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明細書 :二次電池テスター

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5505478号 (P5505478)
公開番号 特開2014-081258 (P2014-081258A)
登録日 平成26年3月28日(2014.3.28)
発行日 平成26年5月28日(2014.5.28)
公開日 平成26年5月8日(2014.5.8)
発明の名称または考案の名称 二次電池テスター
国際特許分類 G01R  31/36        (2006.01)
H02J   7/00        (2006.01)
H01M  10/48        (2006.01)
FI G01R 31/36 A
H02J 7/00 Q
H01M 10/48 P
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2012-228844 (P2012-228844)
出願日 平成24年10月16日(2012.10.16)
審査請求日 平成25年7月24日(2013.7.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
【識別番号】301016171
【氏名又は名称】有限会社アルプス計器
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
発明者または考案者 【氏名】金子 双男
【氏名】川上 貴浩
【氏名】新保 一成
【氏名】馬場 暁
【氏名】加藤 景三
【氏名】宮嵜 重利
【氏名】清水 浩一
【氏名】佐藤 健一
【氏名】花岡 治
個別代理人の代理人 【識別番号】100077621、【弁理士】、【氏名又は名称】綿貫 隆夫
【識別番号】100146075、【弁理士】、【氏名又は名称】岡村 隆志
【識別番号】100092819、【弁理士】、【氏名又は名称】堀米 和春
【識別番号】100141634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 善博
【識別番号】100141461、【弁理士】、【氏名又は名称】傳田 正彦
審査官 【審査官】吉岡 一也
参考文献・文献 特開2011-109910(JP,A)
特開2010-272365(JP,A)
国際公開第2011/121692(WO,A1)
調査した分野 G01R 31/36
H01M 10/48
H02J 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
交流を印加せずに二次電池の正極と負極との間の端子電圧を測定する電圧測定部と、
交流を印加せずに二次電池の正極と負極との間に流れる電流を測定する電流測定部と、
電圧測定部で測定した電圧値及び電流測定部で測定した電流値から、測定開始から所定時間経過時における二次電池の静電容量を導出する静電容量導出手段と、
正常な二次電池における静電容量の経時変化を予め記憶している記憶部と、
静電容量導出手段によって導出された所定時間経過時における静電容量と、記憶部に記憶されている静電容量の経時変化のうち所定時間経過時の静電容量とを比較して、測定された二次電池の劣化を判定する判定手段とを具備することを特徴とする二次電池テスター。
【請求項2】
前記静電容量導出手段は、
前記電流測定部で測定した電流値を、前記電圧測定部で測定した電圧値の時間微分で除算することで、二次電池の静電容量を導出することを特徴とする請求項1記載の二次電池テスター。
【請求項3】
前記静電容量導出手段は、
前記電流測定部で測定した電流値から所定時間で流れる電荷量を導出し、前記電圧測定部で測定した電圧値の所定時間における変化量を導出し、前記所定時間で流れる電荷量を電圧値の所定時間における変化量で除算することで、二次電池の静電容量を導出することを特徴とする請求項1記載の二次電池テスター。
【請求項4】
前記静電容量導出手段は、
任意の時間間隔で流れる電流値の時間積分した値、又は任意の時間間隔で流れる電流値をその時間間隔で一回若しくは複数回サンプリングした値の総和をサンプリング回数で除算した後に任意の時間間隔を乗算した値を、前記電圧測定部で測定した電圧値の任意の時間間隔における変化量で除算することで、二次電池の静電容量を導出することを特徴とする請求項1記載の二次電池テスター。
【請求項5】
判定対象の二次電池に直流電流を印加する直流電源を具備し、
前記静電容量導出手段は、
該直流電源による定電流充電時、又は充電電圧を変化させての充電時において、電圧測定部で測定した電圧値の時間変化及び電流測定部で測定した電流値より求めた所定時間の電荷量から、静電容量を導出することを特徴とする請求項1記載の二次電池テスター。
【請求項6】
前記記憶部は、
予め複数種類の正常な二次電池の電圧値及び静電容量記憶しており、
前記判定手段は、
前記電圧測定部で測定した電圧値及び前記静電容量導出手段によって導出された静電容量の大きさに基づいて、前記記憶部に記憶されている複数種類の二次電池のうちの何れか1つを選択して比較することを特徴とする請求項1~請求項5のうちの何れか1項記載の二次電池テスター。
【請求項7】
前記記憶部は、
正常時における、正極と負極との間の端子電圧と静電容量との関係を予め記憶しており、
前記判定手段は、
前記電圧測定部で測定した電圧値と前記静電容量導出手段によって導出された静電容量との関係と、前記記憶部に記憶されている正常時における、正極と負極との間の端子電圧と静電容量との関係とを比較することを特徴とする請求項1~請求項5のうちの何れか1項記載の二次電池テスター。
【請求項8】
測定対象となる前記二次電池は、複数個の二次電池が並列接続、直列接続又は並列接続及び直列接続が組み合わされた接続状態であることを特徴とする請求項1~請求項7のうちの何れか1項記載の二次電池テスター。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池の劣化状態を判定するテスターに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、充電を繰り返すことによって使用される二次電池は、ハイブリッド車、電気自動車、携帯電話等の普及により現在の社会生活において必要不可欠なものとなってきている。
現在の二次電池は、電池容量が大きく進化しているが、充放電を繰り返して使用していると、内部変化が徐々に大きくなり、充放電が十分にできなくなることで物によっては短寿命になってしまうものも存在する。
【0003】
したがって、特に車両用に二次電池を使用している場合には、劣化した二次電池のために突然車両が運転できなくなるなどの危険があり、劣化判定をしてから二次電池を使用したいという要望がある。
そこで、二次電池の劣化を判定するための方法が従来より開発されてきている。
【0004】
例えば非特許文献1には、リチウムイオン電池の劣化に対応した内部抵抗を測定することで劣化判定を行えることが記載されている。
また、特許文献1には、リチウムイオン二次電池に特定周波数の交流電圧及び/又は交流電流を印加して、リチウムイオン二次電池の状態を検出することが開示されている。
また、特許文献2には、所定周波数で非水電解質二次電池における所定周波数での交流インピーダンスを測定し、この交流インピーダンスと充放電可能な可逆容量(充放電可能な電池容量)の関係式によって電池の可逆容量を推定する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、リチウムイオン電池の電圧電流特性を導出し、その得られた電圧電流特性に基づいてリチウムイオン電池の開回路電圧(OpenCircuit Voltage:OCV)を導出し、さらに電流積算などの手法でリチウムイオン電池の充電容量(State Of Charge:SOC)を推定し、OCV及びSOCの変化によって析出劣化を判定する内容が開示されている。
特許文献4には、リチウムイオン電池を一定の電力値で連続的に放電及び充電させる診断モードにおいて取得された電圧変化に関する情報に基づき、劣化状態を判定する内容が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献5には、リチウムイオン電池を定電流定電圧方式によって充電する際に、電池の公称容量をCとしたときの充電電流をC/(20時間)以下とし、定電流充電中の充電電圧が予め設定された電圧Vsに達してから充電上限電圧Vcに達するまでの時間tを求め、リチウムイオン電池の推定比容量Ce/Cを関係式C=At+B(A,B=const)によってリチウムイオン電池の容量を推定し、また劣化を判定する内容が開示されている。
引用文献6に記載された劣化判定方法は以下の通りである。充電装置にリチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池などの二次電池が接続されると、その種類を検出し、その電池電圧に応じて定電流充電処理を開始する。この充電処理中に電池電圧が電池の種類に応じた基準電圧値になると、制御部によって定電流充電時間の計時が開始され、電池の種類に応じた充電制御方式により、定電圧充電に切り替わったか又は-ΔVが検出されると計時が終了する。制御部は、計時によって得られた定電流充電時間に基づいて、電池の充電容量が新品当初の電池に対する定電流充電時間と比べることで劣化を判定している。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2009-244088号公報
【特許文献2】特開2012-122817号公報
【特許文献3】特開2010-66232号公報
【特許文献4】特開2010-60408号公報
【特許文献5】特開2001-332310号公報
【特許文献6】特開平11-329512号公報
【0008】

【非特許文献1】堀江秀明著 「リチウムイオン電池」 培風館 2010年8月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1、2の方法では、測定対象となる二次電池に交流を印加することにより、二次電池の劣化判定を行っていた。
しかし、交流を印加して判定する判定装置を用いる場合には、交流電源及びインピーダンス測定機が必要であるため装置が大型化してしまい取り扱いが不便である。特に、二次電池を使用している一般ユーザが劣化判定を行う場合には、簡便で且つ小型軽量の装置によって劣化判定できることが望まれているという課題がある。
【0010】
また、特許文献3~6及び非特許文献1に記載された方法では、内部抵抗、電圧値、充電電荷量、放電電荷量などのパラメータを単独又は組み合わせて二次電池の劣化を判定している。
一方で、本発明者等は二次電池の静電容量を検出することにより、二次電池の劣化判定を行うことを鋭意研究した結果、簡便で且つ小型軽量の装置によって良好な判定が可能なとなることに想到した。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、簡便であって、小型且つ軽量化された二次電池テスターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる二次電池テスターによれば、交流を印加せずに二次電池の正極と負極との間の端子電圧を測定する電圧測定部と、交流を印加せずに二次電池の正極と負極との間に流れる電流を測定する電流測定部と、電圧測定部で測定した電圧値及び電流測定部で測定した電流値から、測定開始から所定時間経過時における二次電池の静電容量を導出する静電容量導出手段と、正常な二次電池における静電容量の経時変化を予め記憶している記憶部と、静電容量導出手段によって導出された所定時間経過時における静電容量と、記憶部に記憶されている静電容量の経時変化のうち所定時間経過時の静電容量とを比較して、測定された二次電池の劣化を判定する判定手段とを具備することを特徴としている。
この構成によれば、静電容量に基づいて劣化判定をする場合において交流電源等の必要が無いので、装置全体を簡便に、小型、軽量化することができ、二次電池を使用している一般ユーザであっても手軽に劣化判定を行うことができる。
【0013】
また、前記静電容量導出手段は、前記電流測定部で測定した電流値を、前記電圧測定部で測定した電圧値の時間微分で除算することで、二次電池の静電容量を導出することを特徴としてもよい。
この構成では、任意の時刻での電流値i(t)を電圧値v(t)の時間微分dv/dtで除算することで、その時刻での静電容量C=i(t)・dt/dvとして導出できる。
【0014】
また、前記静電容量導出手段は、前記電流測定部で測定した電流値から所定時間Δtで流れる電荷量を導出し、前記電圧測定部で測定した電圧値の所定時間Δtにおける変化量Δvを導出し、前記所定時間で流れる電荷量ΔQを電圧値の所定時間における変化量Δvで除算することで、二次電池の静電容量を導出することを特徴としてもよい。
この構成では、所定の時間間隔Δt内で流れる電荷量ΔQを、電流値I(その時間間隔での平均電流値)・Δtによって導出し、静電容量Cは、C=ΔQ/Δvから導出できる。
【0015】
また、前記静電容量導出手段は、任意の時間間隔Δtで流れる電流値の時間積分した値、又は任意の時間間隔Δtで流れる電流値をその時間間隔Δtで一回若しくは複数回サンプリングした値の総和をサンプリング回数で除算した後に任意の時間間隔Δtを乗算した値を、前記電圧測定部で測定した電圧値のその時間間隔Δtにおける変化量Δvで除算することで、二次電池の静電容量を導出することを特徴としてもよい。
この構成では、任意の時間間隔Δtで流れる電荷量ΔQとしては、その時間間隔Δtでの電流量i(t)の時間積分∫i(t)dt、又はその時間間隔Δtで流れる電流量i(t)をその時間間隔Δtの中で一回若しくは複数回サンプリングした値の総和をサンプリング回数で除算した後にその時間間隔Δtを乗算した値を用いることができる。そして静電容量Cは、C=ΔQ/Δvから導出できる。
【0016】
また、判定対象の二次電池に直流電流を印加する直流電源を具備し、前記静電容量導出手段は、該直流電源による定電流充電時、又は充電電圧を変化させての充電時において、電圧測定部で測定した所定時間Δtの電圧値の時間変化Δv及び電流測定部で測定した電流値より求めた所定時間の電荷量ΔQから、静電容量を導出することを特徴としてもよい。
【0017】
また、前記記憶部は、予め複数種類の正常な二次電池の電圧値及び静電容量記憶しており、前記判定手段は、前記電圧測定部で測定した電圧値及び前記静電容量導出手段によって導出された静電容量の大きさに基づいて、前記記憶部に記憶されている複数種類の二次電池のうちの何れか1つを選択して比較することを特徴としてもよい。
【0018】
また、前記記憶部は、正常時における、正極と負極との間の端子電圧と静電容量との関係を予め記憶しており、前記判定手段は、前記電圧測定部で測定した電圧値と前記静電容量導出手段によって導出された静電容量との関係と、前記記憶部に記憶されている正常時における、正極と負極との間の端子電圧と静電容量との関係とを比較することを特徴としてもよい。
【0019】
さらに、測定対象となる前記二次電池は、複数個の二次電池が並列接続、直列接続又は並列接続及び直列接続が組み合わされた接続状態であることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡便であって、小型且つ軽量の二次電池テスターを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る二次電池テスター及び二次電池テスターの第1の実施形態の接続構成を示す説明図である。
【図2】本発明により導出した静電容量の時間変化を示したグラフである。
【図3】本発明に係る二次電池テスター及び二次電池テスターの第2の実施形態の接続構成を示す説明図である。
【図4】図2のグラフよりも横軸の時間を長くした場合の静電容量の時間変化を示したグラフである。
【図5】複数種類のリチウムイオン電池の静電容量を記憶させている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の二次電池テスターについて、図面に基づいて詳細に説明する。
また、本実施形態としては、二次電池の例としてリチウムイオン電池を挙げて説明していくが、二次電池としてはリチウムイオン電池に限定するものではない。

【0023】
(二次電池テスターの第1の実施形態)
図1には、本実施形態の二次電池テスター及び二次電池テスターの第1の実施形態の接続構成について示す。
本実施形態の二次電池テスター30は、図1の太線で囲まれた範囲で示され、電圧センサー32、電流センサー34、記憶部40、静電容量算出手段36、及び劣化判定手段38を備えている。
二次電池テスター30は、電圧センサー32及び電流センサー34で測定対象となるリチウムイオン電池10の端子電圧と電流を測定し、これらの値から静電容量を算出し、記憶部40に記憶されている静電容量及び端子電圧をもとに劣化判定を行うことができる。
なお、本第1の実施形態の二次電池テスター30では、電圧センサー32に接続される電圧端子を2個、電流センサー34に接続される電流端子を2個備えているが、電圧端子1個と電流端子1個を共通として、3端子を備えた二次電池テスターとしても良い。電圧端子については、正極と負極の指定を行っても良いし、行わなくても良い。

【0024】
測定対象となるリチウムイオン電池10は、負荷20又は充電装置22に接続されている。具体的には、図1に示すように、リチウムイオン電池10は、切替スイッチ24によって負荷20または充電電源22のどちらかに接続される。本実施形態の二次電池テスター30は、切替スイッチ24によって、充電状態又は放電状態に切り替えたどちらの場合であっても、リチウムイオン電池10の端子電圧と電流から劣化判定される。
また、負荷20としてはどのようなものであってもよく、このリチウムイオン電池10を実際に使用する機器であってもよいし、この機器と同様の内部インピーダンスを有するダミーであってもよい。
すなわち、リチウムイオン電池10の劣化判定は、リチウムイオン電池10の端子電圧と電流が電圧センサー32及び電流センサー34で測定できればよく、負荷の形態、充電状態又は放電状態にかかわらず、二次電池テスター30によってリチウムイオン電池10の劣化が判定される。

【0025】
本実施形態の二次電池テスター30について詳しく説明する。測定対象となるリチウムイオン電池10の正極と負極との間の電圧(以下、単に端子電圧と称する場合がある)を測定する電圧センサー32と、リチウムイオン電池10に流れる電流を測定する電流センサー34とを備えている。電圧センサー32が特許請求の範囲でいう電圧測定部に該当し、電流センサー34が特許請求の範囲でいう電流測定部に該当する。

【0026】
二次電池テスター30は、リチウムイオン電池の端子電圧と電流とを測定し、これに基づいて静電容量を導出し、既知の静電容量と比較することで劣化判定を行うように動作する。
このため、二次電池テスター30には、電圧センサー32及び電流センサー34に接続された静電容量導出手段36と、導出された静電容量に基づいて劣化判定を行う劣化判定手段38とを備えている。さらに、静電容量導出手段36によって導出された静電容量と比較するための正常な静電容量を予め記憶しておくための記憶部40が設けられている。
この静電容量導出手段36及び劣化判定手段38は、具体的にはマイクロプロセッサ及びマイクロプロセッサを動作させるプログラムが記憶されたメモリによって実現できる。また、記憶部40は、上記のメモリによって実現できる。

【0027】
なお、記憶部40には、劣化していないリチウムイオン電池(ここで、劣化していないと言う表現は、劣化が小さい状態のものを含むものであるが、便宜上劣化していないと言う表現で説明する)の静電容量の経時変化と端子電圧の時間特性が記憶されている。なお、リチウムイオン電池10の端子電圧の時間特性は、静電容量の導出、静電容量測定時の電池の放電状態と充電状態の判定、静電容量と合わせた劣化状態の判定、及び放電終了や充電終了の判定のために必要である。
例えば、図2に示すグラフでは全体的に静電容量が大きい方が、劣化していないリチウムイオン電池の静電容量の経時変化である。図2では、放電開始時から600sec経過時までの静電容量の経時変化を示している。
このような、劣化していないリチウムイオン電池の静電容量は予め所定時間継続して測定し、記憶部40に経時変化として記憶させておくことが必要である。また、リチウムイオン電池の種類ごとに静電容量は異なるため、所定のユーザにおいて判定対象となるリチウムイオン電池が複数種類存在する場合には、その種類ごとに予め所定時間継続して測定し、記憶部40にそれぞれ経時変化として記憶させておく必要がある。

【0028】
(二次電池テスターの第2の実施形態)
二次電池テスターの第2の実施形態を図3に示す。
二次電池テスター31の第2の実施形態では、測定対象となるリチウムイオン電池10に負荷及び充電電源が接続されていない場合であっても、測定対象のリチウムイオン電池10の劣化判定が行える構成を採用している。
具体的には、図3に示すように、本実施形態の二次電池テスター31は、内部に模擬負荷50と、スイッチ55とを備えている点で第1の実施形態の二次電池テスター30とは異なっている。

【0029】
また、二次電池テスター31の外部接続端子としては、電圧端子のみが設けられている。リチウムイオン電池10の正極又は負極は、それぞれ二次電池テスター31の電圧端子に接続される。
リチウムイオン電池10の正極又は負極に接続された電圧端子は、二次電池テスター31内でそれぞれ電圧センサー32に接続されるとともに、一方は電流センサー34の一端子に接続されるように分岐し、他方は、模擬負荷50の一端に接続されるように分岐している。また、模擬負荷50の他端とスイッチ55の一端が接続され、スイッチ55の他端は、電流センサー34の他端子に接続されている。スイッチ55をオンにすることによって、模擬負荷55とリチウムイオン電池10が直列に接続されて模擬負荷55に電流が流れる。

【0030】
二次電池テスター31内の電圧センサー32、電流センサー34、記憶部40、静電容量算出手段36、及び劣化判定手段38は、上記の第1の実施形態の構成と同じ構成を採用しても良い。
なお、二次電池テスターの端子については、正極と負極の指定を行っても良いし、行わなくても良い。

【0031】
(静電容量の導出方法1)
静電容量導出手段36におけるリチウムイオン電池の静電容量の導出方法についてはいくつかの方法が考えられるが、まず第1の導出方法について、以下に説明する。
静電容量Cは、電圧vを印加した時の蓄えられる電荷量をQとすると、定常状態の基本的な式C=Q(電荷量)/v(電圧)から導出することができる。本実施形態では、この基本的な式C=Q/vに対応させて、測定した電流値と電圧値の時間特性から静電容量Cを導出する。
電流センサー34は、時間tを変数とした電流値i(t)を測定し、静電容量導出手段36には、このi(t)が入力される。また、電圧センサー32が測定した電圧値v(t)も静電容量導出手段36に入力される。静電容量導出手段36は、電圧値v(t)を時間微分しdv/dtを得る。さらに、静電容量導出手段36は、電流値i(t)を電圧値の時間微分dv/dtで除算する。この除算した値は、i(t)/(dv/dt)=(i(t)・dt)/dvとなり、(i(t)・dt)はdt時間に流れた電流i(t)による電荷量変化dQを表すことから、C=Q/vに対応した微分によるある時間tにおける静電容量i(t)/(dv/dt)=(i(t)・dt)/dv=dQ/dv=Cが導出される。

【0032】
(静電容量の導出方法2)
静電容量導出手段36におけるリチウムイオン電池の静電容量の第2の導出方法について説明する。本導出方法では、静電容量の基本式C=Q/vに対応して、所定の時間間隔Δtでの電荷量の変化分ΔQと電圧の変化分Δvから静電容量C=ΔQ/Δvを導出するものである。
電流センサー34は、所定の時間間隔Δt内で測定した電流値を静電容量導出手段36に入力する。静電容量導出手段36は、印加された電流値の平均値Iを導出する。静電容量導出手段36は、所定の時間間隔内で流れる電荷量をΔQとすると、ΔQ=I・ΔtよりΔQを導出する。
また、電圧センサー32で測定された電圧値も静電容量導出手段36に入力される。静電容量導出手段36は、電荷量ΔQの導出と同じ所定の時間間隔Δtの間での電圧変化Δvを導出する。静電容量の基本式C=Q/vに対応して、所定の時間間隔Δtでの電荷量の変化分ΔQと電圧の変化分Δvより、静電容量Cは、C=ΔQ/Δvの式より導出できる。すなわち、静電容量導出手段36によって、電荷量変化ΔQ(すなわちI・Δt)を、電圧変化Δvで除算すること(ΔQ/Δv=I・Δt/Δv=C)によって静電容量Cを導出する。

【0033】
(静電容量の導出方法3)
静電容量導出手段36におけるリチウムイオン電池の静電容量の第3の導出方法について説明する。
電流センサー34は、測定された電流値を随時静電容量導出手段36に入力する。静電容量導出手段36は、ある時間tでながれる電流i(t)をtからt+Δtの任意の時間間隔Δtで時間積分した値∫i(t)dt、すなわちその時間間隔内で流れた電荷量の変化分ΔQを導出する。または、静電容量導出手段36は、tからt+Δtの任意の時間間隔Δt内で流れる電流i(t)をその時間間隔内で一回若しくは複数回サンプリングした値の総和を導出し、さらにこの総和をサンプリング回数で除算した上で任意の時間間隔Δtを乗算した値、すなわちサンプリングによって電荷量の変化分ΔQを導出する。
電圧センサー32は、測定された電圧値を随時静電容量導出手段36に入力する。
静電容量導出手段36は、任意の時間間隔Δt内で流れる電流i(t)を時間積分した値∫i(t)dt、又はその時間間隔Δt内でサンプリングした電流値の総和をサンプリング回数で除算しその任意の時間間隔Δtを乗算した値を電荷量ΔQとし、このΔQを電圧値のその任意の時間間隔Δtにおける変化量Δvで除算することにより静電容量Cを導出する。

【0034】
(静電容量の導出方法4)
静電容量導出手段36におけるリチウムイオン電池の静電容量の第4の導出方法について説明する。
この導出方法では、リチウムイオン電池10に流れる電流の向きが放電状態と反対である充電状態に対しても静電容量を導出できる。具体的には、図1の回路において切替スイッチ24を充電電源22側に切り替え、測定対象となるリチウムイオン電池10に充電電源22を接続し、充電電源22からリチウムイオン電池10が充電された場合の充電時における端子電圧及び電流から静電容量を導出している。

【0035】
ここで、充電電源22により、リチウムイオン電池10に対して定電流充電が行われる場合を説明する。
電圧センサー32は、充電中に変化する充電電圧値を測定し、測定された電圧値を随時静電容量導出手段36に入力する。
また、電流センサー34は、充電中の充電電流値を測定して静電容量導出手段36に入力する。なお、定電流充電であるから基本的には電流値の変化はないはずであるため、入力された電流値Iは時間変化がなく、略一定値である。
静電容量導出手段36は、入力された電圧値v(t)の任意の時間tからt+Δtの所定時間Δtにおける変化量Δvと、入力された電流値Iと、所定時間Δtとに基づいて静電容量Cを導出する。すなわち、静電容量の導出方法2で説明したように、所定時間Δtの間にリチウムイオン電池10を流れた電荷量ΔQは、I・Δtによって導出され、また静電容量Cは、C=Q/Δvで導出されるので、ΔQ/Δv=I・Δt/Δvより静電容量Cが導出される。

【0036】
なお、リチウムイオン電池10の充電時においては定電流充電を行い、その時の電圧と電流の時間特性から静電容量を導出しているが、定電流ではなく充電電流の値を変化させながら充電させるようにしてもよい。
このような充電方法を採用する場合には、電圧センサー32は、任意の時間tからt+Δtの間の充電中に変化する充電電圧の変化値Δvを測定し、測定された電圧値を随時静電容量導出手段36に入力し、電流センサー34は、充電中の充電電流値を測定して静電容量導出手段36に入力する。

【0037】
静電容量導出手段36は、入力された電圧値vの任意の時間tからt+Δtの間の所定時間Δtにおける変化量Δvと、入力された任意の時間tからt+Δtの間での電流値の平均値Iと、所定時間Δtとに基づいて、任意の時間tからt+Δtの間に流れた電荷量ΔQを求め、静電容量Cを導出する。すなわち、静電容量の導出方法2で説明したように、電荷量ΔQは、I・Δtによって導出され、また静電容量Cは、ΔQ/Δvで導出されるので、ΔQ/Δv=I・Δt/Δvより静電容量Cが導出される。
なお、任意の時間tからt+Δtの間で入力された電流の平均値Iについては、任意の時間tからt+Δtの任意の時間間隔Δt内で流れる電流i(t)をその時間間隔Δt内で1回又は複数回サンプリングした値の総和を導出し、さらにこの総和をサンプリング回数で除算した電流値を、その時間間隔Δtでの電流の平均値として用いてもよい。

【0038】
(劣化判定方法1)
静電容量導出手段36によって導出された任意の時間tでのリチウムイオン電池の静電容量Cは、劣化判定手段38によって、記憶部40に予め記憶されている劣化していない正常なリチウムイオン電池の静電容量の経時変化と比較され、劣化判定される。
以下、図2の静電容量の時間特性を示すグラフに基づいて、劣化判定方法について説明する。なおこの図2では、横軸に放電開始からの経過時間(単位:sec)、縦軸に静電容量(単位:F)をとっている。

【0039】
図2で全体的に大きい静電容量を示しているのが、劣化していないリチウムイオン電池である。そして、全体的に小さい静電容量を示しているのが、劣化したリチウムイオン電池である。
劣化判定手段38は、静電容量導出手段36によって導出された、放電開始からの経過時間におけるリチウムイオン電池の静電容量Cを、同じ経過時間における劣化していないリチウムイオン電池の静電容量とを比較する。例えば、劣化判定対象のリチウムイオン電池の測定開始時刻から120sec経過時における静電容量が16000Fと導出されたとする。このとき、記憶部40に記憶されている劣化していない静電容量は、経過時120secのときは、30000Fである。
劣化判定手段38は、同じ経過時間における静電容量の大きさどうしを比較することで、導出された静電容量Cが、記憶部40に記憶されている劣化していないリチウムイオン電池の静電容量と同じ値であれば、劣化していないと判定し、導出された静電容量Cが記憶部40に記憶されている静電容量よりも小さい値であれば、劣化していると判定する。ここで、劣化の割合が大きくなるにつれて導出された静電容量Cは、劣化していないリチウムイオン電池の静電容量よりも小さくなる。

【0040】
また、図4には、図2よりも経過時間が長時間の場合の静電容量の経時変化について示す。
図4では、劣化していないリチウムイオン電池については、放電開始から16000secまで測定して、記憶部40にその経時変化を記憶している。劣化していないリチウムイオン電池の最大静電容量は、経過時間4000secの時に約300000Fである。この劣化していないリチウムイオン電池は、放電開始から16000secで静電容量は小さくなり、同時にリチウムイオン電池の端子電圧も小さくなり、放電を停止している。
一方、劣化しているリチウムイオン電池については、放電開始から1000secから4000secで静電容量にピークを持ち、その最大値も90000Fと小さく、また放電開始から7000secで静電容量が小さくなり、同時にリチウムイオン電池の端子電圧も小さくなり、放電を停止している。

【0041】
図4に示すように、図2の場合よりも劣化判定の対象となるリチウムイオン電池の静電容量を長時間測定した場合であっても劣化していないリチウムイオン電池の静電容量が大きく長時間持続できるのに対して、劣化したリチウムイオン電池の静電容量は小さく短時間で減衰し、劣化の有無で静電容量の時間特性に大きな違いがあることから、劣化判定手段38により良好な劣化判定が行える。

【0042】
(劣化判定方法2)
次に、複数種類のリチウムイオン電池を判定する場合の実施形態について説明する。
まず、図5に示すように、記憶部40には、複数種類のリチウムイオン電池について、劣化していない状態の静電容量の経時変化をそれぞれ記憶させておく。また、記憶部40には、複数種類のリチウムイオン電池の正極と負極との間の端子間電圧を、それぞれの劣化していないときの静電容量と関連づけして記憶させておく。図5では、2種類のリチウムイオン電池A,Bについて、それぞれの端子間電圧及び静電容量の経時変化が記憶されているが、記憶させておくリチウムイオン電池の数は、より多くてもかまわない。

【0043】
続いて、電圧センサー32は、測定した端子間電圧の電圧値を静電容量算出手段36に入力し、同時に電流センサー34で測定した電流値も静電容量算出手段36に入力する。
劣化判定手段38は、静電容量算出手段36より入力された端子間電圧の電圧値及びその静電容量の大きさに基づいて、記憶部40に記憶されている電圧値及び静電容量から該当するリチウムイオン電池を選択する。

【0044】
そして、劣化判定手段38は、選択されたリチウムイオン電池の静電容量の経時変化と、静電容量導出手段36によって導出されたリチウムイオン電池の静電容量Cとを比較し、劣化判定を行う。具体的には、上述した場合と同様に、劣化判定手段38は、同じ経過時間における静電容量の大きさどうしを比較し、導出された静電容量Cが、記憶部40から選択された静電容量と同じ値であれば、劣化していないと判定し、導出された静電容量Cが記憶部40から選択された静電容量よりも小さい値であれば、劣化していると判定する。

【0045】
(劣化判定方法3)
なお、劣化判定手段38は、静電容量の経時変化に基づいて劣化判定するのではなく、劣化していないリチウムイオン電池の正極と負極との間の端子間電圧の変化と静電容量の変化との関係から劣化判定を行う事も可能である。
記憶部40には、劣化していないリチウムイオン電池10の正極と負極との間の端子間電圧の経時変化と、劣化していない状態の静電容量の端子間電圧の経時変化に基づく関係とを記憶させておく。一般的に放電時間が長くなると端子間電圧も徐々に低下するものである。したがって、本実施形態では、測定された端子間電圧(経時的に値が低下する)に基づいて、その端子間電圧の時の静電容量を比較するものである。

【0046】
具体的には、劣化判定手段38は、同じ端子間電圧における静電容量の大きさどうしを比較し、導出された静電容量Cが、記憶部40に記憶されている静電容量と同じ値であれば、劣化していないと判定し、導出された静電容量Cが記憶部40に記憶されている静電容量よりも小さい値であれば、劣化していると判定する。

【0047】
(他の実施形態)
なお、上述してきた各実施形態では、単一のリチウムイオン電池の劣化判定について説明してきた。
しかしながら、劣化判定対象のリチウムイオン電池は、複数個のリチウムイオン電池が並列接続又は直列接続されているものであってもよい。さらには、複数個のリチウムイオン電池が並列接続及び直列接続が組み合わされた接続状態となっているものであってもよい。この場合には、予め記憶部に記憶させておく静電容量の経時変化についても、複数個のリチウムイオン電池が並列接続又は直列接続されているもの、複数個のリチウムイオン電池が並列接続及び直列接続が組み合わされた接続状態となっているものについて記憶させておく必要がある。

【0048】
なお、本テスターの判定対象となる二次電池としては、リチウムイオン電池に限定するものではなく、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池などを測定対象としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 リチウムイオン電池
20 負荷
22 充電電源
24 切替スイッチ
30、31 二次電池テスター
32 電圧センサー
34 電流センサー
36 静電容量導出手段
38 劣化判定手段
40 記憶部
50 模擬負荷
55 スイッチ
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図5】
2
【図2】
3
【図4】
4