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明細書 :シェル状顆粒又はその凝集体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5765731号 (P5765731)
公開番号 特開2012-157628 (P2012-157628A)
登録日 平成27年6月26日(2015.6.26)
発行日 平成27年8月19日(2015.8.19)
公開日 平成24年8月23日(2012.8.23)
発明の名称または考案の名称 シェル状顆粒又はその凝集体
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
A61K   6/033       (2006.01)
FI A61L 27/00 J
A61K 6/033
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2011-020855 (P2011-020855)
出願日 平成23年2月2日(2011.2.2)
審査請求日 平成26年1月31日(2014.1.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】深瀬 康公
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
【識別番号】100068700、【弁理士】、【氏名又は名称】有賀 三幸
【識別番号】100077562、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 登志雄
【識別番号】100096736、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 俊夫
【識別番号】100117156、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 正樹
【識別番号】100111028、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 博人
審査官 【審査官】星 功介
参考文献・文献 特開平08-239250(JP,A)
特開2005-068005(JP,A)
特開昭62-091479(JP,A)
特開2007-190169(JP,A)
調査した分野 A61L 15/00-33/00
A61K 6/00- 6/10
C04B 7/00- 7/60
特許請求の範囲 【請求項1】
内部に水硬性粉体状組成物を含有し外殻が前記粉体状組成物を水和反応させて得られる硬化体で形成されてなるシェル状顆粒又はその凝集体を有する充填材
【請求項2】
水硬性粉体状組成物が、セメント含有粉体状組成物、又はα-トリカルシウムジホスフェート、カルシウムモノハイドロゲンホスフェート及びテトラカルシウムジホスフェートから選ばれる2種以上のリン酸カルシウム化合物と水溶性セルロース誘導体を含有する粉体状組成物であり、外殻がセメント硬化体、又は該粉体状組成物を水和反応させて得られるヒドロキシアパタイトである請求項1記載の充填材
【請求項3】
骨再生用充填材である請求項1又は2記載の充填材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シェル状顆粒又はその凝集体、及びこれを有する充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術のうち骨切除を伴う手術において、あるいは歯根再生術においては、欠損部に補填材、充填材と称される構造第が必要となる。これらの充填材としては、α-トリカルシウムジホスフェート(α-TCP)、β-リン酸3カルシウム(β-TCP)、ヒドロキシアパタイトなどの骨組織親和性充填材が用いられている。このうち、ヒドロキシアパタイトは、強度が高く、かつ生体適合性が良好であることから広く用いられている(非特許文献1~3)。
【0003】
しかし、ヒドロキシアパタイトの固形物を用いた場合には、周囲組織との結合性が十分ではないことから、ヒドロキシアパタイト粉体を凝集させて顆粒状にした補填材(非特許文献2)、同心円状に形成した補填材(特許文献1)等が開発されている。
【0004】
また、セメント組成物は、歯科用充填材及び建築および土木用材料として広く用いられているが、その硬化手段は粉体に水を加えて混練後目的部位に充填して硬化させるというものである。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2008-307071号公報
【0006】

【非特許文献1】深瀬康公(1990)リン酸カルシウムセメントに関する基礎的研究-硬化反応及び硬化物の圧縮強さと焼結処理- .日大歯学,64,190-203
【非特許文献2】Fukase Y,Eanes E D,Takagi S,Chow L C,Brown W E(1990)Setting reactions and compressive strengths of calcium phosphate cements.J Dent Res,69,1852-1856
【非特許文献3】Fukase Y,Wda S,Uehara H,Terakado M,Sato H,Nishiyama M.(1998) Basic studies on hydroxy apatite cement I.setting reaction.J Nihon Univ Sch Dent,40,71-76
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし従来の前記骨再生用材料は、周囲組織との結合性の点で十分ではなく、前記顆粒の場合には、移植部位で顆粒の構造が破壊されたとき、粉体を移植した状態と同様になってしまい、顆粒の状態で移植した意義がなくなってしまう。
従って、本発明の課題は、顆粒の形状を有することによる周囲組織との結合性に優れ、かつ顆粒が破壊された場合でも良好な骨再生能を保持する骨再生用材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、水硬性を有する、α-トリカルシウムジホスフェート、カルシウムモノハイドロゲンホスフェート及びテトラカルシウムジホスフェートから選ばれる2種以上のリン酸カルシウム化合物と水溶性セルロース誘導体を含有する粉体状組成物に着目し、三次元形状造形物製造手段を応用すれば、内部に水硬性粉体状組成物を含有し、外殻が内部の組成物による硬化体で形成されたシェル状顆粒又はその凝集体が得られることを見出した。得られたシェル状顆粒又はその凝集体は、外圧によりその顆粒構造が破壊されたとき、内部の粉体が流出するが、流出した粉体は周囲に存在する水分により硬化反応が進行するため自己修復能を示すこと、さらには顆粒又はその凝集体であることから充填部の周囲組織との結合性が良好であることから医療分野の充填材として、また建築および土木分野の硬化性材料として有用であることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、内部に水硬性粉体状組成物を含有し、外殻が前記粉体状組成物を水和反応させて得られる硬化体で形成されてなるシェル状顆粒又はその凝集体を提供するものである。
また本発明は、上記シェル状顆粒又はその凝集体を有する充填材を提供するものである。
さらに本発明は、ステージ上に、水硬性粉体状組成物による粉体層を形成し、その所定部位に水を供給して所定形状の硬化層を形成し、この硬化層の上に新たな前記粉体層を形成してその所定部位に水を供給することで所定の硬化層を繰り返して硬化層を積層することを特徴とするシェル状顆粒又はその凝集体の製造法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシェル状顆粒又はその凝集体は、その内部にシェルを構成する硬化体原料である水硬性粉体を含有するため、水分の存在する骨欠損部等に充填すれば徐々に周囲の水分により内部まで硬化する。また、外圧によりシェル状顆粒が破壊された場合には、内部から流出した粉体が周囲の水分により硬化するので、自己修復作用を有する。さらに、シェル状顆粒又はその凝集体の形状を有するので、移植した周囲組織との結合性も良好である。従って、本発明のシェル状顆粒又はその凝集体は、歯科用充填材、骨再生充填材、建築用充填材等の充填材として、またセメント組成物としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】シェル状顆粒の凝集状態の例を示す図である。
【図2】シェル状顆粒が破損した場合の自己修復状態を示す図である。
【図3】実施例で得られたシェル状顆粒の状態を示す写真である。
【図4】実施例で得られたシェル状顆粒の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のシェル状顆粒又はその凝集体のシェルの内部には、水硬性粉体状組成物が含まれ、その外殻は前記水硬性粉体状組成物を水和反応させて得られる硬化体で形成されている。このように内部の粉体と、外殻の硬化体の原料とが同一であるため、全体が硬化した後は内部まで均一な顆粒又はその凝集体となる。

【0013】
水硬性粉体状組成物としては、(1)セメント組成物;(2)α-トリカルシウムジホスフェート、カルシウムモノハイドロゲンホスフェート及びテトラカルシウムジホスフェートから選ばれる2種以上のリン酸カルシウム化合物と水溶性セルロース誘導体を含有する粉体状組成物が挙げられる。ここでセメント組成物には、通常の建設用に使用されるセメント組成物の他、歯科用等のセメント組成物が含まれる。

【0014】
前記(2)の粉体状組成物においては、α-トリカルシウムジホスフェート(α-TDP)、カルシウムモノハイドロゲンホスフェート(DCPA)及びテトラカルシウムジホスフェート(TTCP)から選ばれる2種以上のリン酸カルシウム化合物を使用する必要がある。これらのうちの1種だけを用いても水和反応により容易に硬化させることはできない。より好ましい組み合わせは、α-TCPとDCPA、α-TCPとTTCP、又はα-TCPとDCPAとTTCPであり、α-TCPとDCPAとTTCPの3種の組み合わせ(α-DTC)が最も好ましい。これらの2種又は3種のリン酸カルシウム化合物の使用モル比は、α-TCP 1モルに対し、DCPAが0.5~2モル、TTCPが0.5~2モルであるのが好ましい。

【0015】
(2)の粉体状組成物に用いられる水溶性セルロース誘導体は、前記リン酸カルシウム化合物と水の混合物に対して適度な粘性を与え、リン酸カルシウム化合物の流出を防止し、所望の形状にするうえで重要である。水溶性セルロース誘導体としては、水溶性であり、かつ増粘性を有するセルロース誘導体であればよく、例えばセルロースエーテルが挙げられる。セルロースエーテルの例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース等が挙げられる。このうち、ヒドロキシアルキルセルロースが好ましく、特にヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。水溶性セルロース誘導体の使用量は、前記リン酸カルシウム化合物1質量部に対し、0.001~0.50質量部、さらに0.005~0.50質量部が好ましい。

【0016】
水硬性粉体状組成物の水和反応は、水硬性材料(セメント組成物の場合はセメント、前記(2)の組成物の場合はリン酸カルシウム化合物)1質量部に対して、0.001~0.1質量部の水を加えて、養生すればよい。ここで養生条件は、所望の硬化時間により相違し、例えば30~40℃、24時間程度行えばよい。

【0017】
本発明のシェル状顆粒の形状は、前記のように内部に水硬性粉体状組成物が含まれ、外殻が当該組成物の硬化体で形成されている限り、限定されず、球状、ラグビーボール状、立方体、直方体、多面体等のいずれでもよく、大きさも用途に応じて粒径50μmぐらいから数mまで可能である。骨再生材料等の生体用充填材の場合には粒径50μm~1cmまでが好ましい。顆粒における外殻と内部粉体との質量比も特に制限されないが、強度の点から外殻:内部粉体=1:0.2~0.2:1が好ましい。また、本発明のシェル状顆粒の凝集体は、シェル状顆粒が凝集した形態であればよいが、シェル状顆粒がその形態を保持したまま凝集しているのが好ましい。例えば球状のシェル状顆粒が4個凝集した正四面体構造にした場合、その四面体が集合することで機械的嵌合状態を形成し、強固になるため特に好ましい(図1)。

【0018】
本発明のシェル状顆粒又はその凝集体は、水和反応を利用した三次元形状造形物製造法により製造するのが好ましい。より詳細には、三次元プリンターのステージ上に水硬性粉体状組成物による粉体層を形成し、所定部位に三次元プリンターヘッドから印刷するごとく水を噴射供給してすることによって水硬性粉体状組成物に所定形状の硬化層を形成し、その硬化層の上に新たな水硬性粉体状組成物の層を形成して、再びその所定部位に水を噴射して硬化層を形成する操作を繰り返しコンピュータ制御で行い硬化層を積層することで、三次元形状を形成する方法により製造するのが好ましい。この三次元形状造形物製造法における、各粉体層に水を供給する所定部位及び所定形状の硬化層は、例えば特許第2620353号、特開2002-115004号公報記載のように、三次元CADモデルデータを用いたコンピュータ制御により行われる。

【0019】
本発明のシェル状顆粒又はその凝集体は、適度な強度を有し、かつ外圧により顆粒が破壊された場合においては、流出した水硬性粉体状組成物が流出部位に存在する水により硬化するため自己修復能を有する(図2)。また、徐々に内部の粉体に水が供給されることにより、全体が硬化する性質を有する。従って、建築および土木用材料、歯科用充填材の他、再生医療用充填材、特に骨再生用充填材として有用である。

【0020】
本発明のシェル状顆粒又はその凝集体を、骨欠損部、歯根部等に充填すると、顆粒状又はその凝集体であるため周囲組織との結合性が高く、かつ骨の再生効率が良好である。また、充填部位で徐々に水分がシェル状顆粒内部に供給される結果、全体が硬化する。また、充填時等に顆粒が破壊された場合、流出した粉体状組成物がその場で硬化する。
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
実施例1
(顆粒の製造)
三次元CADモデルデータを用いたコンピュータ制御により、球状のシェル状顆粒が4個結合した正四面体凝集体を製造した。
すなわち、三次元プリンターのステージ上にα-DTCに置き、所定部位に三次元プリンターヘッドから印刷するごとく水を噴射供給することによってα-DTCに所定形状の硬化層を形成し、その硬化層の上に新たなα-DTCの層を形成して、再びその所定部位に水を噴射して硬化層を形成する操作を繰り返しコンピュータ制御で行い、三次元形状を形成した。その結果、図3及び4に示す正四面体構造のシェル状顆粒凝集体を製造した。図3及び4においては、顆粒の一部を切断して内部がみえるようにしたものである。
【実施例】
【0023】
実施例2
顆粒に外圧をかけると、図2に示すように、外殻が破損し、内部のα-DTCが流出し、そこに水が存在した場合は流出したα-DTCが硬化した。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のシェル状顆粒又はその凝集体は、建築,土木用材料、歯科用充填材、再生医療用充填材、特に材料としてヒドロキシアパタイトを用いた場合には、骨再生用充填材として有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3