TOP > 国内特許検索 > 波動伝播式移動装置及びそれを用いた登攀装置 > 明細書

明細書 :波動伝播式移動装置及びそれを用いた登攀装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5979759号 (P5979759)
公開番号 特開2014-108649 (P2014-108649A)
登録日 平成28年8月5日(2016.8.5)
発行日 平成28年8月31日(2016.8.31)
公開日 平成26年6月12日(2014.6.12)
発明の名称または考案の名称 波動伝播式移動装置及びそれを用いた登攀装置
国際特許分類 B62D  57/02        (2006.01)
FI B62D 57/02 Z
請求項の数または発明の数 12
全頁数 18
出願番号 特願2012-262417 (P2012-262417)
出願日 平成24年11月30日(2012.11.30)
審査請求日 平成27年10月23日(2015.10.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
発明者または考案者 【氏名】中村 太郎
【氏名】溝田 裕
【氏名】高橋 一聡
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100097238、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 治
【識別番号】100149249、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 達也
審査官 【審査官】田合 弘幸
参考文献・文献 特開2013-159243(JP,A)
特開2008-094267(JP,A)
特開2008-097349(JP,A)
特開昭61-166767(JP,A)
特開平07-291124(JP,A)
特開2005-133948(JP,A)
国際公開第2011/040137(WO,A1)
調査した分野 B62D 57/02
B62D 57/036
特許請求の範囲 【請求項1】
走行面にフレキシブルなプレートの裏面を直接又は間接的に接触させるとともに、該プレートの後端領域を撓ませて、走行面から離れる湾曲部を形成し、該湾曲部を前方に送り前記プレートの前端領域で消滅させることによって、走行面上を前方に移動する波動伝播式移動装置において、
前記プレートの上面側で前後方向に延び、回動自在に装置本体に軸支されるとともに、外周面に蔓巻状の軌道を有するシャフトと、
前記シャフトを回動させる回動手段と、
前記プレートを前記シャフトの軌道に沿って湾曲させる湾曲手段とを備え、
前記プレートの前端部及び後端部の少なくとも一方において、波動の振幅を吸収するように装置本体に対して相対的に上下移動可能とした
ことを特徴とする波動伝播式移動装置。
【請求項2】
前記回動手段に設けたカム機構により、前記プレートの前端部及び後端部の少なくとも一方を、波動の振幅を吸収するように装置本体に対して相対的に上下移動可能とした、請求項1に記載の波動伝播式移動装置。
【請求項3】
前記プレートの前端部及び後端部を装置本体に保持する保持手段を設けた、請求項1に記載の波動伝播式移動装置。
【請求項4】
前記保持手段は、
前記プレートの前端部又は後端部に固定されたスライダ部材と、
該スライダ部材を上下方向にスライド可能に保持するとともに、装置本体に固定されたガイド部材と
を有する、請求項3に記載の波動伝播式移動装置。
【請求項5】
前記スライダ部材を下方に付勢する弾性部材をさらに備え、
前記シャフトの軸上に前記カム機構を設け、該カム機構は前記スライダ部材を押し上げるカム面を有し、
前記カム面は、前記シャフトの回転角度にかかわらず、該カム面による前記スライダ部材の押し上げ幅を、該スライダ部材が保持する前記プレートの前端部又は後端部における振幅と一致させる断面形状を有する、請求項4に記載の波動伝播式移動装置。
【請求項6】
前記スライダ部材及び前記ガイド部材はそれぞれ、上下方向に延びる一対の脚部と、該脚部の上端間を左右に連結する天壁部とを有し、
前記スライダ部材の一対の脚部はそれぞれ、下端部が前記プレートの前端部又は後端部に固定され、且つ、外側の側部が前記ガイド部材の一対の脚部の内側の側部に上下方向にスライド可能に嵌合しており、
前記ガイド部材の一対の脚部はそれぞれ装置本体に固定されており、
前記弾性部材は、前記ガイド部材の天壁部と前記スライダ部材の天壁部との間に配置された圧縮コイルばねであり、
前記スライダ部材の天壁部の下面が、直接又は間接的に前記シャフトの前記カム面に当接している、請求項5に記載の波動伝播式移動装置。
【請求項7】
前記スライダ部材の天壁部は、前記カム面に当接するベアリングを有する、請求項6に記載の波動伝播式移動装置。
【請求項8】
前記保持手段は、前記プレートを前後方向に圧縮した状態で、前記プレートの前端部及び後端部を装置本体に保持するものとし、
装置本体は、前記プレートの裏面側で該プレートの両側縁に沿ってそれぞれ前後方向に延びる一対のレール部を有し、
前記保持手段及び前記一対のレール部を前記湾曲手段として用いる、請求項3~7のいずれか一項に記載の波動伝播式移動装置。
【請求項9】
前記一対のレール部間で前記プレートの裏面に嵩高層を設け、
該嵩高層を走行面に接触させて移動する、請求項8に記載の波動伝播式移動装置。
【請求項10】
前記保持手段は、
前記プレートの前端部及び後端部にそれぞれ固定されるとともに、上下方向にスライド可能に装置本体に保持される一対の保持板と、
前記一対の保持板間に、これら保持板間の前記プレートの前後方向の自然長より短い所定の間隔を保つように、該一対の保持板間を連結するスペーサ部材と
を有する、請求項3、8及び9のいずれか一項に記載の波動伝播式移動装置。
【請求項11】
前記一対の保持板はそれぞれ、前記シャフトの前後端からそれぞれ突出する軸が貫通する貫通孔を有し、
これら貫通孔は、上下方向に延びる長孔である、請求項10に記載の波動伝播式移動装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の波動伝播式移動装置と、
該装置の前記プレートを走行面に密着させる密着手段と
を備えることを特徴とする、波動伝播式移動装置を用いた登攀装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルなプレートの後端領域を撓ませて形成した湾曲部を前方に送ることによって走行面上を移動する波動伝播式移動装置に関する。また、本発明は、このような波動伝播式移動装置を用いた登攀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の波動伝播式移動装置として、特許文献1に記載されているような移動機構が知られている。この移動機構は、走行面に面接触する推進用部材と、推進用部材を上下動させる複数のアクチュエータとを備え、各アクチュエータの位相を制御することによって、推進用部材に形成した湾曲部を前方に送り、それにより走行面上を移動するというものである。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2008-94267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような移動装置では、多数のアクチュエータを設けて、それぞれのアクチュエータの位相を制御する必要があるために、構造や制御が複雑になりかねないという問題があった。
【0005】
本発明は、前記の現状に鑑み開発されたもので、構造、制御が平易で、且つ、耐久性にすぐれた波動伝播式移動装置を提案するものである。
また、本発明は、構造、制御が平易で、且つ、耐久性にすぐれた、壁面や天井なども含む任意の傾きの走行面上を移動することのできる登攀装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
1.走行面にフレキシブルなプレートの裏面を直接又は間接的に接触させるとともに、該プレートの後端領域を撓ませて、走行面から離れる湾曲部を形成し、該湾曲部を前方に送り前記プレートの前端領域で消滅させることによって、走行面上を前方に移動する波動伝播式移動装置において、
前記プレートの上面側で前後方向に延び、回動自在に装置本体に軸支されるとともに、外周面に蔓巻状の軌道を有するシャフトと、
前記シャフトを回動させる回動手段と、
前記プレートを前記シャフトの軌道に沿って湾曲させる湾曲手段とを備え、
前記プレートの前端部及び後端部の少なくとも一方において、波動の振幅を吸収するように装置本体に対して相対的に上下移動可能とした
ことを特徴とする波動伝播式移動装置。
前記の構成により、平易な構造、制御によって波動を伝播することができるとともに、プレートの前端領域又は後端領域に加わる負荷を低減し、プレートの前後端領域における損傷の発生を回避することができるため、構造、制御が平易で、且つ、耐久性にすぐれた波動伝播式移動装置を得ることができる。
【0007】
なお、この発明の明細書及び特許請求の範囲では、「前方」・「後方」、又は、「前端部」・「後端部」等の、「前」・「後」を含む用語を用いているが、これらは、波動伝播式移動装置の動作等の説明を簡明にするために用いているものであり、特に断りのない限り、前後の方向を特に区別して用いているものではない。即ち、特に断りのない限り、例えば、プレートの長手方向一端部と他端部のうち、どちらの端部をプレートの「前端部」と考えても「後端部」と考えてもよい。換言すれば、プレートの長手方向一端部をプレートの「前端部」と考えれば、プレートの長手方向他端部がプレートの「後端部」となり、その逆を考えてもよい。
【0008】
2.前記回動手段に設けたカム機構により、前記プレートの前端部及び後端部の少なくとも一方を、波動の振幅を吸収するように装置本体に対して相対的に上下移動可能とした、前記1の波動伝播式移動装置。
前記の構成によれば、平易な構造、制御によって、プレートの前端領域又は後端領域に加わる負荷を確実に低減することができる。
【0009】
3.前記プレートの前端部及び後端部を装置本体に保持する保持手段を設けた、前記1の波動伝播式移動装置。
前記の構成によれば、波動を安定して伝播することができるため、安定した走行性能を有する波動伝播式移動装置を得ることができる。
【0010】
4.前記保持手段は、
前記プレートの前端部又は後端部に固定されたスライダ部材と、
該スライダ部材を上下方向にスライド可能に保持するとともに、装置本体に固定されたガイド部材と
を有する、前記3の波動伝播式移動装置。
前記の構成によれば、平易な構造、制御によって、プレートの前端領域又は後端領域に加わる負荷を確実に低減することができる。
【0011】
5.前記スライダ部材を下方に付勢する弾性部材をさらに備え、
前記シャフトの軸上に前記カム機構を設け、該カム機構は前記スライダ部材を押し上げるカム面を有し、
前記カム面は、前記シャフトの回転角度にかかわらず、該カム面による前記スライダ部材の押し上げ幅を、該スライダ部材が保持する前記プレートの前端部又は後端部における振幅と一致させる断面形状を有する、前記4の波動伝播式移動装置。
前記の構成によれば、平易な構造、制御によって、プレートの前端領域又は後端領域に加わる負荷をより確実に低減することができる。
【0012】
6.前記スライダ部材及び前記ガイド部材はそれぞれ、上下方向に延びる一対の脚部と、該脚部の上端間を左右に連結する天壁部とを有し、
前記スライダ部材の一対の脚部はそれぞれ、下端部が前記プレートの前端部又は後端部に固定され、且つ、外側の側部が前記ガイド部材の一対の脚部の内側の側部に上下方向にスライド可能に嵌合しており、
前記ガイド部材の一対の脚部はそれぞれ装置本体に固定されており、
前記弾性部材は、前記ガイド部材の天壁部と前記スライダ部材の天壁部との間に配置された圧縮コイルばねであり、
前記スライダ部材の天壁部の下面が、直接又は間接的に前記シャフトの前記カム面に当接している、前記5の波動伝播式移動装置。
前記の構成によれば、平易な構造、制御によって、プレートの前端領域又は後端領域に加わる負荷をさらに確実に低減することができる。
【0013】
7.前記スライダ部材の天壁部は、前記カム面に当接するベアリングを有する、前記6の波動伝播式移動装置。
前記の構成によれば、平易な構造、制御によって、プレートの前端領域又は後端領域に加わる負荷をさらに確実に低減することができる。
【0014】
8.前記保持手段は、前記プレートを前後方向に圧縮した状態で、前記プレートの前端部及び後端部を装置本体に保持するものとし、
装置本体は、前記プレートの裏面側で該プレートの両側縁に沿ってそれぞれ前後方向に延びる一対のレール部を有し、
前記保持手段及び前記一対のレール部を前記湾曲手段として用いる、前記3~7のいずれかの波動伝播式移動装置。
前記の構成によれば、平易な構造、制御によって、確実に、プレートをシャフトの条溝に沿って湾曲させることができるため、構造、制御をより平易化した波動伝播式移動装置を得ることができる。
【0015】
9.前記一対のレール部間で前記プレートの裏面に嵩高層を設け、
該嵩高層を走行面に接触させて移動する、前記8の波動伝播式移動装置。
前記の構成によれば、一対のレール部を設けた場合であっても、嵩高層を介することによってプレートの裏面側を走行面に確実に接触させることができるため、安定した走行性能を有する波動伝播式移動装置を得ることができる。
【0016】
10.前記保持手段は、
前記プレートの前端部及び後端部にそれぞれ固定されるとともに、上下方向にスライド可能に装置本体に保持される一対の保持板と、
前記一対の保持板間に、これら保持板間の前記プレートの前後方向の自然長より短い所定の間隔を保つように、該一対の保持板間を連結するスペーサ部材と
を有する、前記3、8及び9のいずれかの波動伝播式移動装置。
前記の構成によれば、平易な構造、制御によって、プレートの前端領域又は後端領域に加わる負荷を確実に低減することができる。
【0017】
11.前記一対の保持板はそれぞれ、前記シャフトの前後端からそれぞれ突出する軸が貫通する貫通孔を有し、
これら貫通孔は、上下方向に延びる長孔である、前記10の波動伝播式移動装置。
前記の構成によれば、平易な構造、制御によって、プレートの前端領域又は後端領域に加わる負荷をより確実に低減することができる。
【0018】
12.前記1~11のいずれか一項に記載の波動伝播式移動装置と、
該装置の前記プレートを走行面に密着させる密着手段と
を備えることを特徴とする、波動伝播式移動装置を用いた登攀装置。
前記の構成によれば、構造、制御が平易で、且つ、耐久性にすぐれた、壁面や天井なども含む任意の傾きの走行面上を移動することのできる登攀装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、構造、制御が平易で、且つ、耐久性にすぐれた波動伝播式移動装置を得ることができる。
また、本発明によれば、構造、制御が平易で、且つ、耐久性にすぐれた、壁面や天井なども含む任意の傾きの走行面上を移動することのできる登攀装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態を示す側面図である。
【図3】本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態を示す底面図である。
【図4】本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態を示す正面図である。
【図5】本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態を示す背面図である。
【図6】図1のA-A一部断面図である。
【図7】図1に示すシャフトのB-B断面図である。
【図8】本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態における前側スライダ部材及び前側ガイド部材の斜視図である。
【図9】本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態の動作状態を示す一部縦断面図であり、(a)から(d)は、その動作状態を時系列順に示している。
【図10】板ばねの前後端部を固定端とした比較例の動作を示す一部縦断面図である。
【図11】本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態の変形例におけるシャフトの要部斜視図である。
【図12】本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態の変形例における前側スライダ部材及び前側ガイド部材の斜視図である。
【図13】本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態の変形例の動作状態を示す一部縦断面図であり、(a)から(d)は、その動作状態を時系列順に示している。
【図14】本発明に係る波動伝播式移動装置の他の実施形態を示す平面図である。
【図15】本発明に係る波動伝播式移動装置の他の実施形態を示す側面図である。
【図16】本発明に係る波動伝播式移動装置の他の実施形態を示す底面図である。
【図17】本発明に係る波動伝播式移動装置の他の実施形態を示す正面図である。
【図18】本発明に係る波動伝播式移動装置の他の実施形態を示す背面図である。
【図19】図14のA’-A’一部断面図である。
【図20】本発明に係る波動伝播式移動装置の他の実施形態における保持手段の斜視図である。
【図21】本発明に係る波動伝播式移動装置を用いた登攀装置の一実施形態を示す平面図である。
【図22】図21のC-C一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る波動伝播式移動装置及びこの装置を用いた登攀装置の実施形態について、図面を用いて詳細に例示説明する。
まず、本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態の構成について、図1~図8を用いて説明する。

【0022】
図1~図6に示すように、本例における波動伝播式移動装置100は、前後方向(図1の右側が前方、左側が後方である)に延びる一対の側方フレーム101と、これらの側方フレーム101の前端部間及び後端部間をそれぞれ連結する前方フレーム102及び後方フレーム103とで装置本体104を形成している。一対の側方フレーム101はそれぞれ、縦板部101aと底板部(レール部)101bとからなる断面L字形状をなしており、これらのレール部101bは互いに対向して配置されている。

【0023】
前方フレーム102及び後方フレーム103は、互いに同一の形状をなし、それぞれ、縦板部102a、103aと底板部102b、103bとからなる断面L字形状になっている。これらの前方フレーム102及び後方フレーム103は、底板部102b、103bを互いに対向させて、一対の側方フレーム101の縦板部101a間に配置されている。前方フレーム102の底板部102bの両側端部は、一対の側方フレーム101のレール部101bの前端部に上方から重ねられてねじ止めされている。同様に、後方フレーム103の底板部103bの両側端部も、一対の側方フレーム101のレール部101bの後端部に上方から重ねられてねじ止めされている。

【0024】
前方フレーム102及び後方フレーム103の縦板部102a、103aには、断面円形の貫通孔102c、103cが設けられている。これらの貫通孔102c、103cには、板ばね107の上面側で前後方向に延びるシャフト105の軸106が挿入され、シャフト105は、これら貫通孔102c、103cの中心を結ぶ軸線Oの周りに回動自在に軸支されている。シャフト105の軸106の後端部には、モータMが設けられており、モータMの筐体は、後方フレーム103の縦板部103aにねじ止めされている。このように、本例では、シャフト105の軸106とモータMとで回動手段を構成している。

【0025】
シャフト105の外周面105aには、螺旋状の条溝105bが設けられている。具体的には、シャフト105の横断面は軸線方向位置に関わらず、図7に示すような、軸線Oとは異なる点Dを中心とする角度bの円弧ACBと、軸線Oを中心とする角度2π-aの円弧とで表すことができ、軸線方向に移動するにつれて、このような横断面が一定の割合で軸線Oの周りに回転することによって、図1に示した螺旋状の条溝105bを形成している。

【0026】
図1~図6に示したように、シャフト105の下方には、フレキシブルなプレートである長方形の板ばね107が配置されている。板ばね107は、保持手段108によって、板ばね107を前後方向に圧縮した状態で、前端部107a及び後端部107bが一対の側方フレーム101の縦板部101aに保持されている。また、板ばね107の両側縁部は、一対の側方フレーム101のレール部101bに載置されている。さらに、図6に示すように、側面視において、レール部101bの上面とシャフト105の外周面105aの下端部との隙間tは、板ばね107の厚みに等しくなっている。その結果、保持手段108及び一対のレール部101bが、板ばね107をシャフト105の条溝105bに沿って湾曲させる湾曲手段となって、板ばね107は、シャフト105の下端部に沿って位置する各条溝105b内に撓み変形し、これらの条溝105bと当接する、図示しない走行面から離れる方向に湾曲する湾曲部107cを形成している。

【0027】
保持手段108は、板ばね107の前端部107a及び後端部107bにそれぞれ固定された前側スライダ部材109a及び後側スライダ部材109bと、これらのスライダ部材109a、109bをそれぞれ上下方向にスライド可能に保持する前側ガイド部材110a及び後側ガイド部材110bとからなる。前側スライダ部材109a及び前側ガイド部材110aの構造は、図8に示すようになっており、後側スライダ部材109b及び後側ガイド部材110bも同一の構造になっている。

【0028】
図8に示したように、前側スライダ部材109aは、上下方向に延びる一対の脚部111aと、該脚部111aの上端間を左右に連結する天壁部112aとを有する。前側スライダ部材109aの一対の脚部111aの外側の側部にはそれぞれ、上下方向に延びる縦溝113aが設けられている。また、これら一対の脚部111aの底面にはねじ穴(図示省略)が設けられている。前側ガイド部材110aは、上下方向に延びる一対の脚部114aと、該脚部114aの上端間を左右に連結する天壁部115aとを有する。前側ガイド部材110aの一対の脚部114aの内側の側部にはそれぞれ、上下方向に延びる縦リブ116aが設けられている。これらの縦リブ116aは、前側スライダ部材109aの一対の脚部111aの縦溝113aにそれぞれ嵌合する。前側ガイド部材110aの一対の脚部114aの前端部及び後端部は、下方領域が前後方向に張り出した張り出し部117aを形成しており、これら張り出し部117aにはそれぞれ1つの取付孔が形成されている。

【0029】
図3及び図6に示したように、前側スライダ部材109aは、その脚部111aの底面に設けられたねじ穴を介して板ばね107の前端部107aに、当該前端部107aの裏面側からねじ止めされている。また、図1及び図2に示したように、前側ガイド部材110aは、張り出し部117aに設けられた取付孔を介して側方フレーム101の縦板部101aにねじ止めされている。この状態では、図8に示した前側ガイド部材110aの縦リブ116aが、前側スライダ部材109aの縦溝113aに嵌合し、前側スライダ部材109aは前側ガイド部材110aに上下方向にスライド可能に保持されている。

【0030】
後側スライダ部材及び後側ガイド部材についても同様であって、図3及び図6に示したように、後側スライダ部材109bは板ばね107の後端部107bにねじ止めされ、図1及び図2に示したように、後側ガイド部材110bは側方フレーム101の縦板部101aにねじ止めされており、この状態で、後側スライダ部材109bが後側ガイド部材110bに上下方向にスライド可能に保持されている。

【0031】
このように、板ばね107の前端部107aが前側スライダ部材109a及び前側ガイド部材110aを介して装置本体104に保持されるとともに、板ばね107の後端部107bが後側スライダ部材109b及び後側ガイド部材110bを介して装置本体104に保持された状態では、前側スライダ部材109aと後側スライダ部材109bとの間の距離は、これらの前側スライダ部材109aと後側スライダ部材109bとの間に延在する板ばね107の自然長よりも短くなっている。

【0032】
また、一対の側方フレーム101のレール部101b間で、板ばね107の裏面に、板ばね107の湾曲部の前進を走行面に伝えることが可能な固さのスポンジ層(嵩高層)118が貼り付けられている。このスポンジ層118の厚みは、レール部101bの厚みよりも大きくなっている。したがって、波動伝播式移動装置100の動作時には、板ばね107の裏面は、スポンジ層118を介して、間接的に走行面に接触することとなる。

【0033】
以上の構成になる本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態の動作の例について、図9及び図10を用いて説明する。図9は、本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態の動作状態を示す一部縦断面図であり、(a)から(d)は、その動作状態を時系列順に示している。図10は、板ばねの前後端部を固定端とした比較例の動作を示す一部縦断面図である。

【0034】
波動伝播式移動装置100は、板ばね107のスポンジ層118を走行面Sに接触させた状態で、モータによってシャフト105を回転させることによって、板ばね107の湾曲部107cを前方(図9及び図10では、右方向)に移動させることができる。

【0035】
ここで、図9(a)に示すように、板ばね107の前端領域107dに湾曲部107cが到達した状態から、シャフト105をさらに回転させると、湾曲部が前進して図9(b)に示す状態になる。すなわち、板ばね107の前端領域107dで湾曲部107cの一部が消滅するとともに、板ばね107の後端領域107eで板ばね107が撓んで湾曲部107cの一部が生成された状態になる。このとき、板ばね107の前端部107aは、湾曲部107cの一部の消滅に伴って、この湾曲部107cの一部が前方に引き伸ばされるため、わずかに前進する。他方、板ばね107の後端領域107eでは、湾曲部107cの一部の生成に伴って、板ばね107の後端領域107eが前方に縮み、板ばね107の後端部107bがわずかに前進する。また、板ばね107の前端部107a及び後端部107bは保持手段を介し、装置本体に対して前後方向に拘束されているため、装置本体も板ばね107の前端部107a及び後端部107bと同じだけ前進する。さらに、シャフト105は、装置本体に軸支されているため、シャフト105も板ばね107の前端部107a及び後端部107bと同じだけ前進する。

【0036】
この状態からさらにシャフト105を回転させると、湾曲部107cがさらに前進して、図9(c)に示す状態になる。すなわち、板ばね107の前端領域107dで湾曲部107cの全体が消滅するとともに、板ばね107の後端領域107eで湾曲部107cの全体が生成された状態になる。このとき、板ばね107の前端部107a及び後端部107bは、図9(b)について前述したのと同様の作用によってさらに前進し、それに伴って装置本体及びシャフト105も同じだけ前進する。その結果、本装置は図9(a)に示した状態から図9(c)に示した状態となるまでに距離xだけ前進することになる。

【0037】
その後、シャフト105をさらに回転させて、図9(c)で消滅した湾曲部に後続する湾曲部107cが板ばね107の前端領域107dに到達する図9(d)の状態になるまでは、波動伝播式移動装置100は前進しない。

【0038】
波動伝播式移動装置100が前進するメカニズムは以上のとおりであるが、本例における波動伝播式移動装置100では、板ばね107の前端部107a及び後端部107bにおいて、波動の振幅を吸収するように装置本体に対して相対的に上下移動可能(この例では、スライド可能)としているため、板ばね107の前端領域107d及び後端領域107eにおける損傷の発生を確実に防止し、耐久性を向上することができる。すなわち、仮に、板ばね107の前端部107a及び後端部107bを装置本体に固定していた場合には、図9(b)に示したタイミングで、図10に示すように、板ばね107の前端領域107d及び後端領域107eに作用する荷重を逃がすことができず、その結果、これら領域に損傷を生じてしまうおそれがあるが、本例による波動伝播式移動装置100では、板ばね107の前端部107a及び後端部107bを上下方向に自由端とし、荷重に従って上下動可能としているため、板ばねの前後端領域に作用する負荷を低減することができるのである。

【0039】
以上説明した本発明に係る波動伝播式移動装置の一実施形態では、板ばねの前後端部を上下方向に自由端とし、荷重に従って上下動可能とすることで、板ばねの前後端領域に作用する負荷を低減させたが、次に、板ばねの前後端部の上下動を制御して、それにより板ばねの前後端領域に作用する負荷を最小化するようにした変形例について、図11~図13を用いて説明する。図11は、本変形例のシャフトの要部斜視図である。図12は、本変形例の前側スライダ部材及び前側ガイド部材の斜視図である。図13は、本変形例の動作状態を示す一部縦断面図であり、(a)から(d)は、その動作状態を時系列順に示している。

【0040】
本変形例では、図11に示すように、シャフト105の前後端部に設けられた軸106上に、シャフト105と隣接してカム面119が設けられている。すなわち、回動手段にカム機構が設けられている。また、図12に示すように、前側スライダ部材109a’の天壁部112aと前側ガイド部材110aの天壁部115aとの間には、圧縮コイルばね120aが2本配置されている。なお、前側スライダ部材109a’の天壁部112aの上面には、図示したように、圧縮コイルばね120aの位置決め穴が2つ形成されており、これらの位置決め穴にはそれぞれ、圧縮コイルばね120aの下端部が収納されている。さらに、スライダ部材109a’の天壁部112a内には、前後方向の軸でベアリング121aが軸支されており、当該ベアリング121aの下部がスライダ部材109a’の天壁部112aの底面から露出している。後側スライダ部材及び後側ガイド部材にも、前記の前側スライダ部材109a’及び前側ガイド部材110aと同様に、圧縮コイルばねとベアリングとが設けられている。

【0041】
したがって、これらの部材を用いて、前述した実施形態の場合と同様に波動伝播式移動装置を構成すると、シャフトの前後端部の軸に設けたカム面がそれぞれ、前側スライダ部材及び後側スライダ部材の天壁部にベアリングを介して間接的に当接し、前側スライダ部材及び後側スライダ部材を圧縮コイルばねの付勢力に逆らって押し上げることができるので、カム面の断面形状によって板ばねの前後端部の上下動を制御することが可能になる。

【0042】
ここに、カム面119は、シャフト105の回転角度にかかわらず、カム面119によるスライダ部材の押し上げ幅を、このスライダ部材が保持する板ばね107の前端部又は後端部における振幅と一致させる断面形状を有している。なお、前述したベアリングは、カム面から入力される左右方向荷重及び前後方向荷重を逃がすことができるため、設けることが好ましいが、省略することもできる。その場合には、前側スライダ部材及び後側スライダ部材の天壁部の上下方向の厚みを調節し、天壁部の底面を直接、カム面に当接させるようにすることができる。

【0043】
このような構成になる本変形例の波動伝播式移動装置の動作は、図13に示すとおりである。すなわち、波動伝播式移動装置100が前進するメカニズムは図9(a)~図9(d)を用いて前述したところと同様であるが、板ばね107の前端部107a及び後端部107bの上下動は、次のように制御される。

【0044】
まず、図13(a)に示した状態では、板ばね107の前端部107a及び後端部107bと対向し、且つ、シャフト105の前端面又は後端面に開口している条溝105bが存在しておらず、カム面による前側スライダ部材及び後側スライダ部材の押し上げ幅は0である。したがって、圧縮コイルばねの付勢力によって、前側スライダ部材及び後側スライダ部材は最下位置に維持される。

【0045】
この状態からさらにシャフト105を回転させると、湾曲部107cが前進して、図13(b)に示す状態になる。この状態では、板ばね107の前端部107a及び後端部107bにおける振幅(すなわち、板ばね107の前端部107a及び後端部107bと対向し、且つ、シャフト105の前端面又は後端面に開口している条溝105bの上下方向深さ)z1と同じだけ、前側スライダ部材及び後側スライダ部材がカム面119によって押し上げられる。これは、カム面119による前側スライダ部材及び後側スライダ部材の押し上げ幅z2が前記したz1と等しくなっているためである。この状態からさらにシャフト105を回転させた図13(c)及び図13(d)の状態では、図13(a)の状態のときと同様に、前側スライダ部材及び後側スライダ部材は最下位置に維持される。

【0046】
したがって、本変形例の波動伝播式移動装置によれば、回動手段に設けたカム機構により、板ばねの前端部及び後端部を、波動の振幅を吸収するように装置本体に対して相対的に上下移動可能とすることができる。しかも、シャフトの回転角度に関わらず、カム面によるスライダ部材の押し上げ幅を板ばねの前後端部における振幅と一致させて、板ばねの前後端部の上下方向位置を最適化することができるため、板ばねの前後端領域に作用する負荷を最小化することができる。

【0047】
次に、本発明に係る波動伝播式移動装置の他の実施形態について、図14~図19を用いて説明する。図14~図18はそれぞれ、本発明に係る波動伝播式移動装置の他の実施形態を示す平面図、側面図、底面図、正面図及び背面図である。図19は図14のA’-A’一部断面図である。図20は、本発明に係る波動伝播式移動装置の他の実施形態における保持手段の斜視図である。

【0048】
図14~図19に示すように、本例における波動伝播式移動装置200は、保持手段201として一対の保持板202と支柱(スペーサ部材)203とを用いる点を除いては、図1~図8を用いて前述した実施形態における波動伝播式移動装置と同一の構成を有する。

【0049】
一対の保持板202はそれぞれ、縦板部202aと底板部202bとからなる断面L字形状をなしており、これらの縦板部202aは互いに前後方向に対向して配置されている。また、一対の保持板202の間には、3本の支柱203がそれぞれ軸線Oと平行に配置されている。このうち1本はシャフトの上方、2本はシャフトの左右に位置している。これらの支柱203はいずれも、図20に示すように、一対の保持板202の縦板部202aに設けられた取付孔を介してねじ止めされている。

【0050】
また、一対の保持板202の底板部202bにも取付孔が設けられており、これらの取付孔を介して板ばねの前端部及び後端部がそれぞれ一対の保持板202の底板部202bにねじ止めされている。ここに、一対の保持板202の縦板部202a間の距離、すなわち支柱203の長さは、当該縦板部202a間に延在する板ばねの自然長よりも短くなっている。したがって、保持手段201は、板ばねを前後方向に圧縮した状態で、板ばねの前端部及び後端部を装置本体に保持するものとなっている。また、一対の保持板202の縦板部202aには、シャフトの軸の直径を横幅とする縦長の長孔202cが設けられている。これらの長孔202cには、シャフトの前後の軸が挿入されている。

【0051】
その結果、保持手段201及び一対のレール部が、板ばねをシャフトの条溝に沿って湾曲させる湾曲手段となって、板ばねは、図19に示すように、シャフトの下端部に沿って位置する各条溝内に撓み変形し、これらの条溝と当接する、図示しない走行面から離れる方向に湾曲する湾曲部を形成している。

【0052】
以上の構成になる波動伝播式移動装置200は、図1~図8を用いて前述した実施形態における波動伝播式移動装置と同様に動作することができる。すなわち、波動伝播式移動装置200でも、図9を用いて説明したところと同様に、板ばねの前後端部を波動の振幅を吸収するように装置本体に対して相対的に上下移動可能とすることができる。具体的には、板ばねの前後端部を上下方向に自由端とし、荷重に従って上下動可能とすることができるため、その結果、板ばねの前後端領域に作用する負荷を低減することができる。

【0053】
さらに、本発明に係る波動伝播式移動装置を用いた登攀装置の一実施形態について、図21~図22を用いて説明する。図21は、本発明に係る波動伝播式移動装置を用いた登攀装置の一実施形態を示す平面図である。図22は図21のC-C一部断面図である。
本例では、図1~8を用いて前述した波動伝播式移動装置100を2つ用いているが、シャフトに形成した条溝の向きは互いに逆としている。そして、図21~図22に示すように、これらの波動伝播式移動装置100を互いに離間させつつ並列配置するとともに、これら装置間に吸引装置(密着手段)301を配置することによって、登攀装置300を構成している。吸引装置301は、下方に開口する凹部を有する箱体301aと、箱体301aの天壁部に設置され、箱体301aの凹部内の空気を吸引する遠心ファン301bとを有している。また、箱体301aは、その外壁に波動伝播式移動装置100が固定されている。

【0054】
したがって、登攀装置300を、走行面S上に配置し、箱体301aと走行面Sとの間に形成される吸引空間Vを、遠心ファン301bによって負圧化することによって、登攀装置を走行面Sに密着させることができる。そして、この状態で波動伝播式移動装置100を駆動することによって、壁面や天井なども含む任意の傾きの走行面S上を移動することができるのである。なお、本例では、左右の波動伝播式移動装置100のシャフトに形成した条溝の向きを互いに逆向きとし、シャフトの回転方向を逆にしたので、前進する際に登攀装置に作用するモーメントを互いに打ち消すことができ、走行を安定化することができる。また、左右のシャフトの回転速度及び回転方向を制御することにより、登攀装置を左右に旋回及び後退させることができる。なお、シャフトに形成した条溝の向きを同一としてもよい。

【0055】
前述したところは、本発明の一例を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、シャフトに設ける条溝は、必ずしも正確な螺旋形となっている必要はなく、蔓巻状になっていればよい。また、条溝の条数は1条とした例を用いて説明したが、例えば2条とすることもできる。この場合には、前述した一実施形態の変形例では、カム面の断面形状も変更し、軸線を挟んで対向する2箇所で押し上げ量が極大となるような断面形状とすることが好ましい。さらに、条溝のピッチ、幅、深さや、断面形状なども適宜変更することができる。

【0056】
また、前述したいずれの例においても、板ばね(プレート)をシャフトの条溝に沿って湾曲させる湾曲手段として、板ばねを前後方向に圧縮した状態で板ばねの前端部及び後端部を装置本体に保持する保持手段と装置本体に設けたレール部とを用いたが、これに限定されない。例えば、シャフトとプレートとを、互いに引き付け合う磁力を生じさせる磁性体からなるものとし、これらのシャフト及びプレートを湾曲手段として用いることもできる。また、シャフトとプレートとの間に互いに引き付け合う磁力又は静電気力を生じさせる磁界又は電界発生装置を設け、この磁界又は電界発生装置を湾曲手段として用いることもできる。さらに、これらの湾曲手段を併用することも可能である。

【0057】
また、このように磁力や静電気を利用して湾曲部を形成する場合には、必ずしも条溝を設ける必要はなく、シャフトは、条溝に代えて、このような磁力や静電気を生じる部分からなる軌道を有するものとすることができる。この場合、プレートをシャフトの軌道に沿って湾曲させる湾曲手段として、例えば、軌道とプレートの間の互いに引き付けあう力(磁力、静電気力)と、シャフト外周面上の軌道以外の部分とプレートの間の互いに反発する力とを用いることができる。このような反発力を生じさせるためには、例えば、シャフト外周を弾性圧縮可能且つ磁力、静電気力を透過可能な素材で被覆し、当該素材を介してシャフトとプレートとを互いに間接的に接触させる構造などを採用することができる。また、シャフトに設ける軌道は、条溝について前述したところと同様に、必ずしも正確な螺旋形となっている必要はなく、蔓巻状になっていればよいし、条数、ピッチ、幅なども適宜変更することができる。さらに、前述したいずれの例においても、板ばねの裏面にスポンジ層(嵩高層)を設けるものとしたが、湾曲手段の態様や走行面の形状によっては、嵩高層を設けなくとも板ばねの裏面を走行面に直接接触させることができるため、必ずしも嵩高層を設ける必要はない。また、プレートとしては、板ばねに限られず、異なる材質からなる板体を積層した積層体を用いることもできる。

【0058】
さらに、前述したように磁力や静電気を利用して湾曲部を形成する場合には、必ずしも板ばねの前後端部を装置本体に保持する必要はなく、板ばねの前進に伴って装置本体も前進するようになっていれば、板ばねを装置本体に保持する必要はない。板ばねの前進に伴って装置本体も前進させるためには、例えば、板ばねのいずれかの部分を装置本体に対して相対的に上下移動可能に装置本体に保持する構造や、磁力や静電気を用いて板ばねと装置本体との間の距離を一定に保つようにする構造などを採用することができる。

【0059】
また、保持手段の例として、前側スライダ部材及び前側ガイド部材並びに後側スライダ部材及び後側ガイド部材を用いるものを例示したが、前側スライダ部材及び前側ガイド部材のみを用い、板ばねの後端部は装置本体に直接固定することも可能であるし、後側スライダ部材及び後側ガイド部材のみを用い、板ばねの前端部は装置本体に直接固定することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
100、200 波動伝播式移動装置
101 側方フレーム(装置本体)
101a 縦板部
101b 底板部(レール部)(湾曲手段)
102 前方フレーム(装置本体)
102a 縦板部
102b 底板部
103 後方フレーム(装置本体)
103a 縦板部
103b 底板部
104 装置本体
105 シャフト
105a 外周面
105b 条溝(軌道)
106 軸(回動手段)
107 板ばね(プレート)
107a 前端部
107b 後端部
107c 湾曲部
107d 前端領域
107e 後端領域
108 保持手段(湾曲手段)
109a、109a’ 前側スライダ部材(保持手段)(湾曲手段)
109b 後側スライダ部材(保持手段)(湾曲手段)
110a 前側ガイド部材(保持手段)(湾曲手段)
110b 後側ガイド部材(保持手段)(湾曲手段)
111a 脚部
112a 天壁部
113a 縦溝
114a 脚部
115a 天壁部
116a 縦リブ
117a 張り出し部
118 スポンジ層(嵩高層)
119 カム面
120a 圧縮コイルばね
121a ベアリング
201 保持手段(湾曲手段)
202 保持板
202a 縦板部
202b 底板部
202c 長孔
203 支柱(スペーサ部材)
300 登攀装置
301 吸引装置(密着手段)
301a 箱体
301b 遠心ファン
M モータ(回動手段)
S 走行面
V 吸引空間
z1 板ばねの前端部及び後端部における振幅
z2 カム面による前側スライダ部材及び後側スライダ部材の押し上げ幅
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21