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明細書 :水硬性材料の硬化促進剤及び硬化方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5950298号 (P5950298)
公開番号 特開2013-193899 (P2013-193899A)
登録日 平成28年6月17日(2016.6.17)
発行日 平成28年7月13日(2016.7.13)
公開日 平成25年9月30日(2013.9.30)
発明の名称または考案の名称 水硬性材料の硬化促進剤及び硬化方法
国際特許分類 C04B  22/06        (2006.01)
C01B  33/141       (2006.01)
C04B  28/02        (2006.01)
C04B 103/14        (2006.01)
FI C04B 22/06 A
C01B 33/141
C04B 28/02
C04B 103:14
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2012-060774 (P2012-060774)
出願日 平成24年3月16日(2012.3.16)
審査請求日 平成27年3月4日(2015.3.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】露木 尚光
【氏名】小泉 公志郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100087594、【弁理士】、【氏名又は名称】福村 直樹
審査官 【審査官】小川 武
参考文献・文献 特開平06-087638(JP,A)
特開2009-274942(JP,A)
特開2010-235430(JP,A)
特開平07-033497(JP,A)
特開2001-098271(JP,A)
特開平10-231481(JP,A)
特表2003-534227(JP,A)
小泉公志郎,フライアッシュのポゾラン反応におけるケイ酸構造の影響,セメント・コンクリート論文集,2011年,No.65,P.40-45,URL,https://www.jstage.jst.go.jp/article/cement/65/1/65_40/_pdf
調査した分野 C04B 7/00-28/36
C01B 33/141
特許請求の範囲 【請求項1】
ケイ酸をSiO換算で5,000mg/L以上25,000mg/L以下の濃度で含有し、25℃における粘度が高くとも4mPa・sであり、ナトリウムの濃度が高くとも1,000mg/Lであり、単量体及び二量体の形態のケイ酸が全ケイ酸に対して70質量%以上100質量%以下の範囲で含有されるケイ酸水溶液であることを特徴とする、水硬性材料硬化促進剤。
【請求項2】
前記水硬性材料は、セメントである請求項1に記載の水硬性材料硬化促進剤。
【請求項3】
水硬性材料と前記請求項1又は2に記載の水硬性材料硬化促進剤とを混練することを特徴とする、水硬性材料の硬化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、水硬性材料の硬化促進剤及び硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電で石炭を燃焼させた後に発生する副産物として、フライアッシュがある。フライアッシュが混合されたフライアッシュセメントは、流動性が改善し、ポゾラン反応により長期強度が増進し、水和熱が低減すること等から、フライアッシュはセメントの混合材として利用されている。現在、フライアッシュセメント全質量に対するフライアッシュの混合割合は、JIS規格としてA種、B種、C種の3種類が規定されており、最もフライアッシュの混合割合の多いC種であっても、フライアッシュの混合割合は20質量%を超え30質量%以下である。フライアッシュの混合割合が多くなる程、凝結硬化の遅延や初期強度発現の立ち上がりが悪くなることから、使用されているフライアッシュセメントの多くは、フライアッシュの混合割合が5質量%を超え10質量%以下であるA種のフライアッシュセメントである。
【0003】
一方、フライアッシュの発生量は、近年年間1000万トンに達する。また、電力供給源として今後火力発電の割合が増し、さらにフライアッシュの発生量が増加することが予想される。したがって、フライアッシュを埋め立て処分することなく有効利用することが望まれている。
【0004】
フライアッシュセメントにより形成されるコンクリートの凝結時間及び初期強度を、普通ポルトランドセメントにより形成されるコンクリートと同程度にすることができれば、フライアッシュセメントを普通ポルトランドセメントが使用される分野においても使用することができるようになり、フライアッシュセメントの利用分野が広がる。また、フライアッシュの混合割合を増加させても、従来のフライアッシュセメントと同程度の凝結時間及び初期強度を維持することができれば、フライアッシュの一層の有効利用につながる。
【0005】
セメントの凝結・硬化促進剤としては、塩化カルシウム、トリエタノールアミン等が従来から使用されている。しかし、塩化カルシウムの混和によって、コンクリート中の鉄筋が発錆したり、錆の進行が助長されたりする傾向があり、乾燥収縮もやや大きくなるという問題がある(社団法人日本コンクリート工学協会、1989年11月20日 1版7刷発行、コンクリート便覧参照。)。
【0006】
特許文献1には、「懸濁型地盤固結材と溶液型シリカ固結材とを併用する地盤固結工法において、懸濁地盤固結材として、カルシウムアルミネート、またはカルシウムアルミネートとスラグとを主成分とする懸濁型地盤固結材を用いることを特徴とする地盤固結工法。」(特許文献1の請求項3参照。)と記載されている。また、「溶液型シリカ固結材は、水ガラス系注入材でもよいが、・・水ガラスからイオン交換樹脂またはイオン交換膜により脱アルカリ処理、または酸による中和処理によって得られた水溶性シリカ化合物を主成分とする注入材が好ましい。このような水溶性シリカ化合物を主成分とする注入材としては、コロイダルシリカ系注入材(コロイダルシリカに無機塩等の硬化剤を添加してゲル化させる注入材)、活性シリカ系注入材(活性シリカまたは弱アルカリ性シリカにpH調整材および必要に応じて無機塩類を添加してゲル化させる注入材)、およびシリカゾル系注入材(弱アルカリ性~中性、酸性)が好ましい。」(特許文献1の段落番号0026参照。)と記載されている。
一般に、水ガラスを酸で中和すると縮合重合が生起して-O-Si-O-Si-O-の連鎖を有する高分子のケイ酸が形成されることは公知である。また、酸性シリカゾルもまた、高分子のケイ酸を含有することが当業者の常識である。よって、酸性シリカゾル、弱アルカリ性シリカを含む水溶性のシリカ化合物を水に溶解して得られる水溶液の粘度は極めて高くなる。
【0007】
また、特許文献1には、水ガラス系注入材等の溶液型シリカ注入材それ自身がゲル化して固まることが示されているのみであり、溶液型シリカ注入材がセメントやフライアッシュセメント等の水硬性材料の凝結及び硬化を促進することの示唆はない。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2002-60748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、凝結時間を短くし、初期強度の発現を促進させることのできる、水硬性材料の硬化促進剤及びこの水硬性材料の硬化促進剤を用いた水硬性材料の硬化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は、
(1)ケイ酸をSiO換算で5,000mg/L以上25,000mg/L以下の濃度で含有し、25℃における粘度が高くとも4mPa・sであり、ナトリウムの濃度が高くとも1,000mg/Lであり、単量体及び二量体の形態のケイ酸が全ケイ酸に対して70質量%以上100質量%以下の範囲で含有されるケイ酸水溶液であることを特徴とする、水硬性材料硬化促進剤である。
【0011】
前記(1)の好ましい態様として、次の態様を挙げることができる。
(2)前記(1)の水硬性材料用硬化促進剤において、前記水硬性材料は、セメントである。
【0012】
前記他の課題を解決するための手段は、
(3)水硬性材料と前記(1)又は(2)に記載の水硬性材料硬化促進剤とを混練することを特徴とする、水硬性材料の硬化方法である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、水硬性材料を含むペースト、モルタル及びコンクリートが瞬結することなく、その凝結始発時間及び凝結終結時間を短くし、初期強度の発現を促進させることのできる水硬性材料用硬化促進剤(以下において「水硬性材料の硬化促進剤」と称することがある。)を提供することができる。また、この発明の水硬性材料の硬化促進剤は、ナトリウムの濃度が高くとも1,000mg/Lである。しかもケイ酸は白華を抑制することができる。

【0014】
この発明によると、水硬性材料と混練される硬化促進剤は、25℃における粘度が高くとも4mPa・sであり、水と同程度の粘度であるので、水硬性材料と硬化促進剤とを均一に混ぜ合わせることができ、作業性が良好である。さらに、ナトリウムの濃度が高くとも1,000mg/Lであるので、水硬性材料と硬化促進剤とを混練した後に瞬結することなく作業性を良好に維持しつつ、水硬性材料を含むペースト、モルタル及びコンクリートの凝結始発時間及び凝結終結時間を適度に短くし、初期強度の発現を促進させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の硬化促進剤は、ケイ酸を含有し、25℃における粘度が高くとも4mPa・sであり、好ましくは0.89mPa・s以上2.5mPa・s以下であるケイ酸水溶液である。前記ケイ酸水溶液は、25℃おける水の粘度0.89mPa・sと同程度か或いは僅かに高い程度の粘度であるので、水硬性材料と硬化促進剤を形成するケイ酸水溶液とを均一に混練することができ、水硬性材料の水和を均一に促進し、均質な水硬性材料の硬化体を得ることができる。ケイ酸水溶液の25℃における粘度が4mPa・sを超えると、水硬性材料と硬化促進剤とを混練する際に、硬化促進剤の粘りのために混練機に大きな負荷が生じ、均一に混練できないおそれがある。前記ケイ酸水溶液が、このように水と同程度の粘度を有するのは、前記ケイ酸水溶液が後述する方法で製造されることにより、ケイ酸水溶液中のケイ酸のほとんどが単量体及び二量体として存在するからである。

【0016】
この発明の硬化促進剤は、水硬性材料を硬化させるために水硬性材料と混練される水に代えてこの発明の硬化促進剤を用いることにより、又は水硬性材料と混練される水にこの発明の硬化促進剤を添加して用いることにより、形成されるペースト、モルタル及びコンクリートの凝結開始時間及び凝結終結時間を短くすることができ、また初期強度の発現を促進させることができる。これは、セメント等の水硬性材料と水とが接触することによりセメント等から溶出されるカルシウムイオンとケイ酸水溶液中のケイ酸とのポゾラン反応により、非晶質な水和物の生成が進むことで、凝結が早まり、また形成された水和物が初期強度の発現に寄与するからであると考えられる。

【0017】
この発明の硬化促進剤は、単量体及び二量体のケイ酸が、全ケイ酸に対して70質量%以上100質量%以下の範囲で含有されるのが好ましく、90質量%以上100質量%以下の範囲で含有されるのが特に好ましい。硬化促進剤が単量体及び二量体のケイ酸を前記範囲内で含有すると、水と同程度か或いは僅かに高い程度の粘度になり、水硬性材料と混練し易くなる。また、セメント等の水硬性材料から溶出されるカルシウムイオンとケイ酸水溶液中のケイ酸とがポゾラン反応し易くなり、その結果、形成されるペースト、モルタル及びコンクリートの凝結が早まり、また初期強度の発現が促進される。

【0018】
この発明の硬化促進剤は、単量体及び二量体の形態のケイ酸を主成分として有することは、セメントと硬化促進剤とにより形成される硬化体について、TMS法で材齢7日の硬化体中に含まれるケイ酸の構造を測定したところ、約90%のケイ酸が単量体及び二量体の形態で存在していたことから推定できる。なお、TMS法では、硬化体を粉砕して得られた試料をトリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシロキサンを用いてトリメチルシリル(TMS)化を行い、得られたTMS誘導体をガスクロマトグラフを用いてケイ酸イオンの各形態の構成比を測定する。TMS誘導体化は、例えば「中村良三、杉ノ原幸夫、珪酸陰イオンを解析するための改良トリメチル化法、日本金属学会誌、vol.44, pp.352-358(1980)」、「大楠弘、益田穣司、脇田満信、杉ノ原幸夫、改良トリメチル化法による珪酸陰イオン解析に関する基礎研究、日本金属学会誌、vol45, pp.915-922(1981)」を参考にして行うことができる。各形態の構成比の定量は、得られたガスクロマトグラフのピークエリアの面積比により求めることができる。

【0019】
また、この発明の硬化促進剤の粘度は、B型粘度計により測定することができる。

【0020】
この発明の硬化促進剤は、ナトリウムの濃度が高くとも1,000mg/Lであり、高くとも800mg/Lであるのが好ましい。この発明の硬化促進剤は、ナトリウムの濃度を前記範囲内に抑えているので、混練したペースト等を瞬結させることもなく、作業性が良好である。

【0021】
この発明の硬化促進剤中のナトリウムの濃度は、原子吸光分析法又はICP発光分光分析法により測定することができる。

【0022】
この発明の硬化促進剤を形成するケイ酸水溶液は、ケイ酸をSiO換算で高くとも25,000mg/Lの濃度で含有するのが好ましく、5,000mg/L以上25,000mg/L以下の濃度で含有するのが特に好ましい。ケイ酸水溶液におけるケイ酸の濃度の好適な範囲は、後述する水硬性材料の種類及び要求される凝結及び硬化促進の程度によって異なるが、ケイ酸水溶液におけるケイ酸の濃度が前記範囲内であると、形成されるペースト、モルタル及びコンクリートの凝結時間及び初期強度の発現を適度に促進させることができる。

【0023】
この発明の硬化促進剤中のケイ酸の濃度は、モリブデン青吸光光度法により測定することができる。

【0024】
前記水硬性材料は、水と反応して硬化する組成物であり、例えば、普通ポルトランドセメント、早強セメント、中庸熱セメント、低熱セメント、耐硫酸塩セメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等のセメント、高炉水砕スラグ、転炉スラグ、フライアッシュ等の潜在水硬性材料等を挙げることができる。これらの中でも、水と接触して水和するときにカルシウムイオンが溶出される水硬性材料が好ましく、特に、凝結時間の短縮及び初期強度発現の促進が望まれているセメントが好ましい。

【0025】
この発明の硬化促進剤を形成するケイ酸水溶液は、次のようにして製造することができる。ケイ酸水溶液は、陽極室と陰極室とこれらの室を仕切る陽イオン交換膜等の隔膜と、各室に設けられた電極板とこれらの電極板に電流を印加する電源とを有する電解槽を使用して製造される。陽極室にはケイ酸ナトリウム水溶液をポンプ等により循環供給し、陰極室には陽極室に供給されるケイ酸ナトリウム水溶液の電気伝導度と同程度の電気伝導度を有する塩化ナトリウム水溶液又はケイ酸ナトリウム水溶液等をポンプ等を用いて循環供給する。それと同時に、陽極室の電極板及び陰極室の電極板に電流を印加することにより、陽極室のケイ酸ナトリウム水溶液のナトリウムイオンが陽イオン交換膜等の隔膜を通り、陰極室に移行する。その結果、アルカリ性のケイ酸水溶液が酸性側に傾いていく。

【0026】
このようにして、前述したように、粘度が所定の値以下で、ナトリウムの濃度が所定の値以下であるケイ酸水溶液を製造することができる。ケイ酸水溶液の粘度、ケイ酸の濃度及びナトリウムの濃度は、電極板に印加される電流、電圧、印加時間等を適宜変更することにより調整することができる。

【0027】
このケイ酸水溶液の製造方法によると、塩酸等の化学薬品を用いることなく、ナトリウムを除去し、ナトリウムの濃度を所定の値以下まで低減させることができる。したがって、このケイ酸水溶液には塩素が実質的に含まれていない。したがって、この発明の硬化促進剤を用いて鉄筋コンクリートを形成した場合には、コンクリート中の鉄筋の発錆を抑制することができる。

【0028】
この発明の硬化促進剤は、水硬性材料と一緒に混練することによりペーストを形成し、これを硬化させる。この発明の硬化促進剤は、水硬性材料と水とを含む、ペースト、モルタル及びコンクリート等の凝結時間の短縮及び初期強度発現の促進のために好適に用いられる。

【0029】
前記ペーストは、水硬性材料と硬化促進剤とを少なくとも含有する。前記ペーストにさらに細骨材が含有されるとモルタルになり、このモルタルにさらに粗骨材が含有されるとコンクリートになる。細骨材は、粒径5mm以下の骨材が85質量%以上含まれる骨材であり、山砂、陸砂、川砂、及び砕砂等を挙げることができる。粗骨材は、粒径5mm以上の骨材が85質量%以上含まれる骨材であり、山砂利、陸砂利、川砂利、砕石等を挙げることができる。

【0030】
前記ペースト、モルタル及びコンクリートは、この他にその使用態様に応じて、AE剤、AE減水剤、減水剤、高性能AE減水剤、ナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物塩及びメラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物塩等の流動化剤、亜硝酸塩及びクロム酸塩等の防錆剤等の公知の混和剤、シリカ微粉末、炭酸ナトリウム微粉末、酸化アルミニウム微粉末、水性ポリマーディスパージョン、再乳化形粉末樹脂、水溶性ポリマー、液状ポリマー等の公知の混和材を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。これらの中でも、シリカ微粉末及び炭酸ナトリウム微粉末は、本発明の硬化促進剤と共に使用することにより、水硬性材料を含むペースト、モルタル及びコンクリートの凝結時間の短縮及び初期強度発現の促進をより一層向上させることができる。

【0031】
この発明の硬化促進剤を用いて、水硬性材料を含むペースト、モルタル及びコンクリートを製造する場合には、水硬性材料(P)に対する硬化促進剤を含む水溶液(Wp)の質量割合、すなわちWp/P比、細骨材及び粗骨材の配合割合等は、形成されるペースト、モルタル及びコンクリートに要求される性能等に応じて適宜設定される。

【0032】
水硬性材料とこの発明の硬化促進剤とを含む、ペースト、モルタル及びコンクリートの凝結時間、圧縮強度及び曲げ強度は、JIS R 5201、JIS A 1108に準拠して測定することができる。

【0033】
この発明の硬化促進剤は、水硬性材料を含むペースト、モルタル及びコンクリートの凝結時間を短くし、初期強度の発現を促進させることができる。例えば、水硬性材料がフライアッシュセメントの場合、フライアッシュセメントにおけるフライアッシュの含有割合が増加する程、通常、凝結時間、初期の圧縮強度及び曲げ強度が低下する傾向にある。しかし、フライアッシュセメントにおけるフライアッシュの含有割合が、例えば、フライアッシュセメント全質量に対して20質量%以上50質量%未満である高含有率フライアッシュセメントに、水硬性材料と混合する水に代えて、この発明の硬化促進剤と混合することで、フライアッシュセメント全質量に対して1質量%以上20質量%未満である低含有率フライアッシュセメントと水とを混合して形成されるペースト、モルタル及びコンクリートと同程度の凝結時間及び初期強度とすることができる。したがって、この発明の硬化促進剤を混練水として使用することで、低含有率フライアッシュセメントと同程度の凝結及び初期強度性能を維持しつつ、フライアッシュセメントにおけるフライアッシュの含有割合を増加させることができる。よって、フライアッシュを廃棄物にすることなく有効利用することができる。同様の理由により、高炉スラグもまた有効利用することができる。

【0034】
また、前記低含有率フライアッシュセメントや普通ポルトランドセメント等に対して、水に代えて本発明の硬化促進剤を使用することで、水を用いた場合よりも凝結時間及び初期強度の発現が促進する。したがって、例えば、型枠内に打設した後のコンクリート材料が早く固まるので、通常よりも早期に脱型することができる。したがって、型枠の使用期間が短くなり、外された型枠を通常より早く次の場所で使用することができる。よって、型枠を効率的に使用することができ、作業効率が向上する。

【0035】
また、この発明の硬化促進剤は、セメント等の水硬性材料と共に用いて、コンクリートのひび割れ部分を補修する補修材として使用することができる。この発明の硬化促進剤は、有機物を含まずに、無機物のみで形成されているので、この発明の硬化促進剤を含む補修材は紫外線等が照射されることにより劣化することがない。

【0036】
また、従来からペースト、モルタル及びコンクリートの硬化体表面に白い生成物が浮き出る白華現象が知られている。この白い生成物は硬化体の内部に侵入した水分が蒸発する際に水酸化カルシウムとして表面に析出し、それが二酸化炭素により炭酸カルシウムとなって生じる。この白華現象は、硬化体の強度等には問題ないが美観が損なわれるという問題がある。しかし、この発明の硬化促進剤を用いると、セメント等の水硬性材料から溶出されるカルシウムとの間でポゾラン反応を生じ、カルシウム分を消費するので、この白華現象を抑制することができる。

【0037】
次に、この発明の硬化促進剤の実施例について詳しく説明するが、この発明の硬化促進剤はこの実施例に限定されない。
【実施例】
【0038】
(実施例・比較例1~26)
水硬性材料と混練水とその他の成分とを表1に示す配合割合で混練してペーストを作製し、凝結始発時間、凝結終結時間はJIS R 5201に準拠して測定し、材齢3日の圧縮強度、材齢7日の圧縮強度は、直径25mm、高さ50mmの円柱状の供試体を作製し、JIS R 5201に記載のモルタルの圧縮試験に準じた方法で測定した。なお、フライアッシュセメントは普通ポルトランドセメントとフライアッシュ(東北発電工業株式会社製)とを含み、フライアッシュ及びその他の成分の配合割合は、普通ポルトランドセメント100質量部に対する質量部として表示した。また、いずれのペーストも水溶液/水硬性材料の比が0.5である。
【実施例】
【0039】
また、ケイ酸水溶液は、前述した電解槽を用いて製造した。ケイ酸水溶液におけるケイ酸のSiO換算での濃度は、モリブデン青吸光光度法により測定したところ、試験No.1、3~26で用いたケイ酸水溶液は20,000mg/Lであり、試験No.2で用いたケイ酸水溶液は3,000mg/Lであった。ケイ酸水溶液の25℃における粘度は、B型粘度計で測定したところ、2mPa・sであった。水硬性材料の材齢7日の硬化体におけるケイ酸の構造を前述したようにTMS法により測定したところ、ほとんどのケイ酸が単量体及び二量体として存在し、その合計割合が、ケイ酸全体に対して約90%であった。ケイ酸水溶液におけるNaの濃度は、ICP発光分光分析法により測定したところ、690mg/Lであった。また、pHは9.40であり、Clは存在していなかった。
【実施例】
【0040】
(比較例27)
水硬性材料として普通ポルトランドセメントを用い、混練水として25℃における粘度が8mPa・sであるコロイダルシリカを含む水溶液を用いてペーストを作製した。粘度が高く、均一なペーストを作製することができなかった。また、コロイダルシリカには微量のClが含まれていた。
【実施例】
【0041】
【表1】
JP0005950298B2_000002t.gif
【実施例】
【0042】
表1の試験No.1、2、3、7、8に示されるように、水に代えてケイ酸水溶液を用いることで、普通ポルトランドセメントとフライアッシュセメントのペーストの凝結始発時間及び凝結終結時間が短くなり、圧縮強度が増大した。
【実施例】
【0043】
表1の試験No.7~26に示されるように、フライアッシュセメントにおけるフライアッシュの配合割合が増加するほど圧縮強度は低下する傾向にあるが、水に代えてケイ酸水溶液を用いることで、圧縮強度が増大した。
【実施例】
【0044】
表1の試験No.3、5、8、10に示されるように、普通ポルトランドセメント又はフライアッシュセメントとケイ酸水溶液とに、さらに炭酸ナトリウムを加えることで、凝結始発時間及び凝結終結時間が短くなった。
【実施例】
【0045】
表1の試験No.1、4、6、7、9、11、12、14、16、17、19、21、22、24、26に示されるように、普通ポルトランドセメント又はフライアッシュセメントに、水に代えてケイ酸水溶液を用い、シリカ微粉末を加えることで、さらにまた炭酸ナトリウムを加えることで、圧縮強度が増大した。