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明細書 :ガンのリンパ節転移またはそのリスクを判定する方法及びそのための迅速判定キット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4756288号 (P4756288)
登録日 平成23年6月10日(2011.6.10)
発行日 平成23年8月24日(2011.8.24)
発明の名称または考案の名称 ガンのリンパ節転移またはそのリスクを判定する方法及びそのための迅速判定キット
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 A
C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 11
全頁数 16
出願番号 特願2010-540345 (P2010-540345)
出願日 平成22年5月27日(2010.5.27)
国際出願番号 PCT/JP2010/059049
国際公開番号 WO2010/137671
国際公開日 平成22年12月2日(2010.12.2)
優先権出願番号 2009128323
優先日 平成21年5月27日(2009.5.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年10月6日(2010.10.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
発明者または考案者 【氏名】本山 悟
【氏名】三浦 昌朋
【氏名】小川 純一
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
審査官 【審査官】小暮 道明
参考文献・文献 日本消化器外科学会雑誌, vol.41, no.7, 2008.07.01, p.1169(O-1-134)
World J. Gastroenterol., 2006, vol.12, no.23, p.3746-3750
Am. J. Hum. Genet., 2005, vol.77, no.1, p.64-77
J. Mol. Med., 2005, vol.83, no.6, p.440-447
調査した分野 C12N15/
C12Q1/
G01N33/
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
配列表の配列番号4に示される塩基配列で表されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基の遺伝子多型を同定することにより、ガンのリンパ節転移またはそのリスクを判定する方法。
【請求項2】
該遺伝子多型がT/Tタイプであるときに高リスクと判定する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該遺伝子多型の同定をRFLPまたは対応する相補鎖配列との結合により行なう請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
該遺伝子多型の同定をPCR-RFLPにより行なう請求項3に記載の方法。
【請求項5】
PCRにおけるプライマーとして Forwardプライマー:5'-CTT ATA GAC CTG GGC AGT-3'(配列番号1)、Reverseプライマー:5'-GGA GTG AGA CAT CTT CTT G-3' (配列番号2)を用い、制限酵素としてBst4CIを用いる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ガンが固形ガンである請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
配列表の配列番号4に示される塩基配列で表されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基を含む領域を増幅するためのプライマーとRFLPにより該第422番目の塩基における遺伝子多型を判定するための制限酵素を含むガンのリンパ節転移またはそのリスクを判定するためのPCR-RFLP用迅速判定キット。
【請求項8】
プライマー対としてForwardプライマー:5'-CTT ATA GAC CTG GGC AGT-3' (配列番号1)、Reverseプライマー:5'-GGA GTG AGA CAT CTT CTT G-3' (配列番号2)を含む請求項7に記載の迅速判定キット。
【請求項9】
制限酵素Bst4CIを含む請求項8に記載の迅速判定キット。
【請求項10】
配列表の配列番号4に示される塩基配列で表されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基又はこれに対応する相補鎖の塩基を含み、かつ配列番号1及び配列番号2のプライマーを用いたPCR法によって増幅され得る領域に由来するDNA断片に対して特異的にハイブリダイズする核酸を、当該DNA断片に対して特異的にハイブリダイズさせる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ヒトC反応性タンパク質遺伝子の遺伝子多型を同定する際に使用する試料が、全血、白血球、ガン原発巣、リンパ管、リンパ節組織からなる群より選ばれる、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンのリンパ節転移を判定する方法及びそれに用いる迅速判定キットに関する。
【背景技術】
【0002】
ガン細胞は、原発巣を離れ、血管やリンパ管を経由して全身に転移する。ガンの手術では、できるだけ確実に病巣を取り除くことが必要であるため、転移を正確に検出し、転移の度合いに応じて適切な治療をすることが要求される。このため、ガン細胞のリンパ節転移の診断は適切な治療の選択に極めて重要な意義を有している。
【0003】
ガン細胞のリンパ節転移の診断は、治療前に行う画像診断と治療(手術)後に行う病理学的診断に大別することができる。画像診断としては、CT(computed tomography:コンピュータ断層撮影)、PET(positron emission tomography:ポジトロン放出断層撮影法)ないしPETとCTを一体化した装置によるPET-CT、EUS(endoscopic ultrasoundscopy:超音波内視鏡検査)などを使用する方法があり、ガンのリンパ節転移の検出(リンパ節転移の有無等の検査)に使用されているが、これらの画像診断では、微小なリンパ節転移の検出は困難であるか限定的にしか有効でない。一方、病理学的診断は、摘出された数多くのリンパ節組織より作成された標本を顕微鏡下で観察する方法であり、精度が高い確実な診断法であるが、摘出したリンパ節を使用してしか診断ができず、治療(手術)後の診断となるため、予め最適な治療を選択するためには使用できない。このように、治療前診断は画像診断に頼らざるを得ないが、現状では精度が低く、その一方、確実な診断は病理学的診断によりなされるがこれは治療(手術)後の診断である、という課題がガン細胞のリンパ節転移の診断にはあった。
【0004】
このため、ガン細胞のリンパ節転移診断では分子マーカーを用いた分子診断的手法が重要であり、幾つかの手法が公知である。従来公知のそうした分子診断的手法の多くは、正常細胞には発現しないか若しくは発現量が低く、ガン細胞には多く発現するタンパク質(標的タンパク質)または該標的タンパク質をコードする遺伝子に含まれる核酸(標的核酸:DNA、mRNA、cDNAなどの総称として)を分子マーカーとして検出する方法である。具体的には、生体から切除・摘出したリンパ節組織に含まれる標的タンパク質をイムノアッセイにより検出したり、標的核酸を、LAMP法(loop-mediated isothermal amplification method)やPCR(polymerase chain reaction)法などを用いて増幅し、該増幅産物を公知の方法により検出することでガン細胞の転移の診断(判定)を行っている。
【0005】
分子診断的手法として、たとえば、特許文献1(特開2007-175021)は、PIGR、CLDN3、LGALS4、AGR2、TACSTD1、GPX2、RAI3、TSPAN1、CKB、ELF3、FXYD3、CDH1、REG4、GDF 15、CLDN4、OLFM 4、CD9、CDH17、SELENBP、LCN2、TMPRSS4、CFTR、TM4SF3、ID1、CYP2S1、TFF3、EHF、FAT、KLF5、SLC9A3R2、HOXB9、ATP1B1、PCK1、FCGBPからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質をコードする遺伝子のmRNAまたはその断片を含む、大腸ガンに由来のガン細胞のリンパ節転移の有無を判定するために用いられるリンパ節転移マーカーを提案しており、特許文献2(特開2007-037421)は、NM_003404(G1592)、NM_002128(G2645)、NM_052868(G3031)、NM_005034(G3177)、NM_001540(G3753)、NM_005722(G3826)、及びNM_015315(G4370)のデータベースのアクセス番号(シリアル番号)で表される遺伝子セットの発現量を特定の判別式に代入して大腸ガンのリンパ節転移を判定するものである。また、特許文献3(特開2008-020438)は、リンパ節組織を用いて調製された検出試料中のサイトケラチンに関連するポリペプチドを定量することで高い信頼性で乳ガンなどのリンパ節転移を判定できるとしている。
【0006】
一方、最近、炎症反応がDNAを損傷し、血管新生や細胞増殖を刺激し、アポトーシスを阻害するなどしてガンの発生を促進することが知られてきている。これと関連して、血清中のCRP(C-reactive protein:C反応性タンパク質)が、大腸ガン(非特許文献1:Erlinger T.P. et al., JAMA 2004;291;585-590)、食道ガン(非特許文献2:Shimada H. et al., J. Surg. Oncol. 2003;83;248-252)、肝細胞ガン(非特許文献3:Hashimoto K. et al., Cancer 2005;103;1856-1864)、腎臓ガン(非特許文献4:Miyata Y. et al., Urology 2001;58;161-164)及び卵巣ガン(非特許文献5:Hefler L.A. et al., Clin. Cancer Res. 2008;14;710-714)の危険因子及び予後因子として検討されている。
【0007】
また、血清中の高CRP濃度は高いガンの罹患リスクと関係するとされている。たとえば、非特許文献6(Nozoe T. et al., Am. J. Surg. 1998;176(4):335-8)には、大腸ガン患者について肝転移やリンパ節転移が血清中CRP値の術前での上昇と関係していることが記載され、非特許文献7(Nozoe T. et al., Am. J. Surg. 2001; 182(2), 197-201)には食道ガン患者について、リンパ節転移が血清中CRP値の術前での上昇と関係していることが記載されており、また、非特許文献8(Ines G. et al., World J. Gastroenterol. 2006;12(23), 3746-3750)には食道ガン患者の血清中CRP値の高値とリンパ節転移が関係していることが記載されている。
【0008】
一方で、その遺伝子多型が血清中のCRP濃度と強く関連しているとの報告もなされている(非特許文献9:Carlson C.S. et al., Am. J. Hum. Gen. 2005; 77;64-77、非特許文献10:Szalai A.J. et al., J. Mol. Med. 2005;83;440-447)。
【0009】
上記の状況の下、本発明者らは、食道ガン患者のCRP遺伝子多型がガン進展因子となるかどうかを検討した。その結果、CRP-717T>C遺伝子多型がリンパ節転移と関係する可能性を指摘したが(非特許文献11:本山他、「日本消化器外科学会雑誌」第41巻第7号1169頁、2008年7月)、CRP-717T>C遺伝子多型によるガン細胞のリンパ節転移の判定手法は判定精度が低く、有意差をもって転移が判定できず実用に至るものではなかった。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2007-175021
【特許文献2】特開2007-037421
【特許文献3】特開2008-020438
【0011】

【非特許文献1】Erlinger T.P. et al., JAMA 2004;291;585-590
【非特許文献2】Shimada H. et al., J. Surg. Oncol. 2003;83;248-252
【非特許文献3】Hashimoto K. et al., Cancer 2005;103;1856-1864
【非特許文献4】Miyata Y. et al., Urology 2001;58;161-164
【非特許文献5】Hefler L.A. et al., Clin. Cancer Res. 2008;14;710-714
【非特許文献6】Nozoe T. et al., Am. J. Surg. 1998;176(4):335-8
【非特許文献7】Nozoe T. et al., Am. J. Surg. 2001; 182(2), 197-201
【非特許文献8】Ines G. et al., World J. Gastroenterol. 2006;12(23), 3746-3750
【非特許文献9】Carlson C.S. et al., Am. J. Hum. Gen. 2005;77;64-77
【非特許文献10】Szalai A.J. et al., J. Mol. Med. 2005;83;440-447
【非特許文献11】本山他、「日本消化器外科学会雑誌」第41巻第7号1169頁、2008年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来公知の分子診断的手法によるガン細胞のリンパ節転移判定法では、特許文献1乃至3の方法に見られるように、リンパ節転移を確実に判定しようとすると、多数の分子マーカーを判定のための因子として総合的に検討する必要性や、患者への負担が大きく、かつ試料の調製に相当な時間と労力を必要とするリンパ節を試料とする必要があった。また、CRPは、そのタンパク濃度が、年齢や喫煙、他の炎症などの影響も受けて容易に変動する上、CRP-717T>C遺伝子多型がガン細胞のリンパ節転移と関係するとした非特許文献11の結果も後に否定されている。したがって、ガン細胞のリンパ節転移を迅速かつ確実に判定する新たな分子マーカーとそれを用いた分子診断的手法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の通り、血清中の高CRP濃度は特定のCRP遺伝子多型と関連している。しかるに、本発明者らは、血清中の高CRP濃度と関連するCRP遺伝子多型がガン進展因子となり得るという従来の予想からは全く想定されない、SNP識別番号rs1205(本明細書においてCRP1846C>T(rs1205)と表記することがある)遺伝子多型を分子マーカーとして用いればガンのリンパ節転移の判定精度が飛躍的に向上し、極めて有用であるという予想外の事実を見出し、本発明を完成するに至った。ここで、SNP識別番号rs1205(CRP1846C>T(rs1205))遺伝子多型は、CRP遺伝子の非転写領域における1塩基変異である一方、血清CRP濃度の減少と相関することが報告されている遺伝子多型である。
【0014】
本発明は、以下の判定方法及び判定キットを提供する。
[1] ヒトC反応性タンパク質遺伝子の遺伝子多型を同定することにより、ガンのリンパ節転移またはそのリスクを判定する方法。
[2] SNP識別番号rs1205の遺伝子多型を同定することにより、ガンのリンパ節転移またはそのリスクを判定する前記1に記載の方法。
[3] SNP識別番号rs1205の遺伝子多型がT/Tタイプであるときに高リスクと判定する前記2に記載の方法。
[4] 遺伝子多型の同定をRFLPまたは対応する相補鎖配列との結合により行なう前記1~3のいずれかに記載の方法。
[5] 遺伝子多型の同定をPCR-RFLPにより行なう前記4に記載の方法。
[6] PCRにおけるプライマーとして Forwardプライマー:5'-CTT ATA GAC CTG GGC AGT-3'(配列番号1)、Reverseプライマー:5'-GGA GTG AGA CAT CTT CTT G-3' (配列番号2)を用い、制限酵素としてBst4CIを用いる前記5に記載の方法。
[7] ガンが固形ガンである前記1~6のいずれかに記載の方法。
[8] ヒトC反応性タンパク質遺伝子の塩基配列のSNP識別番号rs1205を含む領域を増幅するためのプライマーとRFLPによりSNP識別番号rs1205の遺伝子多型を判定するための制限酵素を含むガンのリンパ節転移またはそのリスクを判定するためのPCR-RFLP用迅速判定キット。
[9] プライマー対としてForwardプライマー:5'-CTT ATA GAC CTG GGC AGT-3' (配列番号1)、Reverseプライマー:5'-GGA GTG AGA CAT CTT CTT G-3' (配列番号2)を含む前記8に記載の迅速判定キット。
[10] 制限酵素Bst4CIを含む前記9に記載の迅速判定キット。
[11]ヒトC反応性タンパク質遺伝子のSNP識別番号rs1205の塩基を解析するための核酸であって、ヒトC反応性タンパク質遺伝子のSNP識別番号rs1205の塩基を含み、かつ配列番号1及び配列番号2のプライマーを用いたPCR法によって増幅され得る領域に由来するDNA断片に対して特異的にハイブリダイズする核酸。
[12]ヒトC反応性タンパク質遺伝子の遺伝子多型を同定する際に使用する試料が、全血、白血球、ガン原発巣、リンパ管、リンパ節組織からなる群より選ばれる、前記1~7に記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
CRPの産生は、各種のサイトカイン(インターロイキン、腫瘍壊死因子、インターフェロン、形質転換増殖因子など)と関係していることも知られているが、本発明の方法は、各種サイトカイン濃度とも関係なく、それのみでガン細胞のリンパ節転移を有効に予測・判定できる。本発明のSNP識別番号rs1205(CRP1846C>T(rs1205))遺伝子多型によるガンのリンパ節転移判定法は、従来の方法に比べて簡便であるにも関わらず、極めて精度が高い。すなわち、SNP識別番号rs1205(CRP1846C>T(rs1205))遺伝子多型を用いることにより、有意差をもって判定することが可能になった。ガンの進展において重要な事象であるリンパ節転移を有効に予測・判定できるため、リンパ節郭清を伴う外科手術、リンパ節郭清を伴わない内視鏡的切除、化学放射線療法、化学療法、放射線療法などの選択肢の中から、最も確実かつ最も低侵襲的な治療法を選択可能とするものであり、治療戦略を決定する上での臨床的意味は極めて大きい。
【0016】
本発明方法は、治療前診断は画像診断に頼らざるを得ないが、現状では精度が低く、その一方、確実な診断は病理診断によりなされるがこれは治療(手術)後の診断である、という現在のガン細胞のリンパ節転移の診断が有する課題を同時に解決することができる。
【0017】
またさらに、本発明の方法では、SNP識別番号rs1205(CRP1846C>T (rs1205))遺伝子多型の検出用試料として、リンパ組織(リンパ節やリンパ管)であることが必須ではなく、末梢血等を使用することができるため、患者への負担が軽減するとともに試料調製が容易になり検査者側の負担も軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.リンパ節転移またはそのリスクの判定方法
本発明で用いるCRP遺伝子はCRP(C-reactive protein:C反応性タンパク質)に対応する遺伝子である。CRPは、炎症に反応して主として肝細胞によって産生される急性期タンパク質の一種であり、従来、その血清中濃度は、様々な急性または慢性の炎症性疾患のマーカーとして用いられている。その名称は肺炎双球菌のC多糖体と沈降反応を示す血清タンパク質(βグロブリン分画に存在する)であることに由来し、感染、炎症、組織損傷などによって血中濃度が0.2μg/mLから数百倍から千倍に激増する。CRPは、分子量が約13万で、同一サブユニット5個からなる5量体であり、そのアミノ酸配列は血清アミロイドのPタンパク質、補体C1の一部と相同性がある。

【0019】
CRP遺伝子は、全塩基配列が解明されており(Woo P, Korenberg JR, Whitehead AS, J. Biol.Chem., 260:13384-13388, 1985)、 例えば、NCBIのwebサイトからAccession No. NG_013007として確認することができる( http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NG_013007.1?report=gbwithparts&log$=seqview&from=5000&to=7300)(当該全配列については表A参照)。
[表A]
1 taaggcaaga gatctaggac ttctagcccc tgaactttca gccgaataca tcttttccaa
61 aggagtgaat tcaggccctt gtatcactgg cagcaggacg tgaccatgga gaagctgttg
121 tgtttcttgg tcttgaccag cctctctcat gcttttggcc agacaggtaa gggccacccc
181 aggctatggg agagatttga tctgaggtat gggggtgggg tctaagactg catgaacagt
241 ctcaaaaaaa aaaaaaaaag actgtatgaa cagaacagtg gagcatcctt catggtgtgt
301 gtgtgtgtgt gtgtgtgtgt gtgtgtgtgt gtggtgtgta actggagaag gggtcagtct
361 gtttctcaat cttaaattct atacgtaagt gaggggatag atctgtgtga tctgagaaac
421 ctctcacatt tgcttgtttt tctggctcac agacatgtcg aggaaggctt ttgtgtttcc
481 caaagagtcg gatacttcct atgtatccct caaagcaccg ttaacgaagc ctctcaaagc
541 cttcactgtg tgcctccact tctacacgga actgtcctcg acccgtgggt acagtatttt
601 ctcgtatgcc accaagagac aagacaatga gattctcata ttttggtcta aggatatagg
661 atacagtttt acagtgggtg ggtctgaaat attattcgag gttcctgaag tcacagtagc
721 tccagtacac atttgtacaa gctgggagtc cgcctcaggg atcgtggagt tctgggtaga
781 tgggaagccc agggtgagga agagtctgaa gaagggatac actgtggggg cagaagcaag
841 catcatcttg gggcaggagc aggattcctt cggtgggaac tttgaaggaa gccagtccct
901 ggtgggagac attggaaatg tgaacatgtg ggactttgtg ctgtcaccag atgagattaa
961 caccatctat cttggcgggc ccttcagtcc taatgtcctg aactggcggg cactgaagta
1021 tgaagtgcaa ggcgaagtgt tcaccaaacc ccagctgtgg ccctgaggcc cagctgtggg
1081 tcctgaaggt acctcccggt tttttacacc gcatgggccc cacgtctctg tctctggtac
1141 ctcccgcttt tttacactgc atggttccca cgtctctgtc tctgggcctt tgttccccta
1201 tatgcattgc aggcctgctc caccctcctc agcgcctgag aatggaggta aagtgtctgg
1261 tctgggagct cgttaactat gctgggaaac ggtccaaaag aatcagaatt tgaggtgttt
1321 tgttttcatt tttatttcaa gttggacaga tcttggagat aatttcttac ctcacataga
1381 tgagaaaact aacacccaga aaggagaaat gatgttataa aaaactcata aggcaagagc
1441 tgagaaggaa gcgctgatct tctatttaat tccccaccca tgacccccag aaagcaggag
1501 ggcattgccc acattcacag ggctcttcag tctcagaatc aggacactgg ccaggtgtct
1561 ggtttgggtc cagagtgctc atcatcatgt catagaactg ctgggcccag gtctcctgaa
1621 atgggaagcc cagcaatacc acgcagtccc tccactttct caaagcacac tggaaaggcc
1681 attagaattg ccccagcaga gcagatctgc tttttttcca gagcaaaatg aagcactagg
1741 tataaatatg ttgttactgc caagaactta aatgactggt ttttgtttgc ttgcagtgct
1801 ttcttaattt tatggctctt ctgggaaact cctccccttt tccacacgaa ccttgtgggg
1861 ctgtgaattc tttcttcatc cccgcattcc caatataccc aggccacaag agtggacgtg
1921 aaccacaggg tgtcctgtca gaggagccca tctcccatct ccccagctcc ctatctggag
1981 gatagttgga tagttacgtg ttcctagcag gaccaactac agtcttccca aggattgagt
2041 tatggacttt gggagtgaga catcttcttg ctgctggatt tccaagctga gaggacgtga
2101 acctgggacc accagtagcc atcttgtttg ccacatggag agagactrtg aggacagaag
2161 ccaaactgga agtggaggag ccaagggatt gacaaacaac agagccttga ccacgtggag
2221 tctctgaatc agccttgtct ggaaccagat ctacacctgg actgcccagg tctataagcc
2281 aataaagccc ctgtttactt g

【0020】
遺伝子多型とは、遺伝学的には、人口中1%以上の頻度で存在している1遺伝子における特定の塩基の変化(変異)と一般的には定義されるが、CRP遺伝子における遺伝子多型は多数知られており、本発明ではSNP識別番号rs1205の遺伝子多型(本明細書において、CRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型と記載することがある)を好適に利用できる。SNP識別番号rs1205の遺伝子多型は、前記表Aに記載されたCRP遺伝子の塩基配列上の2148番目の塩基(rで示される塩基)における多型である。尚、rはG(グアニン)又はA(アデニン)であることを意味する。

【0021】
また、前記表Aに記載されたCRP遺伝子の塩基配列の相補的な配列において、SNP識別番号rs1205における多型周辺の配列を次の表Bに示す。
[表B]
1 CTTTAGTTTT TGCTCCTCAA ATTGGAATAA TGATAGAATG AGAGTACTAA AACCCCCACA
61 ACTGGCCCTA CATGAATGGC CAGCTATCTC AAAAGAGGGA CTGTGCTTGT CAGAGGGAAT
121 CCCTTCAGGG GACTCTTGGA CAGGTTAAAG TGCCATGGAT ATGTTGTGTA ATGGGAAGTG
181 TAAACTTACA GGGACTTGAT TTCAAAGGTC ATTAGAGAAG TTAGCCACAA CTTCTAAAGC
241 AACTATCAGA AAACAGCTTG GACTCACTCA AGTAAACAGG GGCTTTATTG GCTTATAGAC
301 CTGGGCAGTC CAGGTGTAGA TCTGGTTCCA GACAAGGCTG ATTCAGAGAC TCCACGTGGT
361 CAAGGCTCTG TTGTTTGTCA ATCCCTTGGC TCCTCCACTT CCAGTTTGGC TTCTGTCCTC
421 AYAGTCTCTC TCCATGTGGC AAACAAGATG GCTACTGGTG GTCCCAGGTT CACGTCCTCT
481 CAGCTTGGAA ATCCAGCAGC AAGAAGATGT CTCACTCCCA AAGTCCATAA CTCAATCCTT
541 GGGAAGACTG TAGTTGGTCC TGCTAGGAAC ACGTAACTAT CCAACTATCC TCCAGATAGG
601 GAGCTGGGGA GATGGGAGAT GGGCTCCTCT GACAGGACAC CCTGTGGTTC ACGTCCACTC
661 TTGTGGCCTG GGTATATTGG GAATGCGGGG ATGAAGAAAG AATTCACAGC CCCACAAGGT
721 TCGTGTGGAA AAGGGGAGGA GTTTCCCAGA AGAGCCATAA AATTAAGAAA GCACTGCAAG
781 CAAACAAAAA CCAGTCATTT AAGTTCTTGG CAGTAACAAC ATATTTATAC CTAGTGCTTC
841 ATTTTGCTCT GGAAAAAAAG CAGATCTGCT CTGCTGGGGC AATTCTAATG GCCTTTCCAG
901 TGTGCTTTGA GAAAGTGGAG G

【0022】
SNP識別番号rs1205は、前記表Bに記載された塩基配列上の422番目の塩基(Yで示される塩基)における多型である。尚、Yは、C(シトシン)又はT(チミン)であることを意味する。
本発明はこの塩基の型が、C/C(ワイルド)、C/T(ヘテロ)、T/T(ホモ)のいずれのタイプであるかを同定することにより、ガンのリンパ節転移又はそのリスクを判定するものである。
SNP識別番号rs1205は、米国のNCBI(National Center for Biotechnology Information)のSNPデータベース(dbSNP)に登録されているSNPの識別番号であり、rs1205で登録されているSNPの情報はNCBIのサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)から入手することができる。

【0023】
SNP識別番号rs1205(CRP1846C>T(rs1205))遺伝子多型の同定は、遺伝子多型の検出が可能な公知の種々の方法によって行うことができ特に限定されるものではない。例えば、PCR(polymerase chain reaction)法を利用したPCR-RFLP(restriction fragment length polymorphism:制限酵素断片長多型)法、PCR-SSCP(single strand conformation polymorphism:単鎖高次構造多型)法(Orita, M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 86, 2766-2770 (1989)等)、PCR-SSO(specific sequence oligonucleotide:特異的配列オリゴヌクレオチド)法、PCR-SSO法とドットハイブリダイゼーション法を組み合わせたASO(allele specific oligonucleotide:アレル特異的オリゴヌクレオチド)ハイブリダイゼーション法(Saiki, Nature,324,163-166 (1986)等)、又はTaq-Man-PCR法(Livak, KJ.,k,Genet Anal., 14, 143 (1999), Morris, T. et al., J. Clin. Microbiol., 34, 2933 (1996))、Invader法(Lyamichev et al., Nat Biotechnol, 17,292 (1999))、プライマー伸長法を用いたMALDI-TOF/MS(matrix)法(Haff LA, Smirnov IP Genome Res, 7, 378 (1997))、RCA(rolling cicle amplification)法(Lizardi PM et al., Nat Genet 19, 225 (1998))、DNAチップ又はマイクロアレイを用いた方法(Wang DG et al., Science 280,1077 (1998)等)、プライマー伸長法、サザンブロットハイブリダイゼーション法、ドットハイブリダイゼーション法(Southern, E., J. Mol. Biol. 98, 503-517 (1975))等、公知の解析方法を用いることができる。さらに、当該配列部分を直接シークエンスすることにより解析してもよい。尚、これらの方法は、任意に組み合わせて用いることもできる。また、上記の方法を実施するにあたり、表A又は表Bに記載された塩基配列から適宜プライマーやプローブなどを設計することができる。

【0024】
上記同定方法の実施にあたり、被験DNAが少量の場合には、PCR法を利用したPCR-RFLP法等により同定することが検出感度ないし精度の面から好ましい。また、PCR法又はPCR法に準じた遺伝子増幅方法により被験DNAを予め増幅した後、上記いずれかの同定方法を適用することもできる。一方、多数の被験DNAについて同定する場合には、特にDNAチップやマイクロアレイを用いた方法、Invader法、TaqMan-PCR法、プライマー伸長法を用いたMALDI-TOF/MS(matrix)法又はRCA法を用いることが好ましい。
上述した同定方法のうち、被験DNAが少量の場合に好適な方法、および多数の被験DNAについて同定する場合に好適な方法についてそれぞれ代表的な方法を例に説明する。

【0025】
被験DNAが少量の場合には好適な方法は、当業者に周知の方法で患者からDNA試料を調製し、次いで、調製したDNA試料を制限酵素により切断し、次いで、DNA断片をその大きさに応じて分離を行い、次いで、検出されたDNA断片の大きさを対照と比較する方法である。一般的には、まず、患者からDNA試料を調製し、次いで、CRP遺伝子を含むDNAを増幅する。さらに、増幅したDNAを制限酵素により切断する。次いで、DNA断片をその大きさに応じて分離し、検出されたDNA断片の大きさを対照と比較する。

【0026】
このような方法としては、例えば、制限酵素断片長多型(RFLP:Restriction Fragment Length Polymorphism)を利用する方法やPCR-RFLP法等が挙げられる。すなわち、制限酵素の認識部位に変異が存在する場合、あるいは制限酵素処理によって生じるDNA断片内に塩基挿入または欠失がある場合、制限酵素処理後に生じる断片の大きさが対照と比較して変化する。この変異を含む部分をPCR法によって増幅し、それぞれの制限酵素で処理することによって、これらの変異を電気泳動後のバンドの移動度の差として検出することができる。あるいは、患者からDNA試料(ゲノム(染色体)DNAが使用できる)を調製し、制限酵素によって処理し、電気泳動した後、標的核酸とハイブリダイズし得るプローブDNAを用いてサザンブロッティングを行うことにより、多型(変異)の有無を検出することができる。用いられる制限酵素は、それぞれの変異に応じて適宜選択することができる。この方法では、ゲノムDNA以外にも患者から調製したRNAを逆転写酵素でcDNAに変換し、これをそのまま制限酵素で切断した後、サザンブロッティングを行うことも可能である。また、このcDNAを鋳型としてPCRでCRP遺伝子を含むDNAを増幅し、それを制限酵素で切断した後、移動度の差を調べることも可能である。

【0027】
本発明において用いるプライマーには、CRP遺伝子を含むDNAを増幅し得るものがすべて含まれる。プライマーの塩基長としては10塩基以上が好ましく、15塩基以上がさらに好ましい。また、各プライマーは、単一のオリゴヌクレオチドであってもよく、複数のオリゴヌクレオチドの混合物であってもよい。 PCRにおけるプライマーの例としてForwardプライマー:5'-CTT ATA GAC CTG GGC AGT-3' (配列番号1)、Reverseプライマー:5'-GGA GTG AGA CAT CTT CTT G-3' (配列番号2)が挙げられる。また、制限酵素としてBst4CIが挙げられる。PCRにおけるプライマー以外の材料や条件、制限酵素の適用、電気泳動や検出などは慣用の方法と同様でよい。

【0028】
上述したサザンブロッティングの際に使用するプローブDNAは、標的核酸にハイブリダイズし得ることを条件として、特に制限されない。標的核酸にハイブリダイズし得るプローブDNAの例として、ヒトCRP遺伝子のSNP識別番号rs1205の塩基を解析するための核酸であって、ヒトCRP遺伝子のSNP識別番号rs1205の塩基を含み、かつ配列番号1及び配列番号2のプライマーを用いたPCR法によって増幅され得る領域に由来するDNA断片に対して特異的にハイブリダイズする核酸が挙げられる。

【0029】
CRP遺伝子は、患者の血液、末梢血白血球、皮膚細胞、粘膜細胞等の細胞、肝臓、腎臓、副腎、脳、子宮等の組織、毛髪等から公知の抽出方法、精製方法を用いて取得することができる。また、本発明において解析される塩基部分を含むものであれば、全長DNA又は部分DNAの別を問わず、本発明におけるCRP遺伝子として用いることができる。換言すれば、 SNP識別番号rs1205の塩基を含む限り任意の長さのDNA断片を用いることができる。

【0030】
多数の被験DNAについて同定する場合に好適な方法は、患者から調製したCRP遺伝子を含むDNA、および該DNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブ(上述のプローブDNAと同義)が固定された基板を用意し、次いで、該DNAと該基板を接触させた後、さらに、基板に固定されたヌクレオチドプローブにハイブリダイズしたDNA(標的核酸)を検出することにより、PCR遺伝子多型を検出する方法である。

【0031】
このような方法としては、DNAチップ法(マイクロアレイ法)が例示できる。患者からのCRP遺伝子を含むDNA試料の調製は、上述と同様、当業者に周知の方法で行うことができる。該DNA試料の調製の好ましい態様においては、上述と同様、患者の血液、末梢血白血球、皮膚細胞、粘膜細胞等の細胞、肝臓、腎臓、副腎、脳、子宮等の組織、毛髪等からから抽出したゲノム(染色体)DNAを基に調製することができる。ゲノム(染色体)DNAから本方法のDNA試料を調製するには、例えばCRP遺伝子を含むDNAにハイブリダイズするプライマーを用いて、ゲノム(染色体)DNAを鋳型としたPCR等によってCRP遺伝子を含むDNAを調製することも可能である。調製したDNA試料には、必要に応じて、当業者に周知の方法によって検出のための標識を施すことができる。

【0032】
DNAチップ法では、ガラスなどの基盤上に多種類のプローブDNAを整列化し、固定し、その上で標識DNAのハイブリダイゼーションを行い、プローブ上の標識(蛍光など)シグナルを検出する方法を利用して、ハイブリダイゼーションで完全マッチと一塩基ミスマッチを分別検出することで、SNP等の遺伝子多型を検出する方法である。

【0033】
以下、多数の被験DNAについて同定する場合に好適な方法の概要を列記する。
TaqMan PCR法とは、蛍光標識したアレル特異的オリゴとTaq DNAポリメラーゼによるPCR反応とを利用した方法である。

【0034】
Invader法とは、SNP等の遺伝子多型のそれぞれのアレルに特異的な2種類のレポータープローブ及び1種類のインベーダープローブの鋳型DNAへのハイブリダイゼーションと、DNAの構造を認識して切断するという特殊なエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素によるDNAの切断を組み合わせた方法である。

【0035】
プライマー伸長反応を利用する方法として、例えばSniPer法を採用することもできる。SniPer法とは、RCA(rolling circle amplification)法と呼ばれる手法を基本原理とするものであり、環状の一本鎖DNAを鋳型としてDNAポリメラーゼがその上を移動しながら相補鎖DNAを連続して合成していくものである。この方法によれば、DNA増幅が起こった場合に生じる発色反応の有無を測定することによってSNP等の遺伝子多型を判定できる。

【0036】
MALDI-TOF/MS法とは、質量分析機(mass spectrmeter)を用いた方法で、基本的には異なる一塩基の質量の違いを利用してSNPをジェノタイピングする方法である。PCR増幅を利用した方法とmultiplexを利用した方法がある。

【0037】
シークエンス法とは、遺伝子多型を含む領域をPCRにて増幅させ、Dye Terminatorなどを用いてDNA配列をシークエンスすることで、SNP等の遺伝子多型(特にSNP)の頻度を解析する方法である。

【0038】
本発明の判定方法は、様々な段階で適用可能であるが、特に治療戦略の決定において有用性を有する。たとえば、深達度が粘膜下層程度の食道ガン患者においては、従来の方法ではリンパ節転移の判定が難しい。これに対し、本発明では、高精度でリンパ節転移またはそのリスクを判定できるので、不要なリンパ節郭清などを行なってQOLを低下させることも、必要なリンパ節郭清をせずにガンの進展を放置することも回避できる。

【0039】
本発明の方法が適用できるガンの種類は特に限定されないが、固形ガンにはすべて適用可能である。具体的には原発部位が食道、肺、乳腺、頭頸部、胃、大腸、胆道、膵、子宮、卵巣、膀胱、腎、尿路上皮、前立腺のガンに適用可能である。

【0040】
B.リンパ節転移またはそのリスクの迅速判定キット
当業者に周知の方法によって本発明のリンパ節転移又はそのリスクの迅速判定キットを調製することができる。キットの形態として、例えば、本発明のプライマーを用いてCRP遺伝子多型の検出を行う際に必要な各種の試薬類は、予めパッケージングしてキット化することができる。具体的には、本発明のプライマーあるいはループプライマーとして必要な各種のオリゴヌクレオチド、核酸合成の基質となる4種類のdNTP(dATP、dCTP、dGTP及びdTTP)、鎖置換活性を有する上記の鋳型依存性核酸合成酵素、酵素反応に好適な条件を与える緩衝液、補助因子としての塩類(マグネシウム塩又はマンガン塩等)、酵素や鋳型を安定化する保護剤、さらに制限酵素、及び必要に応じて反応生成物の検出に必要な試薬類がキットとして提供される。また、標的核酸とハイブリダイズし得るプローブDNAを構成試薬としてキット化してもよい。

【0041】
本明細書の各用語は、通常使用されている意味を有するが、「ガンのリンパ節転移またはそのリスクを判定する方法」において、「リンパ節」とは「リンパ節」及び「リンパ管」を総称して用いる場合や「リンパ組織」を意味する場合が含まれ、また「リンパ節転移の判定」とは、リンパ節におけるガン細胞の存在の可能性の有無・高低を判定すること、「リンパ節転移のリスクの判定」とは、ある個体がガンを罹患した場合に、原発巣からリンパ節にガン細胞が転移する可能性の有無・高低を判定することが含まれる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の実験・検査などを含む研究は、秋田大学医学部倫理委員会の承認を得て行なった。また、すべての患者には事前に説明の上、同意を得て行なった。
【実施例】
【0043】
実施例1
この例は、胸部食道扁平上皮(細胞)癌ガン患者113名(すべて日本人)について行なった。うち38名は、病理学的診断等により食道ガンを確認した上で2007年4月から1年間の間に食道切除を行なった。残る75名は2000年~2007年の間に食道切除術を施術し、その後の経過の観察を行なった者から無作為に抽出した。疾患の分類は国際対ガン協会による腫瘍リンパ節転移(TNM)分類第6版により行なった。
【実施例】
【0044】
各患者から末梢血を採取し、QIAamp Blood Kit(キアゲン社製)を用いてDNAを抽出し、分析まで-80℃で保存した。本発明の実施例であるCRP1846C>T(rs1205)のほか、CRP多型としては、CRP-717C>T(rs2794521)、CRP1059G>C(rs1800947)、CRP1444C>T(rs1130864)を、腫瘍壊死因子としてはTNF-α-238G>A、TNF-α-308G>A、TNF-α-1031T>C、TNF-β250G>A、さらに、INF-γ874A>T、TGF-β1 29T>C、IL-1β-31C>T、IL-1β-511C>T、IL-1受容体アンタゴニスト、IL-2-330T>G、IL-4-590C>T、IL-6-634G>C、IL-6受容体48892A>C、IL-10-592A>C及びIL-12β-1188A>Cの18種類の遺伝子多型についてもガンのリンパ節転移との関係を検討した。
【実施例】
【0045】
標的核酸増幅のためのPCRは、抽出したDNAを95℃で15分間熱変性を行い、95℃で30秒、56℃で30秒、72℃で30秒の反応を35サイクル行った後、72℃で5分間加熱して行った。CRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型増幅用のプライマーとしては、Forwardプライマー:5'-CTT ATA GAC CTG GGC AGT-3' (配列番号1)、Reverseプライマー:5'-GGA GTG AGA CAT CTT CTT G-3' (配列番号2)を用いた。この上述操作による得られたPCR増幅産物にBst4CIを添加し、65℃で8時間インキュベートし、電気泳動にてRFLPを行なった。
対照として秋田大学病院内においてガン以外の疾病で処置を受けている139名(すべて日本人)のCRP多型(CRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型及び上述の3種類の遺伝子多型の計4種類)も調べた。
多型の出現頻度は、ハーディ・ワインベルグ平衡にあると考えた場合と矛盾しない。また、国立がんセンターにおけるSNP500データベースとも同様の結果であった。
【実施例】
【0046】
調べた113名の食道ガン患者のうち、62名(55%)はリンパ節転移をしており、51名(45%)ではリンパ節転移がなかった。病理学的にリンパ節転移が確認された患者においては、リンパ節転移がない患者に対して有意に(P<0.05)ガンの深達度が高かったが、年齢、性別、術前の栄養状態、腫瘍マーカー、腫瘍部位及び腫瘍の大きさ、扁平上皮細胞及び壁内転移とリンパ節転移の有無との間に有意の相関はなかった。(表1「リンパ節転移を伴う患者又は伴わない患者の臨床的特徴」参照)JP0004756288B2_000002t.gif
【実施例】
【0047】
各種遺伝子多型と病理学的に確認されたリンパ節転移との関連を解析した結果、本発明の実施例であるCRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型のみがリンパ節転移と有意に関連した(Fisherの正確検定, P=0.0043)。すなわちCRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型においてC/CおよびC/T遺伝子タイプ患者でリンパ節転移を認めたのは25例、転移を認めなかったのは35例であるのに対し、T/T遺伝子タイプ患者ではリンパ節転移を認めたのは37例、転移を認めなかったのは16例であった。(表2「CRP遺伝子多型とリンパ節転移の相関」参照)
【表2】
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【実施例】
【0048】
これに対し、CRP1059G>C(rs1800947)遺伝子多型では、G/G遺伝子タイプ患者でリンパ節転移を認めたのは58例、転移を認めなかったのは48例であるのに対し、G/C遺伝子タイプ患者ではリンパ節転移を認めたのは4例、転移を認めなかったのは3例であった。また、非特許文献11(本山他、「日本消化器外科学会雑誌」第41巻第7号1169頁、2008年7月)で検討したCRP-717T>C(rs2794521)遺伝子多型では、CRP-717T/CおよびC/C遺伝子タイプ患者でリンパ節転移を認めたのは12例、転移を認めなかったのは16例であり、CRP1444C>T(rs1130864) 遺伝子多型では、CRP1444C/C遺伝子タイプ患者でリンパ節転移を認めたのは56例、転移を認めなかったのは49例であった。(表2「CRP遺伝子多型とリンパ節転移の相関」参照)
【実施例】
【0049】
また、CRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型とリンパ節転移に関する様々な臨床因子を共変量として多変量ロジスティック解析を行った結果、患者のCRP1846(rs1205)遺伝子多型がT/Tタイプであればオッズ比3以上でリンパ節転移を伴うことが判明した。これに対し、術前血清中CRP、血清中SCC、腫瘍サイズ、年齢における同様の解析の結果は、それぞれオッズ比1前後であった。また、腫瘍の深達度での比較(T2~4対T1)ではオッズ比2.571でリンパ節転移を伴っていた。(表3「リンパ節転移の多変量ロジスティック回帰分析」参照)
【表3】
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さらに、術前血清中CRP濃度(mg/L)については、0~5mg/Lは、CRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型においてC/CおよびC/T遺伝子タイプ患者では43例、T/T遺伝子タイプ患者でも43例であり、5mg/L超は、CRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型においてC/CおよびC/T遺伝子タイプ患者では16例、T/T遺伝子タイプ患者では8例であった。(表4「CRP1846C/T(rs1205)遺伝子型と術前血清CRPレベル、腫瘍浸潤の深達度、及び関与するリンパ節の数との相関」参照)
【表4】
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【実施例】
【0050】
対象をリンパ節転移診断が特に難しく、また治療前のリンパ節転移の有無が治療法を大きく左右する粘膜下層食道癌患者(33例)に限定した場合、その診断能は極めて高かった。最新鋭の画像診断装置(CT及び超音波断層法)を用いたリンパ節転移診断の感度が50%、特異度が79%、陽性予測値が54%、陰性予測値が68%であるのに対し、CRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型を用いた診断では感度が64%、特異度が79%、陽性予測値が69%、陰性予測値が75%とより良好であった(表5「CRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型又は通常の方法(CT及び超音波断層法)を用いた場合の粘膜下層食道癌におけるリンパ節の関与の予測」参照)。
【表5】
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【実施例】
【0051】
実施例2
同様に152例の肺癌手術患者(すべて日本人)に関してCRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型と病理学的リンパ節転移の関連を検討した結果、食道癌同様に有意な関連を認めた(Fisherの正確検定, P=0.0312)。
【実施例】
【0052】
以上の結果に示されるように、本発明によれば、高精度にリンパ節転移またはそのリスクの判定ができる。また、CRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型によれば、CRPの産生に関与する多数のサイトカインの多型と比較して顕著に高精度でリンパ節転移またはそのリスクの判定が可能である。
【実施例】
【0053】
実施例3
実施例1の患者113名中、壁深達度がpT1-2である64名についてCRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型とリンパ節転移との関係を解析した。CRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型においてC/CおよびC/T遺伝子タイプ患者でリンパ節転移を認めたのは6例、転移を認めなかったのは35例であるのに対し、T/T遺伝子タイプ患者ではリンパ節転移を認めたのは18例、転移を認めなかったのは5例であり、CRP1846C>T(rs1205) 遺伝子多型とリンパ節転移とは有意に関連した(Fisherの正確検定, P=0.0001)。このように本発明方法では、従来の画像診断方法では見落とされる可能性が考えられる、より早期の癌においても確実にリンパ節転移を判定することができるため、臨床の要求に応え得ることが確認された。
【実施例】
【0054】
実施例4
実施例2の患者152名中、リンパ管侵襲に関する所見記載のあった144名についてCRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型とリンパ管侵襲との関係を解析した。CRP1846(rs1205)遺伝子多型においてC/CおよびC/T遺伝子タイプ患者でリンパ管侵襲を認めたのは36例、リンパ管侵襲を認めなかったのは42例であるのに対し、T/T遺伝子タイプ患者ではリンパ管侵襲を認めたのは45例、リンパ管侵襲を認めなかったのは21例であり、CRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型とリンパ管侵襲とは有意に関連した(Fisherの正確検定, P=0.008)。「リンパ管侵襲」は原発部位のリンパ管にガン細胞の存在が観察された状態を指し、現に「リンパ節転移」がない場合でも、将来の「リンパ節転移」の可能性を示唆している。従って、「リンパ節転移」のリスク判定(より早期の予知)にCRP1846C>T(rs1205)遺伝子多型の同定は有用である。