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明細書 :抵抗変化型不揮発性メモリおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-222784 (P2013-222784A)
公開日 平成25年10月28日(2013.10.28)
発明の名称または考案の名称 抵抗変化型不揮発性メモリおよびその製造方法
国際特許分類 H01L  27/105       (2006.01)
H01L  45/00        (2006.01)
H01L  49/00        (2006.01)
FI H01L 27/10 448
H01L 45/00 Z
H01L 49/00 Z
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2012-092619 (P2012-092619)
出願日 平成24年4月16日(2012.4.16)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り
発明者または考案者 【氏名】高瀬 浩一
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】230100022、【弁護士】、【氏名又は名称】山田 勝重
【識別番号】100084319、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 智重
審査請求 未請求
テーマコード 5F083
Fターム 5F083FZ10
5F083GA02
5F083GA09
5F083GA27
5F083JA36
5F083JA60
5F083PR05
要約 【課題】安価な材料であるアルミニウム基板を材料として用い、スイッチングの性能に優れた抵抗変化型不揮発性メモリを提供する。
【解決手段】アルミニウム板を陽極酸化させることでポーラスアルミナを作製し、その部分の絶縁膜の低抵抗化を図ることで、あたかもアルミニウム層/陽極酸化アルミナ層/アルミニウム層の3層で構成される平面メモリ素子を形成し、スイッチング電圧のバラツキが少ない高集積の抵抗変化メモリを形成する。そこでパルス電圧印加メッキ法に基づき、硫酸水溶液中でアルミニウム金属板を陽極酸化させ、酸化物中に格子欠陥や金属イオン導入を行ってポーラスアルミナを作製し、前記の3層で構成される平面メモリ素子を形成するとともに、整列形成されるポーラスアルミナ層のナノホールによって隣接区画される6角格子の交点部分をフィラメントとして構成する。
【選択図】図13
特許請求の範囲 【請求項1】
パルス電圧印加メッキ法に基づき、陽極酸化法により予め作成したポーラスアルミナ中に格子欠陥や金属イオン導入を行い、アルミニウムを含む金属電極層/陽極酸化アルミナ層/アルミニウムを含む下部金属電極層で構成される平面メモリ素子を形成するとともに、
整列形成される前記ポーラスアルミナ層のナノホールによって隣接区画される6角格子の交点部分をフィラメントとしてなることを特徴とする抵抗変化型不揮発性メモリの製造方法。
【請求項2】
請求項1の抵抗変化型不揮発性メモリの製造方法において、
前記フィラメントの形成はポーラスアルミナ層の形成後、電気化学的処理を施し、酸素空孔や金属イオンを導入するプロセスを伴うものであることを特徴とする抵抗変化型不揮発性メモリの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2の抵抗変化型不揮発性メモリの製造方法を用いて作成したことを特徴とする抵抗変化型不揮発性メモリ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムを陽極酸化し、形成する抵抗変化型不揮発性メモリおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗変化メモリとしては、従来から様々なタイプのものが研究され、陽極酸化アルミニウムを利用したものについては、下記非特許文献に示すように、独立行政法人物質・材料研究機構がその利用の可能性について提案を行っている。また、下記特許文献1、2にも示すように、種々の特許出願もなされているが、これらはいずれも整列形成されたポーラスアルミナ層の各ナノホールをテンプレートとし、ナノホールの内部に抵抗変化材料を埋め込むものである。
【0003】
ただし、こうした抵抗変化型メモリにおいては、スイッチング電圧の振れ幅の抑制が課題とされ、振れ幅についてはしきい値等の設定を考慮してスイッチング電圧の最大値を最小値で除した値の2倍以下であることが望ましい条件とされている。
【先行技術文献】
【0004】
ポーラスアルミナのスイッチング現象を利用した抵抗変化メモリ,http://www.nims.go.jp/AAA_ReRAM/TI2008.pdf#search=’ポーラスアルミナのスイッチング現象を利用した抵抗変化メモリ’
【0005】

【特許文献1】特開2005-256102号公報
【特許文献2】特開2005-236003号公報
【0006】
そのような条件を実現する端子材料としては、例えば電極部分にイリジウムやプラチナなどを採用することが可能であるものの、これらの材料は高額であり、現状では実用化に向かないことが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者は、こうした従来の状況に鑑み、
(1)各スイッチング部分を構成する成形加工エリアの制限、
(2)スイッチング部分における電場の集中、
(3)酸化物フィルム作製における化学的処理の容易さ、
という3つのアプローチから陽極酸化アルミナを用いた抵抗変化型メモリにおけるスイッチング電圧の振れ幅の抑制という課題に挑んだ。
【0008】
すなわち、本発明は、安価な材料であるアルミニウムに注目し、絶縁性基板上の金属電極に形成されたアルミニウム薄膜あるいはアルミニウム基板自身を酸化したアルミニウム酸化物を絶縁膜とする、スイッチングの性能に優れた抵抗変化型不揮発性メモリの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の抵抗変化型不揮発性メモリの製造方法は、パルス電圧印加メッキ法に基づき、硫酸水溶液中で、陽極酸化法により予め作成したポーラスアルミナ中に格子欠陥や金属イオン導入を行い、アルミニウムを含む金属電極層/陽極酸化アルミナ層/アルミニウムを含む下部金属電極層の3層で構成される平面メモリ素子を形成するとともに、整列形成される前記ポーラスアルミナ層のナノホールのよって隣接区画される6角格子の交点部分をフィラメントとしてなることを特徴とする。また本発明の抵抗変化型不揮発性メモリは、前記方法により製造したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、抵抗変化メモリの絶縁膜として陽極酸化アルミナを選択した場合、この絶縁膜の低抵抗化を実現することで、スイッチングの性能に優れた抵抗変化型不揮発性メモリの提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ReRAMの構造を模式的に示す図である。
【図2】図1に示すReRAMのI-V曲線を示す図である。
【図3】同じくスイッチングスピードを示す図である。
【図4】ReRAMのスイッチング現象が絶縁膜の破壊に起因することを示す図である。
【図5】ReRAMの典型的なI-V曲線を示す図である。
【図6】いくつかのフィラメントをランダムに選択し得る形態を示す図である。
【図7】通常の状態(A)からフィラメントのパス数の削減例を示す図である。
【図8】シュウ酸で処理したアルミニウム陽極酸化皮膜とそのSEM画像を示す図(A)と、硫酸で処理したAAOのディンプル構造とそのSEM画像を示す図(B)である。
【図9】シュウ酸AAOと硫酸AAOのI-V特性のデータを示す図である。
【図10】スイッチング電圧変動の抑制のためのフィラメントの形成領域と、酸化膜への追加の電気化学的処理を示す図である。
【図11】試料の準備と実験の詳細に示す図である。
【図12】電気化学的に処理したAAOのSEM画像を示す図である。
【図13】2つの試料のI-V曲線の特徴を示す図である。
【図14】スイッチング電圧の詳細について示す図である。
【図15】生成したままのAAOと、電気化学的に処理したAAOに関する数値特性の概要を示す図である。
【図16】AAOを使用して、接触面積の低減とリーク電流を誘導する電気化学的処理により、スイッチング電圧の変動を抑制しようとした試行のI-V曲線を示す図である。
【図17】電気化学処理としてのパルス電界めっき法の手順を示す概念図である。
【図18】本発明の実施形態における試料の作成装置モデルを示すための図である。
【図19】図18に示したモデルでの試料作製手順を示すフロー図である。
【図20】ポーラスアルミナを用いたフィラメント形成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本願発明者は、抵抗変化メモリの材料として、既述のように、
(1)各スイッチング部分を構成するエリアの制限、
(2)スイッチング部分における電場の集中、
(3)酸化物フィルム作製における化学的処理の容易さ、
という3つのアプローチから安価な材料である陽極酸化アルミナで抵抗変化メモリを作製することとし、どのような方法で作製すれば、スイッチング電圧の振れ幅を抑制できるかについて試行を行った。

【0013】
その結果、パルス電圧印加メッキ法に基づき、硫酸水溶液中で、酸化物中に格子欠陥や金属イオン導入を行うことで、スイッチング部分の微小化(例えば70nm程度)、電場集中、スイッチング電圧の振れ幅抑制、という前記のアプローチに対するそれぞれの結果を得て、目標とする抵抗変化メモリの作製を可能とした。

【0014】
すなわち、アルミニウム板を陽極酸化させることでポーラスアルミナを作製し、その部分の絶縁膜の低抵抗化を図ることで、アルミニウムを含む上部金属電極層/陽極酸化アルミナ層/アルミニウムを含む下部金属電極層の3層で構成される平面メモリ素子を形成し、スイッチング電圧のバラツキが少ない高集積の抵抗変化メモリの形成に成功した。

【0015】
本願発明で、ポーラスアルミナを選択した理由は以下の通りである。
これまでに知られている研究成果より、抵抗変化メモリに関して言えることは、結晶性がよく、膜厚の厚い絶縁膜を作成すると、スイッチング電圧は、スイッチング毎にことなり、その再現性が乏しくなるとともに、スイッチング回数(メモリの寿命)も著しく小さくなることである。この事実をもとに、スイッチング電圧の抑制やスイッチング回数を改善するには、結晶性の悪い膜を作ればよいことになる。本願発明者は、この解決策としてアモルファス材料であるポーラスアルミナを選択した。ポーラスアルミナは、数℃程度の溶液中で電気化学的に酸化されて作られる膜であるため、できあがった薄膜はもともとアモルファスである。さらに、膜中に電気を流しながら酸化が進行していくので、電気化学処理を行う溶液をいろいろと選択することで膜質を改善することは容易である。このような理由から、ポーラスアルミナを用いた抵抗変化メモリを作成することを着想したのである。

【0016】
以下本発明の一実施形態として、陽極酸化アルミニウムを用いたReRAM(Resistive Switching Memory:以下、抵抗変化型不揮発性メモリとも記載する)のスイッチング特性の追加的電気化学的処理について説明する。

【0017】
抵抗変化型不揮発性メモリは、単純な構造、高速スイッチング、不揮発性などの優れた特性により、新世代のメモリとして期待されている。図1は、ReRAMの構造を模式的に示している。絶縁酸化物薄膜1(以下では絶縁膜1とも記載する)は、上部と下部の電極2、3に挟まれている。この構造体に電圧を印加すると、図2に示すように、電流は徐々に増加し、しきい値電圧以上で大きく増加する。この電流増大は、絶縁状態が金属状態に転移したことを意味する。この低抵抗状態は電圧をゼロボルトにしても、その状態で保持される。なお下部の電極3は本実施形態では特に言及しなければAl基板である。

【0018】
マイナス電圧領域では、逆の現象が発生する。すなわち、金属状態は、しきい値電圧以上で絶縁状態に変わる。この意味で、抵抗変化型不揮発性メモリは、材料の状態を記憶できるメモリであるといえる。また図3に示すように、スイッチング速度が優れており、数ナノ秒である。このスイッチング現象は、酸化物薄膜の多くの種類で観察される。すなわち、多くの選択肢を持ち得る。

【0019】
図4は、ReRAMのスイッチング現象が絶縁膜1の破壊に起因することを示している。電圧を印加する前の状態(A)のReRAMは絶縁状態で、しきい値を超える電圧を印加すると、絶縁膜1に破壊が発生し、多くの導電性のフィラメント4が生じ、絶縁膜1が導電状態になる。逆電圧の印加で、界面(図では下側の電極3)の周囲でフィラメント4の破壊(点線で囲んだ矢印5で示す部分)が生じる。以下、前記破壊をソフトブレークダウンと称する。

【0020】
図5は、ReRAMの典型的なI-V曲線である。電流は対数目盛でプロットしてある。図中に点線の長円と矢印で示しているように、しきい値電圧を中心に、電圧の大きな変動が見られる。再現性の低下は、実用化の妨げとなるので、大きな問題である。スイッチング電圧の変動の理由について、フィラメントモデルに基づいて、本願発明者は、以下のように原因を考えている。すなわち、しきい値を超える電圧を印加したときに、異なる抵抗値と長さを持つ多くのフィラメントがソフトブレークダウンにより作られる。すべてのスイッチングにおいて、図6に示すように、いくつかのフィラメントをランダムに選択し得る。

【0021】
図7は、通常の状態(A)からフィラメントのパス数の削減例を示す。
(1)まず、形成領域を制限する。すなわち、幾何学的にフィラメントの種類と数を削減する(B)。
(2)電界を集中させる。電極2、3は、突起2a、3aを有する状態になる(C)。
(3)酸化膜の電気化学的処理を行い、酸化膜の絶縁抵抗を低下させる(D)。

【0022】
図7に示した方法に関し、本願発明者は、前記(1)、(2)について試行した。陽極酸化アルミナ酸化物は、幾何学的制約のために使用した。陽極酸化アルミナ酸化物はナノホールを持っており、そのサイズと密度を容易に制御することができるからである。サイズは、電解質溶液に依存する。典型的なナノホールのサイズは、シュウ酸で陽極酸化処理して生成した場合は40 nm程度、硫酸を用いた場合では数十nm程度である。

【0023】
本願発明者は、二つの異なるナノディンプル構造を、酸化物層を除去することによって作製し、ディンプルアルミの表面を空気中で酸化させた。アルミニウムの突起を備えたディンプル構造が接触面積と電界集中の制限の影響の両方をチェックするのに適している。図8は、(A)がシュウ酸で処理したアルミニウム陽極酸化皮膜(以下、シュウ酸AAOと記載する。AAOは、アルミニウム陽極酸化皮膜を意味する。)、(B)が硫酸で処理したAAO(以下、硫酸AAOと記載する)のディンプル構造と、そのSEM画像を示す図であり、六角形の格子状のディンプル(すなわち、ナノホール)を見ることができる。上部の電極2に対する接触部分6、7の面積は、(A)のほうが(B)よりも大きく、シュウ酸の試料では70 nmであり、硫酸の試料では50nm程度となっている。図中8は自然に生成された酸化膜、9はAl基板3(下部電極)に形成された突起、10はナノホールである。

【0024】
図9は、シュウ酸AAOと硫酸AAOのI-V特性のデータを示す図である。大きな接触面積を与えるシュウ酸AAOの試料では、比較的広い変動がスイッチング電圧で観察され、I-Vウィンドウ(図で空隙状に示した部分)は小さい。一方、硫酸AAOの試料では、I-Vウィンドウが大きく開き、接触領域が狭窄している。接触面積が小さなことは好ましいといえる。

【0025】
図10は、スイッチング電圧変動の抑制のためのフィラメントの形成領域と、酸化膜への追加の電気化学的処理を示し、(A)は生成したままのAAO(as grown AAO)試料の断面構造と、形成領域や接触を制限することを示し、(B)は電気化学的に処理したAAO試料(ET AAO)のリーク電流導入と抵抗率の低下を示す。図示のようなナノディンプル構造を得るために従来はいくつかの手順が必要であったが、本願発明では、AAO薄膜を用いた簡単な方法を採用する。AAOは、多くのナノホールに起因して、フィラメント形成領域または電極との接触面積を制限することができる。電気化学的処理は、リーク電流を誘導することが期待され、絶縁膜の抵抗率が低くなる。すなわち本発明は、以上のような方法でスイッチング電圧の変動を抑制しようとするものである。図中11が生成したままのAAO、12がフィラメントパスである。

【0026】
図11は、細孔が規則配列した試料の準備とポーラスアルミナの低抵抗化のための処理を詳細に示す図である。この図では、規則配列した細孔を作成するために2段階での陽極酸化の手順を示す。
(1)まずシュウ酸を用いてAlシート材13の最初の陽極酸化をおこない、
(2)リン酸とクロム酸の混合物を用いてAAO11を除去し、
(3)再びシュウ酸を用いてAlシート材の第二の陽極酸化を行い、生成したままのAAOを得て、
(4)適切な化学溶液中でDCバイアス電圧を印加して電気化学的処理を行い、電気化学的処理済のAAOを得て、
(5)上面に電極(TE)を付着させる。

【0027】
さらに詳細に説明すると、最初に、シュウ酸によって、洗浄したAl板の陽極酸化を行い、その後、多孔質アルミナを化学的に除去する。この段階で、ナノサイズの凹みが得られる。目的とするナノホールを作成するために、第二段階目の陽極酸化処理を同一の酸によって行うが、これらの3つのステップで、上述した、生成直後のAAOの試料を得られる。抵抗率を低下させるためには、電気化学的処理が生成直後のAAO試料に対して必要とされる。該処理には適切な化学溶液中でDCバイアス電圧を印加する。それにより、低抵抗の試料を得られる。I-V測定は、室温で二端子法により行う。デバイスが完全に破壊されないように、電流の最大値を1ミリアンペアに制限するように設定する。なお、ここでは、通常のバイポーラ動作の代わりにモノポーラ動作を採用する。

【0028】
図12は、電気化学的に処理したAAOのSEM画像を示し、(A)は断面、(B)は上面の画像を示す。多孔質層(絶縁酸化物薄膜1にナノホールを形成した層)の厚さは、260nmである。下部電極には非磁性アルミニウム板を使用している。上面の画像(B)に示すように、接触面積の幅は70nmである。図中10はナノホールを示している。

【0029】
図13は、2つの試料のI-V曲線の特徴を示す図であり、上側の図は、SETプロセスの結果を示し、下側の図は、RESETプロセスの結果を示す。ここで、「SET」は、絶縁状態から金属状態への移行として定義し、「RESET」は、「SET」の反対を意味するものと定義する。生成したままのAAO試料では、SET電圧の変動に何らの改善も見つからず、SET領域は依然として広い。試料の厚さ(260nm程度)を反映するかのように、しきい値電圧も比較的高い。RESETもSETの結果と同様にあまり好ましいものではない。すなわち再現性が悪いと言わざるを得ない。予想に反して、生成したままの試料にも改善が見られなかった。これは酸化膜が厚すぎることと、接触面積の制限がフィラメントの大きさに対して十分に小さいものではなかったことの表れである可能性がある。なお図中右側の図は、電気化学処理の試料が示した結果である。大きなウィンドウがSET及びRESETのI-V曲線の両側に開いていることがわかる。そして、SETの電圧を見ると、変動が抑制されることがわかる。スイッチング最大値と最小値の比は約2である。RESETのI-V曲線もまた好ましく見える。すなわち、電気化学的処理は再現性の向上のために非常に好ましいといえる。

【0030】
図14はスイッチング電圧の詳細について示す図である。この図を参照して定量的にI-V曲線を評価する。まず、スイッチングのくり返しに関する両方の試料の耐久性は、生成したままのAAOでは38回、ET AAOでは100回である。低抵抗のET AAOは好ましい結果を示している。なお図14では、スイッチング電圧に対するスイッチングの繰り返し依存性を、SETとRESETの双方について示している。生成したままのAAOのSET電圧は繰り返し回数に関して増加傾向を示している。これはフィラメントの形成が繰り返しの回数が増えるほど難しくなることを意味している。

【0031】
生成したままのAAOではSET電圧は2~16ボルトに分布している。RESET電圧は0.2~1ボルトの範囲である。一方、電気化学的な試料は絶対値が小さいスイッチング電圧を有し、SET電圧とRESET電圧の分布幅は狭い。図14の下側の2つの図は、サイクル依存性を示すヒストグラムである。生成したままの試料の場合には、耐久性の乏しさから統計的な分布は見つけられない。分布幅を評価するためには、これらの図によって定義される最大と最小スイッチング電圧値の比を計算する。生成したままのAAOではSET電圧のRESET電圧に対する比は5及び8である。一方、電気化学的処理を施したAAOは、両方の電圧ともに明確な分布を示す。この電圧分布は、いくつかの分布関数で構成されているように見える。しかしながら、狭く鋭いピークが示唆するのは、フィルム材中にわずかな種類のフィラメントしか存在しないことを示すのかもしれない。なおSET電圧とRESET電圧の比は2で、既述の場合と同じ値である。

【0032】
図15に、生成したままのAAOと、電気化学的に処理したAAOに関する数値特性の概要を示す。シュウ酸陽極酸化の場合には、接触面積は約70nmである。生成したままの試料は、貧弱なオン/オフ比を電圧0.1Vで示している。最大値と最小値の間におけるSET電圧とRESET電圧の比もあまり良いものではない。その値は8と5である。スイッチングの耐久度は、そのような悪い性質を反映して38である。本願発明者の予想に反して、ポーラスアルミナの名のホールを用いたフィラメント形成領域の制限は、スイッチングの変動を抑制には十分ではなかった。一方、電気化学的に処理したAAOは、より良い改善結果を示す。すなわちオン/オフ比は150、SET電圧とRESET電圧の比は2で、スイッチング回数は100を超える。

【0033】
結論として、図16に示すように、本願発明者は、AAOを使用して、接触面積の低減とリーク電流を誘導する電気化学的処理により、スイッチング電圧の変動を抑制しようとしたが、接触面積の制限だけではあまり良い低減効果が示されなかった。生成したままのAAOのスイッチングの再現性は良くなかった(接触面積は、フィラメントの大きさに対してまだ大きくできる可能性がある)。しかし、生成したままのAAOへ追加的な電気化学的処理をおこなったET AAOは、スイッチング電圧の変動幅に関する性状を向上させ得る。

【0034】
以下、本発明の実施形態における試料製作手順等について説明する。
図17は、電気化学処理としてのパルス電界めっき法の手順を示す概念図である。この図の形態における手順は、
(1)プラス電極21にNi板、マイナス電極22にポーラスアルミナ膜のついたAl板を配置する(陽極酸化とは電極の配置が逆)
(2)これらをビーカなどの容器23内の電解質溶液24に漬ける。電解質溶液24の温度は例えば56℃とする。そして、マグネティックスターラー25で攪拌する。電解質溶液24には、以下の成分を含み、蒸留水を加えて例えば合計容量が0.3リットルとしたものを用いる。
電解質溶液1:硫酸ニッケル1.54mol/リットル+塩化ニッケル(25g)+ホウ酸(10.5g)
電解質溶液2:硫酸コバルト1.54mol/リットル+塩化コバルト(24g)+ホウ酸(14g)
(3)パルス電源26で電圧を印加し、電気化学処理を行う。例えば、印加する電圧は3V、電流は60mA/cm, パルス幅は60ミリ秒、オフ時間は940ミリ秒、電圧印加時間は5分とする。
(4)そしてマイナス電極22としたAl板を蒸留水で洗浄し試料として完成させる。

【0035】
図18は本発明の実施形態における試料の作成装置モデルを示すための図である。図に示す符号30はマグネティックスターラー、31は水道水容器、32はビーカ、33は温度計、34は投げ込み式クーラー、35は温度計と投げ込み式クーラーのための温度コントローラ、36は投げ込み式クーラーのコントローラ部である。そしてプラス電極37としてAl板、マイナス電極38としてPt板を配し、ビーカ32内の電解質溶液に浸して電源39から電圧を印加する。

【0036】
図19は、図18に示したモデルでの試料作製手順を示すフロー図である。
まず電極板をアセトンで脱脂し(ステップS1)、電界研磨(使用溶液は、例えば60wt%過塩素酸:エタノール=1:4のもの)を行い(ステップS2)、1ステップ目の陽極酸化を行う(ステップS3)。ついでアルミナエッチング(使用溶液は、例えば6wt%リン酸、1.8wt%クロム酸)を行い(ステップS4)、2ステップ陽極酸化目の陽極酸化を行う(ステップS5)。ついでポアワイドニング(PW)処理(例えば0.5wt%リン酸使用)を行う(ステップS6)。そして残留基板エッチング(5wt%塩化水銀)を実施し(ステップS7)、アニール処理を施す(ステップS8)。

【0037】
試料作製条件・試料評価についてまとめて記載すると以下のようになる。すなわち、陽極酸化条件は、
原材料:99.5% Alシート
電解質溶液:シュウ酸
:硫酸
:リン酸
:クエン酸
:クロム酸
溶液濃度:0.05~0.5 mol/l
酸化時間:1~50時間
溶液温度:3~30℃
印加電圧:10~40V
である。

【0038】
図20はポーラスアルミナを用いたフィラメント形成例を示す図である。この例は、既述の3つの改善をポーラスアルミナに適用した例である。図20(A)に示す試料1は、フィラメント4の形成空間を制限し、ナノホール10がフィラメント4の形成空間を制限している。試料2は、ポーラスアルミナの低抵抗化を図ったもので、電気化学処理を施し、酸素空孔40や金属イオン41を導入して同種のフィラメント4の形成を促したものである。

【0039】
なお本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明については、USBメモリ、SDメモリなどに応用可能であろう。
【符号の説明】
【0041】
1 :絶縁酸化物薄膜
2 :電極(上部電極)
2a :突起
3 :電極(下部電極)
4 :フィラメント
6 :接触部分
10 :ナノホール
13 :Alシート材
21 :プラス電極
22 :マイナス電極
23 :容器
24 :電解質溶液
25 :マグネティックスターラー
26 :パルス電源
30 :マグネティックスターラー
31 :水道水容器
32 :ビーカ
33 :温度計
34 :投げ込み式クーラー
35 :温度コントローラ
36 :投げ込み式クーラーのコントローラ部
37 :プラス電極
38 :マイナス電極
39 :電源
40 :酸素空孔
41 :金属イオン
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
12
【図14】
13
【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
19