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明細書 :一酸化炭素の選択的メタン化触媒、その製造方法及びそれを用いた装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5691098号 (P5691098)
登録日 平成27年2月13日(2015.2.13)
発行日 平成27年4月1日(2015.4.1)
発明の名称または考案の名称 一酸化炭素の選択的メタン化触媒、その製造方法及びそれを用いた装置
国際特許分類 B01J  23/89        (2006.01)
B01J  37/16        (2006.01)
B01J  37/34        (2006.01)
C01B   3/40        (2006.01)
H01M   8/06        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
FI B01J 23/89 M
B01J 37/16
B01J 37/34
C01B 3/40
H01M 8/06 G
H01M 8/10
請求項の数または発明の数 12
全頁数 30
出願番号 特願2011-510261 (P2011-510261)
出願日 平成22年3月9日(2010.3.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 特許法第30条第1項適用、触媒学会発行「触媒 触媒討論会特集号(No.103)」第51巻第2号(平成21年3月10日)第135-137頁に発表
国際出願番号 PCT/JP2010/054279
国際公開番号 WO2010/122855
国際公開日 平成22年10月28日(2010.10.28)
優先権出願番号 2009106938
優先日 平成21年4月24日(2009.4.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年9月12日(2011.9.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】渡辺 政廣
【氏名】山下 壽生
【氏名】東山 和寿
【氏名】宮尾 敏広
【氏名】陳 愛華
個別代理人の代理人 【識別番号】100080322、【弁理士】、【氏名又は名称】牛久 健司
【識別番号】100104651、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 正
【識別番号】100114786、【弁理士】、【氏名又は名称】高城 貞晶
審査官 【審査官】大城 公孝
参考文献・文献 特開2007-252988(JP,A)
特開2006-062934(JP,A)
特開2007-203129(JP,A)
特開2006-327904(JP,A)
特許第4221498(JP,B2)
MORRIS, S. M. et al,Ordered Mesoporous Alumina-Supported Metal Oxides,J. Am. Chem. Soc.,2008年10月16日,Vol.130, No.45,p.15210-15216,DOI: 10.1021/ja806429q
WATANABE,M. et al,Nano-sized Ni particles on hollow alumina ball: Catalysts for hydrogen production,Applied Catalysis B: Environmental,Elsevier,2007年 2月15日,Vol.71, No.3-4,Pages 237-245,doi:10.1016/j.apcatb.2006.09.013
AL-UBAID, A. et al,Steam reforming of methane on reduced non-stoichiometric nickel aluminate catalysts,Applied Catalysis,1988年 6月15日,Vol.40, No.1/2,p.73-85,DOI:10.1016/S0166-9834(00)80427-3
調査した分野 B01J 21/00-38/74
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
一酸化炭素と二酸化炭素を含有する水素リッチガスから一酸化炭素をメタンとして除去する触媒において,少なくともニッケルとアルミニウムとを含む金属塩水溶液の微細液滴を常圧プラズマ又は減圧高周波プラズマ中で加熱処理して得られる,ニッケル/アルミニウムモル比が 0.5未満の複合酸化物前駆体を担体とし,該前駆体の担体表面上に金属ニッケル粒子が析出しており,かつ析出している前記ニッケル粒子に,ルテニウム,白金,パラジウム,ロジウム,イリジウム及びオスミウムのいずれか一つ又は二つ以上の金属が含まれていることを特徴とする一酸化炭素の選択的メタン化触媒。
【請求項2】
一酸化炭素と二酸化炭素を含有する水素リッチガスから一酸化炭素をメタンとして除去する触媒において,少なくともニッケルとアルミニウムを含み,アルミニウムアルコキシド,ニッケル塩および界面活性剤の溶液からゾル-ゲル法により形成されるメソポーラス体であってニッケル/アルミニウムモル比が 0.5未満の複合酸化物前駆体を担体とし,該前駆体の担体表面上に金属ニッケル粒子が析出しており,かつ析出している前記ニッケル粒子に,ルテニウム,白金,パラジウム,ロジウム,イリジウム及びオスミウムのいずれか一つ又は二つ以上の金属が含まれていることを特徴とする一酸化炭素の選択的メタン化触媒。
【請求項3】
前記複合酸化物前駆体が非晶質であることを特徴とする請求項1または2に記載の一酸化炭素の選択的メタン化触媒。
【請求項4】
前記ニッケルとアルミニウムとを含む複合酸化物前駆体が直径が3から12nmの球状粒子ないしは0.1から5μmの中空の球状粒子であることを特徴とする請求項1に記載の一酸化炭素の選択的メタン化触媒。
【請求項5】
CO2 の化学吸着量が触媒粉末単位重量(g-cat)あたり60μmol以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の一酸化炭素の選択的メタン化触媒。
【請求項6】
一酸化炭素の選択的メタン化率が99.9%以上となる温度ウィンドウが50℃以上 120℃未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の一酸化炭素の選択的メタン化触媒。
【請求項7】
セラミックス又は金属のハニカム基材上にコーティングされていることを特徴とする請求項1または2に記載の一酸化炭素の選択的メタン化触媒。
【請求項8】
少なくともニッケルとアルミニウムを含む金属塩水溶液の微細液滴を常圧プラズマ又は減圧高周波プラズマ中で加熱処理し,ニッケル/アルミニウムモル比が 0.5未満の複合酸化物前駆体を作製する第1の工程と,該前駆体に,ルテニウム,白金,パラジウム,ロジウム,イリジウム及びオスミウムのいずれか一つ又は二つ以上の金属を担持させる第2の工程と,前記第2の工程を経た前駆体を還元ガス雰囲気中200℃から700℃で加熱し該前駆体表面に金属ニッケル粒子を析出させる工程とを含むことを特徴とする一酸化炭素の選択的メタン化触媒の製造方法。
【請求項9】
少なくともニッケルとアルミニウムを含み,ニッケル/アルミニウムモル比が 0.5未満のメソポーラス体である複合酸化物前駆体を作製する第1の工程と,該前駆体に,ルテニウム,白金,パラジウム,ロジウム,イリジウム及びオスミウムのいずれか一つ又は二つ以上の金属を担持させる第2の工程と,前記第2の工程を経た前駆体を還元ガス雰囲気中200℃から700℃で加熱し該前駆体表面に金属ニッケル粒子を析出させる工程とを含み,前記第1の工程がアルミニウムアルコキシド,ニッケル塩および界面活性剤の溶液からゾル-ゲル法により前記メソポーラス体を形成するものであることを特徴とする一酸化炭素の選択的メタン化触媒の製造方法。
【請求項10】
金属ニッケル粒子を析出させた前記触媒粉末を粒状,板状に成型又はハニカム基板上にコーティングする工程を更に含むことを特徴とする請求項8または9に記載の一酸化炭素の選択的メタン化触媒の製造方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれかに記載の一酸化炭素の選択的メタン化触媒を搭載したことを特徴とする固体高分子形燃料電池用の水素製造・精製装置。
【請求項12】
請求項7に記載の一酸化炭素の選択的メタン化触媒をコーティングしたハニカムを搭載した固体高分子形燃料電池用の水素製造・精製装置において,前記ハニカムを多段に分割し,かつ分割したハニカム間にガス混合のための空間を設置することを特徴とする固体高分子形燃料電池用の水素製造・精製装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガス、 LPG、灯油など各種の炭化水素燃料から水素ガスを製造する際、副生ガスとして生成する一酸化炭素COを選択的にメタン CH4に転換する触媒、その触媒の製造方法及びそれを用いた装置に関する。本発明が開示する技術を用いれば、CO含有濃度が 10ppm以下の水素リッチガスを安定に生成でき、使用する触媒も安価に製造できるため、例えば、固体高分子形燃料電池を用いた家庭用発電システムの燃料改質器に好適に適用できる。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は80℃程度の低温で運転するため燃料である水素リッチガス中に一酸化炭素(以下、COと云う)があるレベル以上含まれていると、アノード白金触媒のCO被毒により、発電性能が低下したり遂には全く発電ができなくなったりするという問題が生じる。
【0003】
このCO被毒を回避するため、都市ガス、LPガス又は灯油などを燃料改質器で水素リッチガスに転換して使用する家庭用固体高分子形燃料電池発電システムでは、燃料電池アノード入口ガスのCO濃度を常に 10ppm以下に抑えることが望まれる。実システムの多くは、燃料改質プロセスの最終段階で生成ガスに空気を混合しガス中に含まれるCOを CO2に酸化するCO選択酸化触媒を採用している。
【0004】
CO + 1/2 O2 = CO2 (反応式1)
【0005】
CO選択酸化触媒入口でのCO濃度は0.5~1.0%に設計されることが多いが、現状のCO選択酸化触媒の性能ではシステムの耐用期間を通じてCO 10ppm以下を保証することは難しい。加えて、現状の触媒のCO選択率は 100%ではなく供給した空気(酸素)の一部は水素の酸化にも消費されるため、CO濃度が十分下がらず、しかも水素が無駄に浪費されるという問題を本質的に抱えている。
【0006】
H2 + 1/2 O2 = H2O (反応式2)
【0007】
実際のシステムでは、特許第 2869525号や特開2001-240402に開示される様にCO選択酸化触媒層を多段に設け、全COを酸化するために必要な化学量論空気量の1.5~3倍の空気を各段の触媒層に分配供給することで上記問題に対処するものが多い。このCO選択酸化触媒を多段(通常は二段)にする方法は、貴金属を含むCO選択酸化触媒が 2倍必要になるというだけではなく、空気供給ポンプとその制御システム、更には供給した空気を反応ガスと均一に混合するための混合構造もそれぞれ各段に必要となるため、補機や材料、加工費用の大幅アップにつながっている。また燃料改質器のサイズと容量の増加も招いている。
【0008】
前述のCO選択酸化触媒以外に特開平3-93602、特開2007-252988、Applied Catalysis A, 326(2007)213-218(Robert A. Dagle et al)等に開示されるCOの選択メタン化触媒を用いる方式もある。更に特許第 3865479号ではCO選択酸化触媒にCO選択メタン化触媒を組み合わせた方式も提案されている。また、特開2007-203129号は、大気圧プラズマを使用した高活性・高耐久の各種水素製造用触媒を製造する方法を開示しているが、CO選択メタン化触媒については言及がない。このCO選択メタン化触媒はCOをH2と反応させ白金電極触媒には無害な CH4にするものであるため、外部から空気を供給するポンプが必要なく、改質器の構造も簡略化・小型化できるというコスト上のメリットが大きい。
【0009】
CO + 3H2 = CH4 + H2O (反応式3)
【0010】
しかし、COのメタン化反応には、CO2のメタン化反応が副反応として存在する。
【0011】
CO2はCOに比べ水素リッチガス中に高濃度で存在するため、CO2メタン化反応が起こるとH2を大量に消費することになり好ましくない。
【0012】
CO2 + 4H2 = CH4 + 2H2O (反応式4)
【0013】
このため、CO選択メタン化触媒ではCOのメタン化活性が高く、かつ CO2のメタン化活性が低い(CO選択性が高い)ことが要求される。またCO2が H2と反応してCOを生成する逆水性シフト反応も高温では無視できなくなりその抑制が必要である。
【0014】
CO2 + 2H2 = CO + 2H2O (反応式5)
【0015】
これまで報告されているCO選択メタン化触媒は、高いCO活性と高いCO選択性を同時に満足する温度域がせいぜい30℃程度、広くても50℃を越えないものがほとんどである。そのため、システム上の突発的な条件変動に対して必ずしも安定ではなく、出口CO濃度が増加したり、発熱反応である CO2のメタン化反応により触媒層の温度が急激に上昇し制御不能に陥ったりする可能性がある。CO選択メタン化触媒は、このようなシステムの信頼性に関わる重要な問題をいまだ解決できていないため、発電システムのコストを大幅に低減できる可能性を持っているにもかかわらず、これまで実用的なシステムに採用されたという報告はほとんどない。
【0016】
現状のCO選択メタン化触媒を用いた場合にシステムの信頼性が必ずしも十分確保できない理由について更に詳述する。CO選択メタン化触媒に流入する濃度1%のCOを浄化し出口CO濃度10ppm以下を実現するには、触媒は常に99.9%以上の浄化率が必要である。入口CO濃度が半分の 0.5%に削減されても99.8%以上の高い浄化率が必要である。触媒自体が本来高い活性を有していても、このような極限の浄化率で運転される状況下では、実際の反応プロセスでは当然起こり得る運転条件の変動、つまり、わずかな温度の低下やわずかな入口CO濃度の上昇でも出口CO濃度の増加に大きく影響する。特に触媒の温度ウィンドウの下限付近で運転する場合には致命的な結果を招いてしまうことになる。
【0017】
一方、COメタン化反応は温度が高くなる程進みやすくなるため、温度ウィンドウの高温側では前述のような温度の低下や入り口CO濃度の上昇だけでは出口CO濃度の急激な上昇は生じにくい。それよりも高温側ではむしろ CO2メタン化反応や逆水性シフト反応の影響が大きい。何らかの原因で触媒層の温度が上がった場合、これら二つの副反応によりH2を大量に消費してしまうという問題が生じる。またCOメタン化反応に CO2メタン化反応の反応熱も加わると、触媒層の温度が急激に上昇し、遂には温度暴走による反応器の制御不能を招いてしまう。この現象が生じると触媒性能に回復不能なダメージや反応器の損傷を引き起こすことがある。
【0018】
これらの実用上の問題を解決するためには、低温域におけるCOメタン化反応の活性を大きく改善するとともに、高温側における副反応である CO2メタン化反応と逆水性シフト反応が起こり始める温度をさらに高温側まで押し上げ、安定に運転できる温度ウィンドウの飛躍的な拡大を実現するCO選択メタン化触媒が望まれる。
【発明の開示】
【0019】
このような状況の中、発明者らは上記課題の解決を鋭意検討した結果、原料塩水溶液の微細液滴をプラズマ中に投入する噴霧プラズマ法により作製した非化学量論組成のニッケル-アルミニウム複合酸化物前駆体にルテニウム塩を含浸担持し、還元処理を行うことにより、従来触媒では CO2メタン化反応と逆水性シフト反応が優先的に進行する高温度領域においても、選択的にCOメタン化反応を進行させ得ることを見出した。更にはその他のニッケル-アルミニウム複合酸化物前駆体や添加金属種においてもCO選択メタン化反応が再現性よく発現することを見出した。また、これら触媒材料の製作工程において、従来の触媒作製法とは異なる工程を経ることでCOメタン化反応の低温活性や選択性を向上できることを見出した。更にこれら新規触媒材料・製法の発明に加え、得られた触媒材料を従来の粒子形状でなくハニカム形状として反応装置に適用することにより触媒材料が持つ温度ウィンドウを最大限有効に利用できることを見出した。
【0020】
これらの新たな知見を元に本発明が提示する特徴を以下に説明する。
【0021】
本発明のCO選択メタン化触媒の特徴は、少なくともニッケルとアルミニウムを含み、このニッケルとアルミニウムが非化学量論組成比で両元素が均一な割合で構成される複合酸化物前駆体を担体とし、更にこの前駆体の担体表面上に金属ニッケル粒子が析出している点にある。
【0022】
ここでニッケルとアルミニウムを含む複合酸化物前駆体は、非晶質体であってもよく、また直径が3~12nmの球状粒子ないしは0.1~2μmの中空の球状粒子であってもよい。
【0023】
また、ニッケルとアルミニウムを含む複合酸化物前駆体はメソ多孔体であってもよい。
【0024】
一方、本発明のCO選択メタン化触媒は、水素等の気流中において金属酸化物を容易に還元することのできる金属種;酸化物還元能を有する金属、が前記金属ニッケル粒子に金属や合金あるいはその両方の形態で含まれていてもよい。
【0025】
ここで上記の酸化物還元能を有する金属は、ルテニウム、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウムのうち少なくとも一つ以上を含むことが望ましい。
【0026】
また本発明のCO選択メタン化触媒は、触媒粉末単位重量あたりの CO2の化学吸着量が60μmol/g-cat以下であることが望ましい。
【0027】
本発明の触媒では一酸化炭素の選択的メタン化率が99.9%以上となる温度ウィンドウを50℃以上120℃未満とすることができる。
【0028】
CO選択メタン化触媒を使用する形状は、セラミックス又は金属のハニカム基材上にコーティングされていることが望ましい。
【0029】
本発明のCO選択メタン化触媒の製造方法の特徴は、少なくともニッケルとアルミニウムとを含み、このニッケルとアルミニウムは非化学量論組成比である複合酸化物前駆体を作製する工程と、前駆体を還元ガス雰囲気中200℃から700℃で加熱し前駆体表面に金属ニッケル粒子を析出させる工程を含む点にある。さらに好ましくは、この製造方法は、作製した触媒粉末を更に粒状、板状に成型、又はハニカム基材上にコーティングする工程を含む。
【0030】
ここで複合酸化物前駆体を作製する工程は、金属塩水溶液の微細液滴を常圧プラズマ又は減圧高周波プラズマ中で高速加熱処理する方法を含んでいてもよい。
【0031】
さらには複合酸化物前駆体を作製する工程が、メソポーラス体を形成するためのゾル-ゲル法又は水熱合成工程又は気相析出工程を含んでいてもよい。
【0032】
また前駆体を還元ガス雰囲気中で加熱する工程に先立ち、酸化物還元能を有する金属の原料塩溶液に該前駆体を浸漬する工程を含んでもよい。
【0033】
本発明の固体高分子形燃料電池用水素製造装置及び/又は精製装置(「製造・精製装置」という)の特徴は、上記CO選択メタン化触媒を搭載している点にある。天然ガス、 LPG、灯油などの炭化水素燃料から水素リッチガスを製造する装置としては各種の反応を利用したプロセスがあるが、副生するCOを除去する必要がある場合は、いずれにもCO選択メタン化触媒をコーティングしたハニカムが適用可能である。なかでも天然ガス、 LPG、灯油など各種の炭化水素燃料を水蒸気改質、ドライリホーミング、部分酸化、オートサーマルリーホーミングなどの反応及びこれらの組合せ反応で粗水素を作り、このとき副反応で生成するCOをさらに高温シフト反応及び/又は低温シフト反応などで水と反応させ水素濃度を高め、最終的にCOを ppmオーダーまで低減するプロセスにおいては、CO選択メタン化触媒をコーティングしたハニカムを使用するのに好適である。
【0034】
更にガス流れ方向にハニカムを多段に分割し、かつ分割したハニカム間にガス混合のための空間を設置することが望ましい。
【0035】
本発明のCO選択メタン化触媒の効果を端的に述べると、一酸化炭素を、特別な反応ガスを外部から加えることなく効率的かつ経済的に除去できる点にある。
【0036】
現在、COを ppmオーダーまで低減するためには、一般的にCO選択酸化触媒が使用されるが、この触媒は、特許第 2869525号公報に開示されるように反応式1を進行させるために空気の添加を必要とする。特に固体高分子形燃料電池の燃料として使用する場合には、99.9%以上のCO除去率が求められる。多くの燃料改質器においては、前述したように、触媒層を 2段に設置しこの除去率を達成している。そのため、空気供給に大容量のポンプを必要とした。
【0037】
本発明のCO選択メタン化触媒は、ガス中に存在するH2でCOを除去するため空気の供給が全く必要なく、CO選択酸化触媒では不可欠であった大型の空気ポンプと流量調整器が一切不要となり、システムコストの大幅な低減を図ることができる。また空気添加が不要になった別の効果として、従来のCO選択酸化触媒では空気を反応ガスと混合するため燃料改質器中に設けていた複雑な構造を有する一定の空間も不要となる。これにより部材費や製作費を大幅に削減することが可能になる。また、これまで2段のCO選択酸化触媒を用いていた改質器の容量は概ね20リットル程度であったが、本発明のCO選択メタン化触媒に変更することで、燃料改質器の容量を2/3 に低減することは十分可能であり、これによるシステムの運搬性や設置性も今以上に改善される。
【0038】
これまでにもCO選択メタン化触媒は報告されていたが、前記特開平3-93602号公報のCO選択メタン化触媒は、処理するガスのCO濃度が60ppmと低く、一方、前記Applied Catalysis A, 326(2007)213-218 で開示されるCO選択メタン化触媒は、CO 1%の高濃度ガスを処理しているものの処理後のCO濃度は 10ppmを下回っていない。また温度ウィンドウも実用上更に広がることが望まれる。また、前記特開平3-93602号公報、前記特開2007-252988号公報が開示するいずれのCO選択メタン化触媒も、処理ガスを接触させる際の上限温度が 200℃に限定されており、これより高温側では前述したように、反応式4、5に示す副反応の併発によるH2濃度の大幅な減少と熱暴走等のシステム制御の困難さが課題としてあることが示唆される。
【0039】
これに対して、本発明のCO選択メタン化触媒では、触媒材料の新規構成により性能向上と高温での副反応を抑えることで使用可能な温度幅を大きなものでは 100℃に広げることが可能になった。また熱暴走を起こさずに使用できる上限温度は、高いものでは 300℃を超えるものが得られる。これらの効果により、装置制御が格段に容易になり、水素を扱う装置としては決して許されない熱暴走の危険をほぼ完全に排除した安定で信頼性の高い装置を提供することを可能とした。
【0040】
これら本発明の効果がどのような作用に基づくものであるか全て判明した訳ではないが、現状明らかになっている作用について以下に記す。
【0041】
NiAl2O4 はニッケルとアルミニウムの複合酸化物としてよく知られているが、本発明の触媒は、このNiAl2O4 からニッケル不足側にずれた非化学量論組成の酸化物が担体であることがひとつの重要な要素になっている。しかし、ニッケル原料とアルミニウム原料を単純に本発明の非化学量論組成比で混合し、空気中で焼成しただけでは、熱平衡的に安定なNiAl2O4 とAl2O3の結晶相が混じった不均質な酸化物混合体を得るだけである。本発明では、例えば原料塩混合溶液から作製したミストがプラズマないしはプラズマ火炎中で急熱急冷された微小粒子や、ソフトテンプレートを使用して溶液中から作製したメソ多孔体のように、いずれもニッケルとアルミニウムは非化学量論組成比であるがその両元素の分布は均一で、非結晶であることが一つの共通した特徴である。なお本発明の複合酸化物は非晶質であることを他と区別するため、あえて「複合酸化物前駆体」と称している。
【0042】
加えてもう一つの特徴としては、本発明の担体は比表面積が大きく、それが使用温度範囲150~300℃を超えて 500℃付近まで維持されているという点である。これが以下で述べる特異的な触媒活性の発現に強く影響している。
【0043】
このような担体の特徴は、触媒活性発現に必要な条件ではあるが、当然担体だけでは活性を示さない。あくまで担体上に析出した微細なニッケル粒子や酸化物還元能を有する金属が添加された微細なニッケル粒子が活性点であると考えられる。本発明での特異的なメタン化能を呈するニッケル粒子は、いわゆる高比表面積担体上に従来の含浸法などで担持したのでは得られず、前述の担体;「複合酸化物前駆体」の構造中から直接ニッケルを析出することで初めて得られる。酸化物還元能を有する金属は、水素気流中でこの「複合酸化物前駆体」の構造中からニッケル粒子を低温で微細析出させることに効果がある。酸化物還元能を有する金属の表面上では水素H2が解離吸着し、活性な水素原子Hとして担体表面上に流れ出すスピルオーバーが生じる。スピルオーバーにより担体上に流れ出した水素原子は担体を容易に還元し、構造中から微細なニッケルを析出させる。ニッケルの析出過程で、添加した酸化物還元能を有する金属の多くは、析出したニッケルとその組成比に従って固溶体あるいは共晶体、更には凝集体を形成し単独ニッケル粒子以上の高い活性を発現するに至る。これらのニッケルを含む微細粒子は、担体の構造から析出したが故に担体との界面において高い密着性と親和性を有することで通常の方法で析出したニッケル粒子よりも熱的安定性が高い。
【0044】
前記特開2007-203129号は触媒活性成分であるニッケルとルテニウムあるいは白金と担体成分であるアルミニウムを含む直径 30μm以下の液滴を大気圧プラズマ炎中に導入し水蒸気改質触媒を得る方法を開示している。これはCO選択メタン化触媒を対象とするものではない。しかも上記公報の記載は、担体だけでなく活性成分も含めたすべての成分を溶解した水溶液を出発原料として微粉末触媒を合成するところが本発明と大きく異なっている。この方法で合成した微粉末触媒では、本発明の「複合酸化物前駆体」に相当する例えばルテニウムは、他の成分の酸化物中に内包されてしまっているため、その後の還元ガス中で熱処理しても「複合酸化物前駆体」の構造中からニッケル粒子を低温で微細析出させることは困難である。熱処理を高温で行うことにより内包されたルテニウムの一部を微細粒子の外表面に拡散析出させることは可能であるが、高温で処理されることになるため析出したルテニウムの粒子は大きく成長してしまいニッケルを還元析出させる機能は小さくなっている。また還元析出したニッケル自体も高温に曝されるため凝集しその粒子径は大きくなり、高いCO選択メタン化活性は望めない。
【0045】
酸化物還元能を有する金属は、担体を低温で容易に還元し微細で高活性なニッケル粒子を析出させる。この作用により、本発明における触媒の低温活性は著しく高い性能を示すが、これと同時に酸化物還元能を有する金属は、高温域での副反応である CO2メタン化反応を大きく抑制する機能も示す。例えば、Ru金属の担持量にほぼ比例して CO2吸着量が減少する現象が認められる。これは「複合酸化物前駆体」担体に酸化物還元能を有する金属塩の水溶液を接触させた際、 CO2が吸着しやすい担体のサイトに金属イオンが選択的に吸着し、その後の還元処理等によりCO2吸着を阻害する構造に変化させるためである。
【0046】
「複合酸化物前駆体」に対する「酸化物還元能を有する金属」の上記作用により材料としてのCO選択メタン化触媒の優れた効果が得られている。これらの材料を利用する具体的形体としては、例えば、球状、円柱状、チップ状に成型・加工して使用しても良い。しかし、コージェライトやSUSなど金属製のハニカム基材上に触媒をコーティングして使用すれば、以下に述べる二つの作用によってこの触媒の使用温度範囲を更に有効に広げることが可能になる。
【0047】
まず一つ目の作用は、ハニカム基材の材質にかかわらず、同一性能を出す上で粒状触媒よりハニカム触媒の方が使用する触媒量を圧倒的に少なくできるということに起因する。同一容積に触媒を充てんする場合、粒状触媒よりハニカム触媒の方が反応ガスとの接触面積を大きくできる。加えて、ハニカム基材表面への触媒層のコーティング厚さは性能面から数100μmあれば良い。このため、粒状触媒に対して1/5~1/10 の触媒使用量で同等以上の性能を得ることができる。このことは単に経済的な効果を生んでいるだけではなく、熱暴走につながりやすいホットスポットの発生を抑制するという大きな効果を同時に生んでいる。これは、ハニカムでは単位体積当たりに存在する触媒量が極端に少なく、薄い層で形成されたこれらの触媒が絶えず反応ガスにより熱を散逸されるためである。
【0048】
二つ目の作用は、メタル製のハニカム基材により特に顕著である。メタルハニカムはコージェライトなどセラミック製のハニカムに比べて熱伝導率、特にガス流れに垂直な方向の熱伝導率が大きい。さらにメタルハニカムの外周部を反応容器の壁と共通化すればその伝熱(放熱)効果は粒状触媒を大きく上回る。このことによって本発明の触媒の使用温度域は材料本来の性能にハニカムの放熱作用が加わり、高温まで拡張することが可能になる。
【0049】
一方、ハニカム触媒では粒状触媒にはない作製上および使用上の留意点が存在する。それはガスが流通するハニカムの孔(以下、セル)間での性能のばらつきを極力小さくしなければならないという点である。粒状触媒の場合、100個中1個の粒子の性能が全くゼロであっても反応率には全く影響しない。粒状触媒では触媒層に流入したガスは層内で他のガスと混合しながら流通するため、仮に性能の出ない触媒に接触しても他の触媒粒子に接触し反応が進むためである。しかしハニカム触媒の場合、100個のセルのうち1個のセルの触媒活性がゼロであれば、反応率は確実に1%減少する。これは触媒活性のないセルに一旦入ったガスは、他のセルに入ることができないためである。この問題はガス流れ方向にハニカムを複数個に分割し、かつ分割したハニカム間にガス混合のための空間を設置することで回避できる。ハニカムを分割することで仮に同一位置のセルに不具合があってもそれが上下に分割したハニカムで全く同じ位置に重なる確率はとても小さいためである。また、間に空間を設けることで不具合セルから出たガスは他のガスと混合され、次のハニカム触媒では健全な性能のセルに確実に再分配されるためである。このような設置構造をとることにより触媒容積を増加することなく、ハニカム触媒が基本的に抱える製造・使用上の課題を容易に克服することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】水素製造システム全体の概略構成とフローを示す。
【図2a】ハニカム基材の例を示す斜視図である。
【図2b】ハニカム基材の例を示す斜視図である。
【図3】ハニカムを複数段に配置したCO選択メタン化触媒層の構成を示す。
【図4a】Ru担持率の異なる各コージェライトハニカム触媒の活性評価結果を示すグラフである。
【図4b】Ru担持率の異なる各コージェライトハニカム触媒の活性評価結果を示すグラフである。
【図4c】Ru担持率の異なる各コージェライトハニカム触媒の活性評価結果を示すグラフである。
【図4d】Ru担持率の異なる各コージェライトハニカム触媒の活性評価結果を示すグラフである。
【図4e】Ru担持率の異なる各コージェライトハニカム触媒の活性評価結果を示すグラフである。
【図5a】塩化Ru以外のRu塩とPt塩を使用した場合の活性評価結果を示すグラフである。
【図5b】塩化Ru以外のRu塩とPt塩を使用した場合の活性評価結果を示すグラフである。
【図5c】塩化Ru以外のRu塩とPt塩を使用した場合の活性評価結果を示すグラフである。
【図5d】塩化Ru以外のRu塩とPt塩を使用した場合の活性評価結果を示すグラフである。
【図5e】塩化Ru以外のRu塩とPt塩を使用した場合の活性評価結果を示すグラフである。
【図6a】直接還元法で作製した試料(表1 No10)の活性測定結果を示すグラフである。
【図6b】直接還元法で作製した試料(表1 No10)の活性測定結果を示すグラフである。
【図6c】直接還元法で作製した試料(表1 No10)の活性測定結果を示すグラフである。
【図6d】直接還元法で作製した試料(表1 No10)の活性測定結果を示すグラフである。
【図6e】直接還元法で作製した試料(表1 No10)の活性測定結果を示すグラフである。
【図7a】メタルハニカムを使用したNo11の活性評価結果を示すグラフである。
【図7b】メタルハニカムを使用したNo11の活性評価結果を示すグラフである。
【図7c】メタルハニカムを使用したNo11の活性評価結果を示すグラフである。
【図8a】ハニカムコーティングは行わず、ペレットに成形後、軽く粉砕・分級することで作製した1.2~2.0mmの粒子の活性測定結果を示すグラフである。
【図8b】ハニカムコーティングは行わず、ペレットに成形後、軽く粉砕・分級することで作製した1.2~2.0mmの粒子の活性測定結果を示すグラフである。
【図8c】ハニカムコーティングは行わず、ペレットに成形後、軽く粉砕・分級することで作製した1.2~2.0mmの粒子の活性測定結果を示すグラフである。
【図8d】ハニカムコーティングは行わず、ペレットに成形後、軽く粉砕・分級することで作製した1.2~2.0mmの粒子の活性測定結果を示すグラフである。
【図8e】ハニカムコーティングは行わず、ペレットに成形後、軽く粉砕・分級することで作製した1.2~2.0mmの粒子の活性測定結果を示すグラフである。
【図9】1kW燃料改質器について、メタンを燃料とした際の運転結果を示すグラフである。
【図10a】逐次含浸法と共沈法により作製した触媒の活性評価結果を示すグラフである。
【図10b】逐次含浸法と共沈法により作製した触媒の活性評価結果を示すグラフである。
【図10c】逐次含浸法と共沈法により作製した触媒の活性評価結果を示すグラフである。
【図10d】逐次含浸法と共沈法により作製した触媒の活性評価結果を示すグラフである。
【図11a】水素還元処理を行った触媒のTEM写真である。
【図11b】水素還元処理を行った触媒のTEM写真である。
【図12a】図11aおよび図11bに示す触媒の活性評価結果を示すグラフである。
【図12b】図11aおよび図11bに示す触媒の活性評価結果を示すグラフである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0052】
[システム全体の構成]
図1は、原燃料(都市ガス等)から燃料電池(たとえば固体高分子形燃料電池(PEFCスタック))に供給する高い濃度の水素ガスを製造、精製するシステム全体の概略構成とフローを示すものである。破線で囲まれた部分が燃料処理装置に相当し、この中を原燃料ガスが流れ各触媒層を通過する過程で改質とCOの除去を行い( 10ppm以下)高い濃度の水素ガス(改質ガス:H2約80%、CO2約20%)を得る。
【0053】
原燃料ガスはまず脱硫器で硫黄成分を除去した後、改質触媒層において改質反応により水素(H2)と一酸化炭素(CO)を生成し、さらにCO変成触媒層でCOを除去する。ここまでは従来の装置構成である。
【0054】
COを0.5~1.0%程度含むガス(H2,CO2など)は本発明によるCOの選択的メタン化触媒層に流入して、この触媒層を通過する過程でCO濃度が10ppm以下の高濃度H2ガス(改質ガス)となり、PEFCスタックに供給される。
【0055】
CO選択メタン化触媒は、好ましくはハニカム基材上にコーティングして使用される。ハニカム基材の一例が図2a図2bに示されている。図2aはコージェライト製のハニカム基材の例であり、図2bはメタル製のハニカム基材の例である。いずれにしても、筒体(円筒、角筒等)内部に、その長手方向に沿って配置された多数の縦、横、斜め、波形等の仕切り板(隔壁)が交叉して設けられ、隣接する仕切り板間がガスの通路となっている。これらの仕切り板の表面全体にCO選択メタン化触媒がコーティングされる。断面が六角形のみならず、四角形、正弦波形、その他の形状のガス通路(流路)(セル)を有するハニカム構造のものを、この明細書では、単にハニカムまたはハニカム基材と呼ぶ。
【0056】
好ましくは、図3に示すように、CO選択メタン化触媒をコーティングした複数のハニカムを、反応容器内に、ガスの流れの方向に沿って間隔をあけて多段に配置する。
【0057】
図1に示す燃料処理装置全体を水素製造・精製装置ということもできるし、図3に示すCO選択メタン化触媒層を含む部分を水素製造・精製装置といってもよい。
【0058】
[複合酸化物前駆体(担体)]
本発明ではニッケルとアルミニウムを含む複合酸化物前駆体を担体としている。この複合酸化物前駆体の担体の一部が還元されニッケルを含む微細な活性種を析出する。
【0059】
担体のニッケルとアルミニウムのモル比(Ni/Al)は0.05以上 0.5未満、好ましくは0.1以上0.39未満である。 Ni/Alモル比がこの数値より小さいと後述の方法で析出させるニッケル粒子数が少ないため触媒性能は高くならない。一方、Ni/Alモル比が所謂0.5の化学量論比乃至はその近傍の場合、今度は析出するニッケル粒子が大きく成長するため、この場合も高い触媒活性を得ることは難しい。
【0060】
適正な組成範囲の複合酸化物前駆体を形成する方法としては、いわゆるニッケルとアルミニウムそれぞれを含む原料塩溶液から沈澱させてもよいが、原料塩混合水溶液の微細液滴を常圧プラズマ中に気流搬送して得た直径0.1~5μm、肉厚10 nm程度の中空球状粒子が高い触媒活性を得る上で望ましい。または減圧プラズマ中に原料溶液を直接噴霧する方法で合成した直径 3~12nm微細な球状粒子でも同様の効果を得る。これらは原料塩が高温のプラズマ中で急熱急冷処理されることで非化学量論組成の酸化物が特定の結晶相を含まずにより均一組成でかつ高い比表面積を保持した状態で得られる点で好ましい。ここで粒子が中空か否かということは直接触媒活性を左右するものではなく、その厚さが関係しているものと思われる。つまり粒子径が10nm程度か、粒子が大きくても肉厚が10nm程度であれば同じ効果が得られるということである。この理由が現状必ずしも明らかではないが、添加金属による水素のスピルオーバーでニッケルが還元析出する際のサイズに影響しているものと思われる。
【0061】
プラズマを使用せず高い触媒活性が得られる担体を得ることも可能で、特に規則的な細孔構造を有するメソ多孔体は担体として最も優れている。適正組成範囲にあるアルミニウムとニッケルのメソ多孔体は、アルミニウムアルコキシド、ニッケル塩および界面活性剤の溶液からゾル-ゲル法により作製することができる。これにより作製したいわゆる複合酸化物前駆体は特定サイズのメソポアを有し、比表面積も他の方法で得た複合酸化物前駆体より著しく大きい。これを用いて作製した触媒はCOメタン化反応の低温活性が高くかつ高温での選択性も高い、温度ウィンドウの広い触媒が得られる。ゾル-ゲル法で作製した前駆体ではニッケルとアルミニウムが分子レベルで均一で、またプラズマ法の様に短時間でも高温を経験していないため、比表面積が高く微細結晶相も析出せず、プラズマ法での粒子径に相当するメソポーラス構造の壁面厚さもサブナノメートルと十分薄い、ことなどが特徴としてあげられる。
【0062】
[活性金属の析出]
担体である上記の複合酸化物前駆体を水素等の還元ガス気流中で昇温還元しニッケルの微細粒子を析出させることでCO選択メタン化触媒が得られる。この際、得られるニッケル粒子が担体表面上に微小な粒子として存在していることが重要である。その粒子径は1~20nm、特に1~5nmの範囲にあることが望ましい。
【0063】
担体である複合酸化物前駆体がアルミニウムに対してニッケル不足側の非化学量論組成であることがこれら微細なニッケル粒子の還元析出を容易にしているものと思われるが、更に微細なニッケル粒子を容易に還元析出させる方法として、酸化物還元能を有する金属を担持することが有効である。ルテニウム、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウムのうち少なくとも一つ以上を含む原料塩水溶液を一定量担体粉末に含浸し焼成する含浸法で行うことができる。これらは貴金属であり、経済性と効果の両方を考慮するとルテニウムが好ましい。ルテニウム担持量はRu金属として0.2~5wt%、好ましくは0.5~3wt%の範囲が望ましい。COメタン化反応の低温活性は、ルテニウム担持量の増加とともに高くなるが増えすぎると一転悪くなる傾向を示す。これは還元によって析出するニッケルが多くなり過ぎると逆に凝集によりニッケル粒子径が大きくなるためと思われる。
【0064】
ルテニウムの含浸工程では、ルテニウム塩水溶液を含浸した後、空気中で乾燥、焼成する。その後還元雰囲気中で一部はルテニウム金属として、また一部は還元析出したニッケル中に拡散混合し合金として存在する。金属ルテニウム自体は2000℃を超える高融点金属であるが酸化雰囲気で存在する酸化ルテニウムは融点が低く昇華性を持つと云われている。このような観点から空気中での酸化焼成を行わず、乾燥後直接水素など還元ガス雰囲気下で還元処理すると同一ルテニウム担持量ではニッケルの微細化が得られ低温活性を高くできる。また同一低温活性を得る場合にはより少ないルテニウム担持量で済む。
【0065】
一方、副反応である CO2のメタン化反応は、ルテニウム担持量が増えるほど抑制され好ましい。これは先に述べたように含浸時にルテニウムイオンが CO2の吸着サイトに選択的に吸着し CO2のメタン化反応を抑制しているためと考えられる。このように温度ウィンドウの低温側と高温側をそれぞれ規定する因子がルテニウム担持率により異なる傾向を示し、また担体の表面積や形態によってもその傾向が変化するため、最適なルテニウム担持量を一律に規定することは必ずしも論理的ではないが、これまでの試験結果から上記範囲に収めることで比較的安定した活性を得ることが可能である。ルテニウム原料としてはRuCl3・nH2O、Ru(NO3)3、Ru(NO)(NO3)などが一般的でいずれも選択できるが、好ましくは RuCl3・nH2Oが望ましい。
【0066】
CO2吸着の抑制に対するルテニウムの効果をパルス吸着法により求めた触媒粉末単位重量あたりのCO2の化学吸着量で比較評価すると、本触媒で吸着量が最も少ないものでは3μmol/g-cat、多いものでも57μmol/g-catであった。これに対し、CO選択性のほとんどない市販のNi担持アルミナ触媒では128μmol/g-catと明らかな相違が認められる。
【0067】
上記は、いずれも含浸法で酸化物還元用金属種を担持する例を示したが、金属種の担持方法としては特に含浸法に縛られるものではない。直接金属ないしは合金の微細粒子を担体上に析出させる方法を含む種々の担持法が適用できる。
【0068】
得られた触媒粉末は、粒子状に成形して使用しても良いが、CO選択メタン化触媒としての性能をより有効に発揮するためにはコージェライトなどのセラミックスあるいはステンレス鋼など金属のハニカム基材上にコーティングして使用する方が性能上望ましい。触媒粉末にバインダーとしてアルミナ系あるいはシリカ系ゾルとともに水を加えボール・ミルで粉砕・混合し、コーティングする上で適正な密度・粘度のスラリーを作製する。これを予め水中に浸漬し表面を濡らしておいたセラミックスあるいは金属ハニカム基材の各セルに流し込む。余分なスラリーを除去した後、電気炉で乾燥、焼成し適正コーティング重量になるまでこの操作を繰り返す。
【0069】
あるいは、複合酸化物前駆体のスラリーを同様の方法で先にハニカム上にコーティングした後、このハニカムごとルテニウム等の金属塩水溶液を含浸し酸化物還元用金属を担持しても良い。一般的に後者の方法では、ルテニウムなどの高価な貴金属溶液をロスなく効率的に使用することができ量産上有効である。
【0070】
本発明のハニカム型CO選択メタン化触媒の運転温度制御幅は、50℃以上、 120℃未満に設定することができる。更に、ハニカム容量を増加させることなくガス流れ方向にハニカムを2個以上、4個以下に分割し、かつ分割したハニカム間にガス混合のための空間を設置することで安定な運転を実現できる。
【0071】
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0072】
本特許の触媒を調製する上で必要な複合酸化物前駆体の一合成例として、減圧型噴霧プラズマ法による方法を最初に説明する。
【0073】
本方法では、減圧高周波熱プラズマ装置を用いた。原料溶液として蒸留水 100mLに対して硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO3)2・6H2O)4.67gと硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO3)3・9H2O)17.66gを溶解し、Ni/Al モル比が0.34の混合水溶液を作製した。減圧雰囲気装置内に出力100kW、4MHzで点火されたアルゴンプラズマトーチ内に,酸素5%のアルゴン混合ガスを用いてこの混合水溶液を噴霧、搬送した。プラズマトーチを経て生成した粉末はフィルターによって捕集し、合計 500gの粉末が得られるまで実施した。捕集した粉末は、濃緑色の微粉末で収率は約70%であった。粉末のNi/Alモル比をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析したところ0.29であった。X線回折(XRD)測定を行った結果NiAl2O4やAl2O3の結晶に帰属される強い回折ピークは認められなかった。透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果、粒子径は3~12nmの分布を示した。
【実施例2】
【0074】
本実施例では実施例1と異なるプラズマ装置により複合酸化物前駆体粉末を作製する方法を示す。使用する原料混合水溶液は実施例1と同じであるが、プラズマ装置内の雰囲気が常圧である点が実施例1とは異なる。用いた装置は原料溶液噴霧部、プラズマ部、粒子回収部の 3つから構成される。原料溶液噴霧部では実施例1と同じ濃度、モル比で調整した硝酸ニッケルと硝酸アルミニウムの混合溶液を超音波霧化ユニット(本多電子製、HM-303N)により粒径2~3μmの液滴を発生させ、5 %O2-Arキャリアガスによりプラズマ部に導入した。プラズマの発生には出力1kW、2.45GHz の大気プラズマ発生装置(ARIOS社製)を用いた。プラズマ部では噴霧液滴中の原料塩成分が熱分解し、微粒子を生成する。粒子回収部では生成した微粒子を水循環ポンプ(IWAKI 製)でシャワー状に噴霧した純水を用いて捕集した。捕集し切れなかった粒子は後段の水中へのバブリング方を用いた二次トラップにより回収した。
【0075】
これらトラップにより捕集された微粒子を孔径0.025μmのメンブレンフィルター(MILLIPORE製、セルロース混合エステル)を用いて吸引ろ過し、 60℃で約8時間乾燥させ粉末を得た。投入原料に対する捕集粉末の回収率はメタルベースで約89.7 %であった。
【0076】
走査型電子顕微鏡(SEM)観察では主に粒径1~3μm程度の真球状粒子が多数生成していることが分かった。また、エネルギー分散型X線分析装置(EDX )にて組成分析を行ったところ、NiO:30.4 %、Al2O3:69.6 %で、Ni/Alモル比は0.29であった。また、XRD測定により、調製後の粉末にはNiO、NiAl2O4、Al2O3と思われる回折角に微弱でブロードな回折が認められるものの強い結晶性を示すピークは認められずほぼアモルファスであることが分かった。 TEMによる観察ではほとんどの粒子は内部が空洞で厚さ数nmの薄い膜で構成されており、微細な緻密粒子が得られる実施例1とはその点が異なっていた。
【実施例3】
【0077】
ここでは実施例1,2に示すようなプラズマを利用することなく複合酸化物前駆体を得る好適な一方法を開示する。
【0078】
非イオン界面活性剤のトリブロック共重合体;P123(EO20PO20EO20)2.0gをエチルアルコール20mLに攪拌溶解した溶液A と、アルミニウムイソプロポキシド(Al元素18mmol相当重量)と硝酸ニッケル(Ni元素2mmol相当重量)を硝酸3.2mLとエチルアルコール20mLに溶解した溶液Bを混合し、室温下で5時間攪拌してゾルを得た。このゾルを60℃で20時間乾燥して得たゲルを更にマッフル炉により昇温速度1℃/minで400℃まで加熱し4時間保持した。
【0079】
このようにして得た粉末は、BET表面積350m2/g、細孔径 6.9nmのメソポーラス体となっており、走査透過型電子顕微鏡(STEM)により[001]方向からの六方規則ハニカム構造と[110]方向からの柱状のメソ細孔構造を観察することができた。同時に測定した EDXによる分析では、NiとAlは一様に分布しそのNiとAlのmol比は仕込み値Ni/Al=0.11(10/90)とよく一致した。またX線回折装置による2θ=20~80deg の回折像には特に強い回折ピークは確認されず、わずかに NiAl2O4に相当する回折角にブロードなピークが認められる程度である。
【0080】
NiとAlのモル比が0.11の他、0.25(20/80)、0.33(25/75)についても同様の方法により粉末試料を作製し、メソポーラス体が形成されていることを確認した。
【実施例4】
【0081】
本実施例では、実施例1~3の複合酸化物前駆体粉末を使用し、酸化物還元能を有する金属としてルテニウムを担持した例を示す。ここで使用したルテニウム塩は塩化ルテニウムである。
【0082】
実施例1の複合酸化物前駆体粉末8.0gに脱イオン水100gを加え10分間攪拌した。担持後の金属ルテニウム含有率が1wt%になるように塩化ルテニウム(III)・n水和物(RuCl3・nH2O、関東化学社製、Ru含有率:40 wt%) を秤量し、脱イオン水28gを加えて10分間攪拌した。この塩化ルテニウム溶液をビュレットにより先の複合酸化物前駆体の懸濁液に約20分で全量を添加し、その後更に10分間攪拌した。得られた懸濁液をナス型フラスコに導入した後、35~40℃の湯浴中で30分間攪拌した後、いったん室温まで冷却し35℃~40℃でエバポレーターにかけ、水分を蒸発させた。得られた粉末を120℃で一晩乾燥させた後、空気中500℃で5時間焼成した。
【0083】
同様に実施例1の複合酸化物前駆体粉末に対して、ルテニウム含有率1.0wt%以外に0.2wt%、0.5wt%、2.0wt%、3.0wt%の試料も作製した。
【実施例5】
【0084】
本実施例では、実施例1の複合酸化物前駆体粉末に硝酸ルテニウムからルテニウムを含浸担持する方法を示す。硝酸ルテニウムはフルヤ金属社製、Ru(NO3)3硝酸溶液(Ru含有率:4.18 wt%) を用いた。複合酸化物前駆体粉末8.0gに脱イオン水100gを加え、10分間攪拌した。担持後の金属ルテニウムの含有率が0.5wt%になる量の硝酸ルテニウムに脱イオン水28gを加え、10分間攪拌する。ビュレットを用いて硝酸ルテニウム溶液を、Ni/Al2O3(N)溶液に約20分で全量を添加するように制御し、その後更に10分間攪拌した。懸濁液をナス型フラスコに導入した後、35~40℃の湯浴中で30分間攪拌した後、一旦室温まで冷却し35℃~40℃でエバポレーターにかけ、水分を蒸発させた。得られた粉末を 120℃で一晩乾燥させた後、空気中500℃で5時間焼成した。
【実施例6】
【0085】
本実施例では、ルテニウム塩としてニトロシル硝酸ルテニウム(III)水溶液(STREM CHEMICALS社製、Ru(NO)(NO3)3水溶液、Ru含有率:1.5 wt%)を用いる方法を示す。
【0086】
実施例1の複合酸化物前駆体粉末8.0gに脱イオン水100gを加え、10分間攪拌した。同様に、担持後の金属ルテニウムの含有率が1wt%になる量のニトロシル硝酸ルテニウム(III) に脱イオン水 28gを加え、10分間攪拌した。ビュレットを用いてニトロシル硝酸ルテニウム(III) 溶液を、複合酸化物前駆体粉末の懸濁液に約20分で全量を添加し、その後更に10分間攪拌した。その後は実施例7と同様の手順で水分を蒸発させ、乾燥後に空気中 500℃で5時間焼成した。
【実施例7】
【0087】
本実施例では、酸化物還元能を有する金属としてルテニウムに替えて白金を担持した例を示す。ここで使用した白金塩は、テトラアンミン白金ジクロライド溶液(Pt(NH3) 4Cl2溶液、田中貴金属社製、Pt含有率:4.756 wt%)である。
【0088】
実施例1の複合酸化物前駆体粉末8.0gに脱イオン水100gを加え、10分間攪拌する。同様に、担持後の金属白金の含有率が1wt%になる量のテトラアンミン白金ジクロライドに脱イオン水28g を加え10分間攪拌する。両者を混合し、実施例4~6と同様の手順で担持焼成粉末を得た。
【実施例8】
【0089】
実施例4~7で得られた各触媒粉末は、ハニカム基材にコーティングし、水素ガスによる還元処理を経て触媒活性を評価した。本実施例ではハニカム基材へのコーティング方法を示す。ハニカムの材質はセラミックスのコージェライトである。
【0090】
実施例4で作製したルテニウム担持粉末3gに対してアルミナゾル(日産化学工業製、アルミナゾル520)6g、純水25gの割合で加え、攪拌・混合してコーティング用スラリーを作製した。一方、ガス流通部12mmx長さ30mmに切り出した400 cpsiのコージェライト製ハニカムを500℃で1時間焼成し含まれる水分を完全に除去した。このハニカムを先のコーティング用スラリーに浸漬し、引き上げた後エアーポンプにより触媒内部・外壁面の余分なスラリーを除去した。電気炉で空気中500℃1時間の焼成後、コーティングしたハニカムを秤量する。正味のコーティング量がハニカム1リットル当たり300gになるまでこの操作を繰り返して各セルの内壁に触媒層が均一に形成されたハ二カム触媒を得た。同様に実施例5、6の粉末についてもコーティングを実施し同様に均一なハニカム触媒を得た。
【0091】
実施例4のルテニウム含有率1.0wt%の試料については、同様の手順でコーティング量がハニカム1リットル当たり212gのハニカム触媒も作製した。
【実施例9】
【0092】
本実施例ではコージェライトハニカムに変え、メタルハニカムを用いた。メタルハニカムは、新日鐵マテリアルズ製の外径25.4mm(1インチφ)、長さ15mmのステンレス鋼 (YUS205M1)製で表面を高温酸化処理したものである。セル数は400cpsi(cell per square inch)で、セル壁の厚さは30μmである。実施例8と同様の方法により実施例4で作製したRu1wt% 含浸粉末を300g/Lコーティングした。コージェライト触媒に比較するとセルの壁厚が薄く多孔質でない分コーティングがスムーズにでき、作製中に一部のセルが閉塞する危険性は少ない。300g/Lのコーティングに要した時間は、コージェライトハニカムの場合約半分であった。
【0093】
同様の方法により更に口径の大きい外径100mmφ、長さ20mm、セル数400cpsiのメタルハニカム3個にコーティングを実施した。触媒のコーティング量は平均で200g/L であった。コーティング過程でのセルの閉塞やコーティング不良は認められず、肉眼で良好なコーティングを確認した。
【実施例10】
【0094】
ハニカムにコーティングした各試料は、固定床常圧流通式反応評価装置により触媒活性を評価した。
【0095】
各反応ガスH2,CO2,CO はマスフローコントローラーにより反応管に導入した。イオン交換水をマイクロポンプ(アットモル社製)で 200℃に保った気化器に送り、発生した水蒸気をN2キャリアで反応管に導入した。反応管は外径が20mm(内径18mm)の石英製反応管を使用した。この反応管の中央所定位置にハニカム触媒をセットし、反応管内壁とハニカムの間には石英ウールを密に充填し固定するとともに、ガスがハニカム以外を流れないようにした。コージェライトハニカムの場合は、シース熱電対をハニカム触媒の上下それぞれ約1mm の位置にセットし触媒層の温度測定を行った。ハニカム触媒の場合は下からのシース熱電対の先端をセル内2~3mmの位置に挿入した。
【0096】
反応に先立ち試料の水素還元を行った。これは、触媒活性成分であるNiの還元処理を行うためである。還元は反応管に500 ml/minのH2ガスを流し、20℃/min で700℃まで昇温した後、1時間温度保持した。還元終了後、H2からN2にガスを切り替え5分間流し H2パージした。次に N2をキャリアガスとして水蒸気を5分間反応管内に導入した後、反応ガスを導入した。反応ガスの組成はドライベースでCO 1vol%、H2 80 vol%、CO219 vol%とし、入口CO濃度は1 vol%以下の場合も評価した。水蒸気/CO=15(モル比) に相当する水蒸気を添加した。
【0097】
反応管出口からのガスは、含まれる水分を冷却除去した後、オンラインTCDガスクロマトグラフ及びメタナイザーを備えたオンラインFID(ジーエルサイエンス社製)に導き、生成ガスの分析を行った。
【0098】
コージェライトハニカム及びメタルハニカムにコーティングしたすべての担持触媒、及びメソポーラス体担持粒状触媒と、それら触媒の物性評価と活性評価の結果をまとめて表1に示す。ここでNi結晶子径は、 XRDによる回折ピークの半値幅から算出した。分散度は、Ni及び還元機能金属の全モル数に対する表面露出モル数としてH2化学吸着量から算出した。COメタン化活性の指標として反応温度(触媒温度) 230℃における出口CO濃度を示した。いずれも入口ガス組成は実施例10に示した値であり、CO濃度は1vol%、H2は80vol%、CO2は19vol%である。またCO選択性の指標として反応温度230℃でのH2消費率(%)を示した。入口H2量に対して反応で消費されたH2量の比率を示している。CO 1vol%のメタン化のみにH2が消費された場合、H2はCOの3倍モル消費されるため H2消費率は、3/80x100= 3.8%となる。これにCO2のメタン化が加わると水素消費率は大きく超えることになる。表1 No1~5のRu担持率の異なる各コージェライトハニカム触媒の活性評価結果を図4aから図4eに示す。各グラフのパラメータ(Ru担持率)は図4aに示す通りである。Ru担持量の増加に伴い高温側に見られるCO2、Hの減少とCH4の増加が生じる温度が高くなる傾向が認められる。これはRuの増加によりCO選択性が向上していることを示している。特にRu3wt%の試料では約280℃前後まで CO2メタン化反応は進行しなかった。CO2メタン化が進行する担体上のサイトがRu担持によって潰されていることを示唆している。一方、低温側の活性に関しては、Ru 1wt%の触媒が190℃からCOメタン化反応が進んでおり最も低温活性が高い。Ru担持率がそれよりも高くなっても低くなってもCOメタン化開始温度は高くなる傾向にあり、表1の物性値からはその傾向を説明することは現状難しい。RuとNiの共存/固溶が関与し、それらに最適値のあることが示唆される。
【0099】
表1のNo6、7、9 に示した塩化Ru以外のRu塩とPt塩を使用した場合の活性評価結果を図5aから図5eに示す。これらのグラフのパラメータ(ニトロシル硝酸Ru、硝酸Ru、塩化Pt酸)は図5aに示す通りである。No8のニトロシル硝酸Ru(Ru1wt%)はCO2からのメタン化反応が240℃から進行し、そのCO除去率も最高活性が210℃で 150 ppmとCO選択性・CO除去率共に低い。No6の硝酸Ru(Ru0.5wt%)は、CO2のメタン化反応は進みにくいもののCOのメタン化反応が全温度域において塩化Ruの場合よりやや低い。Ruと同様酸化物の還元機能を持つPtを塩化白金酸から1wt%担持した触媒は、Ruの場合とほぼ同様の活性と選択性を示した。
【0100】
表1のNo11は、減圧型噴霧プラズマ法で作製した前駆体に塩化RuからRu 1wt% を担持し、セラミック製のコージェライトハニカムではなくメタルハニカムにコーティングした触媒である。メタルハニカムを使用したNo11の活性評価結果を図7aから図7cに示す。これらのグラフにおけるパラメータ( H2,CH4,CO2,CO)は図7aに示す通りである。活性評価に際して入口CO濃度は1.0%、0.8%、0.6%(図7a図7b図7c)の3種類とし、H2は80%、CO2 をバランスガスとした。図4aから図4eのコージェライトハニカムを使用した1wt%試料とメタルハニカムの図7aを比較すると、温度ウィンドウが高温側にシフトしていることに気付く。低温側のシフト幅に対し高温側の伸張が大きいため、全体として温度ウィンドウは広がる結果になっている。出口CO濃度が10ppmを切る温度幅は60℃、20ppmを切る温度幅は83℃になっている。水素製造・精製装置ではCOメタン化触媒入口のCO濃度は1vol% に限定されるものではない。例えば、家庭用燃料電池の燃料改質器ではPROX触媒の入口CO濃度は、シフト触媒の性能/設置条件により概ね0.5~1.0vol%で設計されている。このことを考慮し入口CO濃度を更に減少させた場合の評価を図7b図7cに示した。入口CO濃度の低減により当然温度ウィンドウは広がり、入口CO濃度が0.6%まで下げられれば、CO濃度ゼロ(検出限界以下)の温度幅は90℃、10ppm以下の温度幅は102℃まで広がっている。
【0101】
【表1】
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【実施例11】
【0102】
実施例4~6ではいずれも、工程の最後で空気中 500℃の焼成を行ったが本実施例では前に述べたようにルテニウムの同一担持量でもより高い分散性を得るため、空気に変えて水素中での焼成を行った(以下、本方法を「直接水素還元」と呼ぶ)。
【0103】
実施例4の工程で空気中500℃3時間の焼成を水素中で行う以外はすべて同じ手順でルテニウム1wt%担持試料を作製した。その後、実施例8の手順に従って12mmx 30 mmL、 400cpsi のコージェライトハニカムに粉末をコーティングし、更に、実施例10に従いハニカム触媒の活性評価を実施した。
【0104】
上記、直接還元法で作製した試料(表1 No10)の活性測定結果を図6aから図6eに示す(黒丸のグラフ)。出口CO濃度は 220~280℃の範囲で50 ppm以下であり、CO2のメタン化反応も 270℃以下では進行していない。直接水素還元をしていない図4aから図4eのRu1wt%試料は、240℃からCO2のメタン化反応が生じているのに対し、選択性の向上が認められる。
【0105】
反応後の同一ハニカム触媒に再び水素還元を施し再度活性評価を行ったところ、230-250℃付近のCO出口濃度が25 ppmと低い値を示し、高温側では290℃以上で僅かに CO2からのメタン化反応が見られるだけで、十分な再現性も確認できた。直接水素還元を行うことによりRu1wt%の試料がRu2~3wt% と同等の約50℃の温度幅で高活性を示すことは実用上きわめて大きな効果である。
【実施例12】
【0106】
ルテニウム塩としてニトロシル硝酸ルテニウムRu(NO)(NO3)3を用いた実施例6についても実施例11と同様、500℃で3時間の水素還元を行い、コージェライトハニカム触媒を作製した。その活性測定結果を図6aから図6eに重ねて示した(白三角のグラフ)。この結果からCO2メタン化が約250℃以上で僅かに進行しているだけで、直接還元法を行うことでCO選択性が向上したことがわかる。これは、Ruがシンタリングせずに触媒上の塩基点を効率的に潰したためであると考えられる。
【実施例13】
【0107】
実施例3のメソポーラス体前駆体に塩化ルテニウムを用いてRu担持率1wt%の試料を作製したが、ここではメソポーラス体の構造の熱的影響がプラズマ前駆体より敏感であることを考慮し、実施例11での500℃3時間の水素還元を350℃3時間とした。更に直接水素還元により作製した粉末をコージェライトハニカムにコーティングする際には空気中 500℃で数回の焼成が必要であった。ここではその影響も回避する為、ハニカムコーティングは行わず、ペレットに成形後、軽く粉砕・分級することで1.2~2.0mmの粒子を作製した。その活性測定結果を図8aから図8eに示す。これらのグラフにおけるパラメータ( Ni/Alモル比)は図8aに示されている。図4aから図4eに示したプラズマ法による触媒と比較して CO2のメタン化が著しく抑制されていることが分かる。同時にCOメタン化活性も高い。これは低温で直接水素還元を行った効果であり、酸化Ruを経なかったためRuが高分散し、低温での還元によりNiも凝集せずに触媒上に微細に分散したためであると考えられる。メソポーラス体前駆体のNiの含有率が小さくなる( Ni/Alモル比が小さくなる)に従いCOメタン化反応の開始温度が高温側にシフトする傾向があるものの、 CO2メタン化反応が起こる温度も同様に高温側にシフトするために、広い使用温度幅をそのまま維持している。この性質を利用すれば、触媒を組み込む水素製造・精製装置の仕様に合わせて、触媒の動作温度幅は変えることなく動作温度を変更した触媒の製造・供給が可能となる。
【実施例14】
【0108】
触媒上のH2吸着量とNi粒子径を検討するためにH2パルス測定を、触媒上の塩基点量を検討するためにCO2パルス測定を行った。測定には常圧流通式パルス吸着量測定装置(BEL-CAT、日本ベル製)を用いた。前処理としてHe雰囲気下で500℃まで 20℃/minで昇温し、その後H2に切り替え500℃のまま1時間温度保持することで触媒を水素還元した。次に、He雰囲気下に切替え510℃で1時間H2の脱気を行った。その後、35℃まで降温し、上記常圧流通式パルス吸着量測定装置の熱伝導度型検出器(TCD (Thermal Conductivity Detector) )を約10分間安定化させた後、H2パルス測定(5%H2/Ar)および CO2パルス測定(10 %CO2/He)を行った。結果を表1に併せて示した。
【0109】
(比較例1)
本発明による複合酸化物前駆体を経ずに通常使用されている担体に活性金属種であるニッケルとルテニウムを順次担持した触媒試料を作製しその活性を本発明の触媒と比較評価した。以下、逐次含浸法と呼ぶ。
【0110】
触媒担体にγ-Al2O3 を用いた。γ-Al2O3粉末7.6 gを脱イオン水30 mLに投入し縣濁液を作った。Ni(NO3)2・6H2O (関東化学社製)11.3 gを脱イオン水20.0 mLに溶解し、攪拌したγ-Al2O3縣濁液にビュレットを用いて約20分間でNi(NO3)2・6H2O水溶液を全量投入した。室温で30分、40℃の湯浴中で30分攪拌した後、一度室温まで冷却し35℃~40℃の湯浴中でエバポレーターにより水分を全て飛ばした。得られた粉末は、実施例4に従いルテニウムを含浸するとともに実施例8に従いコージェライトハニカムにコーティングした。これを実施例10に従って活性評価を行ったところ、図10aから図10dに示すように(白三角のグラフ)CO、 CO2いずれのメタン化活性も示さず、本発明を上回る性能を有するものではなかった。
【0111】
(比較例2)
炭酸ナトリウム51.45 gを蒸留水485.5gに溶解した1.0mol/L水溶液と、硝酸ニッケル14.55 gを蒸留水99.9 gに溶解した0.5mol/L水溶液、更に硝酸アルミニウム72.31gを蒸留し385.53 gに溶解した0.5mol/L硝酸アルミニウム水溶液をそれぞれ調製した。硝酸ニッケル水溶液と硝酸アルミニウム水溶液をNi/Alモル比が0.5になるように完全に混合した。炭酸ナトリウム水溶液を 2 Lビーカーに移し、攪拌機で激しく攪拌しながら、混合した硝酸塩水溶液を、駒込ピペットで約15分かけてゆっくりと滴下し 1時間攪拌した。メンブレンフィルターでろ過し、1 Lの水で洗浄後、得られた粉末を1.5 Lの水に分散して30分攪拌後ろ過した。未反応物とNaを極力洗い落とすため分散・ろ過は 2回繰り返した。室温で半日減圧乾燥した後、110℃の乾燥炉で12時間乾燥した。得られたゲルを磨砕し、500℃で 3時間焼成(昇温1℃/min)することでNiAl2O4粉末を得た。以下、共沈法と呼ぶ。
【0112】
RuCl3・nH2O 0.1280 gを20.0 gの水に溶解し、共沈法で得られたNiAl2O4粉末5.006 gを水15.0 gに懸濁したスラリーにゆっくりと滴下し、1時間攪拌した。ナス型フラスコに移して40℃、1時間攪拌した後、エバポレーターにより30℃で溶媒を除去した。
【0113】
110℃乾燥炉中で一晩乾燥したのち、500℃、5時間焼成してRu1wt%を担持したNiAl2O4粉末を得た。これを前記と同様の方法によりハニカム触媒化しその活性を測定した。その結果を図10aから図10d(黒丸のグラフ)に重ねて示す。COメタン化活性、選択性いずれも本発明を上回るものではなかった。
【実施例15】
【0114】
メタンを燃料とする1kW燃料改質器を作製した。中心部に燃焼バーナーを設置しその外周に順次水蒸気改質触媒、高温シフト触媒、低温シフト触媒、そして最終段に本開発のCO選択メタン化触媒を設置する構成とした。水蒸気改質触媒から低温シフト触媒まではコージェライトハニカムを使用し、CO選択メタン化触媒は実施例9で作製した外径 100mmφ、長さ20mm、セル数400cpsiのメタルハニカム触媒を3段直列に設置した。 3個のハカムの間には約5mmの空間を設けた。CO選択メタン化触媒の空塔速度SVは2400h-1、水蒸気/メタンモル比S/Cは3.0とした。運転結果を図9に示す。
【0115】
燃焼バーナー起動後、約40分で燃料改質器出口ガスのCO濃度は9ppmまで減少し、その後4時間の運転時間中、大きな変動もなく安定した値を示した。本実施例の燃料改質器では低温シフト触媒からのCO濃度を0.9vol% で設計していること、また使用した触媒のコーティング量が200g/Lであることを考慮し、外径1インチφのメタルハニカム触媒(300g/L) の基礎試験結果;図7a、図7bと比較すると、触媒の大型化と実機環境下においても十分な性能を発揮することが確認できた。
【0116】
最後に、実施例4のNiとAlが非化学量論組成比の触媒材料について、500℃1時間の低温短時間の水素還元処理を行った試料を透過型電子顕微鏡(TEM )で観察した写真を図11a図11bに示す。この触媒では、ルテニウム1wt%を添加した効果により低温で生成した10nm程度の微細なニッケル粒子(黒色粒子)以外は、下地の担体では特に密度(コントラスト)の異なる物質の生成は認められない。すなわち、ナノメーター(nm)オーダでニッケルとアルミニウムが均一に分布していることが分る。
【0117】
この触媒試料をメタルハニカムにコーティングした場合の活性評価結果を図12aおよび図12bに示す(入り口のCO濃度はいずれも 0.8%)。この図に示すように高いCOメタン化活性と高い選択性を示すことが分る。このように担体が非化学量論組成比であるだけでなく、構成元素が均一であることが、高いCOメタン化活性と選択性を両立する本触媒のためにきわめて重要であることが分る。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上詳述したように、本発明は、一酸化炭素COを選択的にメタン CH4に転換する触媒とその触媒の製造方法及びそれを用いた装置に係るものであり、新規触媒材料の利用に加え、得られた触媒材料を従来の粒子形状でなくハニカム形状として反応装置に適用することで、CO含有濃度が10ppm 以下の水素リッチガスを安定に生成できる。使用する触媒が安価に製造できることや、ガス中に存在するH2でCOを除去するため空気の供給が全く必要なく、従来のCO選択酸化触媒では不可欠であった大型の空気ポンプと流量調整器が一切不要となることからも、システムコストの大幅な低減を図ることができる。本発明は、例えば、家庭用固体高分子形燃料電池発電システムや燃料電池車用オンサイド型水素ステーションで使用される燃料改質器の触媒としての適用や、化学プラントにおける水素精製用触媒として有用である。
図面
【図1】
0
【図2a】
1
【図2b】
2
【図3】
3
【図4a】
4
【図4b】
5
【図4c】
6
【図4d】
7
【図4e】
8
【図5a】
9
【図5b】
10
【図5c】
11
【図5d】
12
【図5e】
13
【図6a】
14
【図6b】
15
【図6c】
16
【図6d】
17
【図6e】
18
【図7a】
19
【図7b】
20
【図7c】
21
【図8a】
22
【図8b】
23
【図8c】
24
【図8d】
25
【図8e】
26
【図9】
27
【図10a】
28
【図10b】
29
【図10c】
30
【図10d】
31
【図12a】
32
【図12b】
33
【図11a】
34
【図11b】
35