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明細書 :歯列マウスピース

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4171829号 (P4171829)
公開番号 特開2003-275311 (P2003-275311A)
登録日 平成20年8月22日(2008.8.22)
発行日 平成20年10月29日(2008.10.29)
公開日 平成15年9月30日(2003.9.30)
発明の名称または考案の名称 歯列マウスピース
国際特許分類 A61M  16/06        (2006.01)
A61F   5/56        (2006.01)
A61M  16/00        (2006.01)
FI A61M 16/06 D
A61F 5/56
A61M 16/00 311
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2002-087525 (P2002-087525)
出願日 平成14年3月27日(2002.3.27)
審査請求日 平成17年3月24日(2005.3.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】川島 成人
個別代理人の代理人 【識別番号】100075258、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 研二
【識別番号】100096976、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 純
審査官 【審査官】宮崎 敏長
参考文献・文献 カナダ国特許出願公開第01336375(CA,A1)
英国特許出願公開第02264868(GB,A)
米国特許第03411501(US,A)
特開平07-308335(JP,A)
米国特許第05915385(US,A)
特開平07-241341(JP,A)
特表平06-501637(JP,A)
米国特許第04304227(US,A)
特開平02-001261(JP,A)
米国特許第02643652(US,A)
米国特許第04715368(US,A)
米国特許第05592951(US,A)
調査した分野 A61M 16/06
A61F 5/56
A61M 16/00
A61M 16/04
特許請求の範囲 【請求項1】
上縁に上顎歯列に係合する上側凹溝部と、下縁に下顎歯列に係合する下側凹溝部とを有し、略馬蹄形の歯列マウスピースであって、
前記略馬蹄形の内側壁において左側最後臼歯に対応する位置から前歯の位置を経由し右側最後臼歯に対応する位置まで設けられ、舌の側面を保持する舌保持用くぼみを備え、
前記下側凹溝部を形成する鞍形壁は、その内側に前記略馬蹄形の内側壁において延伸部を有し、
前記鞍形壁における内側部分の延伸部は、前記下顎歯列の内側における歯肉部分の可動部分と不動部分との境界である舌根側の齦境移行部と呼ばれる部分を下方向に押さえ、これによってオトガイ舌筋を緊張させることを特徴とする歯列マウスピース。
【請求項2】
請求項1に記載の歯列マウスピースにおいて、
さらに、
前記上顎歯列の左側臼歯部分に対応する前記上側凹溝部を形成する前記鞍形壁の内側壁部と、前記上顎歯列の右側臼歯部分に対応する前記上側凹溝部を形成する前記鞍形壁の内側壁部とを接続する帯状口蓋受部を備えることを特徴とする歯列マウスピース。
【請求項3】
請求項1または2に記載の歯列マウスピースにおいて、
さらに、
前面の中央部に少なくとも1つ設けられる貫通穴である口呼吸穴を備えることを特徴とする歯列マウスピース。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1に記載の歯列マウスピースにおいて、
前記上顎歯列と前記下顎歯列の水平方向の位置関係が、通常より前記下顎歯列を前記上顎歯列に対し前方に移動させる位置関係であることを特徴とする歯列マウスピース。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1に記載の歯列マウスピースは、
軟化点が40℃以上100℃以下のレジンからなることを特徴とする歯列マウスピース。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯列に係合する歯列マウスピースに係り、特に気道を確保する目的の歯列マウスピースに関する。
【0002】
【従来の技術】
睡眠時無呼吸症候群やいびき症状は、気道が十分確保されないことから生ずるため、睡眠時に気道を確保する目的で、上顎歯列および下顎歯列に係合させて口腔内に保持する歯列マウスピースが用いられる。図8に、歯列マウスピースの従来例の一つを示す。図8は、歯列マウスピース10を正面やや上方から見た斜視図で、全体として略馬蹄形をなし、上面に上顎歯列に係合する凹溝を有し、図8の斜視方向では示すことができないが、その下面に下顎歯列に係合する凹溝を有している。正面には呼吸口14が設けられることもある。このような歯列マウスピースに以下に述べる気道を確保する構造を設け、その歯列マウスピースの凹溝に歯列を係合させて噛み合わせて口腔内に保持することで、睡眠中における気道を確保することができる。
【0003】
気道を確保する目的の歯列マウスピースの構造は、例えば特開平7-241341号公報において、下顎歯列と上顎歯列の噛み合わせ位置を通常の噛み合わせ位置よりも顔前面側にずらし、上気道の周囲の筋肉、皮膚が下顎に押されて上気道が狭められることを軽減する構造が開示されている。その他軟口蓋を上方に移動させる構造、舌の前方部から中央部を上方に移動させる構造等も知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの構造の歯列マウスピースは、下顎、軟口蓋、舌等の気道の確保に影響を与える部位の位置矯正を行って、気道の拡大を図るものである。ここで、下顎や軟口蓋のようにある程度一定の形態を備えるものについては、歯列マウスピースの構造を工夫し、下顎や軟口蓋の位置を通常の位置から気道を確保できる位置に移してそのまま維持することはある程度は可能である。しかし、気道の確保に影響を与える大きな要素の一つである舌は、周囲の形態に合わせてその形態をかえる柔軟性のある形態特性を有し、せっかく下顎や軟口蓋の位置を適切に維持しても、睡眠中の無意識下において舌が自由状態で弛緩し、口腔内の下方や奥の方向に移動して気道を結果として狭めてしまうことが起こる。また、従来例のうち、舌の前方部から中央部を上方に移動させる構造の歯列マウスピースにおいても、その移動状態のまま舌を保持する構造を有しないため、睡眠中の無意識下において舌が自由状態で弛緩し、移動させた位置から外れ、口腔内の下方や奥の方向の位置に戻ってしまい、気道を結果として狭めてしまう。
【0005】
また、従来構造の歯列マウスピースは、下顎、上顎、軟口蓋等の口腔内構造、および歯列構造等、患者の個人個人の形状的特徴に合わせて複雑な調整を行っていたため、かなりの時間と労力を必要としていた。
【0006】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解決し、舌を安定して保持し、気道を有効に確保する歯列マウスピースを提供することである。また、他の目的は、軽減された時間と労力で、患者の口腔内形状の特徴に合わせて製作できる歯列マウスピースを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る歯列マウスピースは、上縁に上顎歯列に係合する上側凹溝部と、下縁に下顎歯列に係合する下側凹溝部とを有し、略馬蹄形の歯列マウスピースであって、前記略馬蹄形の内側壁において左側最後臼歯に対応する位置から前歯の位置を経由し右側最後臼歯に対応する位置まで設けられ、舌の側面を保持する舌保持用くぼみを備える
【0008】
この舌保持用くぼみを備えた構造により、周囲の形態に合わせてその形態をかえる柔軟性のある形態特性を有する舌の性質を利用し、舌を舌保持用くぼみに容易にかつ確実に保持できる。したがって、睡眠中の無意識下においても舌が口腔内の下方や奥の方向に移動することが少なく、気道を狭めることが少ないので、気道を有効に確保できる。
【0009】
舌保持用くぼみは、略馬蹄形の内側壁において歯列の並び方向に沿った全長に渡り設けることができる。すなわち左側最後臼歯に対応する位置から前歯の位置を経由し右側最後臼歯に対応する位置まで連続した溝状くぼみとして設けることができる。この構造により、舌の側面のほぼ全領域を舌保持用くぼみに容易にかつ確実に保持でき気道を有効に確保できる。
【0010】
舌保持用くぼみの溝幅は、6mmから12mmの範囲、好ましくは8mmから10mmの範囲とすることが良い。また、舌保持用くぼみの高さ方向の位置は、歯列マウスピースの上側凹溝の底部と、下側凹溝の底部とのほぼ中間の高さ方向の位置に設けることができる。この構造により、舌の前方部から中央部を上方に移動させた状態で舌を安定して保持できるので、気道をより拡大し、その状態を確保できる。
【0011】
舌保持用くぼみの深さは、略馬蹄形の内側壁の表面から3mmから8mmの範囲の深さを用いることができ、好ましくは約5mmの深さがよい。舌保持用くぼみの深さについては、実験を行ったところ、平均して約5mmの溝深さ、すなわち舌の左右両側で考えると平均して約10mmの保持くぼみが有効であることが確認できた。したがってこの構造により、舌の位置を安定して保持でき、気道を有効に確保できる。
【0012】
上側凹溝部と下側凹溝部との位置関係は、通常より下顎歯列を上顎歯列に対し前方(後述する図1におけるDからCに向かう方向)に移動させることが好ましい。また、さらに、前歯においてちょうど対向して噛み合う位置関係とすることが好ましい。
【0013】
望ましくは、前記下側凹溝部を形成する鞍形壁は、その内側に前記略馬蹄形の内側壁において延伸部を有し、前記鞍形壁における内側部分の延伸部は、前記下顎歯列における内側の歯肉部分の可動部分と不動部分との境界まで延伸していることが好ましい。また、前記鞍形壁は、前記下顎歯列における内側の歯肉部分の可動部分と不動部分との境界である舌根側の齦境移行部と呼ばれる部分を、鞍形壁の下方部分で、下方方向に押さえ、オトガイ舌筋を緊張させることが好ましい。これによって、舌根が浮き上がることを防止し、気道を有効に確保できる。鞍形壁の外側部分の延伸により、鞍形壁の外側表面積が拡大し、頬筋や口輪筋による歯列への圧迫を和らげ、顎骨の歯列方向への傾斜を防止する。このことで口腔内体積をより大きく確保でき、気道が有効に確保される。
【0014】
鞍形壁の内側壁の延伸は、略馬蹄形の内側壁において歯列の並び方向に沿った全長に渡り設けることができる。すなわち左側最後臼歯に対応する位置から前歯の位置を経由し右側最後臼歯に対応する位置まで設けることができる。前歯付近の位置では、舌小帯に相当する部分には延伸しないことが望ましい。
【0015】
望ましくは、歯列マウスピースは、さらに、前記上顎歯列の左側臼歯部分に対応する前記上側凹溝部を形成する鞍形壁の内側壁部と、前記上顎歯列の右側臼歯部分に対応する前記上側凹溝部を形成する鞍形壁の内側壁部とを接続する帯状口蓋受部と、を備える。この構造により、歯列マウスピースを安定して保持できる。
望ましくは、さらに、前面の中央部に少なくとも1つ設けられる貫通穴である口呼吸穴を備える。
また、歯列マウスピースにおいて、前記上顎歯列と前記下顎歯列の水平方向の位置関係が、通常より前記下顎歯列を前記上顎歯列に対し前方に移動させる位置関係であることが好ましい。
【0016】
望ましくは、歯列マウスピースは、軟化点が40℃以上100℃以下のレジンからなる。かかるレジンとしては、歯科用の熱可塑性樹脂を用いることができる。この材質を用いることで、予め数種類の大きさの歯列マウスピースを準備し、その中で患者に適当な大きさの歯列マウスピースを選択し、軟化点以上に暖めて軟化させて口腔内で噛み合わせることで患者の口腔内形状に適合させることが出る。したがって軽減された時間と労力で、患者の特徴に合わせた歯列マウスピースを得ることができる。
【0017】
歯列マウスピースの製造方法は、数種類の大きさの標準形歯列マウスピースを軟化点が40℃以上100℃以下のレジンを用いて成形技術により製造する成形工程と、患者の口腔内大きさに近い大きさの標準形歯列マウスピースを選択する選択工程と、選択された標準形歯列マウスピースを患者の口腔内形状にあわせる適合工程とを備える。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に図面を用い、本発明にかかる実施の形態につき詳細に説明する。図1から図4は、歯列マウスピースの構造を説明するために、同一の歯列マウスピースにつき、上側凹溝の方向から見た上面図を図1に、下側凹溝の方向から見た下面図を図2に、前歯方向から見た正面図を図3に、臼歯方向から見た背面図を図4に示したものである。また、図5は、左側第1臼歯と右側第1臼歯を結ぶ線A-Bにおける断面図で、図6は、線A-Bに直交し前歯を通る線C-Dにおける断面図である。左右前後関係を明確にするため、全ての図において上記A,B,C,Dに対応するおよその位置を示した。
【0019】
図1において、歯列マウスピース20は、上縁に上顎歯列に係合する上側凹溝部22を備える。同様に図2において、歯列マウスピース20は、下縁に下顎歯列に係合する下側凹溝部24を備える。上側凹溝部22と下側凹溝部24との位置関係は、通常より下顎歯列を上顎歯列に対し前方(DからCに向かう方向)に移動させ、前歯においてちょうど対向して噛み合う位置関係とすることが好ましい。
【0020】
図1において、上顎歯列の右側臼歯部分に対応する部分と左側臼歯部分に対応する部分を接続して帯状口蓋受26が設けられている。帯状口蓋受26の根元の幅は3本の臼歯の部分における幅とほぼ同じにすることができる。図2において、下側凹溝部24を形成する鞍形壁の内側は延伸部28を有する。延伸部28は、略馬蹄形の内側壁において歯列の並び方向に沿った全長に渡り設けられる。すなわち左側最後臼歯に対応する位置から前歯の位置を経由し右側最後臼歯に対応する位置まで設けられる。前歯付近の位置では、舌に対する違和感を生じさせないために、舌小帯に相当する部分30には延伸部を設けないことが望ましい。
【0021】
上記帯状口蓋受26および延伸部28の様子は、線A-Bにおける断面図である図5においてさらに明らかにされる。すなわち、歯列マウスピース20において、上側凹溝部22と下側凹溝部24を含む断面は、上側凹溝部22を形成する鞍形壁と下側凹溝部24を形成する鞍形壁とをふくむ略H字形状の断面となる。
【0022】
そして、帯状口蓋受26は、上顎歯列の左側臼歯部分32に対応する上側凹溝部22を形成する鞍形壁の内側壁部と、右側臼歯部分34に対応する上側凹溝部22を形成する鞍形壁の内側壁部とを接続して設けられる。帯状口蓋受26の上面は、口腔内の軟口蓋に沿った形状に形成される。
【0023】
また、下側凹溝部24の鞍形壁における内側部分の延伸部28は、下顎歯列の歯肉部分36の可動部分と不動部分との境界、すなわちいわゆる齦境移行部38まで延伸して設けられる。この延伸部28により齦境移行部38を下方向に押さえることができ、舌根が浮き上がることを防止し、オトガイ舌筋を緊張させることができる。鞍形壁の外側部分の延伸部40も同様に齦境移行部42まで延伸して設けられる。この延伸部40により、歯列マウスピース20の外側表面積を大きくでき、頬筋や口輪筋、顎骨に対して口腔内側への圧迫、倒れを防ぎ、口腔内体積をより大きく確保できる。
【0024】
図5において、略H字形状の断面において、歯列マウスピース20の内側壁に、上側凹溝部22の底部と下側凹溝部24の底部とのほぼ中間の高さ方向の位置で舌の側面を保持する舌保持用くぼみ44が設けられる。
【0025】
舌保持用くぼみ44は、略馬蹄形の内側壁において歯列の並び方向に沿った全長に渡り設けることができる。すなわち左側最後臼歯に対応する位置から前歯の位置を経由し右側最後臼歯に対応する位置まで連続した溝状くぼみとして設けることができる。溝状くぼみの入り口部の幅は、6mmから12mmの範囲、好ましくは8mmから10mmの範囲とすることが良い。舌保持用くぼみ44の、略馬蹄形の内側壁から溝の底までの深さについて実験を行ったところ、平均して約5mmの溝深さ、すなわち舌の左右両側で考えると平均して約10mmの保持くぼみを設けることが有効であることが確認できた。したがって、舌保持用くぼみの深さは、略馬蹄形の内側壁の表面から3mmから8mmの範囲の深さを用いることができ、好ましくは約5mmの深さがよい。
【0026】
この舌保持用くぼみ44を備えた構造により、周囲の形態に合わせてその形態をかえる柔軟性のある形態特性を有する舌の性質を利用し、舌の前方部から中央部を上方に移動させた状態で、舌の側面のほぼ全領域を舌保持用くぼみに容易にかつ確実に保持できる。
【0027】
図6において、上側凹溝部22と下側凹溝部24の前後方向(C-D方向)の位置関係が示される。すなわち、上側凹溝部22と下側凹溝部24との位置関係は、通常より下顎歯列を上顎歯列に対し前方(DからCに向かう方向)に移動させ、前歯46,48においてちょうど対向して噛み合う位置関係とすることが好ましい。
【0028】
また、歯列マウスピース20の前面の中央部に口呼吸用穴50を設けることができる。口呼吸用穴50は、直径5mm程度の貫通穴を複数設け、穴をふさぐ手段、例えばパテ等で埋め、あるいは穴にテープを貼る等により、適当な穴の数を選択し、口呼吸と鼻呼吸との使い分けを行うことができる。穴を全てふさぐこともできる。
【0029】
つぎに図7を用いて、歯列マウスピース20を口腔内に装着した場合の、気道の確保の様子を説明する。図7においては、人の頭部60を顔の真中で切断したときの断面を斜線で示し、歯列マウスピース20の断面は破線で示した。気道62の開放、閉塞の程度は、口腔部分と気道の相対的位置関係と口腔内体積の大きさに影響される。すなわち、上顎歯列64と下顎歯列66の水平方向の位置関係、下顎に対する軟口蓋68の上下方向の位置関係、口腔内の舌70の位置関係、およびこの図7では示されないが頬筋や口輪筋、顎骨等による口腔幅方向の位置関係により、気道62が狭くも広くもなる。
【0030】
歯列マウスピース20は、上顎歯列64と下顎歯列66の水平方向の位置関係を、通常より下顎歯列66を上顎歯列64に対し前方に移動させ、前歯においてちょうど対向した位置関係で噛み合わせる。したがって、口腔部分と気道62の相対的位置関係が気道62の開放方向となり、その状態で維持されるので、気道62が有効に確保できる。
【0031】
歯列マウスピース20は、上顎歯列64および下顎歯列66に係合し、帯状口蓋受26が軟口蓋68に接してそれを押し上げる。したがって、口腔内の上下方向の体積が大きくなり、気道62が広くなる方向となる。この状態で維持されるので、気道62が有効に確保できる。また、睡眠中等においても、歯列マウスピース20を口腔内で安定して保持できる。
【0032】
舌保持用くぼみ44は、舌70の前方部から中央部を上方に移動させた状態で、舌70の側面のほぼ全領域において舌70を確実に保持することができる。したがって、口腔部分と気道の相対的位置関係が気道の開放方向となり、その状態で維持され、睡眠中の無意識下においても舌が口腔内の下方や奥の方向に移動することがなく、気道を狭めることがないので、気道を有効に確保できる。
【0033】
下側凹溝部の鞍形壁における内側部分、すなわち口腔内部に面する部分の28は、下顎歯列66の歯肉部分の可動部分と不動部分の境界、いわゆる齦境移行部を下方向に押さえることができ、舌根が浮き上がることを防止し、口腔部分と気道62の相対的位置関係がずれてゆくことを防止し、気道62を有効に確保する。また、オトガイ舌筋の緊張と気道閉塞に関係が有ることが知られているが、延伸部28により齦境移行部を下方向に押さえることでオトガイ舌筋を緊張させることができ、気道閉塞を防止できる。
【0034】
図7では示されていないが、下側凹溝部の鞍形壁における外側部分、すなわち頬側に面する部分の延伸部も同様に齦境移行部まで延伸して設けられる。この延伸部により、歯列マウスピース20の外側表面積が拡大し、頬筋や口輪筋による歯列への圧迫を和らげ、顎骨の歯列方向への傾斜を防止する。このことで口腔内体積をより大きく確保でき、気道62が有効に確保される。このようにして、歯列マウスピース20を口腔内に装着することで、気道62が有効に確保される。
【0035】
つぎに、歯列マウスピースの製造方法につき説明する。歯列マウスピースの製造方法は、数種類の大きさの標準形歯列マウスピースを軟化点が40℃以上100℃以下のレジンを用いて成形技術により製造する成形工程と、患者の口腔内大きさに近い大きさの標準形歯列マウスピースを選択する選択工程と、選択された標準形歯列マウスピースを患者の口腔内形状にあわせる適合工程とを備える。
【0036】
一般的に、歯列に関しては、その略馬蹄形の湾曲形状についてはほぼその標準形が知られており、数種類の大きさを揃えておくことでかなりの割合の患者に対応できる。例えば標準の湾曲形状に従い、LL,L,M,S,SS等のサイズを揃えておくことでかなりの割合の患者に対応できることができる。したがって、成形工程では、予め数種類の大きさの歯列マウスピースを製造するためのモールド型を設計製作し、その型を用い、上記材質のレジンにて、公知の成形技術により、数種類の大きさの標準形歯列マウスピースを成形する。軟化点が40℃以上100℃以下のレジンとしては、歯科用の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0037】
つぎに、選択工程では、成形された標準形歯列マウスピースにおける数種類の大きさの中から、患者の歯列のサイズに合わせ適切なサイズの歯列マウスピースを選択する。適合工程では、まず選択した歯列マウスピースを軟化点以上の温度の湯に入れて軟化させ、軟らかいうちに患者の歯列に係合させて口腔内にて噛み合わせる。このことで、軟化状態の歯列マウスピースを、患者の口腔内形状に適合した形状に容易に変えることができる。その状態で十分冷却するまで待ち、体温まで冷却したところで取り外し、口腔内で当たって違和感のある箇所等を例えばナイフ等で削り取り、形状を整える。その後必要に応じ、再度軟化点以上の温度の湯に入れて軟化させ、軟らかいうちに患者の歯列に係合させて口腔内にて噛み合わせて微調整を行い、患者の口腔内形状に適合した歯列マウスピースが出来上がる。このようにして軽減された時間と労力で、患者の口腔内形状の特徴に合わせた歯列マウスピースを得ることができる。
【0038】
【発明の効果】
本発明にかかる歯列マウスピースは、舌を安定して保持し、気道を有効に確保する。また、本発明にかかる歯列マウスピースは、軽減された時間と労力で、患者の口腔内形状の特徴に合わせて製作できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る実施の形態の歯列マウスピースにおいて、上側凹溝の方向から見た上面図である。
【図2】 本発明に係る実施の形態の歯列マウスピースにおいて、下側凹溝の方向から見た下面図である。
【図3】 本発明に係る実施の形態の歯列マウスピースにおいて、前歯方向から見た正面図である。
【図4】 本発明に係る実施の形態の歯列マウスピースにおいて、臼歯方向から見た背面図である。
【図5】 本発明に係る実施の形態の歯列マウスピースにおいて、左側第1臼歯と右側第1臼歯を結ぶ線A-Bにおける断面図である。
【図6】 本発明に係る実施の形態の歯列マウスピースにおいて、左側第1臼歯と右側第1臼歯を結ぶ線A-Bに直交し前歯を通る線C-Dにおける断面図である。
【図7】 歯列マウスピースを口腔内に装着した場合の、気道の確保の様子を説明する図である。
【図8】 従来例の歯列マウスピースの斜視図である。
【符号の説明】
10,20 歯列マウスピース、14 呼吸口、22 上側凹溝部、24 下側凹溝部、26 帯状口蓋受、30 舌小帯に相当する部分、32 左側臼歯部分、34 右側臼歯部分、36 歯肉部分、38,42 齦境移行部、28,40 延伸部、44 舌保持用くぼみ、46,48 前歯、50 口呼吸用穴、60 頭部、62 気道、64 上顎歯列、66 下顎歯列、68 軟口蓋、70
舌。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7