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明細書 :ジアリールエテン化合物を含むフォトクロミック材料および光機能素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5920780号 (P5920780)
公開番号 特開2014-015552 (P2014-015552A)
登録日 平成28年4月22日(2016.4.22)
発行日 平成28年5月18日(2016.5.18)
公開日 平成26年1月30日(2014.1.30)
発明の名称または考案の名称 ジアリールエテン化合物を含むフォトクロミック材料および光機能素子
国際特許分類 C09K   9/02        (2006.01)
C07D 333/48        (2006.01)
G01K  11/18        (2006.01)
FI C09K 9/02 B
C07D 333/48
G01K 11/18
請求項の数または発明の数 4
全頁数 21
出願番号 特願2012-154749 (P2012-154749)
出願日 平成24年7月10日(2012.7.10)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 平成24年3月9日 公益社団法人日本化学会発行の「日本化学会第92春季年会 2012年 講演予稿集III」において発表
審査請求日 平成27年6月12日(2015.6.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
発明者または考案者 【氏名】小畠 誠也
個別代理人の代理人 【識別番号】100065248、【弁理士】、【氏名又は名称】野河 信太郎
【識別番号】100159385、【弁理士】、【氏名又は名称】甲斐 伸二
【識別番号】100163407、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 裕輔
【識別番号】100166936、【弁理士】、【氏名又は名称】稲本 潔
【識別番号】100174883、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 雅己
審査官 【審査官】西澤 龍彦
参考文献・文献 特開2003-064353(JP,A)
米国特許出願公開第2004/0178394(US,A1)
国際公開第2007/105699(WO,A1)
特開2003-255489(JP,A)
Hiroaki Shoji and Seiya Kobatake,Thermal bleaching reactions of photochromic diarylethenes with thiophene-S,S-dioxide for a light-starting irreversible thermosensor,Chemical Communications,2013年,49,2362-2364
Dezhan Chen, Zhen Wang, Honghong Zhang,Theoretical study on thermal stability and absorption wavelengths of closed-ring isomers of diarylethene derivatives,Journal of Molecular Structure: THEOCHEM,2008年,11-17
Yong-Chul Jeong, Sung Ik Yang, Kwang-Hyun Ahn and Eunkyoung Kim,Highly fluorescent photochromic diarylethene in the closed-ring form,Chemical Communications,2005年,2503-2505
調査した分野 C09K 9/00- 9/02
C07D 333/00-333/80
G01K 11/00- 11/32
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(I):
【化1】
JP0005920780B2_000028t.gif
[式中、Xは硫黄原子(S)またはスルホニル基(SO2)であり、Zは水素原子(H)またはフッ素原子(F)であり、RおよびR’は同一または異なって炭素数1~6のアルキル基または炭素数3~7のシクロアルキル基でありかつ少なくともいずれか一方が炭素数3~7の第二級アルキル基である]
で表わされるジアリールエテン化合物を含むことを特徴とするフォトクロミック材料。
【請求項2】
前記一般式(I)におけるXがSであり、ZがFであり、かつRおよびR’がイソプロピル基、sec-ブチル基またはシクロヘキシル基である請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフォトクロミック材料を含むことを特徴とする光機能素子。
【請求項4】
前記光機能素子が、温度センサーである請求項3に記載の光機能素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアリールエテン化合物を含むフォトクロミック材料および光機能素子に関する。さらに詳しくは、本発明は、材料化学、印刷分野、インク分野、温度管理テープなどに利用し得るジアリールエテン化合物を含むフォトクロミック材料およびそれを含む光機能素子に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍技術や冷蔵技術の発達により、多くの食品や医薬品などの物品が長期間にわたり、品質や安全性を保つことができるようになった。また、低温輸送技術の発達と普及により、市場にも様々な冷凍食品や冷蔵食品が出回るようになってきている。このため、流通過程や貯蔵過程における物品の温度管理が重要になる。特に物品が食品である場合、停電などの不慮の出来事で、所定の温度に管理ができなくなると、食品に細菌が繁殖し、腐敗・変質などの原因となる。また、物品が国際的に流通されるようになっている現在、食品物流業界では、赤道下の船舶輸送時における商品の温度管理(安全性)が問題となっている。
【0003】
物品が一度でも管理温度以上の条件下に曝されたか否かは、物品を見ただけでは容易に判別し難い。このため、低温保存食品などの個々の物品に、温度インジケータや感温色材などを貼付する物品の温度管理が試みられている。
温度インジケータや感温色材は、物品が管理温度以上の条件下に曝されたときに変色し、その変色状態がその後長期間にわたって保持されること、すなわちその変色が不可逆型であることが望ましい。
【0004】
そして、様々な材料や応用技術が提案されている。
例えば、特開平10-287863号公報(特許文献1)では、発色剤層、検温剤層および顕色剤層を備えた、低温で不可逆に変色(「着色」または「発色」ともいう)する温度履歴表示体が提案されている。
また、例えば、特開2004-184920号公報(特許文献2)では、支持体上に染料前駆体および、該染料前駆体と加熱時反応して着色体を形成する顕色剤を主成分として含有する感熱記録層、顔料とバインダーを主成分とする浸透層、融点が0℃以上の感温物質を内包したマイクロカプセル含有層、保護層を順次積層した示温ラベルが提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1および2に記載の温度履歴表示体や示温ラベルは、特定の融点を有する検温剤や感温物質を用いているために、温度履歴表示体や示温ラベルの製造後、使用状態に至るまでの輸送・保管時に、所定の温度以下に保つことが必要である。また、材料が不可逆型であるために、それが一旦変色すると、実用できなくなる。このため、これらの材料は、温度変化機構を作動可能にするスイッチオン機構を備えていることが望ましい。
【0006】
このようなスイッチオン機構を備えた材料(温度履歴表示材)として、紫外線照射により着色し、温度履歴がスタートするフォトクロミック化合物を利用したものがある。
例えば、国際公開第WO2007/105699号(特許文献3)に記載されている着色状態の光安定性が従来のものより10倍高く、着色状態で温度を感知し、不可逆的に消色するフォトクロミック化合物がある。
しかし、このような機能を発現させるためには、トリフルオロメタンスルホン酸のような強い酸を必要とし、かつ固体状態で所定の機能を発現させるためには、均一に酸を添加する必要があり、この酸の添加は製造工程上、大きな問題となる。
【0007】
一般に、フォトクロミック化合物を用いた温度履歴表示材としては、次のような条件(機能)が考えられ、それらの組み合わせにより、異なる特徴を有する温度履歴表示材を作成できる。
(1)スイッチオン機構を備えること(例えば、紫外線照射による着色)
(2)加熱により、再生不可能な消色が起こること
(3)着色状態が可視光下で安定であること
(4)加熱により、色が元に戻り、再生可能であること
【0008】
これまでにフォトクロミック化合物、特にジアリールエテン化合物として、様々な化合物が合成され、その温度履歴表示材としての応用が提案されている。以下にそれらの化合物の有する機能およびそれらを記載する文献を例示する。
(1)および(2):上記の特許文献3
(1)および(3):特許第4025920号公報(特許文献4)
(1)および(4):S. Kobatake, K. Uchida, E. Tsuchida, M. Irie, 「Photochromism of Diarylethenes Having Isopropyl Groups at the Reactive Carbons. Thermal Cycloreversioin of the Closed-Ring Isomers」, Chem. Lett., 2000年, 29, 1340-1341(非特許文献1)
(1)、(3)および(4):特許第3964231号公報(特許文献5)
また、上記の特許文献3には、(1)、(2)および(3)の機能を有するジアリールエテン化合物が記載されているが、この化合物はこれらの機能を発現させるために、上記のように酸添加を必要とする。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開平10-287863号公報
【特許文献2】特開2004-184920号公報
【特許文献3】国際公開第WO2007/105699号
【特許文献4】特許第4025920号公報
【特許文献5】特許第3964231号公報
【0010】

【非特許文献1】S. Kobatake, K. Uchida, E. Tsuchida, M. Irie, 「Photochromism of Diarylethenes Having Isopropyl Groups at the Reactive Carbons. Thermal Cycloreversioin of the Closed-Ring Isomers」, Chem. Lett., 2000年, 29, 1340-1341
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の先行技術に記載されているような、温度履歴表示材となる従来のフォトクロミック化合物は、可視光下においてもわずかに消色(「退色」ともいう)するという問題があり、可視光下でのさらなる安定性が必要であるという課題がある。
また、機能を発現させるために酸添加を必要としない化合物の開発が望まれる。
【0012】
そこで、本発明は、上記の(1)~(3)の機能を備えかつ酸添加を必要としないジアリールエテン化合物、すなわちスイッチング機能(紫外線照射による着色)、特定温度での加熱による再生不可能な消色、着色状態の可視光下での安定性および着色現象の発現に酸などの付加成分が不要という機能を備えたジアリールエテン化合物を含むフォトクロミック材料およびそれを含む光機能素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者は、ジアリールエテン化合物について鋭意研究を重ねた結果、特定のジアリールエテン系フォトクロミック化合物が、紫外線で着色し、着色状態が可視光下で極めて安定であり、なおかつ加熱により不可逆的に消色することを見出し、それらの化合物もしくはそれらを含む媒体が、酸添加を必要とせず、目的とする温度履歴表示材として利用できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0014】
かくして、本発明によれば、一般式(I):
【化1】
JP0005920780B2_000002t.gif

【0015】
[式中、Xは硫黄原子(S)またはスルホニル基(SO2)であり、Zは水素原子(H)またはフッ素原子(F)であり、RおよびR’は同一または異なって炭素数1~6のアルキル基または炭素数3~7のシクロアルキル基でありかつ少なくともいずれか一方が炭素数3~7の第二級アルキル基である]
で表わされるジアリールエテン化合物を含むことを特徴とするフォトクロミック材料が提供される。
また、本発明によれば、上記のフォトクロミック材料を含むことを特徴とする光機能素子が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スイッチング機能(紫外線照射による着色)、特定温度での加熱による再生不可能な消色、着色状態の可視光下での安定性および着色現象の発現に酸などの付加成分が不要という機能を備えたジアリールエテン化合物を含むフォトクロミック材料およびそれを含む光機能素子を提供することができる。
【0017】
例えば、本発明のジアリールエテン化合物は、一般式(I)における置換基RおよびR’を代えることにより、温度センサーの機能温度を変化させることができる。したがって、様々な温度を感知できる化合物を組み合わせることにより、温度上昇を手軽に管理できる温度センサーを提供することができる。
また、温度センサー以外にも多くの用途が考えられ、上記の特許文献5に記載の応用例も本発明の用途に含まれる。但し、本発明のジアリールエテン化合物は、変色の反応が不可逆であり、再利用可能な材料ではない。
このように、本発明のジアリールエテン化合物は、様々な用途への展開が予想され、産業上の利用可能性は高く、その波及効果は大きい。
【0018】
また、本発明のフォトクロミック材料は、一般式(I)におけるXがSであり、ZがFであり、かつRおよびR’がイソプロピル基、sec-ブチル基またはシクロヘキシル基である場合に、上記の効果がさらに発揮される。
さらに、本発明の前記光機能素子は、温度センサーとして特に優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】光スイッチング機能を有する温度管理識別ラベルの概念図である。
【図2】ジアリールエテン化合物の開環体と閉環体との吸収スペクトルを示す図である。
【図3】ジアリールエテン化合物の開環体と閉環体の吸収波長、モル吸光係数および反応量子収率を示す図である。
【図4】ジアリールエテン化合物の閉環体の熱安定性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(ジアリールエテン化合物)
本発明のジアリールエテン化合物は、一般式(I):
【化2】
JP0005920780B2_000003t.gif

【0021】
[式中、Xは硫黄原子(S)またはスルホニル基(SO2)であり、Zは水素原子(H)またはフッ素原子(F)であり、RおよびR’は同一または異なって炭素数1~6のアルキル基または炭素数3~7のシクロアルキル基でありかつ少なくともいずれか一方が炭素数3~7の第二級アルキル基である]
で表わされることを特徴とする。

【0022】
一般式(I)における置換基について説明する。
置換基Xは、SまたはSO2であり、一般式(I)のジアリールエテン化合物の合成の容易性の点でSが特に好ましい。
置換基Zは、HまたはFであり、一般式(I)のジアリールエテン化合物の保存安定性の点でFが特に好ましい。

【0023】
置換基RおよびR’は同一または異なって炭素数1~6のアルキル基または炭素数3~7のシクロアルキル基でありかつ少なくともいずれか一方が炭素数3~7の第二級アルキル基である。
炭素数1~6のアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチルなどの直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。
炭素数3~7のシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられる。
これらの中でも、一般式(I)のジアリールエテン化合物の製造コストの点でイソプロピル基、sec-ブチル基およびシクロヘキシル基が特に好ましい。

【0024】
置換基RおよびR’は、少なくともいずれか一方が炭素数3~7の第二級アルキル基であり、この第二級アルキル基が置換する炭素原子は、第三級炭素原子となる。
第二級アルキル基としては、イソプロピル、sec-ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられる。
置換基RおよびR’は、合成の容易性の点で、同一、すなわちいずれも第二級アルキル基であるのが好ましい。

【0025】
(ジアリールエテン化合物の製造方法)
本発明のジアリールエテン化合物(以下、「ジアリールエテン化合物(I)」ともいう)は、例えば、次のような典型的なルートにより合成することができる。
以下には、置換基RおよびR’が同一である場合について説明するが、これにより本発明は限定されない。
また、以下において、置換基RおよびR’を-CHR12(式中、R1およびR2はRおよびR’の定義に基づいて選択されるアルキル基、またはR1およびR2が互いに結合してそれらが結合する炭素原子と共に形成されたシクロアルキル基である)、置換基ZをFとして表す。

【0026】
【化3】
JP0005920780B2_000004t.gif

【0027】
ジアリールエテン化合物(I)は、チオフェンと表1に示される置換基R1およびR2を有するケトンを出発原料として製造することができる。
具体的には、ジアリールエテン化合物(I)は、製造例に示すように、公知の方法により製造することができる。出発原料およびそれらの使用量や割合、温度、時間、圧力、雰囲気および溶媒の種類や使用量などの反応条件は、製造するジアリールエテン化合物(I)により適宜選択および設定すればよい。

【0028】
【表1】
JP0005920780B2_000005t.gif

【0029】
製造された化合物が所望のジアリールエテン化合物(I)であることは、製造例に示すように、核磁気共鳴スペクトル法、質量分析法などの一般的な有機分析手法により確認することができる。

【0030】
(ジアリールエテン化合物の物性と用途)
本発明のジアリールエテン化合物(I)は、例えば、下記の一般式(II)で表されるように、まず紫外光照射により、2つのチオフェン環に結合する2つの置換基R(R’=Rとして表記)が結合して環を形成(閉環)し、着色する(スイッチング機能)。この着色は、可視光下で所定の温度(Δ)未満では安定であるが、この所定の温度(Δ)以上の条件に曝される(加熱される)ことにより消色(退色)する。この消色状態は、紫外光や可視光下で安定である。

【0031】
【化4】
JP0005920780B2_000006t.gif

【0032】
本発明のジアリールエテン化合物(I)は、一般式(I)における置換基RおよびR’を代えることにより変化する。すなわち、本発明のジアリールエテン化合物(I)を温度センサーに応用する場合には、作動温度(機能温度)を変化させることができる。
このように本発明のジアリールエテン化合物(I)は、所望の機能温度を設定し得るP型のフォトクロミズムの性能を有することから、本発明のジアリールエテン化合物(I)を含むフォトクロミック材料を提供することができる。

【0033】
また、本発明によれば、上記のフォトクロミック材料を含む光機能素子を提供することができる。
例えば、図1に示すように、本発明のジアリールエテン化合物(I)を含む温度センサーおよび公知の温度センサーから選択される、様々な温度で感知できる温度センサーを組み合わせることによって、温度上昇を手軽に管理できる。
すなわち、図1は、基板上にそれぞれ異なる温度で感知する3つの温度センサーが設けられた温度センサーユニットであり、スイッチング前の状態(左図)から、紫外線の照射により各温度センサーが着色して温度管理が開始され(中央図)、加熱により一部の温度センサーが消色して温度経過(履歴)が一目で識別できる(右図)。

【0034】
また、温度センサー以外にも多くの用途が考えられる。例えば、上記の特許文献5(特許第3964231号公報)に記載の応用例、光スイッチング素子、光メモリ素子、光記録媒体などが挙げられる。
光スイッチング素子に使用する場合、例えば、本発明のジアリールエテン化合物(I)を含むフォトクロミック材料を用いて薄膜を形成し、これを用いて光スイッチング素子を作製する。該フォトクロミック材料の大きな屈折率変化を利用することにより、素子の小型化が可能になるため好ましい。
また光メモリ素子に使用する場合、例えば、本発明のジアリールエテン化合物(I)を含むフォトクロミック材料を用いて薄膜を形成し、これを記録層として光メモリ素子を作製する。記録層へのフォトンモード記録により、記録密度の大幅な向上が可能となるため好ましく、また多光子吸収反応を利用することにより、三次元的な記録も可能となるため、記録容量の向上が可能となりさらに好ましい。

【0035】
上記の薄膜は、その用途(目的)により組み合わせる材料や条件を適宜選択、設定することにより基板上に形成することができる。
基板は、使用する光に対し透明でも不透明であってもよく、当該技術分野で通常使用されているものから適宜選択される。基板の具体的な材質としては、例えば、ガラス、プラスチック、紙、板状または箔状のアルミニウムなどの金属が挙げられるが、これらの中でも、プラスチックが種々の点から好適である。プラスチックとしては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ニトロセルロース、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリサルホン樹脂などが挙げられる。

【0036】
より具体的には、薄膜は、本発明のジアリールエテン化合物(I)を、必要に応じバインダー樹脂と共に適当な溶媒に溶解し、ドクターブレード法、キャスト法、スピナー法、浸漬法などの公知の方法により基板上に塗布し、適宜乾燥することにより形成することができる。その膜厚は、通常、2nm~50μm、好ましくは10nm~30μmである。

【0037】
バインダー樹脂としては、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル系樹脂などが挙げられる。
バインダー樹脂は、一般的にジアリールエテン構造の濃度低下をもたらすため、使用しないのが最も好ましいが、使用する場合には、重量比で、本発明のジアリールエテン化合物(I)と同量以下、より好ましくは半量以下である。
また、溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン、エチルアセテートなどが挙げられる。

【0038】
薄膜中における本発明のジアリールエテン化合物(I)の含有量は、特に限定されないが、その用途および吸光度や発光の強度などを考慮して適宜設定すればよい。薄膜が光記録媒体の記録層である場合には、基板の片面だけでなく両面に設けてもよい。また、記録層上には、耐候性を向上させる目的で保護膜を設けてもよい。
【実施例】
【0039】
本発明を以下の製造例、実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例および実施例により限定されるものではない。
製造例の各工程において得られた化合物を、以下の機器および条件で分析して同定し、またそれらの物性を評価した。
【実施例】
【0040】
(NMR)
核磁気共鳴スペクトル装置(ブルカーバイオスピン株式会社(Bruker BioSpin K.K.)製、型式:AV-300N)を用いて、中間化合物を含む製造例で得られた化合物を測定した。
溶媒として重クロロホルム、基準物質としてテトラメチルシランを用いた。
【実施例】
【0041】
(マススペクトル)
質量分析装置(日本電子株式会社製、型式:JMS-700/700S)を用いて、中間化合物を含む製造例で得られた化合物を測定した。
3-ニトロベンジルアルコールをマトリックスに用いて、FAB+によりイオン化させて測定した。
【実施例】
【0042】
(製造例1)
一般式(I)におけるXがSであり、ZがFであり、かつRおよびR’がイソプロピル基であるジアリールエテン化合物(DE(O2)-iPr)を製造した。
【実施例】
【0043】
2-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)チオフェンの合成
【化5】
JP0005920780B2_000007t.gif
【実施例】
【0044】
アルゴン雰囲気下で四つ口フラスコにチオフェン 9.3 g (110 mmol) とエーテル 100 mL を加えた。0 ℃に冷却し、n-ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6 mol/L) 83 mL (130 mmol)をゆっくり滴下した。その後、1 時間還流し、0 ℃に冷却し、無水アセトン 9.8 mL (130 mmol) を滴下し、室温で 1 時間撹拌した。その後、水を入れ、希塩酸で酸性にして、エーテルで抽出を行い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン:酢酸エチル = 7 : 3)で精製を行った。
【実施例】
【0045】
収量: 11 g (77 mmol)
収率: 70 %
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 1.67 (s, 6H), 2.06 (s, 1H), 6.92-6.98 (m, 2H), 7.19 (dd, J = 4.7, 1.5 Hz, 1H)
【実施例】
【0046】
2-イソプロピルチオフェンの合成
【化6】
JP0005920780B2_000008t.gif
【実施例】
【0047】
アルゴン雰囲気下でフラスコに塩化アルミニウム 36 g (270 mmol)を入れ、氷冷しながら、無水エーテル 80 mL をゆっくり滴下した。水素化リチウムアルミニウム 5.0 g (130 mmol) を加え、2-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)チオフェン 11 g (77 mmol)の無水エーテル (100 mL) 溶液をゆっくり滴下した。その後、1.5 時間還流し、20 wt %の希硫酸で処理した。エーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、減圧蒸留 (55 (C/3.9 kPa)で精製を行った。
【実施例】
【0048】
収量: 2.2 g (17 mmol)
収率: 23 %
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 1.34 (d, J = 6.9 Hz, 6H), 3.19 (sept, J = 6.9 Hz, 1H), 6.80 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 6.92 (dd, J = 5.1, 3.6 Hz, 1H), 7.11 (d, J = 5.1 Hz, 1H)
【実施例】
【0049】
3,5-ジブロモ-2-イソプロピルチオフェンの合成
【化7】
JP0005920780B2_000009t.gif
【実施例】
【0050】
フラスコに酢酸 15 mL、水 1 mL、2-イソプロピルチオフェン 2.2 g (17 mmol) を入れ、氷冷しながら 臭素 6.0 g (38 mmol) をゆっくり滴下した。その後、水浴で終夜攪拌した。 その後、 水酸化ナトリウム水溶液で中和し、エーテルで抽出した。チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン)で精製を行った。
【実施例】
【0051】
収量: 3.0 g (11 mmol)
収率: 61 %
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 1.27 (d, J = 6.8 Hz, 6H), 3.30 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 6.85 (s, 1H)
【実施例】
【0052】
3-ブロモ-2-イソプロピル-5-フェニルチオフェンの合成
【化8】
JP0005920780B2_000010t.gif
【実施例】
【0053】
アルゴン雰囲気にした四つ口フラスコに 3,5-ジブロモ-2-イソプロピルチオフェン 1.1 g (3.9 mmol) を無水 THF 20 mL に入れ -78℃で 1.6 M n-ブチルリチウムヘキサン溶液 2.6 mL (4.2 mmol)をゆっくり滴下した。1 時間攪拌した後、ホウ酸トリ-n-ブチル 2.2 mL (8.0 mmol) を滴下し攪拌した。1 時間攪拌した後、水でクエンチして反応を止め、20 wt% 炭酸ナトリウム水溶液 7 mL、Pd(PPh3)4 84 mg (0.074 mmol)、ヨードベンゼン 0.75 g (3.7 mmol) を入れ 9 時間加熱還流した。その後、希塩酸で中和しエーテルで抽出し硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトマトフィー (溶離液: ヘキサン)で分離精製を行った。
【実施例】
【0054】
収量: 730 mg (2.6 mmol)
収率: 67 %
1H NMR (CDCl3, TMS): δ = 1.33 (d, J = 6.8 Hz, 6H), 3.34 (sept, J = 6.8 Hz, 3H), 7.10 (s, 1H), 7.20-7.55 (m, 5H)
【実施例】
【0055】
DE-iPrの合成
【化9】
JP0005920780B2_000011t.gif
【実施例】
【0056】
アルゴン雰囲気下で四つ口フラスコに3-ブロモ-2-イソプロピル-5-フェニルチオフェン 730 mg (2.6 mmol)と無水THF 11 mL を加え、-78 (C で1.6 M n-ブチルリチウムヘキサン溶液 1.9 mL (3.0 mmol)をゆっくり滴下し、1 時間攪拌した。その後、ペルフルオロシクロペンテン 0.17 mL (1.3 mmol)をゆっくり滴下し、2 時間攪拌した。その後、室温に戻してクエンチし、希塩酸を用いて中和し、エーテルで抽出、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン)で分離、精製を行った。
【実施例】
【0057】
収量: 410 mg (0.71 mmol)
収率: 55%
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 0.95 (d, J = 6.8 Hz, 12H), 2.80 (sept, J = 6.8 Hz, 2H), 7.18 (s, 2H), 7.25-7.57 (m, 10H)
【実施例】
【0058】
DE(O2)-iPrの合成
【化10】
JP0005920780B2_000012t.gif
【実施例】
【0059】
ジクロロメタン 8 mL、DE-iPr 0.20 g (0.35 mmol)を入れたフラスコに、m-クロロ過安息香酸 (純度 ca. 70%、含水) 0.20 g (0.79 mmol)を加え 3 日間攪拌した。その後、中和し、ジクロロメタンで抽出を行った。飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン:酢酸エチル = 85 : 15)で分離、精製を行った。
【実施例】
【0060】
収量: 140 mg (0.23 mmol)
収率: 66 %
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 1.13 (d, J = 7.0 Hz, 6H), 1.25 (d, J = 6.8 Hz, 6H), 2.79 (sept, J = 7.0 Hz, 1H), 2.88 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 6.79 (s, 1H), 7.15 (s, 1H), 7.28-7.70 (m, 10H)
FAB-MS: 609.1332 (MH+). Calculated for C31H27F6S2: 609.1357.
【実施例】
【0061】
(製造例2)
一般式(I)におけるXがSであり、ZがFであり、かつRおよびR’がsec-ブチル基であるジアリールエテン化合物(DE(O2)-sBu)を製造した。
【実施例】
【0062】
2-(2-ヒドロキシ-2-ブチル)チオフェンの合成
【化11】
JP0005920780B2_000013t.gif
【実施例】
【0063】
アルゴン雰囲気下で四つ口フラスコにチオフェン 17 g (200 mmol) とエーテル 180 mL を加えた。0 ℃に冷却し、n-ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6 mol/L) 150 mL (240 mmol)をゆっくり滴下した。その後、1.5 時間還流し、0 ℃に冷却し、メチルエチルケトン 22 mL (240 mmol) を滴下し、室温で 1 時間撹拌した。その後、水を入れ、希塩酸で酸性にして、エーテルで抽出を行い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン:酢酸エチル = 7 : 3)で精製を行った。
【実施例】
【0064】
収量: 20 g (130 mmol)
収率: 63 %
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 0.89 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.61 (s, 3H), 1.89 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 2.00 (s, 1H), 6.85 (dd, J = 3.6, 1.2 Hz, 1H), 6.89 (dd, J = 5.0, 3.6 Hz, 1H), 7.14 (dd, J = 5.0, 1.2 Hz, 1H)
【実施例】
【0065】
2-sec-ブチルチオフェンの合成
【化12】
JP0005920780B2_000014t.gif
【実施例】
【0066】
アルゴン雰囲気下でフラスコに塩化アルミニウム 26 g (190 mmol)を入れ、氷冷しながら、無水エーテル 70 mL をゆっくり滴下した。水素化リチウムアルミニウム 3.6 g (94 mmol) を加え、2-(2-ヒドロキシ-2-ブチル)チオフェン 7.8 g (50 mmol)の無水エーテル (70 mL) 溶液をゆっくり滴下した。その後、1.5 時間還流し、20 wt %の希硫酸で処理した。エーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、減圧蒸留 (58 (C/2.7 kPa)で精製を行った。
【実施例】
【0067】
収量: 1.7 g (12 mmol)
収率: 25 %
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 0.88 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 1.30 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 1.57-1.70 (m, 2H), 2.84-2.98 (m, 1H), 6.71 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 6.84 (dd, J = 5.1, 3.5 Hz, 1H), 7.04 (d, J = 5.1 Hz, 1H)
【実施例】
【0068】
3,5-ジブロモ-2-sec-ブチルチオフェンの合成
【化13】
JP0005920780B2_000015t.gif
【実施例】
【0069】
フラスコに酢酸 11 mL、水 1 mL、2-sec-ブトキシチオフェン 1.7 g (12 mmol) を入れ、氷冷しながら 臭素 1.36 g (26 mmol) をゆっくり滴下した。その後、水浴で終夜攪拌した。 その後、 水酸化ナトリウム水溶液で中和し、エーテルで抽出した。チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン)で精製を行った。
【実施例】
【0070】
収量: 2.9 g (9.7 mmol)
収率: 80 %
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 0.90 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 1.24 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 1.54-1.66 (m, 2H), 3.00-3.14 (m, 1H), 6.78 (s, 1H)
【実施例】
【0071】
3-ブロモ-2-sec-ブチル-5-フェニルチオフェンの合成
【化14】
JP0005920780B2_000016t.gif
【実施例】
【0072】
アルゴン雰囲気にした四つ口フラスコに 3,5-ジブロモ-2-sec-ブチルチオフェン 1.6 g (5.4 mmol) を無水 THF 30 mL に入れ -78℃で 1.6 M n-ブチルリチウムヘキサン溶液 3.7 mL (5.9 mmol)をゆっくり滴下した。1 時間攪拌した後、ホウ酸トリ-n-ブチル 2.2 mL (8.0 mmol) を滴下し攪拌した。1 時間攪拌した後、水でクエンチして反応を止め、20 wt% 炭酸ナトリウム水溶液 10 mL、Pd (PPh3)4 120 mg (0.11 mmol)、ヨードベンゼン 1.1 g (5.4 mmol) を入れ 10 時間加熱還流した。その後、希塩酸で中和しエーテルで抽出し硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトマトフィー (溶離液: ヘキサン)で分離精製を行った。
【実施例】
【0073】
収量: 840 mg (2.8 mmol)
収率: 52 %
1H NMR (CDCl3, TMS): δ = 0.93 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 1.30 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 1.60-1.72 (m, 2H), 3.03-3.17 (m, 1H), 7.01 (s, 1H), 7.16-7.47 (m, 5H)
【実施例】
【0074】
DE-sBuの合成
【化15】
JP0005920780B2_000017t.gif
【実施例】
【0075】
アルゴン雰囲気下で四つ口フラスコに3-ブロモ-2-sec-ブチル-5-フェニルチオフェン 700 mg (2.4 mmol)と無水THF 10 mL を加え、-78 (C で1.6 M n-ブチルリチウムヘキサン溶液 1.7 mL (2.7 mmol)をゆっくり滴下し、1 時間攪拌した。その後、ペルフルオロシクロペンテン 0.16 mL (1.2 mmol)をゆっくり滴下し、2 時間攪拌した。その後、室温に戻してクエンチし、希塩酸を用いて中和し、エーテルで抽出、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン)で分離、精製を行った。
【実施例】
【0076】
収量: 420 mg (0.69 mmol)
収率: 58%
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 0.55-0.70 (m, 6H), 0.70-0.90 (m, 6H), 1.10-1.55 (m, 4H), 2.38-2.58 (m, 2H), 7.15 (s, 2H), 7.18-7.53 (m, 10H)
【実施例】
【0077】
DE(O2)-sBuの合成
【化16】
JP0005920780B2_000018t.gif
【実施例】
【0078】
ジクロロメタン 7 mL、DE-sBu 0.20 g (0.33 mmol)を入れたフラスコに、m-クロロ過安息香酸 (純度 ca. 70%、含水) 0.18 g (0.73 mmol)を加え 8 日間攪拌した。その後、中和し、ジクロロメタンで抽出を行った。飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン:酢酸エチル = 9 : 1)で分離、精製を行った。
【実施例】
【0079】
収量: 90 mg (0.14 mmol)
収率: 42 %
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 0.50-1.95 (m, 16H), 2.33-2.63 (m, 2H), 6.75-7.75 (m, 12H)
【実施例】
【0080】
(製造例3)
一般式(I)におけるXがSであり、ZがFであり、かつRおよびR’がシクロヘキシル基であるジアリールエテン化合物(DE(O2)-cHx)を製造した。
【実施例】
【0081】
2-(1-ヒドロキシ-1-シクロヘキシル)チオフェンの合成
【化17】
JP0005920780B2_000019t.gif
【実施例】
【0082】
アルゴン雰囲気下で四つ口フラスコにチオフェン 6.7 g (80 mmol) とエーテル 75 mL を加えた。0 ℃に冷却し、n-ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6 mol/L) 59 mL (94 mmol)をゆっくり滴下した。その後、1.5 時間還流し、0 ℃に冷却し、シクロヘキサノン 10 mL (97 mmol) を滴下し、室温で 1 時間撹拌した。その後、水を入れ、希塩酸で酸性にして、エーテルで抽出を行い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン:酢酸エチル = 7 : 3)で精製を行った。
【実施例】
【0083】
収量: 14 g (77 mmol)
収率: 96 %
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 1.2-2.0 (m, 10H), 2.04 (s, 1H), 6.95 (dd, J = 4.8, 3.6 Hz, 1H), 6.98 (dd, J = 3.6, 1.4 Hz, 1H), 7.19 (dd, J = 4.8, 1.4 Hz, 1H)
【実施例】
【0084】
2-シクロヘキシルチオフェンの合成
【化18】
JP0005920780B2_000020t.gif
【実施例】
【0085】
アルゴン雰囲気下でフラスコに塩化アルミニウム 41 g (310 mmol)を入れ、氷冷しながら、無水エーテル 90 mL をゆっくり滴下した。水素化リチウムアルミニウム 5.7 g (0.15 mol) を加え、2-(1-ヒドロキシ-1-シクロヘキシル)チオフェン 14 g (77 mmol)の無水エーテル (110 mL) 溶液をゆっくり滴下した。その後、1.5 時間還流し、20 wt %の希硫酸で処理した。エーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。
【実施例】
【0086】
収量: 11 g (66 mmol)
収率: 86 %
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 1.0-2.2 (m, 10H), 2.7-2.9 (m, 1H), 6.80 (d, J = 3.4 Hz, 1H), 6.92 (dd, J = 5.1, 3.4 Hz, 1H), 7.11 (d, J = 5.1 Hz, 1H)
【実施例】
【0087】
3,5-ジブロモ-2-シクロヘキシルチオフェンの合成
【化19】
JP0005920780B2_000021t.gif
【実施例】
【0088】
フラスコに酢酸 62 mL、水 4 mL、2-シクロヘキシルチオフェン 11 g (0.066 mol) を入れ、氷冷しながら 臭素 7.6 mL (24g; 0.15 mol) をゆっくり滴下した。その後、水浴で終夜攪拌した。 その後、 水酸化ナトリウム水溶液で中和し、エーテルで抽出した。チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン)で精製を行った。
収量: 14 g (0.043 mol)
収率: 65 %
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 1.0-2.0 (m, 10H), 2.8-3.0 (m, 1H), 6.85 (s, 1H)
【実施例】
【0089】
3-ブロモ-2-シクロヘキシル-5-フェニルチオフェンの合成
【化20】
JP0005920780B2_000022t.gif
【実施例】
【0090】
アルゴン雰囲気にした四つ口フラスコに 3,5-ジブロモ-2-シクロヘキシルチオフェン 14 g (0.043 mol) を無水 THF 60 mL に入れ -78℃で 1.6 M n-ブチルリチウムヘキサン溶液 30 mL (0.048 mol)をゆっくり滴下した。1 時間攪拌した後、ホウ酸トリ-n-ブチル 13 mL (0.048 mol) を滴下し攪拌した。1 時間攪拌した後、水でクエンチして反応を止め、20 wt% 炭酸ナトリウム水溶液 35 mL、Pd (PPh3)4 180 mg (0.17 mmol)、ヨードベンゼン 5.6 mL (10 g; 0.049 mol) を入れ 10 時間加熱還流した。その後、希塩酸で中和しエーテルで抽出し硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトマトフィー (溶離液: ヘキサン)で分離精製を行った。
【実施例】
【0091】
収量: 4.6 g (0.014 mol)
収率: 33 %
1H NMR (CDCl3, TMS): δ = 1.1-2.1 (m, 10H), 2.87-3.05 (m, 1H), 7.11 (s, 1H), 7.2-7.6 (m, 5H)
【実施例】
【0092】
DE-cHの合成
【化21】
JP0005920780B2_000023t.gif
【実施例】
【0093】
アルゴン雰囲気下で四つ口フラスコに3-ブロモ-2-シクロヘキシル-5-フェニルチオフェン 4.6 g (14 mmol)と無水THF 65 mL を加え、-78 (C で1.6 M n-ブチルリチウムヘキサン溶液 11 mL (17 mmol)をゆっくり滴下し、1 時間攪拌した。その後、ペルフルオロシクロペンテン 0.95 mL (7.3 mmol)をゆっくり滴下し、2 時間攪拌した。その後、室温に戻してクエンチし、希塩酸を用いて中和し、エーテルで抽出、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン)で分離、精製を行った。
【実施例】
【0094】
収量: 600 mg (0.91 mmol)
収率: 6.4%
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 0.9-1.7 (m, 20H), 2.3-2.5 (m, 2H), 7.23 (s, 2H), 7.25-7.60 (m, 10H)
【実施例】
【0095】
DE(O2)-cHxの合成
【化22】
JP0005920780B2_000024t.gif
【実施例】
【0096】
ジクロロメタン 10 mL、DE-cH 0.24 g (0.37 mmol)を入れたフラスコに、m-クロロ過安息香酸 (純度 ca. 70%、含水) 0.46 g (1.86 mmol)を加え 8 日間攪拌した。その後、中和し、ジクロロメタンで抽出を行った。飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィー (溶離液: ヘキサン:酢酸エチル = 9 : 1)で分離、精製を行った。
【実施例】
【0097】
収量: 51 mg (0.074 mmol)
収率: 20%
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 0.8-2.2 (m, 20H), 2.3-2.6 (m, 2H), 6.7-7.8(m, 12H)
【実施例】
【0098】
(実施例1)
製造例で得られたジアリールエテン化合物および比較化合物をそれぞれ5 mgとポリスチレン50 mgとをトルエン10 mLに溶解させた。得られた溶液をシャーレに移し、ろ紙に浸漬し、室温で2時間乾燥させた。
得られたろ紙の塗膜部分に、紫外線ランプ(アズワン株式会社製、型式:SLUV-4)を用いて、紫外光(波長365nm)を10秒間照射し、蛍光灯の可視光下(紫外線カット)、30℃で2日放置し、経時的に塗膜部分の色の変化を観察した。
製造例2のジアリールエテン化合物(DE(O2)-sBu)の場合、紫外光照射により、ろ紙の塗膜部分が紫色に着色し、その着色は蛍光灯の可視光下で安定であったが、2日後にはほぼ無色になった。
【実施例】
【0099】
(実施例2)
下記の一般式(II)表される化合物について、温度センサーへの応用の可能性を検討した。
一般式(II)で表される化合物のトルエン溶液を石英セルに入れ熔封した後、紫外線を照射して、その着色を確認後、100℃で放置して、経時的にセル中の色の変化を観察し、一部の試料については、吸光光度計(日本分光株式会社製、型式:V-560)を用いて、吸収スペクトルを測定した。
【実施例】
【0100】
【化23】
JP0005920780B2_000025t.gif
【実施例】
【0101】
表2「ジアリールエテン閉環異性体の熱安定性」に示すように、Y = SO2, R = iPrおよび s-Buの2種類の化合物のみ、本発明の所望の機能を示した。
すなわち、これら2種類の化合物は、紫外光照射で紫色に着色し、着色状態は光によって安定で、100 ℃において半減期10分(R = iPr)、1.2分(R = s-Bu)で退色し、退色した状態も光に安定である。なお、着色状態はY = Sの化合物に比べて、100倍の光安定性を有し、可視光下で極めて安定である。これら2種類の化合物の反応は不可逆であり、温度センサーとしては一度しか使うことができず、元に戻すことはできない。なお、Rの置換基が1級のアルキル基の場合には、このような現象は起こらない。
【実施例】
【0102】
ここで、「半減期」とは、相当する物質が半分の量に達するのに要する時間を意味し、着色状態の可視域の吸収極大波長における吸光度変化から決定することができる。
【実施例】
【0103】
【表2】
JP0005920780B2_000026t.gif
【実施例】
【0104】
(実施例3)
Y = SO2, R = iPrおよび s-Buの2種類の化合物について、放置温度をそれぞれ30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃および90℃とすること以外は実施例2と同様にして、半減期を測定した。得られた結果を表3に示す。
【実施例】
【0105】
【表3】
JP0005920780B2_000027t.gif
【実施例】
【0106】
図2は、ジアリールエテン化合物の開環体と閉環体との吸収スペクトルを示す図である。
Y = SO2, R = s-Buの化合物では、開環体で282 nm、閉環体で555 nmに吸収スペクトルのピークを有することがわかる。
【実施例】
【0107】
図3は、ジアリールエテン化合物の開環体と閉環体の吸収波長、モル吸光係数および反応量子収率を示す図である。
【実施例】
【0108】
図4は、ジアリールエテン化合物の閉環体の熱安定性を示す図である。
すなわち、Y = SO2, R = iPrの化合物の閉環体における60℃、70℃、80℃および90℃の熱安定性、Y = SO2, R = iPrおよび s-Buの化合物の閉環体における50℃、60℃および70℃の熱安定性を示す図である。これらの図によれば、加温により熱退色が進行されることがわかる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3