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明細書 :リチウムイオン電池用負極材料およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-063714 (P2014-063714A)
公開日 平成26年4月10日(2014.4.10)
発明の名称または考案の名称 リチウムイオン電池用負極材料およびその製造方法
国際特許分類 H01M   4/1395      (2010.01)
H01M   4/38        (2006.01)
H01M   4/62        (2006.01)
FI H01M 4/1395
H01M 4/38 Z
H01M 4/62 Z
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2013-035263 (P2013-035263)
出願日 平成25年2月26日(2013.2.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 平成24年3月1日 一般社団法人表面技術協会発行の「表面技術協会第125回講演大会 講演要旨集」に発表
特許法第30条第2項適用申請有り 平成24年9月12日 一般社団法人表面技術協会発行、表面技術協会第126回講演大会講演要旨集 平成24年11月10日 中部化学関係学協会支部連合協議会発行、第43回中部化学関係学協会支部連合秋季大会講演予稿集
優先権出願番号 2012046694
優先日 平成24年3月2日(2012.3.2)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】新井 進
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100077621、【弁理士】、【氏名又は名称】綿貫 隆夫
【識別番号】100146075、【弁理士】、【氏名又は名称】岡村 隆志
【識別番号】100092819、【弁理士】、【氏名又は名称】堀米 和春
【識別番号】100141634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 善博
【識別番号】100141461、【弁理士】、【氏名又は名称】傳田 正彦
審査請求 未請求
テーマコード 5H050
Fターム 5H050AA07
5H050AA19
5H050BA16
5H050CB11
5H050DA09
5H050DA10
5H050EA08
5H050FA16
5H050GA10
5H050GA13
5H050GA24
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA12
要約 【課題】簡易な製造工程で、コストの低減化が図れるリチウムイオン電池用負極材料の製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明に係るリチウムイオン電池用負極材料の製造方法は、アルカリ性スズめっき浴にカーボンナノチューブを分散させ、集電体上に電解めっきにより、カーボンナノチューブが混入したスズめっき皮膜を形成するリチウムイオン電池用負極材料の製造方法であって、前記カーボンナノチューブの分散剤にトリメチルステアリルアンモニウムクロリドを用いることを特徴とする。
【選択図】図11
特許請求の範囲 【請求項1】
アルカリ性スズめっき浴にカーボンナノチューブを分散させ、集電体上に電解めっきにより、カーボンナノチューブが混入したスズめっき皮膜を形成するリチウムイオン電池用負極材料の製造方法であって、
前記カーボンナノチューブの分散剤にトリメチルステアリルアンモニウムクロリドを用いることを特徴とするリチウムイオン電池用負極材料の製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ性スズめっき浴にピロリン酸浴を用いることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン電池用負極材料の製造方法。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブに、長さの異なる複数種類のカーボンナノチューブを用いることを特徴とする請求項1または2記載のリチウムイオン電池用負極材料の製造方法。
【請求項4】
カーボンナノチューブがトリメチルステアリルアンモニウムクロリドの分散剤により分散されたアルカリ性スズめっき浴を用いて、集電体上に電解めっきによりカーボンナノチューブが混入したスズめっき皮膜が形成されてなるリチウムイオン電池用負極材料。
【請求項5】
前記アルカリ性スズめっき浴がピロリン酸浴であることを特徴とする請求項4記載のリチウムイオン電池用負極材料。
【請求項6】
長さの異なる複数種類のカーボンナノチューブがスズめっき皮膜中に混入していることを特徴とする請求項4または5記載のリチウムイオン電池用負極材料。
【請求項7】
スズめっき皮膜表面に、複数のスズめっき粒子が形成され、該複数のスズめっき粒子がカーボンナノチューブにより連結されていることを特徴とする請求項4~6いずれか1項記載のリチウムイオン電池用負極材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用負極材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車用二次電池には、現在のリチウムイオン電池よりもエネルギー密度の大きな蓄電池が必要とされている。現在のリチウムイオン電池の電極材料には、一般的に正極材料としてコバルト酸リチウム等の金属酸化物、負極材料としてグラファイトが使用されている。リチウムイオン電池のエネルギー密度を向上させるには現在の電極材料よりも比容量の大きな電極材料への変更が必要である。比容量の大きな負極材料としてスズが注目されている。スズはグラファイトの約3倍の比容量をもつ。しかし、スズはリチウムイオンの充放電時に大きな体積変化が起こり、場合によっては電極から脱離し、充放電特性が劣化する。充放電時のスズの体積変化による劣化を抑制できれば、充放電による特性劣化が低減され、有望な次世代リチウムイオン電池の負極材料となる。
【0003】
このため、充放電時のスズの体積変化を抑制する工夫が種々検討されている。特許文献1には、シリコン、あるいはスズを含む複数種類の金属合金粒子の表面にナノチューブ等を付着させ、集電体の表面に結合材(ペースト)で固着させて、リチウムイオン電池の負極材料に形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-100244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の負極材料によれば、充放電時のスズの体積変化による劣化を抑制することが期待できる。しかしながら、特許文献1のものでは、複数の金属を合金化させるなど、その製造工程が複雑で、コスト高となる課題がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、簡易な製造工程で、コストの低減化が図れるリチウムイオン電池用負極材料およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリチウムイオン電池用負極材料の製造方法は、アルカリ性スズめっき浴にカーボンナノチューブを分散させ、集電体上に電解めっきにより、カーボンナノチューブが混入したスズめっき皮膜を形成するリチウムイオン電池用負極材料の製造方法であって、前記カーボンナノチューブの分散剤にトリメチルステアリルアンモニウムクロリドを用いることを特徴とする。
【0008】
前記アルカリ性スズめっき浴にピロリン酸浴を好適に用いることができる。
前記カーボンナノチューブに、長さの異なる複数種類のカーボンナノチューブを用いることができる。
【0009】
また本発明に係るリチウムイオン電池用負極材料は、カーボンナノチューブがトリメチルステアリルアンモニウムクロリドの分散剤により分散されたアルカリ性スズめっき浴を用いて、集電体上に電解めっきによりカーボンナノチューブが混入したスズめっき皮膜が形成されたことを特徴とする。
【0010】
前記アルカリ性スズめっき浴がピロリン酸浴であることを特徴とする。
また、長さの異なる複数種類のカーボンナノチューブがスズめっき皮膜中に混入していることを特徴とする。
また、スズめっき皮膜表面に、複数のスズめっき粒子が形成され、該複数のスズめっき粒子がカーボンナノチューブにより連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電解めっきによりリチウムイオン電池用負極材料を製造できるので、製造工程を簡略化できる。
また、CNTの分散剤としてトリメチルステアリルアンモニウムクロリド(TMSAC)を用いることにより、CNTをめっき浴中に好適に分散できるだけでなく、集電体表面に電解スズめっき皮膜を形成でき、しかも、スズめっき皮膜中にCNTを良好に取り込むことができる。このように、スズめっき皮膜中にCNTが良好に取り込まれることから、スズめっき皮膜の強度が増大し、リチウムイオン電池の負極材料に用いたとき、充放電時にスズに体積変化が生じたとしても、スズめっき皮膜の破壊を防止でき、電極からの剥離を防止でき、これにより充放電特性の劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ピロリン酸浴において、TMSACの添加量を変えためっき液の電流-電位曲線を示すグラフである。
【図2】TMSACを添加しない浴とTMSACを添加した浴で析出させたスズめっき皮膜の表面のFE-SEM写真を示す。
【図3】ピロリン酸浴+VGCFの浴で、0.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
【図4】ピロリン酸浴+VGCFの浴で、1Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
【図5】ピロリン酸浴+VGCFの浴で、1.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
【図6】ピロリン酸浴+MWNT-7の浴で、0.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
【図7】ピロリン酸浴+MWNT-7の浴で、1Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
【図8】ピロリン酸浴+MWNT-7の浴で、1.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
【図9】ピロリン酸浴+ILJINの浴で、0.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
【図10】ピロリン酸浴+ILJINの浴で、1Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
【図11】ピロリン酸浴+ILJINの浴で、1.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
【図12】図7の拡大写真である。
【図13】図8の拡大写真である。
【図14】図9の拡大写真である。
【図15】めっき浴の調整の段階でめっき浴を1日以上撹拌したピロリン酸浴+ILJINの浴で、0.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
【図16】めっき浴の調整の段階でめっき浴を1日以上撹拌したピロリン酸浴+ILJINの浴で、1Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
【図17】めっき浴の調整の段階でめっき浴を1日以上撹拌したピロリン酸浴+ILJINの浴で、1.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
【図18】スズ-CNT複合めっき皮膜を研磨した後の表面のFE-SEM写真である。
【図19】スズ-CNT複合めっき皮膜およびスズめっき皮膜の断面のFE-SEM写真である。
【図20】スズめっき皮膜の充放電試験の結果を示すグラフである。
【図21】スズ-CNT複合めっき皮膜の充放電試験の結果を示すグラフである。
【図22】スズめっき皮膜およびスズ-CNT複合めっき皮膜の充放電試験結果におけるサイクル数と、放電容量および効率の関係を示すグラフである。
【図23】充放電試験後におけるスズめっき皮膜の表面のFE-SEM写真である。
【図24】充放電試験後におけるスズ-CNT複合めっき皮膜の表面のFE-SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
本実施の形態に係るリチウムイオン電池用負極材料の製造方法は、前記のように、アルカリ性スズめっき浴にカーボンナノチューブを分散させ、集電体上に電解めっきにより、カーボンナノチューブが混入したスズめっき皮膜を形成するリチウムイオン電池用負極材料の製造方法であって、前記カーボンナノチューブの分散剤にトリメチルステアリルアンモニウムクロリドを用いることを特徴とする。

【0014】
アルカリ性スズめっき浴にはピロリン酸浴を好適に用いることができるが、スズ酸カリウム(ナトリウム)、水酸化カリウム(ナトリウム)、過酸化水素水などからなる、いわゆるアルカリ性スズめっき浴を用いてもよい。

【0015】
表1にピロリン酸浴の浴組成例を示す。
【表1】
JP2014063714A_000003t.gif
なお、TMSAC:トリメチルステアリルアンモニウムクロリド
CNT:カーボンナノチューブ
VGCF(登録商標:昭和電工製:MWCNT直径150nm、長さ10~15μm)、
MWNT-7:直径約50nm、長さ10~15μm
ILJIN:直径10~20nm、長さ10~15μm

【0016】
本実施の形態における特徴は、CNTの分散剤に、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド(TMSAC)を用いた点にある。
一般的にスズめっきは皮膜を形成しにくく、基材上に粒状(粉状)に析出し、こするなどすると簡単に脱落してしまう。
この点、本実施の形態では、CNTの分散剤としてTMSACを用いたところ、CNTをめっき浴中に好適に分散させるだけでなく、基材表面に電解スズめっき皮膜を形成させ、しかも、スズめっき皮膜中にCNTを良好に取り込むことがわかった。すなわち、通常は皮膜を形成しにくいスズめっきにおいて、めっき浴中にTMSACを添加するだけでスズ-CNT複合めっき皮膜を形成させることがわかった。

【0017】
このように、スズめっき皮膜中にCNTが良好に取り込まれることから、スズめっき皮膜の強度が増大し、リチウムイオン電池の負極材料に用いたとき、充放電時にスズに体積変化が生じたとしても、スズめっき皮膜の破壊を防止でき、電極からの剥離を防止でき、これにより充放電特性の劣化を防止できる。

【0018】
なお、上記CNTのうち、太さの細い、MWNT-7、ILJINのスズめっき皮膜中への取り込み性は特に良好であった。
また、太さの異なる複数種類のCNTをめっき液中に添加した場合にも、分散剤にTMSACを用いることによって、CNTのめっき液中への分散性、およびスズめっき皮膜の膜形成性は良好で、また、太さの異なる複数種類のCNTがスズめっき皮膜中に取り込まれることがわかった。このように、太さの異なる複数種類のCNTがスズめっき皮膜中に取り込まれることで、スズめっき皮膜の強度がさらに増し、充放電特性が向上する。
【実施例1】
【0019】
以下実施例を説明する。
前記液組成のピロリン酸浴を用いて、下記の条件により、ハルセル試験を行った。
・前処理
アルカリ脱脂5min(60℃)、10%硫酸浸漬45sec(60℃)
・電析試験条件
電流規制法 電流密度:0.5Adm-2、1Adm-2、1.5Adm-2
通電量:300C、アノード:純Sn板、カソード:Cu板、温度:25℃
撹拌:スターラー撹拌、セル:スマートセル(容量:250mL)
・膜評価
微細構造:電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)
【実施例1】
【0020】
まず、CNTの分散剤として添加するトリメチルステアリルアンモニウムクロリド(TMSAC)の特性について検討した。
前記ピロリン酸浴において、TMSACの添加量を変えためっき液によるスズの析出挙動を、電流-電位曲線の測定により評価し、また、電析させたスズめっき皮膜の表面状態をFE-SEM写真で観察した。
図1は、上記電流-電位曲線である。作用電極に銅、対極にスズ、参照電極に飽和カロメル電極(SCE)を用いた。図1で、曲線(a)、(b)、(c)は、それぞれTMSAC無添加、1.0×10-4M添加、5.0×10-4M添加した場合の曲線を示す。
図1からわかるように、TMSACを添加していない浴の曲線(a)に対して、TMSACを添加した浴の曲線(b)、(c)は負側にシフトし、またTMSACの添加量が多くなるほど負側へのシフト量が増大する。このことから、TMSACがスズの析出を抑制していることがわかる。
図2は、電流密度0.5Adm-2で電析させたスズめっき皮膜の表面のFE-SEM写真を示す。TMSACを添加していない浴からはスズの巨大な樹状析出が観察され、またCNTが取り込まれていないことが観察されたが(図2(a))、TMSACを5.0×10-4M添加した浴においては、スズの樹状析出が抑制され、比較的平滑なめっき皮膜が得られ、またCNTが取り込まれていることがわかる(図2(b))。
【実施例1】
【0021】
次に、種々のCNTを添加した浴において電析試験を行った場合の電流効率を表2に示す。
【表2】
JP2014063714A_000004t.gif
なお、1)ピロリン酸浴+VGCF 0.5Adm-2
2)ピロリン酸浴+VGCF 1Adm-2
3)ピロリン酸浴+VGCF 1.5Adm-2
4)ピロリン酸浴+MWNT-7 0.5Adm-2
5)ピロリン酸浴+MWNT-7 1Adm-2
6)ピロリン酸浴+MWNT-7 1.5Adm-2
7)ピロリン酸浴+ILJIN 0.5Adm-2
8)ピロリン酸浴+ILJIN 1Adm-2
9)ピロリン酸浴+ILJIN 1.5Adm-2
【実施例1】
【0022】
図3は1)ピロリン酸浴+VGCFの浴で、0.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真、図4は2)ピロリン酸浴+VGCFの浴で、1Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真、図5は3)ピロリン酸浴+VGCFの浴で、1.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
図5から明らかなように、太さの太いVGCFの場合、1.5Adm-2程度の高い電流密度とすると、めっき皮膜中へのCNTの取り込み性がよくなる。
【実施例1】
【0023】
図6は4)ピロリン酸浴+MWNT-7の浴で、0.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真、図7は5)ピロリン酸浴+MWNT-7の浴で、1Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真、図8は6)ピロリン酸浴+MWNT-7の浴で、1.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。
図8から明らかなように、中位の太さのMWNT-7の場合も、1.5Adm-2程度の高い電流密度とすると、めっき皮膜中へのCNTの取り込み性がよくなる。
【実施例1】
【0024】
図9は7)ピロリン酸浴+ILJINの浴で、0.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真、図10は8)ピロリン酸浴+ILJINの浴で、1Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真、図11は9)ピロリン酸浴+ILJINの浴で、1.5Adm-2の電流密度で電解めっきした場合のスズめっき皮膜のFE-SEM写真である。また、図12は図9の、図13は図10の、図14は図11のさらなる拡大写真である。
図10、図13から明らかなように、太さの細いILJINの場合には、1.0Adm-2程度の電流密度とすると、めっき皮膜中へのCNTの取り込み性がよくなる。また、細いILJINの場合が、最もスズめっき皮膜中への取り込み性が良好であった。
【実施例1】
【0025】
図15~図17は、ピロリン酸浴+ILJINの浴で、めっき浴の調整の段階でめっき浴を1日以上撹拌した浴を用いて、それぞれ0.5Adm-2、1Adm-2、1.5Adm-2の電流密度で電解めっきを行った場合のスズめっき皮膜の表面のFE-SEM写真である。
図から明らかなように、スズめっき皮膜表面に、複数のスズめっき粒子が形成され、該複数のスズめっき粒子がCNT(カーボンナノチューブ)により連結された構造のスズめっき皮膜が形成されている。図9~図14の場合とめっき皮膜の性状が異なるのは、めっき液の撹拌条件の相違からと考えられる。
このように、スズめっき皮膜表面が多数のスズめっき粒子で覆われ、表面積が増大することから、電極反応が良好になり、また、リチウムイオンがスズめっき粒子の隙間に入りこむことから、スズめっき皮膜の体積変形が抑制され、さらに、スズめっき粒子がCNTで連結されていることから、スズめっき粒子の脱落が防止され、充放電特性に優れるものとなる。
【実施例2】
【0026】
図18は、Kが1M、Snが0.25M、TMSACが5.0×10-2M、MWNT-7が5gdm-3のめっき浴を用いてスズ-CNT複合めっき皮膜を作製し、スズ-CNT複合めっき皮膜を研磨した後の表面のFE-SEM写真を示す。スズ-CNT複合めっき皮膜を作製したときの、電析試験条件は以下の通りである。
電流規制法 電流密度:0.5Adm-2
通電量:120C、アノード:Sn板、カソード:Cu板、温度:25℃
撹拌:スターラー撹拌、撹拌速度:300rpm、セル:ビーカーセル
【実施例2】
【0027】
図18に示すように、CNTが取り込まれてスズめっき粒子の粒界に存在している。これは、CNTが取り込まれてその箇所にスズめっき粒子の粒界ができたためである。
【実施例2】
【0028】
図19(a)は、図18に示したスズ-CNT複合めっき皮膜の作成条件と同じ条件で作製したスズ-CNT複合めっき皮膜の断面のFE-SEM写真である。比較として、図19(b)には、CNTを添加せずに作製したスズめっき皮膜の断面のFE-SEM写真を示す。図19(a)に示すように、CNTがスズめっき皮膜中に取り込まれると表面が荒れて凹凸ができ、スズ-CNT複合めっき皮膜の表面積が増える。これにより、リチウムイオンと反応するスズ-CNT複合めっき皮膜の表面積が増加して、より好適にリチウムイオン電池用負極材料として用いることができる。
【実施例3】
【0029】
めっき皮膜の充放電試験を以下の条件で行った。
セル:2電極式コインセル、作用電極:スズ系めっき皮膜、対極:リチウム箔
電解質:1M LiPF(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1vol%)
測定電位範囲:0.02‐1.5V
電流値(充放電速度):100mAg-1(≒0.1C)
サイクル数:40Cycles
【実施例3】
【0030】
図20および図21は、充放電試験の結果を示すグラフであり、図20はスズめっき皮膜、図21はスズ-CNT複合めっき皮膜の結果である。なお、横軸は放電容量、縦軸は電圧である。電極に生成されためっき皮膜の厚さを同じにして比較した。それぞれのグラフは1回、5回、10回、20回、30回のサイクル試験を行ったときの充放電曲線である。図21に示すように1gあたりの容量が増えて、スズ-CNT複合めっき皮膜の方が大容量化している。
【実施例3】
【0031】
図22は、実施例3のスズめっき皮膜、スズ-CNT複合めっき皮膜の充放電試験における効率を示すグラフである。横軸にサイクル数を示し、左の縦軸に各サイクル試験回数後の放電容量と右の第2縦軸に効率(放電量/充電量×100(%))を示す。効率はいずれのめっき皮膜でもサイクル数の増加に伴い100%近くになり、容量はスズ-CNT複合めっき皮膜の方が大きく、電気を多く貯め込むことができる。
【実施例3】
【0032】
図23、図24に充放電試験を10サイクル行った後におけるめっき皮膜の表面のFE-SEM写真を示す。図23はスズめっき皮膜であり、図24はスズ-CNT複合めっき皮膜である。図23に示すスズめっき皮膜だけの場合は、スズめっき皮膜が崩落して基板が露出しているが、図24に示すスズ-CNT複合めっき皮膜の場合は、CNTがスズめっき皮膜中に入り込み、基板上にスズめっき皮膜が多く残っている。充放電試験において、充電されてスズめっき皮膜にリチウムイオンが取り込まれると、スズめっき皮膜の体積は膨張する。そして、放電されると充電されたスズめっき皮膜からリチウムイオンが放出して体積は縮小する。CNTを含まないスズめっき皮膜の場合は、体積が縮小するときにめっき皮膜が割れて基板から崩落してしまう。しかし、スズ-CNT複合めっき皮膜の場合は、CNTがめっき皮膜に含まれることで繊維強化材としての役目を果たし、めっき皮膜同士を繋ぎ止めている。これにより、CNTを添加することでスズめっき皮膜が基板から崩落しにくくなり、試験回数が増加しても容量がスズめっき皮膜のみと比べて多くなる。
【実施例3】
【0033】
また、本実施形態のリチウムイオン電池用負極材料に用いられるカーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブだけではなく、直径が0.5~2nmの単層カーボンナノチューブを用いることができる。この単相カーボンナノチューブを用いて作製されたリチウムイオン電池用負極材料を、トリメチルステアリルアンモニウムクロリドを用いて分散させれば、強度、充放電特性が向上したスズ-CNTめっき皮膜を作製できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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