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明細書 :ビオロゲン化合物及びカリウムイオンの定量方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5066701号 (P5066701)
公開番号 特開2003-064080 (P2003-064080A)
登録日 平成24年8月24日(2012.8.24)
発行日 平成24年11月7日(2012.11.7)
公開日 平成15年3月5日(2003.3.5)
発明の名称または考案の名称 ビオロゲン化合物及びカリウムイオンの定量方法
国際特許分類 C07D 405/14        (2006.01)
G01N  31/00        (2006.01)
G01N  31/22        (2006.01)
FI C07D 405/14
G01N 31/00 T
G01N 31/22 124
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2001-253939 (P2001-253939)
出願日 平成13年8月24日(2001.8.24)
審査請求日 平成20年5月2日(2008.5.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】桑原 哲夫
審査官 【審査官】砂原 一公
参考文献・文献 特開平11-343421(JP,A)
KAMEYAMA,A. et al,A new electron mediator: reduction by Na2S2O4 in organic media of a novel viologen functionalized with crown ether structure,Journal of the Chemical Society, Chemical Communications,1992年,No.15,p.1058-1060
調査した分野 C07D 405//00-405/14
G01N 21/77
G01N 31/00
G01N 31/22
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の一般式[I]で示されることを特徴とするビオロゲン化合物。
【化1】
JP0005066701B2_000006t.gif
(式中、X-は、PF6-イオン、BF4-イオン又はハロゲンイオンである。)
【請求項2】
請求項1に記載のビオロゲン化合物の可視吸収スペクトルを用いてカリウムイオンを定量することを特徴とするカリウムイオンの定量方法。
【請求項3】
請求項2に記載のカリウムイオンの定量方法において、「少なくとも2個のビオロゲン化合物と少なくとも1個のカリウムイオンとの間で形成される分子間電荷移動錯体」に帰属される吸収ピークを用いてカリウムイオンを定量することを特徴とするカリウムイオンの定量方法。
【請求項4】
請求項3に記載のカリウムイオンの定量方法において、「2個のビオロゲン化合物と1個のカリウムイオンとの間で形成される分子間電荷移動錯体」に帰属される吸収ピーク(以下、「吸収ピーク(2:1)」という。)を用いてカリウムイオンを定量することを特徴とするカリウムイオンの定量方法。
【請求項5】
請求項1に記載のビオロゲン化合物とカリウムイオンとを含むことを特徴とする分子間電荷移動錯体。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、カリウムイオンを選択的に定量することができるビオロゲン化合物及びカリウムイオンを選択的に定量することができるカリウムイオンの定量方法などに関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内においては、カリウムイオンのナトリウムイオンに対する存在比は非常に小さい。そのうえ、カリウムイオンとナトリウムイオンとは化学的によく似ており、カリウムイオンを検出しようとするとナトリウムイオンも同時に検出されてしまう。このため、カリウムイオンのみを選択的に精度よく定量することは容易ではない。そこで、生体内のように、カリウムイオンがナトリウムイオンなどの類似の金属イオンと共存し得る環境下のもとにおいても、カリウムイオンのみを選択的に精度よく定量することのできる指示薬や定量方法の開発が望まれている。
【0003】
従来、そのようなカリウムイオンを選択的に定量する方法としては、以下の2つの方法があった。
【0004】
第1の方法は、「電界効果トランジスタのゲート電極」上に「ポリ塩化ビニルを母材として可塑剤及びバリノマイシンを分散させたカリウムイオン選択性膜」が形成されたイオン選択用電極(ISFET)を用いて、カリウムイオンを定量する方法である(特公平6-84951号)。
【0005】
第2の方法は、「フルオロイオノホア/γ-シクロデキストリン錯体」の水中での蛍光スペクトルを測定してカリウムイオンを定量する方法である(J.Am.Chem.Soc.Vol.121,2319-2320(1999))。
【0006】
しかしながら、前者は、天然物のバリノマイシンを用いるため安定性に問題があるうえ高価であるという問題があった。また、後者は、存在する夾雑(きょうざつ)物により蛍光がクエンチされやすいという欠点があり、また、カリウムイオンの定量に3成分系(▲1▼フルオロイオノホア+▲2▼γ-シクロデキストリン+▲3▼被定量物質)励起状態での会合種からの蛍光を用いているため定量条件の設定が容易ではなく、さらにまた、励起光として紫外光を用いる必要があるので装置が大がかりになり測定も煩雑である、という問題があった。従って、いずれの場合においても、これらの問題が解決されることが望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記の問題を解決し、カリウムイオンを選択的に精度よく定量することができる、比較的安価で安定性の高い化合物及びこの化合物を用いたカリウムイオンの定量方法を提供することを目的とし、また、カリウムイオンを定量する際に、夾雑物による影響を受けにくく、定量条件設定が簡単で、紫外光を用いる必要のない化合物及びこの化合物を用いたカリウムイオンの定量方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明のビオロゲン化合物は、「15-クラウン-5」のクラウンエーテル環を分子内に2個以上含むことを特徴とする。
【0009】
ここで、「15-クラウン-5」のクラウンエーテル環とは、15個の原子で環が構成され、そのうち5個の原子が酸素原子であるクラウンエーテル環(大環状ポリエーテル環)をいう。
【0010】
本発明のビオロゲン化合物は、「15-クラウン-5」のクラウンエーテル環を分子内に2個以上含むため、カリウムイオン存在下では、少なくとも2個のクラウンエーテル環と少なくとも1個のカリウムイオンとからなる分子間電荷移動錯体を形成する(図4参照。)。このため、これらの分子間電荷移動錯体に帰属される特異的な吸収ピーク(例えば、「吸収ピーク(2:1)」及び/又は「吸収ピーク(2:2)」)を可視域に有するようになる。この分子間電荷移動錯体は、本発明のビオロゲン化合物とカリウムイオンとの間でのみ形成され得る特異的な錯体なので、可視吸収スペクトルを測定すれば、これらの吸収ピークの有無(及び吸収強度(吸光度))によって、カリウムイオン(及びその濃度)を、高い検出精度で、検出(及び定量)することができる。
【0011】
本発明のビオロゲン化合物は、2段階反応により比較的容易に合成できる比較的安価な化合物であり、安定性も高い。従って、本発明のビオロゲン化合物は、カリウムイオンを選択的に精度よく定量することができる、比較的安価で安定性の高い化合物である。
【0012】
本発明のビオロゲン化合物は、これを用いることにより、2成分系(ビオロゲン化合物+カリウムイオン)の電荷移動吸収を用いてカリウムイオンの検出を行うことができるため、定量条件の設定が3成分系の場合より容易となる。また、本発明のビオロゲン化合物を用いてカリウムイオンを定量する際には蛍光スペクトルを測定することが不要であるため、存在する夾雑(きょうざつ)物の影響が少なく、励起光として紫外光を用いる必要もない。
【0013】
(2)本発明のビオロゲン化合物においては、分子内に「15-クラウン-5」のクラウンエーテル環を分子内に2個含むのが好ましい。クラウンエーテル環を3個以上含むものと比較してもカリウムイオンの検出精度の点で遜色ないうえ、ビオロゲン化合物の合成も簡単になるからである。
【0014】
(3)本発明のビオロゲン化合物においては、陰イオンがPFイオン、BFイオン又はハロゲンイオンであることが好ましい。陰イオンがPFイオン又はBFイオンの場合には、有機溶媒中でカリウムイオンを定量する場合に特に適しており、陰イオンがハロゲンイオンの場合には、水系溶液中でカリウムイオンを定量する場合にも対応できる。
【0015】
(4)本発明のビオロゲン化合物は、下記の一般式[I]で示されることを特徴とする。
【0016】
【化2】
JP0005066701B2_000002t.gif(式中、X-はPFイオン、BFイオン又はハロゲンイオンである。)
【0017】
本発明のビオロゲン化合物は、上記一般式[I]で示されるため、上記(1)、(2)、(3)において説明した作用効果と同様の作用効果を有している。
【0018】
このように、上記した(1)乃至(4)のいずれかに記載のビオロゲン化合物は、大変優れたカリウムイオンの定量指示薬である。
【0019】
(5)本発明のカリウムイオンの定量方法は、上記した(1)乃至(4)のいずれかに記載のビオロゲン化合物の可視吸収スペクトルを用いてカリウムイオンを定量することを特徴とする。
【0020】
このため、本発明のカリウムイオンの定量方法は、(1)~(4)で説明した作用効果と同様の作用効果を有している。
【0021】
(6)上記(5)に記載のカリウムイオンの定量方法においては、「少なくとも2個のビオロゲン化合物と少なくとも1個のカリウムイオンとの間で形成される分子間電荷移動錯体」に帰属される吸収ピークを用いてカリウムイオンを定量する。
【0022】
(7)上記(6)に記載のカリウムイオンの定量方法においては、上記した「分子間電荷移動錯体(2:1)」に帰属される「吸収ピーク(2:1)」を用いることによってカリウムイオンを定量することができる。
【0023】
(8)上記(6)に記載のカリウムイオンの定量方法においては、上記(7)のほか、上記した「分子間電荷移動錯体(2:2)」に帰属される「吸収ピーク(2:2)」を用いることによってカリウムイオンを定量することができる。
【0024】
(9)上記(6)乃至(8)のいずれかに記載のカリウムイオンの定量方法においては、「ビオロゲン化合物1個とカリウムイオン1個とが包接錯体を形成したときのビオロゲン化合物の分子内電荷移動吸収帯における吸収強度変化量」で規格化した前記吸収ピークの吸収強度変化量からカリウムイオン濃度を算出することが好ましい。
【0025】
このように、二つの波長帯における吸収強度を用いれば、高濃度のナトリウムイオンを含む溶液中にごく低濃度のカリウムイオンが含まれているような場合であっても、これらのイオンを効果的に区別でき、カリウムイオンの選択性をさらに高めることができる(図5参照。)。
【0026】
(10)本発明の電荷移動錯体は、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のビオロゲン化合物とカリウムイオンとを含むことを特徴とする。
【0027】
(11)本発明の芳香族ジカルボン酸カリウム又は芳香族ジカルボン酸の定量方法は、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のビオロゲン化合物と芳香族ジカルボン酸カリウム又は芳香族カルボン酸との間で形成される分子間電荷移動錯体に帰属される吸収を用いて、芳香族ジカルボン酸カリウム又は芳香族カルボン酸を定量することを特徴とする。
【0028】
本発明において、芳香族ジカルボン酸カリウムを定量する際には、上記したビオロゲン化合物を含有する溶液に、芳香族ジカルボン酸カリウムを含有する溶液をそのまま添加する。すると、この溶液中では、少なくとも2個のビオロゲン化合物と少なくとも1個の芳香族ジカルボン酸カリウムとからなる分子間電荷移動錯体が形成される。このため、この分子間電荷移動錯体に帰属される特異的な吸収ピークを測定すれば、吸収ピークの有無(及び吸収強度(吸光度))によって、芳香族ジカルボン酸カリウム(及びその濃度)を、高い検出精度で、選択的に検出(及び定量)することが可能となる。
【0029】
本発明において、芳香族ジカルボン酸を定量する際には、上記したビオロゲン化合物とカリウムイオンを含有する溶液に、芳香族ジカルボン酸を含有する溶液を添加する。すると、この溶液中では、少なくとも2個のビオロゲン化合物と少なくとも1個の芳香族ジカルボン酸カリウムとからなる分子間電荷移動錯体が形成される。このため、この分子間電荷移動錯体に帰属される特異的な吸収ピークを測定すれば、吸収ピークの有無(及び吸収強度(吸光度))によって、芳香族ジカルボン酸カリウム(及びその濃度)を、高い検出精度で、選択的に検出(及び定量)することが可能となる。
【0030】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
以下、図面を用いて、本発明の実施形態1を詳しく説明する。
【0031】
(実施例1)
1.実施例1に係るビオロゲン化合物の紫外可視吸収スペクトル
図1は、実施例1に係る下記の構造式(II)を有するビオロゲン化合物(II)(以下、「CEV」ということがある。)のアセトニトリル溶液中における紫外可視吸収スペクトルを示す図である。図1においては、後述する比較例1に係る下記の構造式(III)を有するビオロゲン化合物(III)(以下、「DMV」ということがある。)及び後述する比較例2に係る下記の構造式(IV)を有するビオロゲン化合物(IV)(以下、「BnV」ということがある。)の紫外可視吸収スペクトルをも、併せて示している。
【0032】
【化3】
JP0005066701B2_000003t.gif【0033】
【化4】
JP0005066701B2_000004t.gif【0034】
【化5】
JP0005066701B2_000005t.gif【0035】
図1に示されるように、CEV及びDMVの紫外可視吸収スペクトルには、410nm近傍に吸収ピークが現れている。この吸収ピークは、BnVの紫外可視吸収スペクトルには現れていないことから、ジアルコキシベンゼン単位(ベンゾクラウンエーテル、ジメトキシベンゼン)をπ-電子供与性単位とし、ビピリジニウム単位をπ-電子受容性単位とする電荷移動錯体による吸収である、と考えられる。この吸収は、3μM(3μmol/l)から0.1mM(0.1mmol/l)の濃度範囲で両化合物の紫外可視吸収スペクトルの形及びモル吸光係数に濃度依存性が観察されないことから、(分子間における電荷移動吸収ではなく)分子内における電荷移動吸収であると考えられる。
【0036】
図2は、実施例1に係るビオロゲン化合物(II)(CEV)の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。図2において、(a)は、カリウムイオンを添加した場合の紫外可視吸収スペクトルをも併せて示した図であり、(b)はナトリウムイオンを添加した場合の紫外可視吸収スペクトルをも併せて示した図である。図2に示されるように、カリウムイオンを添加した場合には、ナトリウムイオンを添加した場合には見られなかった長波長側の吸収ピーク(約565nm、約665nm、約715nm)が見られる。この長波長側の吸収ピークは、他のアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオン(リチウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、マグネシウムイオン)を添加した場合においても見られない、カリウムイオンを添加した場合だけに見られる特異的な吸収ピークであった。
【0037】
従って、これらの長波長側の吸収ピークを用いれば、カリウムイオンのみを選択的に精度よく定量することが可能となる。このCEVにおいて、カリウムイオンの場合だけ長波長側の吸収ピークが見られるのは、以下の理由によるものと推測される。図3と図4を用いて説明する。
【0038】
図3は、CEVのクラウンエーテル環部分とカリウムイオンとが分子間電荷移動錯体を形成する様子を説明する図である。(a)は、CEVの「15-クラウン-5」のクラウンエーテル環10とナトリウムイオンとが錯体12を形成する様子を示す図である。(b)、(c)は、CEVの「15-クラウン-5」のクラウンエーテル環10とカリウムイオンとが錯体14や錯体16を形成する様子を示す図である。
【0039】
CEVの「15-クラウン-5」のクラウンエーテル環10は、(a)で示されるように、空洞の大きさがナトリウムイオンとよく適合するため、ナトリウムイオンと1:1に強く結合して錯体(一般的な包接錯体)12を形成する。この錯体12はエネルギー的に見て安定しているため、これで反応は完結する。
【0040】
これに対して、CEVの「15-クラウン-5」のクラウンエーテル環10は、(b)で示されるように、空洞の大きさがカリウムイオンより少し小さいが、ナトリウムイオンの場合と同様に、カリウムイオンと1:1に結合して錯体(一般的な包接錯体)14を形成する。しかしながら、この錯体14はエネルギー的に見てまだ不安定な状態にあるため、さらに反応が進行し得る状態となる。このため、この状態にある錯体14にさらに別のクラウンエーテル環10が反応して、(c)に示されるように、2個のクラウンエーテル環10と1個のカリウムイオンとからなる錯体16を形成する。この錯体16は、カリウムイオンを介してCEVが2個互いに近接する構造を有するため、分子間の電荷移動が容易に起こるようになり、分子間電荷移動錯体となる。
【0041】
図4は、CEVとカリウムイオンとが分子間電荷移動錯体を形成する様子を説明するさらに別の図である。まず、CEV20とカリウムイオン22は、図4に示されるように、一般的な包接錯体(錯体24)を形成する。そして、この錯体24は、さらにもう1個のCEV20と反応して「分子間電荷移動錯体(2:1)」(錯体26や錯体28)を形成したり、さらにもう1個のCEV20とカリウムイオン22と反応して「分子間電荷移動錯体(2:2)」(錯体30)を形成したりする。
【0042】
図5は、CEV1個とカリウムイオン1個とが包接錯体を形成したときのCEVの分子内電荷移動吸収帯(450nm)における吸収強度変化量で規格化した「(565nmにおける)吸収ピーク(2:1)の吸収強度変化量」からカリウムイオン濃度を算出したときの、「規格化吸収強度変化量」と「カリウムイオン濃度」との間の関係を示す図である。図5に示されるように、カリウムイオンの濃度が高まるにつれて、規格化吸収強度変化量はどんどん大きくなっている。これに対して、リチウムイオンやナトリウムイオンの場合には、これらのイオン濃度が高まっても、規格化吸収強度変化量は大きくならない。
【0043】
このように、実施形態1のカリウムイオンの定量方法においては、二つの波長帯における吸収強度変化量を考慮することにより、例えば、高濃度のナトリウムイオンを含む溶液中にごく低濃度のカリウムイオンが含まれているような場合であっても、これらを効果的に区別できるので、カリウムイオンのみを選択的に精度よく定量することができる。
【0044】
なお、実施形態1のビオロゲン化合物は、陰イオンとしてPFイオンを有しているため、有機溶媒中でカリウムイオンを定量する場合に特に適している。
【0045】
2.実施例1に係るビオロゲン化合物(CEV)の合成
図6は、CEVを合成する際の化学反応式を示す図である。
【0046】
(1)中間化合物の合成
CEVを合成する際には、まず原料となる4,4’-ビピリジンから中間化合物である、N,N’-ビス(2,4-ジニトロフェニル)-4,4’-ビピリジニウムジクロリドを合成する。合成手順・操作は以下のとおりである。
【0047】
2,4-ジニトロクロロベンゼン19.45g(96mmol)を200mlのアセトニトリルに溶解し、窒素雰囲気下で5.0g(32mmol)の4,4’-ビピリジンのアセトニトリル溶液30mlを20分かけて滴下し、96時間還流した。室温に冷却後、析出した沈殿物を濾別しアセトニトリル、エーテルで数回洗浄した。この固体をメタノールとエーテルとの混合溶媒から再結晶することにより目的物(黄土色粉末)を得た。
【0048】
収量は9.05g(収率:54.5%)であった。化合物の特定は、元素分析装置と核磁気共鳴装置(NMR)を用いて行った。このNMRスペクトルから、得られた化合物が、N,N’-ビス(2,4-ジニトロフェニル)-4,4’-ビピリジニウムジクロリドであることが確認された。
【0049】
(2)中間化合物からCEVの合成
先に得られた中間化合物からCEV(N,N’-ビス(4’-ベンゾ15-クラウン-5)-4,4’-ビピリジニウムヘキサフルオロホスフェイト)を合成する。合成手順・操作は以下のとおりである。
【0050】
0.46g(0.8mmol)のN,N’-ビス(2,4-ジニトロフェニル)-4,4’-ビピリジニウムジクロリドを50%エタノール水溶液20mlに加熱溶解し撹拌した。室温に冷却後、4’-アミノベンゾ15-クラウン-5、0.50g(1.8mmol)のエタノール溶液30mlを1時間かけて滴下し、室温で96時間撹拌した。反応溶液を濃縮、真空乾燥後エーテルで十分洗浄し、沈殿物を瀘別した。このものをメタノールとエーテルの混合溶媒から再結晶し、NMRで構造を確認した。これを、500mlの水に溶解し撹拌しながらアンモニウムヘキサフルオロホスフェイトを0.2g加えた。得られた沈殿物をろ過し、水とアセトニトリルで再沈殿することにより目的物(黄色粉末)を得た。
【0051】
収量は0.20g(収率:25.4%)であった。化合物の特定は、元素分析装置と核磁気共鳴装置(NMR)を用いて行った。図7に得られた化合物の元素分析結果を示し、図8に得られた化合物のNMRスペクトルを示す。この元素分析結果及びNMRスペクトル解析から、得られた化合物が、上記したビオロゲン化合物(II)、すわわち、CEV(N,N’-ビス(4’-ベンゾ15-クラウン-5)-4,4’-ビピリジニウムヘキサフルオロホスフェイト)であることが確認された。
【0052】
以上のように、実施例1のビオロゲン化合物(CEV)は、市販されている安価な原料を用いた2段階の化学反応により効率よく合成することができた。
【0053】
(比較例1)
1.比較例1に係るビオロゲン化合物の紫外可視吸収スペクトル
上述したように、比較例1に係るビオロゲン化合物(DMV)の紫外可視吸収スペクトルは図1に示したとおりである。なお、比較例1に係るビオロゲン化合物(DMV)を含む溶液にナトリウムイオンやカリウムイオンを添加したときの紫外可視吸収スペクトルも測定したが、これらのイオンを添加したことによるDMVの吸収スペクトルの変化は観測されなかった。
【0054】
2.比較例1に係るビオロゲン化合物(DMV)の合成
図9は、DMVを合成する際の化学反応式を示す図である。
【0055】
(1)中間化合物の合成
DMVを合成する際には、まず中間化合物である、N,N’-ビス(2,4-ジニトロフェニル)-4,4’-ビピリジニウムジクロリド(実施例1の中間化合物と同じ。)を合成する。合成手順・操作は、実施例1と同様である。
【0056】
(2)中間化合物からビオロゲン化合物(DMV)の合成
先に得られた中間化合物からDMV(N,N’-ビス(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4’-ビピリジニウム ヘキサフルオロホスフェイト)を合成する。合成手順・操作は以下のとおりである。
【0057】
1.00g(1.8mmol)のN,N’-ビス(2,4-ジニトロフェニル)-4,4’-ビピリジニウムジクロリドを50%エタノール水溶液10mlに撹拌しながら加熱溶解した。室温に冷却後、3,4-ジメトキシアニリンを0.66g(4.3mmol)のエタノール溶液10mlを1時間かけて滴下し、室温で96時間撹拌した。反応溶液を濃縮、真空乾燥後、固体をエーテルで十分洗浄し、沈殿物を瀘別した。沈殿物をメタノールとエーテルの混合溶媒から再結晶し、NMRで構造を確認した。このものを水に溶解し撹拌しながらアンモニウムヘキサフルオロホスフェイトを0.3g加えた。得られた沈殿物をろ過し、水とアセトニトリルで再沈殿することにより目的物(黄色粉末)を得た。
【0058】
収量は0.68g(収率:55%)であった。化合物の特定は、元素分析装置と核磁気共鳴装置(NMR)を用いて行った。
【0059】
以上のように、比較例1のビオロゲン化合物(DMV)も、実施例1の場合と同様に、安価な市販されている原料を用いた2段階の化学反応により効率よく合成することができる。
【0060】
(比較例2)
1.比較例2に係るビオロゲン化合物(BnV)の紫外可視吸収スペクトル
上述したように、比較例2に係るビオロゲン化合物(BnV)の紫外可視吸収スペクトルは図1に示したとおりである。
【0061】
2.比較例2に係るビオロゲン化合物(BnV)の合成
図10は、BnVを合成する際の化学反応式を示す図である。BnVの合成手順・操作は以下のとおりである。
【0062】
まず、窒素雰囲気下で、5.48g(32.04mmol)のベンジルブロミドを含むアセトニトリル溶液100mlに、1.00g(6.40mmol)の4,4-ビピリジン含むアセトニトリル溶液30mlを、20分かけて滴下し、48時間還流した。室温に冷却後、析出した沈殿物を濾別し、アセトニトリル、エーテルで数回洗浄した。この固体を、ジエチルエーテルとメタノールの混合溶媒から再結晶することにより、目的物の前駆体である黄色のジブロミド体を得た。このジブロミド体の構造をNMRにより確認した。次に、このジブロミド体を100mlの水に溶解し、3倍モル当量のアンモニウムヘキサフルオロホスフェイトを含む水溶液を加えた。生成した沈殿物を濾別し、乾燥することにより目的物(白色粉末)を得た。
【0063】
収量は3.03 g(収率:94.5%)であった。化合物の同定は、元素分析装置と核磁気共鳴装置(NMR)を用いて行った。
【0064】
(実施形態2)
図11は、実施形態2に係る芳香族ジカルボン酸カリウム又は芳香族ジカルボン酸の定量方法を説明するための図である。図11に示されるように、実施形態1で用いたものと同じビオロゲン化合物CEV26と(芳香族ジカルボン酸カリウム又は芳香族ジカルボン酸の)芳香族部分42とカルボン酸部分44とカリウムイオン46とは、溶液中で、これらからなる分子間電荷移動錯体40を形成する。このため、この分子間電荷移動錯体40に帰属される特異的な吸収ピークを測定すれば、吸収ピークの有無(及び吸収強度(吸光度))によって、芳香族ジカルボン酸カリウム又は芳香族ジカルボン酸(及びその濃度)を、高い検出精度で、選択的に検出(及び定量)することが可能となる。
【0065】
(実施例2)
実施例2の定量方法は、芳香族ジカルボン酸カリウムを定量する方法である。ビオロゲン化合物CEVを含有する溶液に、芳香族ジカルボン酸カリウムを含有する溶液をそのまま添加する。すると、この溶液中では、少なくとも2個のCEVと少なくとも1個の芳香族ジカルボン酸カリウムとからなる分子間電荷移動錯体が形成される。このため、この分子間電荷移動錯体に帰属される特異的な吸収ピークを測定すれば、吸収ピークの有無(及び吸収強度(吸光度))によって、芳香族ジカルボン酸カリウム(及びその濃度)を、高い検出精度で、選択的に検出(及び定量)することが可能となる。
【0066】
(実施例3)
実施例3の定量方法は、芳香族ジカルボン酸を定量する方法である。ビオロゲン化合物CEVとカリウムイオンを含有する溶液に、芳香族ジカルボン酸を含有する溶液を添加する。すると、実施例2の場合と同様に、この溶液中でも、少なくとも2個のビオロゲン化合物と少なくとも1個の芳香族ジカルボン酸イオンとカリウムイオンとからなる分子間電荷移動錯体が形成される。このため、この分子間電荷移動錯体に帰属される特異的な吸収ピークを測定すれば、吸収ピークの有無(及び吸収強度(吸光度))によって、芳香族ジカルボン酸(及びその濃度)を、高い検出精度で、選択的に検出(及び定量)することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1のビオロゲン化合物(CEV)等の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
【図2】 実施例1のビオロゲン化合物(CEV)の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
【図3】 実施例1のビオロゲン化合物(CEV)のクラウンエーテル環とカリウムイオンとが分子間電荷移動錯体を形成する様子を説明する図である。
【図4】 実施例1のビオロゲン化合物(CEV)とカリウムイオンとが分子間電荷移動錯体を形成する様子を説明する図である。
【図5】 実施例1のビオロゲン化合物(CEV)がカリウムイオンを選択的に定量することができることを示す図である。
【図6】 実施例1のビオロゲン化合物(CEV)を合成する際の化学反応式を示す図である。
【図7】 実施例1のビオロゲン化合物(CEV)の元素分析結果を示す図である。
【図8】 実施例1のビオロゲン化合物(CEV)のNMRスペクトルを示す図である。
【図9】 比較例1のビオロゲン化合物(DMV)を合成する際の化学反応式を示す図である。
【図10】 比較例1のビオロゲン化合物(BnV)を合成する際の化学反応式を示す図である。
【図11】 実施形態2の芳香族ジカルボン酸カリウム又は芳香族ジカルボン酸の定量方法を説明するための図である。(追加)
【符号の説明】
10 「15-クラウン-5」のクラウンエーテル環
12 錯体
14 錯体
16 錯体
20 CEV
22 カリウムイオン
24 錯体
26 錯体
28 錯体
30 錯体
40 錯体
42 芳香族部分
44 カルボン酸部分
46 カリウムイオン
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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