TOP > 国内特許検索 > 拡散速度演算装置、拡散速度演算方法、及びプログラム > 明細書

明細書 :拡散速度演算装置、拡散速度演算方法、及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6004332号 (P6004332)
公開番号 特開2014-055856 (P2014-055856A)
登録日 平成28年9月16日(2016.9.16)
発行日 平成28年10月5日(2016.10.5)
公開日 平成26年3月27日(2014.3.27)
発明の名称または考案の名称 拡散速度演算装置、拡散速度演算方法、及びプログラム
国際特許分類 G01P   3/36        (2006.01)
G01J   1/42        (2006.01)
G06T   7/20        (2006.01)
FI G01P 3/36 C
G01J 1/42 C
G06T 7/20 C
請求項の数または発明の数 13
全頁数 27
出願番号 特願2012-200821 (P2012-200821)
出願日 平成24年9月12日(2012.9.12)
審査請求日 平成27年8月25日(2015.8.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】三浦 憲二郎
【氏名】萬立 洋次郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】公文代 康祐
参考文献・文献 特開平01-269020(JP,A)
特開平06-018542(JP,A)
特開平02-138833(JP,A)
調査した分野 G01P 3/36
G01J 1/42
G06T 7/20
特許請求の範囲 【請求項1】
拡散する物体の拡散の様子を連続撮影して得られた複数の前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、前記物体画像の重心移動速度を導出する重心移動速度導出手段と、
複数の前記物体画像の各々の重心を合わせるよう各物体画像を平行移動した後、各物体画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該物体画像の各輪郭における法線方向の速度を伝播速度として導出する伝播速度導出手段と、
前記伝播速度導出手段で導出された前記伝播速度と前記重心移動速度導出手段で導出された前記重心移動速度とに基づいて、前記物体が拡散する速度を導出する速度導出手段と、
を備えた拡散速度演算装置。
【請求項2】
前記重心移動速度導出手段は、前記複数の物体画像の各々の重心座標を算出する重心座標算出手段と、前記重心座標算出手段で算出された各物体画像の重心座標間を補間する補間関数を生成する補間関数生成手段と、前記補間関数生成手段で生成された補間関数を時間微分して前記重心移動速度を導出する移動速度導出手段と、を備え、
前記伝播速度導出手段は、前記複数の物体画像の各々の重心座標が一致するように各物体画像を平行移動した後、前記複数の物体画像の各々の輪郭に沿って設定された複数の輪郭点を放射基底関数により補間することで連続的な陰関数曲面を生成する陰関数曲面生成手段と、前記陰関数曲面生成手段で生成された陰関数曲面を時間微分して、前記複数の物体画像の各輪郭点における法線方向の速度を前記伝播速度として導出する速度法線方向成分導出手段と、を備え、
前記速度導出手段は、前記速度法線方向成分導出手段で導出された前記伝播速度と前記移動速度導出手段で導出された前記重心移動速度とを合成して前記物体が拡散する速度を導出する、
請求項1記載の拡散速度演算装置。
【請求項3】
拡散する物体の拡散の様子を連続撮影して得られた複数の前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、前記物体画像の重心移動速度を導出する重心移動速度導出手段と、
前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、前記物体画像の回転速度を導出する物体回転速度導出手段と、
複数の前記物体画像の各々の重心を合わせるよう各物体画像を平行移動すると共に、前記複数の物体画像の各々の慣性主軸の傾きを合わせるよう各物体画像を回転した後、各物体画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該物体画像の各輪郭における法線方向の速度を伝播速度として導出する伝播速度導出手段と、
前記伝播速度導出手段で導出された前記伝播速度、前記重心移動速度導出手段で導出された前記重心移動速度、及び前記物体回転速度導出手段で導出された前記回転速度に基づいて、前記物体が拡散する速度を導出する速度導出手段と、
を備えた拡散速度演算装置。
【請求項4】
前記重心移動速度導出手段は、前記複数の物体画像の各々の重心座標を算出する重心座標算出手段と、前記重心座標算出手段で算出された各物体画像の重心座標間を補間する補間関数を生成する補間関数生成手段と、前記補間関数生成手段で生成された補間関数を時間微分して前記重心移動速度を導出する移動速度導出手段と、を備え、
前記物体回転速度導出手段は、前記複数の物体画像の各々の慣性主軸の傾きを求める傾き算出手段と、前記傾き算出手段で求められた前記慣性主軸の傾きと前記重心座標算出手段で算出された前記複数の物体画像の各々の重心座標とに基づいて、前記物体画像の回転速度を導出する回転速度導出手段と、を備え、
前記伝播速度導出手段は、前記複数の物体画像の各々の重心座標が一致するように各物体画像を平行移動すると共に、前記複数の物体画像の各々の慣性主軸の傾きを合わせるよう各物体画像を回転した後、前記複数の物体画像の各々の輪郭に沿って設定された複数の輪郭点を放射基底関数により補間することで連続的な陰関数曲面を生成する陰関数曲面生成手段と、前記陰関数曲面生成手段で生成された陰関数曲面を時間微分して、前記複数の物体画像の各輪郭点における法線方向の速度を前記伝播速度として導出する速度法線方向成分導出手段と、を備え、
前記速度導出手段は、前記速度法線方向成分導出手段で導出された前記伝播速度、前記移動速度導出手段で導出された前記重心移動速度、及び前記回転速度導出手段で導出された前記回転速度を合成して前記物体が拡散する速度を導出する、
請求項記載の拡散速度演算装置。
【請求項5】
前記補間関数生成手段は、前記重心座標算出手段で算出された前記複数の物体画像の重心座標間をスプライン曲線で補間して前記補間関数を生成する
請求項2または請求項4記載の拡散速度演算装置。
【請求項6】
前記拡散する物体は火炎であり、前記火炎が拡散する様子を連続撮影して得られた複数の火炎画像から、前記火炎が拡散する速度を導出する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の拡散速度演算装置。
【請求項7】
前記輪郭点は、前記物体画像の輪郭線上、輪郭線の内側、及び輪郭線の外側のいずれかであり、前記輪郭線の内側の輪郭点の数と、前記輪郭線の外側の輪郭点の数を同じとする
請求項2,4,5のいずれか1項に記載の拡散速度演算装置。
【請求項8】
拡散する物体の拡散の様子を連続撮影して得られた複数の前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、前記物体画像の重心移動速度を導出する重心移動速度導出ステップと、
複数の前記物体画像の各々の重心を合わせるよう各物体画像を平行移動した後、各物体画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該物体画像の各輪郭における法線方向の速度を伝播速度として導出する伝播速度導出ステップと、
前記伝播速度導出ステップで導出された前記伝播速度と前記重心移動速度導出ステップで導出された前記重心移動速度とに基づいて、前記物体が拡散する速度を導出する速度導出ステップと、
を含む拡散速度演算方法。
【請求項9】
前記重心移動速度導出ステップは、前記複数の物体画像の各々の重心座標を算出する重心座標算出ステップと、前記重心座標算出ステップで算出された各物体画像の重心座標間を補間する補間関数を生成する補間関数生成ステップと、前記補間関数生成ステップで生成された補間関数を時間微分して前記重心移動速度を導出する移動速度導出ステップと、を含み、
前記伝播速度導出ステップは、前記複数の物体画像の各々の重心座標が一致するように各物体画像を平行移動した後、前記複数の物体画像の各々の輪郭に沿って設定された複数の輪郭点を放射基底関数により補間することで連続的な陰関数曲面を生成する陰関数曲面生成ステップと、前記陰関数曲面生成ステップで生成された陰関数曲面を時間微分して、前記複数の物体画像の各輪郭点における法線方向の速度を前記伝播速度として導出する速度法線方向成分導出ステップと、を含み、
前記速度導出ステップは、前記速度法線方向成分導出ステップで導出された前記伝播速度と前記移動速度導出ステップで導出された前記重心移動速度とを合成して前記物体が拡散する速度を導出する、
請求項8記載の拡散速度演算方法。
【請求項10】
拡散する物体の拡散の様子を連続撮影して得られた複数の前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、前記物体画像の重心移動速度を導出する重心移動速度導出ステップと、
前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、前記物体画像の回転速度を導出する物体回転速度導出ステップと、
複数の前記物体画像の各々の重心を合わせるよう各物体画像を平行移動すると共に、前記複数の物体画像の各々の慣性主軸の傾きを合わせるよう各物体画像を回転した後、各物体画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該物体画像の各輪郭における法線方向の速度を伝播速度として導出する伝播速度導出ステップと、
前記伝播速度導出ステップで導出された前記伝播速度、前記重心移動速度導出ステップで導出された前記重心移動速度、及び前記物体回転速度導出ステップで導出された前記回転速度に基づいて、前記物体が拡散する速度を導出する速度導出ステップと、
を含む拡散速度演算方法。
【請求項11】
前記重心移動速度導出ステップは、前記複数の物体画像の各々の重心座標を算出する重心座標算出ステップと、前記重心座標算出ステップで算出された各物体画像の重心座標間を補間する補間関数を生成する補間関数生成ステップと、前記補間関数生成ステップで生成された補間関数を時間微分して前記重心移動速度を導出する移動速度導出ステップと、を含み、
前記物体回転速度導出ステップは、前記複数の物体画像の各々の慣性主軸の傾きを求める傾き算出ステップと、前記傾き算出ステップで求められた前記慣性主軸の傾きと前記重心座標算出ステップで算出された前記複数の物体画像の各々の重心座標とに基づいて、前記物体画像の回転速度を導出する回転速度導出ステップと、を含み、
前記伝播速度導出ステップは、前記複数の物体画像の各々の重心座標が一致するように各物体画像を平行移動すると共に、前記複数の物体画像の各々の慣性主軸の傾きを合わせるよう各物体画像を回転した後、前記複数の物体画像の各々の輪郭に沿って設定された複数の輪郭点を放射基底関数により補間することで連続的な陰関数曲面を生成する陰関数曲面生成ステップと、前記陰関数曲面生成ステップで生成された陰関数曲面を時間微分して、前記複数の物体画像の各輪郭点における法線方向の速度を前記伝播速度として導出する速度法線方向成分導出ステップと、を含み、
前記速度導出ステップでは、前記速度法線方向成分導出ステップで導出された前記伝播速度、前記移動速度導出ステップで導出された前記重心移動速度、及び前記回転速度導出ステップで導出された前記回転速度を合成して前記物体が拡散する速度を導出する、
請求項10記載の拡散速度演算方法。
【請求項12】
前記拡散する物体は火炎であり、前記火炎が拡散する様子を連続撮影して得られた複数の火炎画像から、前記火炎が拡散する速度を導出する
請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の拡散速度演算方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の拡散速度演算装置の各手段として機能させるためのプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散する物体の拡散速度の演算を行う技術に係り、特に、連続した時間で測定されて得られた複数の画像情報を利用して、例えば自動車エンジン内等における火炎の速度を精度良く測定するのに好適な拡散速度演算装置、拡散速度演算方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、拡散する物体の拡散速度としての火炎速度を算出する技術が、例えば、特許文献1,2に記載されている。これらの技術は、撮影手段で撮影された画像情報を用いて、火炎速度を算出するものである。
【0003】
特許文献1においては、TVカメラから出力される火炎の映像信号の一画面を構成する特定走査線上の輝度変化信号と、次画面又はそれ以降の一画面を構成する同一走査線上の輝度変化信号との相関を求めることにより火炎の速度を測定する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2においては、燃料供給量を制御する制御装置を備えた燃焼器において、計測装置により火炎の形状を計測し、この計測装置の計測値を用いて、火炎の燃焼速度を算出する旨が記載されている。具体的には、ボイラを例として説明があり、燃焼速度を、未燃ガスが火炎面に垂直に入り込む速度で定義し、火炎の表面面積を測定し、バーナーにおける未燃ガスの流速Uf、バーナーの断面積Ab、及び火炎の全表面積Afを用いて、「燃焼速度Su=(Ab/Af)Uf-1」により、燃焼速度Suを求める技術が記載されている。
【0005】
また、近年、コンピュータを用いた画像取得技術の向上に伴い、例えば、自動車エンジン内の火炎の伝播の様子を、連続画像として取得することが可能となっている。そして、取得した連続画像情報を利用して、火炎の速度を算出したいという需要が高まってきている。
【0006】
火炎に限らず、拡散する物体の拡散状態を、連続した時間で測定して得られた複数の変位情報を用いて求められた補間関数を解析的に微分することにより、測定対象の動作速度を導出する技術が、例えば、非特許文献1,2に提示されている。
【0007】
非特許文献1においては、ロボットの制御やシステム同定のために、一定のサンプリング周期で得られた変位データを、関数近似に用いられる放射基底関数(ラジアル・ベーシス・ファンクション:Radial Basis Function(以下、RBFともいう))等の線形結合により補間して連続関数を求め、さらにその連続関数を解析的に微分することにより、速度・加速度の推定値を求める技術が記載されている。
【0008】
また、非特許文献2においては、時間に依存する陰関数を用いて曲面(陰関数曲面:Implicit Surface)を定義し、当該陰関数を時間で微分することにより、陰関数曲面における輪郭線の法線方向の速度を求める技術が記載されている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開平01-269020号公報
【特許文献2】特開平04-198617号公報
【0010】

【非特許文献1】橘田 祐也、山浦 弘 「RBF補間を用いた速度・加速度推定」 日本機械学会論文集(C編) 72巻721号(2006-9) pp.2713-2720、論文 No.05-1043
【非特許文献2】JOS STAM and RYAN SCHMIDT "On the Velocity of an Implicit Surface" ACM Transactions on Graphics, Vol.30, No.3, Article21, Publication date:May 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1,2、及び非特許文献1,2に開示されている技術では、物理的挙動に則した拡散する物体の拡散速度、例えば火炎の速度を算出することはできない、という問題点がある。
【0012】
例えば、火炎速度の成分としては、可燃性混合気上を火炎が広がってゆく伝播の成分と、風等によって火炎自体が移動してゆく成分とが考えられるが、特許文献1,2、及び非特許文献1,2においては、拡散する物体の拡散速度の特性に関しての考慮がなされておらず、火炎を含む拡散する物体の速度を精度良く測定することができない。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、従来の技術では、例えば可燃性混合気上を火炎が広がってゆく伝播の成分と、風等によって火炎自体が移動してゆく成分といった、拡散する物体の拡散速度の特性に関しての考慮がなされていない点である。
【0014】
本発明の目的は、これら従来技術の課題を解決し、火炎を含む拡散する物体の拡散速度を精度良く測定することを可能とする拡散速度演算装置、拡散速度演算方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の拡散速度演算装置は、拡散する物体の拡散の様子を連続撮影して得られた複数の前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、前記物体画像の重心移動速度を導出する重心移動速度導出手段と、複数の前記物体画像の各々の重心を合わせるよう各物体画像を平行移動した後、各物体画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該物体画像の各輪郭における法線方向の速度を伝播速度として導出する伝播速度導出手段と、前記伝播速度導出手段で導出された前記伝播速度と前記重心移動速度導出手段で導出された前記重心移動速度とに基づいて、前記物体が拡散する速度を導出する速度導出手段と、を備えている。
【0016】
請求項1に記載の拡散速度演算装置によれば、前記重心移動速度導出手段により、拡散する物体の拡散の様子を連続撮影して得られた複数の前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、前記物体画像の重心移動速度が導出され、前記伝播速度導出手段により、複数の前記物体画像の各々の重心を合わせるよう各物体画像が平行移動された後、各物体画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面が生成され、生成した陰関数曲面上で当該物体画像の各輪郭における法線方向の速度が伝播速度として導出され、前記速度導出手段により、前記伝播速度導出手段で導出された前記伝播速度と前記重心移動速度導出手段で導出された前記重心移動速度とに基づいて、前記物体が拡散する速度が導出される。
【0017】
このように、請求項1に記載の拡散速度演算装置によれば、拡散する物体の拡散の様子を連続撮影して得られた複数の物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、物体画像の重心移動速度を導出し、複数の前記物体画像の各々の重心を合わせるよう各物体画像を平行移動した後、各物体画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該物体画像の各輪郭における法線方向の速度を伝播速度として導出し、導出した伝播速度と重心移動速度とに基づいて、物体が拡散する速度を導出しており、物理的挙動に則した火炎を含む拡散する物体の拡散速度を精度良く求めることができる。
【0018】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記重心移動速度導出手段は、前記複数の物体画像の各々の重心座標を算出する重心座標算出手段と、前記重心座標算出手段で算出された各物体画像の重心座標間を補間する補間関数を生成する補間関数生成手段と、前記補間関数生成手段で生成された補間関数を時間微分して前記重心移動速度を導出する移動速度導出手段と、を備え、前記伝播速度導出手段は、前記複数の物体画像の各々の重心座標が一致するように各物体画像を平行移動した後、前記複数の物体画像の各々の輪郭に沿って設定された複数の輪郭点を放射基底関数により補間することで連続的な陰関数曲面を生成する陰関数曲面生成手段と、前記陰関数曲面生成手段で生成された陰関数曲面を時間微分して、前記複数の物体画像の各輪郭点における法線方向の速度を前記伝播速度として導出する速度法線方向成分導出手段と、を備え、前記速度導出手段は、前記速度法線方向成分導出手段で導出された前記伝播速度と前記移動速度導出手段で導出された前記重心移動速度とを合成して前記物体が拡散する速度を導出するようにしても良い。このような構成とすることによっても、請求項1と同様に、物理的挙動に則した火炎を含む拡散する物体の拡散速度を精度良く求めることができる。
【0019】
一方、上記目的を達成するために、請求項3に記載の拡散速度演算装置は、拡散する物体の拡散の様子を連続撮影して得られた複数の前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、前記物体画像の重心移動速度を導出する重心移動速度導出手段と、前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、前記物体画像の回転速度を導出する物体回転速度導出手段と、複数の前記物体画像の各々の重心を合わせるよう各物体画像を平行移動すると共に、前記複数の物体画像の各々の慣性主軸の傾きを合わせるよう各物体画像を回転した後、各物体画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該物体画像の各輪郭における法線方向の速度を伝播速度として導出する伝播速度導出手段と、前記伝播速度導出手段で導出された前記伝播速度、前記重心移動速度導出手段で導出された前記重心移動速度、及び前記物体回転速度導出手段で導出された前記回転速度に基づいて、前記物体が拡散する速度を導出する速度導出手段と、を備えている。これにより、回転を含めた拡散する物体の拡散速度を精度良く求めることができる。
【0020】
このように、請求項3に記載の拡散速度演算装置によれば、拡散する物体の拡散の様子を連続撮影して得られた複数の前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、物体画像の重心移動速度を導出し、物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、物体画像の回転速度を導出し、複数の物体画像の各々の重心を合わせるよう各物体画像を平行移動すると共に、複数の物体画像の各々の慣性主軸の傾きを合わせるよう各物体画像を回転した後、各物体画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該物体画像の各輪郭における法線方向の速度を伝播速度として導出し、導出した伝播速度、重心移動速度、及び回転速度に基づいて、物体が拡散する速度を導出しており、回転を含めた物理的挙動に則した火炎を含む拡散する物体の拡散速度を精度良く求めることができる。
【0021】
なお、本発明は、請求項4に記載の発明のように、前記重心移動速度導出手段は、前記複数の物体画像の各々の重心座標を算出する重心座標算出手段と、前記重心座標算出手段で算出された各物体画像の重心座標間を補間する補間関数を生成する補間関数生成手段と、前記補間関数生成手段で生成された補間関数を時間微分して前記重心移動速度を導出する移動速度導出手段と、を備え、前記物体回転速度導出手段は、前記複数の物体画像の各々の慣性主軸の傾きを求める傾き算出手段と、前記傾き算出手段で求められた前記慣性主軸の傾きと前記重心座標算出手段で算出された前記複数の物体画像の各々の重心座標とに基づいて、前記物体画像の回転速度を導出する回転速度導出手段と、を備え、前記伝播速度導出手段は、前記複数の物体画像の各々の重心座標が一致するように各物体画像を平行移動すると共に、前記複数の物体画像の各々の慣性主軸の傾きを合わせるよう各物体画像を回転した後、前記複数の物体画像の各々の輪郭に沿って設定された複数の輪郭点を放射基底関数により補間することで連続的な陰関数曲面を生成する陰関数曲面生成手段と、前記陰関数曲面生成手段で生成された陰関数曲面を時間微分して、前記複数の物体画像の各輪郭点における法線方向の速度を前記伝播速度として導出する速度法線方向成分導出手段と、を備え、前記速度導出手段は、前記速度法線方向成分導出手段で導出された前記伝播速度、前記移動速度導出手段で導出された前記重心移動速度、及び前記回転速度導出手段で導出された前記回転速度を合成して前記物体が拡散する速度を導出するようにしても良い。このような構成とすることによっても、請求項3と同様に、回転を含めた物理的挙動に則した火炎を含む拡散する物体の拡散速度を精度良く求めることができる。
【0022】
特に、請求項2または請求項4に記載の本発明は、請求項5に記載の発明のように、前記補間関数生成手段は、前記重心座標算出手段で算出された前記複数の物体画像の重心座標間をスプライン曲線で補間して前記補間関数を生成するようにしても良い。これにより、物理的挙動に則した火炎を含む拡散する物体の拡散速度をさらに精度良く求めることができる。
【0023】
なお、本発明は、請求項6に記載の発明のように、前記拡散する物体は火炎であり、前記火炎の伝播の様子を連続撮影して得られた複数の火炎画像から、前記火炎の伝播の速度を導出するようにしても良い。これにより、拡散する物体としての火炎の、物理的挙動に則した速度を精度良く求めることができる。
【0024】
また、本発明は、請求項7に記載の発明のように、前記輪郭点は、前記画像の輪郭線上、輪郭線の内側、及び輪郭線の外側のいずれかであり、前記輪郭線の内側の輪郭点の数と、前記輪郭線の外側の輪郭点の数を同じとするようにしても良い。これにより、陰関数曲面をバランスよく生成することができる。
【0025】
一方、上記目的を達成するために、請求項8に記載の拡散速度演算方法は、拡散する物体の拡散の様子を連続撮影して得られた複数の前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、前記物体画像の重心移動速度を導出する重心移動速度導出ステップと、複数の前記物体画像の各々の重心を合わせるよう各物体画像を平行移動した後、各物体画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該物体画像の各輪郭における法線方向の速度を伝播速度として導出する伝播速度導出ステップと、前記伝播速度導出ステップで導出された前記伝播速度と前記重心移動速度導出ステップで導出された前記重心移動速度とに基づいて、前記物体が拡散する速度を導出する速度導出ステップと、を含む。
【0026】
従って、請求項8に記載の拡散速度演算方法によれば、請求項1に記載の発明と同様に作用するので、請求項1に記載の発明と同様に、物理的挙動に則した火炎を含む拡散する物体の拡散速度を精度良く求めることができる。
【0027】
なお、本発明は、請求項9に記載の発明のように、前記重心移動速度導出ステップは、前記複数の物体画像の各々の重心座標を算出する重心座標算出ステップと、前記重心座標算出ステップで算出された各物体画像の重心座標間を補間する補間関数を生成する補間関数生成ステップと、前記補間関数生成ステップで生成された補間関数を時間微分して前記重心移動速度を導出する移動速度導出ステップと、を含み、前記伝播速度導出ステップは、前記複数の物体画像の各々の重心座標が一致するように各物体画像を平行移動した後、前記複数の物体画像の各々の輪郭に沿って設定された複数の輪郭点を放射基底関数により補間することで連続的な陰関数曲面を生成する陰関数曲面生成ステップと、前記陰関数曲面生成ステップで生成された陰関数曲面を時間微分して、前記複数の物体画像の各輪郭点における法線方向の速度を前記伝播速度として導出する速度法線方向成分導出ステップと、を含み、前記速度導出ステップは、前記速度法線方向成分導出ステップで導出された前記伝播速度と前記移動速度導出ステップで導出された前記重心移動速度とを合成して前記物体が拡散する速度を導出するようにしても良い。
【0028】
従って、請求項9に記載の拡散速度演算方法によれば、請求項2に記載の発明と同様に作用するので、請求項2に記載の発明と同様に、物理的挙動に則した火炎を含む拡散する物体の拡散速度を精度良く求めることができる。
【0029】
一方、上記目的を達成するために、請求項10に記載の拡散速度演算方法は、拡散する物体の拡散の様子を連続撮影して得られた複数の前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、前記物体画像の重心移動速度を導出する重心移動速度導出ステップと、前記物体を表す物体画像の時間変化に基づいて、前記物体画像の回転速度を導出する物体回転速度導出ステップと、複数の前記物体画像の各々の重心を合わせるよう各物体画像を平行移動すると共に、前記複数の物体画像の各々の慣性主軸の傾きを合わせるよう各物体画像を回転した後、各物体画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該物体画像の各輪郭における法線方向の速度を伝播速度として導出する伝播速度導出ステップと、前記伝播速度導出ステップで導出された前記伝播速度、前記重心移動速度導出ステップで導出された前記重心移動速度、及び前記物体回転速度導出ステップで導出された前記回転速度に基づいて、前記物体が拡散する速度を導出する速度導出ステップと、を含む。
【0030】
従って、請求項10に記載の拡散速度演算方法によれば、請求項3に記載の発明と同様に作用するので、請求項3に記載の発明と同様に、回転を含めた物理的挙動に則した火炎を含む拡散する物体の拡散速度を精度良く求めることができる。
【0031】
なお、本発明は、請求項11に記載の発明のように、前記重心移動速度導出ステップは、前記複数の物体画像の各々の重心座標を算出する重心座標算出ステップと、前記重心座標算出ステップで算出された各物体画像の重心座標間を補間する補間関数を生成する補間関数生成ステップと、前記補間関数生成ステップで生成された補間関数を時間微分して前記重心移動速度を導出する移動速度導出ステップと、を含み、前記物体回転速度導出ステップは、前記複数の物体画像の各々の慣性主軸の傾きを求める傾き算出ステップと、前記傾き算出ステップで求められた前記慣性主軸の傾きと前記重心座標算出ステップで算出された前記複数の物体画像の各々の重心座標とに基づいて、前記物体画像の回転速度を導出する回転速度導出ステップと、を含み、前記伝播速度導出ステップは、前記複数の物体画像の各々の重心座標が一致するように各物体画像を平行移動すると共に、前記複数の物体画像の各々の慣性主軸の傾きを合わせるよう各物体画像を回転した後、前記複数の物体画像の各々の輪郭に沿って設定された複数の輪郭点を放射基底関数により補間することで連続的な陰関数曲面を生成する陰関数曲面生成ステップと、前記陰関数曲面生成ステップで生成された陰関数曲面を時間微分して、前記複数の物体画像の各輪郭点における法線方向の速度を前記伝播速度として導出する速度法線方向成分導出ステップと、を含み、前記速度導出ステップでは、前記速度法線方向成分導出ステップで導出された前記伝播速度、前記移動速度導出ステップで導出された前記重心移動速度、及び前記回転速度導出ステップで導出された前記回転速度を合成して前記物体が拡散する速度を導出するようにしても良い。
【0032】
従って、請求項11に記載の拡散速度演算方法によれば、請求項4に記載の発明と同様に作用するので、請求項4に記載の発明と同様に、回転を含めた物理的挙動に則した火炎を含む拡散する物体の拡散速度を精度良く求めることができる。
【0033】
なお、本発明は、請求項12に記載の発明のように、前記拡散する物体は火炎であり、前記火炎が拡散する様子を連続撮影して得られた複数の火炎画像から、前記火炎が拡散する速度を導出するようにしても良い。これにより、拡散する物体としての火炎の、物理的挙動に則した速度を精度良く求めることができる。
【0034】
一方、上記目的を達成するために、請求項13に記載のプログラムは、コンピュータを、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の拡散速度演算装置の各手段として機能させるためのものであり、従って、請求項13に記載の発明によれば、コンピュータを本発明の拡散速度演算装置と同様に作用させることができるので、当該拡散速度演算装置と同様に、物理的挙動に則した火炎を含む拡散する物体の拡散速度を精度良く求めることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、物理的挙動に則した火炎を含む拡散する物体の拡散速度を精度良く求めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施の形態に係る拡散速度演算装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係る拡散速度演算装置のコンピュータによる構成例を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係る拡散速度演算装置で用いる連続画像の一例を示す平面図である。
【図4】実施の形態に係る拡散速度演算装置により生成されるスプライン補間曲線の一例を示す説明図である。
【図5】実施の形態に係る拡散速度演算装置で用いる1枚目の火炎画像における各輪郭点の座標情報(点群)の構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態に係る拡散速度演算装置で用いる2枚目の火炎画像における各輪郭点の座標情報(点群)の構成を示す模式図である。
【図7】実施の形態に係る拡散速度演算装置により生成される補間曲線の一例を示す説明図である。
【図8】実施の形態に係る拡散速度演算装置による処理結果の出力画像の一例を示す説明図である。
【図9】実施の形態に係る拡散速度演算装置による処理結果の出力画像の他の例を示す説明図である。
【図10】従来のRBF曲面のみから生成される火炎の拡散速度の処理結果の出力画像の一例を示す説明図である。
【図11】実施の形態に係る拡散速度演算処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施の形態に係る拡散速度演算装置の他の機能的な構成を示すブロック図である。
【図13】実施の形態に係る拡散速度演算処理プログラムの他の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態に係る拡散速度演算装置10は、図1に示される機能的な構成を備えており、図2に示されるコンピュータのハードウェア構成を有している。そこで、まず、図2を参照してコンピュータの構成を説明する。

【0038】
本実施の形態に係る拡散速度演算装置10は、プログラムに基づき拡散速度演算装置10の本実施の形態に係る処理を行うCPU(Central Processing Unit;中央処理装置)22と、CPU22による例えば図11,図13のフローチャートで処理ルーチンを示す各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)24と、各種制御プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)26と、各種情報を記憶するために用いられるハードディスク28(図中、「HDD」28と記載)と、キーボード14、マウス16、及びディスプレイ18と、外部に接続された装置との間の各種情報の授受を司るインターフェース部20(図中、「IF」28と記載)と、を備えており、これらがシステムバスBUSにより相互に接続されて構成されている。

【0039】
CPU22は、RAM24、ROM26、及びハードディスク28に対するアクセス、キーボード14及びマウス16を介した各種情報の取得、ディスプレイ18に対する各種情報の表示、及びインターフェース部20に接続された外部装置との各種情報の授受等を、各々行うことができる。

【0040】
CPU22が、ハードディスク28等に記憶された拡散速度演算処理プログラムを実行することにより、図1に示す本実施の形態に係る拡散速度演算装置10における各処理部の機能が実現される。

【0041】
図1に示す本実施の形態に係る拡散速度演算装置10は、拡散する物体としての火炎を対象とし、この火炎の速度を演算するものであり、図2におけるCPU22による後述の図11,図13のフローチャートで示す拡散速度演算処理プログラムに基づく処理で実現される機能として、火炎重心移動速度導出部1、火炎伝播速度導出部2、火炎速度導出部3、及び記憶部4を備えている。

【0042】
記憶部4は、火炎の伝播の様子を連続撮影して得られた、図3に例示する複数の画像情報を、各々の撮影時間情報と共に予めHDD28等の記憶装置に記憶する。

【0043】
火炎重心移動速度導出部1は、拡散する物体としての火炎の拡散(以下、伝播ともいう)の様子を連続撮影して得られた複数の火炎画像の時間変化に基づいて、当該火炎画像の重心移動速度を導出する。例えばHDD28から複数の火炎画像を読み出し、読み出した複数の火炎画像中のそれぞれの重心座標x,yを算出し、算出した複数の火炎画像の重心座標x,yの移動量を用いて火炎の重心移動速度を導出する。

【0044】
また、火炎伝播速度導出部2は、複数の火炎画像の各々の重心を合わせるよう各火炎画像を平行移動した後、各火炎画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該火炎画像の各輪郭における法線方向の速度を伝播速度として導出する。すなわち、火炎伝播速度導出部2は、複数の火炎画像各々の輪郭点の座標を当該火炎画像の重心座標x,yの移動量を相殺するように平行移動した後、各輪郭点を放射基底関数(RBF)により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該火炎画像の各輪郭点における法線方向の速度を火炎伝播速度として導出する。

【0045】
そして、火炎速度導出部3は、火炎伝播速度導出部2で導出された火炎伝播速度と火炎重心移動速度導出部1で導出された重心移動速度とに基づいて、火炎が拡散する速度を導出する。

【0046】
火炎重心移動速度導出部1は、火炎重心座標算出部1a、補間関数生成部1b、及び移動速度導出部1cを備え、火炎伝播速度導出部2は、陰関数曲面生成部2a、及び速度法線方向成分導出部2bを備えている。

【0047】
火炎重心移動速度導出部1は、複数の画像情報中の火炎の重心の移動速度を、火炎自体が移動していく伝播速度として導出するものであり、重心座標算出部1aにおいて、HDD28等から複数の火炎画像を読み出し、読み出した複数の火炎画像の各々の重心座標x,yを算出する。

【0048】
そして、補間関数生成部1bにおいて、重心座標算出部1aで算出された複数の火炎画像の重心座標x,yの時間変化から、各火炎画像の重心座標間を補間する補間関数x(t),y(t)を生成し、移動速度導出部1cにおいて、補間関数生成部1bで生成された補間関数x(t),y(t)を時間微分して重心移動速度を導出する。

【0049】
火炎伝播速度導出部2は、陰関数曲面上の速度の法線方向成分を、火炎が可燃性混合気上を広がっていく伝播速度として導出するものであり、陰関数曲面生成部2aにおいて、複数の火炎画像の各々の重心座標が一致するように各火炎画像を平行移動した後、複数の火炎画像の各々の輪郭に沿って設定された複数の輪郭点を放射基底関数により補間することで連続的な陰関数曲面を生成する。すなわち、HDD28等に記憶された複数の火炎画像に対して定められた各輪郭点の座標から、重心座標算出部1aで算出された当該火炎画像の重心座標x,yを減算等することにより、各輪郭点の座標を平行移動した後、複数の火炎画像の各輪郭点をRBFにより補間して連続的な陰関数曲面を生成する。

【0050】
そして、速度法線方向成分導出部2bにおいて、陰関数曲面生成部2aで生成された陰関数曲面を時間微分して、複数の火炎画像の各輪郭点における法線方向の速度を火炎伝播速度として導出する。

【0051】
火炎速度導出部3は、火炎重心移動速度導出部1で導出された重心移動速度と、火炎伝播速度導出部2で導出された火炎伝播速度とを合成することで火炎速度を導出する。

【0052】
以上のように、拡散速度演算装置10は、HDD28等の記憶装置において、火炎の伝播の様子を連続撮影して得られた複数の火炎画像を各々の撮影時間tと共に予め記憶しておき、火炎重心移動速度導出部1により、記憶装置から複数の火炎画像を読み出し、読み出した複数の火炎画像中のそれぞれの重心座標x,yを算出し、算出した複数の火炎画像の重心座標x,yの移動量を用いて火炎の重心移動速度を導出する。

【0053】
また、火炎伝播速度導出部2により、複数の火炎画像各々の輪郭点の座標を当該火炎画像の重心座標x,yの移動量を相殺するように平行移動した後、各輪郭点をRBFにより補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該火炎画像の各輪郭点における法線方向の速度を火炎伝播速度として導出する。

【0054】
そして、火炎速度導出部3により、火炎伝播速度導出部2で導出された火炎伝播速度と火炎重心移動速度導出部1で導出された重心移動速度とを足し合わせて、火炎の速度を導出する。

【0055】
このように、拡散速度演算装置10では、RBFによる点群補間の技術を用いて、離散的な画像群から、連続的な陰関数曲面を生成し、その曲面上で火炎速度の算出を行う際、火炎速度の成分として、可燃性混合気上を火炎が広がってゆく伝播の成分と、風等によって火炎自体が移動してゆく成分とに分け、これらの2つの成分を、RBF上の速度の法線方向成分と、画像中の火炎の重心の移動速度のそれぞれに対応させて火炎の速度を導出しており、物理的挙動に則した火炎の速度を精度良く求めることが可能となる。

【0056】
以下、このような拡散速度演算装置10による処理をより具体的に説明する。

【0057】
まず、火炎重心移動速度導出部1による、図3に示す複数の火炎画像情報を用いた各火炎の輪郭の重心座標x,yの算出と、算出した座標xと座標yを用いた複数の画像情報中の火炎の重心の移動速度の導出処理について説明する。

【0058】
図3においては、連続画像として、1枚目の画像(t=0)、2枚目の画像(t=1)、・・・、及びn枚目の画像(t=n-1)が示されている。なお、本例ではn-1=25で、25枚の連続画像を用いている。また、本例で用いた各画像は、約2.5×10-4秒の間隔で連続撮影されたものである。

【0059】
本例では、重心座標算出部1aにおいて、1~25枚の各画像における重心位置を示す座標(重心座標)が求められる。この重心位置を求める際には、当該画像における輪郭線上の全ての点を用いて計算する。

【0060】
曲面における重心位置を求める技術としては、公知の画面のモーメントを用いる技術がある。例えば、画像f(x,y)の(p+q)次モーメントmpqは一般的に、下記の式(1)で与えられ、このときの画像の重心座標(x,y)は、下記の式(2)で表される。

【0061】
【数1】
JP0006004332B2_000002t.gif

【0062】
【数2】
JP0006004332B2_000003t.gif

【0063】
本例では、1枚目の画像における重心座標(x,y)は(587.58125,450.210417)、2枚目の画像における重心座標(x,y)は(590.57852,455.205225)で、以下、3~25枚目の各画像における重心座標(x,y)はそれぞれ、(590.566483,457.036782)、(596.538659,459.771616)、(602.164727,462.004549)、(603.249566,463.980044)、(606.67222,467.235245)、(608.811965,470.319981)、(608.963327,474.540404)、(611.191349,477.377885)、(609.860904,480.011762)、(608.640138,482.199317)、(609.232162,484.820546)、(608.029799,487.641158)、(606.96263,490.335899)、(604.894983,495.106318)、(603.365683,499.482303)、(602.065783,504.048939)、(598.877009,509.323098)、(595.719268,514.814209)、(592.880892,519.817609)、(591.347949,525.277569)、(588.830114,530.250697)、(587.167763,534.61135)、(587.419569,538.553522)である。

【0064】
これらの重心座標を用いて、火炎重心移動速度導出部1は、補間関数生成部1bにより、各重心座標群をスプライン曲線で補間した関数x(t),y(t)を生成する。

【0065】
スプライン補間は、区分ごとに異なる多項式関数を用いて点群を滑らかに補間する技術であり、一般的には3次多項式による3次スプラインが用いられる。区分の境界で1次導関数及び2次導関数が連続であるという特徴を持つ。図4に、スプライン補間の模式図を示す。なお、図4において横軸が座標t、縦軸が座標x(もしくはy)に対応する。また、スプライン補間に関しては、例えば、「市田浩三,吉本富士市:“スプライン関数とその応用”,教育出版株式会社,pp.1-59,1979-6」等において記載されている。

【0066】
上述の重心座標(x,y)を用いた場合、例えば、図3に示す1~2枚目における画像のスプライン関数x(t)は「-0.001216(t-0)3+0.000000(t-0)2+0.421308(t-0)+587.581250」となり、スプライン関数x(t)は「-0.000919(t-0)3+0.000000(t-0)2+0.591360(t-0)+450.210417」となる。

【0067】

そして、火炎重心移動速度導出部1は、移動速度導出部1cにより、補間関数生成部1bで生成した関数x(t),y(t)の時間微分をとることにより、複数の画像情報中の火炎の重心の移動速度を導出する。

【0068】
すなわち、上述のように重心位置のx座標とy座標それぞれを、時間tを変数とした関数x(t),y(t)で補間すると、重心の速度ベクトルvは、下記の式(3)となる。ここでは、導出した重心の移動速度を(Vx2,Vy2)と表す。

【0069】
【数3】
JP0006004332B2_000004t.gif

【0070】
以上が、火炎重心移動速度導出部1による、図3に示す複数の火炎画像情報を用いた各火炎の輪郭の重心座標(x,y)の算出と、算出した座標(x,y)を用いた複数の画像情報中の火炎の重心の移動速度の導出処理についての説明である。

【0071】
次に、火炎伝播速度導出部2による、火炎が可燃性混合気上を広がっていく伝播速度の導出処理について説明する。

【0072】
まず、陰関数曲面生成部2aにおける、RBFによる点群補間により、図3に示す連続画像における各連続画像(1枚目の画像(t=0)、2枚目の画像(t=1)、・・・、n-1(=25)枚目の画像)から、陰関数曲面を生成する処理について説明する。

【0073】
図3に示す例では、1枚目の画像(t=0)からは17箇所の輪郭点が抽出され、各データが図5に示す構成でHDD28等に記憶される。

【0074】
本例では、重心の移動量を相殺するように平行移動させた上で、火炎画像の輪郭点をRBFによって補間する。例えば、上述の重心座標の説明で述べたように、1枚目の火炎画像における重心座標(x,y)は(587.58125,450.210417)であり、1枚目の火炎画像において特定された各輪郭点の座標(x,y)から、1枚目の重心座標(x,y)(=587.58125,450.210417)を減算することで、座標データの平行移動を行う。

【0075】
例えば、図5における1行目の「x=8.971536,y=-18.2042」との値は、1枚目の火炎画像において特定された各輪郭点の実際の座標(x=596.552786,y=432.006192)から、1枚目の重心座標(x=587.58125,y=450.210417)を引いた値である。この処理を各輪郭点の座標に対して行うことで、各火炎画像の重心を1枚目の火炎画像の重心座標に合わせる。

【0076】
図5において、「x」、「y」は、1枚目の画像から求められる重心位置をx=0、y=0として、当該輪郭点が重心位置より右に行くほどxが増加し、下へ行くほどyが増加するので、輪郭点が重心より左や上にあるばあいはマイナス(-)の値となる。

【0077】
また、図5において、「t」は画像の識別番号(t=0は1枚目)、「関数値」は、当該輪郭点が輪郭上、輪郭の内側、及び輪郭の外側であるかを示しており、「0」が輪郭上、「-1」が輪郭の内側、「1」が輪郭の外側であることを示している。

【0078】
なお、輪郭点を、輪郭上、輪郭の内側、及び輪郭の外側としているのは、輪郭点を輪郭上のみとした場合、後述する式(6)の連立方程式の右辺の値がすべて零(0)となり、自明な解のみしか得られなくなるためである。また、本例では、プラスとなる輪郭点の数とマイナスとなる輪郭点の数を同数として、補間曲面がバランスよく生成されるようにしているが、必ずしも同数とする必要はない。

【0079】
同様に、2枚目の画像(t=1)からは、24箇所の輪郭点が抽出され、各データが図6に示す構成でHDD28等に記憶される。なお、図6においては2枚目の画像をt=10として示している。

【0080】
また、25枚目の画像からは、116箇所の輪郭点を抽出しており、1~25枚の画像から合計で1816箇所の輪郭点を抽出している。

【0081】
このように、各輪郭点は2次元座標(x、y)をもち、この座標に時間の次元(t)を加えることで、3次元空間上の点(x,y,z)として扱うことができ、陰関数曲面生成部2aは、火炎重心移動速度導出部1で導出された重心の移動量を相殺するように平行移動させた後、1~25枚の火炎画像の各輪郭点(3次元の点群)をRBFによって補間することで陰関数曲面を生成する。

【0082】
次に、このような陰関数曲面生成部2aにより陰関数曲面を生成する処理と、火炎伝播速度導出部2における速度法線方向成分導出部2bの処理についてより詳しく説明する。

【0083】
本例の火炎伝播速度導出部2における陰関数曲面生成部2aでは、RBFによる群点補間の手法を用いており、本例では、上述したように、連続画像の輪郭点を、2次元座標(x,y)と時間(t)をもった3次元空間上の点群として扱い、これらの点群を補間する陰関数曲面f(x,y,t)=0を考える。

【0084】
上述の図3において連続画像の例を示しており、図7において補間曲面の例を示している。なお、図7は、重心の移動量を相殺するように平行移動させていない場合において、火炎画像の輪郭点をRBFによって補間した結果の陰関数曲面であり、このように、重心が移動して拡散する物体を対象として、拡散速度を導出する。本例では、このような重心の移動量を相殺するように平行移動させたうえで、火炎画像の輪郭点をRBFによって補間する。

【0085】
RBFとは、原点からの距離のみに依存する基底関数であり、用途に応じて幾つかの形式があるが、本例では、下記に示される式(4)に示すような、3次元の曲面補間に「triharmonic spline」を用いる。

【0086】
【数4】
JP0006004332B2_000005t.gif

【0087】
点群を補間する陰関数は、各点を中心とした基底関数の加重和をとることにより、下記に示される式(5)のように決定される。

【0088】
【数5】
JP0006004332B2_000006t.gif

【0089】
上記式(5)中の「c」は各点の位置ベクトル、「d」は重みを表し、P(x)は1次多項式「p+px+py+pz」である。そして、重み「d」及び多項式の係数「p~p」は、下記の式(6)で示される連立一次方程式を解くことによって求められる。なお、各点の座標を「cj=(c,c,c)」とする。

【0090】
【数6】
JP0006004332B2_000007t.gif

【0091】
上記式(6)において、「φij=φ(c-c)」である。また、「h」は、図5,図6における関数値であり、曲面からの符号付き距離を表し、「c」が曲面上の点であれば「h=0」、曲面内部の点であれば「h<0」、曲面外部の点であれば「h>0」となる。なお、図5,図6における関数値で説明したように、全ての点を各曲面上の点(輪郭点)とした場合、上記式(6)の連立方程式の右辺の値がすべて零(0)となり、自明な解のみしか得られなくなるため、ここでは、輪郭点から法線方向(内部、外部)にオフセットを加えている。

【0092】
ここでの「φ(c-c)」は上記式(4)で示されているように、ベクトルの長さを3乗したものであり、従って、「φij」は「i個目の点とj個目の点との距離を3乗したもの」ということとなる。

【0093】
例えば、上記式(6)において、1行2列目の成分は、「φ12=φ(c1-c23=(1つ目の点と2つ目の点との距離の3乗」となり、また、1行3列目の成分は、「φ13=φ(c1-c33=(1つ目の点と3つ目の点との距離の3乗」となる。

【0094】
図5,6,…に示される点群データによって決定される行列は、例えば、1行目が「0、 63985.12 79952.23 35056.78 10.3544 61675.83 71839.82 28682 ・・・116136.6 ・・・ 44312.81 ・・・ 592041.7 ・・・246172.8 ・・・ 1959455 ・・・762641.4・・・ 1149980 565262.1 499082.3 482887.9」等となり、これと関数値hによって、上記式(6)の連立一次方程式の1行目が形成され、本例では、式(6)の連立一次方程式は、1816行からなる。

【0095】
この連立一次方程式を解くことにより、1816行の各行における各重み「d」及び多項式の係数「p~p」が計算される。

【0096】
このようにして計算された各重み「d」及び多項式の係数「p~p」を、上記式(5)に当てはめることにより、曲面の式が決定される。

【0097】
すなわち、式(5)の関数は、1816個の項を足し合わせた形であり、本例では、「f(x)=d1φ(x-c1)+d2φ(x-c2)+d3φ(x-c3)+・・・+d1816φ(x-c1816)+p0+p1x+p2y+p3z」となる。

【0098】
本例では、速度法線方向成分導出部2bにおいて、この式(5)に示す関数の微分値を求めることで、当該陰関数曲面における各輪郭点での速度の法線方向成分を導出する。

【0099】
以下、このような陰関数曲面における各輪郭点での速度の法線方向成分の導出について説明する。なお、この陰関数曲面における各輪郭点での速度の法線方向成分の導出に関しては、上述の非特許文献2におけるStamの論文の「3.NORMAL VELOCITY」に記載の技術を用いることができ、ここでの詳細な説明は行わない。

【0100】
上述のように、時間に依存する陰関数f(x,y,z)=0で示される曲面を考える。

【0101】
関数fの時間に関する全微分をとると、下記の式(7)となる。

【0102】
【数7】
JP0006004332B2_000008t.gif

【0103】
曲面上の点においては、この微分値は零(0)となる。つまり、下記の式(8)と表すことができる。これにより、速度の法線方向成分のみが決定される。

【0104】
【数8】
JP0006004332B2_000009t.gif

【0105】
ここで、速度の方向を輪郭線の法線方向とすることを条件とし、伝播速度としてRBFの法線方向成分の速度を算出するために下記の式(9)を用いる。

【0106】
【数9】
JP0006004332B2_000010t.gif

【0107】
上記の式(8)及び(9)より、下記の式(10)が得られ、この式(10)が速度の法線方向成分となる。

【0108】
【数10】
JP0006004332B2_000011t.gif

【0109】
上記式(10)を用いて、各輪郭点の速度の法線方向成分を算出する。本例では、式(5)の関数、すなわち、「f(x)=d1φ(x-c1)+d2φ(x-c2)+d3φ(x-c3)+・・・+d1816φ(x-c1816)+p0+p1x+p2y+p3z」の微分値を求めると、1816個の足し合わせとなり、これにより速度を表す式が得られ、その式に、例えば、「x=10.773644」、「y=-18.675817」、「z=0」を代入すると、「Vx1=-3.998188」、「Vy2=-3.873554」が当該輪郭点の速度の法線方向成分、すなわち、火炎伝播速度の値として得られる。

【0110】
なお、上述したように、画像中では、右へ行くほどxが増加し、下へ行くほどyが増加するので、「Vx1=-3.998188」と「Vy2=-3.873554」からなるベクトルは、左側に3.998188、上側に3.873554というベクトルであることを意味する。

【0111】
このようにして得られた火炎伝播速度としての、各輪郭点の速度の法線方向成分(ベクトル)と、当該火炎画像から上述の火炎重心移動速度導出部1における移動速度導出部1cが導出した重心の移動速度(ベクトル)との2つを足し合わせたものを、各輪郭点の火炎速度とする。

【0112】
図8においては、図3に示される各火炎画像に対して、上述の拡散速度演算装置10により速度導出処理を行った際の結果を示しており、図中の楕円状の輪郭線の部分が火炎画像であり、直線部分が速度を表している。ここでは、速度を導出した輪郭点の座標から、拡散速度演算装置10により導出された速度ベクトルの座標までを直線で結ぶことで、火炎速度を視覚的に表している。

【0113】
また、図9においては、平行移動しながら径が増加してゆく円に対して、拡散速度演算装置10により速度を算出した例を示しており、また、図10は、図9の場合と同じ画像に対し、重心移動を考慮せず、RBF曲面のみから速度を算出した結果を示している。

【0114】
図9からも、本例の拡散速度演算装置10は、平行移動と変形が組み合わされた動きに対応が可能であることがわかる。

【0115】
なお、上記式(6)のような連立方程式を一般的なCPUを用いて解く場合、行列のサイズが大きくなると計算時間が非常に長いものとなってしまう。そこで、GPU(Graphics Processing Unit、グラフィックス プロセッシング ユニット)を用いて行列演算を並列的に処理することにより、処理速度の高速化を図ることができる。

【0116】
次に、図11を用いて、本例の拡散速度演算装置10による拡散速度演算処理について説明する。この図11で示す各ステップは、図2におけるCPU22のHDD28等の記憶装置に記憶されたプログラムに基づく処理内容を示している。

【0117】
ステップ100においては、図1における重心座標算出部1aと同様の処理により、各連続した火炎画像(火炎輪郭)における重心座標(x,y)を算出し、ステップ102においては、図1における補間関数生成部1bと同様の処理により補間関数x(t),y(t)を生成し、ステップ104においては、図1における移動速度導出部1cと同様の処理により、各火炎画像の重心の移動速度を算出する。

【0118】
また、ステップ106においては、図1における陰関数曲面生成部2aと同様の処理により、陰関数曲面を生成し、ステップ108においては、図1における速度法線方向成分導出部2bと同様の処理により、各輪郭点における速度の法線方向成分を算出する。

【0119】
そして、ステップ110においては、図1における火炎速度導出部3と同様の処理により、火炎の速度を算出し、ステップ112において、算出結果を出力する。

【0120】
なお、火炎の速度としては、上述の重心の移動速度(火炎自体の移動速度)と法線方向速度(火炎が可燃性混合気上を広がって行く伝播速度)と共に、火炎が回転する場合の回転速度が考えられる。

【0121】
このような火炎の回転速度を求める基本的な技術について以下に説明する。

【0122】
連続画像から曲面を生成する際、個々の画像における形状の慣性主軸の傾きを求めることができ、画像間での軸の傾きの変化から、形状の回転を把握することができる。慣性主軸の傾きについては、画像のモーメントから求めることができる。

【0123】
重心周りのモーメントMpqは、下記の式(11)で与えられる。

【0124】
【数11】
JP0006004332B2_000012t.gif

【0125】
このときの慣性主軸の傾きθは、下記の式(12)で表される。

【0126】
【数12】
JP0006004332B2_000013t.gif

【0127】
ここで、回転物体の速度について考える。ある点を中心として回転する楕円を考えると、各点における速度の方向は、回転中心とその点を結んだ線分に対して垂直方向とするのが自然である。また、回転中心との距離をr、回転角をθとすると、速度の大きさ|v|は、下記の式(13)となる。

【0128】
【数13】
JP0006004332B2_000014t.gif

【0129】
従って、形状の回転中心(重心とすれば良い)と回転角(慣性主軸の傾き)から、回転物体の速度を求めることができる。

【0130】
以下、図12,図13を用いて、このような火炎の回転速度を含めて、火炎の速度を計算する拡散速度演算装置について説明する。

【0131】
図12においては、このような処理を行う拡散速度演算装置10aの構成を示している。拡散速度演算装置10aも図1に示す拡散速度演算装置10と同様に、図2に示すコンピュータの構成からなる。

【0132】
拡散速度演算装置10aにおいては、図1に示す拡散速度演算装置10の構成に加えて、複数の火炎画像のそれぞれの慣性主軸の傾きを求める火炎傾き算出部5aと、求めた慣性主軸の傾きから火炎画像の回転速度を導出する回転速度導出部5bからなる火炎回転速度導出部5を備えている。

【0133】
なお、図12における火炎重心移動速度算出部1は、図1における火炎重心移動速度算出部1と同様の処理を実行するものであり、重心座標算出部1a、補間関数生成部1b、及び移動速度導出部1cに関しては、ここでの説明は行わない。

【0134】
本例では、火炎伝播速度導出部2cは、陰関数曲面生成部2a’において、重心座標x,yの移動量を相殺するように平行移動すると共に、火炎回転速度導出部5の火炎傾き算出部5aで求められた各火炎画像間での慣性主軸の傾きを相殺した後、各輪郭点をRBFにより補間して連続的な陰関数曲面を生成し、速度法線方向生成部2b’において、生成した陰関数曲面上で当該火炎画像の各輪郭点における法線方向の速度を火炎伝播速度として導出する。

【0135】
そして、火炎速度導出部3aは、火炎伝播速度導出部2cで導出された火炎伝播速度としての各輪郭点における法線方向速度に、火炎重心移動速度導出部1で導出された重心移動速度と、火炎回転速度導出部5で導出された火炎画像の回転速度の3つを足し合わせて火炎の速度を導出する。

【0136】
このような本例の拡散速度演算装置10aによる拡散速度演算処理について、図13を用いて説明する。この図13で示す各ステップは、図11の場合と同様に、図2におけるCPU22のHDD28等の記憶装置に記憶されたプログラムに基づく処理内容を示している。

【0137】
まず、ステップ200においては、図12すなわち図1における重心座標算出部1aと同様の処理により、各連続した火炎画像(火炎輪郭)における重心座標(x,y)を算出し、ステップ202においては、図12すなわち図1における補間関数生成部1bと同様の処理により補間関数x(t),y(t)を生成し、ステップ204においては、図12すなわち図1における移動速度導出部1cと同様の処理により、各火炎画像の重心の移動速度を算出する。

【0138】
次に、ステップ202aにおいては、図12における火炎傾き算出部5aと同様の処理により、各連続した火炎画像(火炎輪郭)における慣性主軸の傾きを算出し、ステップ204aにおいては、図12における回転速度導出部5bと同様の処理により火炎画像の回転速度を導出する。

【0139】
そして、ステップ206aにおいては、図12における陰関数曲面生成部2a’と同様の処理により、連続的な陰関数曲面を生成し、ステップ208aにおいては、図12における速度法線方向成分導出部2b’と同様の処理により、各輪郭点における速度の法線方向成分を火炎伝播速度として算出する。

【0140】
そして、ステップ210aにおいては、図12における火炎速度導出部3aと同様の処理により火炎の速度を導出し、ステップ212aにおいて、算出結果を出力する。

【0141】
以上、図1~図11を用いて説明したように、本例の拡散速度演算装置10では、拡散する物体としての火炎の伝播・拡散の様子を連続撮影して得られた複数の火炎画像の時間変化に基づいて、火炎画像の重心移動速度を導出する火炎重心移動速度導出部1と、複数の火炎画像の各々の重心を合わせるよう各火炎画像を平行移動した後、各火炎画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該火炎画像の各輪郭における法線方向の速度を伝播速度として導出する火炎伝播速度導出部2と、火炎伝播速度導出部2で導出された伝播速度と火炎重心移動速度導出部1で導出された重心移動速度とに基づいて、火炎が拡散する速度を導出する火炎速度導出部3と、を備えている。

【0142】
なお、火炎重心移動速度導出部1は、複数の火炎画像の各々の重心座標を算出する重心座標算出部1aと、重心座標算出部1aで算出された各火炎画像の重心座標間を補間する補間関数を生成する補間関数生成部1bと、補間関数生成部1bで生成された補間関数を時間微分して重心移動速度を導出する移動速度導出部1cと、を備え、火炎伝播速度導出部2は、複数の火炎画像の各々の重心座標が一致するように各火炎画像を平行移動した後、複数の火炎画像の各々の輪郭に沿って設定された複数の輪郭点を放射基底関数により補間することで連続的な陰関数曲面を生成する陰関数曲面生成部2aと、陰関数曲面生成部2aで生成された陰関数曲面を時間微分して、複数の火炎画像の各輪郭点における法線方向の速度を伝播速度として導出する速度法線方向成分導出部2bと、を備え、火炎速度導出部3手段は、速度法線方向成分導出部2bで導出された伝播速度と移動速度導出部1cで導出された重心移動速度とを合成して火炎が伝播・拡散する速度を導出する。

【0143】
このように、拡散速度演算装置10では、RBFによる点群補間の技術を用いて、離散的な画像群から、連続的な陰関数曲面を生成し、その曲面上で火炎速度の算出を行う際、火炎速度の成分として、可燃性混合気上を火炎が広がってゆく伝播の成分と、風等によって火炎自体が移動してゆく成分とに分け、これらの2つの成分を、RBF上の速度の法線方向成分と、画像中の火炎の重心の移動速度のそれぞれに対応させて火炎の速度を導出しており、物理的挙動に則した火炎の速度を精度良く求めることが可能となる。

【0144】
一方、図12,図13を用いて説明した拡散速度演算装置10aでは、拡散する物体としての火炎の伝播・拡散の様子を連続撮影して得られた複数の火炎画像の時間変化に基づいて、火炎画像の重心移動速度を導出する火炎重心移動速度導出部1と、火炎画像の時間変化に基づいて、火炎画像の回転速度を導出する火炎回転速度導出部5と、複数の火炎画像の各々の重心を合わせるよう各火炎画像を平行移動すると共に、複数の火炎画像の各々の慣性主軸の傾きを合わせるよう各火炎画像を回転した後、各火炎画像の輪郭を放射基底関数により補間して連続的な陰関数曲面を生成し、生成した陰関数曲面上で当該火炎画像の各輪郭における法線方向の速度を伝播速度として導出する火炎伝播速度導出部2cと、火炎伝播速度導出部2cで導出された伝播速度、火炎重心移動速度導出部1で導出された重心移動速度、及び火炎回転速度導出部5で導出された回転速度に基づいて、火炎が伝播・拡散する速度を導出する火炎速度導出部3aと、を備えている。

【0145】
なお、火炎重心移動速度導出部1は、複数の火炎画像の各々の重心座標を算出する重心座標算出部1aと、重心座標算出部1aで算出された各火炎画像の重心座標間を補間する補間関数を生成する補間関数生成部1bと、補間関数生成部1bで生成された補間関数を時間微分して重心移動速度を導出する移動速度導出部1cと、を備え、火炎回転速度導出部5は、複数の火炎画像の各々の慣性主軸の傾きを求める火炎傾き算出部5aと、火炎傾き算出部5aで求められた慣性主軸の傾きと重心座標算出部1aで算出された複数の火炎画像の各々の重心座標とに基づいて、火炎画像の回転速度を導出する回転速度導出部5bと、を備え、火炎伝播速度導出部2cは、複数の火炎画像の各々の重心座標が一致するように各火炎画像を平行移動すると共に、複数の火炎画像の各々の慣性主軸の傾きを合わせるよう各火炎画像を回転した後、複数の火炎画像の各々の輪郭に沿って設定された複数の輪郭点を放射基底関数により補間することで連続的な陰関数曲面を生成する陰関数曲面生成部2a’と、陰関数曲面生成部2a’で生成された陰関数曲面を時間微分して、複数の火炎画像の各輪郭点における法線方向の速度を伝播速度として導出する速度法線方向成分導出部2b’と、を備え、火炎速度導出部3aは、速度法線方向成分導出部2b’で導出された伝播速度、移動速度導出部1cで導出された重心移動速度、及び回転速度導出び5bで導出された回転速度を合成して火炎が伝播・拡散する速度を導出する。

【0146】
このように、図12に示す拡散速度演算装置10aにおいては、図1に示す拡散速度演算装置10の構成に加えて、複数の火炎画像のそれぞれの慣性主軸の傾きを求める火炎傾き算出部5aと、求めた慣性主軸の傾きから火炎画像の回転速度を導出する回転速度導出部5bからなる火炎回転速度導出部5を備え、火炎伝播速度導出部2cは、重心座標x,yの移動量を相殺するように平行移動すると共に、火炎回転速度導出部5の火炎傾き算出部5aで求められた各火炎画像間での慣性主軸の傾きを相殺したうえで、各輪郭点をRBFにより補間して連続的な陰関数曲面を生成し、火炎速度導出部3aは、火炎伝播速度導出部2cで導出された各輪郭点における法線方向速度に、火炎重心移動速度導出部1で重心座標x,yの移動量を用いて導出された火炎の重心移動速度と、火炎回転速度導出部5で導出された火炎の回転速度とを足し合わせて、火炎の速度を導出する。これにより、回転を含めた火炎画像の速度も精度良く求めることができる。

【0147】
なお、補間関数生成部1bでは、重心座標算出部1aで算出された複数の火炎画像の重心座標x,yをスプライン曲線で補間して補間関数x(t),y(t)を生成する。

【0148】
また、輪郭点は、火炎画像の輪郭線上、輪郭線の内側、及び輪郭線の外側のいずれかであり、輪郭線の内側の輪郭点の数と、輪郭線の外側の輪郭点の数を同じとすることで、陰関数曲面をバランスよく生成する。

【0149】
なお、本発明は、上述した例に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。

【0150】
例えば、本例においては、火炎の速度を対象として説明したが、水面上において拡散する油等の拡散速度を求める等、他の拡散する物体に関しても適用することができ、その拡散速度を精度良く求めることが可能である。

【0151】
また、本例においては、重心座標を補間して曲線を生成する技術として、スプライン補間を用いているが、ラグランジュ補間やニュートン補間を用いることも考えられる。しかし、このラグランジュ補間では、n個の点をn-1次式の曲線で補間するものであり、例えば,点が3個であれば、「x(t)=at+bt+c」という2次式で表すことができるが、このラグランジュ補間では、実装が非常に単純であるが、点数が多くなると不自然に曲線が振動してしまうことがある。

【0152】
また、図2に示したコンピュータ構成において、本発明に係る各処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、各構成による処理が実行されてもよいし、図示されていない通信機能を用いて、当該プログラムを読み込ませることでもよい。

【0153】
なお、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。

【0154】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。

【0155】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能を、コンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。

【0156】
また、本実施の形態に係る拡散速度演算装置10における火炎重心移動速度導出部1、火炎伝播速度導出部2、及び火炎速度導出部3を、プログラムにより各機能の実行が可能なコンピュータで構成するものとしているが、論理素子回路からなるハードウェア構成とすることでも良い。

【0157】
このように、本発明を実施する形態例を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0158】
1 火炎重心移動速度導出部
1a 重心座標算出部
1b 補間関数生成部
1c 移動速度導出部
2,2c 火炎伝播速度導出部
2a,2a’ 陰関数曲面生成部
2b,2b’ 速度法線方向成分導出部
3,3a 火炎速度導出部
4 記憶部
10,10a 拡散速度演算装置
5 火炎回転速度導出部
5a 火炎傾き算出部
5b 回転速度導出部
14 キーボード
16 マウス
18 ディスプレイ
20 インターフェース部(IF)
22 CPU
24 RAM
26 ROM
28 ハードディスク(HDD)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12