。結果を表2に示した。図2には、このポリマーを水(蒸留水)に膨潤させた含水ゲルの写真を示した。容易に水を包含して約1600倍に膨潤している。この様子がこの図2よりよくわかる。
実施例12~14
実施例3で製造したポリマーを用いて、実施例8と同様にして加水分解ポリマーを得た。13C-NMRによる立体規則性(Tacticity)の測定結果を表3に示した。
実施例15(アミド化反応)
【化17】
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フラスコに濃アンモニア水(比重0.88)10mlと水 10mlを入れ、そこに実施例1で製造したポリマー1.00gとTHF 50mlを加えて栓をして撹拌した。撹拌中は、ときどき栓をはずしてフラスコ内の加圧を除いた。この反応を室温で30分間行った後、反応溶液を濃縮し、残渣にn-ヘキサンを加えてポリマーを析出させた。その後、析出したポリマーを室温で吸引濾過、乾燥させた。ポリマーの収量は1.05g(収率92.7%)であった。
IRにより目的物であることを確認した(図4)。
IR(KBr、cm-1)1655(s,C=O)、3310(br,NH)、3470(br,OH)
実施例16(開環反応)
【化18】
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THF 20mlに懸濁させたCuCl 14mgに、0℃でn-CMgBr 1.4gを含むエーテル溶液 8.5ml,を加えた。これに実施例1で製造したポリマー1.00gのクロロホルム溶液を滴下して20分間撹拌した。続いて、3Nの塩酸を加えて分液し、その有機層にさらに3Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてポリマーを抽出した。その後、アルカリ抽出液を塩酸で酸性にして目的のポリマーを析出させた。ポリマーの収量は1.27g(収率91.1%)であった。
IRにより目的物であることを確認した(図5)。
IR(KBr、cm-1)1705(s,C=O)、3100(br,OH)
実施例17(還元反応)
【化19】
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LiAlH1.35gを乾燥THF 10mlに溶かし、乾燥エタノール 5mlを0℃で加えてLiAlH(OCのスラリーをつくった。続いてこのスラリー10mlを実施例1で製造したポリマー1.00gに氷冷下で加え、2時間かきまぜた。その後、反応混合物にn-ヘキサンを加えてポリマーを析出させた。その後、析出したポリマーを室温で吸引濾過、乾燥させた。ポリマーの収量は0.897g(収率89.6%)であった。
IRにおいてラクトン環上のカルボニル基の吸収(1798cm-1)が消失していることより、目的物であることを確認した(図6)。
IR(KBr、cm-1)3450(br,OH)
【表1】
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【表2】
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【表3】
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図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図2】
5