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明細書 :リン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4254964号 (P4254964)
公開番号 特開2007-076938 (P2007-076938A)
登録日 平成21年2月6日(2009.2.6)
発行日 平成21年4月15日(2009.4.15)
公開日 平成19年3月29日(2007.3.29)
発明の名称または考案の名称 リン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法
国際特許分類 C01G  23/04        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  37/04        (2006.01)
FI C01G 23/04 Z
B01J 35/02 J
B01J 37/04 102
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2005-265139 (P2005-265139)
出願日 平成17年9月13日(2005.9.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年3月14日から16日 社団法人表面技術協会主催の「第111回 講演大会」において文書をもって発表
審査請求日 平成17年11月11日(2005.11.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591106462
【氏名又は名称】茨城県
発明者または考案者 【氏名】飯村 修志
【氏名】佐藤 賢
個別代理人の代理人 【識別番号】100078879、【弁理士】、【氏名又は名称】木幡 行雄
審査官 【審査官】壺内 信吾
参考文献・文献 特開平11-278843(JP,A)
特開2000-119019(JP,A)
国際公開第2004/087577(WO,A1)
国際公開第99/058451(WO,A1)
特開平10-137593(JP,A)
佐藤賢他,酸化チタン光触媒の粒径制御及びリン添加による高活性化処理,第111回講演大会講演要旨集,日本,社団法人表面技術協会,2005年 3月 7日,p.102-103
調査した分野 C01G1/00-23/08
B01J21/00-38/74
JST7580(JDreamII)
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
金属アルコキシド法による酸化チタンゾル溶液の製造方法に於いて、初期の酸化チタンの粒径を20nm以下に制御した上で、酸化チタンに対して7~13mol%の添加量で、かつ加水分解用の水に混合してリン添加を行い、ゾル溶液の沈澱を抑制し安定したリン添加酸化チタンゾル溶液を得るリン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法。
【請求項2】
前記酸化チタン粒径の20nm以下への制御を、
溶媒中のチタンアルコキシドの濃度 : 低い → 酸化チタン粒径小
溶液混合時の攪拌 : 有り → 酸化チタン粒径小
酸触媒の濃度 : 低い → 酸化チタン粒径大
熟成温度 : 高い → 酸化チタン粒径大
熟成時間 : 長い → 酸化チタン粒径大
の現象に基づいて、
溶媒中のチタンアルコキシドの濃度、溶液混合時の攪拌の有無、酸触媒の濃度、熟成温度及び熟成時間を調整することによって行う請求項1のリン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属アルコキシド法による、ゾル溶液に沈殿のない安定した状態のリン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より光触媒は、太陽光等に含まれる紫外線の照射を受けて表面に生じた電荷により活性酸素を生成し、その強い酸化作用によって有機物の分解を行うことができる機能性物質として知られ、広範囲な分野で活用されて来ている。
【0003】
このような光触媒機能を示す物質としては、光照射によって生じる電荷の酸化力が高く、化学的にも安定な物質である酸化チタンが広く利用されており、これが粉末のまま、或いは対象物の表面に皮膜化されて活用されている。しかしこのような酸化チタンであっても、元々その反応速度は十分に高いものではなく、多くの適用対象に於いて光触媒反応の分解効率を上げることが要望されている。
【0004】
そこで光触媒機能を高める目的で、太陽光中に多く含まれる可視光側に反応性を拡張したり、白金などの金属を担持させて電荷分離効率や量子効率を向上させたり、粉末を微細化したり多孔質化することで表面積を拡張したり、或いは吸収性の高い物質と混合することで反応効率を高める手法等も検討されている。
【0005】
一方で、現在光触媒が適用される多くの場合、例えば、照明器具、建築物の内外壁、衣類やタオル等、冷蔵庫等の電気製品、家具又は自動車の外面等のそれぞれの防汚に適用する場合には、それらの各々の色彩や質感等を害することなく、その表面に皮膜を形成して、それらの防汚を図り得るものであることが好ましい。しかし前記各手法によって機能向上を図った物は、いずれも酸化チタンを透明な皮膜に形成することが困難であり、その質感や色彩に影響を与えることとなり、製品化を進める上で大きな制約となっている。
【0006】
例えば、可視光側に反応性を拡張する可視光応答化技術では、最も効果の高い窒素ドープによれば生成した光触媒は黄褐色になり、白金を担持させた場合には薄黒く変色し、いずれにしても被膜を形成する対象表面の色彩や質感に影響を与える。更にこれらの技術では、特殊な燃焼炉を必要としたり、高価な金属を使用するなど処理コストが大幅に増加するため、汎用的な製品への適用が期待できない。
【0007】
以上のような光触媒機能を高める技術には特許文献1で提案された例がある。これは、リン原子を酸化チタン粒子内に含有させた高光触媒活性アナタース形微粒子酸化チタン及び水溶性リン化合物の水溶液と熱加水分解可能なチタン化合物の水溶液とを混合した後、熱加水分解して製造するその製造方法である。
【0008】
また酸化チタンの光触媒活性を向上させる技術には非特許文献1で報告された例もある。これは、チタンテトライソプロポキシドと溶媒のイソプロピルアルコールとの混合溶液に濃硝酸を加えて加水分解し、生成した酸化チタンのゾル溶液に更に酸化チタンに対して5mol %の割合でリンイオン又はホウ素イオンを添加し、陽極に白金板、陰極にステンレス板を使用して定電位電解を行ったところ、低電位側でゼリー状の被膜を形成し、これを乾燥すると薄い透明な被膜となり、高電位側で白色粉末状の被覆を形成したが、いずれもリンイオン又はホウ素イオンを添加しなかった場合と比較して最大で4倍程度のアセトアルデヒド分解速度を得ることができたというものであり、このようなリンイオン等を添加した場合の傾向は、通常のゾルゲル法で作成した酸化チタン被膜でも見られるとのことである。
【0009】

【特許文献1】特開平10-137593号公報
【非特許文献1】飯村修志、光触媒の高機能化処理、「ECO INDUSTRY」、発行所名、2004年5月25日、第9巻、第6号、p.27-31
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、金属アルコキシド法によるリン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法であって、ゾル溶液の沈殿を抑制し透明で安定したゾル状態を維持するリン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法を提供することを解決の課題とする。
【0011】
このようなゾル溶液は、対象製品の表面に被膜を形成することを目的とするものであり、生成する被膜は、ゾル溶液の安定性と密接な関係があり、懸濁した状態のゾル溶液からは不均一かつ粉状の被膜しか得られない。ゾルゲル法で透明で良好な被膜を作成するためにはゾル溶液が半透明で安定していることが最も重要な条件である。前記のような酸化チタンゾル溶液に対するリンの添加は、酸化チタン粒子の凝集及び粒成長を促進するため、多量にリンを添加すると沈澱の発生を誘発する。本発明は、一方で光触媒反応速度を向上させるべくリンを添加し、他方で、そのことによって生じる酸化チタン粒子の凝集沈澱を抑制し、透明で安定した酸化チタンゾル溶液を製造する、その製造方法を提供することを解決の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1は、金属アルコキシド法による酸化チタンゾル溶液の製造方法に於いて、初期の酸化チタンの粒径を20nm以下に制御した上で、酸化チタンに対して7~13mol%の添加量で、かつ加水分解用の水に混合してリン添加を行い、ゾル溶液の沈澱を抑制し安定したリン添加酸化チタンゾル溶液を得るリン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法である。
【0013】
本発明の2は、本発明の1のリン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法に於いて、前記酸化チタン粒径の20nm以下への制御を、
溶媒中のチタンアルコキシドの濃度 : 低い → 酸化チタン粒径小
溶液混合時の攪拌 : 有り → 酸化チタン粒径小
酸触媒の濃度 : 低い → 酸化チタン粒径大
熟成温度 : 高い → 酸化チタン粒径大
熟成時間 : 長い → 酸化チタン粒径大
の現象に基づいて、
溶媒中のチタンアルコキシドの濃度、溶液混合時の攪拌の有無、酸触媒の濃度、熟成温度及び熟成時間を調整することによって行うものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明1のリン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法によれば、初期の酸化チタンの粒径を20nm以下と微粒子に制御し、かつリン添加を、酸化チタンに対して7~13mol%の添加量で、更に加水分解用の水に混合して行ったので、リン添加時においてもゾル溶液の沈殿がなく、光触媒機能の高い、透明で、ゾル状態が安定したリン添加酸化チタンゾル溶液が得られる。
【0016】
またこのように本発明の1によれば、ゾル溶液を、沈殿がなく、かつ透明でゾル状態が安定したものとなし得るので、このようにして製造したリン添加酸化チタンゾル溶液を用いて対象物表面に皮膜を形成するとすれば、その皮膜は無色透明な皮膜となって高い光触媒機能を保持したものとなし得る。
【0017】
本発明2のリン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法によれば、初期の酸化チタン粒径の20nm以下への制御を容易かつ良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、金属アルコキシド法による酸化チタンゾル溶液の製造方法に於いて、初期の酸化チタンの粒径を20nm以下に制御した上でリン添加を行い、ゾル溶液の沈殿を抑制し安定したリン添加酸化チタンゾル溶液を得るリン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法である。
【0020】
前記したように、光触媒活性を高め、有機物の分解速度を向上させるとの観点から、光触媒物質である酸化チタンにリンを含有させたアナタース形微粒子酸化チタン及びその製法が提案され、或いは酸化チタンゾル溶液にリンのイオンを添加し、これを対象物の表面に被膜化したリン添加酸化チタンの例が報告されている。
【0021】
本発明は、後者の改良に係るものであり、対象物表面に光触媒活性の高い品質の良好なリン添加酸化チタン被膜を形成するためのゾル溶液の製造方法に関するものである。
【0022】
本発明のゾル溶液は、前記のように、金属アルコキシド法によって作製するものであり、具体的には、チタンテトライソプロポキシドをイソプロピルアルコール等の溶媒に分散させ、これを酸触媒の下で加水分解・重縮合させて作成する。前記リンは、前記のように、このゾル溶液作成過程の初期の酸化チタンの粒径を20nm以下に制御した上で添加すべきものであり、これによって、沈殿が抑制され透明乃至半透明となった、安定したリン添加酸化チタンゾル溶液を得ることができる。
【0023】
なお、前記したように、このようなゾル溶液は、これを用いて対象物表面に光触媒機能を持った被膜を形成するために使用する物であるが、形成される皮膜の光触媒機能は、前記したように、用いるリン添加酸化チタンゾル溶液の安定性と密接な関係があり、白濁した沈殿を生じているゾル溶液から作成できる被膜は、不透明で不均一な皮膜となり、光触媒機能の低いものとなる。光触媒機能の高い、透明で良好な被膜を作成するためには、前記したように、沈殿が抑制された透明乃至半透明の安定したリン添加酸化チタンゾル溶液である必要がある。
【0024】
このような安定したリン添加酸化チタンのゾル溶液は、前記したように、金属アルコキシド法による酸化チタンゾル溶液の製造方法に於いて、初期の酸化チタンの粒径を20nm以下に、好ましくは該粒径を0.1~18nmに制御した上で、リン添加を行うことで作成できる。
【0025】
表1に示すように、初期の酸化チタンの粒径を40nmに形成した酸化チタンゾル溶液にリンを添加した場合は、その添加量を酸化チタンに対して3mol%の割合の量にした場合には得られたリン添加酸化チタンゾル溶液が透明になったが、その他の場合、即ち、6、7、8、10、12.5及び15mol%のいずれの割合の添加量の場合も全て沈澱が生じて不透明になった。他方、初期の酸化チタンの粒径を15nmに形成した酸化チタンゾル溶液にリンを添加した場合は、その添加量を酸化チタンに対して、3、6及び15mol%の割合の量にした場合には、得られたリン添加酸化チタンゾル溶液がやや不安定になり乳白色になったが、その他の場合、即ち、7、8、10及び12.5mol%のいずれの割合の添加量の場合も全て透明になった。
【0026】
【表1】
JP0004254964B2_000002t.gif

【0027】
これによって初期の酸化チタンの粒径を15nmのように小さく制御することで、リン添加酸化チタンゾル溶液を一定の割合のリン添加範囲内で沈殿が抑制された透明乃至半透明の安定したものにすることができることが分かる。更に表1に示した以外の他の実験例と照らし合わせて考えると、前記したように、このような場合に、初期の酸化チタンの粒径を20nm以下に制御するのが適当であり、より好ましくは、該粒径を0.1~18nmに制御してリンを添加すれば、一定の割合のリン添加範囲内で、沈殿が抑制された安定した透明乃至半透明のリン添加酸化チタンゾル溶液を作成することができる。
【0028】
この初期の酸化チタン粒径の20nm以下への制御は、溶媒中のチタンアルコキシドの濃度、溶液混合時の攪拌の有無、酸触媒の濃度、熟成温度及び熟成時間を適切に調整することによって行うことが可能である。
【0029】
これらの調整は、多数の実験結果から知り得た以下のような現象に基づいて行うことができる。
溶媒中のチタンアルコキシドの濃度 : 低い → 酸化チタン粒径小
溶液混合時の攪拌 : 有り → 酸化チタン粒径小
酸触媒の濃度 : 低い → 酸化チタン粒径大
熟成温度 : 高い → 酸化チタン粒径大
熟成時間 : 長い → 酸化チタン粒径大
【0030】
他方、前記リンの添加量は、酸化チタンに対して7~13mol%、好ましくは7~8mol%の割合の量とするのが適当である。生成するリン添加酸化チタンゾル溶液は、以上の溶媒中のチタンアルコキシドの濃度、溶液混合時の攪拌の有無、酸触媒の濃度、熟成温度及び熟成時間を調整することで、沈殿を抑制した透明乃至半透明の安定したものとなし得るが、前記リンの添加量を以上のような割合の量にすると、一層透明乃至半透明の安定性の増したものとなし得、加えて、これを対象物表面に塗布して得られる皮膜を透明で光触媒活性の一層高いものとすることができる。
【0031】
前記表1に示された、初期の酸化チタンの粒径を15nmに制御した酸化チタンゾル溶液にリンを添加した場合のデータから、酸化チタンに対して7~13mol%の割合でのリンの添加が、得られるリン添加酸化チタンゾル溶液の安定性を確保するものであることを示していると理解できる。また図1に示すように、同様の場合のゾル溶液を用いて形成した酸化チタン被膜が高い光触媒活性を示しており、中でも7~8mol%の割合でリンを添加したリン添加酸化チタンゾル溶液で形成した被膜が高い光触媒活性を示している。
【0032】
従って以上の本発明のリン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法を順を追って整理して説明すると以下の通りとなる。
【0033】
先ずイソプロピルアルコール等の溶媒中にチタンのアルコキシドであるチタンテトライソプロポキシドを分散させる。好ましくは、前記初期の酸化チタン粒径の調整の観点から適切な濃度に調整して分散させる。他方、水にリン酸を加える。これも好ましくは、前記のように、酸化チタンに対して7~13mol%、より適切には7~8mol%の割合の量を水に加える。次いで、前記チタンテトライソプロポキシドの溶液に前記リン酸の水溶液を混合する。このとき、前記初期の酸化チタン粒径の調整の観点から攪拌し又は攪拌を行わないこととする。
【0034】
この後、前記混合液中に、触媒として、例えば、濃硝酸を加える。濃硝酸の濃度は、前記初期の酸化チタン粒径の調整の観点から適切に調整する。例えば、20~40wt%程度の範囲に調整する。このように酸触媒を加えて加水分解・重縮合を進行させ、更に前記初期の酸化チタン粒径の調整の観点から熟成温度及び熟成時間を調整し、例えば、前者を40℃前後、後者を3時間前後として熟成させ、沈殿のない透明でゾル状態の安定したリン添加酸化チタンゾル溶液を得ることができる。
【0035】
本発明は、以上のように、光触媒反応速度を向上させるためにリンを添加するものであるが、そのことによって酸化チタン粒子の凝集沈澱が生じることとなる問題を適切に抑制し、透明で安定した酸化チタンゾル溶液を製造することができるものである。
【0036】
なお、以上のようにして得たリン添加酸化チタンゾル溶液は、これを対象物の表面に薄く塗布して乾燥させ、その後、焼成炉に入れ、例えば、500℃の温度の下で15分程度焼き付け処理し、光触媒活性の高い透明のリン添加酸化チタンの皮膜を形成させることができる。前記のように、得られる皮膜は透明で均一なものとなり、対象物表面の色調や質感を損なうことがないものとなる。そのため、広く種々の物品を対象としてその表面に施すことが可能となる。
【実施例】
【0037】
実施例1として、本発明のリン添加酸化チタンゾル溶液の製造方法によって製造するリン添加酸化チタンゾル溶液の製造過程を示し、比較例1として、初期の酸化チタンの粒径の20nm以下への制御を行わないリン添加酸化チタンゾル溶液の製造過程を示し、各々の末尾にそれぞれで製造したリン添加酸化チタンゾル溶液を用いて形成した石材タイル表面の光触媒皮膜の観察結果を示した。
【0038】
<実施例1>
溶媒であるイソプロピルアルコールにチタンテトライソプロポキシドを25wt%濃度となるように分散させ、この溶液に、加水分解用の適量の水に酸化チタンに対してリン分が7mol%となるようにリン酸を加えて作成したリン酸水溶液を混合し、十分攪拌した。この混合液に、攪拌しながら酸触媒である濃硝酸を全重量の2wt%となるように添加して加水分解・重縮合させ、これを40℃の恒温槽で3時間熟成してリン添加酸化チタンゾル溶液を得た。
【0039】
この実施例1では、初期の酸化チタンの粒径が15nmとなっており、得られたリン添加酸化チタンゾル溶液は透明で沈殿がない安定したものであった。この実施例1のリン添加酸化チタンゾル溶液の主な製造条件と、得られたゾル溶液の性状とは表2にまとめた。
【0040】
また実施例1で得たリン添加酸化チタンゾル溶液を用いて石材タイル表面に光触媒皮膜を形成させ、その性能確認のため、該タイル板の表面付近のアセトアルデヒドガスの分解反応速度を調べた。この光触媒被膜は、石材タイルの表面にリン添加酸化チタンゾル溶液を薄く塗布して乾燥させた後、焼成炉に入れ、500℃の下で15分間焼き付け処理して形成した。形成された皮膜は無色透明であり、石材タイル表面の色調や質感に殆ど変化を与えているようには見えなかった。
【0041】
<比較例1>
溶媒であるイソプロピルアルコールにチタンテトライソプロポキシドを85wt%濃度となるように分散させ、この溶液に、加水分解用の適量の水に酸化チタンに対してリン分が7mol%となるようにリン酸を加えて作成したリン酸水溶液を混合し、十分攪拌した。この混合液に、攪拌しながら酸触媒である濃硝酸を全重量の2wt%となるように添加して加水分解・重縮合させ、これを40℃の恒温槽で24時間熟成してリン添加酸化チタンゾル溶液を得た。
【0042】
この比較例では、初期の酸化チタンの粒径が40nmとなっており、得られたリン添加酸化チタンゾル溶液は沈澱が生じた不安定なものであった。この比較例1のリン添加酸化チタンゾル溶液の主な製造条件と、得られたゾル溶液の性状とは表2にまとめた。
【0043】
また比較例1で得たリン添加酸化チタンゾル溶液を用いて石材タイル表面に光触媒皮膜を形成させ、その性能確認のため、該タイル板の表面付近のアセトアルデヒドガスの分解反応速度を調べた。この光触媒被膜は、石材タイルの表面にリン添加酸化チタンゾル溶液を薄く塗布して乾燥させた後、焼成炉に入れ、500℃の下で15分間焼き付け処理して形成した。形成された皮膜はやや白っぽく不透明であり、石材タイル表面の色調や質感がややぼけた感じのものになった。
【0044】
【表2】
JP0004254964B2_000003t.gif

【0045】
実施例1及び比較例1でそれぞれ製造したリン添加酸化チタンゾル溶液を用いて石材タイルの表面に形成した各光触媒被膜について、光触媒機能の確認のために光触媒反応によるアセトアルデヒドガスの分解速度を測定したところ、実施例1のリン添加酸化チタンゾル溶液で形成した光触媒被膜は、比較例1のそれで形成した被膜の1.48倍程度の反応速度を有していることが分かった。このように実施例1で製造したリン添加酸化チタンゾル溶液を用いて形成した皮膜は、極めて高い光触媒機能を呈するものであると言える。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】リン添加量と酸化チタン光触媒反応速度との関連性を示す図。
図面
【図1】
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