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明細書 :薬剤多量体微粒子及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5113958号 (P5113958)
登録日 平成24年10月19日(2012.10.19)
発行日 平成25年1月9日(2013.1.9)
発明の名称または考案の名称 薬剤多量体微粒子及びその製造方法
国際特許分類 A61K  47/48        (2006.01)
A61K   9/14        (2006.01)
A61K   9/10        (2006.01)
A61K  31/4745      (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI A61K 47/48
A61K 9/14
A61K 9/10
A61K 31/4745
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 45
出願番号 特願2012-519401 (P2012-519401)
出願日 平成23年6月7日(2011.6.7)
国際出願番号 PCT/JP2011/063084
国際公開番号 WO2011/155501
国際公開日 平成23年12月15日(2011.12.15)
優先権出願番号 2010133486
優先日 平成22年6月11日(2010.6.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年5月7日(2012.5.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】笠井 均
【氏名】中西 八郎
【氏名】馬場 耕一
【氏名】及川 英俊
【氏名】村上 達也
【氏名】今堀 博
【氏名】橋田 充
【氏名】王 勇
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100153394、【弁理士】、【氏名又は名称】謝 卓峰
【識別番号】100116311、【弁理士】、【氏名又は名称】元山 忠行
審査官 【審査官】田村 直寛
参考文献・文献 国際公開第2007/075825(WO,A1)
中国特許出願公開第101628919(CN,A)
国際公開第2009/075391(WO,A1)
特開平06-079168(JP,A)
国際公開第2009/013466(WO,A1)
国際公開第2010/053101(WO,A1)
Journal of American Chemical Society,2010年 3月10日,Vol.132, No.12,pp.4259-4265,S1-12
Angewandte Chemie,2005年,Vol.44,pp.716-720,Supporting Informationpp.1-22
高分子論文集,2002年,Vol.59 , No.10, pp.637-641
調査した分野 A61K 47/48
A61K 31/00
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
水混和性の有機溶媒に一般式(I):
[化1]
JP0005113958B2_000042t.gif (I)
(式中、Lは、ハロ、ヒドロキシル又は低級アルコキシルで置換されていてもよいアルキル又はアルケニルを示し、Rは、-C(=O)-、-C(=O)NHおよびアルキレンからなるグループから選択されたものを示す。)で表わされる化合物を溶解させた溶液を水に注入して得たことを特徴とする、一般式(I)で表わされる化合物のみからなる薬剤二量体ナノ粒子。
【請求項2】
Lは、ハロ、ヒドロキシル又は低級アルコキシルで置換されていてもよいアルキルを示し、Rは、-C(=O)-を示すことを特徴とする、請求項1に記載の薬剤二量体ナノ粒子。
【請求項3】
一般式(I)で表わされる化合物が下記の化合物二量体:
[化2]
JP0005113958B2_000043t.gif
JP0005113958B2_000044t.gifおよび
JP0005113958B2_000045t.gifから選択されたものである請求項1に記載の薬剤二量体ナノ粒子。
【請求項4】
一般式(I)で表わされる化合物が下記の化合物二量体
[化3]
JP0005113958B2_000046t.gifである請求項1に記載の薬剤二量体ナノ粒子。
【請求項5】
一般式(I)で表わされる化合物が、25℃の水に対する溶解度が1.0g/L以下の難水溶性化合物であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の薬剤二量体ナノ粒子。
【請求項6】
請求項1に記載した薬剤二量体ナノ粒子を有効成分とする抗がん剤。
【請求項7】
水混和性の有機溶媒に一般式(I)で表わされる化合物を溶解させた溶液を水に注入して得ことを特徴とする、請求項1に記載の薬剤二量体ナノ粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤多量体微粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機微粒子は、高い化学的活性、特異な電子状態、良好な分散安定性などの特性から、様々な分野において利用されている。
【0003】
例えば、医薬の分野において、難溶性の薬剤は、しばしば薬剤微粒子を水中に分散させた水性懸濁薬剤として用いられる。水性懸濁薬剤は、微粒子状の薬剤成分が体内で徐々に溶出することによって薬効を発揮することから、効率的に薬効を発揮させるためには、薬剤微粒子の粒径が極力小さいことが求められる。
【0004】
また、難溶性の有機色素を微粒子化した有機顔料は、電子写真用トナー、インクジェットインク、カラーフィルタ、塗料、印刷インク等、多くの用途において利用されている。これら有機顔料についても、色再現性、画質、分散安定性などの諸性能を向上させる観点から、より微小かつ粒径が揃った微粒子が求められている。
【0005】
有機微粒子は、これらをはじめとした多様な用途において、より微小にすることによって優れた性能を発揮することから、有機化合物のナノ微粒子化に関する技術開発が進められている。
【0006】
従来、難溶性薬剤や顔料の微粒子は、粗大な粒子をボールミルなどによって機械的に粉砕することにより製造されていた。しかしながら、ナノメータースケールまで粒径を下げるのは困難であり、また粒径のばらつきも大きかった。
【0007】
一方、人体に薬物を投与する際、難溶性の薬物は、しばしば薬物を水中に分散させた水性懸濁薬剤として用いられる。
【0008】
水性懸濁薬剤は、水中に分散された微粒子状の薬剤成分が体内で滞留する性質を有することから、局所的に、あるいは長時間にわたって、薬効を発揮させるのに効果的であり、その目的に応じて経口剤、皮膚用外用剤、鼻腔用外用剤、眼科用外用剤などとして使用される。
【0009】
水性懸濁薬剤は、通常、微粒子状に粉砕された薬物を、界面活性剤等を用いて水中に分散させることによって製造される。しかしながら、粉砕によって得られる薬物の粒子径は比較的大きく、また、粒子径のばらつきも大きいことから、長期間の保存や、温度などの環境の急激な変化によって、大きな粒子成分が沈降してしまう問題があった。また、粒子径のばらつきのために、水性懸濁薬剤としての品質にもばらつきが生じやすく、同じ製造方法によって製造された薬剤であっても、滞留時間が短すぎて効果が現れにくかったり、滞留時間が長すぎて副作用が生じる恐れがあったりするという問題があった。そのため、粒径が小さく、かつ粒度分布が狭い薬剤微粒子を得る方法が求められていた。
【0010】
一方、抗がん剤であるカンプトテシン(Camptothecin)およびその特定の誘導体が知られていた(特許文献1,2、3、4および5)。カンプトテシンやその誘導体の多くは水に極めて難溶であるため、この薬物の臨床利用が制約された。水溶性カンプトテシン誘導体として、9-ジメチルアミノメチル-10-ヒドロキシカンプトテシン(トポテカン(Topotecan))、7-[(4-メチルピペラジノ)メチル]-10,11-エチレンジオキシカンプトテシン、7-[(4-メチルピペラジノ)メチル]-10,11-メチレンジオキシカンプトテシン、及び7-エチル-10-[4-(1-ピペリジノ)-1-ピペリジノ]カルボニルオキシカンプトテシン(CPT-11)が挙げられる。CPT-11は(イリノテカン(Irinotecan)/カンプトサール(Camptosar)、登録商標)は、1996年6月に米国食品医薬品局からヒトでの使用が認可された。
【0011】
CPT-11の活性本体は10-ヒドロキシ7-エチルカンプトテシン(SN-38)であることは1984年にミヤサカ(Miyasaka)他による特許文献6にて判明した。SN-38の水溶性が極めて乏しく、ヒトの癌患者へ直接投与されていない。近年では、ヒト患者において、SN-38が更に代謝を受けて不活性化グルクロニド種を形成することが報告されている。
SN-38を高分子ミセル化した製剤であるNK012の開発は行われているが、ミセル化ナノ粒子には様々な問題点があり、実用化は疑問しされる。
【0012】
また、SN-38のリポソーム製剤(LE-SN38)の臨床開発は行われているが、プライアリー腫瘍反応エンドポイントをパスすることができていない。そのため、SN-38を薬効成分とし、新規DDSを用いた新薬開発の方法が求められていた。
【0013】
これに対し、本発明者らは、以前、再沈法というナノメータースケールの微粒子の分散液を製造するための新規な手法を開発している(特許文献7)。これは、良溶媒に溶解させた有機材料の溶液を貧溶媒に注入することによって、該有機材料の超微粒子の分散液を製造するものである。この方法によれば、様々な物質の微粒子分散液の製造が可能である。
【先行技術文献】
【0014】

【特許文献1】US2007041093
【0015】

【特許文献2】US20100233190
【0016】

【特許文献3】WO2008/034124
【0017】

【特許文献4】US6011042
【0018】

【特許文献5】WO98/035940
【0019】

【特許文献6】US4473692
【0020】

【特許文献7】特開平6-079168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
この方法によれば、様々な物質の微結晶分散液の製造が可能である。しかしながら、薬剤の種類によっては、この方法を用いても満足のゆく粒径及び粒度分布の微粒子が得られないものもあり、様々な種類の薬剤に適用できる手法が求められていた。有機化合物と貧溶媒の組み合わせによっては、粒径が十分に小さい微粒子を得るのが困難な場合があった。
【0022】
そこで、本発明は、粒径が小さく、かつ粒度分布が狭い薬剤微粒子を含む有機微粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは鋭意検討した結果、薬剤を生体分解性の置換基で複数連結した薬剤多量体を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0024】
また、微粒子を形成する有機化合物と同じ主骨格を複数有する有機化合物を結晶核剤として使用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
すなわち本発明の第一の態様は複数の下記一般式(1)で表わされる薬剤が分子間の互いのaで脱水縮合することによって生成したものであり、かつ生体内において複数の前記一般式(1)で表わされる薬剤に加水分解されるものであることを特徴とする、薬剤多量体を水混和性の有機溶媒に溶解させた溶液を水に注入して得たことを特徴とする、薬剤多量体微粒子を提供する。
【0026】
【化1】
JP0005113958B2_000002t.gif

(一般式(1)において、Aはk価の有機基であり、kは2以上の整数であり、aは一価の置換基である。k個のaは互いに同じでも異なっていてもよい。)
【0027】
また、本発明の第二の態様は、水混和性の有機溶媒に下記一般式(3)で表わされる化合物を溶解させた溶液を水に注入して得たことを特徴とする、下記一般式(2)で表わされる薬剤の薬剤多量体微粒子を提供する。
【0028】
【化2】
JP0005113958B2_000003t.gif

(一般式(2)及び一般式(3)において、Aは二価の有機基であり、a及びbはそれぞれ、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、水素原子(ただし2級アミン上の水素原子に限る。)から選択される置換基である。一般式(3)において、nは1以上の整数であり、dは、dが生体内で加水分解されることによって一般式(3)で表わされる化合物がn+1個の一般式(2)で表わされる薬剤に変換される二価の置換基である。)
【0029】
また、本発明の第三の態様は、水混和性の有機溶媒に下記一般式(5)で表わされる化合物を溶解させた溶液を水に注入して得たことを特徴とする、下記一般式(4)で表わされる薬剤の薬剤多量体微粒子を提供して前記課題を解決するものである。
【0030】
【化3】
JP0005113958B2_000004t.gif

(一般式(4)及び一般式(5)において、Aは一価の有機基である。一般式(4)において、aは、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、水素原子(ただし2級アミン上の水素原子に限る。)から選択される置換基である。一般式(5)において、mは2以上の整数であり、Bはm価の置換基であり、dは、dが生体内で加水分解されることによって一般式(5)で表わされる化合物がB(-f)m(fはヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基の中から選択される置換基である。)で表わされる化合物とm個の一般式(4)で表わされる薬剤とに変換される二価の置換基である。)
【0031】
前記第三の態様において、B(-f)mで表わされる化合物は、コハク酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、乳酸、アミノ酸、マレイン酸、マロン酸、アジピン酸、トリエタノールアミン、トロメタモール、グリセリンのうちのいずれかであることが好ましい。
【0032】
また、前記第三の態様において、dは、-NHCO-、-CONH-、-COO-、-OCOO-のうちのいずれかの基であることが好ましい。
【0033】
また、本発明の第四の態様は、水混和性の有機溶媒に下記一般式(I)で表わされる化合物を溶解させた溶液を水に注入して得たことを特徴とする、薬剤多量体微粒子を提供する。
【0034】
【化4】
JP0005113958B2_000005t.gif

Dは抗がん剤を示し、Lは置換されていてもよいアルキル、されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニルおよび置換されていてもよいアリールからなるグループから選択されたものを示し、Rは-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NR1-、-C(=O)OC(=O)-、-C(=O)OC(=O)O-、-O-、-NHR1-、-S(=O)-、-SO2-、-SO(NR1)-、-SO2NR1、-P(=O)(OR1)O-、-P(=O)(NR)O-およびアルキレンからなるグループから選択されたものを示し、R1は、水素、アルキル、置換されていてもよいシクロアルキル又は置換されていてもよいアリールを示す。
【0035】
前記第四の態様において、好ましくDがカンプトテシン誘導体であり、Lが置換されていてもよいアルキル又は置換されていてもよいアルケニルであり、Rは、-C(=O)-、-C(=O)NR1-またはアルキレンであり、R1が水素である。
【0036】
より好ましくDは、SN-38であり、Lは、アルキル又はアルケニルであり、Rは、-C(=O)-、-C(=O)NH-またはアルキレンである。
【0037】
また、前記第一、第二、第三お及び第四の態様において、多量化される薬剤は、25℃の水に対する溶解度が1.0g/L以下の難水溶性薬剤であることが好ましい。
【0038】
本発明の第五の態様は、薬剤多量体を水混和性の有機溶媒に溶解させた溶液を水に注入して得ることを特徴とする、薬剤多量体微粒子の製造方法であって、薬剤多量体は、複数の下記一般式(1)で表わされる薬剤が分子間の互いのaで縮合することによって生成したものであり、かつ生体内において複数の一般式(1)で表わされる薬剤に変換されるものであることを特徴とする、薬剤多量体微粒子の製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
【0039】
【化5】
JP0005113958B2_000006t.gif

(一般式(1)において、Aはk価の有機基であり、kは2以上の整数であり、aは一価の置換基である。k個のaは互いに同じでも異なっていてもよい。)
【0040】
本発明の第六の態様は、水混和性の有機溶媒に下記一般式(5)で表わされる化合物を溶解させた溶液を水に注入して得たことを特徴とする、下記一般式(4)で表わされる薬剤の薬剤多量体微粒子の製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
【0041】
【化6】
JP0005113958B2_000007t.gif

(一般式(4)及び一般式(5)において、Aは一価の有機基である。一般式(4)において、aは、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、水素原子(ただし2級アミン上の水素原子に限る。)から選択される置換基である。一般式(5)において、mは2以上の整数であり、Bはm価の置換基であり、dは、dが生体内で加水分解されることによって一般式(5)で表わされる化合物がB(-f)m(fはヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基の中から選択される置換基である。)で表わされる化合物とm個の一般式(4)で表わされる薬剤とに変換される二価の置換基である。)
本発明の第七の態様は、有機溶媒に、下記一般式(6)で表わされる化合物と、一般式(6)で表わされる化合物が有する部分構造Aを複数有する化合物である結晶核剤とを溶解させた溶液を、一般式(6)で表わされる化合物及び結晶核剤の貧溶媒でありかつ有機溶媒と相溶性である溶媒に注入して得たことを特徴とする、一般式(6)で表わされる化合物の有機微粒子であって、結晶核剤が、一般式(6)で表わされる化合物に対し、結晶核剤が有する部分構造Aの合計量が0.0001~50モル%となる量使用されたものであり、結晶核剤分子における全ての部分構造Aの合計原子数が、その他の部分の合計原子数よりも多いことを特徴とする、一般式(6)で表わされる化合物の有機微粒子を提供して前記課題を解決するものである。
【0042】
【化7】
JP0005113958B2_000008t.gif

(一般式(6)において、A’はk’価の有機基であり、k’は1以上の整数であり、a’は水素原子又は一価の置換基である。k’個のa’は互いに同じでも異なっていてもよい。また、一般式(6)において、原子数は、(部分構造A’が有する原子数>他の部分が有する原子数)の関係である。)
【0043】
また、本発明の第八の態様は、有機溶媒に、下記一般式(7)で表わされる化合物と、該一般式(7)で表わされる化合物に対し、部分構造Aの合計量が0.0001~50モル%となる量の下記一般式(8)で表わされる化合物とを溶解させた溶液を、一般式(7)及び一般式(8)で表わされる化合物の貧溶媒でありかつ有機溶媒と相溶性である溶媒に注入して得たことを特徴とする、一般式(7)で表わされる化合物の有機微粒子を提供して前記課題を解決するものである。
【0044】
【化8】
JP0005113958B2_000009t.gif

(一般式(7)及び(8)において、A’は二価の有機基であり、a’、b’、e’はそれぞれ独立に水素原子又は一価の置換基であり、c’は水素原子又はm’価の置換基であり、d’は二価の連結基又は単なる結合手であり、m’は1以上の整数であり、n’は1以上の整数である。m’個のe’、n’及びm’×n’個のdは、それぞれ同じであっても異なっていてもよいが、一般式(7)及び一般式(8)に存在する全てのAは同じ構造である。また、一般式(7)において、原子数は、A’>(a’+b’)の関係である。)
【0045】
この態様において、一般式(7)におけるA’が、芳香族及び/又は非芳香族の環状有機基を含んでおり、a’及びb’が、芳香族及び/又は非芳香族の環状有機基を含んでいないことが好ましい。
【0046】
また、この態様において、一般式(8)で表わされる化合物が、下記一般式(9)で表わされる化合物であることも好ましい。
【0047】
【化9】
JP0005113958B2_000010t.gif

(一般式(9)において、A’、d’、e’は、それぞれ一般式(8)と同義であり、c”は、水素原子又は一価の置換基であり、p’は1以上の整数である。ただし、一般式(7)及び一般式(9)に存在する全てのAは同じ構造であり、p’個のd’は全て同じ構造である。)
【0048】
また、この態様において、一般式(7)におけるa’及びb’が、それぞれ独立に、水素原子を除いた主鎖の原子数が1~3である一価の置換基又は水素原子であり、一般式(8)又は一般式(9)におけるd’が、水素原子を除いた主鎖の原子数が1~3である二価の連結基又は単なる結合手であることが好ましく、更に、一般式(7)におけるa’及びb’は、それぞれカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ハロゲン原子のうちのいずれかであることがより好ましい。
【0049】
また、一般式(9)で表わされる有機化合物は、一般式(7)で表わされる有機化合物が分子間で互いのa’とb’とにおいて縮合して形成される、該一般式(7)で表わされる有機化合物の多量体であることも好ましい。
【0050】
本発明の第九の態様は、有機溶媒に、下記一般式(6)で表わされる化合物と、一般式(6)で表わされる化合物が有する部分構造Aを複数有する化合物である結晶核剤とを溶解させた溶液を、一般式(6)で表わされる化合物及び結晶核剤の貧溶媒でありかつ有機溶媒と相溶性である溶媒に注入することを特徴とする、一般式(6)で表わされる化合物の有機微粒子の製造方法であって、結晶核剤が、一般式(1)で表わされる化合物に対し、結晶核剤が有する部分構造Aの合計量が0.0001~50モル%となる量使用され、結晶核剤分子における全ての部分構造Aの合計原子数が、その他の部分の合計原子数よりも多いことを特徴とする、一般式(6)で表わされる化合物の有機微粒子の製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
【0051】
【化10】
JP0005113958B2_000011t.gif

(一般式(6)において、A’はk’価の有機基であり、k’は1以上の整数であり、a’は水素原子又は一価の置換基である。k’個のa’は互いに同じでも異なっていてもよい。また、一般式(6)において、原子数は、(部分構造A’が有する原子数>他の部分が有する原子数)の関係である。)
【0052】
また、本発明の第十の態様は、水混和性の有機溶媒に下記一般式(I)で表わされる化合物を溶解させた溶液を水に注入して得たことを特徴とする、薬剤多量体微粒子の製造方法を提供する。
【0053】
【化11】
JP0005113958B2_000012t.gif

式中、Dは抗がん剤を示し、Lは置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニルおよび置換されていてもよいアリールからなるグループから選択されたものを示し、Rは-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NR1-、-C(=O)OC(=O)-、-C(=O)OC(=O)O-、-O-、-NHR1-、-S(=O)-、-SO2-、-SO(NR1)-、-SO2NR1、-P(=O)(OR1)O-、-P(=O)(NR)O-およびアルキレンからなるグループから選択されたものを示し、R1は水素、アルキル、置換されていてもよいシクロアルキル又は置換されていてもよいアリールを示す。
【0054】
また、本発明の第十一の態様は、下記の薬剤二量体を提供している。
【0055】
【化12】
JP0005113958B2_000013t.gif

【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、超微粒子を製造する技術として確立された再沈法を利用することにより、粒径が小さく粒度分布が狭い薬剤多量体微粒子を簡便に得ることができる。薬剤を、再沈法を適用し易い構造である薬剤多量体とすることで、単量体では微粒子が得にくい構造の薬剤に対しても再沈法を適用することができる。この薬剤多量体は、生体内で加水分解されて元の薬剤に戻り、実質的には薬剤微粒子そのものとして機能するため、薬効及び安全性を確保することができる。本発明によれば、粒径が十分に小さく、かつ粒度分布も小さい有機微粒子を提供することができる。本発明の微粒子は、再沈法の手法をそのまま利用して製造できるため、簡便かつ低コストに得ることができる。また、本発明の製造方法によれば、従来の再沈法では粒径が大きくなってしまうような有機化合物と貧溶媒の組み合わせでも、粒径が十分に小さい微粒子を得ることができる。

【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1はSN38とこはく酸との二量体の粒子サイズを示した図である。
【図2】図2はSN38とテトラメチレンジイソシアネートとの二量体の粒子サイズを示した図である。
【図3】図3はSN-38二量体ナノ粒子のHepG2に対する抗癌活性を示した図である。
【図4】図4はSN-38二量体ナノ粒子の水分散液をagingしたときのHepG2に対する抗癌活性の変化を示した図である。
【図5】図5はSN-38二量体作製に用いる結合様式のHepG2に対する抗癌活性に与える影響を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、薬剤を多量体化し、再沈法を適用することによって、高品質な薬剤多量体微粒子を得るものである。以下本発明について詳細に説明するが、再沈法による基本的な有機微粒子の製造方法は、上述した特許文献1に開示されており、それも参考にすることができる。

【0059】
本発明において製造される微粒子は、下記一般式(1)で表わされる薬剤の多量体である。

【0060】
【化13】
JP0005113958B2_000014t.gif

【0061】
一般式(1)において、Aは、k価の有機基であり、一般式(1)で表わされる薬剤からk個の置換基aを除いた残基である。kは2以上の整数であり、aは一価の置換基である。k個のaは互いに同じでも異なっていてもよい。

【0062】
本発明に用いる薬剤多量体は、複数の一般式(1)で表わされる薬剤を、分子間の互いのaにおいて脱水縮合させることによって得られるものである。この脱水縮合することによって生成した結合は、生体内において、pHの変化や酵素の働きによって加水分解されて元の2つの置換基aに戻り、複数の一般式(1)で表わされる薬剤に加水分解される。

【0063】
aで表わされる置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、ホルミル基、水素原子(ただし2級アミン上の水素原子に限る。)等が好ましく、特に好ましくはヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、水素原子(ただし2級アミン上の水素原子)であることが好ましい。また、ある2つのaが縮合することによって生成する結合としては、-NHCO-、-COO-、-OCOO-、-COS-等が好ましく、特には、-NHCO-、-COO-であることが好ましい。

【0064】
一般式(1)において、kは2以上の整数であり、上限は特にはないが、通常5以下、好ましくは3以下、特には2であることが好ましく、具体的には、下記一般式(2)で示される構造であることが好ましい。

【0065】
【化14】
JP0005113958B2_000015t.gif

【0066】
一般式(2)において、Aは二価の有機基であり、a、bはそれぞれヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、水素原子(ただし2級アミン上の水素原子に限る。)から選択される置換基である。一般式(2)で表わされる薬剤は、下記一般式(3)で表わされる構造の薬剤多量体とされ、微粒子化される。

【0067】
【化15】
JP0005113958B2_000016t.gif

【0068】
一般式(3)において、A、a及びbは一般式(2)と同義であり、nは1以上の整数であり、dは、dが生体内で加水分解されることによって一般式(3)で表わされる化合物がn+1個の一般式(2)で表わされる薬剤に変換される二価の置換基である。

【0069】
dは、一般式(2)で表わされる薬剤が有する置換基aとbとが分子間で脱水縮合して得られる置換基であり、dとしては、通常、-NHCO-、-COO-、-OCOO-、-COS-のいずれかであり、中でも、-NHCO-又は-COO-であることが好ましい。

【0070】
一般式(3)で表わされる薬剤多量体におけるnとしては、上限は特に制限はないが、通常は4以下、好ましくは2以下、特に好ましくは1である。

【0071】
本発明において、薬剤多量体は、薬剤同士が多官能性の化合物を介して連結されてもよい。例えば、一般式(4)で表わされる薬剤は、下記一般式(5)で表わされる構造の薬剤多量体とされ、微粒子化される。

【0072】
【化16】
JP0005113958B2_000017t.gif

【0073】
一般式(4)及び一般式(5)において、Aは一価の有機基である。一般式(4)において、aはヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、水素原子(ただし2級アミン上の水素原子に限る。)から選択される置換基である。一般式(5)において、mは2以上の整数であり、Bはm価の置換基であり、dは、dが生体内で加水分解されることによって一般式(5)で表わされる化合物がB(-f)m(fはヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基の中から選択される置換基である。)で表わされる化合物とm個の一般式(4)で表わされる薬剤とに変換される二価の置換基である。

【0074】
dは、一般式(4)で表わされる薬剤が有する置換基aとB(-f)mで表わされる化合物が有する置換基fとが脱水縮合して得られる置換基であり、dとしては、通常、-NHCO-、-CONH-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-COS-、-SCO-のいずれかであり、中でも、-NHCO-、-CONH-、-COO-、-OCO-、のいずれかであることが好ましい。

【0075】
一般式(5)で表わされる薬剤多量体におけるmとしては、上限は特に制限はないが、好ましくは通常は4以下、好ましくは3以下、特に好ましくは2である。
一般式(5)で表わされる薬剤多量体が、生体内で加水分解されることによって生成する、B(-f)mで表わされる化合物は、生体に対して安全性のある化合物であることが必要である。したがって、生体に投与することが認められている化合物でることが好ましい。具体的には、医薬品添加物辞典に記載されている、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基の中から選択される置換基を2つ以上有する化合物であることが好ましい。そのような化合物としては、例えば、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、乳酸、アミノ酸、マロン酸、アジピン酸、トリエタノールアミン、トロメタモール、グリセリン等が挙げられる。

【0076】
一般式(I)におけるDは、抗がん剤を示すが、例えば,カンポトテシンおよびその誘導体(例えば、10-ヒドロキシカンポトテシン、 7-エチル-10-ヒドロキシカンポトテシン (SN-38)、9-アミノカンポトテシン等が挙げられる。7-エチル-10-ヒドロキシカンポトテシン (SN-38)が好ましい。

【0077】
一般式(I)におけるLは、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニルおよび置換されていてもよいアリールからなるグループから選択されたものを示す。置換されていてもよいアルキルおよび置換されていてもよいアルケニルが好ましい。

【0078】
一般式(I)におけるRは、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NR1-、-C(=O)OC(=O)-、-C(=O)OC(=O)O-、-O-、-NHR1-、-S(=O)-、-SO2-、-SO(NR1)-、-SO2NR1、-P(=O)(OR1)O-、-P(=O)(NR)O-およびアルキレンからなるグループから選択されたものを示すが、-C(=O)-、-C(=O)NR1-およびアルキレンが好ましい。

【0079】
R1は、水素、アルキル、置換されていてもよいシクロアルキル又は置換されていてもよいアリールを示すが、水素が好ましい。

【0080】
「アルキル」とは、飽和脂肪族炭化水素基、例えばC1-C20直鎖及び分岐鎖基を指す。好ましくは、アルキル基は、1~10個の炭素原子を有する中間サイズのアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、ペンチルなどである。さらに好ましくは、アルキル基は、1~4個の炭素原子を有する低級アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、又はtert-ブチルなどである。アルキル基は、置換されていてもよいし又は非置換であってもよい。置換される場合には、置換基としては、ハロ、ヒドロキシル、低級アルコキシル等が挙げられる。

【0081】
「シクロアルキル」とは、全体が炭素からなる3~8員単環式環、全体が炭素素からなる5員/6員又は6員/6員縮合二環式環を指すか、あるいは多重縮合環(「縮合」環系とは、その系のそれぞれの環が炭素原子と系内のその他の環との隣り合った対を共有することを意味する)であって1個又はそれ以上の環が1個又はそれ以上の二重結合を含有していてもよいが、環のいずれも完全に共役したπ電子系を有していない多重縮合環基を指す。シクロアルキル基の例は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、アダマンタン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンなどである。シクロアルキル基は、置換されていてもよいし又は非置換であってもよい。置換される場合には、置換基としては、例えば低級アルキル、トリハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、低級アルコキシル等が挙げられる。

【0082】
「アルケニル」とは、少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する前記で定義したようなアルキル基を指す。代表的な例としては、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-、2-、3-ブテニルなどが挙げられるが、エテニルが好ましい。

【0083】
「アルキニル」とは、少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する前記で定義したようなアルキル基を指す。代表的な例としては、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-、2-、3-ブチニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。

【0084】
「アリール」とは、少なくとも1個の芳香族環を有する基、すなわち共役π電子系を有する基、例えば全部が炭素からなる環式アリール、ヘテロアリール及びビアリール基を指す。前記アリール基は、場合により、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、SR、ニトロ、シアノ、アルコキシル及びアルキルからなる群からそれぞれ独立して選択される1つ又はそれ以上の基で置換されていてもよい。

【0085】
一般式(I)で表わされる化合物の例としては、
【化17】
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等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0086】
一般式(1)、一般式(2)、一般式(4)および一般式(I)で表わされる薬剤としては、水に溶液を注入して析出させるという再沈法の特性からは、25℃の水に対する溶解度が1.0g/L以下、更には0.1g/L以下、特には0.01g/L以下の難水溶性薬剤であることが好ましい。また、薬剤の種類としては、抗炎症剤、気管支拡張剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗HIV剤、免疫抑制剤、免疫刺激剤、麻酔剤、抗真菌剤、抗酸化剤、抗糖尿病剤、ホルモン、ビタミン、抗癲癇剤、抗ガン剤、筋肉弛緩剤、刺激剤、鎮咳剤、陣痛制御剤、抗アルコール中毒剤、禁煙剤、血圧降下剤、点眼剤等が好ましい。なお、本発明において、「薬剤」とは、日本薬局方及び/又は日本医薬品集医療薬に定められる医薬品をいう。

【0087】
以下に一般式(1)、一般式(2)、一般式(4)で表される薬剤と、その薬剤多量体の組み合わせを例示するが、本発明はこれらの化合物及び組み合わせに限定されるものではない。

【0088】
【化18】
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【0089】
【化19】
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【0090】
【化20】
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【0091】
【化21】
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【0092】
【化22】
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【0093】
【化23】
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【0094】
【化24】
JP0005113958B2_000025t.gif

【0095】
【化25】
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【0096】
本発明による薬剤多量体は、当業者には公知の方法で製造できる。例えば、複数の一般式(1)で表わされる薬剤を、分子間の互いのaにおいて脱水縮合させることによって製造することができる。

【0097】
一般式(5)で表わされる構造の薬剤多量体は、一般式(4)で表わされる薬剤同士が多官能性の化合物と反応させることによって製造することができる。

【0098】
多官能性の化合物としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、ハロゲンカルボニル基、イソシアナト基の中から選択される置換基を2つ以上有する化合物であることが好ましい。ハロゲンカルボニル基としてはクロルカルボニル基およびブロムカルボニル基等が挙げられるが、クロルカルボニル基が好ましい。

【0099】
一般式(I)で表わされる薬剤多量体は、例えば
<patcit num="1"> <text>US2007041093に記載の方法に基き製造することができる。</text></patcit>

【0100】
本発明の薬剤多量体微粒子を製造するにあたっては、薬剤多量体は、まず良溶媒である有機溶媒に溶解される。有機溶媒としては、薬剤多量体を溶解することができ、水と混和性のある有機溶媒ならば適宜選択できる。具体的な有機溶媒としては、溶解させる化合物にもよるが、例えば、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを例示することができ、これらを単独であるいは混合して用いることができる。有機溶媒としては、溶解性と安全性の観点からは、アセトン、エタノールおよびジメチルスルホキシド等が好ましい。

【0101】
薬剤多量体の有機溶媒への溶解濃度は、生成する微粒子の粒径に影響を与える大きな要因であるため、その濃度は所望の粒径に応じて適宜変更される。溶液濃度は、通常0.1~15質量%程度で調整されるが、分子量が大きい場合は、0.5質量%前後の溶液が好ましくは調整される。

【0102】
薬剤多量体の有機溶媒溶液(以下単に有機溶媒溶液という。)が、貧溶媒である水に注入されると、水に分散した状態の薬剤多量体微粒子が生成する。本発明では、薬剤多量体が有機基Aを複数有することにより、薬剤多量体の水への溶解性は、元の薬剤よりも低くなる。その結果、薬剤多量体は、元の薬剤よりも水中で迅速に結晶化し、粒径や粒度分布がより小さい微粒子となる。

【0103】
有機溶媒溶液が注入される水の量は、通常、薬剤多量体の体積基準で、10倍以上である。上限は特にないが、水が多すぎると薬剤多量体微粒子の濃度が薄くなり、濃縮する必要も生じるため、通常、100倍以下である。

【0104】
有機溶媒溶液が注入される水の温度を変化させると、生成する微粒子の粒径も変化するので、水を特定の温度に一定に保つことで、得られる薬剤多量体微粒子の粒径を制御することができる。例えば、低い温度の水を用いると、薬剤多量体微粒子の粒径が大きくなる傾向がある。通常、-20℃~60℃の範囲で、所望の粒径に応じて温度が制御される。

【0105】
有機溶媒溶液の注入は、粒子径のばらつきを防ぐため、攪拌状態の水に、短時間に一気に行うことが好ましい。注入後、しばらく攪拌を続けることにより、結晶化あるいは微粒子化した薬剤多量体が水に均一に分散された、水分散液を得ることができる。得られた薬剤多量体微粒子は、水に分散された状態まま、水性懸濁薬剤として利用することができ、また濾過などの固液分離操作を行うことによって、微粒子粉末として単離することもできる。

【0106】
水性懸濁薬剤として使用する場合、用途や、使用した良溶媒の種類によっては、このまま使用することもできるが、通常、良溶媒として添加された有機溶媒は、薬剤としての安全性を向上させるために除去される。有機溶媒の除去方法に制限はなく、公知の方法で水性懸濁剤から除去することができる。通常は、有機溶媒は、減圧(あるいは常圧)下で留去することによって容易に除去されるが、透析を用いて取り除くこともできる。

【0107】
以上のような操作を行うことにより、粒径が非常に小さく、また粒度分布が狭い薬剤多量体微粒子を得ることができる、水の温度や、良溶媒の種類、添加量等を制御することにより、狭い粒度分布を保ちつつも、粒子径を大きくさせた薬剤多量体微粒子を製造することが可能であり、通常、製造条件を変更することにより、平均粒子径が50nm~10000nm程度の薬剤多量体微粒子を製造することができる。

【0108】
薬剤多量体は、生体内において、生体内を通過する際のpHの変化や、エステラーゼなどの酵素の働きにより、本来の薬剤の形に加水分解される。したがって、生体内では多量化する前の薬剤そのものとして機能するため、本発明の薬剤多量体微粒子の薬効及び安全性を確保することができる。

【0109】
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う薬剤多量体微粒子及びその製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【0110】
本発明は、結晶核剤となる化合物を併用した再沈法によって、粒径の小さな高品質な有機微粒子を得るものである。以下本発明について詳細に説明するが、再沈法による基本的な有機微粒子の製造方法は、上述した特許文献1に開示されており、それを参考にすることができる。

【0111】
本発明において製造される有機微粒子は、下記一般式(6)で表される化合物の微粒子である。

【0112】
【化26】
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【0113】
一般式(6)において、A’は任意の炭素骨格を有するk価の有機基であり、k’は1以上の整数であり、a’は水素原子又は一価の置換基である。有機基A’は、一般式(6)で表される化合物の主骨格であるように選択される。具体的には、一般式(6)における原子数は、(部分構造A’が有する原子数>他の部分が有する原子数)の関係である。一般式(6)で表される化合物は、A’が、芳香族及び/又は非芳香族の環状有機基を含んでおり、a’が、芳香族及び/又は非芳香族の環状有機基を含んでいないように選択されることが好ましく、一般式(6)で表わされる化合物としては、例えば、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、インダンスレンなどの芳香族系多環式化合物、ステロイド系薬剤などの非芳香族系多環式化合物が挙げられる。

【0114】
a’’として好ましい置換基としては、水素原子を除いた主鎖の原子数が1~3である一価の置換基、又は水素原子であり、例えばメチル基、プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、アセチル基、メトキシカルボニル基、メチルカルバモイル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、などが挙げられる。中でも、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、が好ましく、特に好ましくはカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ハロゲン原子である。

【0115】
なお、本明細書において「水素原子を除いた主鎖の原子数」とは、A’と結合している原子から直列的に数えることのできる最大原子数(水素は除く)であり、例えばプロピル基は3、イソプロピル基は2、アセチル基は2、カルボキシル基は2、スルホ基は2、アミノ基は1、ハロゲン原子は1である。

【0116】
一般式(6)において、k’は1以上の整数であり、上限は特にはないが、通常5以下、好ましくは3以下、特には2であることが好ましく、具体的には、下記一般式(7)で示される構造であることが好ましい。

【0117】
【化27】
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【0118】
一般式(7)において、A’は任意の炭素骨格を有する二価の有機基であり、a’、b’はそれぞれ独立に水素原子又は一価の置換基である。有機基A’は、一般式(7)で表される化合物の主骨格であるように選択される。具体的には、部分構造であるA’、a’、b’の原子数は、A’>(a’+b’)の関係である。一般式(7)で表される化合物は、A’が、芳香族及び/又は非芳香族の環状有機基を含んでおり、a’及びb’が、芳香族及び/又は非芳香族の環状有機基を含んでいないように選択されることが好ましく、一般式(7)で表わされる化合物としても、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、インダンスレンなどの芳香族系多環式化合物や、ステロイド系薬剤などの非芳香族系多環式化合物が挙げられる。

【0119】
a’及びb’として好ましい置換基としては、一般式(6)のa’と同様の基が挙げられ、好ましい基もまた同様である。

【0120】
上記一般式(6)や一般式(7)で表される化合物は、一般式(6)や一般式(7)で表わされる化合物が有する部分構造Aを複数有する結晶核剤と共に有機溶媒に溶解される。例えば一般式(7)で表される化合物は、下記一般式(8)で表わされる化合物と共に有機溶媒に溶解される。

【0121】
【化28】
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【0122】
一般式(8)において、Aは一般式(7)におけるA’と同じ骨格の有機基である。有機基Aを複数有することにより、一般式(8)で表される化合物の貧溶媒への溶解性は、一般式(7)で表される化合物よりも低くなる。その結果、一般式(8)で表される化合物は、一般式(7)で表される化合物よりも貧溶媒中で先に析出し、一般式(7)で表される化合物の結晶核となる。

【0123】
一般式(8)において、d’は二価の連結基又は単なる結合手である。「d’が単なる結合手である」とは、ある有機基A’と隣接する有機基A’が、間に置換基を介さず直接結合している状態をいう。二価の連結基としては、好ましくは、水素原子を除いた主鎖の原子数が1~3である置換基であることが好ましく、-(CH2)x-(ただし、xは1~3の整数を表す。)、-COO-、-CONH-、-COOCO-、-CON(R1)-(ただし、R1は水素原子又は炭化水素基を表す。)、-OCO-、-CH2OCO-、-O-、-S-等が挙げられる。より好ましくは、d’は、単なる結合手、-OCO-、-COO-、-O-、-CONH-、及び-COOCO-のうちのいずれかである。

【0124】
一般式(8)において、e’は水素原子又は一価の置換基である。e’としては、一般式(6)のa’と同様の基が挙げられる。e’としては、水素原子を除いた主鎖の原子数が1~3の一価の置換基又は水素原子であることが特に好ましい。

【0125】
一般式(8)において、n’は1以上の整数であり、m’は1以上の整数である。m’個のe’、n’及びm’×n’個のd’は、それぞれ同じであっても異なっていてもよいが、好ましくはm’個のn’及びm’×n’個のd’は、それぞれ同じ数、構造である。n’としては、1~10であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、更には1であることが好ましい。また、m’としては、1~4であることが好ましく、更には1であることが好ましい。また、一般式(8)で表される化合物は、一般式(8)で表される構造を有する複数種類の化合物の混合物であってもよい。

【0126】
一般式(8)において、c’は水素原子又はm’価の置換基である。c’としては、c’が一価の置換基の場合には一般式(6)のa’と同様の基が例示でき、c’が二価の置換基の場合にはd’と同様の基が例示できる。その他、二価以上の置換基としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等の多価アルコールのヒドロキシル基上の水素原子を除いた残基;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フタル酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸等の多価カルボン酸のカルボニルと結合しているヒドロキシル基又は該ヒドロキシル基上の水素原子を除いた残基;エチレンジアミン、フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン等の多価アミンからアミノ基上の水素原子を除いた残基;ジクロロベンゼン、トリブロモベンゼン等の複数のハロゲン原子を有する化合物からハロゲン原子を除いた残基;サリチル酸、乳酸、エタノールアミン、アミノ酸など分子内に複数の種類の官能基を有する化合物の残基;等の多官能性の有機化合物残基も挙げられる。

【0127】
一般式(8)で表わされる化合物の好ましい例としては、「一般式(7)で表される化合物が有する反応性の置換基a’」又は「一般式(7)で表される化合物が有する置換基a’を反応性の置換基に変換したa”」を、上記例示した残基を有する多官能性の有機化合物と反応させて該有機化合物に複数連結したものが挙げられる。

【0128】
また、一般式(8)で表される化合物は、下記一般式(9)で表される化合物であることも好ましい。

【0129】
【化29】
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一般式(9)において、A’、d’、e’は、それぞれ一般式(8)と同義である。ただし、p’個のd’は全て同じ構造である。

【0130】
一般式(9)において、c”は水素原子又は一価の置換基である。c”としては、一般式(6)のa’と同様の基が挙げられる。e’としては、水素原子を除いた主鎖の原子数が1~3の一価の置換基又は水素原子であることが特に好ましい。

【0131】
一般式(9)において、p’は1以上の整数である。一般式(9)で表される化合物は、p’の値が異なる複数の化合物の混合物であってもよい。好ましくは、溶解性の観点からは、p’は1~10であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、更には1であることが好ましい。

【0132】
一般式(9)において、部分構造であるA’、c”、e’の原子数は、好ましくは(p’+1)A’>(c”+e’+p’d’)の関係となるように選択される。

【0133】
一般式(9)で表される化合物としては、例えば一般式(7)で表される化合物が有する反応性の置換基であるa’とb’とを、分子間で反応させて縮合し、一般式(7)で表される化合物の多量体としたものや、一般式(7)で表される化合物のa’及び/又はb’を反応性の基a”及び/又はb”に変換し、a’又はa”とb’又はb”とを分子間で反応させて有機基A’を複数連結したもの等が挙げられる。

【0134】
以下に一般式(6)又は一般式(7)で表される化合物と、その微粒子作成時に併用する結晶核剤の組み合わせを例示するが、本発明はこれらの化合物及び組み合わせに限定されるものではない。

【0135】
【化30】
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【0136】
【化31】
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【0137】
【化32】
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【0138】
【化33】
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【0139】
【化34】
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【0140】
【化35】
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【0141】
【化36】
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【0142】
本発明の有機微粒子を製造するにあたっては、一般式(6)や一般式(7)で表される化合物(以下これらをまとめて単に一般式(6)で表わされる化合物という。)と結晶核剤は、まず良溶媒である有機溶媒に溶解される。有機溶媒としては、一般式(6)で表わされる化合物と結晶核剤を溶解することのできる有機溶媒ならば適宜選択できる。具体的な有機溶媒としては、溶解させる化合物及び後述する貧溶媒にもよるが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等の極性アミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;フェノール、o-,m-,またはp-クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒;ヘキサメチルホスホルアミド、γ-ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶媒などを例示することができ、これらを単独であるいは混合して用いることができる。

【0143】
一般式(6)で表わされる化合物の有機溶媒への溶解濃度は、生成する微粒子の粒径に影響を与える大きな要因であるため、その濃度は所望の粒径に応じて適宜変更される。溶液濃度は、通常0.1~15質量%程度で調整されるが、分子量が大きい場合は、0.5質量%前後の溶液が好ましくは調整される。

【0144】
一般式(6)で表わされる化合物と共に添加される結晶核剤は、添加量が少なすぎるとその機能が十分に発揮されず、また逆に多すぎると微粒子中の不純物としての問題が生じてしまう。したがって、結晶核剤の好ましい添加量は、一般式(6)で表される化合物のモル濃度基準で、結晶核剤が有する部分構造Aの合計量が0.0001~50モル%となる量であり、好ましくは0.01~15モル%である。ここで結晶核剤が有する部分構造Aの合計量とは、結晶核剤の量に、結晶核剤分子に含まれる部分構造Aの数を乗じた値であり、例えば結晶核剤が一般式(8)で表される化合物の場合、一般式(8)で表わされる化合物の量に(m’(n’+1))を乗じた値である。

【0145】
上記一般式(6)で表される化合物と結晶核剤の有機溶媒溶液(以下単に有機溶媒溶液という。)は、一般式(6)で表わされる有機化合物と結晶核剤の貧溶媒でありかつ有機溶媒溶液に使用した有機溶媒と相溶性である溶媒(以下単に貧溶媒という。)に注入される。貧溶媒中では、一般式(6)で表される化合物よりも結晶核剤が先に析出して無数の微粒子となり、これを結晶核として一般式(6)で表される化合物の結晶化が行われる。結晶核剤による結晶核の存在により、これを使用しない場合よりも一般式(6)で表される化合物の結晶化が速やかに完了することから、粒径が小さく、粒度分布も小さい一般式(6)で表される化合物の微粒子を得ることができる。得られる微粒子は、十分に粒径が小さいことから、貧溶媒に安定に分散した状態で得ることができる。

【0146】
貧溶媒とは、上記有機溶媒溶液を添加した際に一般式(6)と結晶核剤が析出し得る溶媒である。貧溶媒としては、上述の有機溶媒として例示した溶媒の他、水;へキサン、ヘプタン等の脂肪族系炭化水素;デカリン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;又はこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。貧溶媒は一般式(6)で表される化合物の構造により異なり、作成する微粒子及び目的に応じて適宜変更される。例えば、一般式(6)で表される化合物の水懸濁微粒子を製造したい場合、貧溶媒としては水が用いられる。

【0147】
貧溶媒には、得られる有機微粒子の分散安定性を向上させるために界面活性剤を入れておくこともできる。界面活性剤を使用する場合、その量に特に制限はないが、あまり多すぎると微粒子形成に悪影響を及ぼすため、通常0.1質量%程度使用される。

【0148】
有機溶媒溶液が注入される貧溶媒の量は、通常、有機溶媒溶液の体積基準で、10倍以上である。上限は特にないが、微粒子回収の作業性や経済性の点からは、多すぎない方が好ましい。微粒子の析出性や作業性の観点から、100倍程度用いるのが一般的である。

【0149】
注入時、貧溶媒は、生成する有機微粒子の粒径を均一化するために、攪拌しておくことが好ましい。攪拌速度は特に制限はないが、好ましくは100~3000rpmである。

【0150】
注入時の貧溶媒の温度は、溶媒が液体状態を保っている限り特に制限はないが、貧溶媒の温度を変化させると粒径も変化するので、貧溶媒の温度を一定に保つことで、得られる有機微粒子の粒径を制御することができる。例えば、5
℃より低い温度の貧溶媒を用いると、有機微粒子の粒径が大きくなる傾向がある。通常、-20℃~60℃の範囲で、所望の粒径に応じて温度が制御される。

【0151】
注入は、粒子の形質のばらつきを防ぐため、一気に短時間に行うことが好ましい。実験室的には、通常シリンジが用いられる。

【0152】
上記操作により、通常、粒径が50~10000nmの、粒度分布が小さい微粒子が、貧溶媒に懸濁した状態で得ることができる。粒径は、貧溶媒の温度や、結晶核剤の種類、添加量等を制御することにより、適宜調整することができる。得られた有機微粒子は、懸濁状態のまま顔料インクや懸濁性薬剤等として利用することができ、また濾過などの固液分離操作を行うことにより、粉末として単離することもできる。

【0153】
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う薬剤多量体微粒子及びその製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【実施例1】
【0154】
SN-38の二量体(化合物18-(b))(コハク酸ビス(7-エチルカンプトテシン-10-イル)エステル)の合成
<エステル化>
【化37】
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【実施例1】
【0155】
2口ナス型フラスコに、SN-38(化合物18-(a)) (10mg、0.025mmol)と4-ジメチルアミノピリジン (DMAP:7mg 、0.058mmol)を添加し、窒素置換後、脱水したN,N-ジメチルホルムアミド(DMF):1mlを添加し、30分間攪拌を行った。このナス型フラスコを0℃に氷冷した後、コハク酸ジクロリド(2.6μl 、0.023mmol)添加して、徐々に室温に戻しながら、4時間攪拌した。
【実施例1】
【0156】
同攪拌溶液を分液ロートに移し、酢酸エチルを入れ、塩化アンモニウム水で2回以上洗浄した。その溶液を水相と有機相に分けて三角フラスコに取り、水相は薄層クロマトグラフィー(TLC)にて確認し、有機相は硫酸マグネシウムで脱水後、脱脂綿ろ過を行った。そのろ液を減圧下により完全に溶媒を留去させて、生成した結晶を、クロロホルム/メタノール=1/5にて、目皿上で吸引ろ過しながら洗浄した。精製した結晶の色は白紫色で、収率は、SN-38のエステル二量体(化合物18-(b))55%で得られた。
1HNMR(400MHz,DMSO,δ):0.87(t, J = 7.4Hz,
6H), 1.26(t, J = 7.2Hz, 6H), 1.86(s, 4H), 3.15(s, 8H), 5.34(s, 3H), 5.43(s,
4H), 6.53(s, 2H), 7.35(s, 2H), 7.73(s, 2H)
MS(ESI):m/z = 867(M+H+)

【実施例2】
【0157】
SN-38の二量体(化合物18-(c))(ブチレン ビス(7-エチルカンプトテシン-10-イル)アミド)の合成
<ウレタン結合>
【化38】
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【実施例2】
【0158】
2口ナス型フラスコに、SN-38 20mg(0.051mmol)とDMAP(0.116mmol)を添加し、窒素置換後、脱水したDMF 1ml、テトラメチレンジイソシアネート3μl(0.023mmol)を添加し、一晩、室温下にて攪拌を行った。攪拌溶液を分液ロートに移し、酢酸エチルを入れ、塩化アンモニウム水で数回洗浄した。その溶液を水相と有機相に分けて三角フラスコに取り、水相は薄層クロマトグラフィー(TLC)にて確認し、有機相は硫酸マグネシウムで脱水後、脱脂綿ろ過を行った。そのろ液に吸着する最少量のシリカを添加して、減圧下にて完全に溶媒を留去させ、展開溶媒をクロロホルム/メタノール=20/1にしたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。精製した結晶の色は、黄色で、SN-38とテトラメチレンジイソシアネートの二量体(化合物18-(c))の収率が42%あった。
1HNMR(二量体:400MHz,DMSO,δ):0.87(t, J = 6.8Hz, 6H), 1.26(t, J = 7.3Hz, 6H), 1.59(s, 4H), 1.86(q,
J = 7.3Hz, 4H),3.14(q, J = 8.3Hz, 4H)、3.32(t, J = 21.9Hz, , 4H), 5.29(s, 4H), 5.42(s, 4H), 6.51(s, 2H), 7.30(s, 2H),
7.66(q, J = 11.7Hz, 2H), 7.92(s, 2H), 8.01(s, 2H), 8.15(d, J = 9.8Hz, 2H)
MS(ESI:二量体):m/z = 924.8(M+H+)

【実施例3】
【0159】
SN-38の二量体(化合物18-(d))(ビス(7-エチルカンプトテシン-10-オキシ)2-ブテンエーテル)の合成
<エーテル>
【化39】
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【実施例3】
【0160】
2口ナス型フラスコに、SN38 (20mg、0.051mmol)を添加して窒素置換後、脱水したDMFを0.3ml添加して10分間攪拌を行い、SN-38を完全に溶かした。そこに、1,4-ジブロモ-2-ブテン(5.4mg、0.025mmol)を添加し、攪拌して溶かした後、脱水したアセトン1.5ml、炭酸カリウム (18mg、0.127mmol)を添加して、2晩攪拌を行った。攪拌溶液を分液ロートに移し、酢酸エチルを入れ、塩化アンモニウム水で数回洗浄した。その溶液を水相と有機相に分けて三角フラスコに取り、水相は薄層クロマトグラフィー(TLC)にて確認し、有機相は硫酸マグネシウムで脱水後、脱脂綿ろ過を行った後、そのろ液に吸着する最少量のシリカを添加して、減圧下にて完全に溶媒を留去させた。そして、展開溶媒をクロロホルム/メタノール=10/1にしたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。精製した結晶の色は、淡黄色で、SN-38と1,4-ジブロモ-2-ブテンとの二量体(化合物18-(d))の収率が23%で得られた。
1HNMR(400MHz,DMSO,δ):0.85(t, J = 9.8Hz, 6H), 1.16(t, J
= 7.3Hz,
6H), 2.02(q, J = 13Hz, 4H), 2.69(q, J = 11.7Hz, 4H), 4.01(s, 4H), 4.58(d, J =
8.2Hz,
4H),
5.30(s, 4H), 5.41(s, 2H), 6.03(s, 2H)、7.26(s, 2H), 7.52(s, 4H), 7.94(s, 2H)。

【実施例4】
【0161】
エステル化を用いた吉草酸ベタメタゾンの二量体(化合物19-(b))の合成
【化40】
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【実施例4】
【0162】
2口ナス型フラスコに、こはく酸(36mg、0.286mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(DMAP:174mg、1.431mmol)およびN,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC:132mg、0.629mmol)を添加し窒素置換を行い、脱水したジクロロメタン(0.1M、6ml)を添加し、30分間攪拌を行った。その後で吉草酸ベタメタゾン(300mg、0.629mmol)を添加して、一昼夜攪拌を行った。攪拌した溶液をセライトろ過し、ウレアの沈殿物を除去後、そのろ液を減圧下で完全に溶媒を留去させた。そこにクロロホルムを添加して生成物をよく溶かし、そこに吸着する最少量のシリカを添加して、減圧下にて溶媒を留去させた。さらに、ラインで引き、完全に溶媒を飛ばし、シリカをさらさらにするまで乾燥させ、展開溶媒を酢酸エチルにしたシリカゲルクロマトグラフィーにて精製した。精製した結晶の色は白色で、二量体(化合物19-(b))の収率が53%であった。
1HNMR(400MHz,DMSO,δ):0.91(t, J = 7.3Hz, 6H), 0.93(d, J
= 9.8Hz,
6H),
1.26(ddd, J = 13.6Hz, 4H), 1.33(d, J = 7.8Hz, 6H), 1.35(q, J = 7.8Hz, 6H), 1.56(d, J
= 8.8Hz,
6H), 1.58(s, 2H), 1.60(q, J = 5.8Hz, 4H), 1.62(d, J = 5.8Hz, 2H), 1.64(q, J = 9.8Hz, 4H), 1.99(q, J
= 10.2Hz, 2H), 2.12(t, J = 8.8Hz, 2H), 2.34(t, J = 7.8Hz, 4H), 2.41(t, 8.8Hz,
4H), 2.49(q, J = 6.8Hz, 2H), 2.63(s, 2H), 2.78(t, 5.9Hz, 4H), 4.40(t, 7.8Hz,
2H), 4.84(s, 4H), 6.14(s, 2H), 6.34(s, 2H), 6.36(s,2H)
MS(ESI):m/z =1035(M+H+)、1057(M+H++Na+)

【実施例5】
【0163】
ナノ粒子の作り方
<SN-38のエステル結合>
SN-38とこはく酸との二量体を5mMになるように量り取り、150μlのDMSOに溶かした。貧溶媒を水として、水10mlに対して、注射器を用いてDMSO溶液100μlを室温下注入し、二量体ナノ粒子の水分散液を調製した。最終的な水分散液の濃度は、0.05mMとなった。粒子サイズは、50nmであった(図1)。

【実施例6】
【0164】
ナノ粒子の作り方
SN-38とテトラメチレンジイソシアネートとの二量体を5mMになるように量り取り、150μlのDMSOに溶かした。貧溶媒を水として、水10mlに対して、注射器を用いてDMSO溶液100μlを室温下注入し、二量体ナノ粒子の水分散液を調製した。最終的な水分散液の濃度は、0.05mMとなった。粒子サイズは、50nmであった (図2)。

【実施例7】
【0165】
ナノ粒子の作り方
吉草酸ベタメタゾンとこはく酸との二量体を5mMになるように量り取り、150μlのDMSOに溶かした。貧溶媒を水として、水10mlに対して、注射器を用いてDMSO溶液100μlを室温下注入し、二量体ナノ粒子の水分散液を調製した。最終的な水分散液の濃度は、0.05mMとなった。粒子サイズは、150nmであった。

【実施例8】
【0166】
各種SN-38二量体ナノ粒子のin vitro抗癌活性
ヒト肝癌細胞株HepG2を96ウェルプレートに2×104 cells/ウェルで播いた。翌日、イリノテカン、SN-38バルク結晶、SN-38ジエステル二量体ナノ粒子、SN-38ジイソシアネート二量体ナノ粒子を、SN-38単量体換算で0.15625, 0.3125, 0.625, 1.25, 2.5, 5, 10 μMとなるようにHepG2細胞培養液に添加した。その後48時間培養し、Cell Counting
Kit-8(DOJINDO社製)とマイクロプレートリーダー(BIO-RAD社製)を用いて、比色法により細胞生存率を測定した。この結果、本条件下において、イリノテカンはほとんど抗癌活性を示さなかったのに対して、各種SN-38試料は顕著な抗癌活性を示した。また、SN-38をエステル結合あるいはウレタン結合を介して二量体化し、さらにナノ粒子化しても、それらの抗癌活性は保持されることが明らかとなった(図3)。
【実施例8】
【0167】
次に、2種のSN-38二量体ナノ粒子の水分散液を室温で1週間程度静置し、aging試料を作製した。HepG2細胞に対する抗癌活性を指標として、aging効果を検討したところ、2種のSN-38二量体いずれも、agingによって抗癌活性が上昇することが明らかとなった(図4)。
【実施例8】
【0168】
図3と図4において、SN-38二量体ナノ粒子に含まれる結合様式、すなわちエステル結合とウレタン結合で、HepG2に対する抗癌活性に差は見られなかった。すなわち、両結合は溶液中で同程度の速度で分解され、SN-38単量体が生成していることが予想される。このことを確かめるために、難分解性のエーテル結合でSN-38を二量体化し、さらにagingしてHepG2に対する抗癌活性を検討した。この時の処理濃度は、SN-38換算で0.1, 1, 10 μMとした。この結果、SN-38ジエーテル二量体ナノ粒子の抗癌活性はほぼ消失し、aging効果もわずかであった(図5)。以上の結果は、SN-38二量体ナノ粒子の抗癌活性は、二量体の分解速度に依存することが示唆された。逆に考えれば、SN-38二量体ナノ粒子の抗癌活性は、二量体化に用いる結合様式で制御できることを示唆し、体内投与後の薬効発現プロファイルを調節するのに役立つと考えられる。

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4