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明細書 :石川県の伝統発酵食品から分離した乳酸菌及びその培養物の機能性とその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5968655号 (P5968655)
公開番号 特開2013-193996 (P2013-193996A)
登録日 平成28年7月15日(2016.7.15)
発行日 平成28年8月10日(2016.8.10)
公開日 平成25年9月30日(2013.9.30)
発明の名称または考案の名称 石川県の伝統発酵食品から分離した乳酸菌及びその培養物の機能性とその利用
国際特許分類 A61K  35/74        (2015.01)
C12N   1/20        (2006.01)
A61P  37/08        (2006.01)
A61P  37/06        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
FI A61K 35/74 A
C12N 1/20 ZNAA
C12N 1/20 E
A61K 35/74 G
A61P 37/08
A61P 37/06
A61P 29/00
請求項の数または発明の数 2
微生物の受託番号 NITE P-1256
NITE P-1259
全頁数 23
出願番号 特願2012-063788 (P2012-063788)
出願日 平成24年3月21日(2012.3.21)
審査請求日 平成27年2月13日(2015.2.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】511169999
【氏名又は名称】石川県公立大学法人
発明者または考案者 【氏名】小柳 喬
【氏名】四十萬谷 正久
【氏名】榎本 俊樹
【氏名】片山 高嶺
【氏名】熊谷 英彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100077012、【弁理士】、【氏名又は名称】岩谷 龍
審査官 【審査官】平林 由利子
参考文献・文献 特開2010-099024(JP,A)
特開2013-048586(JP,A)
特開2013-188196(JP,A)
特開2013-188197(JP,A)
特開2013-188198(JP,A)
太田富久, 石川県央・北部エリア「地域伝統発酵食品に学ぶ先進的発酵システム構築と新規高機能食品開発」平成21年度~23年度成果報告会, 研究テーマ1「発酵菌叢の遺伝子解析に基づく、新規発酵技術・食品の開発」, 平成24年2月17日発表(当該成果報告会の開催要綱、及び、発表資料)
岡田義清他, 日本消化吸収学会総会プログラム・講演抄録集, 2008, vol.39, p.167, 吸W18-12
久田孝他, 日本食品微生物学会雑誌, 2010, vol.27, no.4, p.185-95
熊谷英彦, 石川県央・北部エリア「地域伝統発酵食品に学ぶ先進的発酵システム構築と新規高機能食品開発」平成21年度~23年度成果報告会, 研究テーマ1「発酵菌叢の遺伝子解析に基づく、新規発酵技術・食品の開発」, 平成24年2月17日発表(当該成果報告会の開催要綱、及び、財団法人石川県産業創出支援機構, "ISICO", vol.63, p.10,11)
調査した分野 A61K 35/00-35/768
C12N 1/00- 1/38
A23L 1/27- 1/308
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
あじなれずしより分離したラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN3-5(受託番号:NITE P-1256)及びラクトバチラス・カゼイ(Lactobacillus casei) SB104LC (受託番号:NITE P-1259)からなる群より選択される1種又は2種の乳酸菌又はその培養物を有効成分とすることを特徴とする抗炎症・抗アレルギー剤。
【請求項2】
ラクトバチラス・カゼイ(Lactobacillus casei) SB104LC (受託番号:NITE P-1259)である乳酸菌。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症・抗アレルギー作用、免疫賦活作用、又は腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用の機能を有する乳酸菌及びその培養物、及びこれらの利用に関する。より詳細には、前記乳酸菌又はその培養物を含有する抗炎症・抗アレルギー剤、免疫賦活剤、腸管免疫賦活剤、該乳酸菌又はその培養物を利用する発酵食品の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
石川県は全国的にまれにみる発酵食品の宝庫であり、石川県能登及び加賀地域では、豊かな農産・海産資源を活かした発酵食品が伝統的に多種製造されている。その中でもとりわけ著名なのが、かぶらずし、あじなれずしである。
【0003】
かぶらずしは、塩漬けにしたカブに塩漬けしたブリの薄切りを挟み込み、細く切った人参などと一緒に、麹をまぶしながら樽に仕込み、低温で通常1週間~10日ほど発酵させて作られる発酵食品で、加賀地方を中心として口能登から加賀までと富山の西部地方までの範囲で作られている。かぶらずしの発酵は麹を添加することで促醸を行うものである。麹の他に野菜が魚などの抑臭のために用いられている。
【0004】
あじなれずしは、あじを塩と酢で下漬けし、米飯、あじ、山椒・トウガラシを順に桶に敷き詰め、何層も繰り返し、最後にご飯を敷き、蓋をして重りを載せ、冷暗所に置き、通常4週間以上発酵させ作られる。このようななれずしの発酵は米飯の乳酸発酵によるもので、これによって保存性が付与され、特有の臭いや酸味が醸される。
【0005】
乳酸発酵とは乳酸菌が糖を代謝(発酵)してその大部分を乳酸に変える反応である。発酵の形式には二通りあり、一つはホモ発酵と呼ばれ、1モルのブドウ糖(グルコース)から2モルの乳酸が生成される。この発酵を行うことが知られている主な乳酸菌はLactobacillus delbrueckii、Lactobacillus casei、Lactobacillus bulgaricus、Streptococcus lactisなどである。もう一つはヘテロ発酵と呼ばれ、1モルのブドウ糖から1モルの乳酸のほかにエチルアルコール、酢酸、グリセリン、炭酸ガスなどが生成される。この発酵を行うことが知られている主な乳酸菌はLactobacillus brevis、Lactobacillus buchneri、Leuconostoc mesenteroides、Lactobacillus pentoaceticusなどである。
【0006】
乳酸菌は古来より醸造食品や漬物中に多く含まれ、その乳酸発酵により食品に風味を付与してきた。石川県では酒、味噌、醤油等のいわゆる醸造食品の他に、先に述べたかぶらずし、なれずし等の多くの固有の伝統発酵食品があり、それらに乳酸菌が関与している。乳酸菌が関与する発酵食品中には、様々な生理活性を有する機能性物質が含まれており、乳酸菌が作り出す機能性物質、及びその機能が明らかにされつつある。
【0007】
例えば、乳酸菌のもつ機能性の一つとして、腸管免疫機能を有する乳酸菌が報告されている(特許文献1、特許文献2)。また、乳酸菌体又はその処理物(菌体由来成分)が、パイエル板細胞に対するIgA抗体産生向上作用を有していることが知られている(特許文献3)。特許文献3には、感染症予防、腫瘍抑制、アレルギー抑制及び整腸作用などの効果が期待され、免疫賦活剤や整腸剤などに利用できることが記載されている。
しかしその一方で、乳酸菌体又はその処理物(菌体由来成分)がもたらす免疫賦活活性及び免疫調節機能は、菌種が同一であっても菌株が違えばその効果も大きく異なることもまた当業者にはよく知られた事実である。そのため免疫賦活剤として用いる際には、用いる菌株の選定が非常に重要となる。そこで多くの研究機関において、より免疫賦活活性及び免疫調節機能の高い乳酸菌株の単離が行なわれている。
したがって、これまで乳酸菌叢についての研究報告のない発酵食品中の乳酸菌の機能を研究すれば、予期せぬ機能や従来の機能より優れた効果を示すことが期待でき、そのような研究も多くの研究機関で行われている。
【0008】
この背景から、本発明者らは、未だ知られていない「石川県の伝統発酵食品に含まれる乳酸菌の機能性」に着目し、鋭意検討を重ねた。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2004-305128号公報
【特許文献2】特開2010-130954号公報
【特許文献3】特開2008-201708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、石川県の伝統的な発酵食品に含まれる機能性を有する乳酸菌及びその培養物、より具体的には、抗炎症・抗アレルギー作用、免疫賦活作用、又は腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用の機能を有する乳酸菌及びその培養物、このような培養物を生成する乳酸菌、並びにその用途等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明者らは研究を重ね、石川県の伝統発酵食品から乳酸菌を単離してその菌種を同定し、さらにその機能性について検討した。その結果、単離された乳酸菌やその培養物が、抗炎症・抗アレルギー作用、免疫賦活作用、又は腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用等の機能を示すことを見出した。
【0012】
このような乳酸菌やその培養物は、機能性を有する発酵食品等の開発に非常に有用なものである。例えばこのような乳酸菌やその培養物を使用することにより、抗炎症・抗アレルギー作用、免疫賦活作用又は腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用等の機能を有する飲食品や医薬品等を製造することができる。例えば、分離した乳酸菌をスターターとして接種して、かぶらずし、あじなれずし、ヨーグルト等の乳酸発酵食品の製造を行うことにより、おいしさとともに機能性が付与又は強化された乳酸発酵食品を提供することができる。また、該乳酸菌をスターターとして使用し、発酵食品を製造することで、発酵過程の管理が容易になるとともに、最終製品の安定性、機能性が増大するという効果が得られる。
【0013】
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下の抗炎症・抗アレルギー作用、免疫賦活作用、又は腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用の機能を有する乳酸菌やその培養物を有効成分とする抗炎症・抗アレルギー剤、免疫賦活剤、及び腸管免疫賦活剤、その培養物が抗炎症・抗アレルギー作用、免疫賦活作用、又は腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用を示す乳酸菌、該培養物又は乳酸菌を用いる発酵食品の製造方法等を提供する。
【0014】
本発明は、以下の[1]~[13]に関する。
[1]あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離した1種又は2種以上の乳酸菌又はその培養物を有効成分とすることを特徴とする抗炎症・抗アレルギー剤。
[2]あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離した1種又は2種以上の乳酸菌又はその培養物を有効成分とすることを特徴とする免疫賦活剤。
[3]あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離した1種又は2種以上の乳酸菌又はその培養物を有効成分とすることを特徴とする腸管免疫賦活剤。
[4]乳酸菌が、ラクトバチラス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri) AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN3-5(受託番号:NITE P-1256)、ラクトバチラス・パラプランタラム(Lactobacillus paraplantarum) AN5-1、ラクトバチラス・プランタム(Lactobacillus plantarum) ANP7-1(受託番号:NITE P-1224)、ラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei) KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、ラクトバチラス・カゼイ(Lactobacillus casei) SB104LC (受託番号:NITE P-1259)及びペディオコッカス・エタノリデュランス(Pediococcus ethanolidurans) SB108(受託番号:NITE P-1228)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌であり、その培養物が抗炎症・抗アレルギー作用を有することを特徴とする前記[1]記載の抗炎症・抗アレルギー剤。
[5]乳酸菌が、ラクトバチラス・パラブフネリ(Lactobacillus parabuchneri) BN1-2(受託番号:NITE P-1258)、ラクトバチラス・パラブフネリ(Lactobacillus parabuchneri) ANP2-1(受託番号:NITE P-1257)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis) SB103(受託番号:NITE P-1127)及びロイコノストック・スペシ—ズ(Leuconostoc sp.) KK101 (受託番号:NITE P-1239)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌であり、その培養物が免疫賦活作用を有することを特徴とする前記[2]記載の免疫賦活剤。
[6]乳酸菌が、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN3-5(受託番号:NITE P-1256)、ラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei) KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis) SB103(受託番号:NITE P-1127)及びペディオコッカス・エタノリデュランス(Pediococcus ethanolidurans) SB108(受託番号:NITE P-1228)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌であり、その培養物が腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用を有することを特徴とする前記[3]に記載の腸管免疫賦活剤。
[7]あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離された乳酸菌であって、該乳酸菌及び/又はその培養物が1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び3)腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用からなる群より選択される少なくも1つの機能を有することを特徴とする乳酸菌。
[8]ラクトバチラス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri) AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN3-5(受託番号:NITE P-1256)、ラクトバチラス・パラプランタラム(Lactobacillus paraplantarum) AN5-1、ラクトバチラス・プランタム(Lactobacillus plantarum) ANP7-1(受託番号:NITE P-1224)、ラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei) KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、ラクトバチラス・カゼイ(Lactobacillus casei) SB104LC (受託番号:NITE P-1259)及びペディオコッカス・エタノリデュランス(Pediococcus ethanolidurans) SB108(受託番号:NITE P-1228)からなる群より選択される少なくとも1種であって、該乳酸菌及び/又はその培養物が抗炎症・抗アレルギー作用を有することを特徴とする前記[7]記載の乳酸菌。
[9]ラクトバチラス・パラブフネリ(Lactobacillus parabuchneri) BN1-2(受託番号:NITE P-1258)、ラクトバチラス・パラブフネリ(Lactobacillus parabuchneri) ANP2-1(受託番号:NITE P-1257)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis) SB103(受託番号:NITE P-1127)及びロイコノストック・スペシ—ズ(Leuconostoc sp.) KK101 (受託番号:NITE P-1239)からなる群より選択される少なくとも1種であって、該乳酸菌及び/又はその培養物が免疫賦活作用(IL-12誘導活性)を有することを特徴とする前記[7]記載の乳酸菌。
[10]ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN3-5(受託番号:NITE P-1256)、ラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei) KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis) SB103(受託番号:NITE P-1127)及びペディオコッカス・エタノリデュランス(Pediococcus ethanolidurans) SB108(受託番号:NITE P-1228)からなる群より選択される少なくとも1種であって、該乳酸菌及び/又はその培養物が腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用を有することを特徴とする前記[7]記載の乳酸菌。
[11]前記[7]~[10]のいずれか一項に記載の乳酸菌又はその培養物の、1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び3)腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用からなる群より選択される少なくとも1つの機能を有する飲食品製造のための使用。
[12]1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び3)腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用からなる群より選択される少なくも1つの機能を有する発酵食品の製造方法であって、前記[7]~[10]のいずれか一項に記載の乳酸菌又はその培養物を添加して発酵させる工程を含むことを特徴とする製造方法。
[13]1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び3)腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用からなる群より選択される少なくも1つの機能を有する発酵食品の製造方法であって、前記[7]~[10]のいずれか一項に記載の乳酸菌又はその培養物を添加して発酵させる工程を含むことを特徴とするイカ野菜詰め米麹まぶしの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の乳酸菌又はその培養物を用いると、抗炎症・抗アレルギー作用、免疫賦活作用又は腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用の機能を有する発酵食品等の飲食品及び医薬等を製造することができる。さらに、本発明の乳酸菌をスターターとして使用し、発酵食品等を製造することで、発酵過程の管理が容易になるとともに、最終製品の安定性、機能性が増大するという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、乳酸菌入りイカ野菜詰め米麹まぶしの製造方法の一例を示す図である。
【図2】図2は、各種乳酸菌体によるマウス骨髄由来樹状細胞におけるIL-12(p70) 産生誘導試験の結果(上図)、及びIL-10産生誘導試験の結果(下図)を示す図である。
【図3】図3は、各種乳酸菌入り米麹懸濁液によるマウス骨髄由来樹状細胞におけるIL-12(p70) 産生誘導試験の結果(上図)、及びIL-10産生誘導試験の結果(下図)を示す図である。
【図4】図4は、各種乳酸菌によるマウスパイエル板細胞におけるtotal IgA産生誘導試験の結果を示す図(上図:乳酸菌菌体を用いた場合、下図:米麹懸濁液を用いた場合)である。
【図5】図5は、各種乳酸菌体によるサイトカイン(INF-γ、IL-10)産生誘導試験の結果を示す図である。
【図6】図6は、各乳酸菌投与群における耳介の厚さを示す図である。
【図7】図7は、各乳酸菌投与群における生成IgE濃度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における乳酸菌の培養物は、あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離した乳酸菌1種又は2種以上の培養物であって、下記1)~3)の少なくも1つの機能を有するものである。
1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、又は3)腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用
本発明における乳酸菌は、あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離された乳酸菌であり、該乳酸菌及び/又はその培養物が前記1)~3)の少なくも1つの機能を有する乳酸菌であればよい。このような乳酸菌も、本発明に包含される。該乳酸菌やその培養物が前記機能を有することは公知の方法、例えば、実施例に記載の方法で確認することができる。

【0018】
前記乳酸菌の分離源であるあじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けは、いずれも石川県の伝統的な発酵食品であり、市販されている。また、既知の方法により製造することもできる。乳酸菌の分離及び同定は、自体公知の方法により行うことができる。

【0019】
本発明における乳酸菌の培養物は、通常、前記乳酸菌を培地で培養した培養液、又はその処理物である。培養物には、乳酸菌が含まれていることが好ましい。乳酸菌は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。培養液又は培養液の処理物として、該培養液又は培養液の希釈液又は濃縮液、該培養液を乾燥させて得られる乾燥物、該培養液の粗精製物若しくは精製物、又はその乾燥物等が挙げられる。粗精製又は精製の方法は、本発明の効果を奏することになる限り特に限定されず、公知の手法により行うことができる。

【0020】
本発明における乳酸菌の培養物は、後述する乳酸菌を、公知の方法で培養することにより得られる。例えば、後述するような前記発酵食品から分離した乳酸菌を、培地中で通常の条件で培養することにより得ることができる。培地は、乳酸菌の培養に通常使用される炭素源、窒素源、ミネラル等を含むものであればよく、天然培地又は合成培地等を用いることができる。好ましくは、液体培地を用いる。培養物を得るための培養は、例えば、培養温度は、約5~45℃とすることが好ましく、約25~37℃とすることがより好ましい。培地のpHは、例えば約4~8とすることが好ましく、約6~7とすることがより好ましい。同時にpHを制御してもよく、酸又はアルカリを用いてpHの調整を行うことができる。また、pH3付近でも乳酸生成能を有する菌については、培地のpHを3付近とすることもできる。培養時間は、通常約24時間以上が好ましく、より好ましくは約48~96時間である。培養は、好気条件下で行ってもよく、嫌気条件下で行ってもよい。好ましくは嫌気条件下で行う。
このように培養した培養液を培養物として使用することができる。

【0021】
炭素源としては、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、セロビオース、廃糖蜜、グリセロール等が挙げられ、好ましくはグルコース、スクロース等である。窒素源としては、無機態窒素源では、例えばアンモニア、アンモニウム塩等、有機態窒素源では、例えば尿素、アミノ酸、タンパク質等をそれぞれ単独もしくは2種以上を混合して用いることができ、好ましくはアンモニウム塩、アミノ酸等である。またミネラル源として、おもにK、P、Mg、Sなどを含む、例えばリン酸一水素カリウム、硫酸マグネシウム等を用いることができる。この他にも必要に応じて、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸やビオチン、チアミン等の各種ビタミン等の栄養素を培地に添加することもできる。培地中の炭素源、窒素源等の濃度は、乳酸菌が生育できる通常の濃度であればよく、特に限定されない。通常、培養開始時の炭素源濃度は0.1~15%(wt)程度が好ましく、より好ましくは1~10%(wt)程度である。培養開始時の窒素源の濃度は、通常0.1~15%(wt)程度、好ましくは1~15%(wt)程度、より好ましくは1~10%(wt)程度とすればよい。

【0022】
本発明における前記発酵食品から分離した乳酸菌として、後記の表1及び表6に示される乳酸菌等が好ましい。乳酸菌は、生菌であってもよく、死菌であってもよいが、生菌が好ましい。菌の形態も特に限定されず、菌体乾燥物等であってもよい。
表1及び表6に示される乳酸菌のうち、ラクトバチラス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri) AN1-1及びSB21、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN1-5、AN3-5及びSB109、ラクトバチラス・プランタラム (Lactobacillus plantarum) AN3-2及びANP7-1、ラクトバチラス・パラブフネリ(Lactobacillus parabuchneri) BN1-2及びANP2-1、ラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei) KP7-11、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis) SB103、ラクトバチラス・カゼイ (Lactobacillus casei) SB104LC、ワイセラ・ヘレニカ(Weissella hellenica) SB105、ぺディオコッカス・エタノリデュランス(Pediococcus ethanolidurans) SB108及びロイコノストック・スペシ—ズ(Leuconostoc sp.) KK101は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託申請し、以下の受託番号で受託された。
Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus plantarum AN3-2(受託番号:NITE P-1255)(受託日:2012年2月24日)
Lactobacillus brevis AN3-5(受託番号:NITE P-1256)(受託日:2012年2月24日)
Lactobacillus parabuchneri BN1-2(受託番号:NITE P-1258)(受託日:2012年2月24日)
Lactobacillus parabuchneri ANP2-1(受託番号:NITE P-1257)(受託日:2012年2月24日)
Lactobacillus plantarum ANP7-1(受託番号:NITE P-1224)(受託日:2012年2月3日)
Lactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)(受託日:2011年8月30日)
Enterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacills casei SB104LC (受託番号:NITE P-1259)(受託日:2012年2月24日)
Weissella hellenica SB105(受託番号:NITE P-1128)(受託日:2011年8月12日)
Pediococcus ethanolidurans SB108(受託番号:NITE P-1228)(受託日:2012年2月3日)
Lactobacillus brevis SB109(受託番号:NITE P-1260)(受託日:2012年2月24日)
Leuconostoc sp. KK101 (受託番号:NITE P-1239)(受託日:2012年2月15日)

【0023】
表1及び表6に示す乳酸菌の中でも、例えば、ラクトバチラス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri) AN1-1、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN3-5、ラクトバチラス・パラブフネリ(Lactobacillus parabuchneri) (BN1-2又はANP2-1)、ラクトバチラス・パラプランタラム(Lactobacillus paraplantarum) AN5-1、ラクトバチラス・プランタム(Lactobacillus plantarum) ANP7-1、ラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei) KP7-11、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis) SB103、ラクトバチラス・カゼイ(Lactobacillus casei) SB104LC、ペディオコッカス・エタノリデュランス(Pediococcus ethanolidurans) SB108、ロイコノストック・スペシ—ズ(Leuconostoc sp.) KK101等が好ましい。より好ましくは、Lactobacillus buchneri AN1-1、Lactobacillus brevis AN3-5、Lactobacillus paraplantarum AN5-1、Lactobacillus sakei KP7-11、Enterococcus faecalis SB103、Lactobacillus casei SB104LC等である。

【0024】
前記乳酸菌の中で、ラクトバチラス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri) AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN3-5(受託番号:NITE P-1256)、ラクトバチラス・パラプランタラム(Lactobacillus paraplantarum) AN5-1、ラクトバチラス・プランタム(Lactobacillus plantarum) ANP7-1(受託番号:NITE P-1224)、ラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei) KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、ラクトバチラス・カゼイ(Lactobacillus casei) SB104LC (受託番号:NITE P-1259)及びペディオコッカス・エタノリデュランス(Pediococcus ethanolidurans) SB108(受託番号:NITE P-1228)は、該乳酸菌及びその培養物が高い抗炎症・抗アレルギー作用を示すものであるため好ましい。

【0025】
前記乳酸菌の中で、ラクトバチラス・パラブフネリ(Lactobacillus parabuchneri) BN1-2(受託番号:NITE P-1258)、ラクトバチラス・パラブフネリ(Lactobacillus parabuchneri) ANP2-1(受託番号:NITE P-1257)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis) SB103(受託番号:NITE P-1127)及びロイコノストック・スペシ—ズ(Leuconostoc sp.) KK101 (受託番号:NITE P-1239)は、該乳酸菌及びその培養物が高い免疫賦活作用(例えば、IL-12誘導活性)を示すものであるため好ましい。

【0026】
前記乳酸菌の中で、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN3-5(受託番号:NITE P-1256)、ラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei) KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis) SB103(受託番号:NITE P-1127)及びペディオコッカス・エタノリデュランス(Pediococcus ethanolidurans) SB108(受託番号:NITE P-1228)は、該乳酸菌及びその培養物が高い腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用を示すものであるため好ましい。

【0027】
抗炎症・抗アレルギー作用を有する培養物として、Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、Lactobacillus brevis AN3-5(受託番号:NITE P-1256)、Lactobacillus paraplantarum AN5-1、Lactobacillus plantarum ANP7-1(受託番号:NITE P-1224)、Lactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、Lactobacillus casei SB104LC (受託番号:NITE P-1259)及びPediococcus ethanolidurans SB108(受託番号:NITE P-1228)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌の培養物等が好ましい。このような乳酸菌1種又は2種以上の培養物は、高い抗炎症・抗アレルギー作用を示すものであるため好ましい。

【0028】
免疫賦活作用を有する培養物として、Lactobacillus parabuchneri BN1-2(受託番号:NITE P-1258)、Lactobacillus parabuchneri ANP2-1(受託番号:NITE P-1257)、Enterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)及びLeuconostoc sp. KK101 (受託番号:NITE P-1239 )からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌の培養物等が好ましい。このような乳酸菌1種又は2種以上の培養物は、高い免疫賦活作用(例えば、IL-12誘導活性)を示すものであるため好ましい。

【0029】
腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用を有する培養物として、Lactobacillus brevis AN3-5(受託番号:NITE P-1256)、Lactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、Enterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)及びPediococcus ethanolidurans SB108(受託番号:NITE P-1228)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌の培養物等が好ましい。このような乳酸菌1種又は2種以上の培養物は、高い腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用を示すものであるため好ましい。腸管免疫グロブリン(IgA)は腸管免疫系に関与しているため、腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用を有する物質は、腸管免疫を賦活する作用を示すものである。

【0030】
前記乳酸菌の培養物、及び前記乳酸菌は、発酵食品から分離された乳酸菌及びその培養物であることから、安全性が高いものである。このような培養物及び乳酸菌は、1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び/又は3)腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用の機能を有する機能性食品等の飲食品、医薬等の製造のために好適に利用される。中でも、抗炎症・抗アレルギー作用を有する飲食品、医薬等の製造に特に好適に用いられる。

【0031】
本発明は、あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離した1種又は2種以上の乳酸菌又はその培養物を有効成分とする抗炎症・抗アレルギー剤も包含する。本発明の抗炎症・抗アレルギー剤の有効成分は、上述した抗炎症・抗アレルギー作用を有する乳酸菌又はその培養物である。

【0032】
本発明は、あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離した1種又は2種以上の乳酸菌又はその培養物を有効成分とする免疫賦活剤も包含する。本発明の免疫賦活剤の有効成分である乳酸菌の培養物は、上述した免疫賦活作用(例えば、IL-12誘導活性)を有する乳酸菌又はその培養物である。

【0033】
本発明は、あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離した1種又は2種以上の乳酸菌又はその培養物を有効成分とする腸管免疫賦活剤も包含する。本発明の腸管免疫賦活剤の有効成分は、上述した腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用を有する乳酸菌又はその培養物である。
本発明の抗炎症・抗アレルギー剤、免疫賦活剤、及び腸管免疫賦活剤における乳酸菌、その培養物及びそれらの好ましい態様等は、上述したものと同じである。

【0034】
本発明の抗炎症・抗アレルギー剤の有効成分として、ラクトバチラス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri) AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN3-5(受託番号:NITE P-1256)、ラクトバチラス・パラプランタラム(Lactobacillus paraplantarum) AN5-1、ラクトバチラス・プランタム(Lactobacillus plantarum) ANP7-1(受託番号:NITE P-1224)、ラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei) KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、ラクトバチラス・カゼイ(Lactobacillus casei) SB104LC (受託番号:NITE P-1259)及びペディオコッカス・エタノリデュランス(Pediococcus ethanolidurans) SB108(受託番号:NITE P-1228)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌又はその培養物が好ましい。

【0035】
例えば、本発明の免疫賦活剤の有効成分として、ラクトバチラス・パラブフネリ(Lactobacillus parabuchneri) BN1-2(受託番号:NITE P-1258)、ラクトバチラス・パラブフネリ(Lactobacillus parabuchneri) ANP2-1(受託番号:NITE P-1257)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis) SB103(受託番号:NITE P-1127)及びロイコノストック・スペシ—ズ(Leuconostoc sp.) KK101 (受託番号:NITE P-1239)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌又はその培養物が好ましい。

【0036】
本発明の腸管免疫賦活剤の有効成分として、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN3-5(受託番号:NITE P-1256)、ラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei) KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis) SB103(受託番号:NITE P-1127)及びペディオコッカス・エタノリデュランス(Pediococcus ethanolidurans) SB108(受託番号:NITE P-1228)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌又はその培養物が好ましい。

【0037】
本発明の抗炎症・抗アレルギー剤、免疫賦活剤、及び腸管免疫賦活剤は、前記乳酸菌やその培養物に、所望により薬学上許容される公知の添加剤等を添加及び混合し、従来充分に確立された公知の製剤製法を用いることにより容易に製造される。添加剤は特に限定されず、公知のものを使用することができる。また必要ある場合には、他の薬剤との併用も可能である。
本発明の抗炎症・抗アレルギー剤、免疫賦活剤、及び腸管免疫賦活剤の剤型は特に限定されないが、経口投与の剤型が好ましい。

【0038】
乳酸菌又はその培養物の製剤中の含有量は、通常、最終製剤中に約0.000001~99質量%である。前記乳酸菌又はその培養物の投与量は、本発明の効果を奏することになる限り特に限定されず、投与対象等に応じて適宜設定すればよい。

【0039】
例えば、本発明の抗炎症・抗アレルギー剤は、副作用が少なく、長期間服用しても安全なものであり、しかも例えば経口投与により優れた抗炎症・抗アレルギー作用を発揮することから、アレルギーに関連する疾病等の治療及び/又は予防のための医薬として有用である。また、本発明の免疫賦活剤及び腸管免疫賦活剤は、副作用が少なく、優れた免疫賦活作用を発揮することから、例えば、免疫系を活性化するための医薬として好適に使用されるものである。

【0040】
本発明の抗炎症・抗アレルギー剤、免疫賦活剤、及び腸管免疫賦活剤は、前述した医薬品として用いることができるほか、機能性食品、特定保健用食品又はドリンク剤などの飲食品として用いることができるものである。飲食品組成物中に含まれる乳酸菌又はその培養物の量は、通常、最終組成物中に約0.000001~99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。

【0041】
本発明の抗炎症・抗アレルギー剤、免疫賦活剤、及び腸管免疫賦活剤は、食品添加剤等としても好適に使用される。前記乳酸菌又はその培養物を含有する食品添加剤は、飲食品の抗炎症・抗アレルギー作用、免疫賦活作用、及び腸管免疫賦活作用の少なくとも1つの作用を強化させるために好適に使用することができるものである。例えば、飲食品に本発明の抗炎症・抗アレルギー剤、免疫賦活剤、及び腸管免疫賦活剤の1以上を添加すると、該剤を添加しない場合と比較して飲食品の抗炎症・抗アレルギー作用、免疫賦活作用及び腸管免疫賦活作用の1以上の作用を強化することができる。

【0042】
前記乳酸菌又はその培養物は、1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び3)腸管免疫賦活作用の少なくとも1つの作用を有する飲食品の製造のために好適に使用される。また、前記乳酸菌又はその培養物は、1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び3)腸管免疫賦活作用の少なくとも1つの作用が強化された飲食品の製造のために好適に使用される。その培養物が、1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び3)腸管免疫賦活作用の少なくとも1つの作用を有する、あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離した1種又は2種以上の乳酸菌又はその培養物の、1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び3)腸管免疫賦活作用の少なくとも1つの機能が強化された飲食品を製造するための使用も、本発明に包含される。

【0043】
前記乳酸菌又はその培養物を用いて前記飲食品を製造する方法は特に限定されず、例えば、飲食品の製造において前記乳酸菌又はその培養物を添加する方法等が挙げられる。飲食品としては特に限定されないが、例えば後述する発酵食品等が好ましい。

【0044】
発酵食品の製造において、例えば、前記乳酸菌又はその培養物を添加して発酵させる工程を含むことにより、1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び/又は3)腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用の機能を有する、又は該機能が強化された発酵食品を製造することができる。このような発酵食品の製造方法も、本発明に包含される。1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び/又は3)腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用の機能が強化されたとは、前記乳酸菌又はその培養物を添加しない場合と比較して該食品が高い1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び/又は3)腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用の機能を示すことをいう。

【0045】
発酵食品としては、乳酸発酵を利用して製造されるものが好ましく、例えば、あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、うり糠漬け、イカ野菜詰め米麹まぶし等が好適である。これら以外にも、牛乳等の哺乳類の乳又は豆乳から製造されるヨーグルト、乳酸菌入り米麹、ブルーベリージュース等を用いたジェラート(アイスクリーム)、味噌、醤油、チーズ、清酒、ワイン、漬物、パン等の製造において、前記乳酸菌の培養物、又は前記乳酸菌を使用することにより、1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び/又は3)腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用等の機能を有する、又は該機能が強化された発酵食品を製造することができる。

【0046】
本発明の発酵食品の製造方法においては、好ましくは、発酵食品の製造において、発酵(好ましくは乳酸発酵)の際に前記乳酸菌又はその培養物を添加して発酵を行う。前記乳酸菌又はその培養物の添加量、乳酸菌又はその培養物を添加して発酵させる条件等は、発酵食品の種類等により適宜選択すればよく、特に限定されない。好ましくは、発酵温度は約5~45℃とする。添加する乳酸菌又はその培養物は、所望する機能に応じて適宜選択することができ、例えば、抗炎症・抗アレルギー作用を有する、又は該作用が強化された飲食品を製造する場合には、Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、Lactobacillus brevis AN3-5(受託番号:NITE P-1256)、Lactobacillus paraplantarum AN5-1、Lactobacillus plantarum ANP7-1(受託番号:NITE P-1224)、Lactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、Lactobacillus casei SB104LC (受託番号:NITE P-1259)及びPediococcus ethanolidurans SB108(受託番号:NITE P-1228)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌、又はその培養物を用いることが好ましい。

【0047】
例えば、前記乳酸菌をスターターとして接種して、乳酸発酵食品の製造を行うことも好ましい。これにより、おいしさとともに機能性が付与された乳酸発酵食品を効率よく提供することができる。また、該乳酸菌をスターターとして使用し、発酵食品を製造することで、発酵過程の管理が容易になるとともに、最終製品の安定性、機能性が増大するという効果も得られる。

【0048】
前記乳酸菌をスターターとして接種して、機能性をもたせた乳酸発酵食品の例として、乳酸菌入りイカ野菜詰め米麹まぶしの製造試作の例を以下の実施例1及び2で示した。本来、能登イカの野菜詰めは、(株)四十萬谷本舗(石川県金沢市)で販売されている商品である。奥能登の小木港は、全国でも指折りのイカの水揚げを誇り、そこで揚がったスルメイカに、キャベツ、にんじん、加賀野菜の金時草を詰め、酢で漬けこんだもので、能登の発酵文化のひとつ、魚醤『いしり』を隠し味に使った商品である。

【0049】
本発明は、前記乳酸菌又はその培養物を添加して発酵させる工程を含むイカ野菜詰め米麹まぶしの製造方法も包含する。このような方法により、1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び3)腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用からなる群より選択される少なくも1つの機能を有するイカ野菜詰め米麹まぶしを製造することができる。

【0050】
本発明の方法においては、例えば、通常のイカ野菜詰め米麹まぶしの製造方法において、発酵の際に前記乳酸菌又はその培養物を添加し、通常採用される条件で発酵を行うことにより1)抗炎症・抗アレルギー作用、2)免疫賦活作用、及び3)腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用からなる群より選択される少なくも1つの機能を有するイカ野菜詰め米麹まぶしを製造することができる。

【0051】
本発明のイカ野菜詰め米麹まぶしの製造方法の好ましい態様の一例を説明する。、例えば、イカ(好ましくはスルメイカ)の内臓と足を抜き、胴は皮をむき、足と共に蒸すことが好ましい。キャベツ、人参、金時草、生姜などの野菜を刻み、前記乳酸菌を加えた甘酢に漬け込み、蒸したイカの胴に専用の治具等を用いて足と共に詰め込む。これに前記乳酸菌を使用した種米麹を加えて発酵させることにより、イカ野菜詰め米麹まぶしを製造することができる。発酵は、通常5~37℃程度で、より好ましくは10~20℃程度で、1~20日程度、より好ましくは5~10日程度行うことが好ましい。乳酸菌を含む種米麹を加えた米麹の添加量は、イカ一杯につき50~200g程度とすることが好ましい。前記乳酸菌を使用した種米麹(スターター)調製は、米麹に前記乳酸菌を添加し、5~37℃で、より好ましくは10~20℃程度で、1~20日間、より好ましくは5~10日程度発酵させることにより製造することができる。米麹に対する乳酸菌の添加量は、米麹100gに対して、通常乳酸菌の生菌数で10~1012程度である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
1-1 乳酸菌の分離及び培養のための培地
「かぶらずし」及び「あじなれずし」等の発酵食品からの乳酸菌の分離には、MRS培地(市販品、Difco社製)55gを最終液量が1Lとなるような濃度に純水で溶解し、これに終濃度2%になるように寒天を添加して作製したプレートを使用した。
分離した乳酸菌の液体培養培地にはMRS培地(市販品、Difco社製)を使用した。
【実施例】
【0054】
1-2 培養方法及び条件
乳酸菌を純粋培養する最初の基本培養は次の方法で行った。4 ml容バイアルとMRS液体培地を別々に120℃、20分オートクレーブし、冷却後、MRS液体培地4 mlをバイアルに分注した。滅菌したつまようじを用いて、乳酸菌コロニー又は冷凍保存液を一掻きMRS液体培地の入ったバイアルにシードし、30℃で2~3日間培養した。この培養液をそれぞれの目的に応じて使用した。
【実施例】
【0055】
1-3 発酵食品からの乳酸菌の分離方法
「かぶらずし」((株)四十萬谷本舗)及び「あじなれずし」(柳田食産(株))等の石川県の伝統発酵食品より種々の乳酸菌を分離した。その一方法として、これらの素材、例えば米麹又は蒸し米部分の約1 gを計量し、生理食塩水10 mlで懸濁し、滅菌した0.85%生理食塩水(10 ml/試験管)で適宜、希釈後、その0.1 mlをMRS寒天培地に塗布し、30℃で2~3日間培養し、コロニーを形成させた。その際、特別に嫌気条件にはしなかった。
【実施例】
【0056】
それぞれの素材サンプルから得たコロニーのいくつか(8~24コロニー程度)を4 ml MRS液体培地(4 ml容バイアル中)にて、30℃、2~3日間培養し、その培養液1 mlを滅菌した30%グリセリン1 mlの入ったバイアルに注入後、-80℃のフリーザーに保存するとともに、残りの培養液を16SrRNA遺伝子の解析を行うためにゲノムDNAの調製に使用した。
【実施例】
【0057】
1-4 16SrRNA遺伝子の解析による乳酸菌の同定
<乳酸菌よりゲノムDNAの調製>
Wizard(登録商標)Genomic DNA Purification Kit (Promega社製)を使用して、乳酸菌よりゲノム DNAを調製した。
【実施例】
【0058】
<PCRによる16SrDNA断片の増幅>
前記で抽出したゲノムDNAから、PCRにより16SrDNA断片を増幅した。PCRはEx Taq(登録商標)DNA Polymerase (タカラバイオ社)を用いて行い、16SrDNA用プライマーとして以下の配列のプライマーを用いた。
[7-F (プライマー名)]
5’-AGAGTTTGATYMTGGCTCAG-3’ (配列番号1)
[1510-R (プライマー名)]
5’-ACGGYTACCTTGTTACGACTT-3’ (配列番号2)
配列番号1及び2中、Yは、C(シトシン)又はT(チミン)、Mは、A(アデニン)又はC(シトシン)である。
【実施例】
【0059】
PCRのサイクルは、以下の通りである。
96℃、2分→(96℃、15秒→50℃、15秒→72℃、1分30秒)を25サイクル→4℃で保温。
【実施例】
【0060】
増幅断片の精製は、QIAquick(登録商標)PCR purification kit (QIAGEN社) を使用して行った。キットで精製した DNA 溶液、並びに、前記の配列番号1のプライマー及び配列番号2のプライマーを用いて、以下のサイクルで、PCR 機を用いて増幅反応した。
96℃、1分→(96℃、10秒→50℃、5秒→60℃、4分)を30サイクル。
【実施例】
【0061】
反応後、X terminator(登録商標)Solution (BigDye X Terminator 精製キット、Applied Biosystems社製) を使用して反応液を精製し、得られた上清 40~50μl をシークエンサー用専用ラックに移し、Genetic Analyzer(製品名、3130xl Genetic Analyzer、Applied Biosystems社製)を用いてシークエンス解析した。
【実施例】
【0062】
実施例1において発酵食品から単離した菌株のうち、以下の実施例で、腸管免疫機能を検討した菌種を表1にまとめた。
【実施例】
【0063】
【表1】
JP0005968655B2_000002t.gif
【実施例】
【0064】
表1に示す12種の乳酸菌のうち、Lactobacillus buchneri AN1-1、Lactobacillus brevis AN3-5、Lactobacillus parabuchneri BN1-2、Lactobacillus parabuchneri ANP2-1、Lactobacillus plantarum ANP7-1、Lactobacillus sakei KP7-11、Enterococcus faecalis SB103、Pediococcus ethanolidurans SB108、Lactobacillus brevis SB109及びLeuconostoc sp. KK101については、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託申請し、以下の受託番号で受託された。
Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus brevis AN3-5(受託番号:NITE P-1256)(受託日:2012年2月24日)
Lactobacillus parabuchneri BN1-2(受託番号:NITE P-1258)(受託日:2012年2月24日)
Lactobacillus parabucneri ANP2-1(受託番号:NITE P-1257)(受託日:2012年2月24日)
Lactobacillus plantarum ANP7-1(受託番号:NITE P-1224)(受託日:2012年2月3日)
Lactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)(受託日:2011年8月12日)
Enterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)(受託日:2011年8月12日)
Pediococcus ethanolidurans SB108(受託番号:NITE P-1228)(受託日:2012年2月3日)
Lactobacillus brevis SB109(受託番号:NITE P-1260)(受託日:2012年2月24日)
Leuconostoc sp. KK101(受託番号:NITE P-1239)(受託日:2012年2月15日)
【実施例】
【0065】
以下の実施例中、表1に示した乳酸菌の菌種名を略し、菌株名のみで表す場合もある。例えば、AN1-1は、Lactobacillus buchneri AN1-1を意味する。
【実施例】
【0066】
[実施例2]
腸管免疫機能の検討
2-1 使用菌株
石川県の発酵食品から単離された表1に示す12種の乳酸菌を用いた。
【実施例】
【0067】
2-2 菌体懸濁液の調製
乳酸菌の純粋培養は次の方法で行った。4ml容バイアルとMRS液体培地を別々に120℃、20分オートクレーブし、冷却後、MRS 4mlをバイアルに分注した。滅菌したつまようじを用いて、乳酸菌の冷凍保存液を一掻きMRS培地の入ったバイアルにシードし、30℃で3日間培養した。その培養液の1 mlを1.5 ml容エッペンドルフチューブにて、10,000rpm、5 分間遠心分離して、菌体を集菌し、その菌体湿重量を測定した。その重量が10 mgを超えない場合にはさらにその上に1mlの培養液を加え、湿重量が10 mgを超えるまで前記操作を繰り返した。集菌後、1 mlの生理食塩水にて菌懸濁液を調製し、冷凍保存後、免疫機能測定に使用した。冷凍保存した各分析用サンプル(菌体の冷凍保存液)は、以下の表2に示す通りであった。
【実施例】
【0068】
【表2】
JP0005968655B2_000003t.gif
【実施例】
【0069】
2-3 種米麹の調製、仕込み
表1に示す12種の乳酸菌それぞれを米麹に接種して、種米麹(1)~(12)を調製した。表1に示す12種の乳酸菌それぞれについて、滅菌したつまようじを用いて、菌体の冷凍保存液を一掻き4mlのMRS培地の入ったバイアルにシードし、30℃で3日間培養した。その全量を、菌種ごとに200mlのMRS液体培地/300ml容三角フラスコにシードし、30℃、3日間本培養した。菌種ごとに、その培養液の全量を50 ml容ファルコンチューブにて、8,000rpm、10 分間遠心分離して、菌体を集菌し、滅菌した0.85%生理食塩水で2回洗浄した。それらの菌をそれぞれ生理食塩水40mlで懸濁し、米麹100gに接種し、12℃で、12日間発酵させて種米麹(1)~(12)を得た。発酵終了時の菌数測定として、各米麹約1gをサンプリングし、生理食塩水10mlで懸濁し、生理食塩水10mlで適宜、希釈後、その0.1mlをMRS寒天培地に塗沫し、30℃で2~3日間培養し、コロニーを形成させた。その際、特別に嫌気条件にはしなかった。コロニー数をカウントすることによって米麹1g当たりの菌数を算出した。
また、種米麹の発酵終了後、それぞれの菌種毎に、得られた種米麹を15 ml容ファルコンチューブにほぼ10gずつ分取し、-30℃にて冷凍保存した。この冷凍種米麹をイカ野菜詰め米麹まぶし用の種菌として使用した。冷凍前の各種米麹における生菌数を、以下の表3に示す。
【実施例】
【0070】
【表3】
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【実施例】
【0071】
2-4 乳酸菌入りイカ野菜詰め米麹まぶしの製法及び試作
図1に乳酸菌入りイカ野菜詰め米麹まぶしの製法の概要を示す。乳酸菌入りイカ野菜詰め米麹まぶしの試作は、株式会社四十萬谷本舗(石川県金沢市)が行った。
前記2-3で調製した、乳酸菌を米麹100gに混ぜて12℃で発酵させ、冷凍保存した各種米麹(表3の(1)~(12))10gをそれぞれスターターとした。そして以下の基本的な調合及び操作で試作を行った。スターター米麹10gを新たな米麹150gに混ぜたものをイカ1匹分として使用し、イカ野菜詰め米麹まぶし試作品とし、12℃で7日間発酵させて、イカ野菜詰め米麹まぶし試作品(1)~(12)を得た。また、乳酸菌を添加しない米麹を用いた以外は同様の方法で、コントロールのイカ野菜詰め米麹まぶしを作製した。表1に示す12種の乳酸菌それぞれをスターターとしたイカ野菜詰め米麹まぶし試作品(1)~(12)及びコントロールの発酵終了時の菌数測定として、各試作品から米麹約1gをサンプリングし、生理食塩水10mlで懸濁した米麹の懸濁液を調製し、これを生理食塩水10mlで適宜、希釈後、その0.1mlをMRS寒天培地に塗沫し、30℃で2~3日間培養し、コロニーを形成させた。その際、特別に嫌気条件にはしなかった。コロニー数をカウントすることによって米麹1g当たりの菌数を算出した。この乳酸菌入りイカ野菜詰め米麹まぶしの各試作品における生菌数を、表4に示す。なお、試作したイカ野菜詰め米麹まぶしは、通常、発酵終了後に真空パックし、冷凍で保存する製品形態とすることができる。
また、同時に前記米麹の懸濁液を1ml採取し、冷凍保存後、免疫機能測定に使用した。
【実施例】
【0072】
【表4】
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【実施例】
【0073】
試作品の発酵終了時に菌数測定したプレートに生育するコロニーの観察の結果、スターターの接種によって、いずれのイカ野菜詰め米麹まぶし試作品にも、スターターとして使用した菌種とほぼ同一の乳酸菌の菌種が観察された。その中で、一部混在菌が認められた試作品があったので、それらの試作品について、混在菌を中心に5株ずつ採取し、菌種解析をしたところ、表5に示すように、Lactobacillus sakeiやLactobacillus brevis、Lactobacillus plantarum等が混在していた。
【実施例】
【0074】
【表5】
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【実施例】
【0075】
2-5 マウス骨髄由来樹状細胞を用いるIL-12(p70) 産生誘導試験、及びIL-10産生誘導試験
マウスBALB/c(8週齢、メス、クレア)から骨髄細胞を採取し、RED BLOOD CELL LYSING BUFFER(SIGMA R7757)を用いて溶血後、磁気ビーズを用いて標識した骨髄細胞からCD8、CD4、I-Ad、B220のいずれかも発現していない未分化な細胞をnegative画分として回収した。得られた細胞はGM-CSF conditioned medium を最終濃度10%で添加したRPMI1640培地(10%仔ウシ胎児血清(Biowest)、100U/mlのペニシリン、100μg/wellのストレプトマイシン、0.2mMのL-グルタミン酸、1mMのピルビン酸、0.1mMの非必須アミノ酸、0.05mMの2-メルカプトエタノールを含むRPMI1640培地(Gibco))に3.0×105cells/mlで懸濁し、10mlずつ細胞培養用シャーレ(BDF(登録商標)ALCON 353003)を用いて5%CO2条件下、37℃、8日間培養を行った。
【実施例】
【0076】
培養3日目には各シャーレにGM-CSF conditioned mediumを含むRPMI1640培地を5mlずつ加えた。培養終了後、骨髄由来樹状細胞を浮遊細胞として回収し、RPMI1640培地で洗浄後、96well Cell Culture Cluster (Flat bottom;CORNING 3596)に100μl/well(1.0×105cells/well)でアプライした。そこへRPMI1640培地に懸濁した各乳酸菌菌体(乳酸菌菌体濃度200μg/ml、又は20μg/ml)、あるいは前記2-4で調製した発酵終了後のイカ野菜詰め米麹まぶし試作品の米麹懸濁液(米麹を10重量%添加したもの、又は2重量%添加したもの)をそれぞれ100μl/wellで加えた試験溶液について、5%CO2条件下、37℃、24hr培養を行った。なお、培養は各サンプルに対してn=3wellで実施した。培養上清中のIL-10濃度、IL-12(p70)濃度はそれぞれOptEIA Mouse IL-10ELISA Set(BD社、カタログ番号 555252)、OptEIA Mouse IL-12(p70)ELISA Set(BD社、カタログ番号 555256)を用いて測定した。
【実施例】
【0077】
各種乳酸菌体によるマウス骨髄由来樹状細胞におけるIL-12(p70) 産生誘導試験、IL-10産生誘導試験の結果を図2に、各種乳酸菌入り米麹懸濁液によるマウス骨髄由来樹状細胞におけるIL-12(p70) 産生誘導試験の結果、及びIL-10産生誘導試験の結果を図3に示す。
【実施例】
【0078】
図2の上図(IL-12(p70) 産生誘導試験結果)及び下図(IL-10産生誘導試験結果)中、薄いグレーのバーは、各乳酸菌体の200μg/ml懸濁液を添加した場合(試験溶液中の乳酸菌体濃度は100μg/ml)の培養上清中のIL-12(p70)濃度(上図)及びIL-10濃度(下図)であり、濃いグレーのバーは、各乳酸菌菌体の20μg/ml懸濁液を添加した場合(試験溶液中の乳酸菌体濃度は10μg/ml)の培養上清中のIL-12(p70)濃度(上図)及びIL-10濃度(下図)である。
【実施例】
【0079】
図3の上図(IL-12(p70) 産生誘導試験結果)及び下図(IL-10産生誘導試験結果)中、薄いグレーのバーは、各米麹懸濁液の10重量%懸濁液を添加した場合(試験溶液中の米麹濃度は5重量%)の培養上清中のIL-12(p70)濃度(上図)及びIL-10濃度(下図)であり、濃いグレーのバーは、各米麹懸濁液の2重量%懸濁液を添加した場合(試験溶液中の米麹濃度は1重量%)の培養上清中のIL-12(p70)濃度(上図)及びIL-10濃度(下図)である。
【実施例】
【0080】
図2に示す結果より、乳酸菌菌体では100μg/mlの作用濃度で高いIL-12(p70)、IL-10の産生誘導活性をもつ菌株が認められた。IL-12(p70)産生誘導活性のみをもつ菌株はBN1-2、ANP2-1、SB103、KK101であり、最も活性が高かったのはSB103であった。IL-10産生誘導活性のみをもつ菌株は存在しなかった。IL-12(p70) 産生誘導、IL-10産生誘導ともに活性が高かったのはKP7-11であった。IL-12(p70)、IL-10ともに産生誘導活性をもつ菌株はAN1-1、AN3-5、AN5-1、AP7-1、KP7-11、SB108であり、IL-12(p70)/IL-10比が最も高いのはAN5-1で、最も低いのはANP7-1であった。
【実施例】
【0081】
図3に示すように、各乳酸菌を添加して発酵させた米麹の懸濁液についても、IL-12(p70)、IL-10の産生誘導活性を示すことが認められた。なお、コントロールについてもある程度のIL-12(p70)、IL-10の産生誘導活性が認められたが、これは、米麹の発酵液の影響などが考えられた
【実施例】
【0082】
したがって菌体でのデータを基に判断するとSB103、ANP2-1等が免疫賦活活性を有することが示された。AN1-1、AN5-1、AN3-5、SB108、KP7-11、ANP7-1は免疫寛容の誘導や抗炎症作用など免疫調節作用を有することが示された。
【実施例】
【0083】
2-6 各種乳酸菌によるマウスパイエル板細胞におけるtotal IgA産生誘導試験
マウスBALB/c(8週齢、メス、クレア)からパイエル板細胞を調製し、RPMI1640培地(10%仔ウシ胎児血清(Biowest)、100U/mlのペニシリン、100μg/wellのストレプトマイシン、0.2mMのL-グルタミン酸、1mMのピルビン酸、0.1mMの非必須アミノ酸、0.05mMの2-メルカプトエタノールを含むRPMI1640培地(Gibco))に懸濁した。細胞懸濁液は抗CD3抗体をコーティングした96穴プレート(BD BioCoat; BD 354720)に100μl/well(5.0×106cells/well)でアプライした。そこへRPMI1640培地に懸濁した各乳酸菌菌体(乳酸菌菌体濃度200μg/ml、又は20μg/ml)、あるいは前記で製造した発酵後のイカ野菜詰め米麹まぶし試作品の米麹懸濁液(米麹を10重量%添加したもの、又は2重量%添加したもの)をそれぞれ100μl/wellで加えた試験溶液について、5%CO2条件下、37℃、5日間培養を行った。なお、培養は各サンプルに対してn=3wellで実施した。培養上清中のtotal IgA濃度はELISA Quantitation Kit(BETHYL E90-103)を用いて測定した。
【実施例】
【0084】
その結果を図4に示す。図4の上図中、薄いグレーのバーは、各乳酸菌体の200μg/ml懸濁液を添加した場合(試験溶液中の乳酸菌体濃度は100μg/ml)の培養上清中のtotal IgA濃度であり、濃いグレーのバーは、各乳酸菌菌体の20μg/ml懸濁液を添加した場合(試験溶液中の乳酸菌体濃度は10μg/ml)のtotal IgA濃度である。図4の下図中、薄いグレーのバーは、各米麹の10重量%懸濁液を添加した場合(試験溶液中の米麹濃度は5重量%)の培養上清中のtotal IgA濃度であり、濃いグレーのバーは、各米麹の2重量%懸濁液を添加した場合(試験溶液中の米麹濃度は1重量%)の培養上清中のtotal IgA濃度である。
【実施例】
【0085】
図4に示すように、乳酸菌菌体では試験溶液中の濃度が10μg/mlの場合、100μg/mlの場合ともに多くのサンプルでIgA産生誘導活性を示した。中でもKP7-11 、SB103、SB108は高い活性を示した。米麹懸濁液ではコントロールでも比較的高い活性が認められた。SB108において比較的高いIgA産生誘導活性が認められたが、ばらつきが大きかった。
したがって、菌体に明白にIgA産生誘導活性が認められ、特にKP7-11、SB103、SB108は高い産生誘導能を有することが示された。
【実施例】
【0086】
[実施例3]
マウス腹腔マクロファージを用いたin vitroサイトカイン産生誘導試験
7周齢のBALB/cマウスの腹腔内に2mlのチオグリコール酸溶液を注射し、3~4日後、マウスを解剖し、腹腔マクロファージを集めた。これをRPMI培地にマクロファージ細胞が2 × 106/mlとなるように懸濁し、96穴マイクロタイタープレートに100μlずつ分注した。次に、予めMRS培地にて培養し、集菌、洗浄しておいた検体とする各種乳酸菌(実施例1で分離したもの)をRPMI培地にて1 x 108/mlとなるように調製し、同じく96穴マイクロタイタープレートに100μlずつ分注し、マクロファージ細胞と混合した。それを5% CO2気流下におかれたインキュベーターで、37℃、24時間、静置反応した。そしてその反応液の上清液について、市販のELISA Kitにて、IL-12(p70)、IL-10、IL-4、INF-γ、TNF-α等の産生量を定量した。その中で、産生が明瞭に確認されたIL-10とINF-γに関する結果を図5に示した。図5中、白いバーはINF-γ濃度であり、黒いバーはIL-10濃度である。また、その際に検体として用いた乳酸菌株を表6に示した。コントロールは検体無添加を意味する。
【実施例】
【0087】
【表6】
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【実施例】
【0088】
その結果、SB104LC、AN3-5に強いINF-γ誘導能が認められた。また、AN3-5に強いIL-10産生抑制能が認められた。
【実施例】
【0089】
[実施例4]
ピクリルクロライドにより皮膚炎を発症させたNa/Ngaマウスにおける抗炎症(抗アレルギー)試験
【実施例】
【0090】
皮膚炎モデルマウスのNa/Ngaマウスは日本エスエルシー(株)の4週齢、オスを使用した。予備飼育を1週間行った。乳酸菌AN3-5及びSB104LCそれぞれをMRS液体培地で培養し、菌体を集菌し、生理食塩水で洗浄後、凍結乾燥した。凍結乾燥菌体の生菌数はAN3-5は1.3 × 109/mg、SB104LC は1.4 × 109/mgであった。凍結乾燥菌体1mg及び10mgを生理食塩水に懸濁し、カテーテルにて予備飼育後のマウスの胃内に毎日1回強制投与した。各投与群に対し、6匹のマウスを使用した。同時に予備飼育後のマウスに5%ピクリルクロライド(PCI)を腹部と後ろ足に塗布し、その後、週に一度のペースで1%PCIを背部と耳介に塗布した。マウスは3ヶ月間飼育し、その投与効果を摂餌量、体重、臨床スコア(紅班・発赤、浮腫、痂皮・乾燥、皮膚剥離の度合いをスコア化)、耳介の厚さ、ひっかき行動、血漿IgE量、臓器重量の測定によって検討した。
【実施例】
【0091】
摂餌量において、有意差は見られず、ほぼ同量の餌を摂取しており、AN3-5群、SB104LC 群及びコントロール群における体重の推移で、有意差は認められなかった。各臓器(心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓)の重量におけるAN3-5群、SB104LC 群及びコントロール群の間の有意差は見られなかった。臨床スコアにおいては有意差は認められなかったが、AN3-5群及びSB104LC 群はコントロール群と比べ、低い値となった。また、耳介の厚さに関しては、AN3-5群及びSB104LC 群はコントロール群と比べ、有意に低値を示した。耳介の厚さを、図6に示す。さらに、血漿IgE濃度においても、AN3-5群及びSB104LC 群はコントロール群と比べ、有意に低値を示した。血漿IgE濃度を、図7に示す。以上により、乳酸菌AN3-5及びSB104LCは高い抗アレルギー作用をもつことが示された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6