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明細書 :繊維強化プラスチック製品の部分修復方法及びその処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-094464 (P2014-094464A)
公開日 平成26年5月22日(2014.5.22)
発明の名称または考案の名称 繊維強化プラスチック製品の部分修復方法及びその処理装置
国際特許分類 B29C  73/02        (2006.01)
B29C  73/24        (2006.01)
FI B29C 73/02
B29C 73/24
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2012-245876 (P2012-245876)
出願日 平成24年11月8日(2012.11.8)
発明者または考案者 【氏名】水口 仁
【氏名】塚田 祐一郎
【氏名】高橋 宏雄
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4F213
Fターム 4F213AD02
4F213AD16
4F213AK03
4F213AK04
4F213WA83
4F213WA87
4F213WA94
4F213WB01
4F213WM01
要約 【課題】 繊維強化プラスチック材に使用されている強化繊維をそのまま生かして損傷個所を修復するといった処理に利用することができる繊維強化プラスチック製品の部分修復材の処理方法及び処理装置を提供する。
【解決手段】 繊維強化プラスチック材10の処理対象個所12の表面に酸化物半導体14を付着させる工程と、酸化物半導体14が付着した処理対象個所12のみを、酸化物半導体14が熱活性化する温度以上に加熱し、処理対象個所12のポリマーを除去する工程と、ポリマーが除去された12処理対象個所にポリマー18を補充し、ポリマー18を硬化させる工程とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
繊維強化プラスチック材の処理対象個所の表面に酸化物半導体を付着させる工程と、
前記酸化物半導体が付着した処理対象個所のみを、前記酸化物半導体が熱活性化する温度以上に加熱し、処理対象個所のポリマーを除去する工程と、
ポリマーが除去された前記処理対象個所にポリマーを補充し、ポリマーを硬化させる工程と、
を備えることを特徴とする繊維強化プラスチック製品の部分修復方法。
【請求項2】
前記酸化物半導体を付着させる工程において、
酸化物半導体の懸濁液を処理対象個所に塗布して処理対象個所に酸化物半導体を付着させることを特徴とする請求項1記載の繊維強化プラスチック製品の部分修復方法。
【請求項3】
前記処理対象個所のみを、前記酸化物半導体が熱活性化する温度以上に加熱する加熱手段として、
フレーム(ガスバーナー)、パラボラ付き赤外線ランプ、赤外線ヒータ、あるいはレーザーを用いることを特徴とする請求項1または2記載の繊維強化プラスチック製品の部分修復方法。
【請求項4】
前記ポリマーを硬化させる工程において、
繊維強化プラスチック材を構成するポリマーと同一のポリマーを使用することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の繊維強化プラスチック製品の部分修復方法。
【請求項5】
繊維強化プラスチック製品材の処理対象個所の表面に酸化物半導体を付着させる手段と、
前記酸化物半導体が付着した処理対象個所のみを、前記酸化物半導体が熱活性化する温度以上に加熱し、処理対象個所のポリマーを除去する加熱手段と、
ポリマーが除去された前記処理対象個所にポリマーを補充し、ポリマーを熱硬化させる手段とを備えることを特徴とする繊維強化プラスチック製品の処理装置。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンファイバあるいはグラスファイバー等の強化繊維を用いて強化された繊維強化プラスチック材あるいは繊維強化プラスチック材からなる製品の修復に利用することができる繊維強化プラスチック製品の部分修復方法及び繊維強化プラスチック製品の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(fiber reinforced plastic: FRP)は“強くて軽い”を旗印に開発が急速に進み、昨今では航空機や、船舶、浴槽、浄化槽、電子機器の基板、スポーツ用品などに幅広く使われている。一方、その高い強度や安定性のため、廃棄処理を行うような場合には、FRPの分解やリサイクルが進まず、埋め立て処理を行なっているのが現状である。
【0003】
ところで、本願の発明者の一人は、有機物、ポリマー、ガス体等の被処理物を分解する方法として、半導体を真性電気伝導領域(以下、真性領域と略記)となる温度に加熱して電子・正孔キャリアーを大量に発生させ、酸化力の強い正孔の作用を利用することにより、酸素の存在下において被処理物を完全分解する処理方法について提案した(特許文献1)。酸化クロム、酸化チタン等の酸化物半導体を350~500℃程度に加熱すると、正孔が大量に生成され、この正孔の強い酸化力により、被分解対象物は小分子に裁断化され、最終的にこれらの小分子が空気中の酸素と反応して、水と二酸化炭素に完全分解される(非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第4517146号
【0005】

【非特許文献1】J. Mizuguchi and T. Shinbara: Disposal ofused optical disks utilizing thermally-excited holes in titanium dioxide athigh temperatures: A complete decomposition of polycarbonate, J. Appl. Phys. 96,3514-3519 (2004)
【非特許文献2】Shinbara, T. Makino, K. Matsumoto and J. Mizuguchi: Completedecomposition of polymers by means of thermally generated holes at hightemperatures in titanium dioxide and its decomposition mechanism, J. Appl. Phys98, 044909 1-5 (2005)
【非特許文献3】水口 仁:半導体の熱活性によるFRPの完全分解とリサイクル技術、加工技術47, 37-47 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように繊維強化プラスチック(FRP)は分解やリサイクルが困難であるという問題の他に、FRPからなる製品が部分的に損傷した際に、その損傷部分を修復することが困難であるという問題がある。部分的に損傷したFRP製品を修復する場合、従来は、グラインダー等で損傷箇所を削り取り、そこに新たに強化繊維の織布をあて、ポリマーを塗布する方法、あるいはチップ状の強化繊維を含んだポリマーを塗布する方法をとっている。この修復方法は、見かけ上は綺麗に修復されても、修復時に強化繊維を削り取るため、強化繊維を切断してしまうという大きな欠点があり、FRPの強度低下は避けられない。
【0007】
本発明はこれらの課題を解消すべくなされたものであり、FRP製品に使用されている強化繊維を損なうことなく損傷個所を修復する繊維強化プラスチック製品の部分修復方法及びその処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る繊維強化プラスチック製品の部分修復方法は、繊維強化プラスチック材の処理対象個所の表面に酸化物半導体を付着させる工程と、前記酸化物半導体が付着した処理対象個所のみを、前記酸化物半導体が熱活性化する温度以上に加熱し、処理対象個所のポリマーを除去する工程と、ポリマーが除去された前記処理対象個所にポリマーを補充し、ポリマーを熱硬化させる工程とを備えることを特徴とする。
本出願に係る繊維強化プラスチック製品の部分修復方法は、繊維強化プラスチックからなる各種製品(最終製品)についてはもちろん、繊維強化プラスチック材料そのものについて適用することもできる。処理対象である繊維強化プラスチック製品は、材質、形状、用途が限定されるものではなく、使用される強化繊維の素材についても限定されるものではない。
【0009】
前記酸化物半導体を付着させる工程においては、酸化物半導体の懸濁液を処理対象個所に塗布して処理対象個所に酸化物半導体を付着させることにより、好適に繊維強化プラスチック製品を処理することができる。なお、懸濁液を塗布する方法の他に、粉末状の酸化物半導体を処理対象個所の表面に敷き詰めるようにして処理することもできる。酸化物半導体を付着させるとは、酸化物半導体の懸濁液あるいは粉末を処理対象個所に接触させるようにして供給する操作を意味する。
【0010】
前記酸化物半導体を付着させた前記処理対象個所を熱活性化する加熱手段としては、カートリッジ・ヒータ、赤外線ヒータ、フレーム(ガスバーナー)あるいはレーザー等の加熱手段を利用することができる。フレーム(ガスバーナー)や赤外線集光用のパラボラを備えた赤外線ランプを利用する方法は手軽に利用できる点で特に有効である。
前記ポリマーを硬化させる工程においては、繊維強化プラスチック材を構成するポリマー母体と同一のポリマーを使用することにより好適に処理することができる。
【0011】
また、本発明に係る繊維強化プラスチック材の処理装置は、繊維強化プラスチック材の処理対象個所の表面に酸化物半導体を付着させる手段と、前記酸化物半導体が付着した処理対象個所のみを、前記酸化物半導体が熱活性化する温度以上に加熱し、処理対象個所のポリマーを除去する加熱手段と、ポリマーが除去された前記処理対象個所にポリマーを補充し、ポリマーを熱硬化させる手段とを備えることを特徴とする。
処理対象個所に酸化物半導体を付着させる手段としては、酸化物半導体の懸濁液をスプレーするスプレー装置等がある。また、加熱手段としては、パラボラ付き赤外線ランプとX-Y移動が可能な制御装置とを組み合わせ、パラボラ付き赤外線ランプを処理対象個所に合わせて走査させて加熱する方法などが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る繊維強化プラスチック製品の部分修復方法によれば、処理対象物の強化繊維を損傷させることなく、処理対象個所のポリマーを選択的に除去することができ、処理対象個所にポリマーを補充して硬化させることにより、繊維強化プラスチック材の本来の強度、安定性を保持した状態に復元させることができる。また、加熱操作は、処理対象個所のみを加熱すればよく、加熱温度も酸化物半導体を熱活性化できる温度であればよいから、処理に過大なエネルギーを要さない。また処理操作も極めて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】FRP板を処理する基本プロセスを示す説明図である。
【図2】酸化物半導体の熱活性作用を利用してプラスチック基板のポリマーを分解した例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、本発明に係る繊維強化プラスチック製品の部分修復方法(処理方法)の基本プロセスを示す。図1では、FRP板10を処理対象として示す。
図1(a)は、処理対象物であるFRP板10の上面に損傷個所が生じた状態を示す。この損傷個所が、本方法によって処理する処理対象個所12である。

【0015】
本発明に係る処理プロセスでは、まず、この処理対象個所12に酸化物半導体14を付着させ、次いで、処理対象個所のみを部分的(集中的)に加熱する(図1(b))。
処理対象個所を加熱すると、処理対象個所の加熱された部位のポリマーが徐々に分解されて除去される。ポリマーが除去されることにより、FRP基板10の強化繊維16が露出する(図1(c))。
処理対象個所のポリマーを除去した後、処理対象個所に新たにポリマー18を補充し、ポリマー18を熱硬化させる。これにより、損傷前のFRP板と同様の機械特性、安定性を備えるFRP基板が得られる。

【0016】
本発明に係る処理方法において特徴的な工程は、処理対象個所12に酸化物半導体14を付着させ、処理対象個所12のみを部分的に加熱して、処理対象個所12のポリマーを選択的に除去する工程である(図1(b))。
酸化物半導体を利用して処理対象物のポリマーを分解、除去する処理は、酸化物半導体が熱活性されることによりポリマーが分解される作用を利用している。

【0017】
酸化物半導体の熱活性を利用してポリマーを分解する作用は以下のような作用による(非特許文献3)。半導体の熱活性とは、室温では全く触媒効果を示さない半導体を350-500℃に加熱すると突如として顕著な触媒効果が発現する現象である。半導体が熱励起される(つまり加熱される)と価電子帯の電子は伝導帯に励起され、価電子帯には電子が抜けた穴(正孔)が大量に生成する。この正孔は電子に早く戻って来てもらい、元の安定状態に戻りたいと言う性質がある。つまり、電子を引っ張る力が強く、換言すれば強い酸化力を有する。

【0018】
この正孔の強い酸化力は、ポリマー等の被分解化合物から結合電子を奪い、ポリマー内にカチオンのラジカルを生成する。この不安定ラジカルは350~500℃の温度でポリマー内を伝播し、ポリマー全体を不安定化し、ラジカル開裂を誘起して巨大分子を小分子化する。その結果、エチレンやプロパンのように裁断化された分子は、空気中の酸素と反応して完全燃焼反応により炭酸ガスと水になる。このようにポリマーの分解過程は、大量の正孔生成、ラジカル開裂による小分子化、そして完全燃焼の3つから構成される。

【0019】
酸化物半導体を利用してポリマーを分解する作用は、不安定ラジカルがポリマー内を伝播し、ポリマー全体を不安定化させて分解する作用であり、繊維強化プラスチック製品(FRP板)にこの方法を適用すると、製品を構成するポリマー成分のみが選択的に分解され、製品中の強化繊維が残留する。ポリマーの分解作用は、処理対象物を加熱している個所のみに作用するから、処理対象個所を集中的に加熱することで、損傷個所のポリマーのみを分解、除去することができる。

【0020】
ポリマーの分解に利用できる酸化物半導体としては、以下の化学式で示される物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
BeO,MgO,CaO,SrO,BaO,CeO,TiO,ZrO,V,Y,YS,Nb,Ta,MoO,WO,MnO,Fe,Fe, MgFe,NiFe,ZnFe,ZnCo,ZnO,CdO,MgAl,ZnAl,Tl,In,SnO,PbO,UO,Cr,MgCr,FeCrO,CoCrO,ZnCr,WO,MnO,Mn,Mn,FeO,NiO,CoO,Co,PdO,CuO,CuO,AgO,CoAl,NiAl,TlO,GeO,PbO,TiO,Ti,VO,MoO,IrO,RuO

【0021】
酸化物半導体14はポリマー分解を誘起するので、処理対象個所のみに付着させることが肝要である。具体的には図1(b)に示すように、処理対象物で修復等の処理を行う個所12のみである。酸化物半導体14を処理対象個所12に付ける方法としては、粉末状の酸化物半導体を分散液に分散させた懸濁液を処理対象個所12にスプレーあるいは筆等で塗布して付着させる方法、粉末状の酸化物半導体を処理対象個所12に振りかけて付着させる方法がある。酸化物半導体14の懸濁液を塗布したり、振りかけて敷き詰めるようにしたりする際に、処理対象個所12以外の部分に酸化物半導体が付着しないように処理対象個所12以外をマスクで遮蔽して付着させる方法を利用してもよい。

【0022】
酸化物半導体を処理対象個所12に付着させた後、酸化物半導体が熱活性する温度にまで処理対象個所12を加熱する。使用する酸化物半導体にもよるが、350~500℃に加熱することによって、ポリマー中に不安定ラジカルを生成させ、ポリマーを分解することができる。
ポリマーの分解は、処理対象物を加熱している個所に作用するから、処理対象物を加熱する際には、処理対象個所12のみを集中的に加熱する。このため、処理対象個所12以外の部位が加熱されないように、遮蔽体を用いて遮蔽しながら加熱してもよい。

【0023】
処理対象物を加熱する方法としては、カートリッジ・ヒータ、赤外線ヒータ、フレーム(ガスバーナー)あるいはレーザー等の加熱手段を利用することができる。フレーム(ガスバーナー)を用いる加熱方法は手軽に使え、XY移動(走査)も自在に行なえる利点もある。また、集光用のパラボラを装着した赤外線ランプを用いると、処理対象個所12に焦点を結ばせることが可能で、低パワーでも高温が達成できるメリットがある。さらに赤外線ランプは小さく軽量であるので、XY移動(走査)も容易である。

【0024】
処理対象個所12のポリマーを除去した後、処理対象個所12に新たにポリマーを補充し、ポリマーを硬化させ、処理対象個所12を補修する。新たに補充するポリマーには、通常、処理対象物で使用しているポリマーと同一のものを使用すればよい。強化繊維とポリマーの相溶性を増すためにサイジング材で繊維をコーティングする場合がある。サイジング材としてはシラン・カップリング材(ガラス・ファイバーFRP)やエポキシ樹脂(炭素繊維FRP)が一般的に用いられている。必要に応じてサイジング材を添えてポリマーを補充すればよい。
ポリマーの硬化特性も室温硬化、熱硬化等、さまざまであるので、ポリマーの特性に応じて適宜硬化させる。

【0025】
(酸化物半導体によるポリマーの分解作用)
酸化物半導体を利用してプラスチック基板のポリマーを実際に分解した例を示す。
図2は、強化繊維としてカーボンファイバーを使用した市販のプラスチック基板(厚さ2.4mm)の表面に酸化クロム(Cr2O3)の粉末を敷き詰め、その上に450℃に加熱したロッドヒータの端面を当てて10分間加熱した後の状態を示す。図のように、プラスチック基板のロッドヒータの端面が接触していた部位(円形範囲)については、ポリマーが完全に分解され、カーボンファイバーの繊維の間からも完全に除去されて、カーボンファイバーが露出している。このように、酸化物半導体の熱活性作用は、プラスチック基板のポリマー成分を、選択的に、かつきわめて強力に分解・除去する作用を有する。
【実施例】
【0026】
本発明に係る繊維強化プラスチック製品の部分修復方法をプラスチック基板の処理に適用した例について説明する。
プラスチック基板には、炭素繊維を強化繊維としたプラスチック基板(CFRP)と、グラスファイバーを強化繊維としたプラスチック基板(GFRP)を使用した。これらのプラスチック基板は、炭素繊維には、トレカ製のカーボンファイバー(Torayca Cloth CO6343)を使用し、グラスファイバーにはユニチカ製のグラスファイバー(Glass Rosen Cloth R300N100V)を使用し、これらの強化繊維にエポキシ樹脂(Nagase Chemtex:XNR6815)と硬化剤(Nagase Chemtex:XNH6815)を浸透させ、室温で24時間硬化させた後、さらにポスト硬化として50℃で12時間硬化処理を行って作製した。プラスチック基板の損傷深さを1mm程度と仮定し、基板のポリマー部分の厚さを2.5mm程度とした。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
上述した方法によって作製したカーボンファイバーを強化繊維とするプラスチック基板(CFRP)の表面に、酸化クロム(Cr2O3)粉末を直径10mmの範囲にわたり、約20-50μmの厚さで敷きつめた(酸化物半導体を付着させる工程)。
次に、酸化クロムを敷きつめた基板上にロッドヒータの端面(頭部)を接触させて酸化クロムとともに基板を加熱した。空気中、450℃、10分加熱することにより、ロッドヒータの端面が接触していたプラスチック基板の表面にカーボンファイバーの繊維があらわれ、ポリマー成分が完全に除去されたことを確認した(ポリマー成分を除去する工程)。
その後、修復作業として、上述のエポキシ樹脂と硬化剤とからなるポリマーをスプレーで塗布し、カーボンファイバーの繊維内に浸透させ、残っている基板表面にならった厚さに被覆した後、硬化させることにより、元のプラスチック基板の状態に修復することができた(ポリマーを硬化させる工程)。
【実施例】
【0028】
(実施例2)
カーボンファイバーを強化繊維とするプラスチック基板(CFRP)の表面に、マスクを通して、10×30mmの範囲にわたり、酸化クロム(Cr2O3)の分散液をスプレーで塗布した。酸化クロムの分散液は、ポリマーを1重量%含むケトン系溶剤に酸化クロムを10重量%入れ、ペイント・シェイカーで20分間、分散させて作製した。分散液の塗布厚は7μmである。
プラスチック基板の基板面とロッドヒータを平行にし、酸化クロムの分散液を塗布した位置の上方に、基板表面からロッドヒータの最下面位置までの間隔を10mmとし、ロッドヒータを500℃に加熱した状態で、空気中、10分加熱した。この加熱処理により、プラスチック基板の表面にカーボンファイバーの繊維が露出し、ポリマー成分が完全に除去されたことを確認した。
その後、修復作業として、上述したポリマーを、カーボンファイバーが露出した部位にスプレーで塗布し、繊維内に浸透させるようにして充填し、硬化させることにより、元のプラスチック基板の状態に修復することができた。
【実施例】
【0029】
(実施例3)
実施例2と同じCFRP試料を用いて、同じ方法により直径30mmの範囲にわたり、マスクを通して、酸化クロム(Cr2O3)の分散液をスプレーで塗布した。被処理部分の端に熱電対を置き、パラボラ付き赤外線ランプ(300W:焦点距離約35 mm)を用いて、CFRPの温度を観察しながら、被処理部分の温度が500℃近傍になるように投入電力を調節し、焦点距離の位置で5分間加熱した。
この加熱処理により、プラスチック基板の表面にカーボンファイバーの繊維が露出し、ポリマー成分が完全に除去されたことを確認した。
その後、修復作業として、上述したポリマーを、カーボンファイバーが露出した部位にスプレーで塗布し、繊維内に浸透させるようにして充填し、硬化させることにより、元のプラスチック基板の状態に修復することができた。
【実施例】
【0030】
(実施例4)
実施例3と同じCFRP試料を用いて、同じ方法により50×50mmの範囲にわたり、マスクを通して、酸化クロム(Cr2O3)の分散液をスプレーで塗布した。被処理部分の端に熱電対を置き、フレーム(ガスバーナー)を用いて、CFRPの温度を観察しながら、被処理部分の温度が500℃近傍になるようにバーナーをXY移動(走査)させて被処理部分を5分ほど加熱した。
この加熱処理により、プラスチック基板の表面にカーボンファイバーの繊維が露出し、ポリマー成分が完全に除去されたことを確認した。
その後、修復作業として、上述したポリマーを、カーボンファイバーが露出した部位にスプレーで塗布し、繊維内に浸透させるようにして充填し、硬化させることにより、元のプラスチック基板の状態に修復することができた。
【実施例】
【0031】
(実施例5)
実施例3と同様のフレーム(ガスバーナー)処理実験をグラスファイバーFRP(GFRP)で行なった。また、酸化物半導体として酸化クロムの代わりに酸化チタン(TiO2)を使った。被処理部分の面積は50x50mm、処理時間は5分間であった。
この加熱処理により、プラスチック基板の表面にカーボンファイバーの繊維が露出し、ポリマー成分が完全に除去されたことを確認した。
その後、修復作業として、上述したポリマーを、グラスファイバーが露出した部位にスプレーで塗布し、繊維内に浸透させるようにして充填し、硬化させることにより、元のプラスチック基板の状態に修復することができた。
【実施例】
【0032】
(実施例6)
実施例3のパラボラ付き赤外線ランプの実験をグラスファイバーFRP(GFRP)で行なった。この場合にも直径30mmにわたり、マスクを通して、酸化チタン(TiO2)の分散液をスプレーで塗布した。酸化チタンの分散液も実施例2と同様にして作製した。分散膜の厚さは約7μmである。加熱条件は実施例3と同じである。
この加熱処理により、プラスチック基板の表面にカーボンファイバーの繊維が露出し、ポリマー成分が完全に除去されたことを確認した。
その後、修復作業として、上述したポリマーを、グラスファイバーが露出した部位にスプレーで塗布し、繊維内に浸透させるようにして充填し、硬化させることにより、元のプラスチック基板の状態に修復することができた。
【実施例】
【0033】
上述した実施例に示すように、繊維強化プラスチックを部分的に補修する際には、損傷した表面層に存在するポリマーのみを除去する必要があり、これにはヒータのパワーを出来る限り表面に集中させ、短時間で処理するのがよい。これによって、ポリマー中に生成されるラジカルの作用により、損傷した個所のポリマー成分が効率的に分解、除去される。
【実施例】
【0034】
上記実施例では、平板状のプラスチック基板を処理対象物の例として説明したが、任意の形状のFRPでも処理することができる。特にフレーム法は、平板体以外の屈曲状のもの等にも適用できる点で有効である。本発明はプラスチック基板に限らず、各種の繊維強化プラスチック材からなる製品については、その形状や大きさを問わす、使用されている強化繊維の素材に関わらず、適用することができる。処理対象物を加熱する際の温度は、酸化物半導体を熱活性化させるに必要な温度(300℃~500℃程度)であり、強化繊維プラスチック材に使用されている強化繊維は、このような加熱温度で損傷を受けることはない。
【実施例】
【0035】
本発明に係る強化繊維プラスチックの部分修復方法においては、以上、説明したように、処理対象物に内在する強化繊維をなんら損なうことなく、強化繊維プラスチックのポリマー成分のみを除去する方法によって処理するから、繊維強化プラスチックからなる製品の種類、形状、大きさ等を問わず、処理対象物の強度を損なうことなく処理対象物を処理することが可能であり、種々の用途にこの処理方法を利用することを可能にする。
【符号の説明】
【0036】
10 FRP板
12 処理対象個所
14 酸化物半導体
16 強化繊維
18 ポリマー
図面
【図1】
0
【図2】
1