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明細書 :球形ホイール・モータ及びシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5825029号 (P5825029)
公開番号 特開2013-085371 (P2013-085371A)
登録日 平成27年10月23日(2015.10.23)
発行日 平成27年12月2日(2015.12.2)
公開日 平成25年5月9日(2013.5.9)
発明の名称または考案の名称 球形ホイール・モータ及びシステム
国際特許分類 H02N   2/00        (2006.01)
FI H02N 2/00 C
請求項の数または発明の数 5
全頁数 14
出願番号 特願2011-223352 (P2011-223352)
出願日 平成23年10月7日(2011.10.7)
審査請求日 平成26年9月24日(2014.9.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】内山 賢治
【氏名】増田 開
個別代理人の代理人 【識別番号】100110629、【弁理士】、【氏名又は名称】須藤 雄一
【識別番号】100166615、【弁理士】、【氏名又は名称】須藤 大輔
審査官 【審査官】槻木澤 昌司
参考文献・文献 特開2001-211676(JP,A)
米国特許第04727278(US,A)
特開平11-220893(JP,A)
特開2005-224029(JP,A)
特開2009-247211(JP,A)
調査した分野 H02N 2/00
特許請求の範囲 【請求項1】
基端部がベース側に支持され相互に周回方向へ一定間隔で離間設置され先端側の接触駆動部で被動球体を安定に接触保持して3自由度方向に回転駆動可能とする複数の圧電ユニットと、
前記被動球体に前記複数の圧電ユニットの各接触駆動部に対する接触力による摩擦力を付与する保持部と、
を備えた球形ホイール・モータであって、
前記各圧電ユニットは、前記被動球体に対し前記基端部から接触駆動部へ向い傾斜設定されて前記基端部と接触駆動部との各間に各一対の圧電素子を備え、
前記各一対の圧電素子は、前記各圧電ユニットが設置された周回方向に並んで配置され、
前記各一対の圧電素子に、駆動波形の位相をずらして電圧を印加することで前記各圧電ユニットの各接触駆動部における楕円運動が軸まわりの角速度ベクトルを生成し前記被動球体を回転させる、
ことを特徴とする球形ホイール・モータ。
【請求項2】
請求項1記載の球形ホイール・モータであって、
前記圧電ユニットは、前記周回方向へ120°間隔で3組備えられた、
ことを特徴とする球形ホイール・モータ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の球形ホイール・モータであって、
前記圧電ユニットは、前記傾斜により前記接触駆動部の中央を通る中立線が被動球体の中心で交差する、
ことを特徴とする球形ホイール・モータ。
【請求項4】
請求項記載の球形ホイール・モータであって、
前記保持部は、前記中立線上で前記接触駆動部に取り付けられた永久磁石である、
ことを特徴とする球形ホイール・モータ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項記載の球形ホイール・モータを用いた球形ホイール・モータのシステムであって、
センサによる前記被動球体の回転角度の検出値に基づき前記被動球体の回転角速度を制御するために前記印加電圧を制御する制御部、
を備えたことを特徴とする球形ホイール・モータのシステム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星の姿勢制御等に供される球形ホイール・モータ及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より球形ホイール・モータは、人口衛星の姿勢制御、監視カメラ等の指向方向制御、ロボットの関節部などに用いられ得る多自由度回転駆動制御装置として期待されている。
【0003】
かかる多自由度回転駆動制御装置としては、例えば特許文献1に記載された圧電モータがある。
【0004】
この圧電モータは、球状の被駆動体と、略環状の基台と、この基台に設置され、Z軸を中心として周方向に120度で等配された第1~第3の圧電ユニットと、Z軸上に被駆動体と所定の隙間を持って配設された環状磁石とを備えている。
【0005】
環状磁石は、被駆動体を非接触状態で磁気吸引することにより、第1~第3の圧電ユニットに対して接触予圧力を付与している。
【0006】
第1~第3の各圧電ユニットは、それぞれ第1~第3の圧電素子を備えている。第1~第3の圧電素子は、その中立軸線が互いに略直角に交差し、交点を有するように配設されている。水平な第1及び第2の圧電素子はそれらの振動方向が基台に略水平方向となるように設けられている。Z軸方向の第3の圧電素子は、その振動方向が基台に略垂直方向となるように設けられている。被駆動体に接触する駆動部には、第1~第3の圧電素子の各頂部が連結され、第1~第3の圧電素子の合成振動が各駆動部の接触点での摩擦を介して被駆動体に駆動力を伝達する。
【0007】
したがって、第1~第3の各圧電ユニットにより、被駆動体を3自由度で回転駆動させることができる。
【0008】
しかし、かかる従来の構造では、圧電素子が、水平方向と垂直方向とに配置されて駆動部に結合される構造であるため、第1~第3の各圧電ユニットが、各3個の圧電素子を必要とし、部品点数が多く、電圧を印加するシステムも複雑になるという問題があった。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2009-247211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、3自由度の回転駆動をさせるために圧電素子が多く、構造が複雑であった点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一組の圧電ユニットに要する圧電素子の数を減らし、構造を簡単にすることを可能にするために、基端部がベース側に支持され相互に周回方向へ一定間隔で離間設置され先端側の接触駆動部で被動球体を安定に接触保持して3自由度方向に回転駆動可能とする複数の圧電ユニットと、前記被動球体に前記複数の圧電ユニットの各接触駆動部に対する接触力による摩擦力を付与する保持部と、を備えた球形ホイール・モータであって、前記各圧電ユニットは、前記被動球体に対し前記基端部から接触駆動部へ向い傾斜設定されて前記基端部と接触駆動部との各間に各一対の圧電素子を備え、前記各一対の圧電素子は、前記各圧電ユニットが設置された周回方向に並んで配置され、前記各一対の圧電素子に、駆動波形の位相をずらして電圧を印加することで前記各圧電ユニットの各接触駆動部における楕円運動が軸まわりの角速度ベクトルを生成し前記被動球体を回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記構成であるから、駆動波形の位相をずらした電圧の印加により被動球体を3自由度方向に回転駆動させることにより、一組の圧電ユニットに要する圧電素子の数を減らし、構造を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】球形ホイール・モータのシステム概略図である。(実施例1)
【図2】球形ホイール・モータの側面図である。(実施例1)
【図3】球形ホイール・モータの平面図である。(実施例1)
【図4】球形ホイール・モータの斜視図である。(実施例1)
【図5】各ステータの位相差ごとの楕円運動を示すグラフである。(実施例1)
【図6】球形ホイールに働く角速度ベクトルの説明図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0014】
一組の圧電ユニットに要する圧電素子の数を減らし、構造を簡単にすることを可能にするという目的を、並列配置された一対の圧電素子に対し、駆動波形の位相をずらした電圧を印加することにより実現した。
【実施例1】
【0015】
[球形ホイール・モータのシステム]
図1は、球形ホイール・モータのシステム図である。
【実施例1】
【0016】
図1のように、球形ホイール・モータのシステム1は、球形ホイール・モータ3と制御部5とからなっている。
【実施例1】
【0017】
球形ホイール・モータ3は、金属製などのベース7上に圧電ユニット組9により、被動球体として磁性体ボール状の球形ホイール11を支えている。
【実施例1】
【0018】
制御部5は、ベース7上のセンサ13による球形ホイール11の回転角度の検出値に基づき球形ホイール11の回転角速度を制御するために圧電ユニット組9への印加電圧を制御する。このため、制御部5は、センサ13からの信号を受ける角度・角速度検出器15、制御マイコン17、6相スイッチング回路19、増幅器21、23、25,27、29、31を備えている。各増幅器21、23、25,27、29、31は、圧電ユニット組9側に接続され、圧電ユニット組9側に制御した電圧を印加できるようになっている。
【実施例1】
【0019】
すなわち、制御部5が、センサ13による球形ホイール11の回転角度の検出値に基づき球形ホイール11の回転角速度を制御するために印加電圧を制御するようになっている。
[球形ホイール・モータ]
図2は、球形ホイール・モータの側面図、図3は、球形ホイール・モータの平面図、図4は、球形ホイール・モータの斜視図である。
【実施例1】
【0020】
図2~図4のように、球形ホイール・モータ3は、圧電ユニット組9が、3組の圧電ユニット33、35、37を備える他、保持部として3個の永久磁石34、36、38(図3)を備えている。
【実施例1】
【0021】
3組の圧電ユニット33、35、37は、ベース7の平面から見て周回方向へ120°間隔で備えられ、基端部39、41、43がベース7側に支持されている。これらの圧電ユニット33、35、37は、ベース7の平面から見て相互に周回方向へ一定間隔、例えば120°間隔で離間設置され、先端側の接触駆動部としてのステータ45、47、49により球形ホイール11を安定に接触保持して3自由度方向に回転駆動可能とする。
【実施例1】
【0022】
3組の圧電ユニット33、35、37は、同一構造に形成されている。各圧電ユニット33、35、37は、基端部39、41、43とステータ45、47、49との各間にそれぞれ相互に並列配置された各一対の圧電素子33a、33b、35a、35b、37a、37b備えている。各圧電素子33a、33b、35a、35b、37a、37bは、円形板状の圧電素子片を積層して柱状に一体的に構成したものであり、柱状の各端部が基端部39、41、43とステータ45、47、49とに固定されている。
【実施例1】
【0023】
基端部39、41、43は、非磁性体、例えばアルミニウムで形成され、各圧電素子33a、33b、35a、35b、37a、37bの一端部を結合する各一対の台座部39a、41a、43aと、この台座部39a、41a、43aを支え矩形台部39b、41b、43bとからなっている。
【実施例1】
【0024】
ステータ45、47、49は、非磁性体、例えばアルミニウムで台形状に形成され、先端がフラットな駆動面45a、47a、49aとなっている。静止状態では、駆動面45a、47a、49aの各中央点に球形ホイール11が点接触し、3点支持となっている。駆動面45a、47a、49aが面何で楕円運動すると球形ホイール11が相対回転する。
【実施例1】
【0025】
ベース7には、各圧電ユニット33、35、37毎に一対の三角板形状のブラケット51a、51b、53a、53b、55a、55bが立設され、各ブラケット51a、51b、53a、53b、55a、55bの斜面51aa、51ba、53aa、53ba、55aa、55baに矩形台部39b、41b、43bの締結部39ba、41ba、43baをビス57により締結固定している。
【実施例1】
【0026】
斜面51aa、51ba、53aa、53ba、55aa、55baは、ベース7の平面に対して例えば45°の角度を成し、この角度により、各圧電ユニット33、35、37が、球形ホイール11に対し基端部39、41、43からステータ45、47、49へ向かって傾斜設定される。
【実施例1】
【0027】
したがって、圧電ユニット33、35、37は、前記傾斜によりステータ45、47、49の中央を通る中立線が球形ホイール11の中心で交差し、中立線は、球形ホイール11の3軸と共通する。
【実施例1】
【0028】
永久磁石34、36、38は、矩形体形状に形成され、各圧電ユニット33、35、37の中立線上で各ステータ45、47、49内に埋め込むように取り付けられている。すなわち、各ステータ45、47、49の底面側に矩形の挿入穴が形成され、この挿入穴に各永久磁石34、36、38が挿入により各別に着脱自在に取り付けられている。
【実施例1】
【0029】
永久磁石34、36、38は、各ステータ45、47、49に対する接触力を球形ホイール11に付与するものであり、各ステータ45、47、49の駆動面45a、47a、49aに球形ホイール11を引き付けている。引き付けの強さは、印加電圧との関係で予め決定されている。
【実施例1】
【0030】
なお、保持部としての永久磁石34、36、38は、電磁石に代えることもでき、印加電圧及び角度情報の両方を用いて引付力を設定するように構成することができる。また、使用環境や使用状況及び要求精度等により、印加電圧及び角度情報の一方のみを用いて引付力を設定することもできる。 保持部は、ばね部材で球形ホイール11に力を与え、圧電ユニット33、35、37に押し付ける構成することも可能である。
【実施例1】
【0031】
圧電ユニット33、35、37のそれぞれの各圧電素子33a、33b、35a、35b、37a、37bには、図1の増幅器21、23、25、27、29、31が給電可能に接続されている。
[球形ホイールの回転]
制御マイコン17により制御される6相スイッチング回路19から増幅器21、23、25、27、29、31を介して各圧電ユニット33、35、37毎に電圧が印加される。この場合、各圧電素子33a、33b、35a、35b、37a、37bの各一対間で位相をずらした駆動波形の電圧が印加される。
【実施例1】
【0032】
この位相をずらした電圧印加により、各ステータ45、47、49の駆動面45a、47a、49aが面内方向で楕円運動する。
【実施例1】
【0033】
この楕円運動は、図5に示すようなものである。図5の縦軸はZ軸方向、横軸はX軸方向である。図5のように、位相のずれ10°(61)、50°(63)、90°(65)、130°(67)、170°(69)に応じて楕円運動が変化し、位相ずれの増大に応じて長い楕円となる。
【実施例1】
【0034】
このような楕円運動を各ステータ45、47、49の駆動面45a、47a、49aに与え、その合成により、駆動面45a、47a、49aと球形ホイール11との間の摩擦力を介して球形ホイール11を3自由度で回転運動させることができる。
【実施例1】
【0035】
このとき、センサ13により球形ホイール11の回転角度を検出して角度・角速度検出器15へ入力し、制御マイコン17が球形ホイール11の回転角度、角速度を読み込むことで印加電圧を制御し、球形ホイール11を任意の方向へ、任意の角速度で回転させることができる。
[任意の角速度ベクトルωの生成]
図6は、球形ホイール11に働く角速度ベクトルの説明図である。
【実施例1】
【0036】
図6のように,球形ホイール11の原点にO-xyzの直交座標系を定義する。球形ホイール11の角速度ベクトルをωとすると、この角速度ベクトルωは直交座標系の各軸方向成分に分解できる。
【実施例1】
【0037】
式で書くと次のようになる。
【実施例1】
【0038】
ω=ωxi+ωyj+ω
i、 j、 k は、各軸の基底ベクトルである。逆に、各軸方向に別々の回転ベクトルが生じるような力を球形ホイール11に加えれば、そのベクトルの和が球形ホイール11の角速度ベクトルωとなり、その方向・速さで球形ホイール11は回転することになる。
【実施例1】
【0039】
本願発明実施例の球形ホイール・モータ3では,「圧電素子2個一組の駆動部における楕円運動が軸まわりの角速度ベクトルを生成し、この駆動部を3組使うことで任意の方向・速さに球体を回転させる。」、という方式を取っている。
【実施例1】
【0040】
したがって、例えばx軸周りに球形ホイール11を回転させるためには、圧電素子は2個で十分となる。
[実施例の効果]
本願発明の実施例は、基端部39、41、43がベース7側に支持され相互に周回方向へ一定間隔で離間設置され先端側のステータ45、47、49の駆動面45a、47a、49aで球形ホイール11を安定に接触保持して3自由度方向に回転駆動可能とする3組の圧電ユニット33、35、37と、球形ホイール11に各ステータ45、47、49の駆動面45a、47a、49aに対する接触力を付与する永久磁石34、36、38とを備えた球形ホイール・モータ3である。
【実施例1】
【0041】
そして、各圧電ユニット33、35、37は、球形ホイール11に対し基端部39、41、43からステータ45、47、49へ向い傾斜設定されて基端部39、41、43とステータ45、47、49との各間にそれぞれ相互に並列配置された各一対の圧電素子33a、33b、35a、35b、37a、37bを備えている。
【実施例1】
【0042】
各一対の圧電素子33a、33b、35a、35b、37a、37bには、駆動波形の位相をずらして電圧を印加する。
【実施例1】
【0043】
このため、各ステータ45、47、49の駆動面45a、47a、49aに図5のような楕円運動を与えることができ、その合成により球形ホイール11を3自由度で回転させることができる。
【実施例1】
【0044】
しかも、センサ13による球形ホイール11の回転角度の検出値に基づき印加電圧を制御することで球形ホイール11の回転角速度を任意に制御することができる。
【実施例1】
【0045】
したがって、人口衛星の姿勢制御、監視カメラ等の指向方向制御、ロボットの関節部などに用いられ得る多自由度回転駆動制御装置として、大きく期待することができながら、圧電素子33a、33b、35a、35b、37a、37bが少なく、 球形ホイール・モータのシステム及び 球形ホイール・モータの構造が簡単となり、小型、軽量で安価にすることも可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 球形ホイール・モータのシステム
3 球形ホイール・モータ
5 制御部
7 ベース
11 球形ホイール(被動球体)
13 センサ
33、35、37 圧電ユニット
33a、33b、35a、35b、37a、37b 圧電素子
34、36、38 永久磁石(保持部)
45、47、49 ステータ(接触駆動部)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5