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明細書 :遷移金属酸化物及び水溶性高分子化合物を含有する複合膜

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6065528号 (P6065528)
公開番号 特開2014-062218 (P2014-062218A)
登録日 平成29年1月6日(2017.1.6)
発行日 平成29年1月25日(2017.1.25)
公開日 平成26年4月10日(2014.4.10)
発明の名称または考案の名称 遷移金属酸化物及び水溶性高分子化合物を含有する複合膜
国際特許分類 C08J   5/18        (2006.01)
G03C   1/50        (2006.01)
C08K   3/22        (2006.01)
C08L 101/00        (2006.01)
C08L   1/00        (2006.01)
C08K   5/05        (2006.01)
C08K   5/09        (2006.01)
G02B   5/23        (2006.01)
FI C08J 5/18 CEP
G03C 1/50
C08K 3/22
C08L 101/00
C08L 1/00
C08K 5/05
C08K 5/09
G02B 5/23
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2012-247332 (P2012-247332)
出願日 平成24年11月9日(2012.11.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 特許法第30条第2項適用、2012年光化学討論会講演要旨集(2012年9月7日発行)の第182頁にて発表
特許法第30条第2項適用 特許法第30条第2項適用、2012年9月12日~14日東京工業大学において開催された2012年光化学討論会にて発表
優先権出願番号 2012041139
優先日 平成24年2月28日(2012.2.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年10月28日(2015.10.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】山▲崎▼ 鈴子
【氏名】安達 健太
【氏名】石田 裕貴
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
審査官 【審査官】増永 淳司
参考文献・文献 特開昭53-143346(JP,A)
特開平06-242472(JP,A)
特開平06-250307(JP,A)
特開平09-127559(JP,A)
特開2008-272289(JP,A)
特開平07-188590(JP,A)
特開昭62-043438(JP,A)
特開平09-208715(JP,A)
調査した分野 C08J 5/18
C08K 3/22
C08K 5/05
C08K 5/09
C08L 1/00
C08L 101/00
G02B 5/23
G03C 1/50
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
遷移金属酸化物、アルキルセルロース、及びヒドロキシ基を有する水溶性化合物(ただし、前記アルキルセルロースを除く)を含有する複合膜。
【請求項2】
遷移金属酸化物が酸化タングステンであることを特徴とする請求項1に記載の複合膜。
【請求項3】
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物がアルコール類であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合膜。
【請求項4】
アルコール類がエチレングリコール又はグリセリンであることを特徴とする請求項に記載の複合膜。
【請求項5】
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物が有機酸類であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合膜。
【請求項6】
有機酸類がシュウ酸又はグリコール酸であることを特徴とする請求項に記載の複合膜。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の複合膜を用いた調光フィルム。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載の複合膜を用いた記録媒体。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の複合膜を用いた青写真用感光体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属酸化物及び水溶性高分子化合物を含有する複合膜に関し、特に、フォトクロミズムを利用した調光フィルム、あるいは、記録媒体、青写真(日光写真ともいう)用感光体等として使用し得る遷移金属酸化物と水溶性高分子化合物を含有する複合膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策として、建築物等の省エネルギー化が課題となっている。特に、窓ガラスからのエネルギーの流出入を制御することが、冷暖房の省エネルギー化に直結すると考えられている。
そのため、従来から、光の透過率を制御できる調光ガラス(スマートウインドウ)の開発が盛んに行われている。
【0003】
一方、遷移金属酸化物、特にアモルファス酸化タングステンは、フォトクロミズムやエレクトロクロミズムを有することが知られている。特に、酸化タングステン薄膜をガラス上に形成し、電圧を印加することで、タングステンの酸化還元反応によって可逆的に発色させる調光ガラスが実用化されている。しかし、これら酸化タングステンの薄膜作成方法としては、主に真空蒸着法やスパッタリング法が用いられており、高コストで繁雑な作業が必要となる。さらに、電圧の印加によるエレクトロクロミズムを利用した発色では、発色・退色の変化に電気エネルギーを消費するため、省エネルギーの観点からも好ましくないという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するため、例えば特許文献1及び特許文献2には、塗布法により成膜できる遷移金属酸化物と水溶性高分子のゲル複合膜が開示されている。同文献には、タングステン酸水溶液に、バインダーとしてポリエチレングリコールを加えて混合水溶液を調製し、これを基板に塗布することでゲル複合膜を得られることが記載されている。
しかし、上記ゲル複合膜は、透明で均一な膜が作製しがたい。
【0005】
また、特許文献3には、ポリビニルピロリドンを含有する酸化タングステン膜が開示されている。同文献には、酸化タングステン水溶液にポリビニルピロリドンを添加することで太陽光可変調光断熱材料を得られることが記載されている。
しかし、同文献には、発色や透明性の程度が具体的には記載されておらず、高い遮光性が得られるかどうか不明である。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平6-242472号公報
【特許文献2】特開平6-250235号公報
【特許文献3】特開平9-127559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、フォトクロミズムを示す調光フィルム等として使用できる遷移金属酸化物と水溶性高分子化合物を含有する複合膜であって、成膜性、暗下での透明性に優れ、且つ、紫外線を含む光照射によって強い青色の発色による高い遮光性を示す複合膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、酸化タングステン等の遷移金属酸化物、アルキルセルロース等の水溶性高分子化合物に、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類や、シュウ酸、グリコール酸等の有機酸類等のヒドロキシ基を有する水溶性化合物を混合することで、室内灯下では高い透明性を有しながら、光照射による発色時には高い遮光性を有する薄膜が得られることを見出し、さらに、本発明の複合膜は、特に有機酸類等を用いた場合には、発色をより長時間保持することができるため記録材料等としても利用し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)遷移金属酸化物、水溶性高分子化合物、及びヒドロキシ基を有する水溶性化合物(ただし、前記水溶性高分子化合物を除く)を含有する複合膜、
(2)遷移金属酸化物が酸化タングステンであることを特徴とする上記(1)に記載の複合膜、
(3)水溶性高分子化合物がアルキルセルロースであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の複合膜、
(4)ヒドロキシ基を有する水溶性化合物がアルコール類であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の複合膜、
(5)アルコール類がエチレングリコール又はグリセリンであることを特徴とする上記(4)に記載の複合膜、
(6)ヒドロキシ基を有する水溶性化合物が有機酸類であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の複合膜、及び、
(7)有機酸類がシュウ酸又はグリコール酸であることを特徴とする上記(6)に記載の複合膜に関する。
【0010】
本発明は、また、
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の複合膜を用いた調光フィルム、
(9)上記(1)~(7)のいずれかに記載の複合膜を用いた記録媒体、及び
(10)上記(1)~(7)のいずれかに記載の複合膜を用いた青写真用感光体に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複合膜は、成膜性、暗下での透明性に優れ、且つ、光照射によって強い青色の発色による高い遮光性を示すため、調光フィルムとして有用である。
また、本発明の複合膜は、太陽光に露光することで十分発色し、且つ前記複合膜は一度発色すると発色が完全に消えるまでには時間がかかるため、青写真(日光写真ともいう)用感光体として利用し得る。
さらに、本発明の複合膜は、特にシュウ酸、グリコール酸のような有機酸を含有する場合は、発色が完全に消えるまでの時間が一層長いため、記録媒体として利用し得る。
また、本発明の複合膜は、環境にやさしい材料を主成分として使用することができることから廃棄も簡単であり、調光による省エネルギー対策を含む各種用途の材料として効果的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】酸化タングステン/メチルセルロース複合膜のブラックライト照射前の640nmの光透過率(○)と、ブラックライト照射後の640nmの光の吸光度(△)を示す図である。
【図2】酸化タングステンを7.2×10-3mol含む酸化タングステン/メチルセルロース複合膜の、ブラックライト照射前後の写真である(中央から左側が照射前、右側が照射後)。
【図3】エチレングリコールを添加した酸化タングステン/メチルセルロース複合膜の、ブラックライト1時間照射後の吸収スペクトルである。
【図4】エチレングリコールを添加した酸化タングステン/メチルセルロース複合膜のブラックライト照射前の640nmの光透過率(●)と、ブラックライト照射後の640nmの光の吸光度(▲)を示す図である。
【図5】エチレングリコール及びグリセリンの添加量と膜の水分含量との関係を示す図である 。
【図6】エチレングリコールの添加に伴う吸収スペクトルの変化を示す図である。
【図7】実施例1の複合膜にブラックライトを照射したときの吸収スペクトルの経時変化を示す図である。
【図8】実施例1の複合膜のブラックライト照射前後の写真である(中央から左側が照射前、右側が照射後)。
【図9】実施例1の複合膜について、ブラックライト照射時及び照射後暗所で放置下での、640nm及び980nmの吸光度の経時変化を示す図である。
【図10】実施例2の複合膜について、ブラックライト照射時及び照射後暗所で放置下での、640nm及び980nmの吸光度の経時変化を示す図である。
【図11】実施例6の複合膜を太陽光で露光した結果を示す図である。
【図12】酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中に含まれる、グリコール酸/酸化タングステン又はシュウ酸/酸化タングステンの各モル比における、複合膜の透明度を、640nmの光の透過率で示す図である。
【図13】実施例6、実施例8及び実施例9の複合膜の経過時間と吸光度の変化を示す図である。
【図14】実施例8の複合膜へ印字した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1)複合膜
本発明の複合膜は、遷移金属酸化物、水溶性高分子化合物及びヒドロキシ基を有する水溶性化合物を必須成分とする。
以下に、各成分について説明する。

【0014】
(遷移金属酸化物)
本発明において、遷移金属とは、周期表第3族から第11族に属する元素、及び第12族に属する元素を包含する。
本発明の遷移金属酸化物としては、例えばWO,MoO,V、Nb,TiO,IrO,MnO,CoO,FeO等が挙げられ、特にWO、MoOが好ましい。

【0015】
(水溶性高分子化合物)
上記遷移金属酸化物に、水溶性高分子化合物を配合することにより、上記遷移金属酸化物粒子を均一に分散させることができ、透明性に優れた複合膜を形成することができる。本発明の水溶性高分子化合物としては、天然の水溶性高分子化合物、半合成の水溶性高分子化合物、合成の水溶性高分子化合物等が挙げられる。

【0016】
天然の水溶性高分子化合物としては、
アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン、グリチルリチン酸等の植物系高分子;
キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子;
コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子が挙げられる。
半合成の水溶性高分子化合物としては、
カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子化合物;
メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース;
ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;
メチルヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース;
ニトロセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、セルロース粉末等のセルロース系高分子化合物;
アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子が挙げられる。
合成の水溶性高分子化合物としては、
ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル系高分子、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子化合物;
ポリエチレングリコール20,000、ポリエチレングリコール6,000、ポリエチレングリコール4,000等のポリオキシエチレン系高分子化合物;
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、PEG/PPGメチルエーテル等の共重合体系高分子化合物;
ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子化合物等が例示される。
これらは一種単独または二種以上を混合して用いることができる。また、これらのうち、アルキルセルロースが好ましく、メチルセルロースが特に好ましい。
これら水溶性高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、本発明の複合膜を作製することができる限り特に制限されないが、500~500,000,000で水溶性のものであればよく、好ましくは1,000~500,000である。

【0017】
(ヒドロキシ基を有する水溶性化合物)
本発明においてヒドロキシ基を有する水溶性化合物は、上記水溶性高分子以外の比較的低分子量の化合物であり、これらを添加することで、形成した膜の透明性が向上し、さらに、フォトクロミズム性も著しく向上する。
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物としては、ヒドロキシ基を1個又は複数個有し、水溶性であり、かつ、好ましくは、膜を室温~30℃程度で乾燥する時に蒸発しないものであれば有機化合物でも無機化合物でもよく、例えば、有機化合物としては、酸素原子を連結基として有していてもよいヒドロキシ基を有する炭化水素、有機酸類等が挙げられ、無機化合物としてはリン酸、ホウ酸等の酸類が挙げられる。中でも、アルコール類、有機酸類が好ましい。

【0018】
「ヒドロキシ基を有する炭化水素」の「炭化水素」としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、例えば、エチル、n-プロパン、イソプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ヘプタデカン、オクタデカン等のアルカン類;
エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、ノネン、デセン、ブタジエン、イソプレン等のアルケン類;
エチン、プロピン、ブチン、ペンチン等のアルキン類が挙げられる。
脂環式炭化水素としては、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等が挙げられる。

【0019】
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物として、下記にアルコール類を例示する。
本発明のアルコール類としては、炭素数2以上の、好ましくは炭素数2~30の水溶性の多価アルコールが挙げられる。一価のアルコールも、水溶性で室温~30℃程度で蒸発しないものであれば可能である。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ネオペンチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリヒドロキシステアリルアルコール、3-ブテン-1-オール等の脂肪族アルコール;
シクロペンタントリオール、シクロヘキサントリオール、シクロヘキサンヘキサオール等の環状アルコールが挙げられる。
これらは一種単独または二種以上を混合して用いることができ、沸点が100℃以上であることが好ましい。二価又は三価のアルコールを含有することがより好ましく、エチレングリコール、グリセリンがさらに好ましい。

【0020】
芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、ナフタレン等が挙げられ、ヒドロキシ基を有する水溶性芳香族炭化水素としては、フェノール、カテコール、ピロガロール等が挙げられる。
酸素原子を連結基として有する炭化水素は、上記炭化水素の分子内に酸素原子を1個又は2個以上有する化合物を意味する。ヒドロキシ基を有する、酸素原子を連結基として有する炭化水素としては、例えば、グルコース、マルトース等の糖類等が挙げられる。

【0021】
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物として、下記に有機酸類を例示する。
本発明の有機酸としては、炭素数1以上の、好ましくは炭素数1~10のカルボン酸類もしくはスルホン酸類が挙げられる。
カルボン酸類としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。
スルホン酸類としては、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等が挙げられる。
これらは一種単独または二種以上を混合して用いることができ、モノヒドロキシカルボン酸類又はジカルボン酸類が好ましく、グリコール酸、シュウ酸がさらに好ましい。

【0022】
(複合膜)
本発明の複合膜の厚さは、特に制限されないが、光の透過性と膜の耐久性との兼ね合いから、20~80μmであることが好ましい。
遷移金属酸化物、水溶性高分子化合物及びヒドロキシ基を有する水溶性化合物を含有する複合膜形成用溶液をフィルム作成用基板上に流し、乾燥して得た複合膜中の各成分の割合は、本発明の複合膜を形成できる限り制限はないが、遷移金属酸化物100(重量)に対して、水溶性高分子化合物は通常30~150(重量)、好ましくは50~100(重量)であり、ヒドロキシ基を有する水溶性化合物は通常20~200(重量)である。
水溶性高分子化合物の添加量が上記範囲より多いと、本発明の複合膜の強度が増すものの、粘度が高くなって空気を含み、膜が白濁する。他方、水溶性高分子化合物の添加量が上記範囲より少ないと、膜の強度が弱くなる。
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物の添加量が上記範囲より多いと、形成する複合膜に水分を多く含有し、膜が扱いづらくなる。他方添加量が上記範囲より少ないと、膜の透明性やフォトクロミズム性の向上の効果が充分に得られない。
複合膜の透明度の向上のためには、特に、遷移金属酸化物とヒドロキシ基を有する水溶性化合物のモル比が重要である。
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物がアルコール類の場合には、複合膜を透明(透過率100%)とするには、アルコール類/遷移金属酸化物(モル比)は、例えば、グリセリン/WOの場合は1.0以上、エチレングリコール/WOの場合は2.0を越え、好ましくは3.0以上が必要である。アルコール類は遷移金属酸化物に対して過剰、たとえば、モル比が6程度に加えても、成膜後の複合膜が不透明になることはない。
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物が有機酸類の場合には、複合膜を透明(透過率100%)とするには、有機酸類/遷移金属酸化物(モル比)は、例えば、シュウ酸/WOの場合は、0.1~0.2、グリコール酸/WOの場合は、0.2~0.8が必要である。有機酸類を遷移金属酸化物に対して過剰に加えると、成膜後の複合膜が不透明になる。

【0023】
また、本発明の複合膜は、含有する水分量に応じてフォトクロミック特性が変わる。ヒドロキシ基を有する水溶性化合物の添加量が多くなるほど膜に含まれる水分量が増加するが、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールの場合、水分量が少ない場合は640、980nmに吸収ピークが見られるが、水分量が多くなると775nmに吸収ピークがシフトする。

【0024】
(その他の層)
本発明の複合膜は、耐久性に十分な厚みを有しているが、さらに耐久性を高めるためや、ガラス等との接着性などの新たな物性を得ることを目的として、保護層や接着層等を設けることができる。
その他の層を設ける場合、当該層は、本発明の複合膜の上部及び/又は下部に設けられてよいが、当該その他の層の組成物を本発明の複合膜の構成成分と同時に塗布して成膜してもよい。

【0025】
(基体)
本発明の複合膜は、例えばガラスや金属等の無機基体や、樹脂等の有機基体を含む従来公知の基体上に担持させてもよい。調光フィルムとして使用する場合は、基体としては、フォトクロミズムの効果を損なわないよう、透明性の高いものが好ましい。

【0026】
2)複合膜の製造方法
(複合膜形成用溶液の調製)
まず、上述した遷移金属酸化物、水溶性セルロース、及びヒドロキシ基を有する水溶性化合物の混合水溶液である複合膜形成用溶液を、例えば以下に示すように調製する。
本発明の遷移金属酸化物は、コロイド水溶液(ゾル)として用いることが好ましい。遷移金属酸化物のコロイド水溶液としては、例えば、タングステン酸ナトリウムなどの遷移金属酸化物の塩の水溶液をイオン交換(Na+ →H+ )したものを用いることができる。この遷移金属酸化物のコロイド水溶液中の濃度としては、特に限定されないが、例えば0.01~0.15mol/L程度で行うことができる。
遷移金属酸化物水溶液の濃度は、誘導結合プラズマ発光分光分析等によって求めることができる。

【0027】
上記のようにして調製した遷移金属酸化物のコロイド水溶液に、水溶性高分子化合物及びヒドロキシ基を有する水溶性化合物を混合する。
複合膜形成用溶液中の水溶性高分子化合物及びヒドロキシ基を有する水溶性化合物の濃度は、成膜できる限り特に限定されないが、例えば、いずれも、0.1~10重量%程度で成膜することができる。
複合膜形成用溶液中の各成分の配合比は、上記複合膜中の各成分の配合比と同様である。

【0028】
(膜の作製)
その後、従来公知の方法により複合膜を作製することができる。たとえば、ガラスやテフロン(登録商標)基板上に複合膜形成用溶液を塗布、印刷などの手段により成膜し、次いで乾燥してゲル化させることにより作製することができる。乾燥の条件はアルコール類が蒸発しない温度で乾燥すればよく、常圧下、室温~30℃の温度範囲で乾燥してもよいし、蒸発しにくいアルコール類を用いれば加熱乾燥してもよい。

【0029】
3)用途
上記のようにして得られる複合膜は、フォトクロミック膜であり、適当な波長を有する紫外線などを照射することにより発色し、照射を止めて暗室あるいは室内灯下に放置すると、消色し、透明となる。そのため、調光フィルム等として使用することができる。基体としては、透明なガラス、樹脂等を用いることができる。本発明の複合膜を調光フィルム等として使用する場合、発色後の消色がより早いことが好ましいことから、加える水溶性化合物はアルコール類が好ましい。

【0030】
また、本発明の複合膜は、繰り返し使用が可能な記録媒体として用いることができる。基体として紙、布、樹脂フィルム等を用いることができる。本発明の複合膜を記録媒体等として使用する場合、発色後の消色がより遅いことが好ましいことから、加える水溶性化合物は有機酸類が好ましい。

【0031】
前記記録媒体に印字を行う方法としては、記録媒体をマスキングし、その上から光を照射する方法等が挙げられる。光源としては、記録媒体が発色する限り、いかなる光源を用いても良いが、例えばブラックライトや紫外線ランプ等を用いることができる。

【0032】
さらに、本発明の複合膜は青写真(日光写真)用感光体として用いることもできる。例えば学校などで科学教材として使用される青写真用感光体として用いることができる。基体としては紙、ガラス、樹脂等を用いることができる。

【0033】
前記青写真用感光体の感光方法としては、下絵を感光体に密着させ、その上から光を照射する方法等が挙げられる。光源としては、例えば太陽光、ブラックライトや紫外線ランプ等を用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例において本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例において、各種装置は以下のものを用いた。
誘導結合プラズマ発光分光分析装置:Varian社製、Liberty Series II
紫外可視吸収スペクトル装置:島津製作所社製、UV-1600
ブラックライト:東芝社製、FL4BLB
【実施例】
【0035】
I ヒドロキシ基を有する水溶性化合物としてアルコール類を用いた例
(酸化タングステンコロイド水溶液の調製)
タングステン酸ナトリウム水溶液(0.48mol/L)90mLをマグネティックスターラー上で攪拌し、その中に7mol/Lの塩酸9.5mLをゆっくり滴下し、完全に溶解させた。得られた透明溶液を、分画分子量3500の透析膜に入れて水1L中で透析した。透析操作は1時間ごとに水1Lを交換しながら8時間行うことで、塩化物イオンを除去した。得られたコロイド溶液中のWO濃度は、誘導結合プラズマ発光分光分析を行った結果、0.12mol/Lであった。
【実施例】
【0036】
(酸化タングステン/メチルセルロース複合膜の製造)
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液を水で希釈して、0.012、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.08mol/Lの濃度にし、それぞれの溶液60mLにメチルセルロース1.2gを加えて溶解した。それぞれガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約40μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。
【実施例】
【0037】
(エチレングリコール無添加の酸化タングステン/メチルセルロース複合膜のフォトクロミズムの確認試験)
上で得た酸化タングステン/メチルセルロース複合膜の、640nmの光透過率を測定した。測定には、紫外可視吸収スペクトル装置を用いた。
光透過率の測定方法としては、複合膜を1cm×4cmの大きさにカットし、光路長1cmの石英セルの内側にはりつけて、分光器を用いて640nmの光透過率を測定した。
以下、複合膜の吸光度及び吸収スペクトルは、同様に測定した。
図1の○印は、複合膜の透過率と複合膜中の酸化タングステン量の関係を示す。酸化タングステン量の増加とともに膜は白濁し、光透過率が減少した。酸化タングステン量が7.2×10-4molの複合膜の光透過率は95.9%、7.2×10-3molの複合膜の光透過率は9.55%であった。
【実施例】
【0038】
それぞれの複合膜に、ブラックライト(4.3mW/cm、最大波長365nm)を照射すると、複合膜全体が青色に発色した。ブラックライト1時間照射後の複合膜の、640nmの光の吸光度を測定した。測定には紫外可視吸収スペクトル装置を用いた。
図1の△印は、光照射1時間後の複合膜の吸光度(測定波長:640nm)を示す。また図2は、酸化タングステンを7.2×10-3mol含有する複合膜のブラックライト照射前(左)と照射後(右)の写真である。酸化タングステン量の増加とともに青色は強くなり、7.2×10-3molの場合の吸光度は1.88を示した。これは遮光率98.7%に相当する。
【実施例】
【0039】
(エチレングリコールの添加効果の確認試験(1))
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液を0.012mol/Lになるように水で希釈し、この溶液60mLに、メチルセルロース1.2gを加えて溶解した。
さらに、エチレングリコールを0.3、0.6、1.2、1.8、又は3mL添加し、それぞれガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約60μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。
【実施例】
【0040】
得られたそれぞれの複合膜にブラックライトを照射すると、直ちに複合膜全体が青色に発色した。ブラックライト1時間照射後の複合膜の吸収スペクトルを測定した。測定には、紫外可視吸収スペクトル装置を用いた。
図3は、エチレングリコールを添加した酸化タングステン/メチルセルロース複合膜の、ブラックライト1時間照射後の吸収スペクトルである。図3の結果より、エチレングリコールの添加によって、酸化タングステンの発色が濃くなることがわかった。
【実施例】
【0041】
(エチレングリコールの添加効果の確認試験(2))
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液を水で希釈して0.012、0.02、0.03、0.06、0.07、0.08、0.09mol/Lの濃度にし、それぞれの溶液60mLに、メチルセルロース1.2gを加えて溶解した。さらにエチレングリコールを0.6mL添加し、それぞれガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約60μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。
【実施例】
【0042】
それぞれの複合膜について、図1と同様、640nmの光透過率(●)とブラックライト1時間照射後の640nmの光の吸光度(▲)を測定した。結果を図4に示す。
図1と比較すると、同じ酸化タングステン量であっても、エチレングリコールを添加することにより発色が増強されることがわかった。さらに、エチレングリコールを添加した場合、酸化タングステン量が増加しても膜は白濁化せず、透明性を保持することを見出した。また、光照射1時間における吸光度は、薄膜に含まれる酸化タングステン量が多いほど高く、例えば3.6×10-3molの場合の吸光度は2.08(遮光率は99.2%)、7.2×10-3molの場合の吸光度は3.3(遮光率は99.9%)であった。
【実施例】
【0043】
(フォトクロミック特性に与える水分含有量の影響の確認試験)
エチレングリコールの場合
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液60mLに、メチルセルロース1.2gを加えて溶解した。
さらに、エチレングリコールをそれぞれ1.2ml、1.6ml又は2ml添加した後、それぞれガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約60μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。得られた酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中のエチレングリコール/酸化タングステンのモル比はそれぞれ3.0、4.0及び5.0である。
【実施例】
【0044】
グリセリンの場合
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液60mLに、メチルセルロース1.2gを加えて溶解した。
さらに、グリセリンをそれぞれ0.66g、0.99g又は1.98g添加した後、それぞれガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約60μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。得られた酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中のグリセリン/酸化タングステンのモル比はそれぞれ1.0、1.5及び3.0である。
上記で得た各モル比の割合でエチレングリコール又はグリセリンを含む、酸化タングステン/メチルセルロース複合膜の水分量を、水分計(島津製作所、MOC63u)で、以下の条件で測定した。結果を図5に示す。
【実施例】
【0045】
実験方法:
2cm×2cmの大きさに切断した膜を120℃まで昇温させて、そのときの重量減少から水分量を求めた。同じ組成の膜を2~5サンプル用いて測定し、平均値を図にプロットした。
エチレングリコール、グリセリンの含量が増えるにつれて、膜に含まれる水分量が増加した。
上記エチレングリコールの3つの膜を用いて、4ワットブラックライト4本を24分間照射したときの吸収スペクトルを図6に示す。水分量が少ない場合には、640、980nmに吸収ピークがみられるが、水分量が多くなると、775nm付近に吸収ピークが観察できた。同様なスペクトルの変化が上記グリセリンを用いた3つの膜でも観察できた。
【実施例】
【0046】
[実施例1]
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液を0.06mol/Lになるよう水で希釈し、この溶液60mLにメチルセルロース1.2gを加えて溶かした。さらにエチレングリコールを0.6mL添加後、ガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約60μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。得られた酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中のエチレングリコール/酸化タングステンのモル比は3.0である。
【実施例】
【0047】
実施例1で得た複合膜にブラックライトを照射したときの吸収スペクトルを図7に示す。
ブラックライトの照射により、速やかに640nmと980nm吸収ピークが増大した。
【実施例】
【0048】
実施例1で得た複合膜のブラックライト照射前(左)と照射3時間後(右)の写真を図8に示す。
また、図8の膜を暗所にて室温で放置した際の、640nm及び980nmの吸光度の経時変化を図9に示す。放置によって640nm及び980nmの吸光度が減少し、およそ20時間後には透明な膜に戻った。
【実施例】
【0049】
[実施例2]
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液60mLにメチルセルロース1.2gを加えて溶かした。さらにエチレングリコールを1.2mL添加後、ガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約60μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。得られた酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中のエチレングリコール/酸化タングステンのモル比は3.0である。
酸化タングステンコロイド水溶液を0.12mol/L、エチレングリコール1.2mLとする他は、実施例1と同様に複合膜を作製した。
【実施例】
【0050】
実施例2で得た複合膜にブラックライトを80分間照射し、さらに暗所にて、室温で放置した際の、640nm及び980nmの吸光度の経時変化を図10に示す。
【実施例】
【0051】
[実施例3]
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液を0.012mol/Lになるように水で希釈し、希釈後の溶液60mlにメチルセルロース1.2gを加えて溶かした。さらにグリセリンを0.0756g(0.1vol%)添加後、ガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約60μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。得られた酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中のグリセリン/酸化タングステンのモル比は1.1である。
【実施例】
【0052】
[実施例4]
グリセリンを0.38g(0.5vol%)添加する以外は実施例3と同様に、酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。得られた酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中のグリセリン/酸化タングステンのモル比は5.7である。
【実施例】
【0053】
[実施例5]
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液60mLにグリセリンを0.38g添加する以外は、実施例3と同様に、酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。得られた酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中のグリセリン/酸化タングステンのモル比は0.57である。
【実施例】
【0054】
(光透過率及び吸光度の測定)
実施例3~5の複合膜それぞれについて、640nmの光透過率、及びブラックライト照射1時間経過後の吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0055】
【表1】
JP0006065528B2_000002t.gif
【実施例】
【0056】
(太陽光での露光試験)
[実施例6]
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液60mLにメチルセルロース1.2gを加えて溶かした。さらにエチレングリコールを1.2mL添加後、ガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約60μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。得られた酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中のエチレングリコール/酸化タングステンのモル比は3.0である。
実施例6で得られた複合膜を太陽光で露光したものを図11に示す。この露光は、9時から19時の間に、屋外で行われたものである。露光終了後から、翌朝の確認までの間は、光が当たらない状態で保存した。図11の結果より、露光5分後には複合膜が青く発色しており、5時間後の14時の時点では青色が非常に濃くなっていることが分かる。このことから本発明の複合膜は、太陽光下で十分発色することが明らかとなった。露光終了後12時間以上経過した後でも青色が残存し、2週間たった時点でも青色を確認することができた。
【実施例】
【0057】
[実施例7]
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液60mLにメチルセルロース1.2gを加えて溶かした。さらにグリセリンを0.66g添加後、ガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約60μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。得られた酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中のグリセリン/酸化タングステンのモル比は1.0である。
【実施例】
【0058】
II ヒドロキシ基を有する水溶性化合物として有機酸類を用いた例
(グリコール酸の添加効果の確認試験)
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液60mLに、メチルセルロース1.2gを加えて溶解した。
さらに、グリコール酸を0.068、0.14、0.27、0.41、0.54、0.68又は0.82g添加し溶解させた後、それぞれガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約60μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。得られた酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中のグリコール酸/酸化タングステンのモル比はそれぞれ0.13、0.25、0.5、0.75、1.0、1.25及び1.5である。
【実施例】
【0059】
(シュウ酸の添加効果の確認試験)
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液60mLに、メチルセルロース1.2gを加えて溶解した。
さらに、シュウ酸二水和物を0.057、0.09、0.11、0.14、0.18、0.20、0.23、0.27又は0.36g添加し溶解させた後、それぞれガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約60μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。得られた酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中のシュウ酸/酸化タングステンのモル比はそれぞれ0.06、0.10、0.125、0.15、0.20、0.225、0.25,0.30及び0.40である。
【実施例】
【0060】
上記で得た、各モル比の割合でグリコール酸/酸化タングステン又はシュウ酸/酸化タングステンを含む、酸化タングステン/メチルセルロース複合膜の透明度を図12に示す。複合膜の透明度は640nmの光の透過率で示した。図12の結果より、複合膜中のグリコール酸/酸化タングステンのモル比が0.25~0.80、シュウ酸/酸化タングステンのモル比が0.10~0.20であるときに、複合膜は光透過度がほぼ100であることが分かる。
【実施例】
【0061】
[実施例8]
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液60mLに、メチルセルロース1.2gを加えて溶解した。さらに、グリコール酸を0.135g添加し溶解させた後、ガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約60μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。得られた酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中のグリコール酸/酸化タングステンのモル比は0.25である
【実施例】
【0062】
[実施例9]
0.12mol/Lの酸化タングステンコロイド水溶液60mLに、メチルセルロース1.2gを加えて溶解した。さらに、シュウ酸二水和物を0.18g添加し溶解させた後、ガラスやテフロン(登録商標)製の容器に入れて室温~30℃で24時間乾燥させて、18cm×18cm、厚さ約60μmの酸化タングステン/メチルセルロース複合膜を得た。得られた酸化タングステン/メチルセルロース複合膜中のシュウ酸/酸化タングステンのモル比は0.20である。
【実施例】
【0063】
実施例6、7、8及び9の複合膜それぞれについて、4Wブラックライト4本照射の条件下で、吸光度2に到達するのに要する時間を表2に示す。実施例8で示される、グリコール酸を添加した複合膜において、発色が特異的に遅くなっていることが分かる。
【実施例】
【0064】
【表2】
JP0006065528B2_000003t.gif
【実施例】
【0065】
吸光度が約2に到達した実施例6、実施例8及び実施例9の複合膜の経過時間と吸光度の変化を図13に示す。図13の結果より、グリコール酸を添加した実施例8で示される複合膜及びシュウ酸を添加した実施例9で示される複合膜は、エチレングリコールを添加した実施例6で示される複合膜よりも青色の消失が遅くなることが分かる。翌日には実施例6で示される複合膜は完全に青色が消えていたが、実施例8で示される複合膜及び実施例9で示される複合膜は翌日も青色が残存していた。さらに、実施例9で示される複合膜は、2週間放置後でも青色が残存し、4カ月後には完全に青色が消えた。
【実施例】
【0066】
グリコール酸を添加した実施例8で示される複合膜の上に原稿(黒字の背景で字の部分を透明にしたOHPシート)を置き、ガラス板で挟んだのち、4Wブラックライト4本を15分間照射して印字したものを図14に示す。図14の下に示した拡大図から、複合膜にくっきりと印字されていることが分かる。複合膜上の字は、翌日には完全に青色が消えていたが、照射時間を15分から54分へと延ばした場合、青色の消失速度がより遅いという結果を得た。この結果から、印字する際に光量子密度を調節することで、複合膜上での発色による文字の保持時間(あるいは退色時間)をコントロールすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、室内灯下では透明であり、紫外線の照射によって遮光率99%を達成できるフォトクロミックフィルムが製造できる。そのため、調光フィルムや、記録媒体、青写真(日光写真)用感光体等として有用である。
さらに、フィルムの主成分がセルロース系高分子などである場合は、無害であり、食品添加剤、医薬品、化粧品などにも利用されている環境にやさしい物質であり、本発明の産業上の利用可能性は大きい。
図面
【図5】
0
【図6】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図3】
4
【図4】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13