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明細書 :流体注入型アクチュエータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5246717号 (P5246717)
登録日 平成25年4月19日(2013.4.19)
発行日 平成25年7月24日(2013.7.24)
発明の名称または考案の名称 流体注入型アクチュエータ
国際特許分類 F15B  15/10        (2006.01)
FI F15B 15/10 H
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2009-514143 (P2009-514143)
出願日 平成20年5月9日(2008.5.9)
国際出願番号 PCT/JP2008/058605
国際公開番号 WO2008/140032
国際公開日 平成20年11月20日(2008.11.20)
優先権出願番号 2007126814
優先日 平成19年5月11日(2007.5.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年4月15日(2011.4.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
発明者または考案者 【氏名】中村 太郎
【氏名】山本 健二
個別代理人の代理人 【識別番号】100080296、【弁理士】、【氏名又は名称】宮園 純一
審査官 【審査官】北村 一
参考文献・文献 特開2001-355608(JP,A)
特開昭61-201906(JP,A)
特開昭51-143178(JP,A)
特公昭50-005790(JP,B1)
特開昭60-132103(JP,A)
特開昭63-115906(JP,A)
特公昭45-013000(JP,B1)
実開昭53-077416(JP,U)
特開2009-250362(JP,A)
特開2009-018044(JP,A)
特開平06-126681(JP,A)
特開平05-015485(JP,A)
特開2008-220917(JP,A)
特開平06-159325(JP,A)
特開平06-147202(JP,A)
特開平06-094008(JP,A)
特開2008-019984(JP,A)
特開2002-206677(JP,A)
特開平07-024960(JP,A)
調査した分野 F15B 15/10
F16L 11/
特許請求の範囲 【請求項1】
弾性体から成る筒状体とこの筒状体の両端に設けられた蓋部材とで作られる空間に供給される流体の圧力により上記筒状体を径方向に膨張させて、上記筒状体の長手方向の長さを収縮させる流体注入型アクチュエータであって、上記筒状体には、筒状体の長手方向に延長する複数の繊維が上記筒状体の横断面において上記筒状体の周方向に沿って環状に配列された環状繊維群と、上記環状繊維群の径方向外側もしくは径方向内側に配置される、筒状体の長手方向に延長する複数の繊維とが内挿されていることを特徴とする流体注入型アクチュエータ。
【請求項2】
上記環状繊維群の径方向外側もしくは径方向内側に配置される複数の繊維は、上記筒状体の周方向に沿って環状に配列されて環状繊維群を形成していることを特徴とする請求項1に記載の流体注入型アクチュエータ。
【請求項3】
上記環状繊維群の隣接する繊維間の径方向内側もしくは径方向外側に他の環状繊維群の繊維が位置していることを特徴とする請求項2に記載の流体注入型アクチュエータ。
【請求項4】
上記繊維は弾性体で被覆されていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の流体注入型アクチュエータ。
【請求項5】
上記筒状体は外周部に上記筒状体の径方向への膨張を制限するリングを備えていることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の流体注入型アクチュエータ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、人工筋肉等に用いられるアクチュエータに関するもので、特に、弾性体から成る筒状体内に流体を注入して膨張させ、筒状体の長さを伸縮させる形態の流体注入型アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工筋肉として、中空状の弾性体内に空気を注入して膨張させ、上記弾性体をその長手方向に収縮させる形態のものが知られている。図9(a)は、従来から研究されているマッキベン(McKibben)型人工筋肉50の構成を示す図で、この人工筋肉50は、円筒状のゴムチューブ51の外側をスリーブ状に編みこんだ繊維コード52で覆った構造となっている。上記ゴムチューブ51と繊維コード52とは、その両端でターミナル53及び締付バンド54により強く固定されている。そして、上記ゴムチューブ51内に、上記ターミナル53に設けられた空気注入用パイプ55から空気を注入して膨張させると、図9(b)に示すように、上記繊維コード52の繊維52a,52aのなす角度θが変化し、上記人工筋肉50は長手方向に収縮する。したがって、上記人工筋肉50は上記ターミナル53,53間の距離が変化するアクチュエータとして動作する。
しかし、マッキベン(McKibben)型人工筋肉50はゴムチューブ51に繊維コード52を覆わせているだけなので、伸縮時にはゴムチューブ51と繊維コード52との間に摩擦が生じ、そのため、ゴムが破けるなどの問題があった。
そこで、図10(a),(b)に示すような、繊維をゴムチューブ内に内挿した形態のゴム人工筋60が提案されている。このゴム人工筋60のゴムチューブ61は、ゴムフィルム62に、上記ゴムチューブ61の長手方向に延長し当該ゴムチューブ61の長手方向の延びを拘束する複数本のタコ糸(綿糸)63を内挿したもので、これにより、上記タコ糸63は周りのゴムフィルム62と一体化される。したがって、ゴムチューブ61の伸縮時における繊維(タコ糸63)とゴム(ゴムフィルム62)との間の摩擦を解消することができるので、人工筋60の耐久性が向上する。(例えば、非特許文献1参照)。

【非特許文献1】松下:ゴム人工筋製作法ノート;「計測と制御」第7巻第12号(昭和43年12月):pp110-116
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記人工筋60では、拘束部材として、図10(b)に示すような、多数の綿糸63aを編んだ径が0.2~0.8mm程度の太いタコ糸63を使用しているので、ゴムチューブ61が膨張した場合には、図11に示すように、半径方向への膨張がタコ糸63とタコ糸63との間のゴムフィルム62に集中してしまい、そのため、半径方向の膨張を長手方向の収縮へ十分に伝達することができないといった問題点があった。また、高収縮時や高負荷時、あるいは、円筒の半径が小さい場合、更には、リングを多数挿入した場合などのように、上記人工筋60に高い圧力が作用した状態で伸縮を繰り返すと、圧力が集中する箇所(タコ糸63間のゴムフィルム62)に亀裂が発生したり、タコ糸63とゴムフィルム62とが剥離してしまうといった問題点があった。実際に発明者らが、径が0.5mm程度のタコ糸を用いて上記人口筋60と同様の構成の試作品を作製して実験したところ、ゴムチューブを膨張させてすぐにタコ糸が切れてしまった。また、上記タコ糸に代えて、径が約0.3mm程度の撚ったアラミド繊維を用いて実験したところ、収縮率は5%程度しか得られず、更に圧力をかけるとゴムが裂けてしまった。
なお、タコ糸63の本数を増やすとタコ糸63とタコ糸63との間隔は狭まるが、ゴムフィルム62への長手方向に対する拘束が大きくなるため、タコ糸63とタコ糸63との間のゴムフィルム62への応力集中を緩和することは困難である。
【0004】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、筒状体内に流体を注入して膨張させて長手方向の長さを伸縮させる際に、半径方向の膨張を長手方向に効率よく伝達することのできるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の請求項1に記載の発明は、弾性体から成る筒状体とこの筒状体の両端に設けられた蓋部材とで作られる空間に供給される流体の圧力により上記筒状体を径方向に膨張させて、上記筒状体の長手方向の長さを収縮させる流体注入型アクチュエータであって、上記筒状体には、筒状体の長手方向に延長する複数の繊維が上記筒状体の横断面において上記筒状体の周方向に沿って環状に配列された環状繊維群と、上記環状繊維群の径方向外側もしくは径方向内側に配置される、筒状体の長手方向に延長する複数の繊維とが内挿されているものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の流体注入型アクチュエータにおいて、上記環状繊維群の径方向外側もしくは径方向内側に配置される複数の繊維が、上記筒状体の周方向に沿って環状に配列されて環状繊維群を形成していることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の流体注入型アクチュエータにおいて、上記環状繊維群の隣接する繊維間の径方向内側もしくは径方向外側に他の環状繊維群の繊維が位置していることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1~請求項3のいずれかに記載の流体注入型アクチュエータであって、上記繊維は弾性体で被覆されていることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1~請求項4のいずれかに記載の流体注入型アクチュエータにおいて、上記筒状体の外周部に上記筒状体の径方向への膨張を制限するリングを設けたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、弾性体から成る筒状体を流体の圧力により膨張させて、上記筒状体の長手方向の長さを変化させる流体注入型アクチュエータにおいて、上記筒状体に、筒状体の長手方向に延長する複数の繊維が上記筒状体の横断面において上記筒状体の周方向に沿って環状に配列された環状繊維群と、上記環状繊維群の径方向外側もしくは径方向内側に配置される、筒状体の長手方向に延長する複数の繊維とを内挿させるようにしたので、上記筒状体を径方向により均一に膨張させることができる。したがって、高収縮時や高負荷時においても、半径方向の膨張を長手方向へ効率よく伝達することができるだけでなく、弾性体に応力が集中することがないので、アクチュエータの耐久性を向上させることができる。
このとき、上記環状繊維群の径方向外側もしくは径方向内側に配置される複数の繊維についても、上記筒状体の周方向に沿って環状に配列した環状繊維群とすれば、上記筒状体の径方向への膨張を更に均一にすることができる。
また、上記環状繊維群の隣接する繊維間の径方向内側もしくは径方向外側に他の環状繊維群の繊維が位置するように上記環状繊維群を形成すれば、膨張時に繊維の密度が低くなった場合でも、弾性体を十分に繊維で覆うことができるので、弾性体の全面に亘って上記弾性体を長手方向に拘束することができる。
更に、上記繊維を弾性体で被覆するようにすれば、上記繊維は弾性体と一体となるので、膨張時において、繊維は上記弾性体を確実に長手方向へ拘束することができるので、半径方向の膨張を更に効率よく長手方向へ伝達することができる。
また、上記筒状体の外周部に上記筒状体の径方向への膨張を制限するリングを設けて、上記筒状体を複数の領域に分割し、それぞれの領域が径方向に膨張するよう構成することにより、膨張時における筒状体の径と長さの比を調整することができるので、膨張時の筒状体の形状を仕様に合わせて決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の最良の形態に係る流体注入型アクチュエータの構成を示す図である。
【図2】本発明のアクチュエータ本体の作製方法の一例を示す図である。
【図3】本発明による流体注入型アクチュエータの動作を示す側面図である。
【図4】本発明による流体注入型アクチュエータの動作を示す横断面図である。
【図5】本発明による流体注入型アクチュエータの他の構成を示す図である。
【図6】本発明による流体注入型アクチュエータの他の構成を示す図である。
【図7】本発明による流体注入型アクチュエータの無負荷時における導入圧力と膨張直径との関係、及び、導入圧力と収縮量との関係を示すグラフである。
【図8】本発明による流体注入型アクチュエータの負荷時における導入圧力と膨張直径との関係、及び、導入圧力と収縮量との関係を示すグラフである。
【図9】従来の流体注入型アクチュエータ(マッキベン型人工筋肉)の構成を示す図である。
【図10】従来の繊維内挿型人工筋の構成を示す図である。
【図11】従来の繊維内挿型人工筋の膨張時の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0008】
10 流体注入型アクチュエータ、11 アクチュエータ本体、12 ゴムチューブ、
13,13m,13n,13p,13q 繊維、13A~13C 環状繊維群、
14,15 蓋部材、16 締付バンド、17a 圧縮空気注入管、
17b 空気排出管、18a 注入用の電磁弁、18b 排気用の電磁弁、
19 圧縮空気供給装置、20 制御装置、21 シリコーンゴムチューブ、
22 丸棒、23 RVTゴム、30 リング、30T 熱収縮チューブ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1(a)は、本発明の最良の形態に係る流体注入型アクチュエータ10の構成を示す図で、同図において、11はシリコーンゴムなどのゴム部材から成る筒状体12(以下、ゴムチューブ12という)内に上記ゴムチューブ12の長手方向に延長する多数の繊維13が内挿されたアクチュエータ本体、14,15は上記アクチュエータ本体11の両端にそれぞれ取付けられる蓋部材で、この蓋部材14,15の一端は上記ゴムチューブ12内に挿入されている。16は上記ゴムチューブ12の外周側端部に配置され、上記アクチュエータ本体11と上記蓋部材14とを締付けるための締付バンド、17a,17bはそれぞれ一方の蓋部材14に取付けられた圧縮空気注入管と空気排出管で、上記圧縮空気注入管17aは、注入用の電磁弁18aを介して圧縮空気供給装置19に連結されており、上記空気排出管17bは排気用の電磁弁18bに連結されている。また、20は上記注入用の電磁弁18aと排気用の電磁弁18bの開閉を制御して、上記アクチュエータ本体11の膨張・収縮を制御する制御装置である。
なお、アクチュエータ本体としては、膨張時の節を作るため、上記ゴムチューブ12の外周側にリング30を配置するタイプのものもあるが、本例では、説明を簡単にするため、リング30のないアクチュエータ本体11について説明する。
アクチュエータ本体11は、詳細には、図1(b)の横断面図に示すように、複数の環状繊維群13A~13Cが内挿されている。これらの環状繊維群13A~13Cは、それぞれ、ゴムチューブ12の長手方向に延長する複数の繊維13が上記ゴムチューブ12の周方向に沿って環状に配列されたもので、上記繊維13としては、例えば、グラスロービング繊維やカーボンロービング繊維等のような、機械的な撚りをかけずに収束された径が5~15μm程度の極細でかつ強度の高い単一無撚繊維が用いられる。また、一本一本の繊維13はゴムチューブ12を構成するゴム部材で覆われている。
本例では、ゴムチューブ12に内挿する繊維の径が非常に小さいので、上記繊維13を非常に密な状態で上記ゴムチューブ12に内挿することができる。したがって、多数の微細な径を有する繊維を環状に配列した環状繊維群を径方向に複数層(ここでは、3層)設けることができる。その結果、図1(c)に示すように、例えば、中間の環状繊維群13Bの隣接する繊維13m,13n間の径方向内側には、環状繊維群13Aの繊維13pが、径方向外側には環状繊維群13Cの繊維13qが存在するので、上記ゴムチューブ12が膨張して隣接する繊維13m,13n間の距離が広がった場合でも、上記繊維13m,13nの間には、周方向でみると、上記繊維13pもしくは上記繊維13qが位置する。したがって、上記ゴムチューブ12が膨張した場合でも、ゴムチューブ12全体を長手方向に均一に拘束することができる。
なお、アクチュエータ本体としては、膨張時の節を作るため、上記ゴムチューブ12の外周側にリング30を配置するタイプのものもあるが、本例では、説明を簡単にするため、リング30のないアクチュエータ本体11について説明する。
一方、蓋部材14,15の上記アクチュエータ本体11内に挿入される部分の外径は、少なくとも上記アクチュエータ本体11の端部の内径よりも大きく設定されており、これにより、上記アクチュエータ本体11の開口部を押し広げながら上記蓋部材14,15を上記アクチュエータ本体11の端部に挿入すれば、上記蓋部材14,15と上記アクチュエータ本体11とにより、上記アクチュエータ本体11の中空部とほぼ同じ体積の密閉空間を形成することができる。
但し、上記アクチュエータ本体11は径方向に膨張し長手方向には収縮するので、上記アクチュエータ本体11の外周側端部を締付バンド16にて締付けるようにした方が密閉性を向上させることができるとともに、上記アクチュエータ本体11の端部、すなわち、弾性体であるゴムチューブ12の端部と、この弾性体を長手方向へ拘束する上記繊維13の端部とを確実に固定することができる。
【0010】
図2(a)~(d)は上記アクチュエータ本体11の作製方法の一例を示す図である。
はじめに、図2(a)に示すように、シリコーンゴムチューブ21の中空部にアルミ棒などの丸棒22を通して上記シリコーンゴムチューブ21の形状を保持した状態で、上記シリコーンゴムチューブ21の側面に繊維13をシート状に並べて仮止めする。このとき、上記繊維13を上記シリコーンゴムチューブ21の長手方向Jに沿ってまっすぐに、かつ、ムラがないように貼り付けて繊維層を形成する。
次に、図2(b)に示すように、上記繊維13の上から一液性のRVTゴム(室温乾燥タイプのシリコーンゴム)23を塗って乾燥させる。ここで、シート状にした繊維13を複数層とし、一度に上記RVTゴム23で上記繊維13を覆うようにしてもよいし、シリコーンゴムチューブ21に上記繊維13を一層ずつ貼り付け、順にRVTゴム23で上記繊維13を覆うようにしてもよい。
リング付きのアクチュエータを作製する場合には、図2(c)に示すように、上記RVTゴム23が塗布されたシリコーンゴムチューブ21に、例えば、熱収縮チューブ30Tを等間隔に配置し、上記熱収縮チューブ30Tを加熱して収縮させた後、接着剤等で固定しこれをリング30とする。
最後に、上記シリコーンゴムチューブ21から丸棒22を抜き取り、上記シリコーンゴムチューブ21を予め設定した長さに切断する。
これにより、図2(d)に示すような、シリコーンゴムチューブ21とRVTゴム(シリコーンゴム)23とから成るゴムチューブ12に繊維13が内挿されたアクチュエータ本体11を作製することができる。
【0011】
次に、本発明による流体注入型アクチュエータ10の動作について説明する。
ここで、説明を簡単にするため、図3に示すように、圧縮空気注入管17aと空気排出管17bとが取り付けられた方の蓋部材14を固定部材31に固定し、上記アクチュエータ本体11内に供給される空気圧により、上記蓋部材14と他方の蓋部材15との距離を伸縮させる例(無負荷往復運動)について説明する。なお、上記他方の蓋部材15を連結具を介して負荷に連結すれば、上記負荷を往復運動させることができる。
まず、注入用の電磁弁18aを開いて、図1に示した圧縮空気供給装置19から送られてくる圧縮空気を、圧縮空気注入管17aを介して、ゴムチューブ12内に導入する。上記ゴムチューブ12は導入された圧縮空気の圧力により全方向、すなわち、径方向と長手方向との両方に膨張しようとするが、上記アクチュエータ本体11には、上記ゴムチューブ12の長手方向に延長し、その両端部が当該ゴムチューブ12の端部にて固定された繊維13が内挿されており、この繊維13が上記ゴムチューブ12の長手方向Jへの膨張を拘束する。これにより、上記ゴムチューブ12の膨張は径方向のみに限定されるので、それに伴ってアクチュエータ本体11には長手方向Jへの収縮力が発生する。したがって、アクチュエータ本体11は、図3の下側の図に示すように、径方向に膨張しながら長手方向Jに収縮する。
本例のアクチュエータ本体11は、図4の左側の図に示すように、上記繊維13として径が5~15μm程度の単一無撚繊維を用い、これらの繊維13をゴムチューブ12の長手方向にも径方向にも高い密度で内挿した構成となっているので、上記アクチュエータ本体11の全面にわたって上記ゴムチューブ12を長手方向へ拘束することができる。したがって、上記ゴムチューブ12は、図4の右側の図に示すように、径方向へ等しく十分に膨張することができるので、長手方向へ収縮力を効率よく伝達することができる。これにより、収縮量xの大きな流体注入型アクチュエータ10を得ることができる。
なお、アクチュエータ本体11を元の長さに戻すには、注入用の電磁弁18aを閉じて圧縮空気の導入を中止すると同時に、排気用の電磁弁18bを開いて上記ゴムチューブ12中の圧縮空気を外気中に放出する。上記電磁弁18a,18bの開閉は制御装置20により行う(図1参照)。
【0012】
本例のアクチュエータ本体11は、繊維13と繊維13との隙間が極めて狭いので、ゴムチューブ12が膨張した場合でも、上記ゴムチューブ12に対する圧力集中が抑制されるので、高圧時での操作が容易となるだけでなく、ゴムチューブ12の破裂や繊維13とゴムチューブ12との剥離が起きにくいので、耐久性が向上する。
更に、本発明の流体注入型アクチュエータ10は、複数の環状繊維群13A~13Cを有しているので、ゴムチューブ12が膨張して繊維13と繊維13との隙間が広がった場合でも、その間には、他の繊維層の繊維13が存在する。そのため、ゴムチューブ12が膨張した場合でも、密度については膨張前よりも低下するものの、周方向には繊維13が均一にかつ十分な密度で配置されている状態を保つことができる。したがって、上記アクチュエータ本体11の全面にわたって上記ゴムチューブ12を長手方向へ拘束することができるので、長手方向へ収縮力の伝達を効率よく行うことができる。
【0013】
このように本最良の形態によれば、流体注入型アクチュエータ10の膨張収縮部であるアクチュエータ本体11を、円筒状のゴムチューブ12と、このゴムチューブ12に内挿された、上記ゴムチューブ12の長手方向に延長する、グラスロービング繊維などの径が5~15μm程度の複数の繊維13を上記ゴムチューブ12の周方向に沿って環状に配列して成る複数の環状繊維群13A~13Cとから構成し、ゴムチューブ12が膨張した場合でも、上記アクチュエータ本体11の全面にわたって上記ゴムチューブ12を長手方向へ拘束することができるようにしたので、長手方向へ収縮力の伝達を効率よく行うことができる。したがって、アクチュエータの小型化、細型化が可能となる。
また、流体注入型アクチュエータ10は、長手方向への収縮力の伝達効率が高く、小さな圧力変化でも大きな引張力を得ることができるので、コンプレッサやポンプ等のアクチュエータの稼動設備についても小型化を図ることができる。
【0014】
なお、上記最良の形態では、ゴムチューブ12内に圧縮空気を導入したり、ゴムチューブ12内から圧縮空気を排出したりして、アクチュエータ10を稼動させたが、水や油などの他の流体を用いてもよい。
また、上記例では、繊維13として、径が5~15μm程度のグラスロービング繊維やカーボンロービング繊維等の撚りをかけていない極細の単一無撚繊維を用いたが、これらの繊維を複数本撚って作製した繊維を用いてもよい。但し、この場合でも、繊維の径を0.1mm以下とすることが好ましく、50μm以下とすれば、更に好ましい。
また、上記例では、ゴムチューブ12の材料をシリコーンゴムとしたが、他の合成ゴムあるいは天然ラテックスゴムなどの天然ゴムを用いてもよい。
また、流体注入型アクチュエータとしては、図5に示すような、ゴムチューブ12の外周側にリング30を等間隔で配置したリング付きアクチュエータ10Rを用いてもよい。上記リング30は上記ゴムチューブ12の径方向への膨張を制限するもので、リング30の位置が、アクチュエータ本体11の膨張・伸縮の節となる。なお、上記リング30の形成方法については、図2(c)に示した通りである。
上記リング30は、図5に示すように、アクチュエータ本体11全体の膨張を抑制するために設けられたもので、節の数(リング数)を多くするとそれに応じてアクチュエータ本体11全体の膨張量dが小さくなる。すなわち、リング30を設けることにより膨張量dを小さくできる。したがって、リングの数を調節すれば、膨張時におけるアクチュエータ本体11の径と長さの比を調整することができるので、膨張時の筒状体の形状を仕様に合わせて決定することができる。例えば、医療器具として用いられている能動内視鏡などのように、膨張時の最大径に制限があり、かつ、径に対してその長さが長いアクチュエータを作製する場合には、リングの数を増やしてやれば同じ伸び量に対する膨張時の最大径を抑制することができる。なお、この場合には、ゴムチューブ12に導入される圧縮空気の圧力をリングがない場合よりも高める必要があるが、本例では、ゴムチューブ12をシリコーンゴムで構成しているので、圧力を高めた状態で使用しても劣化等の問題が生じることはない。
また、図6に示すように、流体注入型アクチュエータ10は単独で用いるだけでなく、連結部材33を用いて複数個連結して用いることも可能である。この場合には、蓋部材14と蓋部材15との間に連結部材33が位置するので、圧縮空気注入管17aや空気排出管17bについては、同図に示すように、ゴムチューブ12の長手方向端部に設けることが好ましい。
[実験例]
【0015】
内径が0.7mm、外径が0.9mm、全長が200mmのチューブ状のシリコーンゴムに径が9μmの多数のグラスロービング繊維から成る環状繊維群を内包させた流体注入型アクチュエータを作製し、この流体注入型アクチュエータが例えば以下に示す工業用内視鏡に求められている一般的な使用条件を満たしているかどうか試験した。なお、リング数は40で節の間隔は5mmとした。
内視鏡の使用条件
最大直径 ;2.3mm以下
全長 ;200~400mm
最大圧力 ;0.7MPa以下
500gの重りを吊るした状態で収縮させたとき、重りを4mm以上持ち上げることが可能なこと
図7(a)は無負荷状態での導入圧力(MPa)と膨張直径(mm)の関係を示すグラフ、図7(b)は導入圧力(MPa)と収縮量(mm)との関係を示すグラフで、圧力の増加に伴って膨張直径も収縮量も増加する。これらのグラフに示すように、流体注入型アクチュエータは、無負荷時においては圧力が0.13MPaにおいて膨張半径が2.3mm以下であり、収縮量が4mmであった。
また、図8(a),(b)はそれぞれ流体注入型アクチュエータに500gの重りを吊るした状態(負荷状態)での導入圧力(MPa)と膨張直径(mm)との関係、及び、導入圧力(MPa)と収縮量(mm)との関係を示すグラフで、この場合にも、圧力の増加に伴って膨張直径も収縮量も増加する。
負荷時には、流体注入型アクチュエータは長手方向の引張力を受けるため、膨張は抑えられ収縮量も減少するため、同じ収縮量を得るためには、高い圧力を加える必要がある。
しかしながら、本発明による流体注入型アクチュエータは、図8(a),(b)に示すように、条件下の圧力(0.7MPa以下)よりも低圧の0.17MPaにおいて目標値である収縮量4mmを得ることができ、かつ、そのときの膨張半径も2.3mm以下であることがわかる。
これにより、本発明による流体注入型アクチュエータは、一般的な工業用内視鏡に求められている使用条件を満たしていることが確認された。
なお、一般的な工業用内視鏡に求められている圧力は0.7MPa以下であるので、本実験例の流体注入型アクチュエータは圧力条件に対してかなりの余裕がある。したがって、更に径の小さいシリコーンチューブを用いて細型人工筋肉を作製することや、細型人工筋肉にシリコーンチューブを被せて耐圧性を上げ、破裂の危険性を抑えることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、流体注入型アクチュエータにおいて、半径方向の膨張を長手方向に効率よく伝達することができるので、アクチュエータの小型化、細型化が可能となる。したがって、本アクチュエータは、ロボットハンドなどのメカトロニクス製品だけでなく、能動カテーテルや能動内視鏡などの医療器具や人工筋肉などにも適用することが可能となる。
また、小さな圧力変化でも大きな引張力を得ることができるので、コンプレッサやポンプ等のアクチュエータの稼動設備についても小型化が図れる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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