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明細書 :コンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-079505 (P2013-079505A)
公開日 平成25年5月2日(2013.5.2)
発明の名称または考案の名称 コンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法
国際特許分類 E04G  23/02        (2006.01)
FI E04G 23/02 B
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2011-219075 (P2011-219075)
出願日 平成23年10月3日(2011.10.3)
発明者または考案者 【氏名】パリーク,サンジェイ
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100087594、【弁理士】、【氏名又は名称】福村 直樹
審査請求 未請求
テーマコード 2E176
Fターム 2E176AA01
2E176BB11
2E176BB14
要約 【課題】 ひび割れの発生した場所を特定することなくコンクリート構造物の表面及び内部に形成されたひび割れの補修を行うことができ、補修されたひび割れの場所、補修状況、及びひび割れの状態を正確に検出することにより、より詳細な調査又はさらなる補修作業の必要性等の判断をすることのできるコンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法を提供すること。
【解決手段】 コンクリート構造物に、開口部を有する中空路を形成しておき、
前記開口部から前記中空路内に蛍光物質を含有する蛍光物質入り補修剤を導入して前記コンクリート構造物に形成されたひび割れに前記蛍光物質入り補修剤を圧入する補修剤導入工程と、
紫外線をコンクリート構造物に照射する紫外線照射工程と、
を有することを特徴とするコンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
コンクリート構造物に、開口部を有する中空路を形成しておき、
前記開口部から前記中空路内に蛍光物質を含有する蛍光物質入り補修剤を導入して前記コンクリート構造物に形成されたひび割れに前記蛍光物質入り補修剤を圧入する補修剤導入工程と、
紫外線をコンクリート構造物に照射する紫外線照射工程と、
を有することを特徴とするコンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法。
【請求項2】
前記蛍光物質は、ブラックライトで紫外線が照射されると、黄色又はピンク色に発光することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法。
【請求項3】
さらに、前記蛍光物質入り補修剤を前記中空路内から排出する補修剤排出工程を有し、前記補修剤導入工程と前記紫外線照射工程と前記補修剤排出工程とを1サイクルとすると、少なくとも2サイクル行い、各サイクルで蛍光色の異なる蛍光物質を使用することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在用いられている大半の構造物にコンクリートが用いられており、適切な配慮の下に工事がなされている。しかし、コンクリートはその材料強度を超える過度の引張応力、セメントの水和反応に伴う温度応力及び収縮に伴う引張応力によりひび割れが発生し、その完全な防止は非常に困難である。ひび割れはコンクリートの強度低下や気密性の低下等の直接的な劣化だけでなく、僅かなひび割れであっても空気中の炭酸ガスや酸性雨、あるいは塩分等が躯体に入り込み易くなることで、中性化や塩害等による劣化を促進し、鉄筋の錆を誘発することで早期劣化の原因となる。ひび割れによるコンクリートの早期劣化は、構造物の耐久性、安全性を低下させ、構造物の耐用年数を短いものにしてしまう。
【0003】
そのため、コンクリート構造物に対して定期的な検査をしてひび割れを補修する必要がある。ひび割れ検査としては、コンクリート構造物の表面に現れているひび割れを目視により確認し、そのひび割れをコンクリート構造物の外部から直接に補修する方法がある。しかし、このような方法によるとコンクリート構造物の内部に発生しているひび割れを検出して補修することができない。また、ひび割れ検査のほとんどが人の手に頼っているのが現状であり、また検査は目視に頼るものが多く、検査の信頼性は確実とはいえない。また、核廃棄物処理施設や原子力発電所の壁面等は、施設の使用期間中には補修作業はおろか検査すらできない場合がある。
【0004】
さらに、検出されたひび割れの補修作業を行った後に、補修作業が確実に行なわれたかどうかを確認する検査も目視に頼るものが多く、例えば補修剤が無色透明である場合には、補修箇所を確認するのは困難である。着色された補修剤を使用する方法も考えられるが、美観を損なってしまうので建築物の壁面のひび割れを補修する場合等にはこの方法は望ましくない。そこで、美観を損なうことなく補修作業が確実に行なわれていることを容易に確認できる方法が望まれていた。
【0005】
特許文献1には、所定の色を発光する蛍光物質を含有する補修材を用いた補修箇所識別方法が記載されており、異なる色を発光する発光物質をそれぞれ第1の補修箇所と第2の補修箇所とに注入することにより、補修時期、ひび割れの程度(幅や密度等)又は、ひび割れの方向等を識別することができ、ひび割れの進展や補修の有効性を正当に評価することができると記載されている。この補修方法では、ひび割れ検査により発見されたひび割れ箇所について、コンクリートの表面から注入器を用いた自動式低圧低速注入工法によって補修作業を行っている。
【0006】
特許文献2には、蛍光体と、シリコーン系オリゴマー又はシリコーン系オリゴマーとオリゴエステルアクリレートとの混合物と、重合開始剤とを含む重合性蛍光シール剤について記載されており、この重合性蛍光シール剤を建造物の表面に供給し、重力によって重合性蛍光シール剤を間隙箇所に流入させる建造物の間隙充填法が記載されている。この方法によると、建造物の間隙箇所の補修及び補修確認を一度に短時間で行い、風水進入箇所の補修作業を改善することができると記載されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2000-145158号公報
【特許文献2】特開2005-68877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、ひび割れの発生した場所を特定することなくコンクリート構造物の表面及び内部に形成されたひび割れの補修を行うことができ、補修されたひび割れの場所、補修状況、及びひび割れの状態を正確に検出することにより、より詳細な調査又はさらなる補修作業の必要性等の判断をすることのできるコンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、
(1)コンクリート構造物に、開口部を有する中空路を形成しておき、
前記開口部から前記中空路内に蛍光物質を含有する蛍光物質入り補修剤を導入して前記コンクリート構造物に形成されたひび割れに前記蛍光物質入り補修剤を圧入する補修剤導入工程と、
紫外線をコンクリート構造物に照射する紫外線照射工程と、
を有することを特徴とするコンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法であり、
【0010】
前記(1)の好ましい態様は、
(2) 前記蛍光物質は、ブラックライトで紫外線が照射されると、黄色又はピンク色に発光し、
(3) さらに、前記蛍光物質入り補修剤を前記中空路内から排出する補修剤排出工程を有し、前記補修剤導入工程と前記紫外線照射工程と前記補修剤排出工程とを1サイクルとすると、少なくとも2サイクル行い、各サイクルで蛍光色の異なる蛍光物質を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明のコンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法によると、従来はコンクリート構造物の内部からひび割れに圧入された補修剤がコンクリート構造物の表面から漏出したとしても、無色透明の補修剤では、ひび割れに充填され、又はひび割れから漏出した補修剤を目視で確認するのは容易でなかったところ、本願発明の補修方法では、蛍光物質入り補修剤を使用するので、紫外線を照射することによりコンクリート構造物の表面にある蛍光物質入り補修剤を容易に識別することができ、それによって補修されたひび割れの場所、また補修状況、及びひび割れの大きさや進展方向等の状態を正確に知ることができる。その結果、致命的な欠陥になり得るひび割れを容易に発見することができる。補修されたひび割れの場所、補修状況、及びひび割れの大きさや進展方向等の状態を正確に把握することは、より詳細な調査又はさらなる補修作業の必要性等の判断をするのに役立つ。
【0012】
さらに、この発明のコンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法によると、補修が確実に行われたか否かを容易に判断することができる。したがって、ひび割れの有無の検査及び補修作業が確実に行われたか否かを判断するための検査に要する手間とコストを削減することができる。
【0013】
この発明のコンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法は、コンクリート構造物に中空路を形成しておくので、ひび割れ発生場所から離れた場所にある中空路の開口部から蛍光物質入り補修剤を導入してひび割れに圧入することができる。また、この補修方法は、蛍光物質入り補修剤を使用するので、コンクリート構造物の表面から漏出した蛍光物質入り補修剤をある程度はなれた場所からでも容易に識別することができる。したがって、ひび割れ検査、補修作業及び補修状況の確認が困難な箇所、例えば核廃棄物処理施設や原子力発電所の壁面等の箇所でも、離れた場所からひび割れ検査、補修作業及び補修状況の確認をすることができる。
【0014】
この発明のコンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法において、中空路内に導入された蛍光物質入り補修剤がコンクリート構造物に形成されたひび割れに圧入された後に、蛍光物質入り補修剤を中空路内から排出すると、中空路が閉塞されることがなく、複数回の補修が可能である。補修する時期毎に発光色の異なる蛍光物質を含有する蛍光物質入り補修剤を中空路に導入すると、補修した時期によってひび割れに充填された蛍光物質入り補修剤の発光色が異なるので、コンクリート構造物の表面に現れたひび割れ状況について、時期毎に区別して把握することができる。
【0015】
この発明のコンクリート構造物の補修方法において、コンクリート構造物にコンクリート構造物を形成する材料が露出する内壁面と前記内壁面の表面に表面処理により形成される、蛍光物質入り補修剤と水分とを遮断する水分遮断領域とを備えた中空路を形成しておくと、蛍光物質入り補修剤を中空路内に長期間にわたって保持しても硬化しない。したがって、コンクリート構造物にひび割れが発生する前に中空路に蛍光物質入り補修剤を導入しておけば、ひび割れ検査をすることなくひび割れが発生したときに中空路内の蛍光物質入り補修剤が自動的にひび割れに圧入されるので、コンクリート構造物に発生したひび割れが自己修復される。また、自己修復された際には蛍光物質入り補修剤がひび割れに充填されるので、コンクリート構造物の表面に紫外線を照射することで、発生したひび割れが補修されていることを容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)はこの発明に係るコンクリート構造物の一例であるコンクリート構造物の断面説明図である。図1(b)は、図1(a)におけるコンクリート構造物をA方向から見た場合の側面図である。
【図2】図2は、中空路の形成方法の一例を説明するための説明図である。
【図3】図3は、コンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法の一例を説明するための説明図である。
【図4】図4は、コンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法の別の一例を説明するための説明図であり、図4(a)はコンクリート構造物の断面説明図であり、図4(b)は、図4(a)におけるコンクリート構造物をB方向から見た場合の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、この発明に係るコンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法について図面を参照しつつ説明する。この発明のひび割れ補修部の検知方法は、予めコンクリート構造物に、開口部を有する中空路を形成しておく。

【0018】
図1(a)はこの発明に係るコンクリート構造物の一例であるコンクリート構造物の断面説明図である。図1(b)は、図1(a)におけるコンクリート構造物をA方向から見た場合の側面図である。

【0019】
この実施形態のコンクリート構造物1は、第1開口部3aと第2開口部3bと、前記コンクリート構造物1を形成する材料が露出する内壁面4と、前記内壁面4の表面に表面処理により形成される、前記蛍光物質入り補修剤と水分とを遮断する水分遮断領域5とを備える中空路2とが形成されている。

【0020】
前記中空路2が形成される構造物としては、RCラーメン構造の建築物における梁、柱及び壁や橋、ダム等の土木構造物等におけるひび割れが発生すると想定される構造物を挙げることができる。特に、前記中空路2は、ひび割れ検査を行い、ひび割れの補修を行うのが困難な条件下にある核廃棄物処理施設や原子力発電所等のコンクリートにより形成される梁、柱及び壁等に好適に形成される。

【0021】
この実施形態のコンクリート構造物1に形成される中空路2は、コンクリート構造物1の一方の外表面に第1開口部3aを有し、コンクリート構造物1を挟んでこの開口部3aとは反対側の外表面に第2開口部3bを有する。中空路2は、後述する蛍光物質入り補修剤が導入される開口部を少なくとも1つ有していればよく、開口部から導入した蛍光物質入り補修剤を排出することができる限り開口部の数は特に限定されず、一つの開口部から蛍光物質入り補修剤を導入し、同じ開口部から蛍光物質入り補修剤を排出してもよいし、一つ以上の開口部から蛍光物質入り補修剤を導入し、1つ以上の開口部から蛍光物質入り補修剤を排出してもよい。

【0022】
この実施形態の中空路2は、中空円柱形状を有しており、コンクリート構造物1の軸線より一方の面方向に偏心して第1開口部3aから第2開口部3bまで直線状に配置されている。中空路が形成される場所としては、ひび割れが発生することが想定される場所であり、中空路を形成することによりコンクリート構造物に対して要求される強度等に不具合を生じない場所である限り特に限定されず、例えば、RCラーメン構造の建築物の梁においては、梁の下方面とこの下方面に最も近くに配置されている主筋との間に配置されるのが好ましい。

【0023】
中空路2は、図1に示されるように1つの直線状の中空路2が配置されてもよいし、複数の中空路が平行に又はランダムに配置されてもよいし、平行に配置された複数の平行配置中空路から所定間隔離れて前記平行配置中空路に直交するようにさらに平行配置中空路が配置され、上面から見ると格子状となる配置でもよい。さらに、この実施形態の中空路2は、直線状であるが、例えば1つ又は複数の波状のパイプを並べた配置であってもよいし、1つ又は複数の樹枝状に枝分かれしたパイプを並べた配置等種々の形状及び配置を採用することができる。上記いずれの形状及び配置であっても、コンクリート構造物に形成されるひび割れに蛍光物質入り補修剤が注入されて、十分に補修ができるように配置される。

【0024】
図1(b)に示すように、この実施形態の中空路2は、中空路2が延びる方向に直交する断面形状が円形であるが、蛍光物質入り補修剤を導入及び排出でき、コンクリート構造物に発生したひび割れに蛍光物質入り補修剤を圧入することができる限り特に限定されず、多角形、不定形、雲形等の種々の形状を採ることができる。また、この断面の直径は、コンクリート構造物1の種類、大きさ及び中空路2の配置等によって異なり、例えば6mm以上15mm以下である。

【0025】
この実施形態の中空路2の内壁面4は、コンクリート構造物1を形成する材料が露出している。コンクリート構造物1を形成する材料は、少なくとも細骨材と粗骨材とセメントと水とにより構成されるコンクリート原料を混合し、時間の経過と共にコンクリート原料におけるセメントと水とが水和することにより得られる、少なくとも細骨材と粗骨材とセメント水和物とにより構成されるコンクリート材料である。

【0026】
コンクリート原料として使用される細骨材、粗骨材、セメント、及び水の種類は、特に限定されず、コンクリート構造物を形成するのに使用される公知の原料を使用することができる。また、コンクリート原料に含まれる原料として、細骨材、粗骨材、セメント、及び水以外に、コンクリート構造物を形成するのに使用される公知の化学混和剤、流動化剤、防錆剤、凝結遅延剤等の混和剤及びフライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフューム等の混和材等を含有してもよい。

【0027】
前記第1開口部3a又は前記第2開口部3bから導入される蛍光物質入り補修剤に含有される補修剤は、コンクリート構造物のひび割れに充填されて硬化し、ひび割れによるコンクリート構造物の耐力低下を防止する物質であり、例えば、常温で硬化する一液湿気硬化型エポキシ樹脂等の空気中の湿気で硬化する一液湿気硬化型樹脂を挙げることができる。前記エポキシ樹脂がひび割れに圧入されるとコンクリート材料に含まれる水酸化カルシウム等の水和物の水分と反応して硬化する。その結果、コンクリート構造物の強度の低下及び中性化等を防止して、コンクリート構造物の耐力を維持することができる。

【0028】
蛍光物質入り補修剤に含有される蛍光物質は、励起光を受けて発光する物質であり、蛍光物質としては、例えば紫外線を照射した場合に、コンクリートの色に対して識別し易い色で発光する蛍光物質が好ましく、例えば黄色やピンク色の蛍光色で発光する蛍光物質が好ましい。蛍光物質は有機物であっても無機物であってもよく、有機物の蛍光物質としては、ローダミンB、フルオレセイン、エオシン等を挙げることができる。無機物の蛍光物質としては、例えば、Eu、Ce、La、Y、Pb等をドープした酸化物、炭酸塩、フッ化物、塩化物、酸窒化物等を挙げることができる。入手可能な蛍光物質として、例えば、株式会社エポック製 I-02-045LI 蛍光塗料 ライム、I-02-045Y 蛍光顔料 イエロー等を挙げることができる。なお、黄色やピンク色の蛍光色で発光する蛍光物質は、コンクリートのひび割れを補修した時期が古いほど蛍光色が薄くなるので、蛍光色の濃淡によりコンクリートのひび割れが修復された時期を知ることができる。したがって、黄色やピンク色の蛍光色で発光する蛍光物質入り補修剤を使用すると、コンクリートのひび割れの進行状況を把握し易く、将来的なひび割れの発展状態を予測し易くなる。

【0029】
補修剤に対する蛍光物質の含有量は、紫外線をコンクリート構造物の表面に照射した場合に、発光する蛍光物質入り補修剤を容易に識別することができ、補修されたひび割れの場所、補修状況及びひび割れの状態を正確に検出することができれば良く、その含有量は適宜選択される。

【0030】
蛍光物質入り補修剤は、その粘度が50mPa・s,23℃以上14,000mPa・s,23℃以下であるのが好ましく、50mPa・s,23℃以上2,000mPa・s,23℃以下であるのがより好ましく、50mPa・s,23℃以上250mPa・s,23℃以下であるのが特に好ましい。蛍光物質入り補修剤の粘度が50mPa・s,23℃以上250mPa・s,23℃以下であると、中空路の直径が比較的小さくても、中空路から補修剤を排出し易いので、中空路が閉塞されることなく、繰り返し補修剤を中空路に導入することができる。また、ひび割れ幅が0.1mm程度の小さいひび割れにも補修剤を充填することができるので、ひび割れ検査によって検出され難いひび割れを確実に補修することができる。

【0031】
蛍光物質入り補修剤は、補修剤を製造する工程における所定のタイミングで補修剤が加えられて形成されてもよいし、蛍光物質入り補修剤が中空路に導入される直前に補修剤と蛍光物質とを混合することにより形成されてもよい。

【0032】
図1に示す実施形態のコンクリート構造物1における中空路2は、内壁面4に表面処理により形成される水分遮断領域5を有するが、水分遮断領域がなく、中空路の内壁面にコンクリート構造物を形成する材料が露出していてもよいし、コンクリートを打設する際に埋設したガラス製等のパイプで中空路が形成され、コンクリートの内部に生じた応力により容易に亀裂が入るように形成されていてもよい。

【0033】
前記水分遮断領域5は、後述する表面処理により少なくとも一部の内壁面4に形成されるのが好ましく、内壁面4の全面に形成されるのがより好ましい。水分遮断領域5は、中空路2に導入される蛍光物質入り補修剤とコンクリート材料に含まれるセメント水和物やその他の水分とを遮断して、蛍光物質入り補修剤が硬化するのを妨げる。この実施形態における水分遮断領域5は、所定の厚みを有する層状又は膜状の硬化体の形態を有し、内壁面4の表面に直接に接触している。水分遮断領域5の形態は、層状及び膜状に限定されず、内壁面4の表面から内部に向かって広がる領域として形成される態様、及び内壁面4の表面から内部に向かって広がる領域と内壁面4の表面に層状又は膜状の硬化体とを組合せた態様等を採ることができる。

【0034】
中空路2は、例えば次のようにして形成することができる。図2は、中空路の形成方法の一例を説明するための説明図である。

【0035】
まず、コンクリート構造物を形成するのに使用される型枠にコンクリート原料を打設する際に、所定の位置に所定の直径を有する例えば鋼棒6を配置する(第一工程)。そして、コンクリート原料が硬化した後、例えば普通ポルトランドセメントを使用した場合には打設してから1日以上経過してからこの鋼棒6を引き抜く。鋼棒6が引き抜かれた跡に中空円柱状の中空路2が形成される(第二工程)。鋼棒6は、コンクリート構造物から引き抜き易くするために、コンクリート原料に埋設する前に表面に剥離剤をコーティングしておくのが好ましい。このようにして、2つの開口部3a,3bとコンクリート構造物1を形成する材料が露出する内壁面4とを有する中空路2が形成される。

【0036】
さらに、必要に応じて、内壁面4の表面に蛍光物質入り補修剤と水分とを遮断する水分遮断領域を形成する。その際、以下に説明する第三工程及び第四工程を引き続き行う。上述のようにして形成された中空路2にコンプレッサー等で表面処理剤9を導入して、第1開口部3a及び第2開口部3bをそれぞれ蓋体8a,8bで密閉して、表面処理剤9を中空路2に所定時間保持する(第三工程)。その後、蓋体8a,8bを取り外して、第1開口部3aからコンプレッサー等で空気圧をかけて第2開口部3bより表面処理剤9を排出させる。中空路2から排出されなかった表面処理剤9を乾燥させると、中空路2の内壁面4の表面に水分遮断領域10が形成される(第四工程)。中空路2内に表面処理剤9が保持される時間は、表面処理剤9の種類により異なり、例えば15分以上60分以下である。

【0037】
表面処理剤9の種類は、中空路に導入する蛍光物質入り補修剤とコンクリートに含まれる水分とを遮断する水分遮断領域を形成させることができる限り特に限定されず、常温で硬化する一液湿気硬化型エポキシ樹脂等の空気中の湿気で硬化する一液湿気硬化型樹脂、二液反応型のポリエステル樹脂、二液反応型のポリメタクリレート樹脂(PMMA)、及び表面含浸材等を挙げることができる。表面含浸材としては、シラン系、ケイ酸塩系、有機樹脂系、亜硝酸塩系及びこれらの混合系を挙げることができ、シラン系としては、アルキルアルコキシシラン、アルキルシリコネート等を挙げることができる。これらの中でも、シラン系の表面含浸剤は、中空路の内壁面から含浸されて水分遮断領域が形成されるので、中空路の直径が小さくならず、また中空路内に長時間保持しても硬化せず、低粘度であるので、排出し易く、作業性が良好であるので好ましい。

【0038】
表面処理剤として、例えば、粘度が低く、コンクリート材料に浸透し易い樹脂を使用した場合には、表面処理剤は中空路2のコンクリート材料が露出する内壁面4から浸透し、内壁面4の表面から内部に向かって所定の領域において補修剤と水分とを遮断する機能を有する水分遮断領域10が形成される。粘度が比較的高い場合には、表面処理剤は内壁面4から浸透すると共に、内壁面4の表面に層状又は膜状の硬化膜として形成されるので、硬化膜の表面からコンクリートの内部に向かって所定の深さまでの所定の厚みを有する水分遮断領域10が形成される。図2(d)においては、内壁面4の表面から内部に向かって形成された水分遮断領域10の例が示されている。

【0039】
表面処理剤は、その粘度が0.5mPa・s,23℃以上10,000mPa・s,23℃以下であるのが好ましく、0.5mPa・s,23℃以上2,000mPa・s,23℃以下であるのが特に好ましい。表面処理剤の粘度が前記範囲内であると、中空路2の内壁面の全面に膜厚の薄い水分遮断領域を形成し易い。

【0040】
このようにして、2つの開口部3a,3bとコンクリート構造物1を形成する材料が露出する内壁面4と前記内壁面4の表面に水分遮断領域10とを有する中空路2が形成される。

【0041】
以上において、中空路2が鋼棒6を使用して形成される方法について説明したが、形成方法は鋼棒を使用する方法に限定されず、例えばゴムチューブやガラス管を使用する方法等により形成することもできる。

【0042】
ゴムチューブを使用して中空路を形成する方法としては、例えば、コンクリート構造物を形成するのに使用される型枠にコンクリート原料を打設する際に、所定の位置にゴムチューブを配置して、コンクリート原料の重量によりゴムチューブが潰れないようにゴムチューブ内に所定の圧力をかけ、コンクリート原料が硬化した後、例えば普通ポルトランドセメントを使用した場合には打設してから1日以上経過してからゴムチューブを引き抜く方法がある。ゴムチューブを使用すると、曲がった中空路を容易に形成することができるので、例えば、梁と柱とに連通する中空路を形成しやすい。

【0043】
また、ガラス管を使用して中空路を形成する方法としては、例えば、コンクリート構造物を形成するのに使用される型枠にコンクリート原料を打設する際に、所定の位置にガラス管を配置して、そのままコンクリート原料を硬化させて、このガラス管を蛍光物質入り補修剤を導入する中空路とすることができる。

【0044】
上述した中空路の形成方法の中でも表面処理により水分遮断領域を形成するのが好ましい。中空路が水分遮断領域を備えると、蛍光物質入り補修剤が硬化し難くなるので、蛍光物質入り補修剤を長期間にわたって中空路内に収容することができ、ひび割れが発生した場合に自己修復させることができる。また、蛍光物質入り補修剤がひび割れに圧入された後に蛍光物質入り補修剤を中空路から容易に排出することができるので、複数回の補修が可能である。さらに、中空路の内壁面と水分遮断領域とは直接に接触しているので、コンクリート構造物の内部で発生した応力によりひび割れが形成される際に、その応力が水分遮断領域に直接に伝わり、コンクリート構造物と水分遮断領域との間で同時にひび割れが発生する。したがって、中空路内に充填された蛍光物質入り補修剤とセメント水和物等の水分とを遮断しつつ、中空路に充填された蛍光物質入り補修剤を確実にひび割れに圧入できる点で、ガラス管等を埋設することにより形成される中空路よりも好ましい。

【0045】
次に、前述したように中空路を形成しておいたコンクリート構造物に、蛍光物質入り補修剤を導入することによるひび割れ補修部の検知方法の一例を図を参照しつつ説明する。

【0046】
(第一の実施形態)
図3は、コンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法の一例を説明するための説明図である。

【0047】
まず、コンクリート構造物1に第1開口部3a及び第2開口部3bを有する中空路2を形成する。図3(a)に示すコンクリート構造物1は、図1に示すコンクリート構造物1と同じ構造を有するコンクリート構造物1であり、中空路の形成方法として前述した適宜の方法により中空路2を形成することができる。

【0048】
次に、中空路2の第1開口部3aから蛍光物質を含有する蛍光物質入り補修剤11を例えばコンプレッサー13を用いて導入する。

【0049】
蛍光物質入り補修剤11を中空路2に導入する時期については、コンクリート構造物1の表面にひび割れが発見された後でも良いし、或いはコンクリート構造物1にひび割れが発生すると想定される時期に、例えば5年毎に定期的にひび割れ検査をすることなく導入することにより、ひび割れの有無の確認と同時に補修を行うようにしても良い。いずれにしてもひび割れ箇所を正確に調べるためのひび割れ検査をする必要がないので、ひび割れ箇所を特定した後にそのひび割れを修復するという従来の補修方法に比べて、この補修検知方法はひび割れ検査に要する手間とコストを削減することができる。

【0050】
蛍光物質入り補修剤11を中空路2に導入するときには、第2開口部3bは栓体12により密閉されている。中空路2内はコンプレッサー13により0.05Pa以上0.2Pa以下に保持されたまま、例えば1時間以上6時間以下の期間にわたって蛍光物質入り補修剤11が収容される。蛍光物質入り補修剤11が所定の圧力で所定期間にわたって中空路2内に保持されると、コンクリート構造物1にひび割れ14が形成されているときには、ひび割れ14に蛍光物質入り補修剤11が圧入される(第I工程)。

【0051】
次いで、コンクリート構造物1の表面に紫外線を照射して、蛍光物質入り補修剤11が充填されているひび割れ補修部の有無を調べる。蛍光物質入り補修剤11に紫外線が照射されると、蛍光物質が発光することからひび割れに充填され又はひび割れから漏出した蛍光物質入り補修剤11を容易に識別することができるので、目視では検出し難いひび割れを容易に検出することができる。またある程度離れた場所からでもひび割れを検出することができる。さらに、コンクリート構造物1の表面を観察することにより、ひび割れの補修が確実に行われたか否かを判断し、またひび割れの大きさ及び進展方向等の状態を正確に把握することができるので、そのひび割れの状況によってはより詳細な調査又はさらなる補修作業の必要性等を判断することができる(第II工程)。

【0052】
コンクリート構造物1の表面に照射される紫外線は、例えば波長400nm以上の可視光線をカットした光を照射することのできるブラックライト等を使用して照射することができる。

【0053】
次いで、蛍光物質入り補修剤11を中空路2に導入してから所定期間経過後に栓体12を取り外し、コンプレッサー13等による空気圧で蛍光物質入り補修剤11を第2開口部3bから排出する(第III工程)。蛍光物質入り補修剤11を中空路2から排出する時期に関しては、コンクリート構造物1の表面にブラックライト等で紫外線を照射して、コンクリート構造物1の表面を観察し、ひび割れ14の状態及び補修状況等を確認した後に排出してもよいし、紫外線を照射する前に排出しても良い。この実施の形態では、中空路2が水分遮断領域5を有しているので、長期間に渡って中空路内に蛍光物質入り補修剤11が充填されていても、完全に硬化することがない。したがって、中空路2内における蛍光物質入り補修剤11の充填期間にかかわらず中空路2内に存在する蛍光物質入り補修剤11のほとんどが排出され、中空路2は閉塞されない。なお、中空路2が水分遮断領域5を有していない場合には、コンクリート構造物1の表面に紫外線を照射してひび割れ14の状態及び補修状況等を確認した後に、又は紫外線を照射する前に、速やかに蛍光物質入り補修剤11を排出することにより、中空路2を閉塞しないようにすることができる。

【0054】
前記ひび割れ補修部の検知方法によると、補修作業を終えた後にも中空路2は閉塞していないので、さらに所定期間経過した後にコンクリート構造物1にひび割れ14が発生した際に、又はひび割れ14が発生すると想定される時期に、再度蛍光物質入り補修剤11を中空路2に導入してひび割れ14に圧入することにより、ひび割れ14を補修することができる。すなわち、第I工程、第II工程、第III工程を1サイクルとすると、さらに1サイクル以上行うことで繰り返しひび割れ14を補修することができる。

【0055】
また、各サイクル毎にすなわち補修する時期毎に発光色の異なる蛍光物質を含有する蛍光物質入り補修剤11を中空路2に導入すれば、補修した時期によってひび割れ14に充填された蛍光物質入り補修剤の発光色が異なるので、コンクリート構造物1の表面に現れたひび割れ状況について、時期毎に区別して把握することができる。

【0056】
(第二の実施形態)
図4は、コンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法の別の例を説明するための説明図である。図4(a)は、コンクリート構造物の断面説明図であり、図4(b)は図4(a)に示したコンクリート構造物をB方向から見た場合の側面図である。

【0057】
まず、コンクリート構造物31に開口部を有する中空路を形成する。図4(a)に示すコンクリート構造物31は、第1中空路15、第2中空路16、第3中空路17、及び第4中空路18という複数の中空路が互いに交じり合うことなく等間隔に平行に配置されていること以外は、図1に示すコンクリート構造物1と同様の構造を有している。これらの中空路15~18は、中空路の形成方法として前述した適宜の形成方法により形成することができる。

【0058】
次に、中空路15~18の第1開口部19a~22aから蛍光物質入り補修剤又は蛍光物質を含有しない補修剤を例えばコンプレッサーを用いて導入する。

【0059】
補修剤は、2種類の粘度の異なる第1補修剤と第2補修剤とを使用し、この2種類の第1補修剤と第2補修剤とをコンクリート構造物31に配列されている中空路15~18に同じ粘度の補修剤が隣同士にならないように交互に導入し、例えば、第1中空路15及び第3中空路には粘度の低い第1補修剤23.24を、第2中空路16及び第4中空路18には第1補修剤よりも粘度の高い第2補修剤25を導入する。低粘度の補修剤としては、例えば50mPa・s,23℃以上250mPa・s,23℃以下の補修剤を、高粘度の補修剤としては、例えば1500mPa・s,23℃以上14000mPa・s,23℃以下の補修剤を挙げることができる。粘度の低い補修剤はひび割れ幅の小さいひび割れに充填され易く、補修剤の粘度が高くなるほどひび割れ幅の大きいひび割れに充填され易くなると考えられる。したがって、本実施形態によると粘度の異なる複数の補修剤が経路の異なる複数の中空路に導入されるので、ひび割れ幅の大小によらず、あらゆるひび割れに補修剤を隅々まで圧入することができる。その結果、コンクリート構造物の内部及び表面のひび割れを確実に補修することができる。なお、この実施形態においては、2種類の粘度の異なる補修剤を用いたが、3種類以上の粘度の異なる補修剤を使用することもできる。

【0060】
また、この実施形態においては、4つの中空路15~18のうちの第3中空路17のみに蛍光物質入り補修剤24を導入する。第3中空路17に導入される補修剤24は粘度の比較的低い第1補修剤であるので、ひび割れが発生した場合にはコンクリート構造物31の表面まで達する小さなひび割れに圧入され易い。複数の中空路の少なくとも1つの中空路に蛍光物質入り補修剤が導入され、コンクリート構造物31の表面に紫外線を照射して、蛍光物質入り補修剤がコンクリート構造物の表面のひび割れに充填され又はひび割れから漏出していることを確認できれば、別の経路に導入した補修剤23,25もひび割れに充填されたと推定することができる。したがって、ひび割れが発生し、そのひび割れに補修剤が充填されたことを検知するのに、必ずしもすべての中空路15~18に蛍光物質入り補修剤を導入する必要はなく、一部の中空路に蛍光物質入り補修剤を導入することで十分である場合もある。

【0061】
補修剤23~25を中空路15~18に導入する時期については、前述したように特に限定されないが、例えばコンクリート原料を打設して硬化した後であってひび割れが発生する前に補修剤23~25を圧入しておけば、ひび割れが発生したときに中空路15~18内にある補修剤23~25が自動的にひび割れに圧入されるので、コンクリート構造物31に発生したひび割れが自己修復される。ひび割れが発生し、ひび割れが自己修復されたことは、コンクリート構造物31の表面に紫外線を照射することにより、ひび割れに充填され又はひび割れから漏出している蛍光物質入り補修剤24が検出されるか否かにより判断することができる。

【0062】
補修剤23~25を排出する時期については、第一の実施形態において述べたように適宜に選択され、コンクリート構造物31の表面にブラックライト等の紫外線を照射して、コンクリート構造物31の表面を観察し、ひび割れの状態及び補修状況等を確認した後に、第一の実施形態と同様にして補修剤23~25を排出する。

【0063】
この発明に係るコンクリート構造物のひび割れ補修部の検知方法は、前述した実施形態に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1,31 コンクリート構造物
2,15,16,17,18 中空路
3a,3b,19a,19b,20a,21a,22a 開口部
4 内壁面
5,10 水分遮断領域
6 鋼棒
8a,8b 蓋体
9 表面処理剤
11 蛍光物質入り補修剤
12 栓体
13 シリンダー
14 ひび割れ
23 第1補修剤
24 蛍光物質入り補修剤
25 第2補修剤
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3