TOP > 国内特許検索 > 膵臓癌バイオマーカー > 明細書

明細書 :膵臓癌バイオマーカー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-027387 (P2013-027387A)
公開日 平成25年2月7日(2013.2.7)
発明の名称または考案の名称 膵臓癌バイオマーカー
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/68        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  27/62        (2006.01)
G01N  30/72        (2006.01)
G01N  30/88        (2006.01)
FI C12N 15/00 A
C12Q 1/68 A
G01N 33/68
G01N 33/50 P
G01N 33/53 D
G01N 27/62 V
G01N 27/62 X
G01N 30/72 C
G01N 30/88 J
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 35
出願番号 特願2012-129844 (P2012-129844)
出願日 平成24年6月7日(2012.6.7)
優先権出願番号 2011137320
優先日 平成23年6月21日(2011.6.21)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】小野川 徹
【氏名】海野 倫明
【氏名】元井 冬彦
【氏名】高舘 達之
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100123168、【弁理士】、【氏名又は名称】大▲高▼ とし子
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
審査請求 未請求
テーマコード 2G041
2G045
4B024
4B063
Fターム 2G041CA01
2G041DA05
2G041EA04
2G041FA12
2G041GA09
2G041HA01
2G041LA07
2G045AA26
2G045DA14
2G045DA36
4B024AA12
4B024BA36
4B024BA80
4B024CA12
4B024HA11
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ53
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
要約 【課題】膵臓癌の特異的検出及び予後の予測の方法等の膵臓癌及び予後マーカー、及び使用方法を提供すること。
【解決手段】予後良好及び予後不良の膵臓癌組織、並びに対照となる正常膵管組織のFFPE標本からタンパク質を抽出して可溶化し、LC/MS/MSにより、それぞれの組織において発現するタンパク質を計1229種同定した。次に、統計解析やスペクトラム・カウンティング解析、遺伝子オントロジー解析により、計170種類のタンパク質を膵臓癌マーカータンパク質候補として選択しMRM法で解析した。MRM法の解析結果を精査し、最終的に、A群~C群の膵臓癌マーカータンパク質を同定した。これらの膵臓癌マーカータンパク質を用いることによって、膵臓癌を特異的に検出し、予後を予測することができる。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
膵臓組織における、膵臓癌の有無を判定し、かつ予後を予測する方法であって、以下の(a)~(c)の工程を備えたことを特徴とする方法。
(a)被験者より採取された判定用試料における、膵臓癌マーカーの発現量を定量する定量工程であって、前記膵臓癌マーカーが以下の各群のマーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAである定量工程;
[A群マーカータンパク質]
FINC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02751)、FRIL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02792)、K1C10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P13645)、K2C1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04264)、LYSC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61626)、PERM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05164)、PLBL1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6P4A8)、S10A8_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05109)、S10A9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P06702)、STML2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJZ1)、TERA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P55072)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、TSP1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07996)、ANX10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJ72)、ECH1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q13011)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)、EFTU_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P49411)、SERPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P50454)
[B群マーカータンパク質]
ALDH2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05091)、GTR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P11166)、PLEC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q15149)、PUR9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31939)
[C群マーカータンパク質]
CH10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61604)、CISY_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O75390)、ERO1A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q96HE7)、LG3BP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q08380)、SH3L3_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9H299)、SSBP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q04837)、TAGL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q01995)、VDAC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21796)
(b)前記判定用試料における前記膵臓癌マーカーの発現量と、対照となる健常試料における前記膵臓癌マーカーの発現量とを比較する比較工程;
(c)発現量の比較結果に基づいて、以下の[i]~[iii]のいずれかの基準により評価をする評価工程;
[i]判定用試料におけるA群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質又はそれらのタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して増加している場合、被験者の膵臓組織中に予後不良の膵臓癌組織が存在すると評価する;
[ii]判定用試料におけるB群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質又はそれらのタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して増加している場合、被験者の膵臓組織中に予後良好の膵臓癌組織が存在すると評価する;
[iii]判定用試料におけるC群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質又はそれらのタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して、増加している場合に被験者の膵臓組織中に予後不良又は予後良好の膵臓癌組織が存在すると評価する;
【請求項2】
[A群マーカータンパク質]に含まれる以下の[A’群マーカータンパク質]から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
[A’群マーカータンパク質]
STML2_HUMAN、ECH1_HUMAN、OLFM4_HUMAN
【請求項3】
判定用試料が、組織、体液、又は組織の浸漬液であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
体液が、血液、膵液、リンパ液、胆汁、尿、唾液、汗、精液であることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
定量工程が、液体クロマトグラフィー質量分析法又は免疫学的測定法により、膵臓癌マーカータンパク質の発現量を定量する工程であることを特徴とする請求項1~4のいずれか記載の方法。
【請求項6】
以下の各群のマーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAを膵臓癌マーカーとして使用する方法。
[A群マーカータンパク質]
FINC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02751)、FRIL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02792)、K1C10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P13645)、K2C1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04264)、LYSC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61626)、PERM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05164)、PLBL1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6P4A8)、S10A8_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05109)、S10A9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P06702)、STML2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJZ1)、TERA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P55072)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、TSP1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07996)、ANX10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJ72)、ECH1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q13011)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)、EFTU_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P49411)、SERPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P50454)
[B群マーカータンパク質]
ALDH2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05091)、GTR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P11166)、PLEC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q15149)、PUR9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31939
[C群マーカータンパク質]
CH10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61604)、CISY_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O75390)、ERO1A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q96HE7)、LG3BP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q08380)、SH3L3_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9H299)、SSBP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q04837)、TAGL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q01995)、VDAC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21796)
【請求項7】
[A群マーカータンパク質]に含まれる以下の[A’群マーカータンパク質]から選択されることを特徴とする請求項6記載の方法。
[A’群マーカータンパク質]
STML2_HUMAN、ECH1_HUMAN、OLFM4_HUMAN
【請求項8】
膵臓癌マーカーとして使用するための、以下の各群のマーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNA。
[A群マーカータンパク質]
FINC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02751)、FRIL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02792)、K1C10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P13645)、K2C1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04264)、LYSC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61626)、PERM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05164)、PLBL1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6P4A8)、S10A8_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05109)、S10A9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P06702)、STML2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJZ1)、TERA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P55072)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、TSP1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07996)、ANX10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJ72)、ECH1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q13011)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)、EFTU_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P49411)、SERPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P50454)
[B群マーカータンパク質]
ALDH2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05091)、GTR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P11166)、PLEC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q15149)、PUR9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31939)
[C群マーカータンパク質]
CH10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61604)、CISY_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O75390)、ERO1A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q96HE7)、LG3BP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q08380)、SH3L3_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9H299)、SSBP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q04837)、TAGL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q01995)、VDAC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21796)
【請求項9】
[A群マーカータンパク質]に含まれる以下の[A’群マーカータンパク質]から選択されることを特徴とする請求項8記載の1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNA。
[A’群マーカータンパク質]
STML2_HUMAN、ECH1_HUMAN、OLFM4_HUMAN
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、膵臓組織における膵臓癌の有無及び膵臓癌の予後を判定する方法や、該方法に用いるための膵臓癌及び予後の予測マーカー等に関する。
【背景技術】
【0002】
膵臓は、膵液と呼ばれる消化酵素を含む液体を分泌し、それを膵管により消化管に送り込む外分泌腺であるとともに、膵臓組織に無数に散らばるランゲルハンス島と呼ばれる球状に小さな細胞の集塊がインスリン、グルカゴンなどのホルモンを血液中に分泌する内分泌腺としての機能も有する。独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターによれば、2009年の日本国内における癌の部位別死亡者数の統計では膵臓癌は第5位であるが、膵臓癌の罹患数は死亡数とほぼ等しく、1993~1996年の部位別がん患者の5年相対生存率は最も低い。すなわち、膵臓癌は、診断、治療ともに困難で、消化器系悪性腫瘍の中で最も予後不良な癌である。長期生存を得るための唯一の治療法は根治的外科切除であるが、膵臓癌は、早期には自覚症状がなく進行が非常に早いため進行がんで発見されることが多く切除率は約30%にとどまる。また、根治切除後の再発率も極めて高く、切除例の5年生存率は10%程度にすぎない。膵臓癌の予後を改善するためには、早期診断のみならず、手術や化学療法などの有効性を評価した上での的確な治療方針の確立が重要である。
【0003】
現在のところ、膵臓癌の診断用マーカーとして、癌胎児性抗原CEAや糖鎖抗原CA19-9、DUPAN-2、SPan-1等が知られているが、これらはいずれも膵臓癌に特異的なマーカーではなく擬陽性が多い、またその一部は膵臓癌と膵炎とを区別できないものがあるなどにより、膵臓癌の早期診断には有効でないと考えられている(非特許文献1)。実際、CEAは膵臓癌だけでなく、結腸直腸癌、胃癌、胆道癌、乳癌、肺癌、頭部癌、頸部癌を有する患者の血清中でも増加することや(非特許文献2)、初期の癌患者の血清中では増加しないことも報告されている(非特許文献3~5)。CEAと同様に、CA19-9は、消化系の癌、特に膵臓がんに特異性の高い腫瘍マーカーであり、膵臓癌を特異的に検出するために適当なマーカーとは言えない。膵臓癌発癌過程における詳細な癌関連分子の発現変動に関する検討も行われているが、検体量が少ない場合にmRNAの定量解析がうまくいかないこと、膵臓癌の種類によっては検出できない、あるいは膵臓癌だけでなく膵炎でも検出されるなど、問題があり実用化には至っておらず(非特許文献6、特許文献1~3)、特許文献4及び5には癌の予後予測のマーカーが記載されているが、特定の癌を判別することはできず、膵臓癌における予後は、生死の結果からの判定を待つのが現状である。以上のように、膵臓癌を特異的に検出するためのマーカーや、膵臓癌の予後を予測するためのマーカーや、まして膵臓癌の検出及び予後予測のためのマーカーは未だ存在しておらず、その開発が急がれている。
【0004】
他方、ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin embedded)は、手術等で摘出された組織を保存するための最も一般的な方法であり、多くの病院や研究機関では、病理診断等を行った後のホルマリン固定パラフィン包埋組織(以下、「FFPE組織」という場合がある)が大量に保存されている。これらのFFPE組織は、患者の治療成績・予後等臨床情報が明らかであることから、バイオマーカー検索や創薬ターゲット探索のために非常に有効であると考えられている。しかし、FFPE組織では、ホルマリン固定よって組織内のタンパク質が架橋されているため、タンパク質を抽出することは困難であり、さらに、ホルマリン固定によって高分子が断片化されていることから、FFPE組織を、プロテオーム解析に用いることは不可能であると考えられていた。しかし、ごく最近になり、FFPE組織からのタンパク抽出法が開発され(特許文献6及び7)、FFPE組織を用いたプロテオーム解析が可能になりつつある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特表2006-500948号公報
【特許文献2】特表2006-526140号公報
【特許文献3】特表2009-513161号公報
【特許文献4】特表2011-516077号公報
【特許文献5】特表2007-532113号公報
【特許文献6】特許第4579234号公報
【特許文献7】特表2010-530980号公報
【0006】

【非特許文献1】CLINICIAN, No.476, 104:1118-1123 (1998)
【非特許文献2】J. Natl. Cancer Inst. (Bethesda) 57: 11-22 (1976)
【非特許文献3】Dis. Colon. Rectum. 42: 921-929 (1999)
【非特許文献4】Ann. Surg. 183: 5-9 (1976)
【非特許文献5】N. Engl. J. Med. 299: 448-451 (1978)
【非特許文献6】膵臓 25:23-27 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、膵臓癌の有無を判定し、かつ予後を予測する方法や、膵臓癌マーカーの使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、過去10年間(1998年~2007年)の浸潤性膵管癌手術症例156症例から、既知の予後因子(ステージ、分化度、術後腫瘍マーカー値、補助化学療法)が同一であるにも関わらず、予後に差がある2群(各4例)を予後良好群、予後不良群として抽出した。正常膵管組織(5例)、並びに予後良好群及び予後不良群の膵臓癌細胞において発現するタンパク質をFFPE組織から抽出し、LC-ESI-MS(エレクトロスプレーイオン化液体クロマトグラフィー質量分析計)で解析し、合計1229種のタンパク質を同定した。予後不良群で同定した924種及び予後良好群で同定した845種の計1099種のタンパク質から比較定量解析(スペクトラルカウント)、統計解析(G検定)、遺伝子オントロジー解析及び文献検索によって、予後不良群で高発現するタンパク質をグループ1、及び予後良好群で高発現するタンパク質をグループ2として計106種、各群53種のタンパク質を分類した。また、64種のタンパク質を正常膵管細胞と膵臓癌細胞で発現に差があるグループ3として分類した。以上のDiscovery stepで得られた計170種類のタンパク質すべてをMRM(Multiple Reaction Monitoring)解析に供し、Validation stepを行った。その結果グループ1の13種、グループ2の4種、グループ3の18種の計35種類のタンパク質を、膵臓癌マーカー候補として同定した。さらに、これら計35種のMRM解析結果を精査し、その結果(1)18種類のタンパク質(FINC_HUMAN、FRIL_HUMAN、K1C10_HUMAN、K2C1_HUMAN、LYSC_HUMAN、PERM_HUMAN、PLBL1_HUMAN、S10A8_HUMAN、S10A9_HUMAN、STML2_HUMAN、TERA_HUMAN、TLN1_HUMAN、TSP1_HUMAN、ANX10_HUMAN、ECH1_HUMAN、OLFM4_HUMAN、EFTU_HUMAN、SERPH_HUMAN)が予後不良の膵臓癌において発現量が高いこと、(2)4種類のタンパク質(ALDH2_HUMAN、GTR1_HUMAN、PLEC1_HUMAN、PUR9_HUMAN)が予後良好の膵臓癌において発現量が高いこと、(3)13種類のタンパク質(ASC_HUMAN、CAP1_HUMAN、CEAM6_HUMAN、CH10_HUMAN、CISY_HUMAN、ERO1A_HUMAN、LG3BP_HUMAN、S100P_HUMAN、S10A6_HUMAN、SH3L3_HUMAN、SSBP_HUMAN、TAGL_HUMAN、VDAC1_HUMAN)が、予後不良及び予後良好の膵臓癌において発現量が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、[1]膵臓組織における、膵臓癌の有無を判定し、かつ予後を予測する方法であって、
(a)被験者より採取された判定用試料における、膵臓癌マーカーの発現量を定量する定量工程であって、前記膵臓癌マーカーが以下の各群のマーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAである定量工程;
[A群マーカータンパク質]
FINC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02751)、FRIL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02792)、K1C10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P13645)、K2C1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04264)、LYSC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61626)、PERM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05164)、PLBL1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6P4A8)、S10A8_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05109)、S10A9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P06702)、STML2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJZ1)、TERA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P55072)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、TSP1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07996)、ANX10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJ72)、ECH1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q13011)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)、EFTU_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P49411)、SERPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P50454)
[B群マーカータンパク質]
ALDH2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05091)、GTR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P11166)、PLEC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q15149)、PUR9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31939)
[C群マーカータンパク質]
CH10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61604)、CISY_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O75390)、ERO1A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q96HE7)、LG3BP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q08380)、SH3L3_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9H299)、SSBP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q04837)、TAGL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q01995)、VDAC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21796)
(b)前記判定用試料における前記膵臓癌マーカーの発現量と、対照となる健常試料における前記膵臓癌マーカーの発現量とを比較する比較工程;
(c)発現量の比較結果に基づいて、以下の[i]~[iii]のいずれかの基準により評
価をする評価工程;
[i]判定用試料におけるA群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質又はそれらのタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して増加している場合、被験者の膵臓組織中に予後不良の膵臓癌組織が存在すると評価する;
[ii]判定用試料におけるB群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質又はそれらのタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して増加している場合、被験者の膵臓組織中に予後良好の膵臓癌組織が存在すると評価する;
[iii]判定用試料におけるC群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質又はそれらのタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して、増加している場合に被験者の膵臓組織中に予後不良又は予後良好の膵臓癌組織が存在すると評価する;
の(a)~(c)の工程を備えたことを特徴とする方法や、[2][A群マーカータンパク質]に含まれる
[A’群マーカータンパク質]
STML2_HUMAN、ECH1_HUMAN、OLFM4_HUMAN
から選択されることを特徴とする前記[1]記載の方法や、[3]判定用試料が、組織、体液、又は組織の浸漬液であることを特徴とする前記[1]又は[2]記載の方法や、[4]体液が、血液、膵液、リンパ液、胆汁、尿、唾液、汗、精液であることを特徴とする前記[3]記載の方法や、[5]定量工程が、液体クロマトグラフィー質量分析法又は免疫学的測定法により、膵臓癌マーカータンパク質の発現量を定量する工程であることを特徴とする前記[1]~[4]のいずれか記載の方法からなる。
【0010】
また本発明は、[6]
[A群マーカータンパク質]
FINC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02751)、FRIL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02792)、K1C10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P13645)、K2C1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04264)、LYSC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61626)、PERM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05164)、PLBL1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6P4A8)、S10A8_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05109)、S10A9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P06702)、STML2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJZ1)、TERA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P55072)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、TSP1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07996)、ANX10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJ72)、ECH1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q13011)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)、EFTU_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P49411)、SERPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P50454)
[B群マーカータンパク質]
ALDH2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05091)、GTR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P11166)、PLEC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q15149)、PUR9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31939
[C群マーカータンパク質]
CH10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61604)、CISY_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O75390)、ERO1A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q96HE7)、LG3BP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q08380)、SH3L3_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9H299)、SSBP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q04837)、TAGL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q01995)、VDAC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21796)
の各群のマーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAを膵臓癌マーカーとして使用する方法や、[7][A群マーカータンパク質]に含まれる
[A’群マーカータンパク質]
STML2_HUMAN、ECH1_HUMAN、OLFM4_HUMAN
から選択されることを特徴とする前記[6]記載の方法や、[8]膵臓癌マーカーとして使用するための、
[A群マーカータンパク質]
FINC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02751)、FRIL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02792)、K1C10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P13645)、K2C1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04264)、LYSC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61626)、PERM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05164)、PLBL1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6P4A8)、S10A8_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05109)、S10A9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P06702)、STML2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJZ1)、TERA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P55072)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、TSP1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07996)、ANX10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJ72)、ECH1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q13011)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)、EFTU_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P49411)、SERPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P50454)
[B群マーカータンパク質]
ALDH2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05091)、GTR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P11166)、PLEC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q15149)、PUR9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31939)
[C群マーカータンパク質]
CH10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61604)、CISY_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O75390)、ERO1A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q96HE7)、LG3BP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q08380)、SH3L3_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9H299)、SSBP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q04837)、TAGL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q01995)、VDAC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21796)
の各群のマーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAや、[9][A群マーカータンパク質]に含まれる
[A’群マーカータンパク質]
STML2_HUMAN、ECH1_HUMAN、OLFM4_HUMAN
から選択されることを特徴とする前記[8]記載の1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAからなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、膵臓癌の早期検出を行うことや、膵臓癌の予後を予測することが可能となり、膵臓癌の治療を行う上で極めて有用な情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】解析に使用する予後不良群及び予後良好群のサンプルの選択の方法を示す図である。
【図2】本発明における、実験の概要(ディスカバリーステージ)を示す図である。
【図3】本発明における、実験の概要(バリデーションステージ)を示す図である。
【図4】スペクトラルカウントの結果の1例を示す図である。
【図5】予後不良群で高発現するタンパク質、及び予後良好群で高発現するタンパク質106種をグループ1、2として選択した方法の概略を示す図である。
【図6】正常膵管組織と膵臓癌組織で発現量に差のあるタンパク質64種をグループ3として選択した方法の概略を示す図である。
【図7】本発明の膵臓癌マーカー候補を選択した方法の概略を示す図である。グループ1~3のタンパク質を定量MS解析(MRM法)で解析し、正常膵管組織と比較して発現量が高いタンパク質を本発明の膵臓癌マーカー候補とした。
【図8】定量MS解析(MRM)法結果を精査することにより得た、A群~C群の膵臓癌マーカータンパク質を示す図である。グラフは、各組織サンプル群におけるA群~C群のタンパク質発現量のMRM定量値をアクチンベータ(ACTNB_HUMAN)タンパク質のMRM定量値で割った正規化された値の結果の一例を示す。
【図9】本発明の膵臓癌マーカーのうちA群、すなわち正常膵管組織と比較して予後不良膵臓癌組織において特異的に発現量が高いタンパク質の発現量を示す図である。グラフは左から正常膵管群、予後良好群、予後不良群におけるタンパク質のMRM定量値をアクチンベータ(ACTNB_HUMAN)タンパク質のMRM定量値で割った正規化された値を示す。カッコ書きは、膵臓癌における発現が報告されているタンパク質を表す。
【図10】本発明の膵臓癌マーカーのうちB群、すなわち正常膵管組織と比較して予後良好膵臓癌組織において特異的に発現量が高いタンパク質の発現量を示す図である。グラフは左から正常膵管群、予後良好群、予後不良群におけるタンパク質のMRM定量値をアクチンベータ(ACTNB_HUMAN)タンパク質のMRM定量値で割った正規化された値を示す。カッコ書きは、膵臓癌における発現が報告されているタンパク質を表す。
【図11】本発明の膵臓癌マーカーのうちC群、すなわち正常膵管組織と比較して予後不良及び予後良好膵臓癌組織において特異的に発現量が高いタンパク質の発現量を示す図である。グラフは左から正常膵管群、予後良好群、予後不良群におけるタンパク質のMRM定量値をアクチンベータ(ACTNB_HUMAN)タンパク質のMRM定量値で割った正規化された値を示す。取り消し線は、膵臓癌における発現が報告されているタンパク質を表す。
【図12】定量MS解析(MRM)法及び免疫組織化学染色(IHC)法により、正常膵管組織、予後不良膵臓癌組織及び予後良好膵臓癌組織における、OLFM4_HUMANの発現量を解析した結果(下段)及び染色した結果(上段)を示す図である。
【図13】定量MS解析(MRM)法及び免疫組織化学染色(IHC)法により、正常膵管組織、予後不良膵臓癌組織及び予後良好膵臓癌組織における、STML2_HUMANの発現量を解析した結果(下段)及び染色した結果(上段)を示す図である。
【図14】定量MS解析(MRM)法及び免疫組織化学染色(IHC)法により、正常膵管組織、予後不良膵臓癌組織及び予後良好膵臓癌組織における、ECH1_HUMANの発現量を解析した結果(下段)及び染色した結果(上段)を示す図である。
【図15】定量MS解析(MRM)法及び免疫組織化学染色(IHC)法により、正常膵管組織、予後不良膵臓癌組織及び予後良好膵臓癌組織における、ALDH2_HUMANの発現量を解析した結果(下段)及び染色した結果(上段)を示す図である。
【図16】3種類の膵臓癌マーカータンパク質(OLFM4_HUMAN[上段左図]、STML2_HUMAN[上段右図]及びECH1_HUMAN[下段左図])の発現が検出された症例(陽性群1[実施例2参照])と検出されなかった症例(陰性群1[実施例2参照])における、膵臓癌治療後の生存率を、カプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)法を用いて解析した結果を示す図である。各グラフにおいて陽性群1の結果を実線で示し、陰性群1の結果を点線で示す。横軸は膵臓癌手術後の経過時間(月)を示し、縦軸は生存率(全生存率)を示す。
【図17】3種類の膵臓癌マーカータンパク質(OLFM4_HUMAN、STML2_HUMAN及びECH1_HUMAN)すべての発現が検出された症例(陽性群2[実施例2参照])とかかる3種類の膵臓癌マーカータンパク質のうち少なくとも1のものの発現が検出されなかった症例(陰性群2[実施例2参照])における、膵臓癌治療後の生存率を、カプラン・マイヤー法を用いて解析した結果を示す図である。各グラフにおいて陽性群2の結果は実線で示し、陰性群2の結果は点線で示す。横軸は膵臓癌手術後の経過時間(月)を示し、縦軸は生存率(全生存率)を示す。
【図18】3種類の膵臓癌マーカータンパク質(OLFM4_HUMAN、STML2_HUMAN及びECH1_HUMAN)のうち2以上のものの発現が検出された症例(陽性群3[実施例2参照])とかかる3種類の膵臓癌マーカータンパク質のうち2以上のものの発現が検出されなかった症例(陰性群3[実施例2参照])における、膵臓癌治療後の生存率を、カプラン・マイヤー法を用いて解析した結果を示す図である。各グラフにおいて陽性群3の結果は実線で示し、陰性群3の結果は点線で示す。横軸は膵臓癌手術後の経過時間(月)を示し、縦軸は生存率(全生存率)を示す。
【図19】3種類の膵臓癌マーカータンパク質(OLFM4_HUMAN、STML2_HUMAN及びECH1_HUMAN)のうち少なくとも1つのものの発現が検出された症例(陽性群4[実施例2参照])とかかる3種類の膵臓癌マーカータンパク質すべての発現が検出されなかった症例(陰性群4[実施例2参照])における、膵臓癌治療後の生存率を、カプラン・マイヤー法を用いて解析した結果を示す図である。各グラフにおいて陽性群4の結果は実線で示し、陰性群4の結果は点線で示す。横軸は膵臓癌手術後の経過時間(月)を示し、縦軸は生存率(全生存率)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、前記のA群~C群のマーカータンパク質からなる群から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNA(以下、これらを総称して「本件マーカー物質」ということがある)を膵臓癌マーカーとして使用する方法に関し、本発明において「膵臓癌マーカー」とは、膵臓癌の有無を判定し、かつ予後良好及び/又は予後不良の予後予測のためのマーカーである。かかる方法には、後述する膵臓癌の有無を判定し、かつ予後良好及び/又は予後不良を予測する方法の他、膵臓癌の有無の判定及び予後予測のためのデータを収集する方法や、膵臓癌治療薬の有効性を判定する方法や、膵臓癌治療薬をスクリーニングする方法が含まれる。収集されたデータは、予後の予測に基づいて膵臓癌の治療法を選択するために利用することもできる。また本発明は、膵臓癌マーカーとして使用するための本件マーカー物質に関する。

【0014】
本発明の膵臓組織における、膵臓癌の有無を判定し、かつ予後を予測する方法としては、(a)被験者より採取された判定用試料における、膵臓癌マーカーの発現量を定量する定量工程であって、前記膵臓癌マーカーが以下の各群のマーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAである定量工程;(b)前記判定用試料における前記膵臓癌マーカーの発現量と、対照となる健常試料における前記膵臓癌マーカーの発現量とを比較する比較工程;(c)発現量の比較結果に基づいて、以下の[i]~[iii]のいずれかの基準により評価をする評価工程;を順次含む方法であれば特に制限されないが、判断基準[i]~[iii]から選択される2以上の評価を組み合わせて総合評価することが好ましい。膵臓癌マーカーとしては、以下A群~C群のマーカータンパク質を挙げることができ、この中でも[A群マーカータンパク質]に含まれる以下の[A’群マーカータンパク質]から選択されるものを好適に例示することができる。
[A群マーカータンパク質]
FINC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02751)、FRIL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02792)、K1C10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P13645)、K2C1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04264)、LYSC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61626)、PERM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05164)、PLBL1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6P4A8)、S10A8_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05109)、S10A9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P06702)、STML2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJZ1)、TERA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P55072)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、TSP1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07996)、ANX10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJ72)、ECH1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q13011)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)、EFTU_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P49411)、SERPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P50454)
[B群マーカータンパク質]
ALDH2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05091)、GTR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P11166)、PLEC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q15149)、PUR9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31939)
[C群マーカータンパク質]
CH10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61604)、CISY_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O75390)、ERO1A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q96HE7)、LG3BP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q08380)、SH3L3_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9H299)、SSBP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q04837)、TAGL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q01995)、VDAC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21796)
[A’群マーカータンパク質]
STML2_HUMAN、ECH1_HUMAN、OLFM4_HUMAN

【0015】
上記[A群マーカータンパク質]に含まれる以下の[A’群マーカータンパク質]から選択される膵臓癌マーカーとしては、[A’群マーカータンパク質]から選択される少なくとも1つのものであればよく、例えば[A’群マーカータンパク質]から2以上のものを選択することもでき、2以上を選択する場合の組合せとしては、STML2_HUMANとECH1_HUMANとの組合せや、STML2_HUMANとOLFM4_HUMANとの組合せや、ECH1_HUMANとOLFM4_HUMANとの組合せや、STML2_HUMANとECH1_HUMANとOLFM4_HUMANとの組合せを具体的に挙げることができる。
なお、上記比較工程(b)における対照となる健常試料における前記膵臓癌マーカーの発現量は、サンプルと同時に測定して得られたものでも、サンプル測定とは別途測定された正常膵管組織における膵臓癌マーカーの発現量でもよい。前記膵臓癌の有無を判定するためのデータを収集する方法や膵臓癌治療の予後を予測するためのデータを収集する方法は、上記定量工程(a)と比較工程(b)を実施した後、発現量の比較結果をデータとして収集する工程が含まれる。

【0016】
[i]~[iii]の基準は以下の通りである。
[i]判定用試料におけるA群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質又はそれらのタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して増加している場合、被験者の膵臓組織中に予後不良の膵臓癌組織が存在すると評価する。
[ii]判定用試料におけるB群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質又はそれらのタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して増加している場合、被験者の膵臓組織中に予後良好の膵臓癌組織が存在すると評価する。
[iii]判定用試料におけるC群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質又はそれらのタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して、増加している場合に被験者の膵臓組織中に予後不良又は予後良好の膵臓癌組織が存在すると評価する。

【0017】
本発明の膵臓組織における、膵臓癌治療薬の有効性を判定する方法や膵臓癌治療薬をスクリーニングする方法としては、(A)膵臓癌に罹患したモデル動物に被検薬剤又は被検物質を投与する投与工程;(B)前記モデル動物より採取された判定用試料における、本件マーカー物質のオーソログ(タンパク質やmRNA)の発現量を定量する定量工程:(C)前記判定用試料における本件マーカー物質のオーソログの発現量と、対照となる被検薬剤又は被検物質を未投与の場合における本件マーカー物質のオーソログの発現量とを比較する比較工程;(D)発現量の比較結果に基づいて、前記[i]~[iii]のいずれかの評価基準により評価する工程;を順次含む方法であれば特に制限されず、A群~C群の複数の本件マーカー物質のオーソログについて工程(A)~(D)を行い、[i]~[iii]から選択される2以上の評価を組み合わせて総合評価することがより好ましい。また、工程(A)において、膵臓癌罹患前の動物に被検薬剤又は被検物質を投与した後、モデル動物に膵臓癌を誘導することにより、膵臓癌予防薬をスクリーニングすることもできる。本件マーカー物質のオーソログ遺伝子の遺伝情報は、EMBL-EBI(http://www.ebi.ac.uk/)やUniProt(http://www.uniprot.org/)、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)等のデータベースを検索し、適宜入手することができる。

【0018】
上記膵臓癌に罹患したモデル動物としては、膵臓癌を自然に罹患したモデル動物であってもよいし、癌遺伝子の過剰発現や発癌物質で膵臓癌を誘導したモデル動物であってもよく、発癌物質で膵臓癌を誘導したモデル動物としては、例えば発癌物質BOP(N-Nitrosobis (2-oxopropyl) amine)によって膵臓癌を誘導したハムスター(Pour PM, Wilson RB. Experimental tumors of the pancreas.In: Moosa AR, ed. Tumors of the pancreas. Baltimore:Williams and Wilkins, 1980: 37-159.)や、発癌物質azaserine、4-hydroxyaminoquinoline-1-oxide(4-HAQO)等を投与して腺房細胞癌を発生させたラットや、7,12-dimethylbenz (a) anthracene(DMBA)を直接膵内に埋没し、腺癌を発生させて膵臓癌を誘導したラット(林裕造,高橋道人.7膵癌:B.動物.太田邦夫,山本正,杉村隆,菅野晴夫編.癌の科学.第4巻ヒトの癌と動物モデル.東京:南江堂,1979:258-70.)などの膵臓癌モデル動物を挙げることができる。また、癌遺伝子の過剰発現で膵臓癌を誘導したモデル動物としては、例えばヒト変異型K-ras(K-rasV12)遺伝子をコンディショナルに発現するトランスジェニックマウス(WO2009/037950号公報)を挙げることができる。上記モデル動物としてマウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の非ヒト哺乳動物モデルを例示することができる。

【0019】
本発明の膵臓癌の有無を判定し、かつ予後を予測する方法により、予後不良の膵臓癌の有無や、予後良好の膵臓癌の有無や、予後不良及び予後良好の膵臓癌の有無を判定することができる。ここで、「予後不良の膵臓癌」とは、治療後2年以内の再発及び死亡を意味し、「予後良好の膵臓癌」とは、治療後5年の生存を意味する。

【0020】
また、膵臓癌としては、膵臓組織にできる癌であればいかなる癌であってもよく、具体的には、膵管に由来し膵管がんや通常型膵癌とも呼ばれる浸潤性膵管癌(invasive ductal carcinoma)、膵内分泌腫瘍、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、腺房細胞癌、Solid-pseudopapillary carcinoma、未分化癌、漿液性嚢胞腺癌、転移性膵癌等を挙げることができ、膵臓癌の約90%以上が膵管がんであることから、好ましくは膵管がんを挙げることができる。

【0021】
本発明の膵臓癌の有無を判定する方法(治療薬のスクリーニング方法)等に用いる判定用試料としては、被験者(モデル動物)より採取された膵臓由来の細胞、組織、器官等の非液性試料や、血液、膵液、リンパ液、胆汁、尿のほか、唾液、汗、精液等の体液や、非液性試料を浸漬させた保存液等の液性試料を例示することができる。例えば上記膵臓組織は、膵臓の組織、膵管、腺房、内分泌腺であるランゲルハンス島等の組織であってもよい。さらに膵臓組織は、被験者より採取された後に、凍結処理が施された凍結組織であっても、病理組織学的処理が施された病理組織であってもよく、前記病理組織としては、ホルマリン固定組織や、ホルマリン固定パラフィン包埋組織等を例示することができる。また、血液、膵液、リンパ液、胆汁、尿、などの液性試料も適宜防腐剤や防カビ剤などを添加することも、特定の成分のみを分離あるいは除去することもできる。さらに液性試料として例示する組織の浸漬液としては、非液性試料を浸漬させた保存液や可溶化液等の溶液を挙げることができ、被験者から採取された膵臓組織を凍結組織とするための上記凍結処理や、病理組織とするための上記病理組織学的処理を施す過程で、一時的または恒久的な保存を目的として膵臓組織を浸漬させた溶液、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ホルマリン溶液、アルコール溶液等を例示することができる。

【0022】
また、前記判定用試料における、本件マーカー物質の発現量を定量する定量方法としては、膵臓癌マーカータンパク質の一部又は全部、あるいは、膵臓癌マーカータンパク質をコードするmRNAの一部又は全部を、特異的且つ定量的に検出することができる定量方法であればどのような方法であってもよく、具体的には、膵臓癌マーカータンパク質の定量方法として、液体クロマトグラフィー質量分析法や免疫学的測定法を挙げることができ、免疫学的測定法としては、免疫組織化学染色法、ELISA法、EIA法、RIA法、ウエスタンブロット法等を好適に例示することができ、膵臓癌マーカータンパク質をコードするmRNAの定量方法としては、RT-PCR法や、リアルタイムPCR法や、ノーザンブロット法等を好適に例示することができるが、液体クロマトグラフィー質量分析法又は免疫学的測定法であることが特に好ましい。

【0023】
本発明の膵臓癌の有無を判定し、かつ予後を予測する方法に用いる健常試料としては、健常者や非膵臓癌患者由来の上記非液性試料や液性試料、膵臓癌患者由来の当業者が通常用いる基準に照らして明らかにがん化していないと判断される非液性試料等を例示することができる。また、これら健常試料は、採取された後に、前記判定用試料と同様の処理が施された健常試料であることが好ましい。また、比較工程においては、前記判定用試料及び前記健常試料における同一の本件マーカー物質の発現量を、同一の定量方法により定量し、得られた発現量のデータを比較することが好ましい。健常試料における前記膵臓癌マーカーの発現量は、サンプルと同時に測定して得られたものでも、サンプル測定とは別途測定された健常試料における膵臓癌マーカーの発現量でもよい。

【0024】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
[サンプル]
過去10年間(1998年~2007年)に東北大学病院肝胆膵外科にて膵切除を行い、組織学的に浸潤性膵管癌と診断された156症例から、既知の予後因子(組織学的根治度、術後腫瘍マーカー値、術前化学療法の有無、ステージ、分化度、補助化学療法)が同一であるにも関わらず、予後に差がある症例を抽出し、ほぼ5年生存の予後良好群(4例)及び2年以内に再発死亡の予後不良群(4例)に分類した(図1)。表1に予後不良群及び予後良好群の症例背景を示す。
【実施例1】
【0026】
【表1】
JP2013027387A_000002t.gif
【実施例1】
【0027】
これらのFFPE標本(ホルマリン固定パラフィン包埋組織標本)を用いて、膵臓癌及び予後予測のマーカーとなるタンパク質の検索を行った。実験の概要は、図2及び図3に示す通りである。
【実施例1】
【0028】
[LC/MS/MS解析用サンプルの調製]
1.FFPE組織切片の作製
前記FFPE組織を、ミクロトームを用いて薄切し、10μmの切片を作製した。この切片を、エネルギートランスファーコーティングスライドグラス(DIRECTOR(商標)レーザーマイクロセクションスライド;Expression Pathology社製)のコーティング側に直接のせて伸展させた。キシレン及びエタノール浸潰により組織切片の脱パラフィン処理を行った後に、ヘマトキシリン染色を行い、タンパク質抽出用プレパラートを作製した。
【実施例1】
【0029】
2.レーザーマイクロダイセクション
Leica LMD 6000レーザーマイクロダイセクションシステムを用いて、目的とする細胞特異的なダイセクションを行った。Leica LMD 6000レーザーマイクロダイセクションシステムは、重力落下方式により高精度且つ完全なコンタミフリーの条件下で、UVレーザーによるダイセクションが可能なシステムである。かかるレーザーマイクロダイセクションシステムを用いて、前記FFPE組織から膵臓癌組織のみを採取した。
【実施例1】
【0030】
3.タンパク質の可溶化及び断片化
レーザーマイクロダイセクションにより採取された膵臓癌組織を、Liquid Tissue(登録商標)MS Protein Prep Kit(Expression Pathology社製)を用いて処理し、タンパク質を可溶化した。続いて、トリプシンを用いて可溶化タンパク質を断片化した。これらの処理により、30,000個の細胞(厚さ10μmのFFPE切片においては、約2×4mmの範囲に相当する)から、約2~4μgのタンパク質が得られた。これは、後述のLC/MS/MS解析を、10回行うことができるタンパク質量に相当する。
【実施例1】
【0031】
[膵臓癌マーカータンパク質の検索]
1.LC/MS/MS解析
上記の方法により調製したサンプルを、0.1%TFA/2%Acetonitrile/蒸留水(pH2~3)で再溶解し、nano flow ESI-イオントラップ型LC/MS(ZAPLOUS Discovery LC/MSシステム)により分析を行った。分析は同一サンプルを3回測定した。LC/MS/MSの条件の詳細は以下の通りである。
Autosampler: HTC-PAL(CTC Analytics社製)
HPLC: Paradigm MS4(Michrom BioResources社製)
Column: MAGIC C18AQ、3μ、100オングストローム、0.1mmIDx15
0mm(Michrom BioResources社製)
Ion source: ADVANCE Nano Spray Source(Michrom BioResources社製)
MS: FinniganLXQ(Thermo Fisher Scientific社製)
A液: 2%アセトニトリル/0.1%ギ酸
B液: 90%アセトニトリル/0.1%ギ酸
Flow rate: 500nL/min
Gradient: 5~45%B in 100min
EMS voltage:1.4~1.6kV
Mass range: 450~2000
【実施例1】
【0032】
2.タンパク質の同定
タンパク質の同定のためのソフトウエアとしてMASCOT(Matrix Science社製)を、データベースとしてSwissProt 57.13を用い、LC/MS/MS解析データよりタンパク質を同定した。3回のLC/MS/MS解析により得られたデータから、それぞれタンパク質をリストアップし、最終的に統合した。その結果、図5に示すように、予後不良群の膵臓癌組織サンプルからは924種類の、予後良好群の膵臓癌組織サンプルからは845種類の、対照となる正常膵管組織からは730種類のタンパク質を同定することができた(膵臓癌組織:1099種類、全体:1229種類)。
【実施例1】
【0033】
3.LC/MS/MSデータの解析
各群でのタンパク質発現を、SCAFFOLDソフトウエア(Matrix Science社製)を用いて解析し、さらに、タンパク質アイソフォーム、サブセットを識別・グループ化し、遺伝子オントロジー解析を行った。具体的には以下のような解析を行った。スペクトラルカウント法(図4):半定量法として下記の計算式を用いた比較定量及び統計検定(G検定)を実施して、群特異的な発現タンパク質の同定を同時に行った。
(1)相対変化量:Abundance ratio for each protein(Rsc)
Rsc=log[(n+f)/(n+f)]+log[(t-n+f)/(t-n+f)]
、n:あるタンパクを同定するのに使用したペプチドの数
、t:タンパク同定に使用したペプチドの総数
f:correction factor=1.25
(2)相対発現量:Normalized Spectral Abundance Factor for each protein(NSAF)
NSAF=[SpC/L]/SUM[SpC/L
SpC:あるタンパクを同定するのに使用したペプチド数
:同定したタンパクのアミノ酸数
(3)スペクトラル・インデックス:Spectral Index for Group Comparison(SpI)
SpI=[SAkav/(SAkav+SBkav)×N/N]-[SBkav/(SAkav+SBkav)×N
Akav:(A群であるタンパク質kを同定するのに使用したペプチドの総数)/(A群のサンプル数)
Bkav:(B群であるタンパク質kを同定するのに使用したペプチドの総数)/(B群のサンプル数)
、N:ある群の中で該当タンパクが同定されたサンプル数
、N:ある群の中のサンプル数
【実施例1】
【0034】
4.膵臓癌マーカータンパク質の検索
前記LC/MS/MS解析によって同定されたタンパク質発現量から、前記の相対発現量(NSAF)、相対変化量(Rsc)、スペクトラル・インデックス(SpI)を算出し、かかる値に基づき、以下の方法で予後不良群で高発現するタンパク質をグループ1、予後良好群で高発現するタンパク質をグループ2、正常膵管細胞と膵臓癌細胞で発現に差があるタンパク質をグループ3を抽出した。グループ1及び2は、予後不良群及び予後良好群から検出された1099種のタンパク質から、統計検定(G検定;Sokal, R. R.; Rohlf, F. J. Biometry, 3rd ed.; W. H. Freeman and Company: New York, 1995参照)のG>3.841を基準として計186種を抽出した。続いて、予後不良群ではRsc>1を基準に、予後良好群ではRsc<-1を基準に計163種のタンパク質を抽出し、その中から、各群において4症例中2症例以上で発現しているタンパク質を計120種を抽出した。さらに、遺伝子オントロジー解析及び文献検索から、構造タンパク質やハウスキーピングタンパク質など膵臓癌に特異的でないと考えられるタンパク質を除外することによって、予後不良群及び予後良好群で有意に高発現している計106種、各群53種のタンパク質をグループ1及び2として同定した(図5)。グループ3は、群膵臓癌組織及び正常膵管群で発現が同定された計1229種のタンパク質から、以下の方法で分類した。すなわち、まず予後良好群及び正常膵管群の1025種のタンパク質から統計検定G>3.841を基準として351種のタンパク質を抽出し、次に正常膵管組織と比べ膵臓癌組織において高発現であることを意味するRsc>1に基づき205種を抽出し、さらにSpI<-0.4に基づき138種を抽出した。また、予後不良群及び正常膵管群の1101種のタンパク質から統計検定G>3.841を基準として399種を抽出し、次に正常膵管組織と比べ膵臓癌組織において高発現であることを意味するRsc>1に基づき239種を抽出し、さらにSpI<-0.4に基づき161種を抽出した。これらの計138種及び161種のタンパク質から、さらに遺伝子オントロジー解析及び文献検索から膵臓癌に特異的でないと考えられるタンパク質を除外し、計64種のタンパク質をグループ3として同定した(図6)。
【実施例1】
【0035】
前記までのDiscovery stageで同定された計170種類のタンパク質すべてについて、
β-actinを内部標準として用いて三連四重極型MSを用いた定量MS解析(MRM:Multiple Reaction Monitoring)による定量フォーカスプロテオミクスを実施した(Validation stage)。MRM法においては、ACTBのSRMtransition(488.7/630.3)のピークエリアを適用し、以下の計算式により標準化した。
Normalized peak area = Each of peak area x (500,000 / peak area of 488.7/630.3)
まずMRMによる測定に適したペプチドデザインが可能なタンパク質をグループ1から34種、グループ2から39種、グループ3から50種の、計123種のタンパク質を抽出し、MRMテスト測定を行った。これら計123種類タンパク質は以下の通りである。[グループ1]K1C10_HUMAN、PERM_HUMAN、TRFL_HUMAN、K22E_HUMAN、S10A8_HUMAN、P5CS_HUMAN、TLN1_HUMAN、CAZA1_HUMAN、IF4A3_HUMAN、NNTM_HUMAN、RAB3D_HUMAN、SAP_HUMAN、TSP1_HUMAN、STML2_HUMAN、CO6A3_HUMAN、AP1G1_HUMAN、PSB2_HUMAN、TCPA_HUMAN、THIL_HUMAN、FINC_HUMAN、FRIL_HUMAN、NDKA_HUMAN、S10A9_HUMAN、PSA_HUMAN、PLBL1_HUMAN、K2C1_HUMAN、TERA_HUMAN、LYSC_HUMAN、TCPG_HUMAN、POSTN_HUMAN、COPG_HUMAN、KCRU_HUMAN、QCR1_HUMAN、PP1A_HUMAN
[グループ2]
PLEC1_HUMAN、RAB2A_HUMAN、CALM_HUMAN、ECHB_HUMAN、ECHA_HUMAN、ILEU_HUMAN、NIBL1_HUMAN、LUM_HUMAN、EFHD2_HUMAN、PHB_HUMAN、GSTK1_HUMAN、CAN1_HUMAN、DPYL2_HUMAN、ALDH2_HUMAN、MYOF_HUMAN、RAB14_HUMAN、PGM1_HUMAN、QOR_HUMAN、AHNK_HUMAN、PRELP_HUMAN、RHG01_HUMAN、LC7L2_HUMAN、PUR9_HUMAN、CTNA1_HUMAN、IMMT_HUMAN、VPS35_HUMAN、PML_HUMAN、TALDO_HUMAN、CNDP2_HUMAN、DDX5_HUMAN、NNMT_HUMAN、MDHC_HUMAN、VASP_HUMAN、RCL_HUMAN、FLOT1_HUMAN、GTR1_HUMAN、LMO7_HUMAN、PLIN3_HUMAN、ANXA6_HUMAN
[グループ3]
EFTU_HUMAN、OLFM4_HUMAN、FLNA_HUMAN、RAB5C_HUMAN、SERPH_HUMAN、ETFA_HUMAN、ANX10_HUMAN、CISY_HUMAN、CY1_HUMAN、ROAA_HUMAN、ERO1A_HUMAN、AMPL_HUMAN、S10A6_HUMAN、CAP1_HUMAN、SODM_HUMAN、IDHP_HUMAN、LG3BP_HUMAN、CEAM6_HUMAN、G3BP1_HUMAN、TCPH_HUMAN、COTL1_HUMAN、MDHM_HUMAN、LEG3_HUMAN、SSBP_HUMAN、SQRD_HUMAN、S100P_HUMAN、VINC_HUMAN、ASC_HUMAN、ITB4_HUMAN、TAGL_HUMAN、CYTB_HUMAN、CYC_HUMAN、URP2_HUMAN、UBP5_HUMAN、QCR2_HUMAN、ARPC5_HUMAN、TPD54_HUMAN、PRDX1_HUMAN、CH10_HUMAN、ECH1_HUMAN、CYB5B_HUMAN、A1AG1_HUMAN、ATPD_HUMAN、SH3L3_HUMAN、CKAP4_HUMAN、MOES_HUMAN、EF1B_HUMAN、FCL_HUMAN、SC23B_HUMAN、VDAC1_HUMAN
【実施例1】
【0036】
前記MRMテスト測定結果に基づき、グループ1から32種、グループ2から37種、グループ3から42種の、計111の種タンパク質についてMRM本測定を行った。MRM測定結果を解析し、前記のマーカー候補タンパク質の中から、膵臓癌組織における発現量が正常膵管組織と比較して2倍以上ある、グループ1の13種、グループ2の4種、グループ3の18種の計35種類のタンパク質を、膵臓癌マーカー候補として同定した(図7)。これら計35種類タンパク質は以下の通りである。
[グループ1]
FINC_HUMAN、FRIL_HUMAN、K1C10_HUMAN、K2C1_HUMAN、LYSC_HUMAN、PERM_HUMAN、PLBL1_HUMAN、S10A8_HUMAN、S10A9_HUMAN、STML2_HUMAN、TERA_HUMAN、TLN1_HUMAN、TSP1_HUMAN
[グループ2]
ALDH2_HUMAN、GTR1_HUMAN、PLEC1_HUMAN、PUR9_HUMAN
[グループ3]
ANX10_HUMAN、ASC_HUMAN、CAP1_HUMAN、CEAM6_HUMAN、CH10_HUMAN、CISY_HUMAN、ECH1_HUMAN、ERO1A_HUMAN、LG3BP_HUMAN、OLFM4_HUMAN、S100P_HUMAN、S10A6_HUMAN、SERPH_HUMAN、SH3L3_HUMAN、SSBP_HUMAN、TAGL_HUMAN、VDAC1_HUMAN、EFTU_HUMAN
【実施例1】
【0037】
以上のMRM解析結果を再度精査し、膵臓癌マーカータンパク質を以下のA群~C群に分類した(図8)。図9~図11にA群~C群のタンパク質のMRM法により解析した結果を示す。
A群:予後不良の膵臓癌において特異的に発現量が高いタンパク質であり、膵臓癌かつ予後不良マーカーである(図9)。
FINC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02751)、FRIL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02792)、K1C10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P13645)、K2C1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04264)、LYSC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61626)、PERM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05164)、PLBL1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6P4A8)、S10A8_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05109)、S10A9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P06702)、STML2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJZ1)、TERA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P55072)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、TSP1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07996)、ANX10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9UJ72)、ECH1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q13011)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)、EFTU_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P49411)、SERPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P50454)
B群:予後良好の膵臓癌において特異的に高発現するタンパク質であり、膵臓癌かつ予後良好マーカーである(図10)。
ALDH2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P05091)、GTR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P11166)、PLEC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q15149)、PUR9_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31939)
C群:予後不良及び予後良好の膵臓癌において特異的に高発現するタンパク質であり、膵臓癌かつ予後不良及び予後良好のマーカーである(図11)。
ASC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9ULZ3)、CAP1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q01518)、CEAM6_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P40199)、CH10_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P61604)、CISY_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O75390)、ERO1A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q96HE7)、LG3BP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q08380)、S100P_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P25815)、S10A6_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P06703)、SH3L3_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9H299)、SSBP_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q04837)、TAGL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q01995)、VDAC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21796)
【実施例1】
【0038】
文献検索の結果、上記のA群~C群のタンパク質のうち、A群のFINC_HUMAN、FRIL_HUMAN、K1C10_HUMAN、K2C1_HUMAN、及びPERM_HUMANや、B群のPLEC1_HUMANや、C群のASC_HUMAN、CAP1_HUMAN、CEAM6_HUMAN、S100P_HUMAN、及びS10A6_HUMANは膵臓癌において高い発現が確認された報告が存在することが確認された。前記A群のタンパク質を「A群マーカータンパク質」、前記B群のタンパク質を「B群マーカータンパク質」、前記C群タンパク質群から膵臓癌において高い発現が確認されているタンパク質を除いたタンパク質群のタンパク質を「C群マーカータンパク質」とした。
【実施例1】
【0039】
5.免疫組織化学染色
上記において同定された、35種類の膵臓癌マーカータンパク質のうち、A群のタンパク質OLFM4_HUMAN、STML2_HUMAN及びECH1_HUMAN、並びにB群のタンパク質ALDH2_HUMANについて、免疫組織化学染色(IHC)を行った。正常膵管組織、予後良好膵臓癌組織、及び予後不良膵臓癌組織のFFPE組織を抗OLFM4抗体、抗STML2抗体、抗ECH1抗体、及び抗ALDH2抗体を1次抗体として用いて染色し、ENVISIONキット/HRP(DAB)(DAKO社製)を用いて発色させ、観察した。免疫組織化学染色(IHC)の結果及びMRM解析による発現量を図12~図15に示す。A群のタンパク質OLFM4_HUMAN、STML2_HUMAN及びECH1_HUMANは、定量MS解析(MRM)法による解析結果と同様に、正常膵管組織及び予後良好膵臓癌組織と比較して、予後不良膵臓癌組織において有意に発現が高いことが示された(図12~14)。またB群のタンパク質ALDH2_HUMANも、定量MS解析(MRM)法による解析結果と同様に、正常膵管組織及び予後不良膵臓癌組織と比較して、予後良好膵臓癌組織において有意に発現が高いことが示された(図15)。
【実施例2】
【0040】
[本発明の膵臓癌マーカータンパク質を用いた膵臓癌治療後の生存率の解析]
本発明の膵臓癌マーカータンパク質の発現量と膵臓癌治療後の生存率との関連性について調べた。解析に用いる症例として、図1に示した「術前化学療法の有無:施行せず」96例を選択し、かかる症例の膵臓癌サンプルを上記実施例1に記載の方法で調製し、調製した膵臓癌サンプルにおける3種類の膵臓癌マーカータンパク質(OLFM4_HUMAN、STML2_HUMAN及びECH1_HUMAN)の発現量を、上記実施例1に記載の免疫組織化学染色法により検出した。かかる3種類の膵臓癌マーカータンパク質の発現が検出された癌細胞の割合が、10%以上の症例を陽性群(Positive group)1に分類し、また10%未満の症例を陰性群(Negative group)1に分類し、陽性群1及び陰性群1それぞれにおける膵臓癌手術後の経過時間と生存率(全生存率)との関係を、カプラン・マイヤー法を用いて解析した(図16)。その結果、上記3種類の膵臓癌マーカータンパク質のいずれを用いた場合において、陰性群1よりも陽性群1の方が膵臓癌手術後の生存率が悪く、またその違いには統計学的有意差があることが示された(OLFM4_HUMAN;P=0.0455、STML2_HUMAN;P=0.0410、ECH1_HUMAN;P=0.0232)。この結果から、膵臓組織に含まれる癌細胞中の3種類の膵臓癌マーカータンパク質(OLFM4_HUMAN、STML2_HUMAN及びECH1_HUMAN)の発現レベルを検出し、かかる3種類の膵臓癌マーカータンパク質の発現が検出される癌細胞の割合が多かった場合、膵臓癌治療後の生存率が悪いと予測できることが明らかとなった。
【実施例2】
【0041】
次に3種類の膵臓癌マーカータンパク質(OLFM4_HUMAN、STML2_HUMAN及びECH1_HUMAN)すべての発現が検出された症例、すなわちかかる3種類の膵臓癌マーカータンパク質すべてにおいて、陽性群1に分類された症例(n=32)を陽性群2に分類し、それ以外の症例(上記3種類の膵臓癌マーカータンパク質のうち少なくとも1つのものにおいて陰性群1に分類された症例)(n=64)を陰性群2に分類し、陽性群2及び陰性群2それぞれにおける膵臓癌手術後の経過時間と生存率(全生存率)との関係を、カプラン・マイヤー法を用いて解析した(図17)。その結果、陰性群2よりも陽性群2の方が膵臓癌手術後の生存率が悪く、またその違いには統計学的有意差があることが示された(P=0.044)(図17)。この結果から、膵臓組織に含まれる癌細胞中の3種類の膵臓癌マーカータンパク質(OLFM4_HUMAN、STML2_HUMAN及びECH1_HUMAN)の発現レベルを検出し、かかる3種類の膵臓癌マーカータンパク質全ての発現が検出される癌細胞の割合が多かった場合、膵臓癌治療後の生存率が悪いと予測できることが明らかとなった。
【実施例2】
【0042】
また、3種類の膵臓癌マーカータンパク質(OLFM4_HUMAN、STML2_HUMAN及びECH1_HUMAN)のうち2以上のものの発現が検出された症例、すなわちかかる3種類の膵臓癌マーカータンパク質のうち2以上のものにおいて、陽性群1に分類された症例(n=61)を陽性群3に分類し、それ以外の症例(上記3種類の膵臓癌マーカータンパク質のうち2以上のものにおいて陰性群1に分類された症例)(n=35)を陰性群3に分類し、陽性群3及び陰性群3それぞれにおける膵臓癌手術後の経過時間と生存率(全生存率)との関係を、カプラン・マイヤー法を用いて解析した(図18)。その結果、陰性群3よりも陽性群3の方が膵臓癌手術後の生存率が悪く、またその違いには統計学的有意差があることが示された(P=0.0162)。この結果から、膵臓組織に含まれる癌細胞中の3種類の膵臓癌マーカータンパク質(OLFM4_HUMAN、STML2_HUMAN及びECH1_HUMAN)の発現レベルを検出し、かかる3種類の膵臓癌マーカータンパク質のうち任意の2つ以上のものの発現が検出される癌細胞の割合が多かった場合、膵臓癌治療後の生存率が悪いと予測できることが明らかとなった。
【実施例2】
【0043】
さらに、3種類の膵臓癌マーカータンパク質(OLFM4_HUMAN、STML2_HUMAN及びECH1_HUMAN)のうち少なくとも1つの発現が検出された症例、すなわちかかる3種類の膵臓癌マーカータンパク質の少なくとも1つにおいて、陽性群1に分類された症例(n=84)を陽性群4に分類し、それ以外の症例(上記3種類の膵臓癌マーカータンパク質すべてにおいて陰性群1に分類された症例)(n=12)を陰性群4に分類し、陽性群4及び陰性群4それぞれにおける膵臓癌手術後の経過時間と生存率(全生存率)との関係を、カプラン・マイヤー法を用いて解析した(図19)。その結果、陰性群4よりも陽性群4の方が膵臓癌手術後の生存率が悪く、またその違いには統計学的有意差があることが示された(P=0.0124)。この結果から、膵臓組織に含まれる癌細胞中の3種類の膵臓癌マーカータンパク質(OLFM4_HUMAN、STML2_HUMAN及びECH1_HUMAN)の発現レベルを検出し、かかる3種類の膵臓癌マーカータンパク質のうち少なくとも1つのものの発現が検出される癌細胞の割合が多かった場合、膵臓癌治療後の生存率が悪いと予測できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、膵臓癌及び膵臓癌予後の予測、検査の分野において好適に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18