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明細書 :蛍光体製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6008073号 (P6008073)
公開番号 特開2013-006920 (P2013-006920A)
登録日 平成28年9月23日(2016.9.23)
発行日 平成28年10月19日(2016.10.19)
公開日 平成25年1月10日(2013.1.10)
発明の名称または考案の名称 蛍光体製造方法
国際特許分類 C09K  11/59        (2006.01)
C09K  11/08        (2006.01)
FI C09K 11/59 CPR
C09K 11/08 B
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2011-139231 (P2011-139231)
出願日 平成23年6月23日(2011.6.23)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成23年3月29日 社団法人電気化学会発行の「電気化学会 第78回大会 講演要旨集」に発表
審査請求日 平成26年6月20日(2014.6.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】小嶋 芳行
個別代理人の代理人 【識別番号】230100022、【弁護士】、【氏名又は名称】山田 勝重
【識別番号】100084319、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 智重
審査官 【審査官】仁科 努
参考文献・文献 特開昭61-258890(JP,A)
欧州特許出願公開第00200279(EP,A1)
特開2008-024790(JP,A)
特開2010-209210(JP,A)
特開2011-178823(JP,A)
特開2003-342565(JP,A)
特開2000-265167(JP,A)
特開2001-279241(JP,A)
特開平10-226786(JP,A)
特開平06-041528(JP,A)
特開平08-151573(JP,A)
調査した分野 C09K 11/59
特許請求の範囲 【請求項1】
非晶質のケイ酸カルシウムに対し、Tb3+とEu3+を共付活剤として添加し、蛍光体を合成する蛍光体製造方法であって、
Tb/Ca原子比が0を超えて1.0以下の範囲となるようにTb3+を添加し、かつ、Eu/Ca原子比が0.005から0.00005の範囲となるようにEu3+を添加してなる塩化カルシウム混合水溶液を、同濃度のメタケイ酸ナトリウム水溶液に添加することによって、非晶質のケイ酸カルシウムのCaに対してTb3+とEu3+を共付活剤として添加し、蛍光体を合成することを特徴とする蛍光体製造方法。
【請求項2】
塩化テルビウム六水和物水溶液、塩化ユウロピウム六水和物、及び塩化カルシウムをそれぞれ所定量採取して希釈し(Tb/Ca原子比が0を超えて1.0以下、Eu/Ca原子比は0.005~0.00005、(Tb+Eu+Ca)/Si原子比を1.0とする)、その混合水溶液を所定時間撹拌し、
メタケイ酸ナトリウム水溶液を希釈した水溶液を速やかに添加し、混合し、ろ過してEu3+、Tb3+付活ケイ酸カルシウム水和物を合成し、
その後、大気圧下で所定の加熱温度、加熱時間での加熱処理を行ってEu3+、Tb3+共付活ケイ酸カルシウムを得ることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な蛍光体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主付活剤に対し、一種類または複数種類の共付活剤を添加し、目的の蛍光色で発光する蛍光体を製造する方法が知られ、本願発明者においても、ケイ酸カルシウムに対して様々な元素の共付活剤を添加し、目的色の発光が得られる蛍光体の製造を試みているが、例えば、下記特許文献1には、正ケイ酸アルカリ土類化合物に対してテルビウム及びユウロピウムを付活剤として添加し、目的の蛍光色で発光する蛍光体を製造する方法が開示されている。また、下記特許文献2には、ユウロピウムを主付活し、テルビウムと共付活してケイ酸塩蓄光性の蛍光体を製造する方法が開示されている。
【0003】
ただし、こうした従来の蛍光体の製造方法は、いずれも主剤に対する付活剤の添加により、目的の蛍光色で発光することを内容としているにとどまっている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平11-256151号公報
【特許文献2】特開2008-24790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、近紫外線で励起し、緑色から赤色の範囲で任意の色彩に発光させることを可能とする蛍光体、及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る蛍光体製造方法は、非晶質のケイ酸カルシウムに対し、Tb3+とEu3+を共付活剤として添加し、蛍光体を合成する方法であって、Tb/Ca原子比が0を超えて1.0以下の範囲となるようにTb3+を添加し、かつ、Eu/Ca原子比が0.005から0.00005の範囲となるようにEu3+を添加してなる塩化カルシウム混合水溶液を、同濃度のメタケイ酸ナトリウム水溶液に添加することによって、非晶質のケイ酸カルシウムのCaに対してTb3+とEu3+を共付活剤として添加し、蛍光体を合成することを特徴としている。
【0014】
本発明に係る蛍光体製造方法においては、塩化テルビウム六水和物水溶液、塩化ユウロピウム六水和物、及び塩化カルシウムをそれぞれ所定量採取して希釈し(Tb/Ca原子比が0を超えて1.0以下、Eu/Ca原子比は0.005~0.00005、(Tb+Eu+Ca)/Si原子比を1.0とする)、その混合水溶液を所定時間撹拌し、メタケイ酸ナトリウム水溶液を希釈した水溶液を速やかに添加し、混合し、ろ過してEu3+、Tb3+付活ケイ酸カルシウム水和物を合成し、その後、大気圧下で所定の加熱温度、加熱時間での加熱処理を行ってEu3+、Tb3+共付活ケイ酸カルシウムを得ることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、緑色から赤色の範囲で任意の色彩に発光させることが可能な蛍光体及びその製造方法を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明に係る蛍光体の製造方法の第1の実施例のフロー図を示す図である。
【図2】Eu/Ca原子比変化による、Tb3+、Eu3+付活ケイ酸カルシウム蛍光体の励起発光スペクトルを示す図である。
【図3】Tb、Eu付活ケイ酸カルシウム蛍光体のCIE色度図を示す図である。
【図4】Tb、Eu付活ケイ酸カルシウム蛍光体のブラックライト照射による発光状態を示す図である。
【図5】発光波長変化に及ぼす初期Eu/Ca原子比の影響を示す図である。
【図6】Tb、Eu付活ケイ酸カルシウム蛍光体の発光状態を示す図である。
【図7】Tb3+、Eu3+付活炭酸カルシウム蛍光体のTb3+→Eu3+エネルギー伝達モデルを示す図である。
【図8】Tb3+付活ケイ酸カルシウム蛍光体の励起のEu/Ca原子比変化による発光スペクトル(A)と色度図(B)を示す図である。
【図9】Tb3+、Eu3+付活炭酸カルシウム蛍光体加熱物のX線回折図形を示す図である。
【図10】Tb3+、Eu3+付活炭酸カルシウム蛍光体のX線回折図形を示す図である。
【図11】Eu/Ca原子比を変化させたときの発光状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
蛍光体の製造にあたって、共付活剤を添加する場合における共付活剤の構成割合や原子比を変更し、目的の蛍光色で発光する蛍光体の製造を実現した。

【0019】
本願発明に係る蛍光体の製造方法の第1の実施形態は、下記の工程を経て蛍光体を得るものである。
(1)塩化テルビウム六水和物水溶液、塩化ユウロピウム六水和物、及び塩化カルシウムをそれぞれ所定量採取して希釈する。Tb/Ca原子比は0~1.0とする。またEu/Ca原子比は0.005~0.00005とする。
(2)ついで、その混合水溶液を撹拌する。撹拌時間は例えば30分とする。(Tb+Eu+Ca)/Si原子比は、例えば1.0とする。
(3)これに、メタケイ酸ナトリウム水溶液を希釈した水溶液を速やかに添加し、混合(例えば、室温で30分)し、ろ過し、Eu3+、Tb3+付活ケイ酸カルシウム水和物を合成する。
(4)その後、発光強度を高めるために、大気圧下で加熱処理を行い、Eu3+、Tb3+共付活ケイ酸カルシウムを得る。加熱温度は例えば900℃、加熱時間は30分とする。

【0020】
また、本願発明に係る蛍光体の製造方法の第2の実施形態は、下記の工程を経て蛍光体を得るものである。
(1)塩化テルビウム六水和物、塩化ユウロピウム六水和物、及び塩化カルシウムをそれぞれ採取して撹拌する。
(2)ここに炭酸ナトリウムを固体状態で速やかに添加してEu3+、Tb3+共付活炭酸カルシウムを合成する。なお、(Tb+Eu+Ca)/COモル比は1とする。
【実施例1】
【0021】
図1は本願発明に係る蛍光体の製造方法の第1の実施例のフロー図である。この製造方法はEu3+、Tb3+共付活ケイ酸カルシウムを得るもので、その工程を詳述する。
(1)まず、Tb/Ca原子比が0を超えて1.0以下の範囲となるようにTb3+を添加し、かつ、Eu/Ca原子比が0.005から0.00005の範囲となるようにEu3+を添加し、0.062mol/dmの塩化テルビウム・塩化ユウロピウム・塩化カルシウム混合水溶液を調製し、その後30分の撹拌を行う(ステップ1:S1)。
(2)この混合水溶液を、同濃度のメタケイ酸ナトリウム水溶液に添加する(ステップ2:S2)。このときの(Tb+Ca)/Si原子比は例えば1.0とする。
(3)その後、室温で30分間にわたり混合して反応させた後(ステップ3:S3)、ろ過を行い(ステップ4:S4)、Tb3+付活ケイ酸カルシウム水和物蛍光体を得る(ステップ5:S5)。
(4)その後、さらに発光強度を高くするために、水分を含んだ状態で700℃~1000℃(好ましくは、例えば900℃)、10~60分(好ましくは、例えば30分)にわたって加熱を行い(ステップ6:S6)、Tb3+付活非晶質ケイ酸カルシウム蛍光体を得る。
(5)得られた試料のキャラクタリゼーションはX線回折、熱分析、誘導結合プラズマ発光分光分析、及びマイクロスコープを用いて行い、蛍光特性については分光蛍光光度計を用いて分析した。
その結果を以下に説明する。
【実施例1】
【0022】
図2は、Eu/Ca原子比変化による、Tb3+、Eu3+付活ケイ酸カルシウム蛍光体の励起発光スペクトルを示す図である。
Tb/Ca原子比が0.5、加熱温度900℃、加熱時間30分で、加熱して得たTb3+付活非晶質ケイ酸カルシウム蛍光体の励起及び発光スペクトルを示す。図示のように、発光スペクトルを見ると、543nmにTb3+イオンの特徴的な遷移に起因する発光ピークが観察される。これにより、蛍光体が緑色発光しているのが観察されることになる。

【実施例1】
【0023】
また、励起波長を見ると、紫外線領域である波長400nm以下の領域の379nmにおいて強い励起ピークがあることが確認されるが、これはTb+付活蛍光体に見られる特徴である。すなわち、Eu3+単独よりTb3+との共付活にすることにより発光強度が高まっている。一般的に、テルビウムを付活した場合の近紫外領域での励起波長は、紫外線領域の6分の1以下と非常に弱いものであったが、本実施例に係る蛍光体では、その3分の1まで発光強度が増大している。これは、層間構造内にTb3+イオンが存在しているためと考えられる。
【実施例1】
【0024】
以上のように、本実施例の蛍光体の近紫外線領域での最大励起波長は379nm、また最大発光波長は543nmとなった。

【実施例1】
【0025】
図3は、Tb、Eu付活ケイ酸カルシウム蛍光体のCIE色度図、図4は、各Tb、Eu付活ケイ酸カルシウム蛍光体のブラックライト照射による発光写真である。都合上、図4はグレースケールとしてあるが、図4の各発光状態に付した数値が、図3のCIE色度図に付したEu/Ca原子比の数値と対応している。なお図4については、参考写真1(図4のカラー写真)を参照されたい。また図5は、発光波長変化に及ぼす初期Eu/Ca原子比の影響を示す図、図6はEu/Ca原子比を変化させたときの発光写真である。この図6もグレースケールとしてあるが、各発光状態に付した数値が、図3のCIE色度図に付したEu/Ca原子比の数値と対応している。図6については、参考写真2(図6のカラー写真)を参照されたい。
【実施例1】
【0026】
図7は、Tb3+、Eu3+共付活ケイ酸カルシウム蛍光体のTb3+→Eu3+エネルギー伝達モデルを示す。すなわち、基底状態にあるTb3+、Eu3+共付活ケイ酸カルシウム蛍光体に近紫外光(波長379nm)を照射すると、Tb3+が励起されて高い準位となり、ついでTb3+からEu3+へのエネルギー伝達が生じ、Eu3+も励起状態となる。Tb3+、Eu3+がそれぞれ基底状態に戻るとき発光する。
【実施例2】
【0027】
図8は、Tb3+付活炭酸カルシウム蛍光体の励起のEu/Ca原子比変化による発光スペクトル(A)と色度図(B)を示す図である。Tb/Ca原子比は0.5であり、Eu/Ca原子比を変化させている。
【実施例2】
【0028】
図8(A)に示す発光スペクトルを見ると、544nmにTb3+イオンの特徴的な遷移に起因する発光ピークが観察される。これは、蛍光体が緑色発光していることが観察されることを意味する。また、励起波長を見ると、紫外線領域に強い励起ピークがあることが確認できるが、これはTb3+付活蛍光体に見られる特徴である。なお図8(B)中、○は炭酸カルシウム、●はケイ酸カルシウムを示し、図3の色度図と対応させて示してある。また図(B)中に付した数値が、図8(A)中のCIE色度図に付したEu/Ca原子比の数値と対応している。

【実施例2】
【0029】
一般的に、テルビウムを付活した場合の近紫外領域での励起波長は、紫外線領域の6分の1以下と非常に弱いものであったが、本実施例の蛍光体では、その3分の1まで発光強度を増大させることが確認できた。これは既述のように、層間構造内にTb3+イオンが存在しているためと考えられる。
【実施例2】
【0030】
なお図9は、Tb3+、Eu3+付活炭酸カルシウム蛍光体加熱物のX線回折図形を示す図である。横軸は入射角(2θ)、縦軸は回折強度である。Tb/Ca原子比は0.5、Eu/Ca原子比は0.005、(Tb+Ca)/CO原子比は1.0である。図中○はTb、●はCaOを示す。
【実施例2】
【0031】
図10は、Tb3+、Eu3+付活炭酸カルシウム蛍光体のX線回折図形を示す図である。図9と同じく、横軸は入射角(2θ)、縦軸は回折強度である。Tb/Ca原子比は0.05、Eu/Ca原子比は0.005、(Tb+Ca)/CO原子比は1.0である。図中○はTb、●はCaOを示す。図中○はカルサイト、●はバテライトを示す。
【実施例2】
【0032】
図11はEu/Ca原子比を変化させたときの発光写真である。この図11もグレースケールとしてあるが、各発光状態に付した数値が、図8(B)のCIE色度図に付したEu/Ca原子比の数値と対応している。図11については、参考写真3(図11のカラー写真)を参照されたい。
【実施例2】
【0033】
すなわち、上述した実施例1の非晶質ケイ酸カルシウムに対するTb3+とEu3+の添加量による蛍光体の製造におけるケイ酸カルシウムに代えて炭酸カルシウムを用いても実施可能であり、これにより製造される蛍光体においても同じような緑色から赤色の範囲において任意の色彩に発光させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る蛍光体及びその製造方法により、得られる蛍光体は、非晶質ケイ酸カルシウムに対するTb3+とEu3+の添加量あるいは炭酸カルシウムに対するTb3+とEu3+の添加量により、近紫外線の照射に基づき、緑色から赤色の範囲において任意の色彩に発光させることが可能となるため、極めて有用である。よって、EL素子用の蛍光体、バックライト用のパネル、面発光体、照明体、掲示板などの材料として任意の配色による蛍光体を得ることが可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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