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明細書 :高周波インバータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6004309号 (P6004309)
公開番号 特開2013-121220 (P2013-121220A)
登録日 平成28年9月16日(2016.9.16)
発行日 平成28年10月5日(2016.10.5)
公開日 平成25年6月17日(2013.6.17)
発明の名称または考案の名称 高周波インバータ
国際特許分類 H02M   7/48        (2007.01)
H05B   6/06        (2006.01)
FI H02M 7/48 P
H05B 6/06 361
請求項の数または発明の数 3
全頁数 20
出願番号 特願2011-267442 (P2011-267442)
出願日 平成23年12月7日(2011.12.7)
審査請求日 平成26年11月13日(2014.11.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】畑中 義博
【氏名】宮田 周一郎
【氏名】福岡 養祐
個別代理人の代理人 【識別番号】100082740、【弁理士】、【氏名又は名称】田辺 恵基
審査官 【審査官】小林 紀和
参考文献・文献 特開2009-261179(JP,A)
国際公開第2006/018912(WO,A1)
特開2007-194006(JP,A)
調査した分野 H02M 7/48
H05B 6/06
特許請求の範囲 【請求項1】
第1の逆並列ダイオードを並列に接続してなる第1の給電電流スイッチ及び第2の逆並列ダイオードを並列に接続してなる第2の給電電流スイッチを、互いに並列に、直流電源の一端側及び共通接続回路間に接続し、
第3の逆並列ダイオードを並列に接続してなる共振電流スイッチと、誘導加熱負荷及び直列共振コンデンサの直列回路と、ゼロ電圧動作用コンデンサとを、互いに並列に、上記直流電源の他端側及び上記共通接続回路間に接続し、
上記第1の給電電流スイッチ、上記共振電流スイッチ及び上記第2の給電電流スイッチは、順次ターンオン動作するターンオンサイクルを繰り返すように、
先ず、上記第1の給電電流スイッチをターンオン動作させたS1単流モードにおいて上記直流電源から上記第1の給電電流スイッチ及び上記共通接続回路を介して上記誘導加熱負荷に給電電流を流すことにより出力電流を生じさせ、
続いて、上記第1の給電電流スイッチ、上記第2の給電電流スイッチ及び上記共振電流スイッチを全てターンオフ動作させた第1の全スイッチオフモードにおいて上記ゼロ電圧動作用コンデンサから上記共通接続回路を介して上記誘導加熱負荷に充放電電流を流すことにより上記出力電流を生じさせ、
続いて、当該充放電電流がゼロクロスするような変化をしたとき、上記誘導加熱負荷の自由共振動作によって生ずる共振電流を上記共通接続回路を介しさらに上記第3の逆並列ダイオードを介して流すD2単流モードにおいて当該共振電流によって上記出力電流を生じさせ、
続いて、上記共振電流スイッチをターンオン動作させたS2単流モードにおいて上記誘導加熱負荷の共振電流を上記共振電流スイッチを介しさらに上記共通接続回路を介して流すことにより上記出力電流を生じさせ、
続いて、上記第1の給電電流スイッチ、上記第2の給電電流スイッチ及び上記共振電流スイッチを全てターンオフ動作させた第2の全スイッチオフモードにおいて上記ゼロ電圧動作用コンデンサから上記共通接続回路を介して上記誘導加熱負荷に充放電電流を流すことにより上記出力電流を生じさせ、
続いて、当該充放電電流がゼロクロスするような変化をしたとき、上記誘導加熱負荷の自由共振動作によって生ずる共振電流を上記共通接続回路を介しさらに上記第1及び第2の逆並列ダイオードを介して流す第1のD1・D3複流モードにおいて当該共振電流によって上記出力電流を生じさせ、
続いて、上記第2の給電電流スイッチをターンオン動作させたS3単流モードにおいて上記直流電源から上記第2の給電電流スイッチ及び上記共通接続回路を介して上記誘導加熱負荷に給電電流を流すことにより上記出力電流を生じさせ、
続いて、上記第1の給電電流スイッチ、上記第2の給電電流スイッチ及び上記共振電流スイッチを全てターンオフ動作させた第3の全スイッチオフモードにおいて上記ゼロ電圧動作用コンデンサから上記共通接続回路を介して上記誘導加熱負荷に充放電電流を流すことにより上記出力電流を生じさせ、
続いて、当該充放電電流がゼロクロスするような変化をしたとき、上記誘導加熱負荷の自由共振動作によって生ずる共振電流を上記共通接続回路を介しさらに上記第3の逆並列ダイオードを介して流すD2単流モードにおいて当該共振電流によって上記出力電流を生じさせ、
続いて、上記第1の給電電流スイッチ、上記第2の給電電流スイッチ及び上記共振電流スイッチを全てターンオフ動作させた第4の全スイッチオフモードにおいて上記ゼロ電圧動作用コンデンサから上記共通接続回路を介して上記誘導加熱負荷に充放電電流を流すことにより上記出力電流を生じさせ、
続いて、当該放電電流がゼロクロスするような変化をしたとき、上記誘導加熱負荷の自由共振動作によって生ずる共振電流を上記共通接続回路を介しさらに上記第1及び第2の逆並列ダイオードを介して流す第2のD1・D3複流モードにおいて当該共振電流によって上記出力電流を生じさせ、
続いて、次の循環動作サイクルにおける上記S1単流モードに移るようにした結果2倍周波出力電流を生成する
ことを特徴とする高周波インバータ。
【請求項2】
上記誘導加熱負荷及び直列共振用コンデンサでなる負荷直列共振回路により直列共振周波数fを求め、上記第1及び第2給電電流スイッチ並びに上記共振電流スイッチのゲートトリガ周波数fを上記直列共振周波数fの1/2より大きく設定し、誘導加熱負荷に供給する出力電流の出力周波数fを、ゲートトリガ周波数fの2倍(f=2f)に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波インバータ。
【請求項3】
位相角度0度から360度までのスイッチングモード切換動作繰返し周期Tにおいて、上記第1の給電電流スイッチ、上記共振電流スイッチ及び上記第2の給電電流スイッチを、デッドタイム区間を挟んで、(1/4)Tより小さい3つの角度範囲でそれぞれゲートトリガ動作させて給電電流及び共振電流を上記誘導加熱負荷に流すと共に、上記第2のD1・D3複流モードにおいて上記スイッチングモード切換動作繰返し周期Tの残る1つの角度範囲で上記第1及び第2給電電流スイッチにそれぞれ接続された逆並列ダイオードを導通させる共振電流を上記誘導加熱負荷に流す
ことを特徴とする請求項2に記載の高周波インバータ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は高周波インバータに関し、例えば加熱負荷を誘導加熱する場合に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱を用いた加熱手段として複数の電力半導体スイッチ素子を高周波ゲート信号によってスイッチ動作させることにより、誘導加熱コイルとしてのワークコイルに高周波電流を流す回路構成を構築し、これにより誘導加熱部材に渦電流を誘導させるような構成を有する高周波インバータが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この周波数インバータは、スイッチ素子としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)や、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)でなる電力半導体スイッチング素子を用い得るが、当該電力半導体スイッチ素子としてIGBTを用いようとすれば、そのゲートトリガ周波数の限界は40~50〔kHz〕程度であるため、非磁性体(銅、アルミニウム、SUS316、SUS304など)の誘導加熱では、インバータの出力でなる誘導加熱コイル電流の周波数fをIGBTのゲートトリガ周波数限界より高周波化する必要がある。
【0004】
すなわち、誘導加熱材料が非磁性体などの場合は、抵抗率が非常に小さいため、誘導加熱材料の電気抵抗の大きさが小さくなるので、誘導加熱電力Pを大きくすることにより加熱源としての性能を高めるためには、誘導加熱コイル電流の周波数fを大きくすることが望ましい。
【0005】
ここで誘導加熱電力Pは誘導加熱コイル電流の周波数fの平方根に比例することが知られている。
【0006】
実際上、銅やアルミニウムを誘導加熱する場合には、当該誘導加熱コイル電流の周波数fを60~100〔kHz〕程度に高周波化する必要がある。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2009-261179公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、この種の高周波インバータにおいては、複数のスイッチ素子を所定のゲートトリガ周波数のゲート信号によりゲートオンオフ制御し、これにより、当該ゲートトリガ周波数より高い(例えば倍周波の)高周波出力電流を得るように構成されているので、当該複数のスイッチ素子ごとにゲートトリガ制御手段が必要になる。
【0009】
従って、必要なスイッチ素子の数を低減できれば、全体としての回路構成を一段と簡易にできると考えられる。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、スイッチング回路構成に必要なスイッチ素子の数を低減できる高周波インバータを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明においては、第1の逆並列ダイオードを並列に接続してなる第1の給電電流スイッチ及び第2の逆並列ダイオードを並列に接続してなる第2の給電電流スイッチを、互いに並列に、直流電源の一端側及び共通接続回路間に接続し、第3の逆並列ダイオードを並列に接続してなる共振電流スイッチと、誘導加熱負荷及び直列共振コンデンサの直列回路と、ゼロ電圧動作用コンデンサとを、互いに並列に、直流電源の他端側及び共通接続回路間に接続し、第1の給電電流スイッチ、共振電流スイッチ及び第2の給電電流スイッチは、順次ターンオン動作するターンオンサイクルを繰り返すように、先ず、第1の給電電流スイッチをターンオン動作させたS1単流モードにおいて直流電源から第1の給電電流スイッチ及び共通接続回路を介して誘導加熱負荷に給電電流を流すことにより出力電流を生じさせ、続いて、第1の給電電流スイッチ、第2の給電電流スイッチ及び共振電流スイッチを全てターンオフ動作させた第1の全スイッチオフモードにおいてゼロ電圧動作用コンデンサから共通接続回路を介して誘導加熱負荷に充放電電流を流すことにより出力電流を生じさせ、続いて、当該充放電電流がゼロクロスするような変化をしたとき、誘導加熱負荷の自由共振動作によって生ずる共振電流を共通接続回路を介しさらに第3の逆並列ダイオードを介して流すD2単流モードにおいて当該共振電流によって出力電流を生じさせ、続いて、共振電流スイッチをターンオン動作させたS2単流モードにおいて誘導加熱負荷の共振電流を共振電流スイッチを介しさらに共通接続回路を介して流すことにより出力電流を生じさせ、続いて、第1の給電電流スイッチ、第2の給電電流スイッチ及び共振電流スイッチを全てターンオフ動作させた第2の全スイッチオフモードにおいてゼロ電圧動作用コンデンサから共通接続回路を介して誘導加熱負荷に充放電電流を流すことにより出力電流を生じさせ、続いて、当該充放電電流がゼロクロスするような変化をしたとき、誘導加熱負荷の自由共振動作によって生ずる共振電流を共通接続回路を介しさらに第1及び第2の逆並列ダイオードを介して流す第1のD1・D3複流モードにおいて当該共振電流によって出力電流を生じさせ、続いて、第2の給電電流スイッチをターンオン動作させたS3単流モードにおいて直流電源から第2の給電電流スイッチ及び共通接続回路を介して誘導加熱負荷に給電電流を流すことにより出力電流を生じさせ、続いて、第1の給電電流スイッチ、第2の給電電流スイッチ及び共振電流スイッチを全てターンオフ動作させた第3の全スイッチオフモードにおいてゼロ電圧動作用コンデンサから共通接続回路を介して誘導加熱負荷に充放電電流を流すことにより出力電流を生じさせ、続いて、当該充放電電流がゼロクロスするような変化をしたとき、誘導加熱負荷の自由共振動作によって生ずる共振電流を共通接続回路を介しさらに第3の逆並列ダイオードを介して流すD2単流モードにおいて当該共振電流によって出力電流を生じさせ、続いて、第1の給電電流スイッチ、第2の給電電流スイッチ及び共振電流スイッチを全てターンオフ動作させた第4の全スイッチオフモードにおいてゼロ電圧動作用コンデンサから共通接続回路を介して誘導加熱負荷に充放電電流を流すことにより出力電流を生じさせ、続いて、当該放電電流がゼロクロスするような変化をしたとき、誘導加熱負荷の自由共振動作によって生ずる共振電流を共通接続回路を介しさらに第1及び第2の逆並列ダイオードを介して流す第2のD1・D3複流モードにおいて当該共振電流によって出力電流を生じさせ、続いて、次の循環動作サイクルにおけるS1単流モードに移るようにした結果2倍周波出力電流を生成するようにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1及び第2の逆並列ダイオードを並列に接続してなる第1及び第2の給電電流スイッチを並列に接続して直流電源の一端側及び共通接続回路間に接続すると共に、第3の逆並列ダイオードを並列に接続してなる共振電流スイッチと、誘導加熱負荷と、ゼロ電圧動作用コンデンサとを互いに並列に接続して直流電源の他端側及び共通接続回路間に接続した構成を基本構成として、3個の電流スイッチ、すなわち第1及び第2の給電電流スイッチ並びに共振電流スイッチを、全スイッチオフモードを間に挟みながら、順次ターンオン動作させることにより出力電流の3/4流通角度分の出力電流を生じさせると共に、第2のD1・D3複流モードにおいて誘導加熱負荷の自由共振動作を利用して第1及び第2の逆並列ダイオードを通じて共振電流を流すことによって出力電流の1/4流通角度分の出力電流を生じさせるようにした結果、3つの電流スイッチを用いるだけの簡易な構成により2倍周波の出力電流を生成できる高周波インバータを実現できる。



【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態による倍周波ZVS高周波インバータを示す接続図である。
【図2】図1の各部に流れる電流モードを示す信号波形図である。
【図3】全スイッチオフモードaを示す略線図である。
【図4】D1・D3複流モードbを示す略線図である。
【図5】S1単流モードcを示す略線図である。
【図6】全スイッチオフモードdを示す略線図である。
【図7】D2単流モードeを示す略線図である。
【図8】S2単流モードfを示す略線図である。
【図9】全スイッチオフモードgを示す略線図である。
【図10】D1・D3複流モードhを示す略線図である。
【図11】S3単流モードiを示す略線図である。
【図12】全スイッチオフモードjを示す略線図である。
【図13】D2単流モードkを示す略線図である。
【図14】実施例の説明に供する特性曲線図及び図表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。

【0015】
(1)倍周波ZVS高周波インバータの基本回路
図1において、1は全体として倍周波ZVS高周波インバータを示す。

【0016】
ここでZVSは、Zero Voltage Switching動作(以下これをゼロ電圧スイッチング動作とも呼ぶ)を行う高周波インバータであることを示し、これによりスイッチ素子が切換動作をするとき、スイッチ素子の両端電圧を0〔V〕に維持することにより、サージ電圧やサージ電流が発生することを抑制し、その結果スイッチング損失を低減させる効果を得るものである。

【0017】
倍周波ZVS高周波インバータ1は、スイッチ素子として電力半導体スイッチであるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などの自己ターンオフ型電力半導体スイッチを用いた第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3を並列に直流電源Ed(その出力電圧はEd〔V〕に設定されている)の一端に接続してなる給電電流回路2を有する。

【0018】
ここで自己ターンオフ型電力半導体スイッチは、そのオン状態及びオフ状態を、外部から与えるゲートトリガ信号によって、任意に切り換えることができるパワー半導体スイッチである。

【0019】
直流電源Edは給電電流回路2の共通母線2Aを通じて、電源電流idを第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3に対する給電電流i1及びi3(図2(C1)及び(C3))として分流させる。

【0020】
かくして給電電流回路2は、図1において矢印で示す方向を正方向とする電源電流idと、給電電流i1及びi3とを、導通動作した第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3を通じて共通接続回路3(矢印で示す方向を正方向とする共通電流i12を流す)に給電する。

【0021】
第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3の両端間には、それぞれ逆並列ダイオードD1及びD3が接続され、これにより給電電流回路2において、第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3に逆方向電圧が印加される動作状態になったとき、当該逆並列ダイオードD1及びD3を通じて負方向に給電電流i1及びi3を流すようになされている。

【0022】
共通接続回路3と直流電源Edの他端との間には共振電流回路4が接続され、当該共振電流回路4の共通母線4Aを通じて直流電源Edへの戻り電流となる電源電流idを流す。

【0023】
共振電流回路4は、誘導加熱負荷11を構成する負荷抵抗R及び負荷インダクタンスLの直列回路に対して直列共振用コンデンサCsを外付けしてなる負荷直列共振回路4Bを有する。

【0024】
実際上この負荷抵抗R及び負荷インダクタンスLは、誘導加熱源として誘導加熱コイルに誘導加熱電流を流して加熱素材に渦電流を誘導させることによりジュール熱を発生させる現象を表す等価回路を示している。

【0025】
負荷直列共振回路4Bの負荷抵抗Rは共通接続回路3に接続されると共に、直列共振用コンデンサCsは共通母線4Aに接続される。

【0026】
かくして誘導加熱負荷11に対して共通接続回路3及び共通母線4Aを通じて電流が流れたとき、これが矢印方向を正方向とする出力電流i(図2(E))となる。

【0027】
共振電流回路4において、共通接続回路3及び共通母線4A間に、負荷直列共振回路4Bと並列に、共振電流スイッチS2が接続され、これが導通動作したとき、誘導加熱負荷11及び直列共振用コンデンサCsの共振動作によって、共通接続回路3及び共通母線4Aを通して共振電流スイッチS2に正方向を矢印で示す共振電流i2(図2(C2))が流れる。

【0028】
共振電流スイッチS2の両端間には逆並列ダイオードD2が接続され、これにより共振電流スイッチS2に逆方向電圧が与えられているとき、逆方向に共振電流i2を流すようになされている。

【0029】
かかる構成に加えて、共振電流回路4の誘導加熱負荷11及び直列共振用コンデンサCsの負荷直列共振回路4Bには並列に、ゼロ電圧スイッチング動作(ZVS)用コンデンサCpが接続され、全てのスイッチがオフ動作したとき、ゼロ電圧スイッチング動作用コンデンサCpの充・放電電流としてこれを共通接続回路3及び共通母線4Aを通じて矢印の方向を正方向とするZVS電流icpをZVS用コンデンサCpに流す。

【0030】
ここでZVS用コンデンサCpに正方向のZVS電流icpが負荷直列共振回路4Bから流れて充電動作するとき、ZVS用コンデンサCpの両端電圧Vcp(従って共振電流スイッチS2の両端電圧Vs2)は0〔V〕から直流電源Edの一端側の電圧Ed〔V〕にまで上昇して行く(図2(D))。

【0031】
これとは逆に、負荷直列共振回路4Bから逆方向のZVS電流icpが放電電流として流れたとき、ZVS用コンデンサCpの両端電圧VcpはEd〔V〕から0〔V〕にまで降下する(図2(D))。

【0032】
かくしてZVS用コンデンサCpの両端電圧Vcp(=Vs2)(従って共通接続回路3の電圧レベル)は、ZVS用コンデンサCpの充電状態の推移に従って0〔V〕→Ed〔V〕→0〔V〕のように切り換わる。

【0033】
これに応じて、図2(D)に示すように、Vcp(=Vs2)=0〔V〕のとき、第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3の両端電圧Vs1及びVs3はVs1=Vs3=Ed〔V〕で、かつ共振電流スイッチS2の両端電圧Vs2はVs2=0〔V〕の状態になる。

【0034】
これに対して、Vcp=Ed〔V〕のときは、Vs1=Vs3=0〔V〕で、かつVs2=Ed〔V〕の状態になる。

【0035】
これと共に、ZVS用コンデンサCpの両端電圧Vcpが0〔V〕→Ed〔V〕又はEd〔V〕→0〔V〕に変化しているとき、Vs1=Vs3及びVs2は所定の変化率でEd〔V〕→0〔V〕又は0〔V〕→Ed〔V〕に切り換って行く。

【0036】
この結果、負荷直列共振回路4B、従って誘導加熱負荷11を流れる出力電流iは、第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3のゲートトリガ制御回路15S1及び15S3、並びに共振電流スイッチS2のゲートトリガ制御回路15S2によって第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3、並びに共振電流スイッチS2がゲートトリガ信号TG1(図2(A1))及びTG3(図2(A3))並びにTG2(図2(A2))によって、ゲートトリガ周波数fでオンオフ制御されたとき、出力電流iの周波数fがf=2fになるように、図2(B)に示す一連のスイッチングモード動作を倍周波ZVS高周波インバータ1が実行することにより負荷直列共振回路4Bにゲートトリガ周波数fの2倍の周波数f(従って倍周波)の出力電流i(図2(E))を得る。

【0037】
(2)スイッチ素子のスイッチングモードの動作原理
(2-1)図1の倍周波ZVS高周波インバータ1は、図2(B)に示すスイッチングモードの流れに従って、スイッチングモード切換動作繰返し周期Tごとに繰返し、第1給電電流スイッチS1、共振電流スイッチS2及び第2給電電流スイッチS3をトリガ周波数fで順次ゲートトリガ動作させることにより、出力周波数f

【0038】
=2f ……(1)

【0039】
の関係をもつ出力電流iを形成する。

【0040】
(2-2)スイッチングモード切換切換動作繰返し周期Tは、図2において時点t~t14によって示す時間軸に沿って、360度のゲートトリガ位相角度に分割され、第1給電電流スイッチS1のゲートトリガ信号TG1(図2(A1))のゲートトリガ角としてターンオン角度0度(=t)及びターンオフ角度85度(=t)を割り当て、共振電流スイッチS2のゲートトリガ信号TG2(図2(A2))のゲートトリガ角としてターンオン角度90度(=t)及びターンオフ角度175度(=t)を割り当て、第2給電電流スイッチS3のゲートトリガ信号TG3(図2(A3))のゲートトリガ角としてターンオン角度180度(=t10)及びターンオフ角度265度(=t12)を割り当てている。

【0041】
これにより第1給電電流スイッチS1には、ターンオン角度0度の時点t直後の時点tからターンオフ角度85度の時点tまでの間のタイミングに正方向の給電電流i1(図2(C1))が流れ、また共振電流スイッチS2には、ターンオン角度90度の時点t直後の時点tからターンオフ角度175度の時点tまでのタイミングに共振電流i2(図2(C2))が流れ、さらに給電電流スイッチS3には、ターンオン角度180度の時点t10直後の時点t11からターンオフ角度265度の時点t12のタイミングで給電電流i3(図2(C3))が流れる。

【0042】
このように、第1給電電流スイッチS1、共振電流スイッチS2及び第2給電電流スイッチS3には、ターンオン角度0度、90度及び180度からずれた角度の時点t、t及びt11から導通電流i1、i2及びi3が流れるので、当該導通電流が流れ始める時点を導通開始時点と呼び(その角度を導通開始角度と呼ぶ)、また導通電流i1、i2及びi3の流れが終了する時点t、t及びt12を導通終了時点と呼ぶ(その角度を導通終了角度と呼ぶ)。

【0043】
これに加えて、第2給電電流スイッチS3のターンオフ角度265度の後、スイッチングモード切換動作繰返し周期Tの終端角度270度の時点t14から抜けて、次のスイッチングモード切換動作繰返し周期Tの始端角度270度の時点tに入って行く期間に対応して、時点tから時点tまでの間に2つの逆並列ダイオードD1及びD3を通って逆方向の給電電流i1及びi3(図2(C1)及び(C3))が流れる。

【0044】
この結果、導通開始時点t、t及びt11から導通終了時点t、t及びt12までの期間に第1給電電流スイッチS1、共振電流スイッチS2及び第2給電電流スイッチS3を通じて流れる電流と、時点tから時点tまでの間に逆並列ダイオードD1及びD3を通って逆方向に流れる給電電流i1及びi3の電流の総和でなる出力電流i(図2(E))が2周期分の電流として負荷直列共振回路4Bを通って流れる。

【0045】
(2-3)ここで、負荷直列共振回路4Bの直列共振周波数fは、誘導加熱負荷11の負荷インダクタンスLの回路定数と、直列共振用コンデンサCsの値とによって、次式

【0046】
<f ……(2)

【0047】
を充足し、かつ直列共振周波数fが出力周波数fの近傍の値(fがfよりやや小さい値)になるように設定する。

【0048】
この条件は、(2)式に(1)式を代入することにより

【0049】
>(1/2)f ……(3)

【0050】
のように、トリガ周波数fが直列共振周波数fの1/2近傍の値(fがfの1/2よりやや大きい値)になるように設定することを意味する。

【0051】
(2)式のように、直列共振周波数fを出力周波数fより小さい値に設定したのは、第1給電電流スイッチS1に給電電流i1を流すスイッチングモードと共振電流スイッチS2に共振電流i2を流すスイッチングモードとの間に、これらのスイッチ間に直接に電流を流さないようにするデッドタイムTd1(t~t)を設け、また共振電流スイッチS2に給電電流i2を流すスイッチングモードと第2給電電流スイッチS3に給電電流i3を流すスイッチングモードとの間にこれらのスイッチ間に直接に電流を流さないようにするデッドタイムTd2(t~t11)を設け、さらに第2給電電流スイッチS3に給電電流i3を流すスイッチングモードと第1給電電流スイッチS1に給電電流i1を流すスイッチングモードとの間に、出力電流iの1/2周期分に対応する逆方向の給電電流i1及びi3を逆並列ダイオードD1及びD3に流すようにするためである。

【0052】
このデッドタイムTd1及びTd2は、図2(B)のスイッチングモードa~kのうち、ゼロボルテージスイッチング(ZVS)動作を満たす期間d及びg以上の角度に設定するものである。

【0053】
(2-4)上述の動作原理によれば、時点t~t、t~t、t11~t12の間に流れる、第1給電電流スイッチS1の電流i1、共振電流スイッチS2の電流i2、第2給電電流スイッチS3の電流i3と、時点t~tの間に流れる逆並列ダイオードD1及びD3の電流i1及びi3との総和によって、負荷直列共振回路4Bに流れる出力電流iとして、ゲートトリガ周波数fに対して倍周波(=2f)の出力周波数fをもつ共振自由振動波形の電流を形成できる。

【0054】
(2-5)実施例として、出力周波数f=60〔kHz〕より少し小さい直列共振周波数f=59.31〔kHz〕となるように、負荷抵抗R=0.4〔Ω〕、負荷インダクタンスL=40〔μH〕、直列共振用コンデンサCs=0.18〔μF〕、ZVS用コンデンサCp=0.05〔μF〕に設定すると共に、ゲートトリガ周波数fをf=f/2=30〔kHz〕に設定したところ、直流電源Edの電圧Ed=270〔V〕において、出力電流I(=IR)=128〔A〕で、出力電力P=6.55〔kW〕の出力が得られた。

【0055】
(3)倍周波ZVS高周波インバータのスイッチングモード切換動作
倍周波ZVS高周波インバータ1は、第1給電電流スイッチS1、共振電流スイッチS2及び第2給電電流スイッチS3をゲートトリガ制御回路15S1、15S2及び15S3のゲートトリガ信号TG1、TG2及びTG3(図2(A1)、(A2)及び(A3))によってゲートトリガ周波数fでターンオン制御することにより、図2(B)に示すように、スイッチングモード切換動作繰返し周期Tごとに、スイッチングモードa~kに順次切換動作をし、これにより、図2(C1)及び(C3)に示すように給電電流i1及びi3を誘導加熱負荷11に給電すると共に、図2(C2)に示すように共振電流スイッチS2の共振電流i2と、図2(C1)及び(C3)に示すように負方向の給電電流i1及びi3でなる共振電流とを、誘導加熱負荷11の自由共振動作に基づいて流すことにより、図2(E)に示すような出力電流iを形成する。

【0056】
特に、ZVS動作を満たすためには、デッドタイムTd1及びTd2はモードa,d,g,jのZVS動作期間以上の角度を満たすことが必要で、各スイッチS1,S2,S3のゲートトリガ信号制御回路15S1、15S2、15S3は、このデッドタイムにより、各スイッチの両端電圧Vs1、Vs2、Vs3がゼロ〔V〕になってからゲートトリガ信号を加える。

【0057】
その結果、ZVSコンデンサCpの充電及び放電動作に基づいて、共通接続回路3の電圧を、直流電源Edの一端の電圧Ed〔V〕と、他端の電圧0〔V〕との間で切り換える(図2(D))ことにより、出力電流iとして、ゲートトリガ制御回路15S1及び15S3並びに15S2のゲートトリガ周波数fの2倍の周波数fの自由振動共振波形をもった電流を形成できる(図2(E))。

【0058】
(3-1)全スイッチオフモードa
図2(B)に示すように、前回のスイッチングモード切換動作繰返し周期Tの終端時点t14を抜けて今回の開始時点tからスイッチングモード切換動作繰返し周期Tに入ると、倍周波ZVS高周波インバータ1は、図3に示す全スイッチオフモードaに入る。

【0059】
倍周波ZVS高周波インバータ1は、前回のスイッチングモード切換動作繰返し周期Tについて、図13について後述するように、D2単流モードkにおいて、ZVS用コンデンサCpの両端電圧Vcp及び共振電流スイッチS2の両端電圧Vs2がVcp=Vs2=0〔V〕(従って共通母線4Aが直流電源Edの他端の電圧0〔V〕で、共通接続回路3が0〔V〕)の状態にある。

【0060】
このとき倍周波ZVS高周波インバータ1は、第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3と共振電流スイッチS2とが全てオフ制御される状態に切り換わると共に、D2単流モードkで流れていた共振電流i2が時点t14(=t)においてゼロクロスしたとき誘導加熱負荷11の負荷インダクタンスLに流れている出力電流iが、その自由共振電流としての連続性から、図3において矢印m1で示すように、負荷インダクタンスL-負荷抵抗R-ZVS用コンデンサCp-直列共振用コンデンサCs-負荷インダクタンスL(従って負荷直列共振回路4B-ZVS用コンデンサCp-負荷直列共振回路4B)の電流ループに切り換って(図2(E))、共通接続回路3及び共通母線4Aを介してZVS用コンデンサCpに充電電流を与える。

【0061】
これにより、ZVS用コンデンサCpの両端電圧Vcp(従って共振電流スイッチS2の両端電圧Vs2)は図2(D)に示すように、0〔V〕からEd〔V〕に向かって上昇して行く。

【0062】
このことは、共通接続回路3の電圧が、0〔V〕からEd〔V〕に向かって上昇して行くことを意味すると同時に、共通接続回路3と給電電流回路2の共通母線2Aとの間に接続されている第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3の両端電圧Vs1及びVs3がEd〔V〕から0〔V〕に降下して行くことを意味する。

【0063】
この全スイッチオフモードaにおいて、やがて時点tにおいて共通接続回路3の電圧がEd〔V〕に達すると、第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3の両端電圧Vs1及びVs3がVs1=Vs3=0〔V〕になることにより、逆並列ダイオードD1及びD3の両端電圧が0〔V〕になることによって導通して、倍周波ZVS高周波インバータ1は図4に示すD1・D3複流モードbに切り換わる。

【0064】
(3-2)D1・D3複流モードb
D1・D3複流モードbにおいて、負荷インダクタンスLの電流iは、その自由共振電流としての連続性によって、図4において矢印m2で示すように、ZVS用コンデンサCpを充電していた電流が、導通状態になった逆並列ダイオードD1及びD3を通して負方向の給電電流i1(図2(C1))及びi3(図2(C3))として、負荷インダクタンスL-負荷抵抗R-逆並列ダイオードD1・D3-直流電源Ed-直列共振用コンデンサCs-負荷インダクタンスL(従って負荷直列共振回路4B-逆並列ダイオードD1・D3-直流電源Ed-負荷直列共振回路4B)の電流ループに切り換わって流れる。

【0065】
この結果、倍周波ZVS高周波インバータ1は、時点tにおいて次のS1単流モードc(図5)に切り換わるまでの間、負方向の給電電流i1及びi3(図2(C1)及び(C3))の総和として、負側の1/2周期分の出力電流i(図2(E))を流す。

【0066】
D1・D3複流モードbにおいて流れる電流は、誘導加熱負荷11及び直列共振用コンデンサCsの共振動作による自由共振電流として共振電流回路4の負荷直列共振回路4Bから給電電流回路2に送り出される。

【0067】
この共振電流は、自由共振電流の連続性から、やがて時点tにおいてゼロクロス状態になるが、倍周波ZVS高周波インバータ1のトリガ制御回路15S1のゲートトリガ信号TG1(図2(A1))は時点tの直前の時点tにおいて、第1給電電流スイッチS1をゲートオン動作させる。

【0068】
この第1給電電流スイッチS1は、そのオン動作時において、両端電圧Vs1が逆並列ダイオードD1に電流が流れたVs1=0〔V〕の状態であるので、ゼロ電圧スイッチング動作(ZVS動作)することにより、第1給電電流スイッチS1に電圧サージも、電流サージも生じさせることなく、電流を流せる状態に切り換わる。

【0069】
この状態において、やがて時点tにおいて出力電流iがゼロクロスすると、倍周波ZVS高周波インバータ1は、図5に示すS1単流モードcに切り換わる。

【0070】
ここで、時点tから時点tまでの間に逆並列ダイオードD1及びD3に流れる電流波形は、上述の(3)式により、ゲートトリガ周波数fの値が負荷直列共振回路4Bの直列共振周波数fの1/2よりやや大きい値になるように設定されていることにより、逆並列ダイオードD2を流れる電流i2がゼロクロスする時点tから逆並列ダイオードD1及びD3の電流i1及びi3がゼロクロスする時点tまでの間に、負荷直列共振回路4Bの自由共振電流波形の1/2周期に相当する共振電流波形を形成する。

【0071】
かくして、時点tから時点tまでの間の負方向の給電電流i1及びi3の総和の出力電流iの波形は、前回のスイッチングモード切換動作繰返し周期Tの時点t11から時点t12までの間に第2給電電流スイッチS2から給電されていた給電電流i3の電流波形(図2(C3))と、時点t以後のモードcの間に第1給電電流スイッチS1から給電される給電電流i1の電流波形(図2(C1))との間を、1/2周期分の自由共振電流波形として滑らかにつなぐことになる(このときの出力電流iの波形部分を「つなぎ波形」と呼ぶ)。

【0072】
(3-3)S1単流モードc
時点tにおいてS1単流モードcになると、倍周波ZVS高周波インバータ1は、直流電源Edの電源電流idを、第1給電電流スイッチS1の給電電流i1及び共通接続回路3の電流i12を順次通じて、給電電流回路2からの給電電流として、誘導加熱負荷11に給電する。

【0073】
このとき誘導加熱負荷11には、図5において矢印m3で示すように、負荷抵抗R-負荷インダクタンスL-直列共振用コンデンサCs-直流電源Ed-第1給電電流スイッチS1-負荷抵抗R(従って負荷直列共振回路4B-直流電源Ed-第1給電電流スイッチS1-負荷直列共振回路4B)の電流ループを通って給電電流i1(図2(C1))が流れる。

【0074】
この給電電流i1は、時点tから時点tまでの間、負荷直列共振回路4Bの自由共振動作によって、出力電流i(図3(E))の正側の1/2周期分の主要部に対応する波形を呈する。

【0075】
かくして倍周波ZVS高周波インバータ1は、ゼロ電圧スイッチング動作により、各スイッチ素子にサージ波形を生じさせずに、D1・D3複流モードbからS1単流モードcに切り換わる。

【0076】
(3-4)全スイッチオフモードd
倍周波ZVS高周波インバータ1のゲートトリガ制御回路15S1は、上述のS1単流モードcの時点tにおいて第1給電電流スイッチS1をターンオフして図6の全スイッチオフモードdに移行する。

【0077】
このとき、第1給電電流スイッチS1から誘導加熱負荷11に流れていた給電電流i1は流れなくなるが、負荷直列共振回路4Bの自由共振動作によって誘導加熱負荷11の出力電流が矢印m4で示す方向に流れ続けることにより、負荷インダクタンスL-直列共振用コンデンサCs-ZVS用コンデンサCp-負荷抵抗R-負荷インダクタンスL(従って負荷直列共振回路4B-ZVS用コンデンサCp-負荷直列共振回路4B)の電流ループに出力電流i(図2(E))が共振電流として流れる。

【0078】
このとき流れる出力電流iは、図3の全スイッチオフモードaの場合とは逆方向にZVS用コンデンサCpに流れ、これにより当該ZVS用コンデンサCpは放電されて行くことによって共通接続回路3の電圧がEd〔V〕から0〔V〕に変化して行き、これにより共振電流スイッチS2の両端電圧Vs2がEd〔V〕から0〔V〕に変化して行く(図2(D))。

【0079】
この変化に伴って給電電流回路2の共通母線2A及び共通接続回路3間の電圧、従って第1及び第2給電電流スイッチS1及びS2の両端電圧Vs1及びVs3が0〔V〕からEd〔V〕に変化する(図2(D))。

【0080】
やがて時点tにおいて共通接続回路3の電圧が0〔V〕になって、共振電流スイッチS2の両端電圧Vs2が0〔V〕になると、倍周波ZVS高周波インバータ1は、図7に示すD2単流モードeに移行する。

【0081】
(3-5)D2単流モードe
図7のD2単流モードeにおいて、誘導加熱負荷11に流れる出力電流iは、共振電流としての連続性から、矢印m5に示す方向に、負荷インダクタンスL-直列共振用コンデンサCs-逆並列ダイオードD2-負荷抵抗R-負荷インダクタンスL(従って負荷直列共振回路4B-逆並列ダイオードD2-負荷直列共振回路4B)の電流ループを負方向の共振電流i2(図2(C2))として流れる。

【0082】
かくして誘導加熱負荷11に流れる出力電流iは、正側に流れる共振電流としての連続性をもった信号波形になる(図2(E))。

【0083】
この共振電流i2が時点tにおいてゼロクロスする波形になったとき(図2(C2))、倍周波ZVS高周波インバータ1は、図8のS2単流モードfに移行するが、ゲートトリガ制御回路15S2は時点tの直前の時点tにおいてゲートトリガ信号TG2(図2(A2))によって共振電流スイッチS2をターンオン動作させる。

【0084】
共振電流スイッチS2は、そのターンオン動作時において、両端電圧Vs2が逆並列ダイオードD2に電流が流れたVs2=0〔V〕の状態であるので、ゼロ電圧スイッチング動作(ZVS動作)することにより、電圧サージも、電流サージも生じさせることなく、共振電流スイッチS2に共振電流i2を流せる状態に切り換わる。

【0085】
(3-6)S2単流モードf
図8のS2単流モードfにおいて、共振電流スイッチS2を流れる共振電流i2は、負荷直列共振回路4Bの自由共振動作に基づく連続性から、図8において矢印m6で示すように、負荷インダクタンスL-負荷抵抗R-共振電流スイッチS2-直列共振用コンデンサCs-負荷インダクタンスL(従って負荷直列共振回路4B-共振電流スイッチS2-負荷直列共振回路4B)の電流ループに切り換わって、図2(C2)に示すように時点tから時点tまでの間の共振波形となって流れ、これにより倍周波ZVS高周波インバータ1は、図2(E)に示すように、負側の1/2周期の主要部に対応する出力電流iを流す。

【0086】
このS2単流モードfは、時点tにおいて、共振電流スイッチS2がゲートトリガ制御回路15S2のゲートトリガ制御信号TG2(図2(A2))によってターンオフ動作することにより終了して、図9に示す全スイッチオフモードgに移行する。

【0087】
(3-7)全スイッチオフモードg
倍周波ZVS高周波インバータ1は、時点tにおいて全スイッチオフモードgに移行したとき、負荷直列共振回路4Bが自由共振動作することにより共振電流スイッチS2に流れていた負荷インダクタンス電流が共振電流としての連続性をもつことから、図9で矢印m7で示すように、負荷インダクタンスL-負荷抵抗R-ZVS用コンデンサCp-直列共振用コンデンサCs-負荷インダクタンスL(従って負荷直列共振回路4B-ZVS用コンデンサVcp-負荷直列共振回路4B)の電流ループを通って出力電流i(図2(E))を流す。

【0088】
この電流はZVS用コンデンサCpに充電電流を流すことになり、その両端電圧Vcp(従って電圧Vs2、共通接続回路3の電圧)が0〔V〕からEd〔V〕に上昇して行く(図2(D))。

【0089】
やがて時点tにおいて共通接続回路3の電圧がEd〔V〕になったとき、逆並列ダイオードD1及びD3に逆方向電圧がかからなくなることにより、負荷直列共振回路4Bから当該逆並列ダイオードD1及びD3を通じて電流が流れる、図10に示すD1・D3複流モードhになる。

【0090】
(3-8)D1・D3複流モードh
図10のD1・D3複流モードhにおいて、負荷インダクタンス電流が共振電流としての連続性をもつことから、倍周波ZVS高周波インバータ1は、矢印m8で示すように、負荷インダクタンスL-負荷抵抗R-逆並列ダイオードD1・D3-直流電源Ed-直列共振用コンデンサCs-負荷インダクタンスL(従って負荷直列共振回路4B-逆並列ダイオードD1・D3-直流電源Ed-負荷直列共振回路4B)の電流ループに出力電流iを流す。

【0091】
このとき、出力電流i(図2(E))は、共振電流波形をもつ給電電流i1及びi3の総和として、負側の共振電流波形となる。

【0092】
このD1・D3複流モードhの給電電流i1及びi3(図2(C1)及び(C3))がゼロクロスする時点t11の直前の時点t10において、倍周波ZVS高周波インバータ1は、トリガ制御回路15S3のゲートトリガ制御信号TG3(図2(A3))によって、第2給電電流スイッチS3をゲートオン制御することにより、図11のS3単流モードiに切り換える。

【0093】
ここで第2給電電流スイッチS3は、そのターンオン動作時において、両端電圧Vs3が逆並列ダイオードD3に電流が流れたVs3=0〔V〕の状態であるので、ゼロ電圧スイッチング動作(ZVS動作)することにより、電圧サージも、電流サージも生じさせることなく、第2給電電流スイッチS3に共振電流i3を流せる状態に切り換わる。

【0094】
(3-9)S3単流モードi
図11のS3単流モードiにおいて、倍周波ZVS高周波インバータ1は、負荷インダクタンス電流が共振電流としての連続性をもつことから、矢印m9で示すように、負荷インダクタンスL-直列共振用コンデンサCs-直流電源Ed-第2給電電流スイッチS3-負荷抵抗R-負荷インダクタンスL(従って負荷直列共振回路4B-直流電源Ed-第2給電電流スイッチS3-負荷直列共振回路4B)の電流ループを通って出力電流iを流す。

【0095】
この結果出力電流iの電流波形は、時点t11から時点t12までの間当該第2給電電流スイッチS3を流れる給電電流i3(図2(C3))によって、図2(E)に示すように1/2周期の主要部に対応する共振波形を呈する。

【0096】
倍周波ZVS高周波インバータ1は、時点t12において、トリガ制御回路15S3のゲートトリガ信号TG3(図2(A3))によって、第2給電電流スイッチS3をターンオフ動作させることにより、図12に示す全スイッチオフモードjに移行させる。

【0097】
(3-10)全スイッチオフモードj
図12の全スイッチオフモードjにおいて、倍周波ZVS高周波インバータ1は、負荷インダクタンス電流が共振電流としての連続性をもつことから、矢印m10で示すように、負荷インダクタンスL-直列共振用コンデンサCs-ZVS用コンデンサCp-負荷抵抗R-負荷インダクタンスL(従って負荷直列共振回路4B-ZVS用コンデンサCp-負荷直列共振回路4B)の電流ループに出力電流iを流す。

【0098】
この出力電流iはZVS用コンデンサCpを放電動作させるので、その両端電圧Vcp(従って電圧Vs2、共通接続回路3の電圧)は、Ed〔V〕から0〔V〕に降下して行く(図2(D))。

【0099】
やがて、ZVS用コンデンサCpの両端電圧Vcpが0〔V〕(従って共通接続回路3が0〔V〕)になると、倍周波ZVS高周波インバータ1は、共振電流スイッチS2の逆並列ダイオードD2の両端電圧が0〔V〕になることにより、当該逆並列ダイオードD2を通して出力電流iを流す図13のD2単流モードkに切り換わる。

【0100】
(3-11)D2単流モードk
図13のD2単流モードkにおいて、倍周波ZVS高周波インバータ1は、誘導加熱負荷11の負荷インダクタンス電流が、共振電流としての連続性をもつことから、矢印m11で示す方向に、負荷インダクタンスL-直列共振用コンデンサCs-逆並列ダイオードD2-負荷抵抗R-負荷インダクタンスL(従って負荷直列共振回路4B-逆並列ダイオードD2-負荷直列共振回路4B)の電流ループに出力電流iを流す。

【0101】
このときこの逆並列ダイオードD2を通る共振電流i2は、共振波形をもっていることにより出力電流i(図2(E))は正側の共振電流波形となる。

【0102】
やがて時点t14において逆並列ダイオードD2を流れている共振電流i2がゼロクロスすると、当該共振電流i2は逆並列ダイオードD2を流れることができなくなって、次のスイッチングモード切換動作繰返し周期Tの時点tから全スイッチオフモードaに移って、ZVS用コンデンサCpの充電を開始する。

【0103】
(4)実施の形態の作用効果
以上の構成において、倍周波ZVS高周波インバータ1は、順次繰り返されるスイッチングモード切換動作繰返し周期Tの時点t~t、t~t、t11~t12のタイミングにおけるS1単流モードc(図5)、S2単流モードf(図8)及びS3単流モードi(図11)において、順次第1給電電流スイッチS1、共振電流スイッチS2及び第2給電電流スイッチS3から、共通接続回路3を介して、誘導加熱負荷11に流れる給電電流及び共振電流によって、出力電流iとして自由共振波形を有する3つの1/2周期分に対応する電流を流す(図2(E))。

【0104】
これに対してスイッチングモード切換動作繰返し周期Tの時点t~tのタイミングにおけるD1・D3複流モードb(図4)において、共通接続回路3を通して給電電流回路2を構成する逆並列ダイオードD1及びD3に対して負荷直列共振回路4Bによってその自由共振動作に基づいて発生される共振電流を負方向の給電電流i1及びi3として流すことにより、自由共振波形を有する1つの1/2周期分に対応する電流を流す(図2(E))。

【0105】
この結果D1・D3複流モードbの期間における出力電流iは、2つの逆並列ダイオードD1及びD3を流れる共振電流の総和として共振信号の波形を形成する。

【0106】
かくして各スイッチングモード切換動作繰返し周期Tにおいて、第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3並びに共振電流スイッチS2のオン動作期間が出力電流iの1/2周期3回分に相当する自由振動波形を形成するのに対して、残る1回分の1/2周期の電流を電流スイッチを用いずに、逆並列ダイオードD1及びD3を利用して、つなぎ波形となる自由振動波形を形成することができる。

【0107】
このような機能は、(1)式のように出力周波数fをトリガ周波数fに対してf=2fに設定すると共に、(2)式のように直列共振周波数fをf<fに設定し、これにより(3)式のf>(1/2)fのようにfが(1/2)fよりやや大きい値に設定することにより、実現できる。

【0108】
この結果、倍周波ZVS高周波インバータ1は、第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3並びに共振電流スイッチS2のトリガゲート周波数fに対して倍周波の出力周波数f(=2f)の自由振動波形を有する出力電流を得ることができる。

【0109】
また、ZVS用コンデンサCpは、本来第1及び第2給電電流スイッチS1及びS3と共振電流スイッチS2とをゲートトリガ動作させる際に、その両端電圧が必ず0〔V〕になっている状態を作り出す目的で用いられているが、上述の実施の形態においては、当該ゼロ電圧スイッチング動作をさせながら当該ZVS用コンデンサCpを利用してD1・D3複流モードbにおいて逆並列ダイオードD1及びD3を通じて出力電流iを流す期間を形成することにより、当該D1・D3の複流モードに対応する出力電流iを含んで全体として2周期分の共振波形を形成できる。

【0110】
かくして各スイッチのゲートトリガ周波数fに対して2倍の出力周波数fを有する出力電流iを得るにつき、これを3つのスイッチ素子で実現できることにより、D1・D3複流モードbにおける出力電流iを形成するための1つ分のスイッチ素子及びその制御系の構成を簡略化することができる。

【0111】
(5)実施例
上述の実施の形態を構成する実施例として、直流電源Edの電圧Ed=270〔V〕、負荷抵抗R=0.4〔Ω〕、負荷インダクタンスL=40〔μH〕、直列共振用コンデンサCs=0.18〔μF〕、ZVS用コンデンサCp=0.05〔μF〕、デッドタイム角5度に設定した場合において、出力周波数f〔kHz〕=2倍のゲートトリガ周波数2f〔kHz〕を図14に示すように60〔kHz〕から66〔kHz〕まで変化させたところ、出力電力P〔kW〕は6.554〔kW〕から0.314〔kW〕まで変化すると共に、出力電流I(=IR)〔A〕は128〔A〕から28〔A〕まで変化することを確認できた。

【0112】
(6)デッドタイムの意義
上述の実施の形態において用いたデッドタイムTd1(=t~t)、Td2(=t~t11)は、通常1~3〔μS〕と時間で設定する場合が多いが、このようにすると、周波数の変化によって、デッドタイムとしての角度が変わってしまうので、上述の実施の形態においては、敢えて、デッドタイムを角度表示Tdangle(度)で表示している。

【0113】
このデッドタイムはZVS動作(サージ電圧、電流を発生せず、スイッチング損失を抑制できる)を実現する上で、極めて重要で、モードa、モードd、モードg、モードjのZVS動作期間中は、絶対にゲート信号をスイッチに印加してはならない。

【0114】
すなわち、ゲート信号を各スイッチに印加するタイミングは
ZVS動作期間<Tdangle(度)<(ZVS動作期間+逆並列接続ダイオード導通期間)
ということで、幅があり、逆並列接続ダイオードの導通期間中にゲートトリガ信号の導通開始時点(すなわち導通開始角度)を設定しておけば良いことになる。

【0115】
(7)他の実施の形態
(7-1)上述の実施の形態においては、逆並列ダイオードD1及びD3に共振電流を流したD1・D3複流モードb後にこれに続いて第1給電電流スイッチS1に給電電流を流すようにした場合について述べたが、この順序を入れ換えて、逆並列ダイオードD1及びD3に共振電流を流したD1・D3複流モードb後これに続いて第2給電電流スイッチS3を通じて給電電流を流すようにしても、上述の場合と同様の効果を得ることができる。

【0116】
(7-2)上述の実施の形態においては、D1・D3複流モードbにおいて、逆並列ダイオードD及びD3に、時点tから時点tまでの期間に、出力電流iの1/2周期に対応する給電電流i1及び共振電流i3を流すことにより、ゲートトリガ信号の信号派の出力電流iを得るようにしたが、D1・D3複流モードbの動作期間を変更する(例えば短くする)ことによって出力電流iの周波数を変更するようにしても、上述の場合と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明はできるだけ簡便な用途に用いられる高周波インバータに適用できる。
【符号の説明】
【0118】
1……倍周波ZVS高周波インバータ、2……給電電流回路、2A……共通母線、3……共通接続回路、4……共振電流回路、4A……共通母線、4B……負荷直列共振回路、Ed……直流電源、S1、S3……第1、第2給電電流スイッチ、S2……共振電流スイッチ、11……誘導加熱負荷、R……負荷抵抗、L……負荷インダクタンス、Cs……直列共振用コンデンサ、Cp……ZVS用コンデンサ、D1~D3……逆並列ダイオード。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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