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明細書 :ホウ素中性子捕捉療法用組成物およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-172822 (P2014-172822A)
公開日 平成26年9月22日(2014.9.22)
発明の名称または考案の名称 ホウ素中性子捕捉療法用組成物およびその製造方法
国際特許分類 A61K  33/22        (2006.01)
A61K  33/24        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K   9/10        (2006.01)
A61K  47/36        (2006.01)
A61K  41/00        (2006.01)
FI A61K 33/22
A61K 33/24
A61P 35/00
A61K 9/10
A61K 47/36
A61K 41/00
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2013-044160 (P2013-044160)
出願日 平成25年3月6日(2013.3.6)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成25年1月(頒布日 平成25年1月28日) 文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究「融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓」総括班発行の『第6回公開シンポジウム(平成24年度第2回)「融合マテリアル 分子制御による材料創成と機能開拓-自然と調和して永続的に発展可能な人類のための「材料調和社会」の実現にむけて-」講演要旨集』および 平成25年1月(頒布日 平成25年1月29日) 文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究「融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓」総括班発行の『第6回公開シンポジウム「融合マテリアル 分子制御による材料創成と機能開拓-自然と調和して永続的に発展可能な人類のための「材料調和社会」の実現にむけて-」講演要旨集』において発表
発明者または考案者 【氏名】長▲崎▼ 健
【氏名】冨田 恒之
出願人 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100065248、【弁理士】、【氏名又は名称】野河 信太郎
【識別番号】100159385、【弁理士】、【氏名又は名称】甲斐 伸二
【識別番号】100163407、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 裕輔
【識別番号】100166936、【弁理士】、【氏名又は名称】稲本 潔
【識別番号】100174883、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 雅己
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4C084
4C086
Fターム 4C076AA22
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE37N
4C076GG41
4C084AA11
4C084MA23
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086HA05
4C086HA23
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
要約 【課題】本発明は、ホウ素中性子捕捉療法に好適な新規ホウ素化合物を提供することを課題とする。
【解決手段】ホウ素化合物の溶液と、希土類化合物の溶液とを混合する工程と、この工程で得られた混合液から含ホウ素希土類化合物の沈殿物を得る工程とにより、この含ホウ素希土類化合物を有効成分として含んでなるホウ素中性子捕捉療法用組成物を得ることにより、上記の課題を解決する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の式(I):
2-xx3-y(OH)2y (I)
(式中、Rは希土類原子であり、xおよびyはそれぞれ0.5≦x≦1.5および0≦y≦3を満たす数である)
で表される含ホウ素希土類化合物を有効成分として含んでなる、ホウ素中性子捕捉療法用組成物。
【請求項2】
式(I)において、Rが、イットリウム、サマリウム、ガドリニウム、ユウロピウム、セリウムおよびテルビウムからなる群より選択される少なくとも1種の希土類原子である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
含ホウ素希土類化合物が、アニオン性高分子で表面修飾されている請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
含ホウ素希土類化合物の体積平均粒径が、50~300 nmである請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
注射剤の形態にある請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
含ホウ素希土類化合物の濃度が200~5,000 ppmである請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
ホウ素化合物の溶液と、希土類化合物の溶液とを混合する工程と、
前記工程で得られた混合液から含ホウ素希土類化合物の沈殿物を得る工程と
を含む、ホウ素中性子捕捉療法用組成物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、含ホウ素希土類化合物を有効成分として含んでなるホウ素中性子捕捉療法用組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、がんの新規治療法として、放射線療法の一種である「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)が注目されている。BNCTでは、中性子の吸収断面積の大きいホウ素10 (10B)が中性子線の照射により核反応を起こし、細胞殺傷力を有するアルファ線およびリチウム核に分裂する性質を利用している。ここで、この核反応によって生じるアルファ線およびリチウム核の飛程は10μm以下と細胞1つ分程度である。したがって、BNCTでは、ホウ素含有薬剤をがん細胞に取り込ませ、人体に悪影響のない低エネルギーの中性子線(熱中性子線)を照射することで発生するアルファ線およびリチウム核により、がん細胞を選択的に死滅させることができる。
【0003】
現在、BNCTに実際に用いられているホウ素含有薬剤としては、p-ボロノフェニルアラニン(BPA)およびメルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)がある。BNCTでは、このようなホウ素化合物をがん患者に投与して、ホウ素を十分な濃度で腫瘍に選択的に蓄積させることが重要となる。しかし、BPAやBSHのような低分子のホウ素化合物は細胞選択性に乏しく、腫瘍への集積性もBNCTで治療効果をあげるのに十分ではなかった。
【0004】
そこで、がん細胞に対する選択性と蓄積性を向上させたホウ素化合物の研究・開発が行なわれている。例えば、ホウ素化合物のがん細胞に対する親和性を高めることによって、がん細胞におけるホウ素化合物の取り込み量を向上させるアプローチから、がん細胞に選択的に認識されるリガンドを結合させたBSHや、ポリアミンなどで高分子化させたBSHなどが開発されている。本発明者も、メラノーマに親和性のあるコウジ酸で修飾したホウ素化合物とシクロデキストリン誘導体との錯体をこれまでに開発している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2012-153647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、BNCTのためのホウ素化合物は種々のものが開発されてきているが、BNCTで十分な治療効果をあげるためには、がん細胞におけるホウ素化合物の蓄積性をさらに改善する必要がある。そこで、本発明者らは、ナノ粒子化したホウ素化合物において1粒子当たりのホウ素含量を高めることによって大量のホウ素をがん細胞に送達させるアプローチから、BNCTに好適な新規ホウ素化合物について研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、下記の式(I):
2-xx3-y(OH)2y (I)
(式中、Rは希土類原子であり、xおよびyはそれぞれ0.5≦x≦1.5および0≦y≦3を満たす数である)
で表される含ホウ素希土類化合物を有効成分として含んでなる、ホウ素中性子捕捉療法用組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、ホウ素化合物の溶液と、希土類化合物の溶液とを混合する工程と、
上記工程で得られた混合液から含ホウ素希土類化合物の沈殿物を得る工程と
を含む、ホウ素中性子捕捉療法用組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のホウ素中性子捕捉療法用組成物は、がん細胞における蓄積性に優れていることから、より少ない投与量でホウ素の局所濃度をBNCTによる治療に十分なものにすることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】含ホウ素サマリウム化合物の粒子を透過型電子顕微鏡で撮影した写真である。
【図2】BNCT後の担がんマウスの体重の変化を示すグラフである。
【図3】BNCT後の担がんマウスの腫瘍体積の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.ホウ素中性子捕捉療法用組成物]
本発明のホウ素中性子捕捉療法用組成物(以下、単に「組成物」ともいう)は、
下記の式(I):
2-xx3-y(OH)2y (I)
(式中、Rは希土類原子であり、xおよびyはそれぞれ0.5≦x≦1.5および0≦y≦3を満たす数である)
で表される含ホウ素希土類化合物を有効成分として含んでなることを特徴とする。

【0012】
本発明の実施形態において、式(I)中のRは、希土類に属する原子の中から適宜選択できるが、好ましくはイットリウム、サマリウム、ガドリニウム、ユウロピウム、セリウムおよびテルビウムからなる群より選択される少なくとも1種の希土類原子であり、より好ましくはイットリウムである。

【0013】
本発明の別の実施形態においては、式(I)中のRについて、イットリウム、サマリウムおよびガドリニウムから選択される少なくとも1種をベースとして、ユウロピウム、セリウムおよびテルビウムから選択される少なくとも1種を組み合わせることにより、蛍光性の含ホウ素希土類化合物(以下、蛍光体ともいう)とすることができる。そのような蛍光体は、紫外線などの励起光の照射により赤色光または緑色光を発する。本発明の組成物において、含ホウ素希土類化合物をそのような蛍光体の形態にした場合、該組成物を生体に投与した後、励起光を射出可能な装置を備えた内視鏡などによって患部に励起光を照射することで、腫瘍における含ホウ素希土類化合物の取り込みの程度を蛍光強度から判断することも可能となる。

【0014】
本発明の組成物に含まれる含ホウ素希土類化合物は、その組成が上記の式(I)で表される限り、含ホウ素希土類酸化物、含ホウ素希土類水酸化物またはそれらの混合物であってもよい。含ホウ素希土類酸化物としては、例えばRBO3およびその水和物RBO3・nH2O (nは1~3の整数)などが挙げられ、含ホウ素希土類水酸化物としては、例えばRB(OH)6などが挙げられる。また、含ホウ素希土類化合物が酸化物と水酸化物の混合物である場合、その混合比は特に限定されず、製造条件などに依存するか、または適宜決定することができる。なお、本明細書において、式(I)で表される含ホウ素希土類化合物中の各原子の存在量、すなわち式中のxおよびyの各値は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析および/または電子線マイクロアナライザ(EPMA)による測定結果に基づいて決定することができる。

【0015】
本発明の実施形態において、含ホウ素希土類化合物の構造は特に限定されず、製造条件などに応じて、多結晶であってもよいし、アモルファスであってもよい。なお、本発明の組成物をBNCTに用いるに当たっては、含ホウ素希土類化合物の構造は治療効果に特に影響を及ぼさない。

【0016】
ホウ素の核種には10Bおよび11Bがあるが、天然におけるそれぞれの核種の存在比は10Bが約20%であり、11Bが約80%であることが知られている。したがって、本発明の組成物の含ホウ素希土類化合物においては、全ホウ素の約20%がBNCTに有用な10Bであると考えられる。本発明においては、1粒子当たりのホウ素含量を高めているので10Bの含有率を高めることは特に必要ではないが、10Bの含有率を任意に20~100%の範囲とすることができる。なお、10B含量を高める方法は当該技術において公知である。

【0017】
本発明の実施形態において、含ホウ素希土類化合物の体積平均粒径は特に限定されず、少なくとも1nm以上の粒径を有する粒子を製造することができるが、細胞選択性および腫瘍組織への蓄積性(EPR効果)を考慮すると、該化合物の体積平均粒径は50~300 nm程度が好ましく、80~250 nm程度がより好ましい。また、含ホウ素希土類化合物の形状も特に限定されず、製造条件に応じて種々の形状を取り得る。そのような形状としては、例えば、球形、立方体型、六角板状、針状、棒状などが挙げられる。

【0018】
本発明の実施形態において、含ホウ素希土類化合物の表面電位は特に限定されないが、血液中での安定性を考慮すると、該化合物は電荷を有しないか又はその表面電位が負であることが好ましい。そこで、含ホウ素希土類化合物の表面電位(ゼータ電位)を調節するために、該化合物は任意にアニオン性高分子で表面修飾されていてもよい。ここで、「表面修飾される」とは、含ホウ素希土類化合物の表面にアニオン性高分子を物理学的もしくは化学的に結合させるか、または該化合物の表面をアニオン性高分子で被覆することを意図する。アニオン性高分子で表面修飾する方法自体は当該技術において公知であり、例えば、物理的吸着によりアニオン性高分子で含ホウ素希土類化合物を被覆してもよいし、共有結合または非共有結合(例えばイオン結合や水素結合)により該化合物の表面にアニオン性高分子を結合させてもよい。

【0019】
そのようなアニオン性高分子としては、生体に適合するアニオン性高分子が好ましく、例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、コラーゲン、ゼラチン、ヘパリン類、デキストラン硫酸、アルギン酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸などが挙げられる。

【0020】
本発明の実施形態においては、含ホウ素希土類化合物の血中安定性を向上させる目的で、該化合物の表面に生体適合性の非イオン性高分子鎖を結合させていてもよい。そのような生体適合性の非イオン性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸などが挙げられ、それらの中でもポリエチレングリコールが好ましい。なお、含ホウ素希土類化合物の表面に非イオン性高分子鎖を結合させる方法自体は当該技術において公知である。

【0021】
本発明の組成物は、医薬的に許容される添加物を含んでいてもよい。そのような添加物は当該技術において公知であり、例えば本発明の組成物を注射剤とする場合は、添加物として、注射用蒸留水もしくは生理食塩水などの溶媒、緩衝剤、等張化剤、pH調整剤、抗酸化剤、保存剤などが挙げられる。また、本発明の組成物は、含ホウ素希土類化合物を電気的に中性または陰性にすることができる添加剤、例えば上記のアニオン性高分子の溶液やアニオン性界面活性剤などを含んでいてもよい。

【0022】
本発明の組成物の投与方法としては、注射(静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、皮内、脊髄内、腹腔内など)、点滴、経口投与、局所塗布、点眼などのいずれであってもよいが、好ましくは注射または点滴である。本発明の組成物の投与量について、BNCTで治療効果をあげるためには腫瘍におけるホウ素濃度が30 ppm以上となることが望ましいことから、投与量は腫瘍の大きさなどに応じて決定することができる。

【0023】
本発明の好ましい実施形態においては、組成物は注射剤(点滴用の大容量注射剤を含む)の形態で提供される。この場合、本発明の組成物中の含ホウ素希土類化合物の濃度は、生体への投与に適する範囲内で適宜設定できるが、通常100~20,000 ppmであり、好ましくは200~5,000 ppmである。

【0024】
本発明の別の実施形態において、本発明の組成物の含ホウ素希土類化合物をユウロピウムまたはテルビウムとの複合体(固溶体)とすることにより、蛍光体とすることもできる。

【0025】
[2.製造方法]
本発明の組成物の製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう)は、ホウ素化合物の溶液と、希土類化合物の溶液とを混合する工程と、該工程で得られた混合液から含ホウ素希土類化合物の沈殿物を得る工程とを含むことを特徴とする。

【0026】
本発明の実施形態において、原料となるホウ素化合物は、水性溶媒に溶解してホウ酸イオンを生じるものが好ましく、例えば、ホウ酸、または、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリn-プロピル、ホウ酸トリn-ブチルなどのホウ酸エステルもしくはホウ砂(四ホウ酸二ナトリウム・十水和物)などのホウ酸塩などが挙げられる。また、原料となる希土類化合物は、水性溶媒に溶解して希土類のイオンを生じるものが好ましく、例えば、希土類の硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、希土類塩化物、希土類水酸化物、希土類酸化物、希土類臭化物、希土類水素化物、希土類窒化物などが挙げられる。なお、これらの原料は、当該技術において一般に製造または入手可能である。

【0027】
ホウ素化合物および希土類化合物の溶媒は、各化合物を溶解可能な水性溶媒であれば特に限定されないが、好ましく蒸留水である。

【0028】
ホウ素化合物の溶液と、希土類化合物の溶液との混合比は特に限定されないが、例えば、希土類とホウ素とのモル比で表して1:1~100程度となるように混合することができる。混合の条件は特に限定されず、ホウ素化合物の溶液に希土類化合物の溶液を添加するか、または希土類化合物の溶液にホウ素化合物の溶液を添加した後、適宜撹拌すればよい。

【0029】
本発明の製造方法では、上記のようにして得られた混合液から含ホウ素希土類化合物の沈殿物を得る。沈殿物を得る手段は特に限定されないが、均一な粒径の沈殿物を得る観点から、均一沈殿法が特に好ましい。なお、均一沈殿法は当該技術において公知の方法であり、沈殿剤に代えて、沈殿剤生成試薬を溶液に添加することにより、沈殿剤を徐々に生成させて沈殿物を得る方法である。均一沈殿法では、沈殿剤が溶液中に均一に分布することから、生じる沈殿物の粒径や結晶構造などのばらつきが少なくなるという利点がある。

【0030】
本発明の実施形態においては、上記の混合工程で得られた混合液に沈殿剤生成試薬を添加して、加熱しながら撹拌することが好ましい。そのような沈殿剤生成試薬としては、加水分解によって、沈殿剤であるアンモニアを生成するものが好ましく、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、尿素、チオ尿素、エチレンジアミン、スルファミン酸などが挙げられる。それらの中でも、ヘキサメチレンテトラミンが特に好ましい。

【0031】
本発明の実施形態において、沈殿剤生成試薬の添加量は特に限定されず、所望の沈殿物が得られる量を添加すればよい。また、加熱温度と時間は適宜決定できるが、例えば80~150℃で1~5時間程度撹拌すればよい。また、撹拌速度は特に限定されず、例えば100~500 rpm程度であればよい。

【0032】
上記の沈殿工程を経て、上記の式(I)で表される含ホウ素希土類化合物の粒子を得ることができる。なお、得られた粒子を任意に蒸留水などで洗浄してもよい。また、所望の粒径の粒子を選別するために、適当な孔径のフィルターなどを用いて濾過してもよい。

【0033】
本発明の別の実施形態においては、上記の混合工程において、ユウロピウムまたはテルビウムの塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩など)の溶液をさらに添加することにより、上記の蛍光性の含ホウ素希土類化合物を得ることができる。

【0034】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
実施例1
(1) 含ホウ素希土類化合物の合成
200 mlのビーカーに硝酸イットリウム(5mmol、三津和化学薬品株式会社)を入れ、蒸留水(100 ml)で溶解させた。ここに、ホウ酸(15 mmol、和光純薬工業株式会社)を加えて完全に溶解させた後、ヘキサメチレンテトラミン(15 mmol、和光純薬工業株式会社)を加えた。ラップでビーカーにふたをし、混合液を、120℃、300 rpmに設定したホットスターラーで3時間加熱撹拌した。得られた液を、15,000 rpmで10分間遠心分離した後、上清を除去し、沈殿物を蒸留水(100 ml)で洗浄した。再度、15,000 rpmで10分遠心分離した後、上清を除去して、ゾル状の含ホウ素イットリウム化合物(740 mg)を得た。また、硝酸イットリウムに代えて、硝酸ガドリニウムまたは硝酸サマリウム(それぞれ5mmol、三津和化学薬品株式会社)を用いたこと以外は上記と同様にして、含ホウ素ガドリニウム化合物(1,100 mg)および含ホウ素サマリウム化合物(1,050 mg)を得た。
【実施例】
【0036】
(2) 含ホウ素希土類化合物のナノ粒子懸濁液の調製
上記で得られた各化合物に、300 mg/mlの濃度となるように超純水を加えてボルテックスミキサーで撹拌した。得られた液を超音波槽5510(Branson社)に24時間入れた後、3,000 rpmで10分遠心分離した。得られた上清を孔径0.45μmのメンブレンフィルターDISMIC-25CS (ADVANTEC社)で濾過して、含ホウ素希土類化合物のナノ粒子懸濁液を得た。得られた懸濁液を、Vista-MPX(エスアイアイ・ナノテクノロジー社)を用いてICP発光分光分析を行って、各元素の含有量を決定した。各懸濁液におけるホウ素および希土類の濃度を、表1に示す。
【実施例】
【0037】
【表1】
JP2014172822A_000002t.gif
【実施例】
【0038】
(3) 含ホウ素希土類化合物の物性評価
含ホウ素希土類化合物について、ゼータサイザーナノ(マルバーン社)を用いて動的光散乱測定を行って、該化合物の粒子の平均粒径を求めた。また、ゼータサイザーナノ(マルバーン社)を用いてレーザードップラー法によるゼータ電位の測定を行った。測定結果を表2に示す。さらに、透過型電子顕微鏡日立H-7000(株式会社日立製作所)を用いて、粒子を直接観察した。顕微鏡写真を図1に示す(但し、含ホウ素サマリウム化合物のみ)。
【実施例】
【0039】
【表2】
JP2014172822A_000003t.gif
【実施例】
【0040】
表2および図1より、いずれの含ホウ素希土類化合物もナノ粒子として水中で分散し、粒径もEPR効果が期待される100 nm前後であった。他方で、いずれの化合物も表面電荷が正電荷であった。そこで、ナノ粒子の腫瘍への取り込みをより改善するために、粒子のアニオン性高分子による表面修飾を行うこととした。
【実施例】
【0041】
(4) ナノ粒子のアニオン性高分子による表面修飾
コンドロイチン硫酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社)を超純水に溶解させて、10 mg/ml溶液を調製した。上記(2)で調製した各含ホウ素希土類化合物の溶液(100μl)に、コンドロイチン硫酸の溶液(1.2 ml)を加えて混合し、化合物の粒子表面をアニオン性高分子で被覆した。そして、上記(3)と同様にして、平均粒径およびゼータ電位を測定した。結果を表3に示す。
【実施例】
【0042】
【表3】
JP2014172822A_000004t.gif
【実施例】
【0043】
アニオン性高分子で被覆により平均粒径は増大したが、依然としてEPR効果が期待できるサイズであった。また、表面電荷も負であったことから、粒子の血中安定性の向上が期待される。
【実施例】
【0044】
(5) BNCT用組成物の調製
上記(4)で得られた各粒子を、以下の表4に示す濃度の水溶液に調製して、本発明の組成物とした。なお、表4中、「Sm only」はコンドロイチン硫酸で被覆していない含ホウ素サマリウム化合物を意味する。また、「ch」はコンドロイチン硫酸で被覆した含ホウ素希土類化合物であることを意味する。
【実施例】
【0045】
【表4】
JP2014172822A_000005t.gif
【実施例】
【0046】
(6) 担がんマウスにおけるBNCTによる腫瘍増殖抑制効果の検討
Balb/cマウス(オス、4週齢、日本SLC社より入手)の右大腿部にcolon26細胞(5×105 cells/50μl)を皮下注射して、14日間飼育した。得られた担がんマウスを、以下の表5に示すように10群に無作為に振り分けた(各群6匹)。
【実施例】
【0047】
【表5】
JP2014172822A_000006t.gif
【実施例】
【0048】
なお、表5において、第1群は、本発明の組成物の投与および中性子線の照射を行わない群である。第2群は、本発明の組成物の投与は行わず、中性子線の照射のみを行う群である。また、表5中の「cold」中性子線の照射を行わないことを示し、「hot」は中性子線の照射を行うことを示す。
【実施例】
【0049】
第3群~第10群の担がんマウスに各BNCT用組成物(200μl)を腹腔内投与した。投与から12時間後、京都大学原子炉実験所にてマウスに中性子線(5MW、18分間、5×1012フルーエンス/cm)を照射した。その後のマウスの生存、体重、腫瘍体積を計測した。なお、腫瘍体積は、腫瘍の長軸長および短軸長を電子ノギスで測定し、体積=1/2×長軸(mm)×[短軸(mm)]2の式を用いて算出した。マウスの体重変化および腫瘍体積変化を示すグラフをそれぞれ図2および3に示す。なお、図2および3では、中性子線の照射直前の体重および腫瘍体積を1とした場合の相対比変化を示している。
【実施例】
【0050】
マウスの生存に関しては、観察5週間以内で、第3群で2匹、並びに第2、4、6、7、9および10群で各1匹が死亡した。体重変化に関しては、中性子線を照射された群において、初期に若干の体重減少が見られたが、2週間目以降は体重が徐々に増加した。このことから、中性子線照射による毒性などの影響は少ないことがわかる。腫瘍体積に関しては、コンドロイチン硫酸で被覆した含ホウ素イットリウム化合物が、最も大きい腫瘍増殖抑制効果を奏することがわかる。また、含ホウ素サマリウム化合物、並びにコンドロイチン硫酸で被覆した含ホウ素サマリウム化合物および含ホウ素ガドリニウム化合物も、中性子線を照射しなかった群よりも腫瘍体積の増加が抑えられていたことから、腫瘍増殖抑制効果を奏することがわかる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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