TOP > 国内特許検索 > グラフェン配線構造 > 明細書

明細書 :グラフェン配線構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5783530号 (P5783530)
公開番号 特開2012-144421 (P2012-144421A)
登録日 平成27年7月31日(2015.7.31)
発行日 平成27年9月24日(2015.9.24)
公開日 平成24年8月2日(2012.8.2)
発明の名称または考案の名称 グラフェン配線構造
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
H01B   7/00        (2006.01)
H01M   2/20        (2006.01)
H01M   8/02        (2006.01)
FI C01B 31/02 101Z
H01B 7/00
H01M 2/20 A
H01M 8/02 Y
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2011-163193 (P2011-163193)
出願日 平成23年7月26日(2011.7.26)
優先権出願番号 2010284762
優先日 平成22年12月21日(2010.12.21)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年6月16日(2014.6.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
発明者または考案者 【氏名】成塚 重弥
【氏名】丸山 隆浩
個別代理人の代理人 【識別番号】110000017、【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
審査官 【審査官】浅野 裕之
参考文献・文献 国際公開第2011/058651(WO,A1)
国際公開第2011/040266(WO,A1)
国際公開第2007/142273(WO,A1)
特開2012-117052(JP,A)
特開2009-070911(JP,A)
A.REINA et al,Large Area, Few-Layer Graphene Films on Arbitrary Substrates by Chemical Vapor Deposition,Nano Letters,American Chemical Society,2009年 1月14日,Vol.9, No.1,p.30-35
CAO,Y. et al,Sandwich-type functionalized graphene sheet-sulfur nanocomposite for rechargeable lithium batteries,Physical Chemistry Chemical Physics,2011年 5月 7日,Vol.13, No.17,p.7660-7665
調査した分野 C01B 31/00~31/04
H01B 7/00
H01M 2/20
H01M 8/02
WPI
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
絶縁樹脂層とグラフェン層とが繰り返し積層され、各グラフェン層の上下には前記絶縁樹脂層が存在する、グラフェン配線構造。
【請求項2】
前記絶縁樹脂層と前記グラフェン層との間には、グラフェン化を促進する機能を有する触媒金属層が介在する、請求項1に記載のグラフェン配線構造。
【請求項3】
各グラフェン層は、いずれも奇数枚のグラフェンシートを積層したものであるか、又は、いずれも偶数枚のグラフェンシートを積層したものである、
請求項1又は2に記載のグラフェン配線構造。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン配線構造
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、炭素原子の六員環が単層で連なって平面状になった二次元材料である。このグラフェンは、電子移動度がシリコンの100倍以上と言われている。近年、グラフェンをチャネル材料として利用したトランジスタが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、絶縁基板上に、絶縁分離膜で分離された触媒膜パターンを形成し、その触媒膜パターン上にグラフェンシートを成長させたあと、そのグラフェンシートの両側にドレイン電極及びソース電極を形成すると共に、グラフェンシート上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成している。ここで、触媒膜パターンは絶縁膜で分離されているが、グラフェンシートは触媒膜パターンの端では横方向に延びることから、絶縁分離膜の両側の触媒膜パターンからグラフェンシートが延びて絶縁分離膜上でつながった構造が得られると説明されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2009-164432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、グラフェン素材を利用する方法については、これまであまり多く報告されていない。一例としては、グラファイトに粘着テープを付着させたあとそのテープを剥がすことにより、粘着テープの粘着面にグラファイトから分離したグラフェンシートを付着させたものを利用することが知られている。
【0005】
しかしながら、粘着テープに付着した状態のグラフェンシートでは、サイズがミクロンメータオーダーと小さい上に、層数も上手くコントロールできない、そのような状況のため配線材料としては適さず、限られた電流しか流すことができないという問題があった。また、柔軟性を確保したいという要望もあった。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、比較的大きな電流を流すことができる柔軟なグラフェン配線構造を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のグラフェン配線構造は、絶縁樹脂層とグラフェン層とが繰り返し積層され、各グラフェン層の上下には前記絶縁樹脂層が存在するものである。
【0008】
このグラフェン配線構造によれば、グラフェン層が多段になっているため、1つのグラフェン層と比べて大きな電流を流すことができる。また、それぞれの段のグラフェン層の層数を数層ないし数十層とあまり大きくない層数に制限することと、絶縁樹脂層の存在によって柔軟性が確保される。なお、「グラフェン層」とは、炭素原子の六員環が単層で連なったグラフェンシートを1枚又は複数枚(例えば2~10枚)有する層をいう。
【0009】
本発明のグラフェン配線構造において、前記絶縁樹脂層と前記グラフェン層との間には、グラフェン化を促進する機能を有する触媒金属層が介在していてもよい。こうしたグラフェン配線構造を作製する際に、絶縁樹脂層の上に触媒金属層を形成し、その触媒金属層に炭素源を供給してグラフェンを成長させた場合、絶縁樹脂層とグラフェン層との間には触媒金属層が介在することになるが、こうした触媒金属層は良好な導電性を有するため、そのまま残しておいてもよい。こうして得られたグラフェン配線構造は、絶縁樹脂層とグラフェン層との間には触媒金属層が介在することになる。なお、「グラフェン化を促進する機能」とは、炭素源と接触してその炭素源に含まれる炭素成分が互いに結合してグラフェンになるのを促進する機能をいう。
【0010】
本発明のグラフェン配線構造において、各グラフェン層は、いずれも奇数枚のグラフェンシートを積層したものであるか、又は、いずれも偶数枚のグラフェンシートを積層したものとしてもよい。奇数枚のグラフェンシートを積層したグラフェン層は電気特性が似通っているため、各グラフェン層がいずれも奇数枚のグラフェンシートを積層したものである場合には、その奇数枚のグラフェンシートを積層したグラフェン層の電気特性が強調される。また、偶数枚のグラフェンシートを積層したグラフェン層は電気特性が似通っているため、各グラフェン層がいずれも偶数枚のグラフェンシートを積層したものである場合には、その偶数枚のグラフェンシートを積層したグラフェン層の電気特性が強調される。
【0011】
本発明のグラフェン配線構造の製法は、例えば、絶縁樹脂層の上にグラフェン層を設けたあと該グラフェン層の上に絶縁樹脂層を設ける、という作業を繰り返す工程を含むものとしてもよい。ここで、絶縁樹脂層の上にグラフェン層を設けるにあたり、別途作製しておいたグラフェン層を前記絶縁樹脂層の上に配置してもよい。このようにグラフェン層を別途作製するには、例えば、基板の上にグラフェン化を促進する機能を有する触媒金属層を一筆書きが可能な形状に形成し、触媒金属層の表面に炭素源を供給してグラフェンを成長させ、触媒金属層からグラフェンをグラフェン素材として取り出してもよい。なお、こうして取り出した複数のグラフェン素材の両端を引っ張って略直線状にした後、その状態を保ったまま絶縁樹脂で固めることにより、本発明のグラフェン配線構造を作製してもよい。
【0012】
本発明のグラフェン配線構造のうち、絶縁樹脂層とグラフェン層との間にグラフェン化を促進する機能を有する触媒金属層が介在するものの製法は、例えば、絶縁樹脂層の上に触媒金属層を一筆書きが可能な形状(例えば直線状、ジグザグ状、渦巻き状など)となるように形成し、該触媒金属層の表面に炭素源を供給してグラフェンを成長させることによりグラフェン層を設け、触媒金属層を残したままグラフェン層の上に絶縁樹脂層を設ける、という作業を繰り返す工程を含むものとしてもよい。また、絶縁樹脂層とグラフェン層との間にグラフェン化を促進する機能を有する触媒金属層が介在しないものの製法は、例えば、絶縁樹脂層の上に触媒金属層を一筆書きが可能な形状となるように形成し、該触媒金属層の表面に炭素源を供給してグラフェンを成長させることによりグラフェン層を設け、そのグラフェン層の一端を挟持部材で挟み込んだ状態で触媒金属層を溶かして除去したあとグラフェン層の上に絶縁樹脂層を設ける、という作業を繰り返す工程を含むものとしてもよい。なお、予め配線を引き回したときの形状が決まっている場合には、絶縁樹脂層や触媒金属層をそれと同様の形状に形成しておけば、できあがったグラフェン配線構造を曲げることなくそのまま使用することができる。
【0013】
上述した製法において、触媒金属層を一筆書きが可能な形状に形成するには、例えば、周知のフォトリソグラフィ法によってパターニングしてもよい。その場合、まず基板の全面に触媒金属層を形成し、次に所定形状の触媒金属層が残るようにレジストパターンを形成したあとウェットエッチング又はドライエッチングを行ってもよい。ウェットエッチングは、触媒金属層の金属種に応じて適宜エッチング液を選定すればよい。ドライエッチングも、触媒金属層の金属種に応じて適宜使用するガスを選定すればよい。また、所定形状の触媒金属層を形成するには、所定形状以外の部分を被覆するシャドウマスクを用いて触媒金属を蒸着又はスパッタしてもよい。
【0014】
上述した製法において、炭素源としては、例えば、炭素数1~6の炭化水素やアルコールなどが挙げられる。
【0015】
上述した製法において、グラフェンを成長させる方法としては、例えば、アルコールCVD、熱CVD、プラズマCVD、ガスソースMBEなどが挙げられる。アルコールCVDは、例えば、成長温度を絶縁樹脂層の耐熱温度未満で適宜設定し、炭素源としてメタノールやエタノールなどのアルコールの飽和蒸気を供給する。アルコール飽和蒸気は、バブラにキャリアガスを流すことにより発生させてもよい。キャリアガスとしては、アルゴン、水素、窒素などを利用することができる。圧力は大気圧であってもよいし、減圧下であってもよい。熱CVDは、例えば、成長温度を絶縁樹脂層の耐熱温度未満で適宜設定し、炭素源としてメタン、エチレン、アセチレン、ベンゼンなどを供給する。炭素源はアルゴンや水素などをキャリアガスとして供給し、炭素源の分圧は例えば0.002-5Pa程度とする。成長時間は例えば1-20分、圧力は加圧下(例えば1kPa)であってもよいし減圧下であってもよい。炭素源を分解するためにホットフィラメントを使用することが多い。プラズマCVDは、例えば、成長温度を絶縁樹脂層の耐熱温度未満で適宜設定し、圧力を1-1.1Pa、炭素源をメタン、メタン流量を5sccm、キャリアガスを水素、水素流量を20sccmとし、プラズマパワーを100W程度とする。なお、成長温度を絶縁樹脂層の耐熱温度未満で適宜設定するにあたっては、例えばその耐熱温度をわずかに下回る温度としてもよい。ガスソースMBEは、例えば、炭素源としてエタノールを用い、エタノールで飽和した窒素ないしは水素ガスの流量を0.3-2sccmとし、真空中で炭素源分解のため2000℃に加熱したWフィラメントを使用する。基板温度は400-600℃程度である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】グラフェン配線構造10の斜視図である。
【図2】図1のA-A断面図である。
【図3】グラフェン配線構造10の製造工程図である。
【図4】両端に電極が形成されたグラフェン配線構造10の断面図である。
【図5】グラフェン配線構造60の斜視図である。
【図6】図5のB-B断面図である。
【図7】グラフェン素材110の製造工程図である。
【図8】渦巻き状の触媒金属層126が形成された基板本体112の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下には、本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら説明する。

【0018】
[第1実施形態]
図1はグラフェン配線構造10の斜視図、図2は図1のA-A断面図である。

【0019】
本実施形態のグラフェン配線構造10は、絶縁樹脂層12,22,32,42とグラフェン層16,26,36とが繰り返し積層されている。グラフェン層16の上下には絶縁樹脂層12,22が存在し、グラフェン層26の上下には絶縁樹脂層22,32が存在し、グラフェン層36の上下には絶縁樹脂層32,42が存在する。また、絶縁樹脂層12とグラフェン層16との間には触媒金属層14が介在し、絶縁樹脂層22とグラフェン層26との間には触媒金属層24が介在し、絶縁樹脂層32とグラフェン層36との間には触媒金属層34が介在する。触媒金属層14,24,34は、グラフェン化を促進する機能を有する。各グラフェン層16,26,36は、いずれも奇数枚(ここでは3枚)のグラフェンシートが積層されたものである。

【0020】
次に、こうしたグラフェン配線構造10の製造例について図3を参照しながら説明する。図3はグラフェン配線構造10の製造工程図である。

【0021】
(1)まず耐熱性ポリイミド(例えばデュポン社製のカプトン Hタイプなど)からなる絶縁樹脂層12を用意する(図3(a)参照)。このとき、絶縁樹脂層12が形成された基板を用意してもよい。

【0022】
(2)その絶縁樹脂層12の上に触媒金属層14を蒸着し、必要に応じて周知のフォトリソグラフィ法によってパターニングし、その後、熱処理を行うことにより触媒金属層14を結晶化させる(図3(b)参照)。なお、上記手法の他に、パルススパッター堆積法(PSD)技術によって触媒金属層14を堆積させながら結晶化させてもよい。触媒金属層14の材質としては、Cu,Ni,Co,Ru,Fe,Pt,Au等が挙げられる。こうした金属のうち、表面に三角格子(三角形の頂点に金属原子が配置された構造)を持つものが好ましい。例えば、FCCの(111)面、BCCの(110)面、HCPの(0001)面が三角格子になる。触媒金属層14の厚さは、特に限定するものではないが、例えば1-500nm程度としてもよい。但し、膜厚が薄すぎると、触媒金属が粒子化してしまうおそれがあるため、粒子化しない程度の厚さとするのが好ましい。本実施形態では、触媒金属層14としてNiを用い、長方形状の薄板となるようにパターニングするものとする。Niを結晶化させると、Ni表面は(111)面に再配列される。そして、Ni(111)面には、Ni原子を頂点とした三角格子が構成される。

【0023】
(3)図示しない反応容器内に、結晶化した触媒金属層14を備えた絶縁樹脂層12を入れ、その触媒金属層14の上に炭素原料を供給することによりグラフェンを成長させグラフェン層16を形成する(図3(c)参照)。触媒金属層14の上にグラフェン層16を形成するには、絶縁樹脂層12の耐熱温度を超えないようにして、上述したアルコールCVD、熱CVD、プラズマCVD、ガスソースMBEなどの手法によりグラフェンを成長させる。グラフェンの成長過程において、C原子はNi原子から構成されるそれぞれの三角形の重心の真上に配置される。これにより、C原子を頂点とした六角形が形成され、この六角形が互いに結合していくことでグラフェンが成長していく。グラフェン層16のグラフェンシートの枚数の制御は、反応容器に取り付けたラマンスペクトル測定装置でグラフェン層16のラマンシフト位置をモニタリングすることにより行う。具体的には、グラフェンシートが1枚、2枚、5枚、10枚の場合におけるラマンシフト位置はそれぞれ異なることが知られている(Physical Review Letters, Vol.97, p187401(2006)の図2参照)。このため、グラフェンシートの枚数を予め決めておき、その枚数に対応したラマンシフト位置を予め確認しておき、そのラマンシフト位置になるまでグラフェンを成長させる。

【0024】
(4)グラフェン層16の上に耐熱性ポリイミドからなる絶縁樹脂層22を形成し(図3(d)参照)、その後、再び上述した(2)の工程を行うことにより、パターニングされ結晶化した触媒金属層24を絶縁樹脂層22の上に形成し(図3(e)参照)、更に上述した(3)の工程を行うことにより、触媒金属層24の上にグラフェン層26を形成する(図3(f)参照)。絶縁樹脂層22を形成するには、例えば、熱硬化性ポリイミド樹脂を塗布したあと熱処理してその樹脂を硬化させるか、あるいは、耐熱性ポリイミドフィルムを貼り付ける。

【0025】
(5)目的とするグラフェン配線構造10のグラフェン層の数(ここでは3つ)に応じて上述した(4)の工程を所定回数繰り返す(図3(g)参照)。その結果、グラフェン層26の上に絶縁樹脂層32、触媒金属層34、グラフェン層36がこの順に積層される。

【0026】
(6)最後に、グラフェン層36に熱硬化性ポリイミド樹脂を塗布し、熱処理して硬化させて絶縁樹脂層42とし、目的とするグラフェン配線構造10を得る(図3(h)参照)。なお、上述した(1)の工程で絶縁樹脂層12が形成された基板を用いた場合には、その基板を除去する。

【0027】
次に、グラフェン配線構造10の使用例について説明する。グラフェン配線構造10を使用するには、まず、両端に電極を形成する。具体的には、グラフェン配線構造10の絶縁樹脂層12,22,32,42の両端を除去し、グラフェン層16,26,36及び触媒金属層14,24,34を露出させ、その露出した部分を金属で被覆する。これにより、図4に示すように、一端には金属部分12a,22a,32a,42aが形成されるが、これらはグラフェン層16,26,36の一端及び触媒金属層14,24,34の一端と一体となって電極となる。また、他端には金属部分12b、22b、32b、42bが形成されるが、これらはグラフェン層16,26,36の他端及び触媒金属層14,24,34の他端と一体となって電極となる。こうして両端に電極が形成されたグラフェン配線構造10は、例えば燃料電池やリチウム二次電池等のバスバーや自動車のハーネスに使用される。

【0028】
以上詳述した本実施形態のグラフェン配線構造10によれば、グラフェン層16,26,36が多段(3段)になっているため、例えばグラフェン層16のみの場合と比べて大きな電流を流すことができる。また、絶縁樹脂層12,22,32,42の存在によって柔軟性が確保されるし、グラフェン層16,26,36が保護される。

【0029】
また、絶縁樹脂層12とグラフェン層16との間には触媒金属層14が介在し、絶縁樹脂層22とグラフェン層26との間には触媒金属層24が介在し、絶縁樹脂層32とグラフェン層36との間には触媒金属層34が介在するが、こうした触媒金属層14,24,34は良好な導電性を有するため、大きな電流を流す場合に有利になる。

【0030】
更に、各グラフェン層16,26,36は、いずれも奇数枚(ここでは3枚)のグラフェンシートを積層したものであるが、奇数枚のグラフェンシートを積層したグラフェン層は電気特性が似通っているため、その奇数枚のグラフェンシートを積層したグラフェン層の電気特性が強調される。

【0031】
[第2実施形態]
図5はグラフェン配線構造60の斜視図、図6は図5のB-B断面図である。

【0032】
本実施形態のグラフェン配線構造60は、図6に示すように、絶縁樹脂層62,72,82,92とグラフェン層66,76,86とが繰り返し積層されている。グラフェン層66の上下には絶縁樹脂層62,72が存在し、グラフェン層76の上下には絶縁樹脂層72,82が存在し、グラフェン層86の上下には絶縁樹脂層82,92が存在する。各グラフェン層66,76,86は、いずれも奇数枚(ここでは3枚)のグラフェンシートを積層したものである。

【0033】
次に、こうしたグラフェン配線構造60の製造例について図7を参照しながら説明する。図7はグラフェン層66,76,86として使用されるグラフェン素材110の製造工程図である。

【0034】
まず、四角形状のc面サファイアからなる基板本体112を用意し、その基板本体112の全面にNiを成膜して結晶層114とする(図7(a)参照)。続いて、リソグラフィ法により結晶層114を一筆書きが可能な形状、ここではジグザグ状にパターニングし、結晶層114を触媒金属層116とする(図7(b)参照)。

【0035】
次に、触媒金属層116のNiに対して、温度600℃、圧力1kPaにてアセチレンとアルゴンとの混合ガスによりC原子を供給する。すると、Ni表面は(111)面に再配列される。Ni(111)面には、Ni原子を頂点とした三角格子が構成される。そして、供給されたC原子は、Ni原子から構成されるそれぞれの三角形の重心の真上に配置されることで、C原子を頂点とした六角形が形成され、この六角形が互いに結合していくことでグラフェンが成長してグラフェン素材110となる(図7(c)参照)。グラフェン素材110は、触媒金属層116上に形成されるため、触媒金属層116と同じ形状つまりジグザグ状となる。このグラフェン素材110は、第1実施形態と同様に枚数の制御を行い、3枚のグラフェンシートからなるものとする。なお、グラフェンが成長しすぎると、横方向に延びてジグザグを形成する溝を塞いでしまうため、そうなる前に成長を止める。

【0036】
その後、触媒金属層116を酸性溶液で溶かす。ここでは、触媒金属層116はNiであるため、希硝酸を用いる。そして、触媒金属層116が溶けたあと、グラフェン素材110を取り出す(図7(d)参照)。得られたグラフェン素材110は、ジグザグ状つまり線状部110aと屈曲部110bとを交互に備えた形状である。なお、グラフェン素材110を取り出す際には、触媒金属層116を溶かす代わりに、グラフェン素材110をめくるようにして機械的に剥がしてもよい。

【0037】
このようにして得られたグラフェン素材110は、ジグザグ状の自立した素材であるが、両末端を把持して伸ばすことにより線材にすることができる(図7(e)参照)。但し、実際には真っ直ぐに伸びるわけではなく、かっこ内に示すように複数の線状部110aが屈曲部110bで連なった形状になる。こうしたグラフェン素材110を3本用意し、両端を把持して伸ばして直線に近い形状にすると共に上下方向に隙間を空けて並べ、その状態で絶縁樹脂で固める。こうすることにより、グラフェン素材110の両端の把持を解いたとしても、グラフェン素材110は直線に近い形状を維持する。図6に示すB-B断面図では、複数の絶縁樹脂層62,72,82,92を示したが、この製法からわかるように、絶縁樹脂層62,72,82,92は一度に絶縁樹脂を固めて一体に形成されたものである。

【0038】
次に、グラフェン配線構造60の使用例について説明する。グラフェン配線構造60は、予めグラフェン層66,76,86の両端が露出するように絶縁樹脂で固めたものである。このため、その露出した部分を金属で被覆すれば、第1実施形態と同様、グラフェン配線構造60の両端に電極が形成される。こうして両端に電極が形成されたグラフェン配線構造60は、例えば燃料電池やリチウム二次電池等のバスバーや自動車のハーネスに使用される。

【0039】
以上詳述した本実施形態のグラフェン配線構造60によれば、グラフェン層66,76,86が多段(3段)になっているため、例えばグラフェン層66のみの場合と比べて大きな電流を流すことができる。また、絶縁樹脂層62,72,82,92の存在によって柔軟性が確保されるし、グラフェン層66,76,86が保護される。

【0040】
また、各グラフェン層66,76,86は、いずれも奇数枚(ここでは3枚)のグラフェンシートを積層したものであるが、奇数枚のグラフェンシートを積層したグラフェン層は電気特性が似通っているため、その奇数枚のグラフェンシートを積層したグラフェン層の電気特性が強調される。

【0041】
[その他の実施形態]
上述した第1実施形態では、グラフェン配線構造10の両端に電極を形成するにあたり、グラフェン配線構造10の絶縁樹脂層12,22,32,42の両端を除去し、グラフェン層16,26,36及び触媒金属層14,24,34を露出させ、その露出した部分を金属で被覆したが、図3に示す製造工程図の絶縁樹脂層12の代わりに、金属部分12a,12bを有する絶縁樹脂層12を使用してもよい。この場合、他の絶縁樹脂層22,32,42も同様の構成とする。こうすれば、絶縁樹脂層42を形成した時点で、図4に示す両端に電極を有するグラフェン配線構造10が得られる。

【0042】
上述した第1及び第2実施形態では、各グラフェン層はすべて同じ奇数枚のグラフェンシートからなるものとしたが、異なる奇数枚のグラフェンシートとしてもよい。例えば、第1実施形態のグラフェン層16が1枚、グラフェン層26が3枚、グラフェン層36が5枚であってもよい。また、各グラフェン層をすべて同じ偶数枚のグラフェンシートからなるものとしてもよく、異なる偶数枚のグラフェンシートとしてもよい。

【0043】
上述した第2実施形態では、ジグザグ状の触媒金属層116を基板本体112上に形成したが、図8(平面図)に示すように渦巻き状の触媒金属層126を基板本体112上に形成してもよい。この場合も上述した第2実施形態と同様にして触媒金属層126上にグラフェンを成長させたあと、触媒金属層126を溶かすかグラフェンを剥がせば、グラフェンを渦巻き状のグラフェン素材として取り出すことができ、この渦巻き状のグラフェン素材の両末端を把持して伸ばせば線材にすることができる。あるいは、ジグザグ状や渦巻き状以外でも、一筆書き形状であれば上述した第2実施形態と同様にしてその形状のグラフェン素材を取り出すことができる。あるいは、一筆書き形状以外の形状、例えば三角形や四角形などの多角形、円形、楕円形、星形など任意の形状を採用してもよい。この場合には、任意の形状のグラフェン素材を取り出すことができる。

【0044】
上述した第2実施形態では、基板本体112が板状の場合について説明したが、基板本体が円筒状であってもよい。その場合には、例えば基板本体にリボンを巻き付けるような感じで触媒金属層のパターニングを行い、その触媒金属層の表面にグラフェンを成長させることで、非常に長く滑らかな線状のグラフェン素材を簡単に得ることができる。このとき、基板本体は、中空(中が空)であってもよいし、中実(中が詰まっている)であってもよい。円筒状で中空の基板本体にグラフェンを成長させる場合には、基板本体の外面及び内面のいずれか一方に触媒金属層をパターニングし、その触媒金属層の表面にグラフェンを成長させてもよいし、あるいは、基板本体の外面及び内面の両方に触媒金属層をパターニングし、両触媒金属層の表面にグラフェンを成長させてもよい。また、円筒状の基板本体に触媒金属層を形成する方法としては、通常のフォトリソグラフィーに準じた手法を基板本体を回転させながら適用してもよいし、ナノインプリントの技術を用いて機械的にリソグラフィーパターンを転写してもよいし、細いけがき針を使用して機械的にパターニングしてもよい。触媒金属を成膜する方法は、蒸着を採用してもよいし、その金属を含む液状の原料を吹き付ける、もしくはその液中に基板を浸し、その後、熱処理を行い触媒金属の薄膜を形成する方法を採用してもよい。触媒金属層の表面にグラフェンを成長させるには、触媒金属層の表面に炭素源を供給するが、基板本体が円筒状で中空の場合には、基板本体を真空チャンバーと見立ててその中に炭素源となる原料ガスを流してグラフェンを成長させることができるため、真空チャンバーを用意する必要がなくなり、装置構成の大幅な簡略化、ひいては生産性の向上や生産コストの削減など多くの優れた効果を期待できる。

【0045】
上述した第1実施形態では、図3(h)の構造を本発明のグラフェン配線構造の一例として説明したが、図3(g)のように最表面のグラフェン層36が絶縁樹脂で被覆されず露出しているものも本発明のグラフェン配線構造の一例といえる。というのは、図3(g)のうち触媒金属層34及びグラフェン層36を除いた部分は、絶縁樹脂層とグラフェン層とが繰り返し積層され、各グラフェン層の上下には絶縁樹脂層が存在する構造(本発明のグラフェン配線構造)となっているからである。つまり、図3(g)の構造は、本発明のグラフェン配線構造を含んでいる。こうした図3(g)の構造を持つものを燃料電池やリチウム二次電池等のバスバーとして利用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のグラフェン配線構造は、例えばリチウム二次電池のバスバーや自動車のハーネスなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 グラフェン配線構造、12,22,32,42 絶縁樹脂層、12a,12b,22a,22b,32a,32b,42a,42b 金属部分、14,24,34 触媒金属層、16,26,36 グラフェン層、60 グラフェン配線構造、62,72,82,92 絶縁樹脂層、66,76,86 グラフェン層、110 グラフェン素材、110a 線状部、110b 屈曲部、112 基板本体、114 結晶層、116 触媒金属層、126 触媒金属層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7