TOP > 国内特許検索 > プロテアソーム活性化剤 > 明細書

明細書 :プロテアソーム活性化剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6122652号 (P6122652)
公開番号 特開2014-156423 (P2014-156423A)
登録日 平成29年4月7日(2017.4.7)
発行日 平成29年4月26日(2017.4.26)
公開日 平成26年8月28日(2014.8.28)
発明の名称または考案の名称 プロテアソーム活性化剤
国際特許分類 A61K  31/222       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P  25/16        (2006.01)
A61P  25/14        (2006.01)
FI A61K 31/222
A61P 43/00 111
A61P 25/28
A61P 25/16
A61P 25/14
請求項の数または発明の数 7
全頁数 16
出願番号 特願2013-027860 (P2013-027860)
出願日 平成25年2月15日(2013.2.15)
審査請求日 平成28年1月8日(2016.1.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
発明者または考案者 【氏名】湯浅 明子
【氏名】湯浅 勲
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】鳥居 福代
参考文献・文献 国際公開第02/064169(WO,A1)
特開2000-273041(JP,A)
特表2005-505519(JP,A)
特開2009-191010(JP,A)
特開2012-056857(JP,A)
特開2012-056886(JP,A)
国際公開第2007/005879(WO,A2)
Phytochemistry,2000年,Vol.54, No.5,p.503-509
日薬理誌,2002年,Vol.119, No.1,p.15-20
Biological Trace Element Research,2002年,Vol.85, No.2,p.183-188
Folia Pharmaceutica,1982年,Vol.3,p.69-88
調査した分野 A61K 31/00-31/327
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I);
【化1】
JP0006122652B2_000019t.gif
(式中、
及びRは、それぞれ、OAc基、OBu基、ヒドロキシル基又は水素原子を示し、且つ、RがOAc基、OBu基又はヒドロキシル基であるときRは水素原子であり、RがOAc基、OBu基又はヒドロキシル基であるときRは水素原子であり、
及びRは、(i)RがOAc基又はOBu基を示し、Rが水素原子を示すか、
(ii)Rが水素原子を示し、RがOBu基を示すか、又は(iii)R及びRとも
に水素原子を示し、
ただし、R、R、R、及びRが全て水素原子であることはなく、
は、
【化2】
JP0006122652B2_000020t.gif
【化3】
JP0006122652B2_000021t.gif
【化4】
JP0006122652B2_000022t.gif
【化5】
JP0006122652B2_000023t.gif
又は
【化6】
JP0006122652B2_000024t.gif
示し、ここで、RはOAc基又はOBu基を示し、
OAc基はアセトキシ基を、OBu基はイソブトキシ基を示す。)
で表される化合物を含む、プロテアソーム活性化剤。
【請求項2】
式(I);
【化7】
JP0006122652B2_000025t.gif
(式中、
及びRは、RがOAc基、OBu基又はヒドロキシル基でRは水素原子であるか、又は、RがOAc基、OBu基又はヒドロキシル基でRは水素原子であり、
及びRは、(i)RがOAc基又はOBu基を示し、Rが水素原子を示すか、
(ii)Rが水素原子を示し、RがOAc基又はOBu基を示すか、又は(iii)R
及びRともに水素原子を示し、
は、
【化8】
JP0006122652B2_000026t.gif
【化9】
JP0006122652B2_000027t.gif
【化10】
JP0006122652B2_000028t.gif
【化11】
JP0006122652B2_000029t.gif
又は
【化12】
JP0006122652B2_000030t.gif
示し、ここで、RはOAc基又はOBu基を示し、
OAc基はアセトキシ基を、OBu基はイソブトキシ基を示す。)
で表される化合物を含む、プロテアソーム活性化剤。
【請求項3】
以下の構造式:
【化13】
JP0006122652B2_000031t.gif
【化14】
JP0006122652B2_000032t.gif
【化15】
JP0006122652B2_000033t.gif
【化16】
JP0006122652B2_000034t.gif
【化17】
JP0006122652B2_000035t.gif
【化18】
JP0006122652B2_000036t.gif
【化19】
JP0006122652B2_000037t.gif
【化20】
JP0006122652B2_000038t.gif
又は
【化21】
JP0006122652B2_000039t.gif
(各式中、OAc基はアセトキシ基を、OBu基はイソブトキシ基を示す。)で表される化合物を含む、プロテアソーム活性化剤。
【請求項4】
1’-アセトキシチャビコールアセテート、
1-アセトキシ-1-(2,4-ジアセトキシフェニル)-2-プロペン、
1-アセトキシ-1-(3,4-ジアセトキシフェニル)-2-プロペン、
1-アセトキシ-1-(4-アセトキシフェニル)-2-ヘプチン、
1-ヒドロキシ-3-(4-アセトキシフェニル)-2-プロペン、
1-イソブトキシ-1-(4-イソブトシキフェニル)-2-プロペン、
1-アセトキシ-1-(4-アセトシキフェニル)プロパン、及び
1-アセトキシ-3-(4-アセトキシフェニル)-2-プロペン、
らなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む、プロテアソーム活性化剤。
【請求項5】
神経変性疾患の予防又は治療剤である、請求項1~4のいずれかに記載のプロテアソーム活性化剤。
【請求項6】
神経変性疾患が、アルツハイマー病又はパーキンソン病である、請求項5に記載のプロテアソーム活性化剤。
【請求項7】
1’-アセトキシチャビコールアセテート又は1-ヒドロキシ-3-(4-アセトキシフェニル)-2-プロペンを含む、パーキンソン病予防又は治療剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテアソーム活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病などの神経変性疾患においては、神経細胞内に凝集した異常タンパク質が蓄積するという共通の特徴が認められる。異常タンパク質は細胞毒性を持つため、神経細胞変性や細胞死を引き起こすこととなり、これが神経変性疾患の一因であると考えられている。
【0003】
細胞にはプロテアソームやオートファジーといった、異常タンパク質を分解し細胞内から除去するためのシステムが備わっていることも知られている。上述のように、異常タンパク質の蓄積が神経変性疾患の一因と考えられており、よって、細胞の異常タンパク質分解システムの能力を向上させることにより、神経変性疾患の予防又は治療が可能となるのではと期待されている。例えば、プロテアソームを活性化させることにより、神経変性疾患を予防又は治療できることが期待されている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】実験医学Vol.29 No.12 (増刊)2011、206(2036)-211(2041)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特に神経変性疾患の予防又は治療を可能とするため、プロテアソーム活性化剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、1’-アセトキシチャビコールアセテート(以下「ACA」ともいう)が、プロテアソームを活性化させることを見出し、また、ACA類似化合物にも同様の効果があることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
式(I);
【0008】
【化1】
JP0006122652B2_000002t.gif

【0009】
(式中、
及びRは、それぞれ、OAc基、OBu基、ヒドロキシル基又は水素原子を示し、且つ、RがOAc基、OBu基又はヒドロキシル基であるときRは水素原子であり、RがOAc基、OBu基又はヒドロキシル基であるときRは水素原子であり、
及びRは、(i)RがOAc基又はOBu基を示し、Rが水素原子を示すか、(ii)Rが水素原子を示し、RがOAc基又はOBu基を示すか、又は(iii)R及びRともに水素原子を示し、
は、
【0010】
【化2】
JP0006122652B2_000003t.gif

【0011】
【化3】
JP0006122652B2_000004t.gif

【0012】
【化4】
JP0006122652B2_000005t.gif

【0013】
【化5】
JP0006122652B2_000006t.gif

【0014】
【化6】
JP0006122652B2_000007t.gif

【0015】
【化7】
JP0006122652B2_000008t.gif

【0016】
を示し、ここで、RはOAc基又はOBu基を示し、
OAc基はアセトキシ基を、OBu基はイソブトキシ基を示す。)
で表される化合物を含む、プロテアソーム活性化剤。
項2.
1’-アセトキシチャビコールアセテート、
1-アセトキシ-1-(2,4-ジアセトキシフェニル)-2-プロペン、
1-アセトキシ-1-(3,4-ジアセトキシフェニル)-2-プロペン、
1-アセトキシ-1-(4-アセトキシフェニル)-2-ヘプチン、
1-ヒドロキシ-3-(4-アセトキシフェニル)-2-プロペン、
1-アセトキシ-1-フェニル-2-プロペン、
1-イソブトキシ-1-(4-イソブトシキフェニル)-2-プロペン、
1-アセトキシ-1-(4-アセトシキフェニル)プロパン、
1-アセトキシ-3-(4-アセトキシフェニル)-2-プロペン、及び
3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン酸
からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む、プロテアソーム活性化剤。
項3.
神経変性疾患の予防又は治療剤である、項1又は2に記載のプロテアソーム活性化剤。
項4.
神経変性疾患が、アルツハイマー病又はパーキンソン病である、項3に記載のプロテアソーム活性化剤。
項5.
1’-アセトキシチャビコールアセテート又は1-ヒドロキシ-3-(4-アセトキシフェニル)-2-プロペンを含む、パーキンソン病予防又は治療剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明のプロテアソーム活性化剤によれば、プロテアソーム(特に神経細胞のプロテアソーム)を活性化することができ、ひいては神経変性疾患の予防又は治療を行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における、特に好ましい「特定のACA類似化合物」の化学構造式を示す。OAc基はアセトキシ基を、OBu基はイソブトキシ基を示す。
【図2】ACAがプロテアソーム活性へ及ぼす効果を検討した結果を示す。
【図3】ACAがプロテアソーム活性へ及ぼす効果を検討した結果を示す。
【図4】2種のACA類似化合物の化学構造式を示す。OAc基はアセトキシ基を、OBu基はイソブトキシ基を示す。
【図5a】ACA類似化合物がプロテアソーム活性へ及ぼす効果を検討した結果を示す。
【図5b】ACA類似化合物がプロテアソーム活性へ及ぼす効果を検討した結果を示す。
【図6】アミロイドβの細胞毒性に及ぼすACAの影響を検討した結果を、細胞生存率によって示す。
【図7a】マンガンの細胞毒性に及ぼすACAの影響を検討した結果を、細胞生存率によって示す。
【図7b】マンガンの細胞毒性に及ぼすACAi-OHの影響を検討した結果を、細胞生存率によって示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。

【0020】
本発明のプロテアソーム活性化剤は、ACA及び特定のACA類似化合物からなる群より選択される、少なくとも1種の化合物を含む。

【0021】
本発明で用いる、ACA及び特定のACA類似化合物からなる群より選択される化合物とは、次の式(I)で表される化合物である。なお、式(I)の説明中、Ac基はアセチル基をし、また、Buはイソブチル基を示す。(よって、OAcはアセトキシ基を、OBuはイソブトキシ基を示す。)

【0022】
【化8】
JP0006122652B2_000009t.gif

【0023】
(式中、
及びRは、それぞれ、OAc基、OBu基、ヒドロキシル基又は水素原子を示し、且つ、RがOAc基、OBu基又はヒドロキシル基であるときRは水素原子であり、RがOAc基、OBu基又はヒドロキシル基であるときRは水素原子であり、
及びRは、(i)RがOAc基又はOBu基を示し、Rが水素原子を示すか、(ii)Rが水素原子を示し、RがOAc基又はOBu基を示すか、又は(iii)R及びRともに水素原子を示し、
は、

【0024】
【化9】
JP0006122652B2_000010t.gif

【0025】
【化10】
JP0006122652B2_000011t.gif

【0026】
【化11】
JP0006122652B2_000012t.gif

【0027】
【化12】
JP0006122652B2_000013t.gif

【0028】
【化13】
JP0006122652B2_000014t.gif

【0029】
【化14】
JP0006122652B2_000015t.gif

【0030】
を示し、ここで、Rは、OAc基又はOBu基を示す。)

【0031】
なお、上記式の説明に記載の制限のうえで、R、R、R、R及びRのなかでOAc基又はOBu基を示す基がある場合には、その基は、OBu基よりもOAc基であることが好ましく、またその基が全てOAc基であることがより好ましい。

【0032】
また、R及びRは、R及びRともに水素原子であることが好ましい。ただし、R、R、R及びRが全て水素原子であることは好ましくない。

【0033】
また、R及びRは、RがOAc基又はOBu基であり、Rが水素原子であることが好ましい。

【0034】
また、R又はRがヒドロキシル基である場合は、Rは、

【0035】
【化15】
JP0006122652B2_000016t.gif

【0036】
であることが好ましい。

【0037】
ACAは公知の物質であり、また公知の方法により容易に製造することができる。例えば、ACAはナンキョウ(タイショウガ)の根茎に含まれることが知られており、ナンキョウの抽出物を生成して得ることができる。また、公知の方法により合成したものを用いてもよい。

【0038】
特定のACA類似化合物として、特に好ましい化合物を次の表1に示す。表1には、それぞれの化合物の略称又は別称も併せて示す。以下、本明細書においては、当該略称を使用することがある。また、表1には、ACAも併せて記載する。さらにまた、表1に示す化合物の化学構造式を図1に示す。

【0039】
【表1】
JP0006122652B2_000017t.gif

【0040】
上記ACA類似化合物も公知の化合物であり、また公知の方法により容易に製造することができる。

【0041】
ACA及び当該特定のACA類似化合物の製造方法については、例えば、特開2009-79004号公報、特開2011-173803号公報、特開2012-56857号公報、特開2012-56886号公報等に詳説されている。また、当業者であれば、例えばこれら公知の方法を基に容易に上記特定のACA類似化合物を製造することができる。

【0042】
本発明のプロテアソーム活性化剤は、上述したように、特に神経変性疾患の予防又は治療に用いることができる。また、その他の用途にも(例えば研究用試薬として)用いることができる。

【0043】
ここでの神経変性疾患は、タンパク質の蓄積が一因となって引き起こされる神経変性疾患が好ましく、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病などが例示できる。中でもアルツハイマー病、パーキンソン病に対しての予防又は治療効果が特に好ましく期待できる。なお、アルツハイマー病、又はパーキンソン病の予防又は治療剤に用いる化合物としては、上記表1に記載される化合物の中でも、ACA又はACAi-OHが特に好ましい。

【0044】
本発明のプロテアソーム活性化剤は、ACA及び上記特定のACA類似化合物からなる群より選択される少なくとも1種(以下「有効成分」ということがある)のみからなるものであってもよいし、その他の成文が含まれていてもよい。例えば、本発明のプロテアソーム活性化剤を特に神経変性疾患の予防又は治療剤として用いる場合、有効成分に加え、必要に応じて薬学的に許容される基剤、担体、添加剤(例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶剤、甘味剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、界面活性剤、保湿剤、保存剤、pH調整剤、粘稠化剤等)等を配合することができる。このような基材、担体、添加剤等は、例えば医薬品添加物辞典2000(株式会社薬事日報社)に具体的に記載されており、例えばこれに記載されるものを用いることができる。また、常法により、例えば錠剤、被覆錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゼリー剤、チュアブル剤、ソフト錠剤等の製剤に調製することができる。特に、液剤、懸濁剤、乳剤等に調製し、注射剤又は点滴剤として用いる、あるいは経口剤として用いることが好ましい。

【0045】
本発明の神経変性疾患の予防又は治療剤における有効成分の配合量は、適宜設定することができる。例えば、好ましくは、0.0005~100質量%、より好ましくは0.005~90質量%、さらに好ましくは0.05~80質量%である。

【0046】
本発明の神経変性疾患の予防又は治療剤の投与量は、神経変性疾患の予防又は治療効果が発揮される量(予防又は治療有効量)である限り特に制限されず、患者の年齢、患者の症状の程度、その他の条件等に応じて適宜選択され得る。通常当該剤中の有効成分の量が、好ましくは成人一日あたり1~1000mg、より好ましくは10~100mg、さらに好ましくは10~50mgの範囲となる量を目安とするのが好ましい。なお、1日1回又は複数回(好ましくは2~3回)に分けて投与することができる。本発明の神経変性疾患の予防又は治療剤は、好ましくは一回の投与により比較的長時間効果を持続することができるものであり、例えば好ましくは10時間程度効果を持続し得るものである。

【0047】
また、本発明の神経変性疾患の予防又は治療剤を投与する対象は、ヒトのみならず、その他の哺乳類であってもよい。このような哺乳類としては例えば家畜やペット、実験動物などとして飼育されるものが想定でき、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、サル、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター等が例示できる。

【0048】
本発明の神経変性疾患の予防又は治療剤の投与時期は特に限定されず、例えば製剤形態、患者の年齢、患者の症状の程度等を考慮して適宜投与時期を選択することが可能である。また、投与形態も特に限定されないが、公知の投与形態を用いることができるが、特に経血管投与(経静脈投与等)又は経口投与が好適である。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
以下の実験では、培養細胞としてラット副腎褐色細胞 (PC-12)を用いた。当該細胞は財団法人 ヒューマンサイエンス振興財団・ヒューマンサイエンス研究資源バンクより分譲頂いた。また、以下の検討において、細胞の培養、プロテアソーム活性の測定、及び細胞生存率の検討は、次のようにして行った。
〔細胞培養方法〕
10%馬血清および5%牛胎児血清を含むDMEM培地(以下、特に断らない限り、この培地を細胞培養に用いた)で80%コフルエント状態になるまで5%CO2インキュベーター内で3~5日間37℃で培養した。ピペッティング処理によって細胞を剥がした後、細胞数を2.5×10 cells/mlになるように調整した。96well plateに細胞浮遊液を100μLずつ添加し、1晩37℃で細胞を付着させた。その後、神経成長因子(NGF)を50 ng/mlの濃度で添加し、2日間さらに培養して神経細胞への分化誘導を行ったものを実験に用いた。
〔プロテアソーム活性測定方法〕
プロテアソーム活性の測定は、proteasome -GloTM Cell Based Assay kit (Promega)を用いて行った。なお、当該キットにはProteasome-GloTM Cell Based Assay Reagentが備えられており、当該Reagentは、プロテアソームに対する発光基質、Suc-LLVY-aminoluciferinがバッファーに溶解したものであって、実験系に当該Reagentが添加されると、プロテアソームによる基質の切断、さらにルシフェラーゼ反応による発光シグナルの生成が直ちに起こる。この発光シグナルが細胞内のプロテアソーム活性量に比例していることを利用して、プロテアソーム活性化を測定できる。
〔細胞生存率の検討方法〕
細胞生存率の検討は、MTT法を用いて行った。なお、当該方法は、MTT 〔3 - ( 4, 5 - Dimethylthial - 2 - yl ) - 2, 5-Diphenyltetrazalium Bromide〕は淡黄色の基質であるところ、生細胞のミトコンドリアにより開裂して(死細胞では開裂しない)晴青色のホルマザン(Formazan)を生成する性質があり、このホルマザンの生成量が生細胞数と相関していることを利用して、細胞生存率を検討する方法である。
【実施例】
【0051】
検討1:ACAがプロテアソーム活性へ及ぼす効果の検討
上述したように分化誘導を行った培養細胞について、培地を交換し、これと同時にサンプル(ACA、培地に加えた際の終濃度2.5μM)を添加した後、1、3、6、9又は24時間培養を行った。また、サンプルを加えない実験(コントロール)も同時に行った。そして、プロテアソーム活性を測定した。当該結果を図2に示す。またさらに、同様の実験を、ACA終濃度が0、1.25、2.5又は5.0μMとなるように調整した上で行い、プロテアソーム活性を測定した。当該結果を図3に示す。
【実施例】
【0052】
これらの結果から、ACAがプロテアソームを活性化する作用を有すること、及び低濃度(少なくとも1.25μM以上)のACAによってもプロテアソームの活性化が起こること、がわかった。さらに、当該プロテアソーム活性化効果は、少なくとも9時間は持続することがわかった。
【実施例】
【0053】
検討2:ACA類似化合物がプロテアソーム活性へ及ぼす効果の検討
上記表1に記載の各ACA類似化合物(但しクマル酸は除く)、及び下記表2に記載のACA類似化合物、計10種類のACA類似化合物について、上記検討1でACAについて行った検討と同様の検討を行った。なお、表2に記載の化合物の化学構造式を図4に示す。
【実施例】
【0054】
【表2】
JP0006122652B2_000018t.gif
【実施例】
【0055】
当該検討結果をグラフ化したものを図5a及び図5bに示す。なお、これらのグラフでは、各化合物を加えなかった例をコントロールとして表示している。表1に記載の化合物は、全てプロテアソームを活性化した(有意差あり)が、表2に記載の化合物にはプロテアソーム活性化作用はほとんど認められなかった(有意差なし)。このことから、ACA類似化合物であっても、プロテアソーム活性化効果を有する化合物と有さない化合物が存在することがわかった。
【実施例】
【0056】
検討3:アミロイドβの細胞毒性に及ぼすACAの影響の検討
神経細胞にアミロイドβを曝露させることによって作製したアルツハイマー病モデル細胞において、アミロイドβの細胞毒性に及ぼすACAの影響について検討した。なお、アルツハイマー病は脳神経細胞内でのアミロイドβの蓄積により引き起こされる可能性が高いことはよく知られている。
【実施例】
【0057】
具体的には、次のようにして検討した。すなわち、上述したように分化誘導を行った培養細胞について、培地を交換し、これと同時にサンプル(ACA、培地に加えた際の終濃度が0、1.25、又は2.5μM)を添加し、サンプルを添加して1時間後にアミロイドβペプチドを添加(培地へ加えた際の終濃度が10又は20μM)し、それから20時間培養してからMTT試薬を加え、さらに4時間培養して、生成したホルマザン量を光度計にて測定し、細胞生存率を求めた。なお、アミロイドβペプチドはSigma社から購入したものを用いた。
【実施例】
【0058】
結果をグラフ化したものを図6に示す。なお、図6には、アミロイドβを加えずに同様に実験した結果も併せて示す。当該結果から、アミロイドβは神経細胞の細胞生存率を著しく低下(有意差あり)させた一方、ACAを添加するとアミロイドβによる細胞毒性が抑制される(有意差あり)ことがわかった。このことから、ACAが特にアルツハイマー病の予防又は治療に有効であろうことが確認できた。
【実施例】
【0059】
検討4:マンガンの細胞毒性に及び素ACAおよびACAi-OHの影響の検討
神経細胞にマンガンを曝露させることによりパーキンソン病モデル細胞を作製し、マンガンの細胞毒性に対するACAおよびACAi-OHの影響を検討した。なお、神経細胞にマンガンを曝露させることによりパーキンソン病モデルを作製できることは、例えばBRAIN RESEARCH (2010) 201-207や、Free Radical Biology & Medicine, 36: 1144-1154, 2004に記載されるように、公知である。
【実施例】
【0060】
具体的には、サンプルとしてACA又はACAi-OAを用い、アミロイドβペプチドの代わりに二塩化マンガン(MnCl)を添加(培地へ加えた際の終濃度が300又は600μM)した以外は、上記検討3と同様にして検討を行った。結果をグラフ化したものを図7a及び図7bに示す。当該結果から、ACAおよびACAi-OHは、添加濃度に依存してマンガンの細胞毒性を抑制することがわかった。このことから、ACAおよびACAi-OHが特にパーキンソン病の予防又は治療に有効であろうことが確認できた。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5a】
4
【図5b】
5
【図6】
6
【図7a】
7
【図7b】
8