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明細書 :抗肥満剤及び糖尿病改善剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5610179号 (P5610179)
公開番号 特開2010-202602 (P2010-202602A)
登録日 平成26年9月12日(2014.9.12)
発行日 平成26年10月22日(2014.10.22)
公開日 平成22年9月16日(2010.9.16)
発明の名称または考案の名称 抗肥満剤及び糖尿病改善剤
国際特許分類 A61K  31/7048      (2006.01)
A61P   3/04        (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
A61K  31/352       (2006.01)
A61K  36/48        (2006.01)
A61K  36/00        (2006.01)
C07H  17/07        (2006.01)
C07D 311/30        (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
FI A61K 31/7048
A61P 3/04
A61P 3/10
A61K 31/352
A61K 35/78 J
A61K 35/78 X
C07H 17/07
C07D 311/30
A23L 1/30 B
請求項の数または発明の数 2
全頁数 16
出願番号 特願2009-051357 (P2009-051357)
出願日 平成21年3月4日(2009.3.4)
審査請求日 平成24年3月2日(2012.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】北中 進
【氏名】矢作 忠弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100093861、【弁理士】、【氏名又は名称】大賀 眞司
【識別番号】100129218、【弁理士】、【氏名又は名称】百本 宏之
審査官 【審査官】田村 聖子
参考文献・文献 特開2000-344673(JP,A)
国際公開第2007/111401(WO,A1)
Biosci. Biotechnol. Biochem.,2005年,Vol.69,No.2,P.280-286
調査した分野 A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
ネムノキの合歓花の抽出物である、3''-(E)-(3'''-Methoxycaffeoyl)quercitrin又はRhamnetinを有効成分として含有することを特徴とする抗肥満剤又は糖尿病改善剤
【請求項2】
前記抽出物が、前記花部の酢酸エチル又は水の画分に属する、請求項1記載の抗肥満剤又は糖尿病改善剤
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は抗肥満剤及び糖尿病改善剤に係わり、詳しくは、マメ科植物、特に、ネムノキの花部(合歓花)の抽出物を含有する抗肥満剤及び糖尿病改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高カロリー食の過剰摂取により、肥満者が増加してきている。肥満は、生活習慣病や糖尿病などを惹き起す原因として注目されており、特に、内臓肥満を中心として、糖尿病、高血圧、高脂血症などが集積した病態であるメタボリックシンドロームが着目されている。
【0003】
日本の厚生労働省の「2007年国民健康・栄養調査」によると、糖尿病が強く疑われる人は約890万人。糖尿病の可能性が否定できない人は約1320万人、合わせて約2210万人が存在すると推定された。40~74歳でみると、男性の2人に1人、女性の5人に1人が、メタボリックシンドロームが強く疑われる者又は予備群と考えられている。
【0004】
肥満者では脂肪細胞の肥大化が認められ、肥大した脂肪細胞には、中性脂肪(トリグリセライド:TG)が蓄積され、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)に代表される炎症性アディポサイトカインの分泌の増加とアディポネクチンのような抗炎症性アディポサイトカインの産生が減少している事が認められ、インスリン抵抗性が惹起されると言われている。
【0005】
また、肥満状態では脂肪組織にマクロファージが浸潤し、それにより脂肪組織に一酸化窒素(NO)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、単球走化性タンパク質-1( MCP-1)などのサイトカイン、ケモカインが生成され慢性的な生体炎症反応が生じ、インスリン抵抗性の発症や増悪を起こすことが報告されている。
【0006】
そこで、肥満や糖尿病、高血圧を抑制するための対策としては、脂肪細胞の分化を抑え脂肪細胞の増加を抑制し、必要以上のトリグリセライドの蓄積を抑制する必要がある。さらに、マクロファージの活性化を抑制して、TNF-αなどの炎症性サイトカインの分泌を抑える必要もある。
【0007】
天然物由来のresveratrol、quercetin、vitisin A、xanthohumol、isoxanthohumol、capsaicinなどの化合物は脂肪細胞の分化と中性脂肪の蓄積を抑制することが報告されている。また、phloretin、retrofractaminde A、narigenin、hesperetin、catechin、6-gingerol、curcumin、capsaicinなどの化合物は脂肪細胞からのアディポネクチンの分泌を増加することが報告されている。一方、curcumin、resveratrolなどの化合物は脂肪細胞からのTNF-αの分泌を下降することが知られている。
【0008】
特開2002-138044号公報には、アカネ、アスナロ、アマチャ、オオバナサルスベリ、ガイヨウ、ハクカユマトウ、ハスナゲ、ヒキオコシ、ホウキギから選ばれる1種以上の植物抽出物を含有して、前駆脂肪細胞の分化誘導を阻害する薬剤、化粧料組成物又は飲食品が開示されている。
【0009】
さらに、特開2007-269757号公報には、副作用がなく優れた前駆脂肪細胞分化誘導阻害作用を有する脂肪細胞分化阻害剤が開示されている。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2002-138044号公報
【特許文献2】特開2007-269757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ネムノキ(Albizzia julibrissin Durazz.)はマメ科(Leguminosae)の植物であって、イラン・インドから東南アジア中国を経て日本の東北地方北部まで分布する。ネムノキは、山野、雑木林や川原に自生している落葉高木である。高さは10 m以上に達し、葉は2回偶数羽状複葉で互生、長さ9~23 cmである。花は淡紅色の頭状花序で開花期は6~8月である。開花初期の花を陽乾させたものを生薬名で合歓花という。
【0012】
民間では不眠、抗鬱、鎮痛、鎮静、利尿に煎じて服用する。また、中国最古の薬物書である神農本草経では合歓の名で中品として収載されている。
合歓花の成分として、QuercetinやQuercitrinなどのFlavonoidを含有しているものの、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化作用を持つことは知られていない。
本発明者は、ネムノキに着目して、抗肥満作用、及び糖尿病改選作用を持つ、新規な成分を得ることを、本発明の目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、ネムノキの花部、特に、合歓花の抽出物を含有する抗肥満剤及び糖尿病改善剤であることを特徴とするものである。
【0014】
ネムノキの花部の抽出物、その画分および単離された化合物は、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化を抑制すると共に、中性脂肪(トリグリセライド:TG)の蓄積を抑え、肥満を改善させる。また、肥満を解消することにより、インスリン抵抗性を有する糖尿病を改善させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ネムノキの花部の天然成分からなる新規な抗肥満剤及び糖尿病改善剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】合歓花の抽出物に属する化合物(複数)の構造式を示した一覧図である。
【図2】合歓花の抽出物の各画分の、3T3-L1前駆脂肪細胞の分化および中性脂肪蓄積を抑制作用を示す表である。
【図3】化合物1-4の1H-NNRスペクトルデータを示す表である。
【図4】化合物1-4の13C-NNRスペクトルデータを示す表である。
【図5】化合物1-4の性状を示した図である。
【図6】化合物2の部分構造を示す構造式である。。
【図7】合歓花の抽出部より単離された各化合物についてのTG蓄積抑制試験とGPDH活性試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者は、合歓花を抽出し、成分の単離と構造決定を行い、10種類のFlavonol及びその配糖体 (化合物1-10)、5種のFlavone (化合物11-15)、1種のFlavanonol (化合物16)、1種のCalcone (化合物17)、2種のterpenoid (化合物18-19)、3,3'-Dithiodipropanoic acid (化合物20)、indole誘導体 (化合物21)、Alloxazine誘導体 (化合物22) 及びphenylpropanoid (化合物23)を得た。そのうち化合物1-4は新規化合部であり、化合物20は天然から初めて単離された化合物である。図1に化合物1~23の構造式を示す。

【0018】
化合物1は、3''-(E)-p-Coumaroylquercitrinであり、
化合物2は3''-(E)-(3'''-Methoxycaffeoyl)quercitrinであり、
化合物3は、2''-(E)-Cinnamoylquercitrinであり、
化合物4は、3''-(E)-Cinnamoylquercitrinであり、
化合物5はQuercetinであり、
化合物6は、Isorhamnetinであり、
化合物7はRhamnetinであり、
化合物8はQuercitrinであり、
化合物9はKaempferolであり、
化合物10はAfzeleinであり、
化合物11はChrysoeriolであり、
化合物12はApigeninであり、
化合物13はTricinであり、
化合物14はLuteolinであり、
化合物15はAmentoflavoneであり、
化合物16はTaxifolinであり、
化合物17はIsoliquiritigeninであり、
化合物18は、α-Spinasterol-3-O-β-D-glucopyranosideであり、
化合物19は、(6S)-Menthiafolic acid であり、
化合物20は3,3'-Dithiodipropanoic acidであり、
化合物21はIndole-3-carboxylic acidであり、
化合物22は7,8-Dimethylalloxazineであり、そして、
化合物23は(E)-p-Coumaric acidである。

【0019】
さらに、これらの化合物について、3T3-L1前駆脂肪細胞の分化および中性脂肪蓄積を抑制作用について検討した。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
ネムノキ (Albizzia julibrissin Durazz.) の花部15 kgを80 %エタノールで抽出し、抽出物を濃縮、乾固しエキス (3.5 kg) を得た。このエキスを水に懸濁し、n-ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル、n-ブタノールで順次分配抽出した。それぞれの画分についてTG産生抑制試験を行い、サンプル濃度30μg/mlにおいて、ヘキサン溶出画分 (55.5 %)、クロロホルム溶出画分 (58.6 %)、酢酸エチル溶出画分 (70.9 %)、n-ブタノール画分 (82.1 %, Cytotoxicity)、水画分 (91.3 %)のTG蓄積抑制が認められた。さらに、それぞれの画分について、GPDH活性試験を行った。これらの試験結果を図2に示す。TG蓄積抑制、GPDH活性の試験の方法については、後述する。
【実施例】
【0022】
1 )酢酸エチル溶出画分の分離
酢酸エチル溶出画分 (165.5 g) をSilica gelカラム (12.5 φ×21 cm) に付し、CHCl3:MeOH = 100:0~0:100で溶出し、AJE-A~Bに分画した。この際、析出してきた沈殿物をろ取し、再結晶することにより、化合物18 (423.8 mg) を得た (Fig.2) 。
【実施例】
【0023】
AJE-BをSilica gelカラム (4.5 φ×16 cm) に付しHexane:EtOAc = 100:0~0:100で溶出し、AJE-B1~11に分画した。AJE-B2から結晶が析出したため、これをろ取し、再結晶することにより化合物20 (230 mg) を得た (Fig.3) 。
【実施例】
【0024】
TLCによりスポットが似ていたため、AJE-B4とB5を一緒にして、ODSカラム (2.7φ×18 cm) に付し、H2O:MeOH=100:0~0:100で溶出し、AJE-B4+5a~iに分画した (Fig.3) 。このとき、B4+5eに沈殿物が析出したため、これをろ取し再結晶したところ、化合物22(10.5mg)を得た (Fig.6) 。
【実施例】
【0025】
AJE-B4+5cをSephadex LH-20カラムに付し、CHCl3:MeOH = 50:50で溶出し、B4+5c-1~6に分画した (Fig.6) 。さらにB4+5c-3をHPLC (COSMOSIL Cholester 10φ×250 mm、0.1 %TFA:MeOH=50:50) にかけ、B4+5c-3a~cを得た。さらにB4+5c-3bをHPLC (Shodex GF310 HQ 4.6φ×250 mm、CHCl3:MeOH =95:5) にかけ、化合物23 (1.8 mg、保持時間22m00s)を得た (Fig.7) 。
【実施例】
【0026】
AJE-B4+5c-5をHPLC (COSMOSIL πNAP 10φ×250 mm、0.1 %TFA:MeOH=50:50) にかけ、化合物21 (4.4 mg、保持時間16m48s) を得た (Fig.6) 。
【実施例】
【0027】
AJE-B4+5hをSephadex LH-20カラムに付し、H2O:MeOH = 40:60で溶出し、AJE-B4+5h-1~6に分画し、そのうちB4+5h-6から化合物9が得られた(Fig.4)。
【実施例】
【0028】
AJE-B4+5h-3をHPLC (COSMOSIL Cholester 10φ×250 mm、0.1 %TFA:MeOH=63:37) にかけ、化合物11 (2.6 mg、保持時間30 m00s)、12 (1.4 mg、保持時間32m12s)、13 (3.2 mg、保持時間34m06s) を得た。
【実施例】
【0029】
AJE-CをSilica gel カラム (8φ×16 cm) に付し、Hexane:EtOAc = 100:0~0:100で溶出し、C1~5を得た (Fig.8) 。
【実施例】
【0030】
AJE-C2をHPLC (COSMOSIL 5C18-MS-II 10φ×250 mm、H2O:CH3CN = 70:30) にかけ、C2aとC2bに分画した。このうちC2bは化合物5 (64 mg、保持時間13m48s) であった (Fig.8) 。また、C2aをHPLC (COSMOSIL 5C18-MS-II 10φ×250 mm、H2O:CH3CN = 82:18) で精製し、化合物16 (2.7 mg、保持時間19m12s)を得た (Fig.8) 。
【実施例】
【0031】
AJE-C3をODSカラム (2.7φ×15cm) に付せ、H2O:MeOH=100:0~0:100で溶出し、AJE-C3a~hに分画した。このうちC3dをHPLC (COSMOSIL πNAP 10φ×250 mm、0.1 %TFA:MeOH=50:50) にかけ、化合物1 (18.6 mg、保持時間13m12s) 及び2 (19.5 mg、保持時間16m10s) を得た (Fig.9) 。
【実施例】
【0032】
AJE-C3eをHPLC (COSMOSIL Cholester 10φ×250 mm、0.1 %TFA:CH3CN=60:40) にかけ、C3e-1~5に分画した。さらにC3e-4をHPLC (COSMOSIL πNAP 10φ×250 mm、0.1 %TFA:MeOH=32:68) でC3e-4a~4cに分画し、そのうち4cは化合物15 (3.3 mg、保持時間22m48s) として得られた (Fig.10)。
【実施例】
【0033】
AJE-C3e-5をHPLC (COSMOSIL πNAP 10φ×250 mm、0.1 %TFA:MeOH=40:60) にかけ、化合物3 (4.5 mg、保持時間13m50s) 及び4 (3.3 mg、保持時間17m24s) を得た (Fig.11) 。
【実施例】
【0034】
AJE-D (250 mg/162.9 g) をHPLC (COSMOSIL πNAP 10φ×250 mm、0.1 %TFA:MeOH=40:60)にかけ、化合物8 (129 mg、保持時間9m00s) 及び10 (6.6 mg、保持時間13m48s) を得た (Fig.11) 。
【実施例】
【0035】
2 )クロロホルム溶出画分の分離
AJCをSilica gelカラム (12φ×20 cm) に付し、Hexane:EtOAc = 100:0~0:100で溶出し、AJC-A~Oに分画した。そのうちAJC-GをSilica gelカラム (3.5φ×20 cm) に付し、CHCl3:MeOH = 100:0~0:100で溶出しAJC-G1~5に分画した (Fig.12) 。さらにAJC-G3をHPLC (COSMOSIL 5C18-MS-II 10φ×250 mm、H2O:MeOH = 57:43) をかけ、化合物19 (342 mg、保持時間13m00s) を得た (Fig.13) 。
【実施例】
【0036】
次に、化合物1-4の構造解析の結果について説明する。
化合物1(3''-(E)-p-Coumaroylquercitrin)
化合物1は黄色粉末で得られ、[α]25D -146°を示し、Negative FAB-MSからm/z 593 [M-H]-、HR-FAB-MSではm/z 593.1301 (calcd. 593.1294) に疑似分子イオンピークを示すことから、分子式C30H26O13が推定された。IRでは3378 cm-1に水酸基に基づく強い吸収、1654 cm-1にカルボニル基、1603 cm-1に共役二重結合に基づく吸収が観測された。UVスペクトルでは267 nmと315 nmに極大吸収が観測され、flavonoid誘導体が推定された(図5)。
【実施例】
【0037】
1H-NMRスペクトルでは、メタカップリングするプロトンシグナル [δH 6.23 (d, J = 2.0 Hz)、6.42 (d, J = 2.0 Hz)] 、ABXタイプに分裂するプロトンシグナル [δH6.89 (d, J = 8.3 Hz)、7.31 (d, J = 2.1 Hz) 及び7.33 (dd, J = 8.3, 2.1 Hz)]、A2B2タイプのプロトンシグナル [δH6.82 (d, J = 8.6 Hz)、7.50 (d, J = 8.6 Hz)] 及び、トランス二重結合を有するオレフィンプロトン [δH6.42 (d, J = 15.8 Hz)、7.62 (d, J = 15.8 Hz) ] が観測された。さらに、δH12.6にキレート水酸基、δH5.23には糖のアノメリックプロトンと思われるシグナルが観測された (図3) 。
【実施例】
【0038】
13C-NMRスペクトル及びDEPTスペクトルでは、11個の4級炭素 (δC: 104.6, 121.2, 125.7, 134.9, 145.8, 149.0, 156.9, 157.8, 160.2, 161.7, 164.7)、16個のメチン (δC: 68.2, 68.7, 71.3, 74.2, 94.2, 99.2, 102.5, 115.2, 115.6, 116.3×3, 121.8, 130.7×2, 145.0, )、1個のメチル (δC: 17.6)、2つのカルボニル基 (δC: 166.9, 178.2) の存在が示された (図4) 。
【実施例】
【0039】
更に、HMQCスペクトルを解析して、化合物1の部分構造を推定した。化合物1を酸加水分解すると、Quercetin及びRhamnoseが検出された。1H-1H COSY及びHMQCスペクトルにより、糖をα-Rhamnoseと推定した。
【実施例】
【0040】
HMBCスペクトルにより、α-Rhamnoseの3''位に(E)-p-Coumaric acidが結合している事が推定された。以上により、化合物1を3''-(E)-p-Coumaroylquercitrin)と決定した。
【実施例】
【0041】
化合物2(3''-(E)-(3'''-Methoxycaffeoyl)quercitrin)
化合物2は黄色粉末で得られ、 [α]25D -158°を示し、Negative FAB-MSからm/z 623 [M-H]-、HR-FAB-MSではm/z 623.1398 (calcd. 623.1399) に疑似分子イオンピーク示すことから、分子式C31H27O14が推定された。IRでは3422 cm-1に水酸基に基づく強い吸収、1653 cm-1カルボニル基、1603 cm-1に共役二重結合に基づく吸収が観測された。UVスペクトルでは267 nmと333 nmに極大吸収が観測され、flavonoid誘導体が推定された(図5)。
【実施例】
【0042】
1H-NMRスペクトルでは、メタカップリングするプロトンシグナル [δH6.24 (d, J = 2.0 Hz)、6.45 (br)] 、ABXタイプに分裂するプロトンシグナル [δH6.90 (d, J = 8.8 Hz)、7.32 (br)及び7.33 (br) と、6.83 (d, J = 8.0 Hz)、7.13 (dd, J=8.0, 2.0 Hz) 及び7.32 (br)] 及び、トランス二重結合を有するオレフィンプロトン [δH6.50 (d, J = 16.0 Hz)、7.61 (d, J = 16.0 Hz)] が観測された。さらに、δH3.83 (s) にメトキシル基に基づくプロトンシグナル、δH12.4にキレート水酸基、δH5.22 (d, J = 1.5 Hz) に糖のアノメリックプロトンと思われるシグナルが観測された (図3) 。
【実施例】
【0043】
13C-NMRスペクトル及びDEPTスペクトルから、12個の4級炭素 (δC: 104.5, 121.2, 126.2, 135.0, 145.8, 148.5, 149.1, 149.8, 156.9, 157.8, 161.7, 164.8)、15個のメチン (δC: 68.2, 68.8, 71.3, 74.2, 94.2, 99.3, 102.6, 111.5, 115.6, 116.0×2, 116.1, 121.8, 123.6, 145.4)、1個のメチル (δC: 17.9)、1個のメトキシル基 (δC: 56.2)、2個のカルボニル基 (δC: 166.9, 178.2) が観測された (図4)。
【実施例】
【0044】
更に、HMQCスペクトルを解析して、化合物2の部分構造を推定した。また、1H-NMR及び13C-NMRのスペクトルデータを化合物1と比較すると非常に類似していることから、化合物2は1と同じQuercitrin誘導体であると推定した。よって、部分構造はQuercetinに由来するものであるということが推定される。
【実施例】
【0045】
1H-1H COSY及びHMQCスペクトルにより、アノメリックプロトンシグナルδH5.23 (d, J = 1.5) から連接性を辿り、Fig. 26.のように糖部分のプロトン及びカーボンシグナルの帰属を行った。また、1JCHが176.2 Hzを示すことから1位の水素をα位と決定した。これより構成糖はα- Rhamnoseであると推定した。
【実施例】
【0046】
HMBCスペクトルにより、δH7.61 (H-7''') からδC111.5 (C-2''')、123.6 (C-6''') にロングレンジ相関が認められた。またδH3.83 (OMe) 及びδH6.83 (H-5''')、7.32 (H-2''') からδC148.5 (C-3''') にロングレンジ相関が観測された。さらにδC166.9 (C-9''') にδH7.61 (H-7''')、6.50 (H-8''') のオレフィンプロトンからロングレンジ相関が観測された。また、δH6.50 (H-8''')、6.83 (H-5''') の水素からδC126.2 (C-1''')の炭素にロングレンジ相関が観測された。以上を踏まえ、HMBCの相関から推測すると、図6のような部分構造が考えられた。
【実施例】
【0047】
α-Rhamonoseの結合位置を決定するためHMBCスペクトルを解析した結果、δH5.22 (H-1') からδC135.0 (C-3) にロングレンジ相関が認められたことから、α-RhamonoseがQuercetinの3位に結合していることが明らかとなった。さらに、図6の構造の結合位置を決定するためにHMBCスペクトルを解析した結果、δH4.95 (H-3''') とδC166.9 (C-9''')にロングレンジ相関が認められたことから、α-Rhamnoseの3''位に図6.の構造が結合している事が明らかとなった。
以上の結果より、化合物2は3''-(E)-(3'''-Methoxycaffeoyl)quercitrinと決定した。
【実施例】
【0048】
化合物3(2''-(E)-Cinnamoylquercitrin)
化合物3は黄色粉末で得られ、 [α]25D -143° を示し、Negative FAB-MSからm/z 577 [M-H]-、HR-FAB-MSではm/z 577.1350 (calcd. 577.1345) に疑似分子イオンピーク示すことから、分子式C30H26O12が推定された。IRでは3418 cm-1に水酸基に基づく強い吸収、1652 cm-1にカルボニル基、1606 cm-1に共役二重結合に基づく吸収が観測された。UVスペクトルでは267 nmと333 nmに極大吸収が観測され、flavonoid誘導体が推定された(図5参照)。
【実施例】
【0049】
1H-NMRスペクトルでは、メタカップリングするプロトンシグナル [δH 6.22 (d, J = 2.0 Hz)、6.42 (d, J = 2.0 Hz)] 、ABXタイプに分裂するプロトンシグナル [δH6.90 (d, J = 8.3 Hz)、7.30 (dd, J = 8.3, 2.3 Hz) 及び7.35 (d, J = 2.3 Hz)]及び、δH7.43, 7.74に5H分のプロトンシグナルが存在することから一置換ベンゼンの存在が推定された。さらにトランス二重結合を有するオレフィンプロトン [δH6.64 (d, J = 16.0 Hz)、7.67 (d, J = 16.0 Hz)] 及び、δH5.51 (d, J = 1.5 Hz) に糖のアノメリックプロトンと思われるシグナルが観測された (図3参照)) 。
【実施例】
【0050】
13C-NMRスペクトル及びDEPTスペクトルでは、10個の4級炭素 (δC: 104.2, 120.7, 133.5, 134.1, 145.5, 148.8, 156.6, 157.5, 161.4, 164.5)、17個のメチン (δC: 68.7, 70.9, 71.6, 72.0, 93.9, 98.5, 98.9, 116.0, 116.1, 118.1 121.8, 128.6×2, 129.1×2, 130.7, 145.3)、1個のメチル (δC: 17.6)、2個のカルボニル基 (δC: 165.6, 178.2) が観測された (図4参照)。
さらに、13C-NMRスペクトル、DEPTスペクトル、HMQCスペクトル、及び、HMBCスペクトルの結果を利用して、化合物3の構造を解析した。
【実施例】
【0051】
化合物4(3''-(E)-Cinnamoylquercitrin)
化合物4は黄色粉末で得られ、 [α]25D -125° を示し、Positive FAB-MSからm/z 579 [M+H]+、HR-FAB-MSではm/z 579.1496 (calcd. 579.1501) に疑似分子イオンピークを示すことから、分子式C30H26O12が推定された。IRでは3422 cm-1に水酸基に基づく強い吸収、1653cm-1にカルボニル基、1607cm-1に共役二重結合に基づく吸収が観測された。UVスペクトルでは270 nmと340 nmに極大吸収が観測されたことから、flavonoid誘導体が推定された(図5)。
【実施例】
【0052】
1H-NMRスペクトルでは、メタカップリングするプロトンシグナル [δH 6.22 (d, J = 2.0 Hz)、6.41 (d, J = 2.0 Hz)] 、ABXタイプに分裂するプロトンシグナル [δH6.90 (d, J = 8.3 Hz)、7.30 (dd, J = 8.3, 2.0 Hz) 及び7.32 (d, J = 2.0 Hz)] 及び、δH7.44 7.74に5H分のプロトンシグナルが存在することから、一置換ベンゼンの存在が推定された。さらにトランス二重結合を有するオレフィンプロトン [δH6.67 (d, J = 16.0 Hz)、7.72 (d, J = 16.0 Hz)] 及び、δH5.24 (d, J = 1.5 Hz) に糖のアノメリックプロトンと思われるシグナルが観測された (図3) 。
【実施例】
【0053】
13C-NMRスペクトル及びDEPTスペクトルでは、10個の4級炭素 (δC: 104.3, 120.8, 134.3, 134.6, 145.5, 148.7, 156.7, 157.5, 161.5, 164.4)、17個のメチン (δC: 68.4, 67.8, 70.9, 74.2, 93.8, 98.9, 102.1, 115.6×2, 118.8 121.5, 128.5×2, 129.2×2, 130.6, 144.5)、1個のメチル (δC: 17.6)、2個のカルボニル基 (δC: 166.2, 177.8)が観測された (図4)
さらに、13C-NMRスペクトル、DEPTスペクトル、HMQCスペクトル、及び、HMBCスペクトルの結果を利用して、化合物4の構造を解析した。
【実施例】
【0054】
トリグリセライド(TG)蓄積抑制試験とグリセロール3リン酸脱水素酵素(GPDH)活性試験
1)3T3-L1前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化誘導及び促進試験
3T3-L1前駆脂肪細胞は、5% CO2下37℃で培養した。脂肪細胞分化抑制試験には対数増殖期の細胞を1.0×105 cells/ mLに調製し使用した。基本培地(10% FCSを含むDMEM培地)で2日間培養後(Day 0)、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX, 500 μM)、デキサメタゾン(DEX, 1 μM)及びインスリン(10 μg/mL)を含有する分化誘導培地(10% FBSを含むDMEM培地)に試験薬物を添加し、3日間培養した(Day 3)。さらに、インスリン(10 μg/mL)を含有する分化維持培地に試験薬物を添加し、2日おきに同じ培地で交換し8日間培養した(Day 8)。分化した細胞の上清はチュープに回収し、脂肪細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS(-))で2回洗浄した。1 mM EDTAを含むトリス-塩酸緩衝液25 mM Tri buffer ( pH 7.5) 500μlを加え、細胞を剥離し、1.5mlプラスチックチューブに回収した。氷水で冷やしながら、超音波処理により細胞膜を破壊後、4℃、15,000rpm、2分間遠心分離を行った。
【実施例】
【0055】
2)トリグリセライド(TG)含量の測定
細胞ホモジネートの一部分を取って、細胞内に蓄積されたトリグリセライド(TG)はラボアッセイトリグリセライド(和光純薬)を用いて定量した。
各サンプルの細胞ホモジネートにトリグリセライド発色試薬を添加してよく混合し、37℃で5分間加温した。ブランクを対照として、波長595 nmにおける検体及び基準液の吸光度を測定した。次式により抑制率を算出した。
【実施例】
【0056】
抑制率 (%) = {(Y - X) / Y}× 100
X:試料を添加した際の1wellあたりのTG量を1wellあたりのDNA量で除したもの
Y:DMSOを添加した際の1wellあたりのTG量を1wellあたりのDNA量で除したもの。
3)グリセロール3リン酸脱水素酵素(GPDH)活性
細胞ホモジネートの一部分を取って、GPDHはGPDH活性測定キット(Primary Cell Co., Ltd.)を用いた。
【実施例】
【0057】
反応基質溶液を分光光度計用セルに入れ、セル内に検体を加え、波長340nmにおける吸光度の減少を経時測定し、1分間当りの吸光度の変化量(ΔO.D.)を求めた。
【実施例】
【0058】
活性値の計算:
検体1ml当りのGPDHが1分間に1μMのNADHを消費する活性を1Uとし、GPDH活性を次式で求めた(光路長が1cmの場合)。
【実施例】
【0059】
GPDH活性(U/ml)=ΔO.D.×0.482
ΔO.D.:1分間当たりの波長340nmにおける吸光度の変化量
抑制率 (%) = {(Y - X) / Y}× 100
X:試料を添加した際の1wellあたりのGPDH活性を1wellあたりのDNA量で除したもの
Y:DMSOを添加した際の1wellあたりのGPDH活性を1wellあたりのDNA量で除したもの。
【実施例】
【0060】
4)DNAの定量
細胞ホモジネートの一部分を取って、細胞内のDNAの量はDNA活性測定キット(Primary Cell Co. Ltd.)を用いて定量した。この結果、合歓花の抽出液、さらに、各画分について、TG蓄積抑制試験とGPDH活性試験を行ったところ、図2に示す通り、水画分及び酢酸エチル画分に強い効果が認められた。結果は、±SD(n=3)法で示されている。サンプルの濃度は30 μg/mlである。
【実施例】
【0061】
さらに、合歓花より得られた化合物についてTG蓄積抑制試験とGPDH活性試験を行った。その結果を図7に示す。サンプルの濃度は、30μM である。ポジティブコントロールとして用いた脂肪細胞の分化及びTG蓄積抑制効果が知られているquercetin (5)と比較すると、全てのフラボノイドに、化合物5と同程度、もしくは強いTG蓄積及びGPDH活性の抑制が認められた。特に化合物2と化合物7に強い活性が認められた。
【実施例】
【0062】
以上説明したように、ネムノキの花部の抽出液の画分及び有効成分は、TG蓄積抑制作用と、GPDH活性の抑制作用によって、前記脂肪細胞を脂肪細胞に分化するのを抑制するとともに、脂肪細胞へのTGの蓄積を抑制することによって、抗肥満作用と、糖尿病改善効果を達成する。
【実施例】
【0063】
本発明の有効成分を人間又は動物に対して適用するには、内服、注射、外用など公知の全ての剤型を用いることができる。本発明の有効成分は、薬剤、健康食品、外用剤として利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6