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明細書 :半導体ナノ粒子、半導体ナノ粒子担持電極及び半導体ナノ粒子の製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-129190 (P2014-129190A)
公開日 平成26年7月10日(2014.7.10)
発明の名称または考案の名称 半導体ナノ粒子、半導体ナノ粒子担持電極及び半導体ナノ粒子の製法
国際特許分類 C01G  19/00        (2006.01)
C01B  19/00        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI C01G 19/00 A
C01B 19/00 Z
B82Y 30/00
B82Y 40/00
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2012-287434 (P2012-287434)
出願日 平成24年12月28日(2012.12.28)
発明者または考案者 【氏名】鳥本 司
【氏名】亀山 達矢
【氏名】藤田 繁稔
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000017、【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
審査請求 未請求
要約 【課題】Ag8SnZ6(ZはS又はSe)を主成分とする半導体ナノ粒子であって、平均粒径が従来に比べて一段と小さいものを提供する。
【解決手段】Ag(S2CNEt2)0.12mmolに対して、Sn(S2CNEt24を、金属源のモル比がAg:Sn=8:x(x=1~8)となるように、オレイルアミン3.0cm3、ミクロ撹拌子と共に試験管にいれ、試験管内部を窒素ガスで充填した。この試験管をホットスターラーにセットして300℃で5分間加熱・撹拌を行い、その後室温まで空冷することで錯体の熱分解生成物(懸濁液)を得た。この懸濁液にエタノール約5cm3を加え、遠心分離により沈殿を回収した。得られた沈殿をエタノールで2回洗浄した後、ヘキサン3cm3に分散させ、遠心分離により沈殿を分離し、オレイルアミン修飾Ag8SnS6ナノ粒子のヘキサン溶液を得た。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
Ag8SnZ6(但し、ZはS又はSe)を主成分とする粒子であり、粒子サイズが20nm以下である、半導体ナノ粒子。
【請求項2】
前記Ag8SnZ6を主成分とする粒子の表面が、炭素数4~20の炭化水素基を有するアルキルアミン又はアルケニルアミンによって修飾されている、請求項1に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項3】
吸収スペクトルの長波長側の吸収端が800nm以上である、請求項1又は2に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子を多孔質金属酸化物電極担体に担持させた、半導体ナノ粒子担持電極。
【請求項5】
IPCEスペクトルの長波長側の吸収端が800nm以上である、請求項4に記載の半導体ナノ粒子担持電極。
【請求項6】
Z(但し、ZはS又はSe)を配位元素とする配位子を持つAg錯体と、前記配位子を持つSn錯体とを、金属源のモル比がAg:Sn=8:x(但し、x=1~8)となるように、炭素数4~20の炭化水素基を有するアルキルアミン又はアルケニルアミンの中に入れ、150~350℃で加熱撹拌し、得られた懸濁液から沈澱を回収し、該沈澱を有機溶媒に溶解させて半導体ナノ粒子の溶液を得る、半導体ナノ粒子の製法。
【請求項7】
前記配位子は、ジアルキルジチオカルバミン酸である、
請求項6に記載の半導体ナノ粒子の製法。
【請求項8】
Ag塩と、Sn塩と、チオウレア又はセレノウレアとを、モル比がAg:Sn:S(又はSe)=8:x:y(但し、x=1~8、y=1~60)となるように、炭素数4~20の炭化水素基を有するアルキルアミン又はアルケニルアミンの中に入れ、150~350℃で加熱撹拌し、得られた懸濁液から沈澱を回収し、該沈澱を有機溶媒に溶解させて半導体ナノ粒子の溶液を得る、半導体ナノ粒子の製法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ナノ粒子、半導体ナノ粒子担持電極及び半導体ナノ粒子の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
高効率太陽電池の作成を目指して、様々な材料探索がなされている。近年、化合物半導体であるCuInSe2(CIS)などのカルコパイライト系半導体を用いて、高効率太陽電池が作成できることが報告され、シリコン太陽電池に変わる次世代太陽電池として注目されている。例えば、特許文献1では、高品位なカルコパイライトナノ粒子の製造方法が提案されている。カルコパイライトナノ粒子を利用すれば、光電変換素子等の作製が容易になると考えられるものの、希少元素であるInを含むために、将来の安定的な供給に不安があり、代替材料の探索が続けられている。
【0003】
Ag8SnS6は、希少金属や高毒性元素を含まない半導体として着目されつつある(非特許文献1-3)。例えば、非特許文献1では、SとSnCl2とAgNO3との混合物をオートクレーブに入れ、オートクレーブを密閉して180℃で14時間加熱し、その後室温まで自然冷却することにより、Ag8SnS6を得ている。このAg8SnS6の平均粒径は約60nmである。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-192542号
【0005】

【非特許文献1】Materials Research Bulletin, vol. 36(2001), p2649-2656
【非特許文献2】Crystal Growth Design, vol.12(2012), p3458-3464
【非特許文献3】Materials Research Bulletin, vol. 38(2003), p823-830
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、平均粒径が更に一段と小さいAg8SnS6は、これまで知られていなかった。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、Ag8SnZ6(ZはS又はSe)を主成分とする半導体ナノ粒子であって、平均粒径が従来に比べて一段と小さいものを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明者らは、Ag(S2CNEt2)とSn(S2CNEt2) とをオレイルアミン中に入れて加熱撹拌し、得られた懸濁液から沈澱を回収し、該沈澱をヘキサンに溶解させたところ、平均粒径が20nm以下の半導体ナノ粒子の溶液が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の半導体ナノ粒子は、Ag8SnZ6(但し、ZはS又はSe)を主成分とする粒子であり、粒子サイズが20nm以下のものである。
【0010】
本発明の半導体ナノ粒子担持電極は、上述した半導体ナノ粒子を多孔質金属酸化物電極担体に担持させたものである。
【0011】
本発明の半導体ナノ粒子の第1の製法は、Z(但し、ZはS又はSe)を配位元素とする配位子を持つAg錯体と、前記配位子を持つSn錯体とを、金属源のモル比がAg:Sn=8:x(x=1~8)となるように、炭素数4~20の炭化水素基を有するアルキルアミン又はアルケニルアミンの中に入れ、150~350℃で加熱撹拌し、得られた懸濁液から沈澱を回収し、該沈澱を有機溶媒に溶解させて半導体ナノ粒子の溶液を得るものである。
【0012】
本発明の半導体ナノ粒子の第2の製法は、Ag塩と、Sn塩と、チオウレア又はセレノウレアとを、モル比がAg:Sn:S(又はSe)=8:x:y(但し、x=1~8、y=1~60)となるように、炭素数4~20の炭化水素基を有するアルキルアミン又はアルケニルアミンの中に入れ、150~350℃で加熱撹拌し、得られた懸濁液から沈澱を回収し、該沈澱を有機溶媒に溶解させて半導体ナノ粒子の溶液を得るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体ナノ粒子によれば、良好な光電気化学特性が得られる。特にこの半導体ナノ粒子を多孔質金属酸化物担体に担持させた半導体ナノ粒子担持電極は、光増感作用を発揮することから、光増感太陽電池への利用が期待される。また、本発明の半導体ナノ粒子の第1及び第2の製法によれば、上述した半導体ナノ粒子を比較的簡単に製造することができるし、加熱時の温度を調節することにより半導体ナノ粒子の平均粒径を20nm以下の範囲内でコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】半導体ナノ粒子溶液の模式図。
【図2】比較例1,2及び実施例1~4のXRDパターン。
【図3】比較例1,2及び実施例1~4の吸収スペクトル。
【図4】比較例1,2及び実施例1~4のSn仕込み比xと金属原子の割合との関係を表すグラフ。
【図5】実施例1~4のAg8SnS6ナノ粒子のTEM像。
【図6】実施例1~4のSn仕込み比xと粒径との関係を表すグラフ。
【図7】実施例5~8及び実施例2のXRDパターン。
【図8】実施例5~8及び実施例2の吸収スペクトル。
【図9】実施例5~8及び実施例2の反応温度と金属原子の割合との関係を表すグラフ。
【図10】実施例5~8及び実施例2のAg8SnS6ナノ粒子のTEM像。
【図11】実施例5~8及び実施例2の反応温度と粒径との関係を表すグラフ。
【図12】実施例9の電極の拡散反射スペクトル。
【図13】実施例10の電極の拡散反射スペクトル。
【図14】実施例9の光照射時及び暗時の電流-電位曲線。
【図15】実施例10の光照射時及び暗時の電流-電位曲線。
【図16】実施例9,10の波長とIPCEとの関係を表すグラフ。
【図17】実施例11のナノ粒子のXRDパターン。
【図18】実施例11の吸収スペクトル。
【図19】実施例11のナノ粒子のTEM像。
【図20】実施例11の粒径分布。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の半導体ナノ粒子は、Ag8SnZ6(但し、ZはS又はSe)を主成分とする粒子であり、粒子サイズが20nm以下のものである。

【0016】
本発明の半導体ナノ粒子は、Ag8SnZ6を主成分とする粒子の表面が、炭素数4~20の炭化水素基を有するアルキルアミン又はアルケニルアミンによって修飾されていることが好ましい。炭素数4~20の炭化水素基を有するアルキルアミンとしては、例えばn-ブチルアミン、イソブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどが挙げられる。また、炭素数4~20の炭化水素基を有するアルケニルアミンとしては、オレイルアミンなどが挙げられる。こうしたアミンは、粒子表面に結合可能であるが、その結合の様式は、例えば共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合、ファンデルワールス結合等の化学結合が挙げられる。

【0017】
本発明の半導体ナノ粒子は、可視光から近赤外光を効率よく光吸収するために、吸収スペクトルの長波長側の吸収端が800nm以上であることが好ましく、太陽光のうち可視光よりも波長の長い近赤外光を吸収することが好ましい。この場合、この半導体ナノ粒子を担持させた電極を太陽電池に組み込んだときに性能が向上することが期待される。

【0018】
本発明の半導体ナノ粒子担持電極は、上述した半導体ナノ粒子を多孔質金属酸化物電極担体に担持させたものである。金属酸化物としては、例えばZnO、TiO2、WO3、SnO2、In23、Al23などが挙げられ、金属酸化物の粒子形状としては、球状やロッド状など種々のものを用いることができる。これらの金属酸化物粒子をFTO基板などの電極基板上に固定することで多孔質金属酸化物電極担体を得ることができる。こうした電極担体への半導体ナノ粒子の担持は、上述した半導体ナノ粒子を有機溶媒に溶解させた半導体ナノ粒子溶液に、多孔質金属酸化物電極担体をディップするという操作を複数回繰り返して行ってもよい。あるいは、半導体ナノ粒子溶液に1回ディップしたあと架橋剤溶液に1回ディップするという操作を複数回繰り返して作製してもよい。架橋剤としては、例えばエチレンジアミン(EDA)、エタンジチオールなどが挙げられる。このような架橋剤を用いることにより、半導体ナノ粒子間が架橋されるため、半導体ナノ粒子をナノロッドに強固に固定することができる。

【0019】
本発明の半導体ナノ粒子担持電極は、IPCEスペクトルの長波長側の吸収端が800nm以上であることが好ましく、可視光から近赤外光を光照射することによって光応答することが好ましい。この場合、太陽光のうち可視光よりも波長の長い近赤外光を吸収するため、この半導体ナノ粒子担持電極を太陽電池に組み込んだときに性能が向上することが期待される。

【0020】
本発明の半導体ナノ粒子の第1の製法は、Z(但し、ZはS又はSe)を配位元素とする配位子を持つAg錯体と、前記配位子を持つSn錯体とを、金属源のモル比がAg:Sn=8:x(但し、x=1~8)となるように、炭素数4~20の炭化水素基を有するアルキルアミン又はアルケニルアミンの中に入れ、150~350℃で加熱撹拌し、得られた懸濁液から沈澱を回収し、該沈澱を有機溶媒に溶解させて半導体ナノ粒子の溶液を得るものである。この製法によれば、Ag8SnZ6(但し、ZはS又はSe)を主成分とする粒子であって粒子サイズが20nm以下のものを比較的容易に得ることができる。

【0021】
本発明の半導体ナノ粒子の第1の製法において、配位子としては、Sを配位元素とする配位子が好ましい。こうした配位子としては、例えば、2,4-ペンタンジチオンなどのβ-ジチオン類;1,2-ビス(トリフルオロメチル)エチレン-1,2-ジチオールなどのジチオール類;ジエチルジチオカルバミド酸などのジアルキルジチオカルバミン酸などが挙げられる。このうち、ジアルキルジチオカルバミン酸が好ましい。

【0022】
本発明の半導体ナノ粒子の第2の製法は、Ag塩と、Sn塩と、チオウレア又はセレノウレアとを、モル比がAg:Sn:S(又はSe)=8:x:y(但し、x=1~8、y=1~60)となるように、炭素数4~20の炭化水素基を有するアルキルアミン又はアルケニルアミンの中に入れ、150~350℃で加熱撹拌し、得られた懸濁液から沈澱を回収し、該沈澱を有機溶媒に溶解させて半導体ナノ粒子の溶液を得るものである。この製法によっても、Ag8SnZ6(但し、ZはS又はSe)を主成分とする粒子であって粒子サイズが20nm以下のものを比較的容易に得ることができる。

【0023】
本発明の半導体ナノ粒子の第1及び第2の製法において、炭素数4~20の炭化水素基を有するアルキルアミン又はアルケニルアミンについては、既に説明済みのため、ここではその説明を省略する。反応温度は150~350℃の範囲で適宜設定すればよい。この範囲で温度が低いほど平均粒径が小さく、温度が高いほど平均粒径が大きくなる傾向があるが、平均粒径が20nmを超えることはない。また、反応時間も、使用する単体や化合物の種類、反応温度によって適宜設定すればよいが、通常は数秒~数時間の範囲で設定するのが好ましく、1~60分の範囲で設定するのがより好ましい。また、加熱撹拌後に得られた懸濁液から回収した沈澱を有機溶媒に溶解させて半導体ナノ粒子を得る際、有機溶媒として、例えばクロロホルム、トルエン、ヘキサン、n-ブタノールなどを用いることが好ましい。また、懸濁液から回収した沈澱を低級アルコール(例えばメタノールやエタノールなど)で洗浄した後、前出の有機溶媒に溶解させ、沈澱を分離して半導体ナノ粒子溶液としてもよい。
【実施例】
【0024】
1.Ag8SnS6ナノ粒子
(1)Sn(S2CNEt24錯体の合成
0.30moldm-3のN,N-ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物エタノール溶液を50cm3調製した(溶液Aという)。0.05moldm-3の塩化スズ(IV)五水和物エタノール溶液を50cm3調製した(溶液Bという)。30℃のウォーターバス中で撹拌しながら溶液Aに溶液Bをゆっくりと加え、30分間撹拌した。遠心分離によって沈殿を回収し、水による洗浄を5回、エタノールによる洗浄を2回行った。乾燥後、沈殿をクロロホルムに溶解させ、遠心分離により沈殿を取り除いた。エバポレーターによりクロロホルムを除去し、乾燥させることでSn(S2CNEt24を得た。
【実施例】
【0025】
(2)Ag8SnS6ナノ粒子の合成と特徴-その1
市販のAg(S2CNEt2)0.12mmolに対して、Sn(S2CNEt24を、金属源のモル比がAg:Sn=8:x(x=0(比較例1),0.5(比較例2),1(実施例1),2(実施例2),4(実施例3),8(実施例4))となるように、オレイルアミン3.0cm3、ミクロ撹拌子と共に試験管にいれ、試験管内部を窒素ガスで充填した。この試験管をホットスターラーにセットして300℃で5分間加熱・撹拌を行い、その後室温まで空冷することで錯体の熱分解生成物(懸濁液)を得た。この懸濁液にエタノール約5cm3を加え、遠心分離により沈殿を回収した。得られた沈殿をエタノールで2回洗浄した後、ヘキサン3cm3に分散させ、遠心分離により沈殿を分離し、オレイルアミン修飾Ag8SnS6ナノ粒子のヘキサン溶液を得た。このときの模式図を図1に示す。
【実施例】
【0026】
比較例1,2及び実施例1~4のXRDパターンを図2に、吸収スペクトルを図3に、Snの仕込み比xと金属原子の割合との関係を表すグラフを図4に示す。図2のXRDパターンから、xの値が1以上(実施例1~4)のとき、得られた粒子は斜方晶のAg8SnS6に帰属される回折パターンを示した。一方、x=0(比較例1)で作製した粒子のXRDパターンは、Ag2Sの回折パターンとよく一致した。x=0.5(比較例2)で作製した粒子は、Ag8SnS6とAg2Sのいずれにも由来する回折パターンが見られ、これらの混合物が生成していることがわかった。図3に示す吸収スペクトルは、xの値が1以上(実施例1~4)の粒子で同じ曲線となり、長波長側の吸収端波長は920nmであった。得られた粒子のバンドギャップを吸収端波長から見積もると1.35eVとなり、これはバルクのAg8SnS6で報告されている値(1.28-1.43eV)と良く一致した。図4では、xの値が1以上(実施例1~4)のいずれの粒子においても、粒子のAgおよびSnの含有割合はAg8SnS6の理論比(Ag:Sn=0.89:0.11)と良く一致した。以上の結果から、xの値を1以上とすることにより、Ag8SnS6が作製できることがわかった。
【実施例】
【0027】
実施例1~4のAg8SnS6ナノ粒子のTEM像を図5に、Snの仕込み比xと粒径との関係を表すグラフを図6に示す。図5のTEM像から、得られた粒子は球状のナノ粒子であることがわかった。粒子サイズおよびその分布を求めたところ(図6)、x=1からx=8に増加させると、Ag8SnS6ナノ粒子の平均粒径が7.5nm(標準偏差:2.1nm)から15.4nm(標準偏差:3.1nm)に増大することが分かった。標準偏差を図6のエラーバーで示しているが、いずれも平均粒径の30%以下であり、比較的粒径分布の狭いナノ粒子が生成していることがわかる。なお、表1に比較例1,2及び実施例1~4の合成条件及び特徴をまとめた。
【実施例】
【0028】
【表1】
JP2014129190A_000003t.gif
【実施例】
【0029】
(3)Ag8SnS6ナノ粒子の合成と特徴-その2
上述した1.(2)の合成法に従い、Sn仕込み比をx=2で固定し、反応温度を150℃(実施例5)、200℃(実施例6)、250℃(実施例7)、300℃(実施例2)、350℃(実施例8)に設定してナノ粒子を合成した。得られた粒子のXRDパターンを図7に、吸収スペクトルを図8に、反応温度と金属原子の割合との関係を表すグラフを図9に示す。図7のXRDパターンから、いずれの条件でも、得られた粒子は斜方晶のAg8SnS6に帰属される回折パターンのみを示した。図8に示す吸収スペクトルは、反応温度が150~350℃で同じものとなり、長波長側の吸収端波長はいずれも約920nmであった。また図9から、反応温度が150~350℃で得られた粒子中のAgおよびSnの含有割合は、Ag8SnS6の理論比と良く一致し、Ag8SnS6ナノ粒子が生成していることがわかった。これらのことから、150℃以上の反応温度では、Ag2Sなどの不純物が生成することなく、Ag8SnS6ナノ粒子が合成できることがわかる。
【実施例】
【0030】
実施例5~8及び実施例2のAg8SnS6ナノ粒子のTEM像を図10に、反応温度と粒径との関係を表すグラフを図11に示す。図11から、反応温度が150℃から350℃まで上昇するのに伴って平均粒子サイズが6.8nmから13nmに増大することが分かった。また、標準偏差を、図11のエラーバーで示しているが、いずれも平均粒径の30%以下であり、比較的分布の狭いナノ粒子が生成していることがわかる。なお、表2に実施例5~8及び実施例2の合成条件及び特徴をまとめた。
【実施例】
【0031】
【表2】
JP2014129190A_000004t.gif
【実施例】
【0032】
以上のことから、Sn仕込み比xを1以上で反応温度が150℃~350℃の範囲内となるように適切に合成条件を設定することによって、Ag8SnS6ナノ粒子の粒径を6.8~15.4nmの範囲で自在に制御できることがわかる。
【実施例】
【0033】
(4)ナノ粒子担持ZnOナノロッド電極(Ag8SnS6/ZnO NR)の作製
ZnOナノロッド(ロッド長:3.6μm)がフッ素ドープ酸化スズ(FTO)基板に対してほぼ垂直に配向して密に担持されたZnOナノロッド基板(ZnO NR基板)を、既報(RSC Adv., vol.2, p552-559(2012))に従い作製した。用いたAg8SnS6ナノ粒子は、Snの仕込み比x=2、反応温度200℃の条件で作製したものであり、波長500nmでの吸光度が1.5(光路長0.1cm)になるようにヘキサンにAg8SnS6ナノ粒子を溶解させた。ディップコートにより、ZnO NR基板へのAg8SnS6ナノ粒子の担持を行った。ZnO NR基板をAg8SnS6ヘキサン溶液に10秒間浸漬した。続いて、Ag8SnS6ナノ粒子溶液から基板を取り出し、乾燥空気を吹き付けて乾燥させた。このディップコートを10回繰り返すことにより、Ag8SnS6ナノ粒子を密に、ZnO NR基板上に担持した。得られた基板を、200℃で10分間減圧加熱することで、Ag8SnS6ナノ粒子担持ZnOナノロッド電極(Ag8SnS6/ZnO NR、実施例9)を作製した。
【実施例】
【0034】
また、架橋剤としてエチレンジアミン(EDA)を用い、担持したAg8SnS6ナノ粒子間を架橋することによって、ナノ粒子を強固にZnO NR基板に固定した。ZnO NR基板にAg8SnS6ナノ粒子を1回ディップコートしたのち、この基板を0.1moldm-3 EDAエタノール溶液に5秒間浸漬することで、担持したAg8SnS6ナノ粒子とZnO NR、あるいはAg8SnS6ナノ粒子間をEDAで架橋させた。浸漬後の基板をエタノールで洗浄することで余分なEDAを取り除き、その後乾燥させた。ディップコートによる基板上へのAg8SnS6ナノ粒子の担持とEDA溶液への浸漬による粒子間架橋の操作を、10サイクル繰り返した後、200℃で10分間減圧加熱することで、粒子間を架橋したAg8SnS6ナノ粒子担持ZnOナノロッド電極(EDA-Ag8SnS6/ZnO NR、実施例10)を作製した。
【実施例】
【0035】
実施例9,10の電極の拡散反射スペクトルをそれぞれ図12,図13に示す。Ag8SnS6ナノ粒子を担持したことで、ZnO NRのみの時に比べ、900nm以下の吸収波長域で(100-R)(ここでRは反射率を示す)の値が増大しており、ZnO NRに担持されたAg8SnS6ナノ粒子が効果的に、可視~近赤外の波長の光を吸収していることがわかった。特に、波長700nm以下では(100-R)の値が90%以上であり、可視光を充分に吸収するだけの量のAg8SnS6ナノ粒子が電極上に担持されていることが分かる。
【実施例】
【0036】
(5)Ag8SnS6/ZnO NR基板の光電気化学測定
参照電極としてAg/AgCl、対極として白金線を用い、実施例9又は実施例10の電極を作用極とし、三極セルを組立てた。0.1moldm-3LiClO4および0.1moldm-3トリエタノールアミンを含むアセトニトリル溶液を電解質溶液として用いた。なお、トリエタノールアミンは、正孔捕捉剤として用いた。光源として、500nm以下の波長の光をカットした300W Xeランプ光(照射光強度:200mWcm-2、照射光波長>500nm)を用い、ポテンショスタットによってナノ粒子担持電極(電極面積:0.79cm2)に電位を印加しながら光照射した。作用極であるナノ粒子担持電極の電極電位を負電位方向に掃引することで、図14及び図15に示す光照射時及び暗時の電流-電位曲線を得た。図14及び図15の光照射時のグラフから、実施例9,10のいずれの電極を用いた場合でもアノード光電流が観測され、いずれの電極もn型半導体類似の特性を示した。
【実施例】
【0037】
また、+0.5Vvs.Ag/AgClの電位を印加したナノ粒子担持電極に、モノクロメーターを通して単色化した光を照射し、入射光子数に対する光電流として得られた電子数の比(IPCE)を求めた。IPCEの照射光波長依存性(IPCEスペクトル)のグラフを図16に示す。図16では、IPCEの立ち上がり波長が、用いたAg8SnS6ナノ粒子の吸収端波長とよく一致したことから、Ag8SnS6ナノ粒子が効果的に光増感剤として作用していることが示唆される。しかし架橋剤の有無によってIPCEは大きく異なり、架橋剤を用いていない実施例9の電極の方が、いずれの波長においてもより大きなIPCE値を示した。また図14から、アノード光電流の立ち上がり電位も、架橋剤の有無によって異なり、架橋剤なしの実施例9の電極では+0.25Vvs.Ag/AgCl、架橋剤ありの実施例10の電極では-0.1Vvs.Ag/AgClであった。これらの結果から、架橋剤EDAの存在によってAg8SnS6ナノ粒子担持ZnOナノロッド電極の光電気化学特性が大きく変化したことが示唆される。
【実施例】
【0038】
2.Ag8SnSe6ナノ粒子
(1)Ag8SnSe6ナノ粒子の合成
酢酸銀(I)0.12mmol、酢酸スズ(IV)0.03mmol、セレノウレアmolモル比 Ag:Sn:Se=8:2:10)をオレイルアミン 3.0 cm3、ミクロ撹拌子と共に試験管に取り、試験管内部に窒素ガスを充填した。この試験管をホットスターラーにセットして250℃で5分間加熱、撹拌を行い、その後室温まで空冷することで懸濁液を得た。この懸濁液にエタノール約5cm3を加え、遠心分離により沈殿を回収した。得られた沈殿をエタノールで2回洗浄した後、ヘキサン3cm3に分散させた。遠心分離により凝集体や大きな粒子を沈殿として分離し、オレイルアミン修飾Ag8SnSe6ナノ粒子(実施例11)のヘキサン溶液を得た。
【実施例】
【0039】
(2)Ag8SnSe6ナノ粒子の特徴
実施例11のナノ粒子のXRDパターンを図17に、吸収スペクトルを図18に示す。図17のXRDパターンから、実施例11のナノ粒子は立方晶のAg8SnSe6に帰属される回折パターンを示した。また、図18の吸収スペクトルの吸収端波長(1350nm)から、得られたナノ粒子のバンドギャップが0.92eVと見積もられた。この値はバルクAg8SnSe6で報告されている値(0.83eV)よりも大きく、量子サイズ効果が発現していることが示唆される。
【実施例】
【0040】
実施例11のナノ粒子のTEM像を図19に、粒径分布を図20に示す。図20から、平均粒径8.7nm(標準偏差2.3nm)のナノ粒子が得られたことが分かった。EDXによる組成分析の結果、得られた粒子の組成はAg:Sn:Se=52:7:41であり、理論組成のAg:Sn:Se=53:7:40と良い一致を示し、Ag8SnSe6ナノ粒子が生成したことがわかった。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図19】
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【図20】
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