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明細書 :吸着機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6186157号 (P6186157)
公開番号 特開2014-200874 (P2014-200874A)
登録日 平成29年8月4日(2017.8.4)
発行日 平成29年8月23日(2017.8.23)
公開日 平成26年10月27日(2014.10.27)
発明の名称または考案の名称 吸着機構
国際特許分類 B25J  15/06        (2006.01)
FI B25J 15/06 G
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2013-077643 (P2013-077643)
出願日 平成25年4月3日(2013.4.3)
審査請求日 平成28年3月23日(2016.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
発明者または考案者 【氏名】高橋 智一
【氏名】菊池 智史
【氏名】青柳 誠司
個別代理人の代理人 【識別番号】100074332、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昇
【識別番号】100138416、【弁理士】、【氏名又は名称】北田 明
審査官 【審査官】臼井 卓巳
参考文献・文献 特開2012-241832(JP,A)
特開平10-086087(JP,A)
特開平08-112794(JP,A)
特開平03-264431(JP,A)
特開平06-226674(JP,A)
特開2004-230550(JP,A)
特表2008-507649(JP,A)
国際公開第2011/130475(WO,A2)
調査した分野 B25J 15/06
F16B 47/00
F04F 5/20
特許請求の範囲 【請求項1】
対象物を吸着するための吸着体を備えた吸着機構であって、
前記吸着体が、対象物に当接する可撓性及び弾力性を有する当接部と、該当接部に設けられた変形可能な変形部とを備え、前記変形部を変形させる外力を付与する外力付与部を備えて構成され、
前記変形部は、対象物との当接状態において前記外力付与部からの外力により対象物から離間する側へ変形され、該変形部の変形により対象物との間に外部よりも減圧された密閉空間が形成されて前記吸着体が対象物を吸着するように構成され、
前記吸着体が、前記当接部の側方を覆う側壁部を備え、前記側壁部が、前記当接部よりも保形強度が高くかつ変形可能に形成されていることを特徴とする吸着機構。
【請求項2】
前記側壁部の厚みが前記当接部の厚みより厚くなるように、該側壁部と該当接部とが一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸着機構。
【請求項3】
前記側壁部が、前記当接部の外周縁から直交する方向に延出されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸着機構。
【請求項4】
前記外力付与部が、吸引力を発生させる吸引部から構成され、前記吸引部からの吸引力が前記当接部と前記側壁部とで形成される内部空間に供給されるように構成され、前記当接部に前記変形部を複数備え、該各変形部が、内側に凹部を有する薄肉部から構成され、前記全ての凹部が前記内部空間に連通しており、前記吸引部の吸引力が前記内部空間を介して前記凹部に伝達されて前記薄肉部が変形するように構成されていることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の吸着機構。
【請求項5】
前記当接部は、中央部ほど外側に突出する円弧形状に構成されていることを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の吸着機構。
【請求項6】
前記側壁部が取り付けられる基台を備えていることを特徴とする請求項1~5のうちのいずれか1項に記載の吸着機構。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を吸着するための吸着体を備えた吸着機構に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる吸着機構は、ロボットハンドに用いられることが多い。この吸着機構がロボットハンドに用いられる場合には、吸引部からの吸引力で対象物を吸着体で吸着する。その吸着状態で他の場所へ移動して吸着を解除することによって、対象物の移動を行うことができる。この吸着機構としては、例えば、複数のエジェクタに圧縮エアを供給することにより負圧を生成する装置と、これら装置により生じた負圧により対象物を吸着するよう、エジェクタと同数設けられる吸引口とを備えて構成されている(例えば、特許文献1参照)。この吸着機構の各吸引口には、開閉用のバルブが内蔵され、それらのバルブの開閉を制御することによって、対象物を吸着する又は吸着解除することができる。
【0003】
また、特許文献2,3には、吸盤を対象物に当接させて真空装置からの吸引力で吸引することによって、対象物を吸盤で吸着する構成のものが開示されている。前記吸盤は、下端が開放され、下側ほど広がったラッパ状の吸着部と、吸着部の上側に一体化され、吸着部の内部を真空にすべく真空装置からの真空エアを供給するための吸引口が形成された円筒部とを備えている。そして、前記吸引口にそれを開閉する開閉用のバルブを設け、そのバルブを制御することによって、吸引する状態と吸引しない状態とに切り替えて、対象物を吸着する又は吸着解除することができる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2008-507649号公報(図1参照)
【特許文献2】特開2004-230550号公報(図1参照)
【特許文献3】特開平6-226674号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記3つの特許文献の構成では、吸引口に開閉用のバルブの他、バルブを切り替え操作するための配線等の電気的な構成を設けなければならない。そのため、構造が複雑になるだけでなく、各バルブを切り替えるタイミングを制御するための制御構成も複雑になるという不都合があった。特に、吸引口が多くなればなるほど、前記不都合が顕著になるものであった。
【0006】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、構造及び制御構成を簡素にすることができる吸着機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸着機構は、前述の課題解決のために、対象物を吸着するための吸着体を備えた吸着機構であって、前記吸着体が、対象物に当接する可撓性及び弾力性を有する当接部と、該当接部に設けられた変形可能な変形部とを備え、前記変形部を変形させる外力を付与する外力付与部を備えて構成され、前記変形部は、対象物との当接状態において前記外力付与部からの外力により対象物から離間する側へ変形され、該変形部の変形により対象物との間に外部よりも減圧された密閉空間が形成されて前記吸着体が対象物を吸着するように構成され、前記吸着体が、前記当接部の側方を覆う側壁部を備え、前記側壁部が、前記当接部よりも保形強度が高くかつ変形可能に形成されていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、吸着体の当接部を対象物に当接させた当接状態において外力付与部の外力が変形部に付与されることによって、変形部が対象物から離間する側(吸着体の内部側)へ変形する。この変形により変形部と対象物との間に外部よりも減圧された密閉空間が形成される。この減圧された密閉空間が形成されることにより密閉空間と外部との間に圧力差が発生し、その圧力差で対象物を吸着体に吸着することができる。また、吸着体は、開放された構成ではなく、密閉された構成であるため、塵が吸着体の内部に入り込むことがない。このため、吸着力が塵の堆積により低下するといったことがなく、長期間に亘って安定した吸着力を発揮することができる。
【0009】
また、本発明の吸着機構は、前記側壁部の厚みが前記当接部の厚みより厚くなるように、該側壁部と該当接部とが一体形成されている構成であってもよい。
【0010】
上記のように、当接部と側壁部とが一体形成されていれば、別体形成された当接部と側壁部とを連結する構成に比べて組立作業面及び部品管理面のいずれにおいても有利になる。
【0011】
また、本発明の吸着機構は、前記側壁部が、前記当接部の外周縁から直交する方向に延出されている構成であってもよい。
【0012】
また、本発明の吸着機構は、前記外力付与部が、吸引力を発生させる吸引部から構成され、前記吸引部からの吸引力が前記当接部と前記側壁部とで形成される内部空間に供給されるように構成され、前記当接部に前記変形部を複数備え、該各変形部が、内側に凹部を有する薄肉部から構成され、前記全ての凹部が前記内部空間に連通しており、前記吸引部の吸引力が前記内部空間を介して前記凹部に伝達されて前記薄肉部が変形するように構成されていてもよい。
【0013】
上記構成のように、複数の凹部が当接部と側壁部とで形成される内部空間に連通する構成にしておけば、内部空間に吸引部の吸引力を作用させるだけで、吸引部の吸引力が内部空間を介して全ての凹部に伝達され、全ての薄肉部を変形させることができる。これにより、各凹部に吸引部の吸引力を伝達するように、各凹部を制御する構成に比べて、制御構成を簡素にすることができる。
【0014】
また、本発明の吸着機構は、前記当接部が、中央部ほど外側に突出する円弧形状に構成されていてもよい。
【0015】
また、本発明の吸着機構は、前記側壁部が取り付けられる基台を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外力付与部の外力を変形部に作用させるだけで、対象物を吸着体に吸着することができるため、吸引口に開閉用のバルブを設けることが不要にできるだけでなく、該バルブを切り替え操作するための配線等の電気的な構成及びバルブを切り替えるタイミングを制御する制御構成を不要にすることができる。よって、構造及び制御構成を簡素にすることができる吸着機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明の吸着機構を示し、(b)は(a)の吸着機構における吸着体の拡大断面図である。
【図2】(a)は吸着機構における吸着体にて直方体を吸着した状態を示す断面図、(b)は本発明における吸着機構における吸着体で球体を吸着した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の吸着機構における吸着体で把持できる基本的な原理を示し、(a)は対象物に吸着体を当接した状態を示す断面図、(b)は対象物を吸着体で吸着した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の吸着機構における吸着体の別の実施形態を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(a)は、対象物を吸着力で吸着するための吸着機構1を示している。この吸着機構1は、対象物を吸着するための吸着体2と、吸着体2に吸着力を発生させるために後述する変形部8Bを変形させる外力を付与する外力付与部3とを備えている。

【0020】
外力付与部3は、吸引力を発生させる吸引部からなり、この吸引部は、真空を発生させる真空ポンプから構成されている。

【0021】
吸着体2と真空ポンプ3との間には、バルブ4が設けられている。このバルブ4を自動的又は人為的に切り替え操作することによって、吸着体2内のエアを排出して吸着体2内を吸着体2外(外気)の圧力よりも減圧する状態と、減圧された吸着体2内を吸着体2外(外気)に開放して吸着体2外(外気)と同圧に戻す状態とに切り替えることができる。吸着体2内を吸着体2外(外気)よりも減圧することによって、対象物を吸着体2で吸着できる。また、減圧された吸着体2内を吸着体2外(外気)に開放することによって、吸着した対象物を吸着解除できる。尚、バルブ4と真空ポンプ3とが第1ホース5を介して連結され、吸着体2とバルブ4とが第2ホース6を介して連結されている。従って、真空ポンプ3からの吸引力が、第1ホース5、バルブ4、第2ホース6を介して吸着体2へ伝達される。また、第2ホース6の途中部分には、第2ホース6の内部において大気圧以下の圧力を測定するための真空計Pが接続されている。この真空計Pの測定値から、吸着体2が吸着動作中かどうかを把握することができる。

【0022】
吸着体2は、第2ホース6に接続された基台7に取り付けられ、対象物に当接する当接部8と、当接部8の側方を覆うべく、当接部8の外周縁から基台7側へ延出された側壁部9とを備えている。当接部8は、中央部ほど外側に突出する円弧形状に構成されているが、平面形状であってもよいし、その他各種の形状であってもよい。そして、当接部8と側壁部9とが、可撓性及び弾力性を有する樹脂材料から一体形成されている。そして、吸着体2は、当接部8と側壁部9とで外気と密閉された内部空間を有する構成となっている。可撓性及び弾力性を有する樹脂材料としては、例えばシリコーンゴム等のエラストマーを用いるのが最適であるが、軟質性を有する各種の合成樹脂であってもよい。

【0023】
基台7の厚み方向一端(後端)に、第2ホース6が接続される円筒状部7Aが突出形成され、円筒状部7Aの中心部に、第2ホース6と連通する貫通孔7Kが形成されている。この貫通孔7Kは、基台7の厚み方向一端側(後端側)に形成された断面形状円形の小径孔7aと、この小径孔7aの内部側端から基台7の厚み方向他端(前端)に亘って形成され、かつ、小径孔7aよりも大きな直径を有する断面形状円形の大径孔7bとから構成されている。

【0024】
また、基台7の厚み方向他端(前端)に、側壁部9の遊端部(後端部)9Aが嵌まり込む凹部7Bが形成されている。この凹部7Bに嵌め込まれた側壁部9は、凹部7Bの内側に配置された挟持部材10によって挟持固定されている。挟持部材10は、中央に大径孔7bと連通する貫通孔10aを有する円板部10Aと、この円板部10Aの外周縁から直交する方向に延出される円筒部10Bとから構成されている。

【0025】
当接部8の内側(裏面側)の多数の部位には、凹部8Aが形成されている。それら凹部8Aが形成されることによって、その部分が薄肉部8Bを構成している。これら薄肉部8Bは、変形可能な変形部を構成し、これら変形部8Bは、対象物との当接状態において真空ポンプ3からの吸引力により対象物から離間する側(吸着体2の内部側)へ引っ張られて変形する。これら変形部8Bの変形により変形部8Bと対象物との間に外部(外気)よりも減圧された密閉空間が形成され、吸着体2が対象物を吸着する。薄肉部8Bの数としては、12個から16個の間の任意の数に設定することができるが、薄肉部8Bの大きさによっては、1個又は2個でもよいし、また、対象物の形状や大きさに合わせて薄肉部8Bの数を設定することができる。

【0026】
対象物を吸着する基本的な原理を図3(a),(b)に基づいて説明する。図1(b)及び図2(a),(b)では、吸着体2の薄肉部8Bを多数備えたものを示しているが、図3(a),(b)では、分かりやすくするために、1つの薄肉部8Bを備えたものを示している。つまり、当接部8そのものが薄肉部8Bから構成され、この薄肉部8Bの外周縁から直交する方向に円筒状の側壁部9が延出されて、吸着体2を構成している。換言すれば、図1(b)で示した凹部8Aが形成されていない吸着体2を構成している。このように構成された薄肉部8Bを吸着したい対象物である板状体S1に当接させると、図3(a)に示すように薄肉部8Bの外面8bと板状体S1の外面Sbとの間に僅かな空間H1が形成される。バルブ4を切り替えて真空ポンプ3からの吸引力を吸着体2へ供給することによって、吸着体2の内部の空間X1の圧力を外部(外気)の圧力よりも減圧される。この減圧により、薄肉部8Bが板状体S1から離間する側へ変形して(吸着体2の内部側に凹んで)、図3(b)に示すように大きな空間H2となる。このように空間の体積が増大すると、ボイル・シャルルの法則により圧力が下がり(減圧され)、板状体S1を空間H2で吸着することができる。但し、薄肉部8Bの弾性復元力があるため、吸着体2の内部の空間X1の圧力をP1、空間H2の圧力をP2、薄肉部8Bの圧力をP3とすると、P1=P2+P3の関係が成立し、つり合った状態となる。また、空間H2の面積をS2とすると、吸着体2の吸着力F2は、S2×P2となる。

【0027】
また、吸着体2の内部には、充填材としてのガラスビーズ11が充填されており、対象物との当接時に、充填材が適度な抵抗となるので、吸着体2を構成する側壁部9が不測に(必要以上に大きく)変形して(潰れて)、当接部8の当接面(外面)8bが対象物に良好に沿わないことを回避することができる。これにより、どのような形状の対象物であっても、確実に吸着することができる。ここでは、吸着体2の内部にガラスビーズ11を充填しているが、発泡ビーズや炭酸カルシウム等の粒状の物質の他、スポンジ、ゴムチップ、オガクズ等であってもよい。要するに、エアを通すことができるとともに対象物との当接時に対象物の形状に沿って側壁部9が良好に変形することができる構成であれば、どのような形状及び材料の充填材であってもよい。

【0028】
吸着体2の内部に充填されたガラスビーズ11が、当接部8の凹部8Aに入り込むことを阻止するための第1フィルター12を当接部8の内面(裏面)8Uに接着剤を用いて貼り付けている(係止手段を用いて係止固定してもよい)。この第1フィルター12を設けることによって、凹部8Aにガラスビーズ11が入り込んで薄肉部8Bが変形することが阻止されるといったトラブルを確実に回避することができる。また、吸着体2の内部に充填されたガラスビーズ11が挟持部材10の貫通孔10aを通して第2ホース6側へ排出されることを阻止するための第2フィルター13を挟持部材10に接着剤を用いて貼り付けている(係止手段を用いて係止固定してもよい)。

【0029】
前記のように構成された吸着体2(図1(b)参照)により、例えば床面Gに置かれた2つの形状の対象物S2,S3を吸着する場合を、図2(a),(b)に基づいて説明する。図2(a)では、上面の略中心部に凹部14が形成された直方体S2を吸着体2で吸着した状態を示している。まず、直方体S2の上面Sbに吸着体2の当接部8の当接面8bを当接させる、すると、前述したように薄肉部8Bの外面8bと直方体S2の上面Sbとの間に僅かな空間(図示せず)が形成される。そして、バルブ4を切り替えて真空ポンプ3からの吸引力を吸着体2へ供給することによって、吸着体2の内部空間X2の圧力が外部(外気)の圧力よりも減圧される。この減圧によって、全ての薄肉部8Bが直方体S2から離間する側へ引っ張られて吸着体2の内側に凹むように変形する。この変形により、薄肉部8Bの外面8bと直方体S2の上面Sbとの間に大きな空間H3が発生する。このように空間の体積が増大すると、ボイル・シャルルの法則により圧力が下がり(減圧され)、直方体S2を吸着することができる。図2(a)のように直方体S2の凹部14に対応する薄肉部8Bが直方体S2に当接していない場合であっても、吸着体2の内部空間X2が密閉された空間であるため、吸着体2の内部空間X2の圧力を確実に下げることができる。しかも、吸着体2の内部空間X2が密閉された空間であるため、塵が吸着体2の内部に入り込むことがなく、吸着力が塵の堆積により低下するといったことがなく、長期間に亘って安定した吸着力を発揮することができる。

【0030】
また、図2(b)では、球体S3を吸着体2で吸着した状態を示している。まず、球体S3の上面Sbに吸着体2の当接部8の当接面8bを当接させる。すると、前述したように薄肉部8Bの外面8bと球体S3の上面Sbとの間に僅かな空間(図示せず)が形成される。続いて、バルブ4を切り替えて真空ポンプ3からの吸引力を吸着体2へ供給することによって、吸着体2の内部の空間X2の圧力が外部(外気)の圧力よりも減圧される。この減圧によって、全ての薄肉部8Bが球体S3から離間する側へ引っ張られて吸着体2の内側に凹むように変形する。これにより、薄肉部8Bの外面8bと直方体S2の上面Sbとの間に大きな空間H3が発生する。このように空間の体積が増大すると、ボイル・シャルルの法則により圧力が下がり(減圧され)、図2(b)に示すように、球体S3を吸着することができる。この場合も図2(a)と同様に、吸着体2の内部の空間X2が密閉された空間であるため、塵が吸着体2の内部に入り込むことがなく、吸着力が塵の堆積により低下するといったことがなく、長期間に亘って安定した吸着力を発揮することができる。

【0031】
真空ポンプ3からの吸引力を吸着体2へ供給すべくバルブ4を切り替えるタイミングは、当接部8が対象物に当接したことを検出した時の検出信号に基づいて行う場合が考えられるが、バルブ4を切り替える切り替えスイッチを人為的に操作してバルブ4を切り替えてもよい。尚、当接部8が対象物に当接したことを検出する手段としては、磁気センサや光反射型センサ等を用いることができる。

【0032】
本発明では、真空ポンプ3の吸引力を変形部8Bに作用させるだけで、対象物を吸着体2に吸着することができるため、吸引口に開閉用のバルブを設けることが不要にできるだけでなく、バルブを切り替え操作するための配線等の電気的な構成及びバルブを切り替えるタイミングを制御する制御構成を不要にすることができ、構造及び制御構成を簡素にすることができる。

【0033】
また、図1(a)で示す吸着機構1を実際に作製し、いろんな対象物の吸着試験を行った。具体的には、吸着体2の直径を54mm、吸着体2の当接面8bから基台7の背面7Fまでの寸法を25mm、吸着体2の厚みを1mm、直径6mmの薄肉部を12個に設定した吸着体2を作製した。また、真空ポンプ3として、ダイヤフラムポンプ(アルバック機工株式会社製の型番DA-30S、到達真空度26.6kPa)を用いた。前記作製した吸着体2で平面部分のある対象物を吸着した場合、最大で2.1kgの対象物を吸着することができた。また、吸着体2の一部(12個のうちの10個の薄肉部)の吸着のみで0.12kgの物体を吸着することができた。また、曲率半径77mm、質量0.5kgの水を入れたガラス瓶を30度傾けた状態で吸着することができた。

【0034】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。

【0035】
例えば、吸着体2を図4に示すように構成してもよい。つまり、図1(b)の吸着体2は、当接部8の内側に凹部8Aを形成して薄肉部8Bを形成したが、図4の吸着体2は、当接部8の内側に形成された凹部8Aに対応する当接部8の外側にも凹部8Cを形成して薄肉部8Bを構成している。また、図4では、当接部8の厚みよりも側壁部9の厚みを厚く形成して側壁部9の保形強度を向上させることによって、図1(b)で示したガラスビーズ11を吸着体2の内部に充填しなくてもよい(フィルター12,13も不要となる)。また、当接部8と側壁部9とを別々に形成し、側壁部9を当接部8よりも保形強度が高いように構成し、それらを一体化して吸着体2を構成してもよい。

【0036】
前記実施形態では、側壁部9が変形可能に構成した場合を示したが、対象物の吸着面がフラット面である場合には、側壁部9を変形不能な金属や硬質プラスチック等で構成することができる。

【0037】
また、前記実施形態では、変形部8Bを変形させるための外力としてエア(気体)を用いたが、液体を用いてもよい。この液体の場合は、液体ポンプで吸着体2の内部の液体を取り除くことになる。また、変形部8Bに例えば伸縮作動するピストロッドのロッドの先端を連結しておき、ピストンロッドを短縮作動させることによって、変形部8Bを引っ張り変形させるようにしてもよい。また、前記実施形態の真空ポンプに代えて、例えば吸着体2の内部のエアを吸引するためのシリンダであってもよい。

【0038】
また、前記実施形態では、当接部に形成した薄肉部を変形部としたが、全域に亘って同一厚みの当接部とし、その当接部のうちの変形させたい特定部分を他の部分よりも変形し易い材料から構成して、その特定部分を変形部に構成してもよい。

【0039】
また、前記実施形態では、吸着体2を、当接部8と側壁部9とで構成したが、当接部8のみで構成してもよい。この場合、平面のある対象物を吸着することになる。

【0040】
本発明の吸着機構は、ロボットハンドに用いて対象物をハンドリングする場合に適用できる他、窓面に吸着させて移動させることによって清掃を行う清掃機械、箱詰めするための商品をピッキングするピッキング装置、対象物を吸着により固定して各種の加工を行う加工装置、対象物を吸着して搬送する搬送装置等においても適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…吸着機構、2…吸着体、3…真空ポンプ(外力付与部、吸引部)、4…バルブ、5,6…ホース、7…基台、7A…円筒状部、7B…凹部、7K…貫通孔、7a…小径孔、7b…大径孔、8…当接部、8A…凹部、8B…薄肉部(変形部)、8b…外面(当接面)、9…側壁部、9A…遊端部、10…挟持部材、10A…円板部、10B…円筒部、10a…貫通孔、11…ガラスビーズ、12,13…フィルター、14…凹部、G…床面、H1,H2,H3…空間、P…真空計、S1…板状体、S2…直方体、S3…球体、Sb…外面(上面)、X1,X2…空間
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3