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明細書 :ポリ乳酸を含む樹脂組成物およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5769169号 (P5769169)
公開番号 特開2013-053264 (P2013-053264A)
登録日 平成27年7月3日(2015.7.3)
発行日 平成27年8月26日(2015.8.26)
公開日 平成25年3月21日(2013.3.21)
発明の名称または考案の名称 ポリ乳酸を含む樹脂組成物およびその製造方法
国際特許分類 C08L  67/04        (2006.01)
C08J   3/20        (2006.01)
C08L  51/00        (2006.01)
C08L  53/00        (2006.01)
C08L  77/02        (2006.01)
B29C  47/00        (2006.01)
C08L 101/16        (2006.01)
B29K  67/00        (2006.01)
B29K  77/00        (2006.01)
FI C08L 67/04 ZBP
C08J 3/20 CFDZ
C08L 51/00
C08L 53/00
C08L 77/02
B29C 47/00
C08L 101/16
B29K 67:00
B29K 77:00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 14
出願番号 特願2011-193782 (P2011-193782)
出願日 平成23年9月6日(2011.9.6)
審査請求日 平成26年6月20日(2014.6.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】300071579
【氏名又は名称】学校法人立教学院
発明者または考案者 【氏名】大山 秀子
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100112634、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 美奈子
【識別番号】100129311、【弁理士】、【氏名又は名称】新井 規之
審査官 【審査官】渡辺 陽子
参考文献・文献 特開2011-157513(JP,A)
特開2006-328117(JP,A)
調査した分野 C08L、C08J3、B29C47
特許請求の範囲 【請求項1】
(A)ポリ乳酸と、
(B)ポリアミド11と、
(C)ポリスチレンをグラフトしたエポキシ基含有エチレン共重合体(C1)を含み、
前記成分(A)が連続相、前記成分(B)および成分(C)が分散相である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分(A)と成分(B)との質量比率が、50~99対50~1であり、
成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対して、成分(C)を1~50質量部含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分(C1)の共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン系不飽和炭化水素基グリシジルエーテル単位からなるセグメントに、ポリスチレンセグメントがグラフトした共重合体であり、共重合体の当該グラフトセグメントの割合が1~50質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分(A)のポリ乳酸の、GPCにより測定した重量平均分子量が5,000~1,000,000(g/mol)である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記成分(A)、(B)および(C)を溶融混練する工程を含む、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の樹脂組成物からなる射出成形体、押出成形体、チューブ状の成形体、シート・フィルム成形体、または繊維。
【請求項7】
請求項6に記載の成形体を用いた家庭用電気製品、電気・電子部品、通信機器部品、または自動車部品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はポリ乳酸を含む樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の改善のため、環境適合型樹脂に対するニーズが非常に高まっている。ポリ乳酸は安価な植物由来の樹脂として知られているが、耐熱性や機械的性質が十分ではないという問題がある。一方、ポリアミド11も植物由来の樹脂であり、優れた耐熱性を示すが、非常に高価であるという問題がある。そのため、ポリ乳酸およびポリアミド11の用途はともに限定されていた。
【0003】
ポリ乳酸とポリアミド11を適切に配合することができれば、バランスのとれた環境適合型樹脂を得ることが期待できるため、これまでにいくつかの提案がなされている。例えば特許文献1(特開2004-51835号公報)および特許文献2(特開2009-209234号公報)には、ポリ乳酸とポリアミド11とを単にブレンドして得た樹脂組成物が記載されている。しかし当該組成物の性能は満足の行くレベルではなかった。また当該特許文献にはポリ乳酸とポリアミド11とに対する相溶化剤に関する記載はない。
【0004】
特許文献3(特表2009-540090号公報)には、ポリ乳酸を連続相、ポリアミド11などを分散相とし、官能性基を有するポリオレフィンを相溶化剤とする複合材料が耐衝撃性に優れると記載されている。実施例には、相溶化剤としてエチレン-メチルメタクリレート-グリシジルルメタクリレート共重合体(E-MMA-EGMA共重合体)のみが記載されている。当該文献には耐衝撃性以外の物性は記載されていない。
【0005】
特許文献4(特表2010-516852号公報)にはポリアミド11を連続相、ポリ乳酸を分散相とし、相溶化剤としてE-MMA-EGMA共重合体を配合した樹脂組成物が記載されている。また特許文献5(特開2010-189472号公報)には、ポリ乳酸、ポリアミド11、およびコアシェル型グラフト共重合体からなる樹脂組成物が記載されている。しかし特許文献4および5に記載の樹脂組成物は、ポリアミド11が連続相であるため非常に高価である。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2004-51835号公報
【特許文献2】特開2009-209234号公報
【特許文献3】特表2009-540090号公報
【特許文献4】特表2010-516852号公報
【特許文献5】特開2010-189472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり環境適合型樹脂としてポリ乳酸とポリアミド11とからなる樹脂組成物が検討されているが、延性、耐衝撃性などの機械的性質および耐熱性に優れ、かつ安価な樹脂組成物は未だ得られていない。
【0008】
上記事情を鑑み、本発明は延性、耐衝撃性などの機械的性質および耐熱性に優れ、かつ安価な樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ポリ乳酸とポリアミド11と、これらの相溶化剤としてポリスチレンまたはポリアルキル(メタ)アクリレートをグラフトしたエポキシ基含有エチレン系共重合体、あるいはエポキシ基含有スチレン系ブロック共重合体を含み、かつポリ乳酸が連続相である樹脂組成物により、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、前記課題は以下の本発明:
(A)ポリ乳酸と(B)ポリアミド11と(C)ポリスチレンまたはポリアルキル(メタ)アクリレートをグラフトしたエポキシ基含有エチレン共重合体(C1)および/またはエポキシ基を含有するスチレン系ブロック共重合体(C2)と、を含み、前記成分(A)が連続相、前記成分(B)および成分(C)が分散相である、樹脂組成物、により解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、延性、耐衝撃性などの機械的性質および耐熱性に優れ、かつ安価な樹脂組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例4で得た樹脂組成物の透過型電子顕微鏡像
【図2】比較例3で得た樹脂組成物の透過型電子顕微鏡像
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書において「~」はその両端の値を含む。

【0013】
1.本発明の樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、成分(A)としてポリ乳酸、成分(B)としてポリアミド11、成分(C)としてポリスチレンまたはポリアルキル(メタ)アクリレートをグラフトしたエポキシ基含有エチレン系共重合体(C1)および/またはエポキシ基を含有するスチレン系ブロック共重合体(C2)を含む。

【0014】
(1)成分A
ポリ乳酸は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーである。

【0015】
【化1】
JP0005769169B2_000002t.gif

【0016】
当該ポリ乳酸の重量平均分子量は特に制限されないが、その下限は好ましくは5,000以上であり、より好ましく10,000以上であり、さらに好ましくは20,000以上である。ポリ乳酸の重量平均分子量が前記下限値未満であると、強度、弾性率等の機械的特性が不十分となる傾向にある。また、重量平均分子量の上限は1,000,000以下が好ましい。この重量平均分子量を超えると、成形加工性が低下する傾向にある。

【0017】
ポリ乳酸の製造方法は特に制限されず、D-乳酸、L-乳酸を直接重合してもよく、乳酸の環状2量体であるD-ラクチド、L-ラクチド、meso-ラクチドを開環重合してもよい。また、ポリ乳酸は上記D-体原料とL-体原料との共重合体であってもよいが、この場合、D-体原料またはL-体原料のうちの一方の含有割合が90mol%以上であることが好ましく、97mol%以上であることがより好ましく、99mol%以上であることがさらに好ましい。前記割合が90mol%未満であると、立体規則性が低下して結晶化しにくくなるので、耐熱性が低下することがある。本発明においては成分(A)として、このように製造された乳酸単独重合体または乳酸共重合体を用いることが好ましい。また、主成分がD-体であるポリ乳酸と、主成分がL-体であるポリ乳酸とをブレンドしたものを用いてもよい。

【0018】
さらに、成分(A)として、乳酸またはラクチドに加えて、グリコリド、カプロラクトン等の異種モノマーを共重合した共重合体、あるいは当該異種モノマーの単独重合体と乳酸単独重合体とのブレンドを用いてもよい。この場合、成分(A)中における、異種モノマー由来の成分が占める割合は、モノマー換算で30mol%以下であることが好ましい。

【0019】
得られる樹脂組成物の耐熱性の観点から、本発明で用いるポリ乳酸の融点は140~250℃が好ましく、150~230℃がより好ましい。

【0020】
(2)成分(B)
ポリアミド11は軟質ポリアミドの一つであり、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を主成分とするポリマーである。主成分であるとは、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を80~100mol%、好ましくは90~100mol%含むことをいう。

【0021】
【化2】
JP0005769169B2_000003t.gif

【0022】
式において、Rは、炭素数10のアルキレン基である。ポリアミド11は公知の方法で製造したものを使用できる。例えばポリアミド11は、天然ヒマシ油中のリシノール酸から得られた11-アミノウンデカン酸を重縮合して得られる。製造の際には、各種の触媒、熱安定剤等の添加剤を使用してもよい。また、一般式(2)以外で表される繰り返し単位を与えるモノマーを共重合してもよい。その際、当該化合物の使用量は、全モノマー中20mol%以下が好ましく、10mol%以下がより好ましい。

【0023】
本発明におけるポリアミド11の融点は170~200℃が好ましく、175~195℃がさらに好ましい。
また、ポリアミド11のMI(235℃、2.16N荷重)は10~75が好ましく、15~55がさらに好ましく、25~50が特に好ましい。ポリアミド11が上記の範囲外であると、組成物の耐熱性が低下するまたは成形加工性が不十分になることがある。

【0024】
(3)成分(C)
成分(C)として、ポリスチレンまたはポリアルキル(メタ)アクリレートをグラフトしたエポキシ基含有エチレン共重合体(C1)および/またはエポキシ基を含有するスチレン系ブロック共重合体(C2)を使用する。前記「および/または」は、C1とC2を単独で使用すること、または併用することを意味する。

【0025】
1)ポリスチレンまたはポリアルキル(メタ)アクリレートをグラフトしたエポキシ基含有エチレン共重合体(C1)
C1の共重合体は、エポキシ基含有エチレン共重合体セグメントの幹に、ポリスチレンまたはポリアルキル(メタ)アクリレートセグメントの一方、あるいは双方が枝としてグラフトしているポリマーである。

【0026】
エポキシ基含有エチレン共重合体とは、エチレン系二元共重合体またはエチレン系三元共重合体である。エチレン系二元共重合体は、(a)エチレン単位、(b)エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン系不飽和炭化水素基グリシジルエーテル単位からなる共重合体である。エチレン系三元共重合体は、(a)エチレン単位、(b)エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン系不飽和炭化水素基グリシジルエーテル単位、および(c)酢酸ビニル単位またはアクリル酸メチル単位からなる共重合体である。エチレン単位とは、共重合体中のエチレンに由来する部分であり、具体的には-(CH-CH)-で表される単位である。エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位等も同様に定義される。

【0027】
幹がエチレン系二元共重合体の場合、その組成は、(a)単位:(b)単位=95~40質量%:5~60質量%が好ましく、90~50質量%:10~50質量%がより好ましい。

【0028】
幹がエチレン系三元共重合体の場合、その組成は、(a)単位:(b)単位:(c)単位=40~94質量%:1~20質量%:5~40質量%が好ましく、50~90質量%:2~15質量%:8~35質量%がより好ましい。(b)エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン系不飽和炭化水素基グリシジルエーテル単位を与える化合物は、それぞれ下記一般式(3)、(4)で表される。

【0029】
【化3】
JP0005769169B2_000004t.gif

【0030】
一般式(3)において、Rは一つのエチレン結合を有する炭素数2~13の炭化水素基である。Rの炭素数は、好ましくは2~10である。

【0031】
一般式(3)で表されるエチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位としては、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル等のα,β-不飽和カルボン酸グリシジルが挙げられる。

【0032】
【化4】
JP0005769169B2_000005t.gif

【0033】
一般式(4)において、Rは一つのエチレン結合を有する炭素数2~13の炭化水素基である。また、Xは、-CH-O-または下記化学式(4-1)で表される基である。Rの炭素数は、好ましくは2~10である。

【0034】
【化5】
JP0005769169B2_000006t.gif

【0035】
枝であるポリスチレンセグメントは、スチレンが重合してなるセグメントである。エポキシ基含有エチレン共重合セグメント(幹)と、ポリスチレンセグメント(枝)との比率は、50~99質量%:50~1質量%が好ましく、60~80質量%:40~20質量%がより好ましい。エポキシ基含有エチレン系共重合体セグメントと、ポリスチレンセグメントとを結合するには、公知の方法を用いてよい。例えば、特開平2007-63506号公報に記載のとおり、エチレン系共重合体セグメントの溶液に、過酸化物存在の下、スチレンを加えてスチレンを重合して得ることができる。

【0036】
ポリスチレンをグラフトしたエポキシ基含有エチレン系共重合体におけるポリスチレンセグメントは、ポリアミド11中の疎水性炭化水素基と親和性を有する。また当該共重合体中のエポキシ基は、ポリ乳酸中のカルボキシル基等またはポリアミド11中のアミノ基やカルボキシル基等の官能基と反応しうる。このため当該共重合体は相溶化剤として作用する。

【0037】
ポリスチレンをグラフトしたエポキシ基含有エチレン系共重合体のMIは、好ましくは0.01~50g/10分、さらに好ましくは0.05~30g/10分である。MIはJIS K7210に規定された方法に準拠して、樹脂温度230℃、測定荷重21N(2.16kg・f)の条件で測定される。MIが0.01g/10分未満、または50g/10分を超えると、ポリスチレンをグラフトしたエポキシ基含有エチレン系共重合体とポリアミド11等との親和性が低下したり、得られる成形品の外観が悪化したりすることがある。

【0038】
もう一つの枝であるポリアルキル(メタ)アクリレートセグメントは、アルキル(メタ)アクリレートが重合してなるセグメントである。アルキル(メタ)アクリレートとは、アクリル酸のアルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルである。ポリアルキル(メタ)アクリレートセグメント中のエステル基はポリ乳酸およびポリアミド11中の前記官能基と反応しうる。よって当該共重合体も相溶化剤として機能する。ポリアルキル(メタ)アクリレートセグメント中のエステル基におけるアルキル基としては炭素数1~4のアルキル基が挙げられるが、前記反応を促進する観点から、エステル基はあまり嵩高くないことが好ましい。よって、当該アルキル基はメチル基またはエチル基が好ましい。エポキシ基含有エチレン共重合セグメント(幹)とポリアルキル(メタ)アクリレートセグメント(幹)との比率、および結合方法は前述のとおりである。

【0039】
ポリアルキル(メタ)アクリレートセグメントがエポキシ基含有エチレン共重合セグメントにグラフトしてなる共重合体のMIは、相溶化剤としての効果の観点から、0.01~50g/10分が好ましく、0.05~30g/10分がより好ましい。

【0040】
エポキシ基含有エチレン共重合セグメントには、ポリアルキル(メタ)アクリレートセグメントおよびポリスチレンセグメントの双方がグラフトしていてもよい。この場合、二つのセグメントの合計の量が前述の量であればよい。

【0041】
2)エポキシ基を含有するスチレン系ブロック共重合体(C2)
C2の共重合体は、スチレン系ブロック共重合体にエポキシ変性を施した重合体である。スチレン系ブロック共重合体とはスチレンと共役ジエン化合物とのブロック共重合体である。共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエンなどを挙げることができ、ブタジエンまたはイソプレンが好ましい。スチレン系ブロック共重合体は水添処理されたものであってもよい。本発明においては、入手容易性等からスチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体が好ましい。このようなスチレン系ブロック共重合体またはその水添物は、例えば、特公昭40-23798号公報、特開昭59-133203号公報に記載の方法で調製できる。

【0042】
スチレン系ブロック共重合体をエポキシ変性するとは、スチレン系ブロック共重合体にエポキシ基を導入することであり、好ましくはグリシジル基を有する化合物を導入することである。グリシジル基を有する化合物としては、不飽和グリシジルエステル類、不飽和グリシジルエーテル類、エポキシアルケン類などが挙げられ、その具体例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、ブテンカルボン酸グリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。入手容易性等からグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートが好ましい。

【0043】
このように導入されたエポキシ基は成分(A)または(B)の前記官能基と反応する。またスチレンブロックは成分(B)の疎水性基と親和性を有する。このため、当該共重合体は相溶化剤として機能する。

【0044】
グリシジル基を有する化合物をスチレン系ブロック共重合体に導入する方法は特に限定されないが、当該化合物をスチレン系ブロック共重合体にグラフト共重合すること等によって導入できる。この際、グリシジル基を有する化合物は、スチレン系ブロック共重合体のブタジエンブロックに導入されることが好ましい。導入されたエポキシ基が自由に動けると成分(A)または(B)との反応性がより高まるので、エポキシ基はブタジエンブロック主鎖中に存在するのではなく、ブタジエンブロックから伸びるグラフト鎖中に存在していることがより好ましい。

【0045】
C2の共重合体中のエポキシ基含量はオキシラン酸素濃度で表すことができる。オキシラン酸素濃度は、ASTM-1652に従い、ブロック共重合体に占めるエポキシ基に由来するオキシラン酸素の質量%を、臭化水素の酢酸溶液を用いて滴定して求めることができる。オキシラン酸素濃度は0.1~8質量%が好ましく、0.2~5質量%がより好ましく、0.4~3質量%がさらに好ましい。オキシラン酸素濃度がこれらの範囲外であると、C2の共重合体と、成分(A)または(B)との反応性が不十分となったり、組成物の成型加工性が不十分になることがあるので好ましくない。

【0046】
C2の共重合体におけるスチレン含有量の下限は、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、スチレンの含有量の上限は80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。

【0047】
当該共重合体のMI(190℃、2.16N荷重)は、好ましくは2~40(g/10分)であり、より好ましくは4~20(g/10分)である。

【0048】
(4)組成比
本発明においては、各成分の組成比は、成分(A)が連続相であり、成分(B)および成分(C)が分散相になるように決定される。成分(A)が連続相であることで、安価かつ優れた性能を有する樹脂組成物となる。成分(A)と成分(B)との質量比は、50~99/50~1が好ましく、56~95/44~5がより好ましく、60~90/40~10がさらに好ましく、70~80/30~20がよりさらに好ましい。上記の範囲外であると、成分(B)が連続相を形成する場合があり、好ましくない。

【0049】
また、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対する成分(C)の量は、1~50質量部が好ましく、2~40質量部がより好ましく、4~30質量部がさらに好ましい。

【0050】
(5)他の成分
本発明の樹脂組成物にさらに電気伝導性付与物質を添加して、電気伝導性樹脂組成物とすることができる。

【0051】
本発明の樹脂組成物には、さらに用途、目的に応じて他の配合剤、たとえば、カーボンブラック、カーボン繊維、グラファイト、金属ファイバー、カーボンナノチューブ、金属酸化物のような電気伝導性付与物質、帯電防止用可塑剤、例えばタルク、マイカ、炭酸カルシウム、ワラスナイトのような無機充填剤、ガラス繊維、カップリング剤、補強剤、難燃助剤、安定剤、顔料、離型剤、またはエラストマー等の耐衝撃改良剤等を配合することができる。これらの配合剤の配合量は、成分(A)、(B)および(C)の合計100質量部に対して、60質量部以下、好ましくは40質量部以下である。

【0052】
(6)本発明の樹脂組成物の構造
本発明の樹脂組成物は、成分(A)のポリ乳酸が連続相を形成し、他の成分が分散相を形成する。さらに、成分(C)の一部は、成分(A)相中に分散してもよいし、成分(B)相中に分散してもよい。前述のとおり、成分(C)は、成分(A)中の官能基のみならず、成分(B)中の官能基とも反応し、これらの反応生成物が成分(A)および(B)の相溶性を高める。この効果を高める観点から、(C)相は、(A)および(B)相中に、数平均粒子径が1μm以下のサイズの微粒子として分散していることが好ましく、0.5μm以下のサイズの微粒子として分散していることがより好ましい。数平均粒子径の下限は5nm以上が好ましい。相構造は、透過型電子顕微鏡で観察できる。すなわち、該組成物を酸化ルテニウムなどで染色処理した後、ミクロトームなどを使用してその超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡で相構造を観察できる。その際、酸化ルテニウムで切片を染色すると、成分(C)は最も染色され易く、成分(B)が次に染色され易く、成分(A)は最も染色され難いことから、樹脂組成物中の各成分の形態を観察できる。

【0053】
本発明においては、成分(A)のポリ乳酸が連続相であるため安価であり、耐熱性に優れた成分(B)のポリアミド11を含むので通常のポリ乳酸よりも耐熱性が高い。また、成分の大部分が植物由来の樹脂であるため、本発明の樹脂組成物は環境適合性も備える。さらに、本発明の樹脂組成物は上記構造を有するので、従来にない、優れた耐熱性、耐衝撃性、延性を具備すると考えられる。

【0054】
一般に、成分(A)のポリ乳酸と成分(B)のポリアミド11の相溶性は十分でなく、両者を単純に混合してなる樹脂組成物は、両者の界面の接着性が十分でないため、十分な力学特性を発揮できない。しかし、本発明では、成分(C)が成分(A)および(B)と反応しうるため、機械的特性に極めて優れた樹脂組成物となる。

【0055】
2.本発明の樹脂組成物の製造方法
本発明における樹脂組成物は、成分(A)と(B)と(C)とを溶融混練して得ることができる。溶融混練には、バッチ式二軸混練機、一軸押出機、あるいは二軸押出機などの混練機を用いることができるが、中でも強混練が可能で連続して溶融混練が可能な二軸押出機を用いることが好ましい。溶融混練温度は、180~260℃が好ましく、190~240℃がより好ましく、200~230℃がさらに好ましい。

【0056】
溶融混練の方法は特に限定されない。例えば、成分(A)のポリ乳酸、成分(B)のポリアミド11、および成分(C)の共重合体を一括して溶融混練して得てよい。または、成分(A)および成分(C)を予め溶融混練した後に成分(B)を加えて溶融混練する方法、成分(B)および成分(C)を予め溶融混練した後に成分(A)を加えて溶融混練する方法を用いてもよい。さらには、成分(A)と(C)を押出機の上流側から供給し、成分(B)を押出機の下流側から供給して溶融混練する方法、または、成分(B)と成分(C)を押出機の上流側から供給し、成分(A)を押出機の下流側から供給して溶融混練する方法を用いてもよい。

【0057】
このように樹脂組成物を製造すると、成分(A)のポリ乳酸の連続相に、成分(B)のポリアミド11が分散し、さらに成分(C)が1μm以下の粒子径で微分散しやすくなる。本発明において、前記成分(A)、(B)および(C)を溶融混練する工程は、混練機を用いて実施されることが好ましい。混練機としては、生産性に優れた二軸押出機が好ましい。

【0058】
3.本発明の樹脂組成物の加工方法および用途等
本発明の樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂成形品に用いられている加工方法により容易に成形品に加工される。加工方法の例には、射出成形や押出成形、フィルム・シート成形、繊維成形、真空成形、ブロー成形、プレス成形、カレンダー成形、発泡成形等が含まれる。本発明における樹脂組成物は、耐熱性、耐衝撃性、延性などに優れ、しかも環境適合性を備えることから、電気・電子部品、通信部品、包装用などのフィルム・シート、繊維、自動車部品、冷蔵庫、テレビ等の家庭用電気製品などへ幅広く適用できる。
【実施例】
【0059】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらによって限定されない。
【実施例】
【0060】
(1)物性試験
・引張試験:(株)東洋精機製作所製、ストログラフ VES 50型を使用し、ロードセル1kN、 チャック間距離40mm、延伸速度10mm/minで引張試験を行なった。
・引張衝撃試験:(株)東洋精機製作所製、DG digital impact testerを使用し、ハンマーの質量による負荷4J、ハンマーの回転軸中心から重心までの距離0.23mm、ハンマー持ち上げ角度150°、周期0.962sec、温度20℃で、JIS7160に準拠して測定を行った。
【実施例】
【0061】
(2)樹脂組成物の成分
【実施例】
【0062】
1)成分(A)
ポリ乳酸(三井化学(株)製 レイシア H400)
・融点 168℃
・ガラス転移点 61℃
・Mn=130,000(g/mol)、Mw=200,000(g/mol)
【実施例】
【0063】
2)成分(B)
ポリアミド11(アルケマ(株)製 リルサンBMN O)
・融点(DSC測定) 187℃
・ガラス転移温度 37℃
・MI(235℃,2.16N荷重) 30~40(g/10分)
【実施例】
【0064】
3)成分(C)
エポキシ基を含有するスチレン-ブタジエン—スチレンブロック共重合体(ダイセル化学(株)製 エポフレンド AT501 (表中 C-bと表記))
・MI(JIS K7210、190℃、2.16kg荷重)=7g/10分
・比重:0.985(g/cm
・スチレン含量 40質量%
・オキシラン酸素濃度 1.5質量%
スチレングラフトEGMA(日油株式会社製 モディパー A4100(表中 C-sgと表記))
・エチレン単位/エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル(EGMA)単位からなるセグメントに、ポリスチレンセグメントがグラフトしているグラフト共重合体(セグメント比は70/30(質量比))
・EGMA中のグリシジルメタクリレート含量 15質量%
・融点 95℃
・ガラス転移温度 -28℃
【実施例】
【0065】
メチルメタクリレート(MMA)グラフトEGMA(日油株式会社製 モディパー A4200(表中 C-mgと表記))
・エチレン単位/エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル(EGMA)単位からなるセグメントに、ポリMMAセグメントがグラフトしているグラフト共重合体(セグメント比は70/30(質量比))
・EGMA中のグリシジルメタクリレート含量 15質量%
・融点 95℃
・ガラス転移温度 -28℃
【実施例】
【0066】
[実施例1~3および比較例1~2]
表1に示す配合で、各成分をよくドライブレンドした後、混練機として、(株)東洋精機製作所製ラボプラストミル4M150型を使用し、混練温度210℃、スクリュー回転数50rpm、混練時間5分として、各成分の溶融混練を行った。
【実施例】
【0067】
得られた混練物は、温度210℃で予熱3分、圧力10MPaで5分間プレスし、その後0℃に急冷して、厚さ約0.5mmのシートとした。ただし、比較例1については、混練することなく、ペレットをそのまま用いてプレス成形した。
【実施例】
【0068】
引張試験用には、プレスシートを、平行部直線部の長さ16mmのミニダンベル形状に打ち抜いたものを使用した。シャルピー衝撃試験用には、プレスシートをダンベル形状で、全長80mm、厚さ0.5mm、平行部の幅10mm、平行部の長さ10mm、つかみ部の幅15mmに打ち抜いたものを使用した。
【実施例】
【0069】
【表1】
JP0005769169B2_000007t.gif

【実施例】
【0070】
表1に示すとおり、成分Cを含む実施例1~5において、衝撃強度の大幅な改善が見られた。また、実施例1、4、および5から、成分(B)の添加量を増やすことで、伸び率が大幅に向上することも明らかとなった。
【実施例】
【0071】
図1は、実施例4で得た樹脂組成物の透過型電子顕微鏡像である。まず、射出成形片の中心部をカッターで切り出した後に、酸化ルテニウムで染色処理を行い、ミクロトーム切削を行った。次いで得られた切片について透過型電気顕微鏡観察を行い、図1に示す像を得た。成分(C)が最も染色されやすいため、写真上では黒いコントラストを示し、成分(B)は次に染色され易いので、写真上では灰色のコントラストを示し、成分(A)は最も染色されにくいため、写真上ではほぼ白いコントラストを示す。図1においては、0.06~0.4μmのサイズの黒色の成分(C)が連続相中とドメイン中の両方に分散している。この成分(C)の分散が耐衝撃性などの物性向上に寄与したと考えられる。
【実施例】
【0072】
一方、図2は、比較例3で得た樹脂組成物の透過型電子顕微鏡像である。図2においては、成分(A)のポリ乳酸連続相中に、灰色の成分(B)のポリアミド11が0.1~8μmのサイズで分散しているのみである。
【符号の説明】
【0073】
A 成分A
B 成分B
C 成分C
図面
【図1】
0
【図2】
1