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明細書 :発光増強基板及び発光素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6027815号 (P6027815)
公開番号 特開2014-035813 (P2014-035813A)
登録日 平成28年10月21日(2016.10.21)
発行日 平成28年11月16日(2016.11.16)
公開日 平成26年2月24日(2014.2.24)
発明の名称または考案の名称 発光増強基板及び発光素子
国際特許分類 H05B  33/02        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
FI H05B 33/02
H05B 33/14 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2012-174848 (P2012-174848)
出願日 平成24年8月7日(2012.8.7)
審査請求日 平成27年4月17日(2015.4.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】齋藤 健一
【氏名】末盛 秀美
個別代理人の代理人 【識別番号】110001427、【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
審査官 【審査官】中山 佳美
参考文献・文献 特開2006-143861(JP,A)
特開2011-213848(JP,A)
国際公開第2013/157563(WO,A1)
調査した分野 H01L 51/50-51/56
H01L 27/32
H05B 33/00-33/28
C09K 11/00-11/89
JSTPlus(JDream III)
特許請求の範囲 【請求項1】
発光体の発光強度を増強するために用いられる発光増強基板であって、
基板と、
前記基板の表面に配設され、シリコンからなる複数のナノ粒子により構成されたナノ粒子層とを備え、
前記ナノ粒子は、その粒径が240nm以上2000nm以下であり、
前記ナノ粒子層は、光が照射されることによって局在電場を発生することを特徴とする発光増強基板。
【請求項2】
前記ナノ粒子層は、金属を含まないことを特徴とする請求項1に記載の発光増強基板。
【請求項3】
透明基板と、該透明基板の上に形成された陽極と、該陽極の上に形成された正孔輸送層と、該正孔輸送層の上に形成された発光層と、該発光層の上に形成された電子輸送層と、該電子輸送層の上に形成された陰極とを備えた発光素子であって、
前記発光層と前記正孔輸送層との間には、シリコンからなる複数のナノ粒子により構成されたナノ粒子層が設けられており、
前記ナノ粒子は、その粒径が240nm以上2000nm以下であり、
前記ナノ粒子層は、前記発光層から光が照射されることによって局在電場を発生することを特徴とする発光素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発光増強基板及び発光素子に関し、特にナノ粒子を利用した発光増強基板及び発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子等の発光素子の性能を向上するために、発光体から発生する光の強度を増強する方法について種々の研究が行われている。中でも、金属ナノ粒子を用いて、それが生じる表面プラズモンを利用した発光強度の増強方法についての研究が多く行われている。例えば、バイオチップに用いて、光の強度を増強する手段として期待されている。
【0003】
表面プラズモンとは、金又は銀等の金属のナノ粒子に対して光が照射されると、その表面の自由電子の集団振動により強い局在電場が生じる現象をいう。このような局在電場のエネルギーは発光体を強く励起して、発光体の光強度が数十倍程度増強されることがこれまでに多く報告されている。
【0004】
従来の多くの研究では、表面プラズモンにより光強度を増強するために、金又は銀等の金属ナノ粒子が用いられており、その理由は、上記のように、光強度を増強する局在電場は自由電子の集団振動によって生じるため、多くの自由電子を有する金属を用いることで、より強い局在電場を得ることができると考えられるからである。
【0005】
しかしながら、発光体をより励起させるために発光体と金属ナノ粒子とを接近させ過ぎると、発光体内で励起されたエネルギーが金属ナノ粒子に移動して、光強度が低減する現象(消光)が起こる。すなわち、この消光によって金属ナノ粒子による発光の増強度を著しく低減することとなる。特に、発光体と金属ナノ粒子との間の距離がナノメートルスケールになると、発光体から金属ナノ粒子へのエネルギー移動が顕著となり、消光による発光の増強度の低減も顕著となる。
【0006】
このような消光を抑制するために、発光体と金属ナノ粒子との距離を大きくしたり、それらの間にスペーサを導入したりする方法が知られている(例えば、非特許文献1等を参照。)。しかし、消光を抑制するために、発光体と金属ナノ粒子との間にスペーサを導入すると、そのスペーサにより金属ナノ粒子の自由電子によって生じる局在電場の強度も低減し、その結果、発光強度が低減することとなる。
【0007】
また、このような方法の他に、間接遷移型の半導体であるガリウムリン(GaP)からなる微粒子を用いることにより、有機色素であるローダミンの発光強度を数十倍から100倍程度まで増強できることが非特許文献2に提示されている。GaP微粒子は、光照射により生成した散乱光を発生する局在電場により発光体を励起できることに加えて、消光を抑制できるため、金属ナノ粒子を用いた場合と同等の増強度を示すと示唆されている。また、消光の抑制は、GaPが間接遷移型半導体であるため、励起された発光体からGaP微粒子へのエネルギー移動を防ぐことができることによると考えられている。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】W. Knoll他、Analytical Chemistry (Anal.Chem) 75(2003) P.2610
【非特許文献2】Shinji Hayashi他、Chemical Physics Letter 480(2009) P.100-104
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、GaP微粒子を用いて消光を抑制することができたとしても、結果的に金属ナノ粒子を用いた場合と同程度の光の増強度であるため、強い局在電場によって光をより強く増強できると共に消光をより強く抑制できて、光の増強度をより向上できるナノ粒子が求められる。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、局在電場を発生して発光体を強く励起すると共に、消光を強く抑制することにより、発光体の発光強度をより増強できる発光増強基板及び発光素子を得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究した結果、シリコン(Si)ナノ粒子は、光の照射を受けると、その光照射により生成した散乱光を生じる局在電場を発生し、さらに、消光を防ぐことができることを見出して本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明に係る発光増強基板は、発光体の発光強度を増強するために用いられ、基板と、基板の表面に配設され、シリコンからなる複数のナノ粒子により構成されたナノ粒子層とを備え、ナノ粒子は、その粒径が240nm以上2000nm以下であり、ナノ粒子層は、光が照射されることによって局在電場を発生することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る発光増強基板では、基板の表面にシリコン(Si)からなる複数のナノ粒子(以下、Siナノ粒子という。)が配設されている。Siナノ粒子は、光の照射を受けることにより、上記の通り、その光照射により生成した散乱光を発生する局在電場を発生し、この局在電場によって発光体が励起されるため、発光体の発光強度を増強できる。さらに、Siは間接遷移型半導体であるため、GaPと同様に、励起された発光体からSiへのエネルギー移動を防ぐことができ、消光を防ぐことが可能となる。発明者らは、Siナノ粒子を用いることによって、発光強度を2000倍以上に向上できることを見出した。すなわち、Siナノ粒子を用いることにより、金属ナノ粒子等を用いて発光強度を増強するよりも著しく発光強度を増強することができる。また、Siは存在量が豊富であり、安価であるため、金属ナノ粒子を用いるよりもコストを低減することができる。
【0014】
上記の通り、Siナノ粒子は強い局在電場を発生し、さらに、消光をふせぐことができて、金属ナノ粒子よりも有利な効果を奏するため、本発明の発光増強基板では、ナノ粒子層が金属を含む必要はない。
【0015】
また、本発明者らは、粒径が240nm以上2000nm以下のSiナノ粒子が特に発光増強効果を有することを見出した。すなわち、本発明に係る発光増強基板において、Siナノ粒子は、その粒径が240nm以上2000nm以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の発光増強基板に用いられるSiナノ粒子は、ボールミリング法により形成されてもよい。ボールミリング法を用いるとSiナノ粒子を容易に形成することができ、粒径の調整も簡便に行うことができる。
【0017】
本発明に係る発光増強基板は、発光素子に用いることが可能である。すなわち、本発明に係る発光素子は、透明基板と、該透明基板の上に形成された陽極と、該陽極の上に形成された正孔輸送層と、該正孔輸送層の上に形成された発光層と、該発光層の上に形成された電子輸送層と、該電子輸送層の上に形成された陰極とを備え、発光層と正孔輸送層との間には、シリコンからなる複数のナノ粒子により構成されたナノ粒子層が設けられており、ナノ粒子は、その粒径が240nm以上2000nm以下であり、ナノ粒子層は、発光層から光が照射されることによって局在電場を発生する。
【0018】
本発明に係る発光素子によると、発光層と正孔輸送層との間には、上記のSiナノ粒子により構成されたナノ粒子層が設けられているため、Siナノ粒子による局在電場により発光層が励起され、且つ、消光を防止できるので発光層から強度が高い光を発することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る発光増強基板及び発光素子によると、発光体を強く励起できると共に消光を防ぐことができるため、発光強度を顕著に向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光増強基板を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る発光素子を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施例におけるSiナノ粒子の粉砕時間とその粒径との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例における発光増強基板の表面のSEM像を示す図である。
【図5】(a)は、本発明の実施例における発光増強基板を用いた場合と用いていない場合とにおけるクリスタルバイオレット溶液の蛍光スペクトルを示すグラフであり、(b)は、本発明の実施例における発光増強基板を用いることで得られたクリスタルバイオレット溶液の各波長における発光の増強度を示すグラフであり、(c)は、クリスタルバイオレット溶液の発光の増強度とSiナノ粒子の粒径との関係を示すグラフである。
【図6】(a)は、本発明の実施例におけるSiナノ粒子の散乱スペクトルを示すグラフであり、(b)は、Siナノ粒子の粒径と散乱強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。

【0022】
まず、本発明の一実施形態に係る発光増強基板について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る発光増強基板を模式的に示す断面図である。

【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る発光増強基板1は、発光体の発光強度を増強するために用いられ、基板2と、基板の表面に配設され、シリコン(Si)からなる複数のSiナノ粒子3により構成されたナノ粒子層4とを備え、ナノ粒子層4は、光が照射されることによって散乱光を生じる局在電場を発生することを特徴とする。

【0024】
本実施形態において、発光体とは、外部からの刺激により、当該発光体を構成する分子、イオン又は原子等の電子状態が基底状態から励起状態に励起された後、基底状態に移る際のエネルギーの差分を光として外部に放出するものをいう。なお、このような発光体からの発光は、所定の波長の光に発光体が励起されることによる発光(フォトルミネセンス)に限られず、例えば、電界の印加により発光体が励起されることによる発光(エレクトロルミネセンス)、又は化学反応により発光体が励起されることによる発光(ケミルミネセンス)等であってもよい。

【0025】
また、本実施形態の発光増強基板1に用いられる基板2は、ナノ粒子層4を表面に配設できるものであれば、その材料等は制限されない。例えば、基板2側から光を照射したい場合はガラス等からなる透明基板を用いることができ、そうでなければ、透明基板の他に樹脂等からなる基板を用いることもできる。

【0026】
また、本実施形態の発光増強基板1に用いられるSiナノ粒子3の材料となるSiは、特に純度に制限があるわけではなく、そのSiナノ粒子3が光の照射を受けることにより局在電場を発生することができれば、半導体素子に用いられるような高純度のものを用いる必要はない。また、局在電場をより増強するために、金属等の粒子を含ませる必要もない。金属粒子を含むことによって消光が起こり、これにより、発光の増強度が低減するおそれがあるためである。また、Siナノ粒子3の粒径は、240nm以上2000nm以下であることが好ましい。後に詳細に説明するが、Siナノ粒子3の粒径がその範囲にあると、発光の増強度を顕著に向上できる。また、Siナノ粒子3により構成されるナノ粒子層4において、基板2の表面の全面にSiナノ粒子3が覆われている必要はなく、図1に示すように、Siナノ粒子3同士の間に間隙があっても構わない。

【0027】
Siナノ粒子3は、Siを材料としていれば、その製造方法は特に限られず、例えばボールミリング法を用いることができる。ボールミリング法を用いると、Si粉末等から容易にSiナノ粒子を製造することでき、また、ボールミル装置の回転数及び粉砕時間等を調整することによって、その粒径を容易に調整することができる。

【0028】
Siナノ粒子3を基板1に配設する方法としては、上記ボールミリング法において溶媒としてメタノール等のアルコールを用いた場合、Siナノ粒子3が分散したアルコール溶液を基板1に塗布し、その後、乾燥させることでSiナノ粒子3を基板1に配設できる。但し、基板1にSiナノ粒子3を配設できれば、この方法に限られず、例えば、真空蒸着等を用いても構わない。

【0029】
上記のような構成により、本実施形態に係る発光増強基板は、その表面に発光体を設けると、例えばその発光体からの光を受けることにより、Siナノ粒子から構成されたナノ粒子層が高強度散乱光を生じる局在電場を発生し、この局在電場によって発光体を励起できるため、発光体の発光強度を増強できる。さらに、間接遷移型半導体であるSiによりナノ粒子層が構成されているため、励起された発光体からSiへのエネルギー移動を防ぐことができ、消光を防ぐことが可能となる。これにより、発光強度を著しく増強できる。

【0030】
上記の通り、Siナノ粒子3は、発光強度を増強できるため、例えば目的とする物質を検出するために蛍光を利用するバイオセンサ、高輝度且つ低消費電力の照明又は有機ELディスプレイ等に用いられる発光素子に応用することも可能である。

【0031】
次に、本発明の一実施形態に係る発光素子について図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る発光素子を模式的に示す断面図である。

【0032】
図2に示すように、本実施形態に係る発光素子10は、例えば有機ELディスプレイに用いられる発光素子であり、ガラスからなる透明基板11の上に、ITOからなる透明な陽極12が形成されている。陽極12の上には、正孔輸送層13が形成され、正孔輸送層13の上には、例えばp型有機半導体層14a及びn型有機半導体層14bからなる発光層14が形成されている。ここで、正孔輸送層13と発光層14との間には、シリコンからなるSiナノ粒子により構成されたナノ粒子層4が設けられている。発光層14の上には、電子輸送層15及びアルミニウムからなる陰極16が順次形成されている。

【0033】
このような構成によると、発光素子10に電圧が印可された際に、正孔及び電子が発光層14において結合することにより光が発生する。発光層14の表面に設けられたナノ粒子層4は発光層14からの光により局在電場を生じ、ナノ粒子層4が形成する局在電場によって発光層14が励起され、その発光強度が増強される。

【0034】
なお、発光素子10に用いられたナノ粒子層4は、上記発光増強基板で用いたSiナノ粒子と同様のものを用いて形成され得る。すなわち、Siナノ粒子の材料となるSiは、特に純度に制限がなく、金属等の粒子を含ませる必要もない。また、Siナノ粒子の粒径は、240nm以上2000nm以下であることが好ましい。さらに、Siナノ粒子により構成されるナノ粒子層4において、正孔輸送層13と発光層14との界面の全面にSiナノ粒子が覆われている必要はなく、Siナノ粒子同士の間に間隙があっても構わない。Siナノ粒子は、Siを材料としていれば、その製造方法は特に限られず、例えばボールミリング法を用いることができる。

【0035】
以上のように、本発明の一実施形態に係る発光増強基板及び発光素子によると、Siナノ粒子が生成する高強度散乱光を生じる局在電場により発光体を励起できて且つ消光を防止できるため、その発光強度を増強できる。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明に係る発光増強基板について詳細に説明するための実施例を示す。本実施例では、ボールミリング法により種々の粒径を有するSiナノ粒子を製造し、その粒径と発光強度の増強度との関係について検討した。
【実施例】
【0037】
まず、Siナノ粒子の製造方法について説明する。本実施例では、Si粉末を材料とし、遊星型ボールミル装置(premium line P-7、FRITSCH社製)を用いたボールミリング法によりSiナノ粒子を製造した。具体的に、遊星型ボールミル装置のタングステンカーバイド(WC)からなる粉砕容器にWCからなる粉砕ボール(φ=3mm)とSi粉末を入れ、溶媒にメタノールを用いてSi粉末を粉砕した。ここで、遊星型ボールミル装置の回転数は600rpmとした。なお、ボールミリング法で、数センチ角に破断したシリコンウェハ(P型、N型及びイントリンシック)でもSiナノ粒子の生成を確認している。
【実施例】
【0038】
ここで、所望の粒径のSiナノ粒子を得るために、粒径と粉砕時間との関係を調べた。粉砕時間を30分、90分、165分及び180分として、各条件において生成されたSiナノ粒子の平均粒径を測定した結果を図3に示す。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて数個の粒子の粒径を測定して、その平均を算出した。なお、本明細書でいう粒径は、上記の方法で測定及び算出された平均粒径のことをいう。
【実施例】
【0039】
図3に示すように、粉砕時間を長くするに従ってSiナノ粒子の粒径が小さくなった。具体的に、粉砕時間を30分、90分、165分及び180分とすると、Siナノ粒子の粒径がそれぞれ2000nm、700nm、500nm及び300nmとなった。また、粉砕時間を180分とし、そのときに得られた溶液の上澄み液を採取すると、該上澄み液中に分散されたSiナノ粒子の粒径は240nmであった(図中の白抜きの菱形)。このように、ボールミリング法を用いてSiナノ粒子を製造すると、粉砕時間によりその粒径を制御できるため、容易に所望の粒径のSiナノ粒子を得ることができる。以下、上記の各粒径のSiナノ粒子を製造する際には、上記の各粉砕時間を用いた。
【実施例】
【0040】
次に、上記ボールミリング法によって製造したSiナノ粒子が分散しているメタノール溶液をITOガラスの表面に塗布し、その後、それを乾燥した。これにより、ITOガラスからなる基板の上にSiナノ粒子からなるSiナノ粒子層が形成された発光増強基板を製造した。
【実施例】
【0041】
続いて、この発光増強基板の表面状態をSEMを用いて観察した。その結果を図4に示す。なお、ここでは、粉砕時間を165分にして製造された粒径が500nm程度のSiナノ粒子を有する発光増強基板を観察した。
【実施例】
【0042】
図4に示すように、発光増強基板の表面に、Siナノ粒子が配設されていることが観察できた。なお、Siナノ粒子は、基板の表面の全面を覆ってはおらず、Siナノ粒子同士の間に間隙がある部分も観察された。また、Siナノ粒子の形状は、球形等ではなく、それぞれ規則的な形状を示してはいなかった。
【実施例】
【0043】
次に、上記のように製造した発光増強基板におけるSiナノ粒子の粒径と発光体の発光の増強度との関係を検討した。
【実施例】
【0044】
本実施例では、発光体として有機色素分子であるクリスタルバイオレット(CV)を用い、濃度が10-3MのCV溶液(溶媒はメタノール)を調製した。この調製したCV溶液をステンレス製の薄層セル上に置いた発光増強基板の上に満たした後に、発光増強基板の上にカバーガラスを置き、CVの蛍光スペクトルを測定した。なお、このとき用いた発光増強基板のSiナノ粒子の粒径は500nmである。また、その対照として発光増強基板を用いずに蛍光スペクトルを測定した。このとき、ITOガラス基板の上にナノ粒子層を設けていないこと以外は発光強度基板を用いた場合と同一の条件で測定している。
【実施例】
【0045】
さらに、これらの測定を、上記の各粒径(240nm、300nm、500nm、700nm及び2000nm)のSiナノ粒子を有する発光増強基板を用いて行い、それぞれの粒径の場合におけるCVの発光の増強度を算出した。具体的に、発光増強基板を用いた場合の発光強度の値を、発光増強基板を用いていない場合の発光強度の値で割った値を増強度として示している。なお、蛍光スペクトルは、共焦点顕微分光装置(LabRAM HR-800、HORIBA Jobin Yvon社製)を用いて測定した。また、励起光は波長が633nmのHe-Neレーザを用い、対物レンズは100倍(N.A.=0.6、SLMPLN100x、オリンパス社製)を用いた。
【実施例】
【0046】
以上のようにして測定した結果について図5(a)~(c)を参照しながら説明する。図5(a)は、粒径が500nmのSiナノ粒子が配設された発光増強基板を用いた場合のCVの蛍光スペクトルと、発光増強基板を用いずに測定したCVの蛍光スペクトルとを示している。なお、発光強度基板を用いずに測定した光強度は、極めて小さく図中に示すことが困難であったため、得られた値を300倍にして示している。図5(b)は、(a)における発光増強基板を用いた場合のCVの各波長の発光の増強度を示すグラフであり。図5(c)は、粒径が240nm、300nm、500nm、700nm及び2000nmのSiナノ粒子がそれぞれ配設された発光増強基板を用いた場合の、CVの発光(波長が633nm)の増強度を示したグラフである。
【実施例】
【0047】
図5(a)及び(b)に示すように、発光増強基板を用いると、CVの発光強度が顕著に増強した。具体的に、粒径が500nmのSiナノ粒子を有する発光増強基板を用いると、波長によってはCVの発光を最大で約2400倍にまで増強できた。また、各粒径のSiナノ粒子における波長が633nmの光の増強度を比較すると、図5(c)に示すように、発光増強基板のSiナノ粒子の粒径が240nm以上2000nm以下の範囲では、どの粒径であってもCVの発光強度を増強できた。中でも粒径が500nmの場合が最もCVの発光強度を増強し、約2000倍の増強度を示した。なお、上記範囲の粒径で最も増強度が小さかった2000nmの粒径のものを用いても、約165倍の増強度を確認できた。
【実施例】
【0048】
次に、電子を強制振動することにより強いレイリー散乱が観察できるため、これを利用して、上記のような発光強度の増強効果がSiナノ粒子上の散乱光を生み出す局在電場によるのか検討するために、各粒径(240nm、300nm、500nm、700nm及び2000nm)のSiナノ粒子の散乱強度を測定した。図6(a)は、各粒径のSiナノ粒子の散乱スペクトルを示し、図6(b)は、波長が633nmの光に対する上記の各粒径の散乱強度を示すグラフである。なお、散乱スペクトルは、上記蛍光スペクトルの測定と同一の装置を用い、ハロゲン光源ユニット(KL1500LCD、Carl Zeiss社製)によってリング状白色光を対物レンズの周囲に照射し、暗視野顕微鏡を用いて測定した。
【実施例】
【0049】
図6(a)に示すように、Siナノ粒子は、その粒径毎に異なる散乱スペクトルを示した。各粒径において、散乱強度がピークとなる光の波長も異なることがわかる。また、波長が633nmの光に対する散乱強度を各粒径で比較すると、図6(b)に示すように、粒径が500nmが最大で、それより大きくなる又は小さくなるに従って、散乱強度が小さくなった。これは、上記発光の増強度とも相関し、Siナノ粒子による発光強度の増強は、Siナノ粒子が光照射を受けて生じた局在電場によるものであると示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、発光体から発する光の強度を増強でき、目的とする物質を検出するために蛍光を利用するバイオセンサ、及び有機ELディスプレイ又はLED照明等に用いられる発光素子等に利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 発光増強基板
2 基板
3 (Si)ナノ粒子
4 ナノ粒子層
10 発光素子
11 透明基板
12 陽極
13 正孔輸送層
14 発光層
14a p型有機半導体層
14b n型有機半導体層
15 電子輸送層
16 陰極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図4】
5