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明細書 :RNAi分子活性抑制用核酸の阻害剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-105183 (P2014-105183A)
公開日 平成26年6月9日(2014.6.9)
発明の名称または考案の名称 RNAi分子活性抑制用核酸の阻害剤
国際特許分類 A61K  31/7088      (2006.01)
C12N  15/113       (2010.01)
A61K  31/713       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
FI A61K 31/7088 ZNA
C12N 15/00 G
A61K 31/713
A61P 43/00 105
A61P 43/00 121
A61K 48/00
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2012-259056 (P2012-259056)
出願日 平成24年11月27日(2012.11.27)
発明者または考案者 【氏名】立花 亮
【氏名】田辺 利住
出願人 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100180954、【弁理士】、【氏名又は名称】漆山 誠一
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4C084
4C086
Fターム 4B024AA01
4B024BA80
4B024CA01
4B024CA11
4B024HA17
4C084AA13
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB21
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZC75
要約 【課題】特定のRNAi分子活性抑制用核酸を制御できる薬剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】標的となるRNAi分子活性抑制用核酸の一本鎖核酸部分、さらに二本鎖核酸部分の塩基配列に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列を含み、少なくともDNAを包含する核酸分子からなるRNAi分子活性抑制用核酸阻害剤を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
標的RNAi分子において活性を有する機能鎖の塩基配列に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列からなる非修飾DNA領域を含む一本鎖核酸部分、及び
前記一本鎖核酸部分の5’末端及び3’末端の少なくとも一方に連結される二本鎖核酸部分を含んでなるRNAi分子の活性抑制用核酸に対して、その抑制活性を阻害するRNAi分子活性抑制用核酸の阻害剤であって、
前記RNAi分子活性抑制用核酸を構成する一本鎖核酸部分における非修飾DNA領域の塩基配列に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列を含み、かつRNAのみで構成されない核酸分子からなる前記阻害剤。
【請求項2】
前記核酸分子が一本鎖核酸部分における非修飾DNA領域以外の塩基配列の全部又は一部に対しても相補的な塩基配列を含む、請求項1に記載の阻害剤。
【請求項3】
前記核酸分子がRNAi分子活性抑制用核酸を構成する二本鎖核酸部分の塩基配列の全部又は一部に対して相補的な塩基配列をさらに含む、請求項1又は2に記載の阻害剤。
【請求項4】
前記核酸分子がDNAのみからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項5】
RNAi分子活性抑制用核酸の非修飾DNA領域が標的RNAi分子活性を有する機能鎖の塩基配列に対して1塩基又は連続する2~10塩基のミスマッチ部位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項6】
RNAi分子活性抑制用核酸の非修飾DNA領域が18~35塩基長である、請求項1~5のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項7】
RNAi分子活性抑制用核酸の一本鎖核酸部分が非修飾DNA領域と二本鎖核酸部分の連結を介在する1~10塩基長の核酸からなる連結領域を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項8】
RNAi分子活性抑制用核酸の二本鎖核酸部分が5~25塩基長である、請求項1~7のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項9】
RNAi分子活性抑制用核酸の二本鎖核酸部分が3~10塩基長の核酸からなるループ領域を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項10】
RNAi分子活性抑制用核酸がDNAのみで構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項11】
RNAi分子がmiRNA siRNA、又はshRNAである、請求項1~10のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の阻害剤を有効成分として含有する医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有し、RNAi分子の活性を特異的に抑制することのできるRNAi分子活性抑制用核酸の機能を阻害し、そのRNAi分子の活性を回復させることのできるRNAi分子活性抑制用核酸の阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、miRNA(マイクロRNA)やsiRNA(低分子干渉RNA)のようなタンパク質をコードしていない、いわゆるノンコーディングRNAが生理活性を有し、生体内で種々の機能を果たしていることが明らかになってきた。例えば、非特許文献1は、miRNAの1種でありoncomir(onco-miRNA;癌miRNA)と呼ばれるmiR-21をマウスで発現させた場合に、プレB細胞リンパ腫が誘導されることを開示している。一方で、多くの癌細胞ではmir-21が大量に発現されており、その発現を阻害するとHeLa細胞やヒトグリオーマ細胞U87等の癌細胞株では細胞死が引き起こされることが知られている(非特許文献2及び3)。miRNAをはじめとするノンコーディングRNAの活性を制御する薬剤を開発できれば、癌等の様々な疾患を治療するための医薬や診断薬の有効成分として利用することが可能となる。それ故、世界各国において、ノンコーディングRNAの活性を制御する薬剤を用いた核酸医薬品等の研究及び開発が盛んに進められており、これまでにも、miRNA阻害剤等をはじめとする様々な核酸医薬品が開発されてきた。
【0003】
例えば、非特許文献4は、人工的に構築された非天然型核酸である架橋化核酸(BNA/LNA:Bridged Nucleic Acid/Locked Nucleic Acid)をmiRNA阻害剤として使用する方法を開示している。また、非特許文献5は、2’-OMeで化学修飾されたRNAを含む核酸をmiRNA阻害剤として用いる方法を開示している。一般にDNAよりも非天然型核酸や化学修飾した核酸の方がRNAに対するTm値が高いことが知られており、これらの方法は、そのRNAに対する高い結合親和性を利用して標的miRNAの活性を抑制する。しかし、非天然型核酸や化学修飾した核酸の合成には、非修飾のDNA合成の数十倍のコストを要するため、安価かつ大量に生産することができないという問題があった。また、生体内で分解されない非天然型核酸や化学修飾核酸を医薬品に使用することは、副作用等の安全面においても大きな問題が残る。
【0004】
その他にも、特殊な構造を有する核酸分子からなるmiRNA阻害剤が知られている。例えば、非特許文献6は、miRNA阻害剤として、MBS(miRNA-biding site)がステムにはさまれた構造を有するRNAデコイを開示している。また、非特許文献7も、miRNA阻害剤として、バルジを含む相補的配列の両端にステムを結合させたmiRNA spongeを開示している。しかし、これらのmiRNA阻害剤は、プラスミドベクターからの発現によって生じるRNAによって構成されている。RNAは、生体内でヌクレアーゼ等の核酸分解酵素による分解を受けやすく、非常に不安定であることから、核酸医薬品の薬理効果を効率的に、かつ継続的に作用させる上で問題が残る。
【0005】
特許文献1、非特許文献8及び非特許文献9では、miRNAの標的配列を含むステム構造を有し、2’-OMeで化学修飾されたRNAから構成されるmiRNA阻害剤が開示されている。これらのmiRNA阻害剤は、2’-OMe修飾によってRNAのヌクレアーゼに対する分解耐性を向上させている。しかし、RNAを化学修飾させる点においては、前述の化学修飾した核酸と変わらず、合成に要するコスト面の問題や、副作用の問題が依然として残されている。
【0006】
核酸医薬品を開発する上で、コスト面や被検体に対する安全面を課題とした場合、非天然型核酸や化学修飾した核酸よりも生体内で分解可能な天然型核酸、すなわち、RNAやDNAで構成されていることが好ましい。RNAは、miRNAのようなノンコーディングRNAとの結合親和性が高く、それ故、阻害活性も高いが、生体内で非常に不安定である点や、化学合成効率が低く、合成コストも、非天然型核酸や化学修飾核酸ほどではないにしても、比較的高いという問題がある。一方、DNAは、RNAと比べて生体内での安定性が比較的高く、核酸の中では最も安価に合成できるが、ノンコーディングRNAに対する結合親和性が低く、特に、低濃度のときには、miRNA等に相補的な塩基配列を有していてもほとんど結合することができず、それ故、阻害活性が低いという問題があった。
【0007】
そこで、本出願人は、標的とするRNAi分子の活性を特異的に、かつ効率的に抑制することができ、さらに安全かつ低廉で大量に生産することが可能なmiRNA阻害剤として、RNAi分子活性抑制用核酸を開発した(特許文献2)。このRNAi分子活性抑制用核酸は、可能な限り天然型核酸で構成されており、核酸分解酵素に対する高い分解耐性能を有し、生体内で比較的安定に維持され、かつ標的RNAi分子の活性を効率的に抑制可能で、安価で提供できるというこれまでの問題を全て解決し得る効果を有していた。
【0008】
一方、RNAi分子活性抑制用核酸は、特有の構造を有し、生体内で比較的安定に維持され得るが故に一旦生体内に導入した場合、長期にわたって標的RNAi分子の活性を抑制し続ける可能性がある。しかし、例えば、RNAi分子の過剰発現に基づく疾患が治癒した後まで、その抑制効果が継続することは治療上好ましくない。
【0009】
したがって、RNAi分子活性抑制用核酸の活性を制御し得る薬剤の開発が同時に必要となっていた。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】WO2007095387
【特許文献2】PCT/2012/079518
【0011】

【非特許文献1】Medina P.P., et al., 2010, Nature, 467:86-90.
【非特許文献2】Yao Q., et al., 2009, Biochem Biophys Res Commun., 388(3):539-42.
【非特許文献3】Zhou X., et al., 2010, Oncol Rep., 24(1):195-201.
【非特許文献4】Elmen J., et al., 2008, Nature., 452(7189):896-9.
【非特許文献5】Hutvagner G., et al., 2004, PLoS Biol., 2(4):E98.
【非特許文献6】Haraguchi T., et al., 2009, Nucleic Acid Res 2009, Vol.37, No.6, e43.
【非特許文献7】Ebert M.S., et al., 2007, Nature Methods, 4:721-726.
【非特許文献8】Vermeulen A., et al., 2007, RNA, 13:723-730.
【非特許文献9】Robertson B., et al., 2010, Silence, 2010, 1:10.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、RNAi分子活性抑制用核酸を制御できる薬剤を開発し、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明者らは、鋭意研究を重ね、RNAi分子活性抑制用核酸の活性を特異的に阻害することのできる薬剤の開発に成功した。本発明は、当該開発結果に基づくものであり、以下を提供する。
(1)標的RNAi分子において活性を有する機能鎖の塩基配列に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列からなる非修飾DNA領域を含む一本鎖核酸部分、及び前記一本鎖核酸部分の5’末端及び3’末端の少なくとも一方に連結される二本鎖核酸部分を含んでなるRNAi分子の活性抑制用核酸に対して、その抑制活性を阻害するRNAi分子活性抑制用核酸の阻害剤であって、前記RNAi分子活性抑制用核酸を構成する一本鎖核酸部分における非修飾DNA領域の塩基配列に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列を含み、かつRNAのみで構成されない核酸分子からなる前記阻害剤。
(2)前記核酸分子が一本鎖核酸部分における非修飾DNA領域以外の塩基配列の全部又は一部に対しても相補的な塩基配列を含む、(1)に記載の阻害剤。
(3)前記核酸分子がRNAi分子活性抑制用核酸を構成する二本鎖核酸部分の塩基配列の全部又は一部に対して相補的な塩基配列をさらに含む、(1)又は(2)に記載の阻害剤。
(4)前記核酸分子がDNAのみからなる、(1)~(3)のいずれかに記載の阻害剤。
(5)RNAi分子活性抑制用核酸の非修飾DNA領域が標的RNAi分子活性を有する機能鎖の塩基配列に対して1塩基又は連続する2~10塩基のミスマッチ部位を含む、(1)~(4)のいずれかに記載の阻害剤。
(6)RNAi分子活性抑制用核酸の非修飾DNA領域が18~35塩基長である、(1)~(5)のいずれかに記載の阻害剤。
(7)RNAi分子活性抑制用核酸の一本鎖核酸部分が非修飾DNA領域と二本鎖核酸部分の連結を介在する1~10塩基長の核酸からなる連結領域を含む、(1)~(6)のいずれかに記載の阻害剤。
(8)RNAi分子活性抑制用核酸の二本鎖核酸部分が5~25塩基長である、(1)~(7)のいずれかに記載の阻害剤。
(9)RNAi分子活性抑制用核酸の二本鎖核酸部分が3~10塩基長の核酸からなるループ領域を含む、(1)~(8)のいずれかに記載の阻害剤。
(10)RNAi分子活性抑制用核酸がDNAのみで構成される、(1)~(9)のいずれかに記載の阻害剤。
(11)RNAi分子がmiRNA siRNA、又はshRNAである、(1)~(10)のいずれかに記載の阻害剤。
(12)(1)~(11)のいずれかに記載の阻害剤を有効成分として含有する医薬組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明のRNAi分子活性抑制用核酸阻害剤によれば、RNAi分子活性抑制用核酸が有する標的RNAi分子の活性抑制作用を特異的に阻害することができる。また、それによって、標的RNAi分子の活性を回復することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のRNAi分子活性抑制用核酸阻害剤の標的となるRNAi分子活性抑制用核酸の基本構成を示す概念図である。この図は、RNAi分子活性抑制用核酸の最小かつ必須の構成単位を示している。Aは、一本鎖核酸部分(101)の3’末端に二本鎖核酸部分(102)が連結されている構成であり、Bは、一本鎖核酸部分(101)の5’末端に二本鎖核酸部分(102)が連結されている構成である。Cは、一本鎖核酸部分(101)の5’末端と3’末端が二本鎖核酸部分(102)の3’末端と5’末端にそれぞれ連結された構成である。Aでは、一本鎖核酸部分(101)が標的RNAi分子(100)に対して相補的な塩基配列のみで構成されていることから一本鎖核酸部分(101)の全領域が非修飾DNA領域(103)に相当する。なお、A~Cにおいて、縦線は二本鎖核酸部分(102)の核酸鎖間の塩基対合を、星印は、一本鎖核酸部分(101)と標的RNAi分子(100)間の塩基対合を表す(以下、同様とする)。
【図2】標的となるRNAi分子活性抑制用核酸における選択的構成要素である、一本鎖核酸部分(201)と二本鎖核酸部分(202)を連結する連結領域(204)、フランキング領域(205)、ミスマッチ部位(206)、二以上の非修飾DNA領域(203a及び203b)間のスペーサー領域(207)等を示す概念図である。
【図3】実施例で用いた核酸分子の分子名、その構造及び塩基配列、並びに配列番号を示す。図中、大文字はDNAを、小文字はRNAを表す。また、太字はsp-miR16-MBL及びsp-miR302cdの一本鎖核酸部分を、細字は二本鎖核酸部分を、下線部はミスマッチ部位を、二重下線部は連結領域を示す。αsp-miR16-MBL及びαsp-miR16-MBL-plusは、sp-miR16-MBLの一部と塩基対合を形成し得る。
【図4】図3に示したmiR16活性抑制用核酸sp-miR16-MBLの二次構造を示す概念図である。太字は一本鎖核酸部分を、細字は二本鎖核酸部分を、下線部はミスマッチ部位を示す。
【図5】実施例におけるRNAi分子活性抑制用核酸阻害剤αsp-miR16-MBL又はαsp-miR16-MBL-plusによるsp-miR-16-MBLのmiR16活性抑制効果の阻害作用を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.RNAi分子活性抑制用核酸阻害剤
1-1.概要
本発明の第1の実施形態は、RNAi分子活性抑制用核酸阻害剤である。本発明のRNAi分子活性抑制用核酸阻害剤(以下、本明細書においては、しばしば「本発明の阻害剤」と略記する)は、標的となる特定のRNAi分子活性抑制用核酸(以下、本明細書においては、しばしば「抑制用核酸」と略記する)の活性を阻害することで、その抑制用核酸によって活性が抑制されていたRNAi分子の活性を回復させることができる。

【0017】
1-2.定義
本明細書において「RNAi分子」とは、生体内においてRNAi(RNA干渉:RNA inteference)を誘導し、標的とする遺伝子転写産物の分解を介してその遺伝子の発現を抑制(サイレンシング)することができるRNA分子をいう(Fire A. et al.,1998,Nature,391, 806-811)。また、本明細書において「標的RNAi分子」とは、抑制用核酸の標的であって、その活性を抑制すべき、対象となるRNAi分子をいう。RNAi分子の具体例としては、siRNA、miRNA、shRNA等が挙げられる。

【0018】
「siRNA」(低分子干渉RNA:small interference RNA)とは、標的遺伝子の一部に相当する塩基配列を有するセンス鎖(パッセンジャー鎖)、及びそのアンチセンス鎖(ガイド鎖)からなる小分子二本鎖RNAである。

【0019】
「miRNA」(micro RNA)とは、生体内に存在し、特定の遺伝子の発現を調節する長さ18~25塩基長の一本鎖ノンコーディングRNAである。このRNAは、標的遺伝子のmRNA及びタンパク質因子と結合して複合体を形成し、標的遺伝子の翻訳を阻害することが知られている。miRNAは、pri-miRNAと呼ばれる一本鎖の前駆体状態でゲノムから転写された後、核内でDroshaと呼ばれるエンドヌクレアーゼによりpre-miRNAと呼ばれる一本鎖前駆体状態にさらにプロセシングされ、核外でDicerと呼ばれるエンドヌクレアーゼの働きによってmiRNA鎖とmiRNAスター鎖からなる成熟型二本鎖miRNAとなる。そのうちmiRNA鎖がRISC(RNA-induced silencing complex)複合体に取り込まれて、成熟型一本鎖miRNAとなって、標的遺伝子発現を抑制する(David P. Bartel, Cell, Vol. 116, 281-297, January 23, 2004,)。

【0020】
「shRNA」(short hairpin RNA)とは、適当な配列を有する短いスペーサー配列によって前記siRNA又は成熟型二本鎖miRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖が連結された一本鎖RNAをいう。つまり、shRNAは、一分子内でセンス領域とアンチセンス領域が互いに塩基対合してステム構造を形成し、同時に前記スペーサー配列がループ構造を形成ことによって、分子全体としてヘアピン型のステム-ループ構造を形成している。

【0021】
本発明において「RNAi分子の活性」とは、RNAi分子が有する標的遺伝子の発現をサイレンシングする活性(遺伝子サイレンシング活性)をいう。また、本発明において「RNAi分子の活性を抑制する」とは、RNAi分子の遺伝子サイレンシング活性を完全に又は部分的に抑制することをいう。RNAi分子は、内在性のRNAi分子であってもよいし、外来性のRNAi分子であってもよい。生体内(細胞内、組織内、器官内及び個体内を含む)に存在するある特定のRNAi分子の活性を抑制した場合、その特定のRNAi分子が標的としていた遺伝子のサイレンシングは、相対的に完全に又は部分的に回避される。その結果、その標的遺伝子の生体内での発現量が増加することとなる。

【0022】
本発明において「核酸」とは、ヌクレオチドを構成単位とし、それらがホスホジエステル結合によって連結した生体高分子をいう。原則として自然界に存在する天然型ヌクレオチドが連結してなる天然型核酸を意味するが、本明細書における抑制用核酸及び/又は本発明の阻害剤は、天然型核酸若しくは人工核酸又はそれらの混合物を包含し得る。

【0023】
本明細書において「天然型ヌクレオチド」とは、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンのいずれかの塩基を有するデオキシリボヌクレオチド及びアデニン、グアニン、シトシン及びウラシルのいずれかの塩基を有するリボヌクレオチドが該当する。「天然型核酸」とは、デオキシリボヌクレオチドが連結したDNA及びリボヌクレオチドが連結したRNAが該当する。

【0024】
本明細書において「人工核酸」とは、全部又は一部が非天然型ヌクレオチドで構成される核酸、又は非天然型核酸をいう。

【0025】
本明細書において「非天然型ヌクレオチド」とは、人工的に構築された自然界に存在しないヌクレオチドである。天然型ヌクレオチドに類似の性質及び/又は構造を有する人工ヌクレオチドや、天然型ヌクレオチドの構成要素である天然型ヌクレオシド若しくは天然型塩基に類似の性質及び/又は構造を有する非天然型ヌクレオシド若しくは非天然型塩基を含む人工ヌクレオチドが該当する。非天然型ヌクレオシドの具体例としては、脱塩基ヌクレオシド、アラビノヌクレオシド、2′-デオキシウリジン、α-デオキシリボヌクレオシド、β-L-デオキシリボヌクレオシドが挙げられる。また、非天然型塩基の具体例としては、2-オキソ(1H)-ピリジン-3-イル基、5位置換-2-オキソ(1H)-ピリジン-3-イル基、2-アミノ-6-(2-チアゾリル)プリン-9-イル基、2-アミノ-6-(2-チアゾリル)プリン-9-イル基、2-アミノ-6-(2-オキサゾリル)プリン-9-イル基等が挙げられる。

【0026】
本明細書において「非天然型核酸」とは、天然型核酸に類似の構造及び/又は性質を有する人工的に構築された核酸をいう。例えば、ペプチド核酸(PNA:Peptide Nucleic Acid)、ホスフェート基を有するペプチド核酸(PHONA)、架橋化核酸(BNA/LNA:Bridged Nucleic Acid/Locked Nucleic Acid)、モルホリノ核酸等が挙げられる。

【0027】
また、本発明において核酸は、特に断りのない限り、修飾されていてもよい。ここでいう「修飾」とは、核酸の構成単位であるヌクレオチド又はその構成要素であるヌクレオシドの一部又は全部が他の原子団と置換されること、又は官能基等が付加されることをいう。具体的には、例えば、糖修飾、塩基修飾、又はリン酸修飾が挙げられる。

【0028】
糖修飾とは、ヌクレオシドを構成するリボース部の修飾である。例えば、リボヌクレオシドを構成するリボース部の修飾であって、2′位のヒドロキシ基における置換若しくは付加が挙げられる。具体的には、例えば、ヒドロキシ基を、メトキシ基に置換した2′-O-メチルリボース、エトキシ基に置換した2′-O-エチルリボース、プロポキシ基に置換した2′-O-プロピルリボース、若しくはブトキシ基に置換した2′-O-ブチルリボース、ヒドロキシ基をフルオロ基に置換した2′-デオキシ-2′-フルオロリボース又はヒドロキシ基を2′-O-メトキシ-エチル基に置換した2′-O-メトキシエチルリボースが該当する。又は、ヌクレオシドの(デオキシ)リボース部の他糖への置換等が挙げられる。具体的には、例えば、リボース部のアラビノース、2′-フルオロ-β-D-アラビノース、リボースの2′ヒドロキシ基と4′位の炭素原子をメチレンで架橋したリボース誘導体、リボース環の4位の酸素を硫黄に置換したリボース誘導体への置換が該当する。又は、リボフラノース環上の酸素原子(リボースの4位の酸素原子)が硫黄に置換したものも含まれる。

【0029】
塩基修飾とは、ヌクレオシドを構成する塩基部の修飾である。例えば、塩基部への官能基の置換若しくは付加、又は塩基部の塩基類似体への置換が挙げられる。具体的には、例えば、シトシンの5位にメチル基が置換した5-メチルシトシン、シトシンの5位にヒドロキシ基が置換した5-ヒドロキシシトシン、ウラシルの5位にフルオロ基が置換した5-フルオロウラシル、ウラシルの4位の酸素原子がチオ基に置換した4-チオウラシル若しくはウラシルの5位にメチル基が置換した5-メチルウラシルやウラシルの2位の酸素原子がチオ基に置換した2-チオウラシルのような修飾ピリミジン、アデニンの6位にメチル基の置換した6-メチルアデニン、グアニンの6位にチオ基が置換した6-チオグアニンのような修飾プリン又は他の複素環塩基等が該当する。

【0030】
本発明の核酸は、特に断りのない限り、必要に応じてリン酸基、糖及び/又は塩基が核酸用標識物質で標識されていてもよい。核酸用標識物質は、当該分野で公知のあらゆる物質を利用することができる。例えば、放射性同位元素(例えば、32P、3H、14C)、DIG、ビオチン、蛍光色素(例えば、FITC、Texas、Cy3、Cy5、Cy7、FAM、HEX、VIC、JOE、Rox、TET、Bodipy493、NBD、TAMRA)、又は発光物質(例えば、アクリジニウムエスター)が挙げられる。

【0031】
1-3.構成
1-3-1.RNAi分子活性抑制用核酸の構成
本発明の阻害剤の標的となる抑制用核酸の構成について、以下で説明をする。この抑制用核酸は、標的RNAi分子の活性を特異的に抑制することができる。

【0032】
抑制用核酸の基本構成を図1及び図2に示す。これらの図が示すように、抑制用核酸は、必須の構成単位として、1つの一本鎖核酸部分(101、201)とその末端に連結された1つの二本鎖核酸部分(102、202)をからなる構造を包含する。二本鎖核酸部分が連結される位置は、一本鎖核酸部分の3’末端(図1A)又は5’末端(図1B)のいずれの場合も有り得るが、より高いRNAi分子の活性抑制効果を有することから3’末端に連結されることが多い。また、一本鎖核酸部分の両末端が1つの二本鎖核酸部分に連結されることで、二本鎖核酸部分と一本鎖核酸部分とがステム構造とループ構造を形成したような構造(図1C)も有り得る。

【0033】
以下、一本鎖核酸部分と二本鎖核酸部分について具体的に説明をする。
(1)一本鎖核酸部分
「一本鎖核酸部分」(101、201)は、抑制用核酸において一本鎖からなる核酸部分であって、その内部に非修飾DNA領域(103、203)を1つ~3つ、通常1つ~2つ含む。一本鎖核酸部分が非修飾DNA領域を2つ以上含む場合、それぞれの非修飾DNA領域(例えば、203a及び203b)の標的RNAi分子及び/又は構成する塩基配列は、同一であるか、又は異なっている。

【0034】
なお、図1Aでは、一本鎖核酸部分が後述する連結領域及び/又はフランキング領域を含まず、かつ一本鎖核酸部分が非修飾DNA領域(103)を1つしか含まないことから、一本鎖核酸部分の全領域(101)が非修飾DNA領域(103)に相当する。

【0035】
また、抑制用核酸は、必要に応じて、図2に示す連結領域(204)、フランキング領域(205)及び/又はスペーサー領域(207)を含み得る。これらの領域は、抑制用核酸における選択的構成要素である

【0036】
(1-1)非修飾DNA領域
「非修飾DNA領域」(103、203)とは、標的RNAi分子(100、200)における機能鎖の塩基配列に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列からなる核酸領域をいう。非修飾DNA領域は、DNAのみで構成される。

【0037】
抑制用核酸において、「非修飾DNA」とは、修飾されていないDNAをいう。核酸の修飾については上述した通りである。

【0038】
抑制用核酸において、「機能鎖」とは、標的RNAi分子において、遺伝子サイレンシングを誘導することができるRNAiの実質的な活性を有する核酸鎖であって、抑制用核酸の真の標的となり得る核酸鎖をいう。例えば、RNAi分子がsiRNAやshRNAである場合には、ガイド鎖と呼ばれるアンチセンス鎖が該当し、またmiRNAである場合には、miRNA鎖と呼ばれるアンチセンス鎖が該当する。

【0039】
本明細書において、「相補的」とは、2つの塩基が互いにワトソン・クリック型の塩基対合を形成し得る関係をいう。具体的には、アデニンとチミン又はウラシルとの関係、及びシトシンとグアニンとの関係をいう。

【0040】
本明細書において、「完全に相補的」とは、2つの核酸鎖において一方の核酸鎖の塩基配列の全ての塩基が他方の核酸鎖の塩基配列の対応する全ての塩基と塩基対合し得る関係をいう。したがって、抑制用核酸において、一本鎖核酸部分の非修飾DNA領域が標的RNAi分子の機能鎖の塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列からなるという場合には、非修飾DNA領域の塩基配列の全ての塩基が機能鎖の塩基配列の全ての塩基と塩基対合を形成できることを意味する。

【0041】
本明細書において、「十分に相補的」とは、2つの核酸鎖のうち少なくとも一方の核酸鎖の全ての塩基が他方の核酸鎖の塩基配列の対応する全ての塩基と塩基対合し得る関係ではないものの、その一方の塩基配列の50%以上100%未満、好ましくは60%以上100%未満、より好ましくは70%以上100%未満、さらに好ましくは80%以上100%未満の塩基が他方の核酸鎖の塩基配列の塩基と塩基対合し得る関係をいう。例えば、2つの核酸鎖において、一方の核酸鎖の塩基配列は、他方の核酸鎖の塩基配列に対して完全に相補的であるが、他方の核酸鎖は、一方の核酸鎖の塩基配列に対して完全に相補的ではなく、50%以上100%未満しか相補的ではない場合が挙げられる。具体的には、完全に相補的な塩基配列からなる2つの核酸鎖のうち一方の核酸鎖のみに1つ又は複数の塩基が付加された場合が該当する。あるいは、例えば、2つの核酸鎖において、2つの核酸鎖の塩基配列は、いずれも相手方の核酸鎖に対して完全に相補的ではないが、それぞれの核酸鎖の塩基配列の50%以上100%未満が相手方の核酸鎖の塩基配列と相補的である場合が挙げられる。具体的には、完全に相補的な塩基配列からなる2つの核酸鎖において互いに対応する位置にあるヌクレオチド残基の塩基の両方又はいずれか一方を他の塩基に置換した結果、その置換した位置におけるヌクレオチド残基が塩基対合できなくなった場合や、一方の核酸鎖からヌクレオチド残基が1つ若しくは2~4つ欠失した結果、その欠失した位置におけるヌクレオチド残基が塩基対合できなくなった場合、が該当する。抑制用核酸であれば、前記十分に相補的な例として、非修飾DNA領域がミスマッチ部位(206)を含む場合が挙げられる。

【0042】
抑制用核酸において「ミスマッチ部位」(206)とは、2つの核酸鎖を互いに塩基対合させたときに、一方の核酸鎖の塩基配列に含まれる塩基に対して相補的な塩基が他方の核酸鎖の塩基配列の対応する位置に存在しないことにより、塩基対合を形成できないヌクレオチド残基からなる部位をいう。

【0043】
非修飾DNA領域は、その塩基配列中に、機能鎖と塩基対合しない1塩基(1ヌクレオチド残基に相当する。以下同様に解する。)からなるミスマッチ部位(「ギャップ部位」ともいう)及び/又は連続する2~10塩基、好ましくは連続する3~8塩基、より好ましくは連続する4~6塩基のミスマッチ部位(「ループ部位」ともいう)を少なくとも1つ有することができる。非修飾DNA領域がミスマッチ部位を含む場合、その挿入位置は、非修飾DNA領域内において特に制限されないが、非修飾DNA領域の末端部を除いた同領域内部であることが多く、さらに非修飾DNA領域の中央部、具体的にはその5’末端から数えて9~14番目、又は10~13番目のヌクレオチド残基間である場合が多い。

【0044】
非修飾DNA領域の塩基長は、特に制限はされていないが、前述のように標的RNAi分子における機能鎖の塩基配列に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列を有することから、機能鎖以上の塩基長を有する。一般に、RNAi分子の機能鎖は、18~25塩基長であることが知られており(Kim D.H., et al.,2005, Nat Biotechnol., 23(2):222-6)、非修飾DNA領域が後述するミスマッチ部位を含むことを鑑みれば、18~35塩基長、18~33塩基長又は18~31塩基長である。

【0045】
(1-2)連結領域
「連結領域」(204)とは、前記非修飾DNA領域と二本鎖核酸部分の連結を介在する核酸領域をいう。連結領域は、一本鎖核酸部分の5’末端部及び/又は3’末端部に位置する。連結領域は、1~10塩基長の一本鎖で構成される。通常は1~8塩基長、好適には2~6塩基長である。なお、抑制用核酸において、一本鎖核酸部分に含まれる非修飾DNA領域の少なくとも一方の末端部と二本鎖核酸部分は、直接連結され得る。

【0046】
連結領域を構成する核酸は、上述した核酸のいずれの場合も有り得る。通常は天然型核酸であり、多くの場合はDNAである。また連結配列の塩基配列は、自己アニーリング等の分子内フォールディングによる高次構造を形成しない配列であれば、制限されていない。例えば、Tのみ、又はCのみからなる配列の場合も有り得る。

【0047】
(1-3)フランキング領域
「フランキング領域」(205)とは、一本鎖核酸部分(201)において二本鎖核酸部分が連結しない側の5’末端又は3’末端に連結される一本鎖の核酸領域をいう。それ故、フランキング領域は、一本鎖核酸部分に含まれる非修飾DNA領域の一方の末端部と直接連結される。

【0048】
フランキング領域の塩基長は、特に限定はされないが、通常は1~30塩基長、又は1~25塩基長の範囲である。フランキング領域を構成する核酸は、上述した核酸のいずれの場合も有り得る。通常は天然型核酸であり、多くの場合はDNAのみで構成される。またフランキング領域の塩基配列は、自己アニーリング等の分子内フォールディングによる高次構造を形成しないあらゆる配列から構成されている。

【0049】
また、フランキング領域において、一本鎖核酸部分に連結されない他方の末端部は、遊離状態の一本鎖核酸末端の場合もあれば、担体に固定されている場合もある。ここでいう「担体」とは、例えば、低分子化合物(例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジン)、アミノ酸若しくはペプチド、高分子多糖支持体(例えば、セファロース、セファデックス、アガロース)、樹脂(天然又はプラスチックを含む合成樹脂)、シリカ、ガラス、磁気ビーズ、金属(例えば、金、白金、銀)、セラミックス、又はそれらの組み合わせが挙げられる。

【0050】
(1-4)スペーサー領域
「スペーサー領域」(207)とは、一本鎖核酸部分が2つ以上の非修飾DNA領域を含むときに、各非修飾DNA領域間で2つの非修飾DNA領域を介在する核酸領域をいう。2つ以上の非修飾DNA領域が含まれる場合、それらが直接連結されている場合もあるが、一本鎖核酸部分内での各非修飾DNA領域の自由度を高めるためスペーサー領域が介在されている場合もある。

【0051】
スペーサー領域は、通常、1~10塩基長の一本鎖で構成される。
スペーサー領域を構成する核酸は、上述した核酸のいずれの場合も有り得る。通常は天然型核酸であり、多くの場合はDNAのみで構成される。またスペーサー配列の塩基配列は、自己アニーリング等の分子内フォールディングによる高次構造を形成しないあらゆる配列が有り得る。

【0052】
(2)二本鎖核酸部分
「二本鎖核酸部分」(102、202)は、前記一本鎖核酸部分の5’末端部又は3’末端部の少なくとも一方に連結される核酸部分である。

【0053】
二本鎖核酸部分は、塩基対合を形成した互いに相補的な2本の核酸鎖から構成されている。ただし、核酸鎖が分子内フォールディングによって二本鎖を形成する場合、多重鎖構造を形成する場合、又は相補的な2本の核酸鎖の一方又は両方の核酸鎖にニック(切れ目)が存在する場合には、1本又は3本以上の核酸鎖からも構成され得る。このような特殊な構造も核酸鎖間又は核酸鎖内で塩基対合を介して高次構造を形成する点で2本の核酸鎖間の塩基対合によって形成される二本鎖核酸と同一又は類似する構造であることから、抑制用核酸においては二本鎖核酸部分に含まれる。

【0054】
二本鎖核酸部分を構成する各核酸鎖の塩基長は、核酸鎖間で形成された塩基対合を安定して維持できる長さである。通常は、5~25塩基長の範囲内にある。また、二本鎖核酸部分を構成する各核酸鎖の塩基長は、同一の場合もあれば、異なっている場合もある。通常は、同一塩基長である。各核酸断片の塩基長が異なる場合、図2Bで示すように、長鎖側が分子内フォールディングによって一以上の側鎖ステム部位(208)及び側鎖ループ部位(209)、を形成し得る。また、ステム部位は、その内部に一以上の側鎖ミスマッチ/バルジ部位(210)を含み得る。

【0055】
二本鎖核酸部分は、通常は2本の核酸鎖が互いに完全に相補的である。特に各核酸鎖の塩基長が9塩基長以下の場合には、完全に相補的であることが多い。一方、各核酸鎖の塩基長が10塩基長以上の場合には、十分に相補的な場合もある。例えば、二本鎖核酸部分の少なくとも一方の核酸鎖が、その塩基配列中に、他方の核酸鎖と塩基対合しない1塩基及び/又は連続する2塩基以上のミスマッチ部位(211)を少なくとも1つ有する場合が挙げられる。ミスマッチ部位が連続する2塩基以上からなるループ部位(212)を形成する場合、ミスマッチ部位の塩基長は、2~6塩基であるが、前述のようにそのループ部位内で分子内フォールディングによって一以上のループ構造及び一以上のステム構造を形成する場合には、ミスマッチ部位がより長い塩基長の場合も有り得る。

【0056】
二本鎖核酸部分を構成する核酸は、二本鎖構造等の二次構造やGカルテット等の三次構造のように、安定した高次構造を形成し得る核酸であれば、上述した核酸のいずれの場合も有り得る。通常はDNAのみで構成される。

【0057】
1-3-2.RNAi分子活性抑制用核酸阻害剤の構成
本発明の阻害剤の構成例を図3に示す。本発明の阻害剤は、標的とする抑制用核酸の一本鎖核酸部分における非修飾DNA領域の塩基配列に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列を含む核酸分子からなる。非修飾DNA領域がミスマッチ部位を含む場合、そのミスマッチ部位に対しても相補する塩基配列を含むようにすることが好ましい。

【0058】
また、標的とする抑制用核酸の一本鎖核酸部分が非修飾DNA領域以外の一本鎖核酸部分、例えば、連結領域やフランキング領域を含む場合には、その塩基配列の全部又は一部に対しても相補的な塩基配列を含むことができる。

【0059】
抑制用核酸が一本鎖核酸部分に非修飾DNA領域を2以上有する場合には、本発明の阻害剤を構成する核酸の塩基配列は、いずれか一方の非修飾DNA領域の塩基配列のみに対して相補的な塩基配列とすることもできるし、2以上の非修飾DNA領域の塩基配列に対して相補的な塩基配列とすることもできる。後者の場合、本発明の阻害剤は、非修飾DNA領域間に配置されるスペーサー領域に対しても完全に又は十分に相補的な塩基配列も含む。

【0060】
本発明の阻害剤は、抑制用核酸を構成する二本鎖核酸部分の塩基配列の全部又は一部に対して相補的な塩基配列をさらに含んでいてもよい。二本鎖核酸部分が互いに相補的な2本の核酸鎖、又は多重鎖構造を有する核酸鎖から構成されている場合には、本発明の阻害剤は一本鎖核酸部分と直接連結している方の核酸鎖に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列を含む。二本鎖核酸部分が1本の核酸鎖から構成されている場合には、本発明の阻害剤は、二本鎖核酸部分の核酸鎖に対して完全に又は十分に相補的な塩基配列を含む。二本鎖核酸部分が分子内フォールディングによって二本鎖を形成している場合には、本発明の阻害剤は、ループ構造領域及び一本鎖核酸部分と直接連結していないステム構造領域の塩基配列の全部又は一部に対して相補的な塩基配列を含むことができる。

【0061】
本発明の阻害剤は、その5’末端部及び/又は3’末端部に、抑制用核酸に対して相補的な塩基配列とは無関係の塩基配列からなる核酸領域を有することができる。このような核酸領域の塩基長は、特に限定はされないが、通常は1~30塩基長、又は1~25塩基長の範囲である。

【0062】
本発明の阻害剤は、非修飾DNA領域の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸がRNAのみで構成されていなければ、天然型核酸、人工核酸又はそれらの組合せのいずれで構成されていてもよい。DNAのみで構成されている本発明の阻害剤は、特に好ましい。

【0063】
1-4.RNAi分子活性抑制用核酸阻害剤の製造方法
本発明の阻害剤の調製方法について説明をする。本発明の阻害剤は、上記「1-3-2.RNAi分子活性抑制用核酸の構成」で説明をした構成を有する核酸分子を調製することのできる方法であれば、当該分野で公知のあらゆる方法によって製造することができる。ここでは、一具体例を挙げて説明するが、抑制用核酸の製造方法は、以下の方法に限られない。

【0064】
抑制用核酸の製造方法は、(1)設計工程、及び(2)合成工程を含む。
(1)設計工程
「設計工程」とは、本発明の阻害剤を構成する塩基配列を決定する工程である。
本工程では、標的とする抑制用核酸の一本鎖核酸部分における非修飾DNA領域の塩基配列に基づいて、その塩基配列に相補的な塩基配列として設計する。非修飾DNA領域がミスマッチ部位を含む場合には、ミスマッチ部位に対しても相補的な塩基配列を含むように設計することが好ましい。抑制用核酸の一本鎖核酸部分がフランキング領域や連結領域のような非修飾DNA領域以外の領域を含む場合には、その領域の塩基配列に対して相補的な塩基配列を含むようにすることもできる。また、抑制用核酸の一本鎖核酸部分が異なるRNAi分子を標的とする非修飾DNA領域を2以上含む場合、本発明の阻害剤は、一方の非修飾DNA領域の塩基配列のみに相補的な塩基配列として設計してもよいし、2以上の非修飾DNA領域の塩基配列に対して相補的な塩基配列にしてもよい。後者の場合、非修飾DNA領域間に位置するスペーサー領域に対しても相補的な塩基配列を含むように設計しておく。さらに、本発明の阻害剤を設計する場合、必要に応じて二本鎖核酸部分の塩基配列に相補的な塩基配列を含むようにすることもできる。二本鎖核酸部分が2本の核酸鎖で構成される場合には、一本鎖核酸部分と直接連結している核酸鎖の塩基配列に相補的な塩基配列とする。二本鎖核酸部分を構成する核酸は、天然型核酸、人工核酸又はそれらの組合せのいずれであってもよい。必要に応じで適当な核酸を適宜選択し、設計すればよい。通常は、DNAが好ましく使用される。

【0065】
(2)合成工程
「合成工程」とは、前記設計工程で設計した塩基配列に基づいて、本発明の阻害剤を構成する核酸分子を酵素的に、又は化学合成によって製造する工程である。本発明の阻害剤は、抑制用核酸の非修飾DNA領域に相補的な塩基配列からなる核酸部分がRNAのみで構成されないことを除けば、天然型核酸、人工核酸又はそれらの組合せのいずれで構成することもできる。核酸の合成方法は、当該分野では公知の技術を用いればよい。例えば、固相合成法に従って化学合成することができる。具体的には、例えば、Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry, Volume 1, Section 3、Verma S. and Eckstein F., 1998, Annul Rev. Biochem., 67, 99-134に記載された化学合成方法を利用すればよい。また、人工核酸や修飾核酸を含めた核酸の化学合成については、多くのライフサイエンス系メーカー(例えば、タカラバイオ社、ファスマック社、ライフテクノロジー社、ジーンデザイン社、シグマ アルドリッチ社等)が受託製造サービスを行っており、それらを利用することもできる。化学合成後の本発明の阻害剤は、使用前に当該分野で公知の方法によって精製することが好ましい。例えば、精製方法としては、例えば、ゲル精製法、アフィニティーカラム精製法、HPLC法等が挙げられる。

【0066】
1-5.使用方法
本発明の阻害剤は、生体内、すなわち、生きている細胞内、組織内、器官内又は個体内に導入することによって同じ生体内に存在する抑制用核酸の活性を抑制することができる。

【0067】
本発明の阻害剤を生体内に導入する方法は、抑制用核酸を含有する溶液の注入、抑制用核酸によって被覆された粒子を用いたボンバードメント、又は抑制用核酸の存在下でのエレクトロポレーション等による方法が挙げられる。さらに、脂質媒介担体輸送、化学媒介輸送(例えばリン酸カルシウム法)等の、核酸を細胞に導入するための当技術分野において公知の他の方法を用いることができる。また、生体が動物個体であれば、後述する医薬組成物のような薬剤として導入することも可能である。

【0068】
本発明の阻害剤を導入すべき細胞、組織、器官又は個体は、特に限定はしない。動物及び植物をはじめとするいずれの生物種であってもよい。

【0069】
動物であれば、好ましくは脊椎動物、より好ましくは魚類、鳥類又は哺乳動物である。魚類の中でさらに好ましくは水産資源用魚種(例えば、サケ科、スズキ科、タラ科、ニシン科、ヒラメ科、カレイ科、アジ科、イカナゴ科、タイ科及びメバル科の魚種)である。鳥類の中でさらに好ましくは食用種(例えば、ニワトリ、ガチョウ、アヒル、カモ、合鴨、七面鳥、ウズラ、ダチョウ等)である。哺乳動物の中でさらに好ましくは家畜(ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ)、実験用動物(げっ歯類、ウサギ、イヌ、サル)、競争馬、愛玩動物(イヌ、ネコ、ウサギ、サル、げっ歯類)又はヒトである。一層好ましい生物種は、ヒトである。

【0070】
一方、植物であれば、好ましくは種子植物、より好ましくは被子植物、さらに好ましくは食用植物種、繊維資源用植物種、又は木材資源用植物種である。例えば、食用植物種であれば、イネ科(例えば、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、トウモロコシ、コーリャン、アワ)、マメ科(例えば、ダイズ、アズキ、グリーンピース)、ナス科(例えば、トマト、ナス、ジャガイモ、トウガラシ、ピーマン)、ヒルガオ科(例えば、サツマイモ)、バラ科(例えば、イチゴ、アーモンド、モモ、プラム、ウメ、バラ、サクラ)、アブラナ科(例えば、ダイコン、カブ、アブラナ)、アカザ科(例えば、ホウレンソウ、テンサイ)、セリ科、タデ科、ウリ科、キク科、ユリ科、サトイモ科、ブドウ科、ミカン科、ブナ科、ヤシ科等に属する食用の植物種が、繊維資源用植物種であれば、例えば、ワタ、アサ等が、また、木材資源用植物種であれば、スギ、ヒノキ、モミ、ツガ、マツ、イチイ、サクラ、カエデ、カシ、ナラ、ブナ、ニレ、ケヤキ、クルミ、ホウ、カツラ、チーク、ラワン、黒檀、マホガニー、ポプラ、ユーカリ等が挙げられる。

【0071】
1-6.効果
本発明の阻害剤によれば、抑制用核酸の標的RNAi分子に対する活性抑制作用を特異的に阻害することができる。それによって、標的RNAi分子の活性を回復することが可能となる。すなわち、本発明の阻害剤とその標的となる抑制用核酸とを適宜用いることにより、生体内における標的RNAi分子の活性を制御することができる。

【0072】
また、本発明の阻害剤は、DNAのみでも構成可能であることから、化学合成によって簡便に、大量に、かつ安価で提供することができる。

【0073】
2.医薬組成物
2-1.概要
本発明の第2の実施形態は、医薬組成物である。本発明の医薬組成物を生体に投与することによって、生体内に存在する特定の抑制用核酸の活性を特異的に阻害することができ、それによって、生体内の目的とするRNAi分子の活性を制御することが可能となる。

【0074】
2-2.構成
2-2-1.組成
(1)有効成分
本発明の医薬組成物は、有効成分として前記第1実施形態の本発明の阻害剤を含有する。本発明の医薬組成物は、同一の又は異なる抑制用核酸を標的とする異なる二以上の本発明の阻害剤を含むことができる。

【0075】
本発明の医薬組成物において、医薬組成物中の有効成分である本発明の阻害剤の含有量は、製薬上有効な量であればよい。本明細書において「製薬上有効な量」とは、有効成分である本発明の阻害剤がその機能を発揮する上で必要な用量で、かつ投与する生体に対して有害な副作用がほとんどないか又は全くない用量を言う。具体的な用量は、標的となる抑制用核酸の種類及び量、抑制用核酸の作用効果及び安定性、使用する医薬組成物の剤形、使用する担体の種類、及び投与方法、被検体の情報及び投与経路によって異なる。ヒトに投与する場合、製薬上有効な量の範囲及び好適な投与経路は、通常、細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータに基づいて策定される。最終的な投与量は、個々の被検者に応じて医師の判断により決定され、調整される。その際に、勘案される被検者の情報には、病気の進行度若しくは重症度、全身の健康状態、年齢、体重、性別、食生活、薬剤感受性及び治療に対する耐性等が含まれる。

【0076】
(2)媒体
本発明の医薬組成物は、有効成分である本発明の阻害剤の媒体を含むことができる。媒体には、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアレルアルコール、ポリオキシ化イソステアレルアルコール及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類のような溶媒が挙げられる。このような媒体は、使用時に殺菌されていることが望ましく、必要に応じて血液と等張に調整されていることが好ましい。

【0077】
(3)製薬上許容可能な担体
本発明の医薬組成物は、必要に応じて製薬上許容可能な担体を含むことができる。「製薬上許容可能な担体」とは、製剤技術分野において通常使用する添加剤をいう。例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、充填剤、乳化剤、流動添加調節剤、滑沢剤等が挙げられる。

【0078】
賦形剤としては、単糖、二糖類、シクロデキストリン及び多糖類のような糖(より具体的には、限定はしないが、グルコース、スクロース、ラクトース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン及びセルロースを含む)、金属塩(例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム若しくはリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム)、クエン酸、酒石酸、グリシン、低、中、高分子量のポリエチレングリコール(PEG)、プルロニック、カオリン、ケイ酸、あるいはそれらの組み合わせが例として挙げられる。

【0079】
結合剤としては、トウモロコシ、コムギ、コメ、若しくはジャガイモのデンプンを用いたデンプン糊、単シロップ、グルコース液、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セラック及び/又はポリビニルピロリドン等が例として挙げられる。

【0080】
崩壊剤としては、前記デンプンや、乳糖、カルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、アガー、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、アルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド又はそれらの塩が例として挙げられる。

【0081】
充填剤としては、前記糖及び/又はリン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウム、若しくはリン酸水素カルシウム)が例として挙げられる。

【0082】
乳化剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが例として挙げられる。

【0083】
流動添加調節剤及び滑沢剤としては、ケイ酸塩、タルク、ステアリン酸塩又はポリエチレングリコールが例として挙げられる。

【0084】
このような担体は、主として剤形形成を容易にし、また剤形及び薬剤効果を維持する他、有効成分である抑制用核酸が生体内の核酸分解酵素による分解を受け難くするために用いられるものであり、必要に応じて適宜使用すればよい。上記の添加剤の他、必要であれば矯味矯臭剤、可溶化剤、懸濁剤、希釈剤、界面活性剤、安定剤、吸収促進剤、増量剤、付湿剤、保湿剤、吸着剤、崩壊抑制剤、コーティング剤、着色剤、保存剤、抗酸化剤、香料、風味剤、甘味剤、緩衝剤等を含むこともできる。

【0085】
(4)他の有効成分
本発明の医薬組成物は、有効成分である本発明の阻害剤の薬理効果を失わない範囲において、他の有効成分を包含する複合製剤であってもよい。他の有効成分は、前記実施形態1の抑制用核酸とは異なる薬理作用を有する薬剤であってもよい。例えば、抗体医薬等が挙げられる。

【0086】
2-2-2.剤形
本実施形態の医薬組成物の剤形は、有効成分である本発明の阻害剤又は他の付加的な有効成分を不活化させない形態であって、投与後、生体内でその薬理効果を発揮し得る形態であれば特に限定しない。一般に、天然型核酸は、生体内でヌクレアーゼなどの分解酵素による影響を受けやすいことから、本発明の医薬組成物を投与する場合には生体内で有効成分である本発明の阻害剤が分解され難い剤形が好ましい。例えば、液体、固体又は半固体のいずれであってもよい。具体的な剤形としては、例えば、注射剤、懸濁剤、乳剤、点眼剤、点鼻剤、クリーム剤、軟膏剤、硬膏剤、シップ剤及び座剤等の非経口剤形又は液剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、舌下剤、トローチ剤等の経口剤形が挙げられる。好ましい剤形は、注射剤である。

【0087】
また、本実施形態の医薬組成物をナノ粒子(例えば、Davis ME, et al.,Nature, 2010, 464:1067-1070に記載の標的ナノ粒子伝達システムを含む)、リポソーム(例えば、膜透過ペプチド結合リポソーム、SNALPsを含む)、コレステロール結合体の形態に調製してもよい。Castanotto D. & Rossi JJ., Nature,2009, 457, 426-433に記載のRNAi伝達システムを利用することもできる。

【0088】
2-3.医薬組成物の製造
本発明の医薬組成物の製造方法については、当業者に公知の製剤化方法を応用すればよい。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Merck Publishing Co., Easton, Pa.)に記載された方法を参照することができる。

【0089】
2-4.投与方法
本実施形態の医薬組成物は、疾患の治療のために有効成分である第1実施形態の本発明の阻害剤を製薬上有効な量で生体に投与することができる。投与する対象となる生体は、原則としてその標的となる抑制用核酸を有する脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。

【0090】
本発明の医薬組成物の投与方法は、全身投与又は局所的投与のいずれであってもよい。標的となる抑制用核酸の存在箇所に応じて適宜選択することができる。抑制用核酸が局在する場合には、注射などによりその局在箇所及びその周辺に直接投与する局所的投与が好適である。一方、抑制用核酸を静脈注射等により全身投与した場合には、血流を介して抑制用核酸が全身に行き渡っている可能性があることから、本発明の医薬組成物も注射等による全身投与が好ましい。

【0091】
本発明の医薬組成物の具体的な投与方法としては、有効成分である本発明の阻害剤が失活しないあらゆる方法で投与することができる。例えば、非経口(例えば、注射、エアロゾル、塗布、点眼、点鼻)又は経口が挙げられる。前述した理由や侵襲性が比較的低いことから、注射による投与は、特に好ましい。

【0092】
注射による投与の場合、注入部位は、特に限定しない。例えば、静脈内、動脈内、肝臓内、筋肉内、関節内、骨髄内、髄腔内、心室内、経皮、皮下、皮内、腹腔内、鼻腔内、腸内又は舌下等が挙げられる。好ましくは静脈内注射又は動脈内注射等の血管内への注射である。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0094】
<本発明のmiR-16活性抑制用核酸阻害剤の調製とその活性阻害効果の検証>
(目的)
HEK293T細胞(ヒト胎児腎細胞)の内在性miRNAであるmir-16を標的RNAi分子とするmir-16活性抑制用核酸に対して活性阻害効果を有するmiR-16活性抑制用核酸阻害剤について検証した。
【実施例】
【0095】
(方法)
mir-16活性抑制用核酸に対する阻害効果は、mir-16によって蛍光タンパク質の翻訳が阻害される系に対して、mir-16活性抑制用核酸を添加したときに、mir-16活性の抑制によって増加した蛍光タンパク質の発現が、miR-16活性抑制用核酸阻害剤の添加によって再び抑制されるか否かを発光タンパク質の発光強度によって算出した。以下、本実施例の具体的な実施方法について説明をする。
【実施例】
【0096】
1.mir-16活性抑制用核酸及びmiR-16活性抑制用核酸阻害剤の調製
本実施例で用いたmir-16活性抑制用核酸及びmir-16活性抑制用核酸阻害剤の分子名、その構造及び塩基配列を図4に示す。各抑制用核酸を構成するDNAからなる核酸鎖は、ファスマック社に委託して化学合成によって調製した。なお、核酸は修飾していない。合成後のDNAは、D-PBS(-)(0.2g/L KCl、8g/L NaCl、0.2g/L KH2PO4、1.15g/L Na2HPO4)に溶解した。1本の核酸鎖で構成される抑制用核酸については前記溶解後に、また2本の核酸鎖で構成されるコントロールとしてのmir-302cd活性抑制用核酸については、抑制用核酸の構成に必要な各核酸鎖を組み合わせて混合・溶解後に、それぞれ90℃に加熱して、徐々に温度を下げて核酸鎖間又は核酸鎖内でアニーリングさせ、各抑制用核酸を調製した。
【実施例】
【0097】
2.活性抑制効果の測定系の調製
本実施例で用いたHEK293T-16t株は、HEK293T細胞にpTK-Gluc-OriP-3(miR16)とpEB-Cluc-KXを同時に導入して作製したGaucia-luciferaseとCypridina-luciferaseの恒常発現株である。pTK-Gluc-OriP-3(miR16)はGaucia-luciferaseを恒常的に発現できる発現ベクターであり、pEB-Cluc-KXはCypridina-luciferaseを恒常的に発現できる発現ベクターである。
【実施例】
【0098】
pTK-Gluc-OriP-3(miR16)の調製は、以下の通りに行った。まず、pEBMulti-Hyg(Wako)のOriP配列を配列番号7で示すフォワードプライマーと配列番号8で示すリバースプライマーを用いてPCRによって増幅した後、BamHIで切断して得られた断片をpTK-Gluc(New England Biolabs;NEB)の3’-非翻訳領域に相当するBglIIサイトに挿入した(pTK-Gluc-OriP)。続いて、pTK-Gluc-OriPのMCSのXhoI/XbaIサイトに、XhoI/EcoRV/BmgI/SwaI/XbaIサイトが並ぶようにした改変MCSを挿入した。この改変MCS内のEcoRVサイトにmiR-16の標的配列(miR-16t;miR-16-Target)が3回繰り返された配列(配列番号9)を組み込んでpTK-Gluc-OriP-3(miR16)を調製した。したがって、pTK-Gluc-OriP-3(miR16)を導入した細胞内ではGaucia-luciferase遺伝子の発現と共にmiR-16tもその転写物の一部として発現する。ここで、miR-16tは、内在性のmiR-16によりRNAiの標的となるため、miR-16によって同時にGaucia-luciferaseも翻訳が著しく抑制されてしまう。その結果、Gaucia-luciferaseは極めて微弱な発光しか検出できなくなる。
【実施例】
【0099】
一方、pEB-Cluc-KXの調製は、以下の通りに行った。まず、pCMV-Cluc2(NEB)のCluc遺伝子を配列番号10で示すフォワードプライマーと配列番号11で示すリバースプライマーを用いてPCRによって増幅した後、KpnI/XhoIで切断して得られた断片を、pEBMulti-Hyg(Wako)のMCSのKpnI/XhoIサイトに導入して調製した。pEB-Cluc-KXには、miR-16の標的配列は挿入されていない。したがって、pEB-Cluc-KXを導入した細胞内ではCypridina-luciferaseはmiR-16の抑制を受けることなく発現する。また、Gaucia-luciferaseとCypridina-luciferaseは、いずれも分泌性のルシフェラーゼのため、培養上清を回収することでルシフェラーゼアッセイが可能となる。
【実施例】
【0100】
3.核酸導入方法及び蛍光測定方法
96ウェルプレートにHEK293T-16t細胞を7,000細胞/ウェルとなるように播種し、DMEM(Wako)を用いて5%CO2下で37℃にて培養した。24時間培養後、培養上清を回収すると共に、図3及び4に記載のmiR-16抑制用核酸sp-miR16-MBLを25nMでLipofectamineTMLTX(life technologies)を用いて細胞にトランスフェクションした(第1トランスフェクション)。回収した培養上清に対してルシフェラーゼアッセイを行った。ルシフェラーゼの発光強度は、Gaucia-luciferase (Gluc)とCypridina-luciferase(Cluc)のそれぞれの発光をプレートリーダーFluoroskanAscent(ThermoScientific)で測定し、Cypridina-luciferaseで標準化したGaucia-luciferaseの値(Gluc/Cluc)によって表した。ルシフェラーゼの蛍光測定にはいずれもNEBの測定キットを使用した。具体的には、Gaucia-luciferaseの活性測定には、BioLuxTMGaussia Luciferase Flex Assay Kit (NEB)を用いた。Cypridina-luciferaseの活性測定には、BioLuxTM Cypridina Luciferase Assay Kit(NEB)を用いた。第1トランスフェクションから6時間後にDMEMで培地交換を行い、その後、18時間後に培養上清を回収すると共に、miR-16活性抑制用核酸に対する本発明の阻害剤αsp-miR16又はαsp-miR16-plusを25nMでLipofectamineTM LTX life technologies)を用いてトランスフェクションした(第2トランスフェクション)。回収した培養上清に対して、上記と同様の方法で再びルシフェラーゼアッセイを行った。第2トランスフェクションから6時間後にDMEM培地で培地交換を行い、さらに、その18時間後に培養上清を回収し、その培養上清に対して上述の方法でルシフェラーゼアッセイを行った。
【実施例】
【0101】
(結果)
図5に結果を示す。この図が示すように、本発明の阻害剤の構成を有するαsp-miR16及びαsp-miR16-plusは、いずれも標的である抑制用核酸sp-miR16-MBLを阻害する効果を有することが立証された。また、抑制用核酸sp-miR16-MBLの阻害によってGaucia-luciferaseの発現を抑制していたmiR16の活性が回復することも明らかとなった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4