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明細書 :不斉反応触媒及びそれを用いた不斉合成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5392614号 (P5392614)
登録日 平成25年10月25日(2013.10.25)
発行日 平成26年1月22日(2014.1.22)
発明の名称または考案の名称 不斉反応触媒及びそれを用いた不斉合成方法
国際特許分類 B01J  31/04        (2006.01)
C07C  49/603       (2006.01)
C07C  45/74        (2006.01)
C07C  49/753       (2006.01)
C07C  49/683       (2006.01)
C07C  49/258       (2006.01)
C07C  45/69        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 31/04 Z
C07C 49/603
C07C 45/74
C07C 49/753 C
C07C 49/683
C07C 49/258
C07C 45/69
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2009-240020 (P2009-240020)
出願日 平成21年10月19日(2009.10.19)
審査請求日 平成24年9月6日(2012.9.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
発明者または考案者 【氏名】小槻 日吉三
【氏名】猪子石 洋吾
個別代理人の代理人 【識別番号】100088306、【弁理士】、【氏名又は名称】小宮 良雄
【識別番号】100126343、【弁理士】、【氏名又は名称】大西 浩之
特許請求の範囲 【請求項1】
光学活性脂環式ジアミン誘導体と、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれるカルボン酸誘導体とを含有するものであって、電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物とそのβ位に付加する活性メチレン基含有化合物又は活性メチン基含有化合物との不斉反応を誘起することを特徴とする不斉反応触媒。
【請求項2】
前記光学活性脂環式ジアミン誘導体が、trans-1,2-ジアミノシクロアルカンであり、前記カルボン酸誘導体が、鎖状若しくは環状で脂肪族モノカルボン酸若しくは脂肪族ポリカルボン酸からなる前記脂肪族カルボン酸であり、又は炭化水素芳香環含有でモノカルボン酸若しくはポリカルボン酸からなる前記芳香族カルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載の不斉反応触媒。
【請求項3】
前記光学活性脂環式ジアミン誘導体と前記カルボン酸誘導体とが、モル比で、1:3~2:1であることを特徴とする請求項1に記載の不斉反応触媒。
【請求項4】
光学活性脂環式ジアミン誘導体と、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれるカルボン酸誘導体とを含有する触媒の存在下で、電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物のβ位に、活性メチレン基含有化合物又は活性メチン基含有化合物の活性基を、マイケル反応させて、そこに不斉誘導して、光学活性マイケル反応付加化合物にすることを特徴とする不斉合成方法。
【請求項5】
前記電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物がα'位-活性水素基含有ケトン化合物であり、前記活性メチレン基含有化合物又は前記活性メチン基含有化合物がカルボニル化合物であり、前記付加化合物を、前記ケトン化合物に由来のα'位-活性水素基と前記カルボニル化合物のカルボニル基との分子内アルドール反応により、環化させて、γ位-不斉シクロヘキセノン化合物にすることを特徴とする請求項4に記載の不斉合成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、α,β位-不飽和化合物のβ位にマイケル反応して新たに形成されるγ位を不斉誘起する不斉反応触媒、及びそれを用いた不斉合成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
活性メチレン基又は活性メチン基含有化合物である1,3-シクロアルカンジオン類とメチルビニルケトン類とのマイケル(Michael)反応、それに引き続く分子内アルドール環化反応を行うような所謂ロビンソン(Robinson)環化反応は、しばしばステロイドやテルペン類の基本骨格合成に利用されている。
【0003】
ロビンソン環化反応の中でも、光学活性プロリン存在下で光学活性の2環性-α,β-不飽和エノン化合物を不斉合成するという不斉ロビンソン環化反応(Hajos-Parrish-Eder-Sauer-Wiechert反応)は、下記化学反応式(1)に示す通り、高い光学収率で進行することが知られている。
【0004】
【化1】
JP0005392614B2_000002t.gif

【0005】
この化学反応式(1)の不斉ロビンソン環化反応は、反応遷移状態において、カルボニル基へ結合している不斉反応触媒である光学活性プロリンが、分子内アルドール環化反応する際に形成される立体障害のある2環性縮合環の橋頭炭素原子を不斉制御する結果、比較的容易に不斉誘起を起こすものである。
【0006】
一方、非特許文献1に、下記化学反応式(2)で示すように立体障害の大きな光学活性プロリン誘導体を触媒に用い、反応遷移状態で触媒と相互作用し易いβ位で、不斉誘起した単環性の不飽和エノン化合物を、高い光学収率で合成する発明が、開示されている。
【0007】
【化2】
JP0005392614B2_000003t.gif

【0008】
しかし、公知の不斉触媒を用いても、鎖状のメチルビニルケトン化合物のβ位へのマイケル反応によって、新たに形成されるγ位に不斉を誘起するのは、その化合物のβ位の立体障害が小さい所為で、極めて困難である。ましてや光学活性プロリン誘導体を触媒に用いてそのマイケル反応とアルドール反応とを行って不飽和エノン化合物のγ位炭素原子上、とりわけ単環性のシクロヘキセノン化合物のγ位炭素原子上でロビンソン環化反応を行っても、反応遷移状態でカルボニル基に相互作用する触媒までの距離が遠過ぎる所為で、γ位での不斉誘起を起こし難い。
【0009】
また、面倒な多工程を要して調製しなければならない立体障害の大きな光学活性プロリン誘導体のような複雑な構造を有する化合物を用いなくとも、安価に入手容易な低分子有機化合物を用いて、立体選択的・位置選択的に、不斉誘起でき、有毒な重金属を含まず安全であって、簡易な構造の不斉合成触媒が、求められている。
【先行技術文献】
【0010】

【非特許文献1】A.Carlone(エー.カーロン)ら、Chemical Communications (ケミカル コミュニケーションズ)、2006年、p.4928-4930
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、入手容易で安価な低分子有機化合物からなり、高い立体選択性と位置選択性とを発揮し、優れた不斉誘起能を有し、高い光学収率と反応収率とを発現でき、不斉マイケル反応やそれに引き続くアルドール環化反応に用いられるもので有機物からなる不斉反応触媒、及びそれを用いた不斉合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の不斉反応触媒は、光学活性脂環式ジアミン誘導体と、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれるカルボン酸誘導体とを含有するものであって、電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物とそのβ位に付加する活性メチレン基含有化合物又は活性メチン基含有化合物との不斉反応を誘起することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の不斉反応触媒は、請求項1に記載されたもので、前記光学活性脂環式ジアミン誘導体が、trans-1,2-ジアミノシクロアルカンであり、前記カルボン酸誘導体が、鎖状若しくは環状で脂肪族モノカルボン酸若しくは脂肪族ポリカルボン酸からなる前記脂肪族カルボン酸であり、又は炭化水素芳香環含有でモノカルボン酸若しくはポリカルボン酸からなる前記芳香族カルボン酸であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の不斉反応触媒は、請求項1に記載されたもので、前記光学活性脂環式ジアミン誘導体と前記カルボン酸誘導体とが、モル比で、1:3~2:1であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の不斉合成方法は、光学活性脂環式ジアミン誘導体と、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれるカルボン酸誘導体とを含有する触媒の存在下で、電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物のβ位に、活性メチレン基含有化合物又は活性メチン基含有化合物の活性基を、マイケル反応させて、そこに不斉誘導して、光学活性マイケル反応付加化合物にすることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の不斉合成方法は、請求項4に記載されたもので、前記電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物がα'位-活性水素基含有ケトン化合物であり、前記活性メチレン基含有化合物又は前記活性メチン基含有化合物がカルボニル化合物であり、前記付加化合物を、前記ケトン化合物に由来のα'位-活性水素基と前記カルボニル化合物のカルボニル基との分子内アルドール反応により、環化させて、γ位-不斉シクロヘキセノン化合物にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の不斉反応触媒は、安価に入手容易で簡易な構造の低分子有機化合物である光学
活性アミン誘導体とカルボン酸誘導体とを含有したもので、簡易な構造でも優れた不斉誘起能を有するものである。この不斉反応触媒は、不斉マイケル反応やそれに引き続くアルドール環化反応のようなロビンソン環化反応に用いられ、高い立体選択性と位置選択性とを発揮し、さらに高い光学収率と反応収率とを発現できるものである。
【0018】
この不斉反応触媒は、電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物のβ位に付加する活性メチレン基含有化合物又は活性メチン基含有化合物で新たに形成されるγ位で、所望の絶対配置の不斉を誘起できるものである。特に、ロビンソン環化反応に用いられる場合にはγ位-不斉シクロアルケノン化合物を、選択的に合成することができる。
【0019】
また、この不斉反応触媒は、有機化合物のみからなり重金属をはじめとする金属を含有していないので、環境に調和でき、環境汚染防止に資する。
【0020】
本発明の不斉反応触媒を用いた不斉合成方法によれば、高い立体選択性と位置選択性とを発現しつつ、高い光学収率と反応収率とで、光学活性マイケル反応付加物を、生成することができる。さらに、この不斉合成方法によれば、そのマイケル反応付加物を引き続き分子内アルドール反応させるロビンソン環化反応により、γ位に不斉誘起した一置換又は二置換の単環性シクロへキセノン化合物や、シクロヘキサンスピロシクロヘキセノン化合物のようなスピロシクロヘキセノン化合物を、高い光学収率と反応収率とで、生成することができる。
【0021】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明の不斉反応触媒の好ましい形態の一例は、光学活性脂環式ジアミン誘導体であるtrans-1,2-ジアミノシクロアルカン例えば(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサンと、カルボン酸誘導体であるtrans-1,2-シクロアルカンジカルボン酸例えば(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸とからなるというものである。

【0022】
本発明の不斉反応触媒の好ましい形態の一例は、光学活性脂環式ジアミン誘導体であるtrans-1,2-ジアミノシクロアルカン例えば(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサンと、カルボン酸誘導体であるtrans-1,2-シクロアルカンジカルボン酸例えば(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸とからなるというものである。
【0023】
本発明の不斉合成方法について、(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサン(ジアミン誘導体C)と(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸(カルボン酸誘導体D)とからなるこの不斉反応触媒存在下、基質として電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物であるアルキルアルケニルケトン例えばメチルビニルケトンと、活性メチン基含有化合物であるα置換アルキルアルデヒド例えば2-フェニルプロピオンアルデヒドとを反応させる態様を、下記化学反応式(3)を参照しながら説明する。

【0023】
本発明の不斉合成方法について、(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサン(ジアミン誘導体C)と(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸(カルボン酸誘導体D)とからなるこの不斉反応触媒存在下、基質として電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物であるアルキルアルケニルケトン例えばメチルビニルケトンと、活性メチン基含有化合物であるα置換アルキルアルデヒド例えば2-フェニルプロピオンアルデヒドとを反応させる態様を、下記化学反応式(3)を参照しながら説明する。
【0024】
【化3】
JP0005392614B2_000004t.gif

【0024】
【化3】
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【0025】
2-フェニルプロピオンアルデヒドがメチルビニルケトンに不斉マイケル反応し、次いで分子内アルドール環化反応を起こすと、光学活性な(R)-4-メチル-4-フェニル-2-シクロヘキセノンが得られる。

【0025】
2-フェニルプロピオンアルデヒドがメチルビニルケトンに不斉マイケル反応し、次いで分子内アルドール環化反応を起こすと、光学活性な(R)-4-メチル-4-フェニル-2-シクロヘキセノンが得られる。
【0026】
この反応で不斉が誘起されるメカニズムの詳細は必ずしも明らかでないが、(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサンが、基質とエナミンを形成して、その遷移状態下で立体
を制御し、マイケル反応、引き続く分子内アルドール反応を引き起こし、不斉を誘起しているものと、推察される。

【0026】
この反応で不斉が誘起されるメカニズムの詳細は必ずしも明らかでないが、(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサンが、基質とエナミンを形成して、その遷移状態下で立体
を制御し、マイケル反応、引き続く分子内アルドール反応を引き起こし、不斉を誘起しているものと、推察される。
【0027】
この不斉反応触媒は、光学活性脂環式ジアミン誘導体とカルボン酸誘導体とを含有するものであるが、それらジアミン誘導体とカルボン酸誘導体とのみからなると一層好ましい。絶対配置が逆であるエナンチオマーからなる不斉反応触媒を用いれば、絶対配置が逆の生成物が、同様に得られる。

【0027】
この不斉反応触媒は、光学活性脂環式ジアミン誘導体とカルボン酸誘導体とを含有するものであるが、それらジアミン誘導体とカルボン酸誘導体とのみからなると一層好ましい。絶対配置が逆であるエナンチオマーからなる不斉反応触媒を用いれば、絶対配置が逆の生成物が、同様に得られる。
【0028】
光学活性脂環式ジアミン誘導体として、trans-1,2-ジアミノシクロアルカン、より具体的には(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサンの他、(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン、及びそれらがアルキル置換、アルコキシ置換、ハロゲノ置換、シアノ置換、アリール置換、又はアラルキル置換された置換体が挙げられる。

【0028】
光学活性脂環式ジアミン誘導体として、trans-1,2-ジアミノシクロアルカン、より具体的には(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサンの他、(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン、及びそれらがアルキル置換、アルコキシ置換、ハロゲノ置換、シアノ置換、アリール置換、又はアラルキル置換された置換体が挙げられる。
【0029】
カルボン酸誘導体として、例えば鎖状脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸のような環状脂肪族モノカルボン酸;グルタル酸、d-,l-若しくはdl-酒石酸、又はd-,l-若しくはdl-ジアシル酒石酸のような鎖状アルキルジカルボン酸で例示される鎖状脂肪族ポリカルボン酸;(1R,2R)-若しくは(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、dl-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸又はメソ-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のような環状アルキルジカルボン酸で例示される環状脂肪族ポリカルボン酸が挙げられる。また、安息香酸のような炭化水素芳香環含有モノカルボン酸;フタル酸のようなベンゼンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸のようなビフェニルジカルボン酸で例示される炭化水素芳香環含有ポリカルボン酸が挙げられる。

【0029】
カルボン酸誘導体として、例えば鎖状脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸のような環状脂肪族モノカルボン酸;グルタル酸、d-,l-若しくはdl-酒石酸、又はd-,l-若しくはdl-ジアシル酒石酸のような鎖状アルキルジカルボン酸で例示される鎖状脂肪族ポリカルボン酸;(1R,2R)-若しくは(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、dl-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸又はメソ-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のような環状アルキルジカルボン酸で例示される環状脂肪族ポリカルボン酸が挙げられる。また、安息香酸のような炭化水素芳香環含有モノカルボン酸;フタル酸のようなベンゼンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸のようなビフェニルジカルボン酸で例示される炭化水素芳香環含有ポリカルボン酸が挙げられる。
【0030】
この不斉反応触媒は、不斉反応による目的化合物の種類やそれのγ位での所望の絶対配置に応じ、光学活性脂環式ジアミン誘導体とカルボン酸誘導体との組み合わせを、適宜選択して用いられる。

【0030】
この不斉反応触媒は、不斉反応による目的化合物の種類やそれのγ位での所望の絶対配置に応じ、光学活性脂環式ジアミン誘導体とカルボン酸誘導体との組み合わせを、適宜選択して用いられる。
【0031】
この不斉反応触媒は、この光学活性脂環式ジアミン誘導体及びカルボン酸誘導体を、好ましくは1:3~2:1のモル比で、夫々基質に対して最大で30mol%好ましくは10~30mol%として用いられ、予め混合されていてもよく、用時、調製するものであってもよい。

【0031】
この不斉反応触媒は、この光学活性脂環式ジアミン誘導体及びカルボン酸誘導体を、好ましくは1:3~2:1のモル比で、夫々基質に対して最大で30mol%好ましくは10~30mol%として用いられ、予め混合されていてもよく、用時、調製するものであってもよい。
【0032】
不斉合成反応方法として、マイケル反応に引き続く分子内アルドール反応によりロビンソン環化反応が起こった例を示したが、マイケル反応だけが起こるものであってもよい。

【0032】
不斉合成反応方法として、マイケル反応に引き続く分子内アルドール反応によりロビンソン環化反応が起こった例を示したが、マイケル反応だけが起こるものであってもよい。
【0033】
電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物として、メチルビニルケトンの例を示したが、エチルビニルケトンのような別なアルキルビニルケトン類、アクリル酸エステル類、ケイ皮酸エステル類、アクリル酸アミド類、β-ニトロスチレン類、アクリロニトリル類、アクロレイン類、ケイ皮アルデヒド類、塩化ビニル類であってもよい。これらは、アルキル基、ハロゲン基、水酸基、メルカプト基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、芳香環基のような置換基を有していてもよい。

【0033】
電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物として、メチルビニルケトンの例を示したが、エチルビニルケトンのような別なアルキルビニルケトン類、アクリル酸エステル類、ケイ皮酸エステル類、アクリル酸アミド類、β-ニトロスチレン類、アクリロニトリル類、アクロレイン類、ケイ皮アルデヒド類、塩化ビニル類であってもよい。これらは、アルキル基、ハロゲン基、水酸基、メルカプト基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、芳香環基のような置換基を有していてもよい。
【0034】
活性メチン基含有化合物として2-フェニルプロピオンアルデヒドの例を示したが、2-フェニルブチルアルデヒド、2-ビフェニルプロピオンアルデヒド、2-ナフチルプロピオンアルデヒド、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフチルアルデヒドのようなアリール基含有脂肪族アルデヒド類であってもよい。これらは、前記と同様な置換基を有していてもよい。このような活性メチン基含有化合物と電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物とのロビンソン環化反応により、γ位で不斉であって二置換の光学活性4,4-二置換シクロヘキセノン化合物や、γ位で不斉であって光学活性4,4-スピロシクロヘキセノン化合物が得られる。

【0034】
活性メチン基含有化合物として2-フェニルプロピオンアルデヒドの例を示したが、2-フェニルブチルアルデヒド、2-ビフェニルプロピオンアルデヒド、2-ナフチルプロピオンアルデヒド、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフチルアルデヒドのようなアリール基含有脂肪族アルデヒド類であってもよい。これらは、前記と同様な置換基を有していてもよい。このような活性メチン基含有化合物と電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物とのロビンソン環化反応により、γ位で不斉であって二置換の光学活性4,4-二置換シクロヘキセノン化合物や、γ位で不斉であって光学活性4,4-スピロシクロヘキセノン化合物が得られる。
【0035】
活性メチン基含有化合物に代えて、活性メチレン基含有化合物、例えば2-フェニルアセトアルデヒドのようなアリールアセトアルデヒド類を用いてもよく、これが前記と同様な置換基を有していてもよい。このような活性メチレン基含有化合物と電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物とのロビンソン環化反応により、γ位で不斉であって二置換の光学活性4-置換シクロヘキセノン化合物が得られる。

【0035】
活性メチン基含有化合物に代えて、活性メチレン基含有化合物、例えば2-フェニルアセトアルデヒドのようなアリールアセトアルデヒド類を用いてもよく、これが前記と同様な置換基を有していてもよい。このような活性メチレン基含有化合物と電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物とのロビンソン環化反応により、γ位で不斉であって二置換の光学活性4-置換シクロヘキセノン化合物が得られる。
【0036】
不斉合成反応方法は、適宜、水溶性有機溶媒や水不溶性有機溶媒や水中で、0℃~常温で行ってもよく、加熱下で行ってもよい。

【0036】
不斉合成反応方法は、適宜、水溶性有機溶媒や水不溶性有機溶媒や水中で、0℃~常温で行ってもよく、加熱下で行ってもよい。
【0037】
このような不斉反応触媒を用いた不斉合成方法により得られた不斉化合物は、生理活性物質、医薬品、化成品、ファインケミカルや、それらの中間体となるものである。

【0037】
このような不斉反応触媒を用いた不斉合成方法により得られた不斉化合物は、生理活性物質、医薬品、化成品、ファインケミカルや、それらの中間体となるものである。
【0038】
以下に、本発明を適用する不斉反応触媒を用いた不斉合成方法の実施例と、本発明を適用外の比較例とを、示す。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明を適用する不斉反応触媒を用いた不斉合成方法の実施例と、本発明を適用外の比較例とを、示す。
【0039】
(実施例1)
(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサンの33mg(0.3mmol)と(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸の52mg(0.3mmol)とを、イソプロピルアルコール(i-PrOH)の1.0mLに溶かし、そこへ2-フェニルプロピオンアルデヒドの134mg(1mmol)とメチルビニルケトンの105mg(1.5mmol)を加えた。その混合物を0℃で8時間撹拌した後、テトラヒドロフラン(THF):ジエチルエーテル(EtO):HO(1:3:3)の混合液を4.2mL加え、さらに5mol%テトラn-ブチルアンモニウムヒドロキシド(0.5mL)と0.1N-KOH水溶液(約10mL)とを加えた。反応混合物を60℃で約30分間、撹拌した後、クロロホルムで抽出を行った。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製を行い、目的生成物である(R)-4-メチル-4-フェニル-2-シクロへキセノンを無色油状物として、92mg(収率:49%)を得た(前記化学反応式(3)及び下記表1を参照)。
【0039】
(実施例1)
(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサンの33mg(0.3mmol)と(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸の52mg(0.3mmol)とを、イソプロピルアルコール(i-PrOH)の1.0mLに溶かし、そこへ2-フェニルプロピオンアルデヒドの134mg(1mmol)とメチルビニルケトンの105mg(1.5mmol)を加えた。その混合物を0℃で8時間撹拌した後、テトラヒドロフラン(THF):ジエチルエーテル(EtO):HO(1:3:3)の混合液を4.2mL加え、さらに5mol%テトラn-ブチルアンモニウムヒドロキシド(0.5mL)と0.1N-KOH水溶液(約10mL)とを加えた。反応混合物を60℃で約30分間、撹拌した後、クロロホルムで抽出を行った。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製を行い、目的生成物である(R)-4-メチル-4-フェニル-2-シクロへキセノンを無色油状物として、92mg(収率:49%)を得た(前記化学反応式(3)及び下記表1を参照)。
【0040】
この生成物について、薄層クロマトグラフィー(TLC)、比旋光度、ChiralpakAD(ダイセル化学工業株式会社製;商品名)を用いたキラル高速液体クロマトグラフィー分析(chiralHPLC)による光学純度測定、フーリエ変換赤外吸収スペクトル法(FT-IR)、H及び13C核磁気共鳴スペクトル法(NMR)の理化学分析データは、以下の通りである。
【0040】
この生成物について、薄層クロマトグラフィー(TLC)、比旋光度、ChiralpakAD(ダイセル化学工業株式会社製;商品名)を用いたキラル高速液体クロマトグラフィー分析(chiralHPLC)による光学純度測定、フーリエ変換赤外吸収スペクトル法(FT-IR)、H及び13C核磁気共鳴スペクトル法(NMR)の理化学分析データは、以下の通りである。
【0041】
TLC; Rf 0.43 (CHCl3)
[α]25D +116.1 (c 0.84, EtOH) (光学純度:96%ee)
FTIR (KBr) ν 1662, 1497, 1445, 1388cm-1.
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 1.56(3H, s), 2.14(1H, m), 2.22-2.32(2H, m),
2.40(1H, m), 6.13(1H, d, J=10.2Hz), 6.94(1H, d, J=10.2Hz), 7.23-7.35(5H, m).
13C NMR (100MHz, CDCl3) δ 27.51, 34.53, 38.01, 40.49, 126.07(×2), 126.68, 128.46, 128.53(×2), 145.16, 157.01, 199.34.
なお、ここで得られた光学活性な4-メチル-4-フェニル-2-シクロへキセノンがRの絶対配置を有することは、その比旋光度の値を文献値[(R)-体:[a]20D +122.2(EtOH)
(99.8%ee); A.I.Meyers(エー.アイ.マイヤーズ)ら、The Journal of Organic Chemistry(ザ ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー)、1986年、第51巻、p.1936-1938]と比較することにより決定した。
【0041】
TLC; Rf 0.43 (CHCl3)
[α]25D +116.1 (c 0.84, EtOH) (光学純度:96%ee)
FTIR (KBr) ν 1662, 1497, 1445, 1388cm-1.
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 1.56(3H, s), 2.14(1H, m), 2.22-2.32(2H, m),
2.40(1H, m), 6.13(1H, d, J=10.2Hz), 6.94(1H, d, J=10.2Hz), 7.23-7.35(5H, m).
13C NMR (100MHz, CDCl3) δ 27.51, 34.53, 38.01, 40.49, 126.07(×2), 126.68, 128.46, 128.53(×2), 145.16, 157.01, 199.34.
なお、ここで得られた光学活性な4-メチル-4-フェニル-2-シクロへキセノンがRの絶対配置を有することは、その比旋光度の値を文献値[(R)-体:[a]20D +122.2(EtOH)
(99.8%ee); A.I.Meyers(エー.アイ.マイヤーズ)ら、The Journal of Organic Chemistry(ザ ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー)、1986年、第51巻、p.1936-1938]と比較することにより決定した。
【0042】
この理化学分析データは、この生成物が(R)-4-メチル-4-フェニル-2-シクロへキセノンであることを支持する。
【0042】
この理化学分析データは、この生成物が(R)-4-メチル-4-フェニル-2-シクロへキセノンであることを支持する。
【0043】
(実施例2~12、及び比較例1)
実施例1の不斉反応触媒につき、表1のように、実施例1の触媒とは逆の絶対配置を有する光学活性脂環式ジアミン誘導体(ジアミン誘導体E)の量を一定としカルボン酸誘導体の種類及び量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、生成物を得た。その結果を纏めて、表1に示す。
【0043】
(実施例2~12、及び比較例1)
実施例1の不斉反応触媒につき、表1のように、実施例1の触媒とは逆の絶対配置を有する光学活性脂環式ジアミン誘導体(ジアミン誘導体E)の量を一定としカルボン酸誘導体の種類及び量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、生成物を得た。その結果を纏めて、表1に示す。
【0044】
【表1】
JP0005392614B2_000005t.gif

【0044】
【表1】
JP0005392614B2_000005t.gif

【0045】
表1から明らかな通り、不斉反応触媒は、実施例1のように、光学活性脂環式ジアミン誘導体として(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサン(ジアミン誘導体C)と、カルボン酸誘導体として(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸(カルボン酸誘導体D)とを30mol%ずつ用いたときに、96%eeという最も高い光学収率が得られ、最適であった。実施例2~9、11~12のように、光学活性脂環式ジアミン誘導体としてエナンチオマーである(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン(ジアミン誘導体E)と各種カルボン酸誘導体とを用いた場合、その触媒の量が比較的少なくても、概ね良好な光学収率を示した。しかし、実施例9~10のようにカルボン酸誘導体として酒石酸を用いたときに、それのキラリティが生成物のエナンチオ選択性に大きく影響を及ぼすことが分かった。一方、比較例1のようにカルボン酸誘導体を用いなかったときに、低い光学収率しか示さなかった。
【0045】
表1から明らかな通り、不斉反応触媒は、実施例1のように、光学活性脂環式ジアミン誘導体として(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサン(ジアミン誘導体C)と、カルボン酸誘導体として(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸(カルボン酸誘導体D)とを30mol%ずつ用いたときに、96%eeという最も高い光学収率が得られ、最適であった。実施例2~9、11~12のように、光学活性脂環式ジアミン誘導体としてエナンチオマーである(1R,2R)-1,2-ジアミノシクロヘキサン(ジアミン誘導体E)と各種カルボン酸誘導体とを用いた場合、その触媒の量が比較的少なくても、概ね良好な光学収率を示した。しかし、実施例9~10のようにカルボン酸誘導体として酒石酸を用いたときに、それのキラリティが生成物のエナンチオ選択性に大きく影響を及ぼすことが分かった。一方、比較例1のようにカルボン酸誘導体を用いなかったときに、低い光学収率しか示さなかった。
【0046】
次に、本発明の不斉反応触媒と比較するために、それの光学活性脂環式ジアミン誘導体に代えて非脂環式ジアミン誘導体を用いて、反応を行った。
【0046】
次に、本発明の不斉反応触媒と比較するために、それの光学活性脂環式ジアミン誘導体に代えて非脂環式ジアミン誘導体を用いて、反応を行った。
【0047】
(比較例2~17)
実施例1の不斉反応触媒を、表2に記載の光学活性の非脂環式ジアミン誘導体(アミンF~H)とカルボン酸との種類及び量に変更した触媒を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、生成物を得た。その結果を纏めて、表2に示す。
【0047】
(比較例2~17)
実施例1の不斉反応触媒を、表2に記載の光学活性の非脂環式ジアミン誘導体(アミンF~H)とカルボン酸との種類及び量に変更した触媒を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、生成物を得た。その結果を纏めて、表2に示す。
【0048】
【表2】
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【0048】
【表2】
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【0049】
表2から明らかな通り、本発明を適用外の比較例2~17のような触媒を用いた反応では、本発明を適用する実施例1~12の不斉反応触媒を用いた反応よりも、光学収率が遥かに劣る。とりわけ比較例12~16の通りL-リシン(L-Lys)、L-オルニチン(L-Orn)、L-アルギニン(L-Arg)のような天然アミノ酸を触媒に用いた反応では、光学収率がさほど高くない。さらに比較例17の通りL-プロリン(L-Pro)では、全く反応が進行しなかった。
【0049】
表2から明らかな通り、本発明を適用外の比較例2~17のような触媒を用いた反応では、本発明を適用する実施例1~12の不斉反応触媒を用いた反応よりも、光学収率が遥かに劣る。とりわけ比較例12~16の通りL-リシン(L-Lys)、L-オルニチン(L-Orn)、L-アルギニン(L-Arg)のような天然アミノ酸を触媒に用いた反応では、光学収率がさほど高くない。さらに比較例17の通りL-プロリン(L-Pro)では、全く反応が進行しなかった。
【0050】
次に、不斉反応触媒として、光学活性脂環式ジアミン誘導体である(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサン(ジアミン誘導体C)とカルボン酸誘導体である(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸(カルボン酸誘導体D)とを、夫々30mol%ずつ用い、一方の基質である電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物としてメチルビニルケトン又はエチルビニルケトンを用い、他方の基質である活性メチン基含有化合物として各種アルデヒドを用いて、その反応性を、実施例13~23で検討した。
【0050】
次に、不斉反応触媒として、光学活性脂環式ジアミン誘導体である(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサン(ジアミン誘導体C)とカルボン酸誘導体である(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸(カルボン酸誘導体D)とを、夫々30mol%ずつ用い、一方の基質である電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物としてメチルビニルケトン又はエチルビニルケトンを用い、他方の基質である活性メチン基含有化合物として各種アルデヒドを用いて、その反応性を、実施例13~23で検討した。
【0051】
(実施例13)
(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサンの684mg(6.0mmol)と(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸の1025mg(6.0mmol)とを、i-PrOHの20mLに溶かし、そこへ2-(4-メトキシフェニル)プロピオンアルデヒドの3.26g(19.9mmol)とメチルビニルケトンの2.43mL(24.8mmol)とを加えた。その混合物を0℃で12時間撹拌した後、THF/EtO/HO(1:3:3)の混合液を84mL加え、さらに5mol%テトラ-n-ブチルアンモニウムヒドロキシド(12mL)と0.1N-KOH水溶液(約50mL)とを加えた。反応混合物を60℃で1時間、撹拌した後、クロロホルムで抽出を行った。抽出液を飽和食塩水
で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液 ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製を行い、下記化学反応式(4)のように、目的生成物である(R)-(+)-4-メチル-4-(4-メトキシフェニル)-4-シクロへキセノンを、白色固体として、2.68g(収率62%)を得た。
【0051】
(実施例13)
(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサンの684mg(6.0mmol)と(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸の1025mg(6.0mmol)とを、i-PrOHの20mLに溶かし、そこへ2-(4-メトキシフェニル)プロピオンアルデヒドの3.26g(19.9mmol)とメチルビニルケトンの2.43mL(24.8mmol)とを加えた。その混合物を0℃で12時間撹拌した後、THF/EtO/HO(1:3:3)の混合液を84mL加え、さらに5mol%テトラ-n-ブチルアンモニウムヒドロキシド(12mL)と0.1N-KOH水溶液(約50mL)とを加えた。反応混合物を60℃で1時間、撹拌した後、クロロホルムで抽出を行った。抽出液を飽和食塩水
で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液 ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製を行い、下記化学反応式(4)のように、目的生成物である(R)-(+)-4-メチル-4-(4-メトキシフェニル)-4-シクロへキセノンを、白色固体として、2.68g(収率62%)を得た。
【0052】
【化4】
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【0052】
【化4】
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【0053】
この生成物について、薄層クロマトグラフィー(TLC)、比旋光度、ChiralpakAD(ダイセル化学工業株式会社製;商品名)を用いたキラル高速液体クロマトグラフィー分析(chiralHPLC)による光学純度測定、フーリエ変換赤外吸収スペクトル法(FT-IR)、H及び13C核磁気共鳴スペクトル法(NMR)の理化学分析データは、以下の通りである。
【0053】
この生成物について、薄層クロマトグラフィー(TLC)、比旋光度、ChiralpakAD(ダイセル化学工業株式会社製;商品名)を用いたキラル高速液体クロマトグラフィー分析(chiralHPLC)による光学純度測定、フーリエ変換赤外吸収スペクトル法(FT-IR)、H及び13C核磁気共鳴スペクトル法(NMR)の理化学分析データは、以下の通りである。
【0054】
融点;49~52℃
TLC; Rf 0.53 (展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=3:1).
[α]26D +135.6(c 1.0, EtOH) (光学純度:91%ee)
FTIR (KBr) ν 1679, 1608, 1577, 1513cm-1.
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 1.54(3H, s), 2.08-2.43(4H, m), 3.80(3H, s),
6.10(1H, d, J=10.2Hz), 6.91(1H, d, J=10.2Hz), 6.86-6.92(2H, m), 7.23-7.27(2H, m).
13C NMR (100MHz, CDCl3) δ 27.69, 34.56, 38.10, 39.90, 55.21, 113.85(×2), 127.17(×2), 128.30, 137.10, 157.32, 158.23, 199.47.
なお、ここで得られた光学活性な4-メチル-4-(4-メトキシフェニル)-4-シクロへキセノンがRの絶対配置を有することは、その比旋光度の値を文献値[(R)-過剰体:[α]20D +69.5(c 1.134, EtOH)]; T.Sone(ティー.ソネ)ら、Chemical & Pharmaceutical Bulletin(ケミカル アンド ファーマシューティカル ブレティン)、1976年、第24巻、p.1273-1287]と比較することにより決定した。
【0054】
融点;49~52℃
TLC; Rf 0.53 (展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=3:1).
[α]26D +135.6(c 1.0, EtOH) (光学純度:91%ee)
FTIR (KBr) ν 1679, 1608, 1577, 1513cm-1.
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 1.54(3H, s), 2.08-2.43(4H, m), 3.80(3H, s),
6.10(1H, d, J=10.2Hz), 6.91(1H, d, J=10.2Hz), 6.86-6.92(2H, m), 7.23-7.27(2H, m).
13C NMR (100MHz, CDCl3) δ 27.69, 34.56, 38.10, 39.90, 55.21, 113.85(×2), 127.17(×2), 128.30, 137.10, 157.32, 158.23, 199.47.
なお、ここで得られた光学活性な4-メチル-4-(4-メトキシフェニル)-4-シクロへキセノンがRの絶対配置を有することは、その比旋光度の値を文献値[(R)-過剰体:[α]20D +69.5(c 1.134, EtOH)]; T.Sone(ティー.ソネ)ら、Chemical & Pharmaceutical Bulletin(ケミカル アンド ファーマシューティカル ブレティン)、1976年、第24巻、p.1273-1287]と比較することにより決定した。
【0055】
この理化学分析データは、この生成物が(R)-(+)-4-メチル-4-(4-メトキシフェニル)-4-シクロへキセノンであることを支持する。
【0055】
この理化学分析データは、この生成物が(R)-(+)-4-メチル-4-(4-メトキシフェニル)-4-シクロへキセノンであることを支持する。
【0056】
この生成物は、生理活性天然物である(S)-(+)-Sporochnolの全合成などの中間体として用いられるものである。
【0056】
この生成物は、生理活性天然物である(S)-(+)-Sporochnolの全合成などの中間体として用いられるものである。
【0057】
(実施例14~23)
実施例13の基質につき、表3に記載のように電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物としてメチルビニルケトン又はエチルビニルケトンを用い、また活性メチン基含有化合物としてα-フェニルアセトアルデヒド類又はα-ナフチルアセトアルデヒド類のような各種アルデヒドを用いたこと以外は、実施例13と同様にして、生成物を得た。その結果を纏めて、表3に示す。
【0057】
(実施例14~23)
実施例13の基質につき、表3に記載のように電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物としてメチルビニルケトン又はエチルビニルケトンを用い、また活性メチン基含有化合物としてα-フェニルアセトアルデヒド類又はα-ナフチルアセトアルデヒド類のような各種アルデヒドを用いたこと以外は、実施例13と同様にして、生成物を得た。その結果を纏めて、表3に示す。
【0058】
【表3】
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【0058】
【表3】
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【0059】
表3から明らかな通り、電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物と、活性メチレン基含有化合物や活性メチン基含有化合物との種類に関わらず、高い立体選択性と位置選択性とを発現しつつ、最大で97%eeという高い光学収率で、エナンチオ選択的に、所望の目的物を、高収率で得ることができた。
【0059】
表3から明らかな通り、電子吸引基共役-α,β位-不飽和化合物と、活性メチレン基含有化合物や活性メチン基含有化合物との種類に関わらず、高い立体選択性と位置選択性とを発現しつつ、最大で97%eeという高い光学収率で、エナンチオ選択的に、所望の目的物を、高収率で得ることができた。
【0060】
不斉反応触媒を用いて、不斉マイケル反応とその反応中間体を単離することなくそれに引き続く分子内アルドール反応による不斉ロビンソン環化反応を行った実施例を示したが、不斉マイケル反応による反応中間体を単離した例を、実施例24に示す。
【0060】
不斉反応触媒を用いて、不斉マイケル反応とその反応中間体を単離することなくそれに引き続く分子内アルドール反応による不斉ロビンソン環化反応を行った実施例を示したが、不斉マイケル反応による反応中間体を単離した例を、実施例24に示す。
【0061】
(実施例24)
2-(ナフト-2-イル)プロピオンアルデヒドの184mg(1.0mmol)と、エチルビニルケトンの84mg(1.2mmol)と、(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサン(ジアミン誘導体C)の33mg(0.3mmol)と(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸(カルボン酸誘導体D)の52mg(0.3mmol)とi-PrOHの1.0mLとの混合物を、0℃で12時間撹拌した。反応終了後、混合物の一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液 クロロホルム)にて精製すると、対応するマイケル反応付加物である2-メチル-2-(2-ナフチル)-5-オキソヘプタナールが、無色油状物として、11mg(1.5%)得られた。
【0061】
(実施例24)
2-(ナフト-2-イル)プロピオンアルデヒドの184mg(1.0mmol)と、エチルビニルケトンの84mg(1.2mmol)と、(1S,2S)-1,2-ジアミノシクロヘキサン(ジアミン誘導体C)の33mg(0.3mmol)と(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸(カルボン酸誘導体D)の52mg(0.3mmol)とi-PrOHの1.0mLとの混合物を、0℃で12時間撹拌した。反応終了後、混合物の一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液 クロロホルム)にて精製すると、対応するマイケル反応付加物である2-メチル-2-(2-ナフチル)-5-オキソヘプタナールが、無色油状物として、11mg(1.5%)得られた。
【0062】
【化5】
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【0062】
【化5】
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【0063】
この生成物について、薄層クロマトグラフィー(TLC)、フーリエ変換赤外吸収スペクトル法(FT-IR)、H及び13C核磁気共鳴スペクトル法(NMR)の理化学分析データは、以下の通りである。
【0063】
この生成物について、薄層クロマトグラフィー(TLC)、フーリエ変換赤外吸収スペクトル法(FT-IR)、H及び13C核磁気共鳴スペクトル法(NMR)の理化学分析データは、以下の通りである。
【0064】
TLC; Rf 0.39 (展開溶媒 CHCl3).
FTIR (neat) ν 1720, 1632, 1598, 1506, 1459cm-1.
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 0.98(3H, t, J=7.3Hz), 1.55(3H, s), 2.17-2.43(6H, m), 7.35(1H, dd, J=8.5, 1.8Hz), 7.47-7.53(2H, m), 7.70(1H, d, J=1.8Hz), 7.81-7.85(2H, m), 7.86(1H, d, J=8.8Hz), 9.58(1H, s).
13C NMR (100MHz, CDCl3) δ 7.72, 19.06, 29.42, 35.91, 37.07, 53.39, 124.73, 126.21, 126.36, 126.46, 127.51, 127.97, 128.79, 132.41, 133.34, 136.61, 201.76, 201.78.
【0064】
TLC; Rf 0.39 (展開溶媒 CHCl3).
FTIR (neat) ν 1720, 1632, 1598, 1506, 1459cm-1.
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 0.98(3H, t, J=7.3Hz), 1.55(3H, s), 2.17-2.43(6H, m), 7.35(1H, dd, J=8.5, 1.8Hz), 7.47-7.53(2H, m), 7.70(1H, d, J=1.8Hz), 7.81-7.85(2H, m), 7.86(1H, d, J=8.8Hz), 9.58(1H, s).
13C NMR (100MHz, CDCl3) δ 7.72, 19.06, 29.42, 35.91, 37.07, 53.39, 124.73, 126.21, 126.36, 126.46, 127.51, 127.97, 128.79, 132.41, 133.34, 136.61, 201.76, 201.78.
【0065】
この理化学分析データは、この生成物が2-メチル-2-(2-ナフチル)-5-オキソヘプタナールであることを支持する。なお、このマイケル反応付加物は、実施例23で得られたロビンソン環化反応の最終生成物の中間体であるから、エナンチオ選択性は、実施例23と同様に少なくとも84%ee以上であると推察される。
【0065】
この理化学分析データは、この生成物が2-メチル-2-(2-ナフチル)-5-オキソヘプタナールであることを支持する。なお、このマイケル反応付加物は、実施例23で得られたロビンソン環化反応の最終生成物の中間体であるから、エナンチオ選択性は、実施例23と同様に少なくとも84%ee以上であると推察される。
【0066】
本発明の不斉反応触媒を用いた不斉合成方法によれば、不斉マイケル反応を経て、さらに分子内アルドール反応による所謂不斉ロビンソン環化反応により、4位に4級不斉炭素を有する種々のシクロへキセノン誘導体を合成することができる。このような不斉マイケル反応で得られる反応中間体やそれに引き続く不斉ロビンソン環化反応で得られる生成物は、各種医薬品・生理活性物質やキラル液晶材料などのファインケミカル、又はそれらの中間体として用いられるものであるから、本発明の不斉反応触媒を用いた不斉合成方法は、それらを製造するのに、用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の不斉反応触媒を用いた不斉合成方法によれば、不斉マイケル反応を経て、さらに分子内アルドール反応による所謂不斉ロビンソン環化反応により、4位に4級不斉炭素を有する種々のシクロへキセノン誘導体を合成することができる。このような不斉マイケル反応で得られる反応中間体やそれに引き続く不斉ロビンソン環化反応で得られる生成物は、各種医薬品・生理活性物質やキラル液晶材料などのファインケミカル、又はそれらの中間体として用いられるものであるから、本発明の不斉反応触媒を用いた不斉合成方法は、それらを製造するのに、用いられる。