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明細書 :イオン捕捉シート、イオン捕捉モジュールおよびクリーンエア供給装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-086047 (P2013-086047A)
公開日 平成25年5月13日(2013.5.13)
発明の名称または考案の名称 イオン捕捉シート、イオン捕捉モジュールおよびクリーンエア供給装置
国際特許分類 B01J  20/28        (2006.01)
B01J  20/20        (2006.01)
B01D  53/04        (2006.01)
FI B01J 20/28 Z
B01J 20/20 B
B01D 53/04 A
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2011-230528 (P2011-230528)
出願日 平成23年10月20日(2011.10.20)
発明者または考案者 【氏名】和田 元
【氏名】田埜 芳浩
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
【識別番号】502222739
【氏名又は名称】株式会社シックスエレメント
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
審査請求 未請求
テーマコード 4D012
4G066
Fターム 4D012BA03
4D012CA10
4D012CB03
4D012CB14
4D012CG01
4D012CG02
4G066AA04B
4G066AC07A
4G066AC28C
4G066BA03
4G066BA38
4G066CA11
4G066DA03
要約 【課題】安価な材料を用いて空気中のイオン物質を捕捉できるシートを提供する。
【解決手段】イオン捕捉シート1は、導電性の粉粒体12を絶縁体11中に分散させたもので、その一部が絶縁体11の表面に露出している。イオン捕捉シート1を正イオンまたは負イオンのいずれかのイオン物質が支配的に存在する空気中に置くと、イオン物質が絶縁体11の表面に露出した粉粒体12に捕捉される。その結果、シートの表面に電界が形成され、空気中を飛散するイオン物質の移動方向を規制するようになる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
導電性の粉粒体を絶縁体中に分散させ、その一部が前記絶縁体の表面に露出したシートであって、
正イオンまたは負イオンのいずれかのイオン物質が支配的に存在する空気中において、前記イオン物質が前記絶縁体の表面に露出した粉粒体に捕捉されて、その表面に電界を形成することを特徴とするイオン捕捉シート。
【請求項2】
前記粉粒体として、竹炭を破砕して微塵にしたものを用いることを特徴とする、請求項1に記載のイオン捕捉シート。
【請求項3】
前記絶縁体としてシリコンゴムを用いることを特徴とする、請求項1または2に記載のイオン捕捉シート。
【請求項4】
請求項1に記載のイオン捕捉シートと、
前記イオン捕捉シートを収容する空洞部を有するケースと、を備え、
前記ケースの外面には、前記空洞部と外気とを結ぶ複数の孔が形成され、
前記イオン捕捉シートは、前記ケースとの間に隙間を有する状態で前記ケースに支持されていることを特徴とするイオン捕捉モジュール。
【請求項5】
前記ケースは熱硬化性樹脂で作製されたものであることを特徴とする、請求項4に記載のイオン捕捉モジュール。
【請求項6】
円筒状の支持体と、
円筒状に成形され、その外周面が前記支持体の内周面に接するように配された、請求項1に記載のイオン捕捉シートと、
前記支持体の内周面に、前記イオン捕捉シートに接し、かつ円筒の軸と直交する方向に配された導電性の支持リングと、
前記支持リングの内周側に張られた導電性のメッシュと、
前記支持体の中空部に空気の流れを形成するファンと、を備え、
前記支持リングおよびメッシュは接地されていることを特徴とするクリーンエア供給装置。
【請求項7】
前記イオン捕捉シートは軸方向に複数に分割され、それぞれの間に前記支持リングが配置されていることを特徴とする、請求項6に記載のクリーンエア供給装置。
【請求項8】
前記支持体は導電性を有する材料で作製されていることを特徴とする、請求項6に記載のクリーンエア供給装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中のイオン物質を捕捉するイオン捕捉シート、およびこのシートを用いたイオン捕捉モジュール、更には、このシートをイオン除去手段として用いたクリーンエア供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中には、固体微粒子や揮発性物質などの気体を含む多くの汚染物質が存在する。これら汚染物質の存在は、LSI、液晶、プラズマディスプレイ等の製造において、製品の信頼性や歩留まりに大きく影響する。
【0003】
従来、これら空気中の汚染物質を捕捉し除去してクリーンなエアを供給するために、HEPA等の微粒子除去フィルタやケミカルフィルタが用いられてきた(特許文献1参照)。これらのフィルタのうち微粒子除去フィルタは、主に空気中の固体微粒子を除去するために用いられ、ケミカルフィルタは、化学汚染物質のイオンを除去するために用いられる。
【0004】
このうちケミカルフィルタは、アンモニウムイオン、カリウムイオン等の正イオンの除去、塩化物イオン、硫酸イオン等の負イオンの除去に有効であるが、保守や交換に費用がかかるため、使用はクリーンルームなどの高度の清浄度を実現する場合に限られている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2000-262893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、発明者等は、安価な材料を用いて、空気中のイオン物質を捕捉もしくは除去する手段について鋭意、研究を重ねてきた。その過程で発明者等は、絶縁体中に竹炭の粉粒体を分散させたシートを、正イオンまたは負イオンのいずれかが支配的に存在する雰囲気中に放置すると、シートの表面に露出した粉粒体にイオン物質が吸着することを見出した。
【0007】
本発明は上述の現象を有効に利用し、安価な材料を用いて空気中のイオン物質を捕捉できるシート、ならびにこのシートを用いたイオン捕捉モジュールおよびクリーンエア供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明にかかるイオン捕捉シートは、導電性の粉粒体を絶縁体中に分散させ、その一部が前記絶縁体の表面に露出したシートであって、
正イオンまたは負イオンのいずれかのイオン物質が支配的に存在する空気中において、前記イオン物質が前記絶縁体の表面に露出した粉粒体に捕捉されて、その表面に電界を形成することを特徴とする。
【0009】
ここで、前記粉粒体として、竹炭を破砕して微塵にしたものを用いることが好ましい。同様に、前記絶縁体としてシリコンゴムを用いることが好ましい。
【0010】
また本発明にかかるイオン捕捉モジュールは、前記イオン捕捉シートと、そのイオン捕捉シートを収容する空洞部を有するケースと、を備え、
前記ケースの外面には、前記空洞部と外気とを結ぶ複数の孔が形成され、
前記イオン捕捉シートは、前記ケースとの間に隙間を有する状態で前記ケースに支持されていることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記ケースは熱硬化性樹脂で作製されたものであることが好ましい。
【0012】
また本発明にかかるクリーンエア供給装置は、
円筒状の支持体と、
円筒状に成形され、その外周面が前記支持体の内周面に接するように配された、前記イオン捕捉シートと、
前記支持体の内周面に、前記イオン捕捉シートに接し、かつ円筒の軸と直交する方向に配された導電性の支持リングと、
前記支持リングの内周側に張られた導電性のメッシュと、
前記支持体の中空部に空気の流れを形成するファンと、を備え、
前記支持リングおよびメッシュは接地されていることを特徴とする。
【0013】
ここで、前記イオン捕捉シートは軸方向に複数に分割され、それぞれの間に前記支持リングが配置されていることが好ましい。また前記支持体は導電性を有する材料で作製されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、空気中のイオンを捕捉するシートを極めて安価な材料で実現できる。またこのシートは、ケミカルフィルタと異なり、基本的に交換が不要であるため、それを用いたイオン捕捉モジュールやクリーンエア供給装置を安価に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるイオン捕捉シートの構成と機能を説明する図である。
【図2】イオン捕捉シートにより空気中に存在するイオン物質の移動方向が規制される効果を確認するための実験に用いた質量分析装置の概略の構成を示す図である。
【図3】図2の質量分析装置の測定結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態2にかかるイオン捕捉モジュールの構成を示す図である。
【図5】図4のイオン捕捉モジュールを装着したエアクリーナの断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3にかかるクリーンエア供給装置の基本的な構成を示す断面図である。
【図7】図6のクリーンエア供給装置の一部を拡大して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態にかかるイオン捕捉シート、イオン捕捉モジュールおよびクリーンエア供給装置について、図面を参照して説明する。

【0017】
(実施の形態1)
<イオン捕捉シートの構成と機能>
図1を参照して、本発明の実施の形態1にかかるイオン捕捉シートの構成と機能について説明する。図1(a)に断面を示すように、イオン捕捉シート1は、絶縁体であるシリコンゴム11に、竹炭を破砕した粉粒体12を分散させ、それをシート状に形成したものである。粉粒体12はシリコンゴム11にほぼ均等に分散した状態で存在しており、一部の粉粒体12は、シリコンゴム11の表面に露出している。なお、図では粉粒体12の存在を分かりやすくするために、シリコンゴム11の厚みに対して粉粒体12の大きさを誇張して示している。

【0018】
前述したように、空気中には、イオン性の汚染物質が、ガス、ミストまたは微粒子として存在している。そして通常の状態では、正イオンまたは負イオンのどちらかの極性のイオン物質がより多く存在している。たとえば負イオンに比べて正イオンが支配的に存在している。

【0019】
正イオンが支配的に存在する空気中にイオン捕捉シート1を置くと、図1(a)に示すように、空気中を飛散する正イオン(図では+で表示)が、イオン捕捉シート1の表面に露出した粉粒体12に接触する。竹炭の粉粒体12は導電性を有することから、正イオンが表面に接触すると、静電誘導によって粉粒体12の表面にマイナスの電荷を有する電子が集まり、正イオンはマイナスの電荷に引き付けられて粉粒体12の表面に付着する。

【0020】
イオン捕捉シート1の表面には、露出した粉粒体12が高い密度で存在することから、粉粒体12の表面への正イオンの付着が進んで、空気中に存在する正イオンを捕捉し続ける。正イオンの捕捉により粉粒体12に局部的な強電界が生じ、結果として、図1(b)に破線の矢印で示すように、イオン捕捉シート1の表面に外へ向かう電界が形成される。

【0021】
この電界は、正イオンがイオン捕捉シート1に近づくのを阻止するように作用するため、その後、空気中の正イオンはイオン捕捉シート1の表面を避けるように移動する。従って、粉粒体12の表面への正イオンの付着が進んだ後は、イオン捕捉シート1は、正イオンの移動方向を規制するようになる。

【0022】
<イオン捕捉シートの製造方法>
次に、イオン捕捉シート1の製造方法について説明する。前述したように、イオン捕捉シート1は、竹炭を粉砕した粉粒体12をシリコンゴム11に混合したものである。

【0023】
竹炭は、乾燥した真竹や孟宗竹を、400℃~1000℃、好ましくは600℃~700℃の温度で、40~50時間をかけて炭化したものを使用する。この竹炭を細かく砕いて小片とした後、さらにその小片を破砕あるいは擂り潰して、粒径が5μmを下回るような大きさとする。その後、微塵にした竹炭をメッシュが5μmの篩にかけて、竹炭の粉粒体12を生成する。

【0024】
シリコンゴム11は、シリコンゴムコンパウンドに硬化剤を配合し、常温硬化させて生成する。もしくはシリコンゴムコンパウンドに加硫剤を配合し、加熱および加圧して硬化させて生成する。

【0025】
竹炭の粉粒体をシリコンゴムコンパウンドに均等に混合した後、これに硬化剤を配合し、常温で硬化させる。本実施の形態では、竹炭の粉粒体50gをシリコンゴムコンパウンド10kgに混合して攪拌した。生成された竹炭の粉粒体とシリコンゴムの混合物はゴム状弾性を有する。次に、この混合物をシート状に加工してイオン捕捉シートを作製する。

【0026】
このようにして作製されたイオン捕捉シート1は、図1に示すように、シリコンゴム11が竹炭の粉粒体12をほぼ均等に分散した状態で保持される。したがって、竹炭の粉粒体12はシリコンゴム11の内部に位置するものもあれば、シリコンゴム11の表面に露出して位置するものもある。

【0027】
シートの材料として用いる竹炭およびシリコンゴムは、共に安価な材料であり、竹炭の粉粒体の作製も既存の装置を用いて実現できるため、イオン捕捉シートを極めて安価に実現できる。

【0028】
なお、本実施の形態では、イオン捕捉シート1のベースとなる絶縁体にシリコンゴムを用い、またこれに混入する粉粒体として竹炭を破砕したものを用いたが、これらに限定されない。ベースには絶縁性と柔軟性を備えた他の物質を使用することができ、また粉粒体には、木炭を破砕した導電性を有する粉末を用いてもよい。

【0029】
<イオン捕捉シートによる水蒸気の移動規制実験>
次に、本実施の形態にかかるイオン捕捉シート1により、空気中に存在するイオン物質の移動方向が規制される効果を確認するための実験を行ったので、その内容を説明する。

【0030】
具体的には、図2に示す質量分析器2のオリフィス22の近くにイオン捕捉シート1を置いたときと置かないときで、質量分析装置2で測定する水蒸気の量に差が生じることを確認したものである。この差は、イオン捕捉シート1に捕捉された正イオンにより生じた電界によって、水蒸気の移動方向が偏向されるために生じるものと考えられる。

【0031】
一般に、大気の組成は、窒素78%、酸素21%、アルゴン0.9%、二酸化炭素0.04%、水(水蒸気)1%といわれている。これらの成分のうち、水蒸気の水分子は正または負イオンのいずれかの状態で存在する割合が高い。質量分析装置2のオリフィス22の近くにイオン捕捉シート1を置くと、前述したイオンの捕捉効果によりイオン捕捉シート1の表面に電界が生じ、例えば正イオンである水蒸気をシートから遠ざける方向に作用する。その結果、オリフィス22から吸入される水蒸気の量が減少するので、この水蒸気の量の変化を四重極質量分析計で測定する。

【0032】
図2に、実験に用いた質量分析装置2の概略の構成を示す。質量分析装置2は全体が真空容器21(図では一部のみ表示)内に収容されており、その前部に空気導入用のオリフィス22が設けられている。真空容器21の内部には、スキマー23、電離部24、反射板25および四重極質量分析計26が収容されている。

【0033】
質量分析装置2の原理を簡単に説明する。オリフィス22とスキマー23の組み合わせによって、吸入された大気から分子のジェット流を生成し、それを電離部24に導入してイオン状態にした後、四重極質量分析計26により成分毎に分子の質量を測定する。図2の構成では、Arなどの吸着性の少ないガスに対する感度を向上するため、電離部24の後方に、分子を反射させる凹面鏡25を配して電離部24での分子密度を増加させる構造を採用している。

【0034】
オリフィス22の手前部分は大気圧であり、スキマー23の下流側に設けられた電離部24の圧力は1億分の1気圧程度である。このような状態では空気の流れがオリフィス22の下流で定常衝撃波を形成し、スキマー23を通過した分子は空間を直線的に運動して、他の分子と衝突するまでの間に10m程度進むことになる。この間、空気中の分子はゴルフボールのように空間中で反射を繰り返す。

【0035】
電離部24には高速の電子が閉じ込められており、大気側から導入された分子を電離してイオン化する。このうちの正イオンを四重極質量分析計26に取り込んで質量分析を行う。

【0036】
図3に質量分析装置2で測定した結果を示す。図中、横軸は時間の経過を示し、縦軸は水の信号を窒素の信号で割って規格化した値aを示す。図には比較のため、二酸化炭素の信号を窒素の信号で規格化した値bも併せて示している。

【0037】
時刻T1において、オリフィス22から約3cm手前の位置に水を含んだスポンジを置くと、水の信号aは0.1%のオーダーで増加した。次に、時刻T2において、イオン補足シート1をオリフィス22に近接して置くと(図2に矢印で表示)、1分程度のスケールで水の信号aは減少に転じた。その幅は0.3~0.4%であった。次に、時刻T3において、イオン補足シート1をオリフィス22から遠ざけると(図2に矢印で表示)、1分程度のスケールで水分の信号aは増加に転じた。

【0038】
一方、図3に示すように、二酸化炭素の信号bはイオン補足シート1の近接や離反によりほとんど影響を受けない。これらのことから、水の信号aの変化は、イオン補足シート1の表面に形成された電界によって、正イオンである水蒸気の分子の移動方向が偏向して、オリフィス22から吸入される水蒸気の量が減ったためと考えられる。上述の実験の結果、イオン補足シート1によりイオン物質の移動が規制されることを確認できた。

【0039】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で説明したイオン補足シート1をモジュール化したイオン捕捉モジュールの構成と用途について説明する。

【0040】
図4にイオン捕捉モジュール3の構成を示す。図4(a)はイオン捕捉モジュール3の正面図、図4(b)は、図4(a)のイオン捕捉モジュール3をA-A線で切断した断面図である。

【0041】
図4(b)に示すように、イオン捕捉モジュール3は、内部が空洞になった直方体状のケース31と、ケース内に収容された長方形のイオン補足シート1とで構成されている。

【0042】
ケース31は、内部に収容されたイオン補足シート1を機械的な衝撃から保護するもので、熱硬化性の樹脂で作製されている。ケース31は表側(31a)と裏側(31b)とに分割されており、それぞれの周囲には鍔32が形成され、その四隅に固定用のボルト33を通す孔が設けられている。ボルト33とナット34を締結することにより、ケース31は一体となる。

【0043】
ケース31の表側(31a)と裏側(31b)には複数の孔35が形成され、この孔を通して空気が空洞部36に自由に出入りできるように構成されている。空洞部36には、イオン補足シート1がケース31と隙間を設けた状態で収容されており、その上下はクリップ37を介してケース31に固定されている。

【0044】
空気中を移動するイオン物質は、ケース31の表側(31a)と裏側(31b)に設けられた孔35、およびケース31とイオン補足シート1との間に形成された隙間を介して、イオン補足シート1と接することができるため、実施の形態1で説明したイオンの補足効果が発揮される。

【0045】
図5を参照して、イオン捕捉モジュール3を内燃機関の燃焼補助装置として用いる場合について説明する。イオン捕捉モジュール3は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関のエアクリーナの内部に装着して用いられる。

【0046】
図5に、イオン捕捉モジュール3を装着したエアクリーナ4の断面を示す。クリーナ本体41に設けられた空洞部には、空気中の塵埃等を取り除くためのエアフィルタ42とイオン捕捉モジュール3が収容されている。イオン捕捉モジュール3は、図示しない専用の金具を用いてエアフィルタ42またはクリーナ本体41に装着される。クリーナ本体41の前方には空気の吸入口43が設けられ、後方には空気の吹出口44が設けられている。

【0047】
矢印で示すように、吸入口42から入った空気は、イオン捕捉モジュール3でイオン物質が捕捉され、更にエアフィルタ43で塵埃等が取り除かれて、清浄な空気になった後、吹出口44から排出され、エンジン等の内燃機関に供給される。結果として、内燃機関に吸入される混合気は、燃焼の障害となるイオン物質や微粒子等が少なくなり、燃焼効率が向上する。

【0048】
表1に、ディーゼルエンジンのエアクリーナ4にイオン捕捉モジュール3を装着する前と装着した後のスモークの測定結果を示す。スモークはエンジンから排出されるガス中に含まれる黒煙とSOF成分のことであり、排ガス中に光を通過させて、その透過率からスモークの濃度を測定する。本実施の形態では、ヤナコ製のオパシメータ(品番ALTAS-5100DN)を用いて測定を行った。

【0049】
表1には、パワーショベル、サイドリフターおよびトラクターヘッドの各ディーゼルエンジンについて、エアクリーナ4にイオン捕捉モジュール3を装着する前と装着した後の光吸収係数の測定値の平均を示す。光吸収係数の値は、3回の測定結果の平均値である。なお、光吸収係数の単位m-1は1mあたりの光汚染度を示している。

【0050】
【表1】
JP2013086047A_000003t.gif

【0051】
表から明らかなように、エアクリーナ4にイオン捕捉モジュール3を装着することにより、いずれのディーゼルエンジンも光吸収係数が大幅に低下している。これは、燃料を気化させて燃焼する際、吸気中のイオン物質が減少することで、混合気中に含まれる凝縮核が減り、燃焼の粒子が小さいまま燃焼するためと考えられる。その結果、燃料がよりよく燃焼して排ガス中の未燃物質が減少し、燃焼効率が上がって燃費が向上する。

【0052】
なお、イオン捕捉モジュール3のケース31は、内燃機関用のエアクリーナ4内で使用されることを考慮し、シリコンゴム11と同様に200℃程度の耐熱温度を有する熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。

【0053】
また、イオン捕捉モジュール3の大きさや数は、内燃機関の排気量に応じて変える必要がある。具体的にはエアクリーナ4の大きさに応じてモジュールの大きさを変えるか、複数個のイオン捕捉モジュール3をエアクリーナ4の空洞部に装着するようにする。

【0054】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で説明したイオン補足シート1を主要な構成要素とするクリーンエア供給装置について説明する。

【0055】
図6に、本実施の形態にかかるクリーンエア供給装置5の基本的な構成の断面を示す。クリーンエア供給装置5は、円筒状に成形されたイオン補足シート1、内周面にイオン補足シート1が装着された円筒状の支持体51、支持体51の内周面に所定の間隔で取り付けられた支持リング52、支持リング52に支持された円盤状の導電性メッシュ53および支持体51の一方の端部に取り付けられたファン54で構成されている。支持リング52は、前後がイオン補足シート1に接し、かつ円筒の軸と直交する方向に配置されている。

【0056】
クリーンエア供給装置5は、モータが内蔵されたファン54を駆動することにより、支持体51の中空部に矢印で示す空気流を形成する。空気流に含まれるイオン物質は導電性メッシュ53で捕捉され、もしくは電荷が中和されることにより、イオン物質の少ないクリーンな空気(エア)が生成される。

【0057】
図6の一部を拡大して示した図7を参照して、導電性メッシュ53によって空気中のイオン物質を捕捉し、もしくは電荷を中和する原理を説明する。

【0058】
前述したように、正イオンが支配的な雰囲気の空気中にイオン捕捉シート1を置くと、シート1の表面に露出した粉粒体12に正イオンが捕捉されてシート1の表面に電界が形成される。金属で作製された円筒状の支持体51と支持リング52は導電性を有し、かつ支持体51が接地されているため、イオン捕捉シート1の表面に形成された電界によって、支持リング52の表面と導電性メッシュ53にマイナスの電荷をもつ電子(図では-で表示)が集まる。

【0059】
支持体51の中空部を流れる空気に含まれる正イオンは、導電性メッシュ53を通過する際にマイナスの電荷によって捕捉され、もしくは電子からマイナスの電荷をもらって中和した後に、メッシュ53を通過して外部に放出される。

【0060】
このようにして、空気中に含まれるイオン物質(正イオン)は導電性メッシュ53で捕捉され、もしくは電荷が中和されることにより、イオン物質の少ないクリーンな空気(エア)が外部に放出される。

【0061】
なお、クリーンエア供給装置5の構成は図6に示したものに限定されない。ファン54は、支持体51の中空部の上流側もしくは流路の途中に設置してもよい。また支持体51は、上流側から下流側に向かって直径が小さくなる円錐台状の断面を有する円筒であってもよい。このような構成とすれば、円筒内の気圧が高まってシート1へのイオン物質の捕捉が促進される。

【0062】
更に支持体51は、機械的な強度があれば、必ずしも導電性を有するものである必要はなく、樹脂を成形したものであってもよい。ただし、この場合は、支持リング52を直接接地する必要がある。
【符号の説明】
【0063】
1 イオン捕捉シート
2 質量分析装置
3 イオン捕捉モジュール
4 エアクリーナ
5 クリーンエア供給装置
11 シリコンゴム
12 粉粒体
21 真空容器
22 オリフィス
23 スキマー
24 電離部
25 反射板
26 四重極質量分析計
31、31a、31b ケース
32 鍔
35 孔
36 空洞部
37 クリップ
41 クリーナ本体
42 エアフィルタ
43 吸込口
44 吹出口
51 支持体
52 支持リング
53 メッシュ
54 ファン
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6