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明細書 :マグネシウム基硬磁性複合材料及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5505841号 (P5505841)
公開番号 特開2012-104590 (P2012-104590A)
登録日 平成26年3月28日(2014.3.28)
発行日 平成26年5月28日(2014.5.28)
公開日 平成24年5月31日(2012.5.31)
発明の名称または考案の名称 マグネシウム基硬磁性複合材料及びその製造方法
国際特許分類 H01F   1/11        (2006.01)
H01F  41/02        (2006.01)
FI H01F 1/11 B
H01F 41/02 G
請求項の数または発明の数 7
全頁数 9
出願番号 特願2010-250881 (P2010-250881)
出願日 平成22年11月9日(2010.11.9)
審査請求日 平成25年11月6日(2013.11.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】久保田 正広
【氏名】新妻 清純
個別代理人の代理人 【識別番号】100066980、【弁理士】、【氏名又は名称】森 哲也
【識別番号】100109380、【弁理士】、【氏名又は名称】小西 恵
【識別番号】100103850、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
【識別番号】100116012、【弁理士】、【氏名又は名称】宮坂 徹
審査官 【審査官】井上 健一
参考文献・文献 特開2011-243776(JP,A)
特開2010-265492(JP,A)
特開平2-44606(JP,A)
特開2006-257513(JP,A)
青木翔、久保田正広,粉末冶金法で複合化されたマグネシウム基磁性材料の特性,軽金属学会第118回春期大会講演概要集,日本,社団法人軽金属学会,2010年 4月22日,p.201-202
調査した分野 H01F 1/11
B22F 1/00
B22F 3/02
B22F 3/14
C04B 35/26
C22C 1/05
C22C 23/00
H01F 41/02
特許請求の範囲 【請求項1】
バリウムフェライト粉末と、機械的エネルギーを付与することにより強度が高められたマグネシウム粉末と、の混合粉末の焼結体であり、前記バリウムフェライト粉末の各粒子の磁気モーメントの向きが一方向に揃っていることを特徴とするマグネシウム基硬磁性複合材料。
【請求項2】
前記マグネシウム粉末は、メカニカルアロイングを施すことにより強度が高められたものであることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム基硬磁性複合材料。
【請求項3】
放電プラズマ焼結法による焼結体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマグネシウム基硬磁性複合材料。
【請求項4】
マグネシウム粉末に機械的エネルギーを付与して前記マグネシウム粉末の強度を高める高強度化工程と、
バリウムフェライト粉末と、前記強度が高められたマグネシウム粉末と、を混合して混合粉末とする混合工程と、
外部磁場を印加しながら前記混合粉末を焼結して、前記バリウムフェライト粉末の各粒子の磁気モーメントの向きが一方向に揃った焼結体を成形する焼結工程と、
を備えることを特徴とするマグネシウム基硬磁性複合材料の製造方法。
【請求項5】
マグネシウム粉末及びバリウムフェライト粉末に機械的エネルギーを付与して、前記マグネシウム粉末の強度を高めつつ前記マグネシウム粉末と前記バリウムフェライト粉末とを混合した後に、外部磁場を印加しながらこの混合粉末を焼結して、前記バリウムフェライト粉末の各粒子の磁気モーメントの向きが一方向に揃った焼結体を成形することを特徴とするマグネシウム基硬磁性複合材料の製造方法。
【請求項6】
メカニカルアロイング法により粉末に機械的エネルギーを付与することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のマグネシウム基硬磁性複合材料の製造方法。
【請求項7】
放電プラズマ焼結法により焼結を行うことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載のマグネシウム基硬磁性複合材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、硬磁性を有するマグネシウム基複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題の観点から、より安価且つ軽量であり、さらに室温及び高温で高い機械的強度を有する材料の開発が望まれている。また、高機能化の観点から、様々な機能を有する軽量な材料の開発が望まれている。
例えば、従来の磁性材料は、鉄又は酸化鉄をベースとしたものが多く、比重が高いという欠点を有していた。また、酸化鉄系磁性材料の機械的特性は、セラミックスに類似しており、破壊靭性が極めて低いことや加工性が低いという欠点も併せ持っていた。
【0003】
このような背景から、安価で且つ金属材料中で最も軽量なマグネシウムに高強度化と硬磁性の付与とがなされれば、輸送機器をはじめとする構造材や電気・電子機器の部品などへの適用が可能となり、地球温暖化問題の解決の一助となり得る。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-257513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マグネシウムは機械的強度が低く(室温で100MPa以下)、磁性を有しないため、輸送機器をはじめとする構造材や磁性材料への適用は皆無に等しいのが現状である。
また、マグネシウムの機械的強度を向上させる方法としては、溶融・鋳造法により合金化する方法が一般的であるが、このような従来法は工程が煩雑であることに加えて、溶融時にマグネシウムが燃焼する危険性があった。また、溶融・鋳造法によりマグネシウムと磁性材料を複合化することは、融点や比重の差から困難であるため、硬磁性が付与されたマグネシウム材料はほとんど知られていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、硬磁性を有するとともに、安価且つ軽量であり室温及び高温で高い機械的強度を有するマグネシウム基硬磁性複合材料及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係るマグネシウム基硬磁性複合材料は、バリウムフェライト粉末と、機械的エネルギーを付与することにより強度が高められたマグネシウム粉末と、の混合粉末の焼結体であり、前記バリウムフェライト粉末の各粒子の磁気モーメントの向きが一方向に揃っていることを特徴とする。
【0008】
このような本発明に係るマグネシウム基硬磁性複合材料においては、前記マグネシウム粉末は、メカニカルアロイングを施すことにより強度が高められたものであることが好ましい。また、放電プラズマ焼結法による焼結体であることが好ましい。
また、本発明に係るマグネシウム基硬磁性複合材料の製造方法は、マグネシウム粉末に機械的エネルギーを付与して前記マグネシウム粉末の強度を高める高強度化工程と、バリウムフェライト粉末と、前記強度が高められたマグネシウム粉末と、を混合して混合粉末とする混合工程と、外部磁場を印加しながら前記混合粉末を焼結して、前記バリウムフェライト粉末の各粒子の磁気モーメントの向きが一方向に揃った焼結体を成形する焼結工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係るマグネシウム基硬磁性複合材料の製造方法は、マグネシウム粉末及びバリウムフェライト粉末に機械的エネルギーを付与して、前記マグネシウム粉末の強度を高めつつ前記マグネシウム粉末と前記バリウムフェライト粉末とを混合した後に、外部磁場を印加しながらこの混合粉末を焼結して、前記バリウムフェライト粉末の各粒子の磁気モーメントの向きが一方向に揃った焼結体を成形することを特徴とする。
【0010】
これらの本発明に係るマグネシウム基硬磁性複合材料の製造方法においては、メカニカルアロイング法により粉末に機械的エネルギーを付与することが好ましい。また、放電プラズマ焼結法により焼結を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマグネシウム基硬磁性複合材料は、バリウムフェライト粉末と、強度が高められたマグネシウム粉末と、の混合粉末の焼結体であるので、安価且つ軽量であり室温及び高温で高い機械的強度を有する。また、バリウムフェライト粉末の各粒子の磁気モーメントの向きが一方向に揃っているので、優れた硬磁性を有する。
また、本発明のマグネシウム基硬磁性複合材料の製造方法は、マグネシウム粉末に機械的エネルギーを付与してマグネシウム粉末の強度を高める工程を備えているとともに、外部磁場を印加しながら混合粉末を焼結して、バリウムフェライト粉末の各粒子の磁気モーメントの向きを一方向に揃える工程を備えているので、優れた硬磁性を有するとともに安価且つ軽量であり室温及び高温で高い機械的強度を有するマグネシウム基硬磁性複合材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】粉末にメカニカルアロイングを施した時間と粉末のマイクロビッカース硬さとの関係を示すグラフである。
【図2】混合粉末におけるバリウムフェライト粉末の含有率と粉末のマイクロビッカース硬さとの関係を示すグラフである。
【図3】粉末にメカニカルアロイングを施した時間とメカニカルアロイングを施した粉末の飽和磁化及び保磁力との関係を示すグラフである。
【図4】X線回折のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るマグネシウム基硬磁性複合材料及びその製造方法の実施の形態を、以下に詳細に説明する。
まず、マグネシウム粉末及びバリウムフェライト粉末を混合装置に投入し、マグネシウム粉末及びバリウムフェライト粉末を撹拌すると、マグネシウム粉末及びバリウムフェライト粉末が均一に混合される。このとき、撹拌によりマグネシウム粉末に機械的エネルギーが付与されるようにすると、マグネシウム粉末にひずみが導入されて加工硬化がなされ、機械的強度及び硬さが高められる。なお、混合時における焼付きを防止するため、ステアリン酸等の滑剤をマグネシウム粉末及びバリウムフェライト粉末に混合してもよい。

【0014】
機械的エネルギーを付与しながら粉末を撹拌し混合する方法は、マグネシウム粉末の機械的強度及び硬さが十分に高められるならば特に限定されるものではないが、メカニカルアロイング法が好ましい。メカニカルアロイング法は、金属製の容器内に金属製ボールと粉末を装入し、容器を連続的に回転させることにより、金属製ボールを粉末に激しく衝突させて、金属製ボールから粉末に繰り返し衝撃(機械的エネルギー)を付与するという方法である。

【0015】
なお、粉末にメカニカルアロイングを施す時間は、5分以上10時間以下が好ましい。メカニカルアロイングを施す時間が長いほど、マグネシウム粉末に強いひずみが導入されて大きな機械的エネルギーが付与されるので、機械的強度及び硬さがより高められる。さらに、バリウムフェライト粉末が微細に粉砕され、その粒子が均一にマグネシウム粉末中に分散するため、硬さがさらに高められる。ただし、バリウムフェライト粉末が微細に粉砕されると、硬磁性(特に保磁力)が低下する傾向があるため、上記の作用とのバランスを考えて、メカニカルアロイングを施す時間の長さを決定することが好ましい。

【0016】
このような処理により、機械的強度及び硬さが高められたマグネシウム粉末と、バリウムフェライト粉末との混合粉末が得られるので、この混合粉末を型(型の素材は金属,セラミックス,炭素等があげられる)に充填し焼結して、所望の形状に成形する。このとき、外部磁場を印加しながら混合粉末を焼結するので、バリウムフェライト粉末の各粒子の磁気モーメントの向きが一方向に揃った焼結体が得られる。外部磁場を印加する方法や印加する外部磁場の強さは、焼結体中のバリウムフェライト粉末の各粒子の磁気モーメントの向きを一方向に揃えられるならば、特に限定されるものではない。

【0017】
これにより、硬磁性を有するマグネシウム基硬磁性複合材料が得られる。このマグネシウム基硬磁性複合材料は、金属成分がマグネシウムであるので、安価且つ軽量であり加工性が優れている。また、マグネシウム粉末の機械的強度及び硬さが高められているため、マグネシウム基硬磁性複合材料の室温及び高温における機械的強度(例えば比強度)と硬さは、純マグネシウム材料よりも優れている。

【0018】
焼結方法の種類は特に限定されるものではなく、一般的な焼結法を採用可能であるが、放電プラズマ焼結法により焼結を行うことが好ましい。放電プラズマ焼結法は短時間で焼結体を得ることができるので、従来の粉末冶金法(粉末を冷間加工した後に熱間押出しして焼結体を得る方法)などと比べて、焼結体の製造に要する時間や工程を大幅に削減することができる。よって、焼結体を安価に製造することができる。また、圧力,温度,時間等の焼結条件は特に限定されるものではなく、マグネシウム基硬磁性複合材料に要求される機械的強度,硬さ,密度等に応じて適宜設定すればよい。

【0019】
なお、上記のように、マグネシウム粉末とバリウムフェライト粉末を共に混合装置に投入して撹拌すると、バリウムフェライト粉末に対しても機械的エネルギーが付与されるため、バリウムフェライト粉末が微細に粉砕された粒子がマグネシウム粉末中に均一に分散することによって硬さが上昇する一方で、バリウムフェライトの硬磁性(特に保磁力)が低下する場合がある。よって、まずマグネシウム粉末のみに機械的エネルギーを付与して、マグネシウム粉末の機械的強度及び硬さを高めた後に、バリウムフェライト粉末と混合する方法を採用してもよい。

【0020】
すなわち、まずマグネシウム粉末を混合装置に投入し撹拌して、マグネシウム粉末に機械的エネルギーを付与し、マグネシウム粉末の機械的強度及び硬さを高める(高強度化工程)。次に、バリウムフェライト粉末と、機械的強度及び硬さが高められたマグネシウム粉末と、を混合して混合粉末とする(混合工程)。このとき、機械的強度及び硬さが高められたマグネシウム粉末とバリウムフェライト粉末との混合方法は、前述のような機械的エネルギーが付与される混合方法(メカニカルアロイング法等)でもよいし、機械的エネルギーは付与されない一般的な混合方法でもよい。そして、外部磁場を印加しながらこの混合粉末を焼結して、バリウムフェライト粉末の各粒子の磁気モーメントの向きが一方向に揃った焼結体を成形する(焼結工程)。このような方法によりマグネシウム基硬磁性複合材料を製造すれば、より優れた硬磁性(特に保磁力)を有するマグネシウム基硬磁性複合材料を得ることができる。

【0021】
また、焼結温度が高いと、バリウムフェライトが固相で分解するおそれがあるので、バリウムフェライトが分解しない程度の低温で焼結を行うことが好ましい。また、マグネシウムの融点が650℃であるので、それよりも低い温度で焼結を行うことが好ましい。これらの点から、焼結温度は300℃以上500℃以下とすることが好ましい。
また、高強度化工程と混合工程を別々に行う前述の方法を採用すれば、焼結におけるバリウムフェライトの固相分解が抑制されるため、機械的強度及び硬さを維持しながら、優れた硬磁性を発揮することができる。

【0022】
このような本実施形態のマグネシウム基硬磁性複合材料は、優れた機械的強度及び硬さと優れた硬磁性とを備えているので、輸送機器をはじめとする構造材や電気・電子機器の部品などへの適用が可能である。また、現在使用されているマグネシウム合金や鉄鋼系磁性材料の代替材料にもなりうる。さらに、高周波吸収材,電磁波吸収材,高周波シールド材,電磁波シールド材等への適用も可能である。さらに、永久磁石として使用することもできる。さらに、ハードディスクドライブ,録音装置,録画装置等の磁気ヘッドとして使用することもできる。

【0023】
本発明に使用可能な硬磁性材料としてはバリウムフェライトが特に好ましいが、その他の硬磁性材料も使用可能である。例えば、ネオジウム(Nd-Fe-B-Dy)系磁性材料,サマリウム-コバルト(Sm-Co)系磁性材料,ストロンチウムフェライトが使用可能である。
また、マグネシウム粉末とバリウムフェライト粉末との混合比率は特に限定されるものではないが、マグネシウム粉末とバリウムフェライト粉末の合計の質量におけるバリウムフェライト粉末の質量の割合は、5%以上45%以下であることが好ましい。5%未満であると、マグネシウム基硬磁性複合材料の硬磁性が不十分となるおそれがあり、45%超過であると、マグネシウム基硬磁性複合材料の機械的強度が不十分となるおそれがある。

【0024】
〔実施例〕
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。まず、出発原料として用いたマグネシウム粉末は、純度99.91%,平均粒子径275.9μmの純マグネシウムの粉末である。また、バリウムフェライト粉末は、組成がBaFe12O19で、平均粒子径1.7μm、飽和磁化7.5×10-5Wb・m/kg、保磁力16.2kA/mのものである(以降においては「Baフェライト」又は「BFR」と記すこともある)。

【0025】
メカニカルアロイングには、800rpmで回転するモータによってミル容器に上下左右の複雑な振動を与えることができる振動型ボールミルを用いた。直径51mm,長さ64mmの工具鋼製ミル容器に、直径6mmの工具鋼製ボール70個(約70g)と、マグネシウム粉末及びBFR粉末を合計で10gと、焼き付き防止剤としてステアリン酸0.75gと、を装入した。

【0026】
マグネシウム粉末及びBFR粉末の配合組成については、3種類検討した。すなわち、マグネシウム粉末:BFR粉末が90質量%:10質量%のもの(以降は「Mg-10BFR」と記す)、70質量%:30質量%のもの(以降は「Mg-30BFR」と記す)、50質量%:50質量%のもの(以降は「Mg-50BFR」と記す)についてメカニカルアロイングを行った。

【0027】
メカニカルアロイングの処理時間については、20分,60分,120分,240分とした。なお、ミル容器への粉末の装入と取り出しはアルゴン雰囲気中で行なった。そして、メカニカルアロイングを施した混合粉末について、マイクロビッカース硬さHV0.01を測定した。メカニカルアロイングの処理時間と得られた混合粉末のマイクロビッカース硬さHV0.01との関係を、図1のグラフに示す。また、混合粉末におけるバリウムフェライト粉末の含有率と混合粉末のマイクロビッカース硬さHV0.01との関係を、図2のグラフに示す。さらに、粉末にメカニカルアロイングを施した時間とメカニカルアロイングを施した粉末の飽和磁化(左縦軸)及び保磁力(右縦軸)との関係を、図3のグラフに示す。

【0028】
次に、メカニカルアロイングを施した各混合粉末を、外部磁場を印加しながら放電プラズマ焼結装置で固化成形して、バリウムフェライト粉末の各粒子の磁気モーメントの向きが一方向に揃った焼結体を得た。成形には黒鉛ダイス(外径50mm,内径20.1mm,高さ40mm)と黒鉛パンチを用い、これに4gの混合粉末を充填した。チャンバー内を真空に保ち、焼結温度が573K,673K,又は773K(室温から該焼結温度までの昇温速度は1.67K/s)、焼結圧力が49MPa、保持時間が1時間という条件で焼結した。

【0029】
なお、混合粉末のマイクロビッカース硬さHV0.01は、測定面をエメリー紙で研磨後、研磨用アルミナ粒子でバフ研磨して鏡面仕上げし、マイクロビッカース硬度計で測定した。また、混合粉末の飽和磁化及び保磁力は、振動試料型磁力計(VSM)を用いて、800kA/m,40kA/mの磁界中で測定した。さらに、混合粉末の構造解析はX線回折(XRD)で行った(図4のX線回折のチャートを参照)。X線回折は、強度40kV,60mAのCuKα線を用いて、回折速度1.66×10-2deg/s及び回折角度20~80°の条件で測定した。

【0030】
ここで、メカニカルアロイングの処理時間について考察する。図1では、メカニカルアロイングを施していない純マグネシウム粉末のマイクロビッカース硬さを点線で表示してある。純マグネシウム粉末のみにメカニカルアロイングを施した場合は、メカニカルアロイングの処理時間が20~120分のものは、メカニカルアロイングを施していない純マグネシウム粉末よりも硬さが低かったが、メカニカルアロイングの処理時間が240分のものは、メカニカルアロイングを施していない純マグネシウム粉末よりも硬さが高かった。

【0031】
これは、メカニカルアロイングの処理時間が20~120分の場合は、加工硬化や結晶子の微細化による強化よりも摩擦熱による回復の方が大きく寄与し、メカニカルアロイングの処理時間が240分の場合は、摩擦熱による回復よりも加工硬化や結晶子の微細化による強化の方が上回ったためであると考えられる。
また、メカニカルアロイングを施した混合粉末の場合は、メカニカルアロイングの処理時間の増加に伴って硬さが向上する傾向を示した。しかし、バリウムフェライト粉末の含有率の増加に伴う硬さの向上量は、メカニカルアロイング処理時間によって異なることが確認できる。

【0032】
そこで、バリウムフェライト粉末の含有率の増加に伴う硬さの変化について、図2を参照しながら考察する。図2中で点線は、マグネシウム粉末の硬さ(44HV)とバリウムフェライト粉末の硬さ(127.7HV)から複合則を用いて算出した混合粉末の硬さの理論値である。メカニカルアロイング(MA)の処理時間が20分の場合と60分の場合は、バリウムフェライト粉末の含有率の増加に伴う硬さの向上傾向は認められなかった。一方、120分の場合と240分の場合は、バリウムフェライト粉末の含有率の増加に伴って硬さが向上する傾向を示した。これは、120分以上のメカニカルアロイングにより、バリウムフェライト粉末の均一分散が達成されたためと考えられる。また、120分の場合と240分の場合の硬さの差は、マトリックスであるマグネシウムの硬さの向上分であると考えられる。

【0033】
次に、メカニカルアロイング処理時間と、バリウムフェライト粉末及び混合粉末の飽和磁化と保磁力との関係について、図3を参照しながら考察する。メカニカルアロイングを施していないバリウムフェライト粉末の飽和磁化値は、7.5×10-5Wb・m/kgである。メカニカルアロイングを施したバリウムフェライト粉末の飽和磁化値は、非磁性のステアリン酸の影響により、メカニカルアロイングを施していないバリウムフェライト粉末よりも若干低い値を示したが、メカニカルアロイングによる急激な値の低下は認められず、組成に依存した値が得られた。混合粉末の飽和磁化値も、メカニカルアロイング処理時間の増加に伴う変化を示さず、バリウムフェライト粉末の含有率に応じた値が得られた。

【0034】
一方、メカニカルアロイングを施していないバリウムフェライト粉末の保磁力は、16.2kA/mである。メカニカルアロイングを施したバリウムフェライト粉末の保磁力は、メカニカルアロイング処理時間の増加伴い低下する傾向を示し、240分の場合は13.5kA/mであった。
酸化物系軟磁性材料であるNi-Cu-Znフェライトに対して同様の条件でメカニカルミリングを施した場合は、処理時間の増加に伴って保磁力が向上する傾向を示した。これは、保磁力は構造依存型の特性であり、結晶構造の変化や結晶粒径の増減によってその値が変化することに起因しており、メカニカルミリング処理時間の増加に伴って結晶子が微細化したために保磁力が増加したと考えられる。

【0035】
結晶子の大きさと保磁力の関係は、一般的には、結晶子の大きさが数十nmまで減少した際に保磁力は向上するが、数nm以下(アモルファス) になると106 に比例して保磁力が急激に低下することが知られている。これは、結晶子の大きさが数十nm以上の粉末は多磁区で構成されているが、数十nmの粉末では単磁区となるため保磁力が最も高く、数nm以下(アモルファス) 、すなわち、単磁区よりも微細な粉末は保磁力が急激に低下するという概念で説明されている。

【0036】
このような観点から、バリウムフェライト粉末の保磁力がメカニカルアロイングの処理時間の増加に伴い低下する傾向を示したことを考えると、メカニカルアロイングを施していない粉末は単磁区で構成されており、メカニカルアロイングの処理時間の増加に伴って単磁区以下の大きさの粉末に微細化されたために保磁力が低下したと推察できる。また、混合粉末の保磁力は、バリウムフェライト粉末よりも高い値を示した。さらに、全ての混合粉末においてバリウムフェライト粉末と同様に、メカニカルアロイングの処理時間の増加に伴って保磁力は低下する傾向を示した。バリウムフェライト粉末よりも混合粉末の方が保磁力が高い値を示したのは、マグネシウム粉末と共にメカニカルアロイングを施したバリウムフェライト粉末の結晶子は微細化されなかったためと考えられる。

【0037】
次に、メカニカルアロイングの処理時間の変化に伴うMg-10BFR粉末の構成相の変化について、図4を参照しながら考察する。メカニカルアロイング(MA)の処理時間が20~240分の範囲内では、マグネシウムとバリウムフェライトの間の固相反応は生じていないことが分かる。また、マグネシウムの回折ピークは、メカニカルアロイングの処理時間が20分の場合及び60分の場合よりも、120分の場合及び240分の場合がブロード化していることから、結晶子が微細化していると考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3