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明細書 :プラスチック複合材料の処理方法及び処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6164581号 (P6164581)
公開番号 特開2014-177523 (P2014-177523A)
登録日 平成29年6月30日(2017.6.30)
発行日 平成29年7月19日(2017.7.19)
公開日 平成26年9月25日(2014.9.25)
発明の名称または考案の名称 プラスチック複合材料の処理方法及び処理装置
国際特許分類 C08J  11/16        (2006.01)
B09B   3/00        (2006.01)
B07B   1/06        (2006.01)
B07B   9/00        (2006.01)
B01J  21/06        (2006.01)
B01J  23/26        (2006.01)
FI C08J 11/16 ZAB
B09B 3/00 304P
B07B 1/06
B07B 9/00 Z
B01J 21/06 M
B01J 23/26 M
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2013-051125 (P2013-051125)
出願日 平成25年3月14日(2013.3.14)
審査請求日 平成28年3月10日(2016.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】水口 仁
【氏名】塚田 祐一郎
【氏名】鈴木 悠介
【氏名】高橋 宏雄
審査官 【審査官】増田 健司
参考文献・文献 再公表特許第2009/004801(JP,A1)
特開2008-221088(JP,A)
特開2005-48160(JP,A)
特開2012-211223(JP,A)
特開2005-139440(JP,A)
国際公開第2007/086348(WO,A1)
特開平11-116727(JP,A)
特開2012-240035(JP,A)
調査した分野 C08J 11/16
B01J 21/06
B01J 23/26
B07B 1/06
B07B 9/00
B09B 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
熱活性化された半導体の酸化作用を利用して、プラスチック複合材料である被処理物を分解処理するプラスチック複合材料の処理方法であって、
酸素の存在下、半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度領域で、粒体状に形成された基材の表面に金属粒子を高速噴射して金属層を形成し、前記金属層を酸化処理して酸化物半導体が被着されてなる酸化物触媒体を作用体として使用し、前記酸化物触媒体に前記被処理物を接触させ、前記正孔の酸化力を利用して被処理物を分解し、前記被処理物を分解処理する際に発生するガスを、半導体が担持された通気性を有する触媒担持ブロックと、該触媒担持ブロックを加熱して半導体を熱活性化するヒータとを備える気体の浄化装置を通して浄化することを特徴とするプラスチック複合材料の処理方法。
【請求項2】
前記酸化物触媒体を用いて被処理物を分解した後、
分解処理後に残留する被処理物の残留物と分解処理に使用した酸化物触媒体との混合物から、メッシュ体を用いるふるい分けにより、酸化物触媒体を分別することを特徴とする請求項1記載のプラスチック複合材料の処理方法。
【請求項3】
前記粒体状に形成された基材は球体状に形成された基材であることを特徴とする請求項1または2記載のプラスチック複合材料の処理方法。
【請求項4】
前記球体状に形成された基材はセラミックボールからなる基材であることを特徴とする請求項3記載のプラスチック複合材料の処理方法。
【請求項5】
粒体状に形成された基材の表面に金属粒子を高速噴射して金属層を形成し、前記金属層を酸化処理して酸化物半導体が被着されてなる酸化物触媒体を利用して、プラスチック複合材料である被処理物を分解処理するプラスチック複合材料の処理装置であって、
前記酸化物触媒体に前記被処理物を接触させて収容し、酸素の存在下、前記酸化物触媒体を半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度領域に加熱して半導体の熱活性作用による酸化作用を被処理物に作用させることにより被処理物を分解する加熱炉を備え、前記加熱炉には、半導体が担持された通気性を有する触媒担持ブロックと、該触媒担持ブロックを加熱して半導体を熱活性化するヒータとを備える気体の浄化装置が付設されていることを特徴とするプラスチック複合材料の処理装置。
【請求項6】
前記被処理物を分解処理した後に残留する被処理物の残留物と、分解処理に使用した酸化物触媒体との混合物から、メッシュ体を用いるふるい分けにより、酸化物触媒体を分別する分別装置を備えることを特徴とする請求項5記載のプラスチック複合材料の処理装置。
【請求項7】
前記酸化物触媒体として、セラミックボールからなる基材の表面に酸化物半導体が被着されてなる粒体物を使用することを特徴とする請求項5または請求項6記載のプラスチック複合材料の処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維強化プラスチック、金属部品や電子部品をモールド成形したプラスチック複合製品等のプラスチック複合材料の分解処理方法及び分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、有機物、ポリマー、ガス体等の被処理物を分解する方法として、半導体を真性領域となる温度(350~500℃)に加熱して被処理物に接触させることにより、被処理物を分解する方法について提案してきた(特許文献1等)。この分解作用は、温度上昇と共に半導体内に生成される大量の電子・正孔キャリヤーの内、強力な酸化力を持つ正孔が被処理物(有機化合物)に接触すると、被処理物から結合電子を奪い、カチオンのラジカルを化合物内に生成し、化合物全体を不安定化し、ラジカル開裂を誘起して、化合物をエチレンやプロパンのような小分子に裁断し、裁断された小分子が空気中の酸素と反応して、炭酸ガスと水に完全分解されるメカニズムである(非特許文献1、2)。
【0003】
この半導体の熱活性を利用する分解方法は、有機化合物の分解にきわめて有効であり、ポリマーの分解(特許文献1)や有害ガスを含む気体の浄化(特許文献2、3、4)等に好適に用いることができる。この分解方法では有機化合物を選択的に分解することから、廃棄処理が問題となっている繊維強化プラスチック(FRP)等のプラスチック複合材料からなる廃棄物や、廃ポリマー等の一般のプラスチック製品の廃棄物の処理に効果的に利用することができる。
【0004】
例えば、被処理物が板状のものであれば、多孔質基板に半導体触媒を担持して形成した触媒ブロックで被処理物を挟むようにして分解することができ、被処理物が複雑な形状のものの場合は、半導体の分散液に被処理物を浸漬し、被処理物の表面に7μm程度の半導体の被膜を形成し、被処理物全体を350~500℃に加熱して分解することができる。また、有害化合物を含む気体を処理する場合は、触媒担持ハニカムに被処理気体を通過させる方法(特許文献4)、金属等の球体の表面に半導体被膜を形成した酸化物触媒体に被処理気体を接触させて通過させる方法(特許文献3)によって処理することができる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2005-139440号公報
【特許文献2】特開2008-221088号公報
【特許文献3】特開2010-214359号公報
【特許文献4】特開2013-22564号公報
【0006】

【非特許文献1】J.Mizuguchi and T.Shinbara: Disposal ofused optical disks utilizing thermally-excited holes in titanium dioxide athigh temperatures: A complete decomposition ofpolycarbonate,J.Appl.Phys.96,3514-3519(2004).
【非特許文献2】T.Shinbara,T.Makino and J. Mizuguchi:Complete decomposition ofpolymers by means of thermally generated holes at high temperatures in titaniumdioxide and its decomposition mechanism, J.Appl.Phys 98,044909 1-5 (2005).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した半導体の熱活性を利用して有機化合物を分解処理する方法は、プラスチック複合材料等の廃棄物の処理に有効に使用することができる。ところで、プラスチック材料の廃棄物は種々雑多であり、破砕処理がされたりすることから、大きさや形態も様々で、大きいものから細片状、粉末状のものまである。したがって、さまざまな形態の被処理物に対しても効率的に分解処理することができる処理方法が求められている。とくに、ガラス繊維や炭素繊維、電子部品、金属部品等の分解されずに残ってしまう残留物が発生するプラスチック材料を取り扱う場合には、分解処理後に残留する被処理物の残留物と分解に使用した半導体との混合物から半導体を分離して回収することが厄介であり、半導体を再利用するといったことが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、繊維強化プラスチックあるいはプラスチック複合製品等の被処理物で、分解処理後に残留物が残るものを処理対象とする場合に、被処理物を確実に分解処理することができ、かつ分解に処理した半導体の再利用を可能にするプラスチック複合材料の処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るプラスチック複合材料の処理方法は、熱活性化された半導体の酸化作用を利用して、プラスチック複合材料である被処理物を分解処理するプラスチック複合材料の処理方法であって、酸素の存在下、半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度領域で、粒体状に形成された基材の表面に金属粒子を高速噴射して金属層を形成し、前記金属層を酸化処理して酸化物半導体が被着されてなる酸化物触媒体を作用体として使用し、前記酸化物触媒体に前記被処理物を接触させ、前記正孔の酸化力を利用して被処理物を分解し、前記被処理物を分解処理する際に発生するガスを、半導体が担持された通気性を有する触媒担持ブロックと、該触媒担持ブロックを加熱して半導体を熱活性化するヒータとを備える気体の浄化装置を通して浄化することを特徴とする。

【0010】
本発明において処理対象とするプラスチック複合材料は、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維強化プラスチックや、金属部品あるいは電子部品、回路基板等を内包したプラスチック複合品であり、その形態、樹脂材料が限定されるものではない。被処理物のポリマーの種類も、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を問わず、限定されるものではない。ポリマーの例として、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、ポリアミド、ポリイミド、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、石油樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリブテン、フッ素樹脂、ポリアクリレート等の熱可塑性ポリマー、フェノール樹脂、ウレタンフォーム、ポリウレタン、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性ポリマーが挙げられる。
【0011】
熱活性化された半導体の酸化作用を利用して、プラスチック複合材料である被処理物を分解処理する作用は、(1)半導体を真性領域にまで加熱することにより、正孔キャリアーを大量に生成させる、(2)半導体と被処理物との界面において正孔キャリアーの作用により被処理物のポリマーが酸化されてカチオン・ラジカルが生成され、ラジカルがポリマー鎖の中を伝播し、ポリマー鎖全体を不安定化し、巨大ポリマー分子を裁断して小分子ラジカルを生成する(ラジカル開裂:ラジカルの自己増殖)、(3)小分子化されたフラグメントが空気中の酸素と反応して水と二酸化炭素に完全分解(完全燃焼)される作用である。
【0012】
酸化物触媒体は、粒体状に形成された基材の表面に半導体が被着されてなるものであり、粒体状に形成された基材の材質はとくには限定されない。また、粒体状とは球体状、楕円体状、立方体状等の立体形状の粒状に形成された意であり、外形や大きさが限定されるものではない。ただし、酸化物触媒体は被処理物の残留物と分別して再利用するから、分別処理がしやすい形態及び大きさのものを選択するのがよい。酸化物触媒体と称しているのは、基材の表面に被着する半導体として主に酸化物半導体を使用するからである。
【0013】
基材の表面に被着させる半導体は、高温、酸素雰囲気で安定な半導体で、主として酸化物半導体である。この他、CdSやSiCのような半導体も当然のことながら含まれる。酸化物半導体の例としては以下のものが挙げられる。BeO、CaO、CuO、Cu2O、SrO2、BaO、MgO、NiO、CeO2、MnO、GeO、PbO、TiO、VO、ZnO、FeO、PdO、Cu2O、Ag2O、TiO2、Tl2O、MoO2、PbO2、IrO2、RuO2、Ti2O3、ZrO2、Y2O3、Cr2O3、ZrO2、WO3、UO2、MoO3、WO2、SnO2、Co3O4、Sb2O3、Mn3O4、Ta2O5、V2O5、Nb2O5、MnO3、Fe2O3、Y2O2S、MgFe2O4、NiFe2O4、ZnFe2O4、ZnCo2O4、MgCr2O4、FeCrO4、CoCrO4、CoCrO4、ZnCr2O4、CoAl2O4、NiAl2O4

【0014】
酸化物触媒体としては、球体状の基材の表面に半導体が被着されてなる粒体物を使用すること、セラミックボールからなる基材の表面に金属粒子を高速噴射して金属層を形成し、該金属層を酸化処理して酸化物半導体が被着形成されてなる粒体物を使用することが有効である。酸化物触媒体を球体状とすることにより、分別処理が容易になる。また、セラミックボールを基材として酸化物半導体を被着した酸化物触媒体は、基材と酸化物半導体の熱膨張係数が近似することから、熱処理履歴によっても基材から酸化物半導体が剥落しにくく、酸化物触媒体を繰り返し利用することができるという利点がある。これに対し、半導体の小粒子をお菓子の“おこし”のような形に造粒して大粒子とし、分別処理を容易にする方法もある。しかし、機械的な強度が弱く、繰り返しの使用では崩れ易く、長時間の使用には耐えられない。
【0015】
また、本発明方法に係るプラスチック複合材料の処理方法においては、酸化物触媒体を用いて被処理物を分解した後、分解処理後に残留する被処理物の残留物と分解処理に使用した酸化物触媒体との混合物から、メッシュ体を用いるふるい分けにより酸化物触媒体を分離することにより、酸化物触媒体を容易に再利用することができる。
酸化物触媒体は被処理物の残留物の大きさとの兼ね合いから、残留物と確実に分別できる大きさのものを選択し、あわせてメッシュ体も適宜網目のものを使用する。
【0016】
本発明に係るプラスチック複合材料の処理装置は、粒体状に形成された基材の表面に属粒子を高速噴射して金属層を形成し、前記金属層を酸化処理して酸化物半導体が被着されてなる酸化物触媒体を利用して、プラスチック複合材料である被処理物を分解処理するプラスチック複合材料の処理装置であって、前記酸化物触媒体に前記被処理物を接触させて収容し、酸素の存在下、前記酸化物触媒体を半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度領域に加熱して半導体の熱活性作用による酸化作用を被処理物に作用させることにより被処理物を分解する加熱炉を備え、前記加熱炉には、半導体が担持された通気性を有する触媒担持ブロックと、該触媒担持ブロックを加熱して半導体を熱活性化するヒータとを備える気体の浄化装置が付設されていることを特徴とする。
加熱炉により酸化物触媒体を加熱し、基材の表面に被着された酸化物半導体を熱活性作用が生じる温度にまで加熱し、酸化物半導体を被処理物に接触させることにより、被処理物が酸化開始されて被処理物が分解される。

【0017】
被処理物は酸化物触媒体に部分的に接触することで酸化作用が開始されるが、酸化物触媒体と被処理物とを確実に接触させる方法として、加熱炉内で酸化物触媒体と被処理物とを撹拌して相互に接触しやすくさせる方法を利用してもよい。分解処理後には酸化物触媒体と被処理物の残留物とを加熱炉から取り出すから、酸化物触媒体と被処理物とを容器に収容して加熱炉に収納して分解処理を行い、処理後に容器とともに酸化物触媒体と残留物とを取り出すようにするとよい。連続的に分解処理する方法として、酸化物触媒体と被処理物とを搬送コンベヤにより搬送しながら加熱炉中を通過させて分解処理することも可能である。
【0018】
前記加熱炉に、半導体が担持された通気性を有する触媒担持ブロックと、該触媒担持ブロックを加熱して半導体を熱活性化するヒータとを備える気体の浄化装置を付設することにより、被処理物を分解処理する際に発生する有機物を含む排気ガスを浄化装置により浄化して外部に排出することができる。
【0019】
また、前記加熱炉に加えて、被処理物を分解処理した後に残留する被処理物の残留物と、分解処理に使用した酸化物触媒体との混合物から、メッシュ体を用いるふるい分けにより、酸化物触媒体を分別する分別装置を設けることにより、酸化物触媒体を混合物から分別して、効率的に酸化物触媒体を再利用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るプラスチック複合材料の処理方法及び処理装置によれば、被処理物の形態によらずに確実に被処理物を分解処理することができ、酸化物触媒体の再利用を容易に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】酸化物触媒体の構成を示す断面図である。
【図2】表面にTi粒子を被着したアルミナボールと、Ti粒子層を酸化処理したアルミナボールの写真である。
【図3】表面にCr粒子を被着したアルミナボールと、Cr粒子層を酸化処理したアルミナボールの写真である。
【図4】プラスチック複合材料を分解処理する装置例の断面図である。
【図5】表面にCr2O3を被着させたアルミナボールを用いてCFRPを分解処理した状態を示す写真である。
【図6】メッシュ体を用いて酸化物触媒体を分別する方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(酸化物触媒体)
本発明に係るプラスチック複合材料の処理方法は、半導体(酸化物半導体)の熱活性作用によりプラスチック複合材料を構成する有機化合物(ポリマー)を分解する作用を利用するものである。有機化合物の分解に使用する作用体として、本発明では球体等の粒体状とした基材を支持体とし、この基材の表面に半導体を被着形成した酸化物触媒体を使用する。本出願においては、球体等の粒体表面に半導体を被着形成したものを酸化物触媒体と呼ぶ。

【0023】
酸化物触媒体は、たとえばアルミナボールを基材とし、アルミナボールの表面にTi、Cr、Ni、Sn、Zn等の金属を被着させ、基材表面に被着された金属を酸化させることによって作製することができる。これらの金属の酸化物TiO2、Cr2O3、NiO、SnO2、ZnOは、いずれも熱活性作用を有する酸化物半導体であり、これらの酸化物半導体を基材表面に被着形成した粒体物は酸化物触媒体として作用する。
図1は、球体の基材12の表面に半導体14を被着形成した酸化物触媒体10の構成を示す。半導体14は基材12の表面の全面を被覆するように形成されている。

【0024】
アルミナボールの表面にTi、Cr等の金属を被着させる方法としては、金属粒子の高速噴射法、真空蒸着法、スパッタリング法、スラリー塗布法等が利用できる。金属粒子の高速噴射法は、1~2mm程度の金属粒子を200m/s程度の速度で基材の表面に噴射して、基材表面に金属被膜を形成する方法である。金属粒子の高速噴射法は、使用する金属粒子を選ばず、金属膜を形成する基材の材料を選ばないという特徴がある。さらに、バインダーを一切使用しないのも大きな特徴である。また、真空蒸着法やスパッタリング法が高価が装置を必要とし、かつ放射状に蒸発あるいはスパッターされる粒子の一部しか被膜形成に利用できないのに対し、この方法は簡便に安価で基材表面に金属膜を形成することができる。さらに、基材表面に形成された金属膜が基材に堅固に固着して基材から剥離しにくいという利点もある。

【0025】
図2は、高速噴射法を利用して、アルミナボールの表面にTi膜を被着し、酸化処理を施してアルミナボールの表面に半導体であるTiO2を被着形成した酸化物触媒体の例を示す。アルミナボールの表面にTi粒子を噴射してTi被膜を形成するとアルミナボールは黒味の強い灰色の外観となり、酸化処理を施してTi被膜を酸化チタン被膜とすると、酸化チタン特融の純白の外観となる。酸化処理としては、空気中、800℃程度で酸化するか、あるいは湿潤水素を用いて約1000℃で酸化しても良い。図1では、直径2mmと5mmの酸化物触媒体(TiO2/Al2O3)を示す。

【0026】
図3は、同様に、高速噴射法を利用して、アルミナボールの表面にCr粒子を衝突・被着してCr被膜を形成し、次いで酸化処理を施してアルミナボールの表面にCr2O3被膜を形成した酸化物触媒体の例を示す。この例では、酸化処理前後で粒子体の外観は灰色から薄い緑色へと変化する。図3では、直径2mmと5mmの酸化物触媒体(Cr2O3/Al2O3)を示す。

【0027】
なお、アルミナボール等の基材表面に半導体の被膜を形成する場合、金属膜と半導体の膜厚は、膜の機械的強度が保持でき、触媒としての機能が発揮できる膜厚であればよく、通常は、1~10μm程度の厚さとすればよい。基材表面にTi等の金属膜を形成した後、酸化処理を施して半導体膜を形成した場合、実際には、基材表面の金属膜がすべてTiO2といった酸化膜に置き換わるわけではなく、被着膜の最表面からに、TiO2/TiO/Tiといった層構成となり、酸化度が表面側から徐々に減少していくことが知られている。このように、酸化物触媒体としての触媒作用は酸化物触媒体の表面での作用であり、金属膜の膜厚を厚くしても触媒作用が増大するわけではない。


【0028】
前述したように、酸化物触媒体は被処理物の分解操作に繰り返して使用することを前提としている。したがって、基材の基材表面に被着した酸化物半導体は、繰り返し使用した際に基材から剥離しないようにする必要がある。金属粒子の高速噴射法は、前述したように、基材に金属膜が堅固に固着して形成される点で有利である。

【0029】
また、酸化物触媒体は、分解操作の際に350~500℃に加熱されるから、繰り返し使用することによって、多数回の熱履歴を受ける。この熱履歴に対する耐久性を維持するために、酸化物触媒体の基材と基材に被着される半導体の熱膨張係数が近似していること(±10%程度の範囲内)が望ましい。酸化物触媒体の基材と半導体の熱膨張係数が大きく隔たっていると、多数回の熱履歴によって、半導体が基材から剥離するおそれがあるからである。

【0030】
酸化物触媒体の基材をアルミナ(Al2O3)とし、半導体をルチル型の酸化チタン(TiO2)とした場合、酸化アルミニウムの熱膨張係数は8×10-6/℃、ルチル型の酸化チタンの熱膨張係数は7.09×10-6/℃~9.94×10-6/℃である。したがって、アルミナボールを基材とし酸化チタンを半導体被膜とする酸化物触媒体は、基材と半導体との熱膨張係数に関する条件においても好適な組み合わせである。

【0031】
なお、基材と半導体との熱膨張係数がマッチングしていない場合に、基材と半導体被膜との間に、熱膨張係数をマッチングさせるための中間層を設ける方法を利用することもできる。金属粒子の高速噴射法は噴射対象とする基材を選ばないから、基材を金属として基材の表面に金属膜を形成し、酸化処理によって半導体被膜を形成することもできる。例えば、アルミニウムの球体を基材とし、半導体被膜をTiO2とする場合には、中間層として酸化アルミニウム(Al2O3)層を設け、この中間層の表面にTi層を形成し、酸化処理を施して最表面がTiO2からなる半導体被膜とすればよい。

【0032】
本実施形態では酸化物触媒体の基材をアルミナボールとした例について説明したが、酸化物触媒体の基材には、ジルコニア等のアルミナ以外のセラミック材を使用することもでき、上記のように、セラミック以外の金属材料を使用することもできる。
また、酸化物触媒体の基材の形状は、球体状に限るものではない。楕円体状、立方体状等の他の適宜立体形状を選択することができる。ただし、酸化物触媒体は被処理物を分解処理した後、分別処理されるから、分別処理に適した形態を選択するのがよい。
また、酸化物触媒体の大きさも被処理物に合わせて、適宜大きさのものを使用すればよい。金属粒子の高速噴射法によれば、直径2、3、4、5、6、8、10、15、20mmといった球体の基材表面に金属粒子を高速噴射することは容易である。

【0033】
(プラスチック複合材料の分解処理)
図4は、酸化物触媒体を用いてプラスチック複合材料を分解処理する装置例を示す。この分解装置は、加熱炉30内に酸化物触媒体10とプラスチック複合材料である被処理物40を収容した容器20を収納し、酸化物触媒体10を350~500℃に加熱して被処理物40を分解処理するように構成したものである。
加熱炉30の底部と側壁に加熱用のヒータ31を設け、その外側を断熱ブロック32によって包囲し炉内空間を構成する。加熱炉の側壁には炉内に空気を供給する空気孔34を設ける。

【0034】
加熱炉30の上部には被処理物40を分解処理する際に発生するガスを浄化する浄化装置50を設ける。浄化装置50は、ヒータ52が内部に設置された触媒担持ブロック51を備える。触媒担持ブロック51は、通気性を有する三次元網目構造体(屈曲した通気経路が形成されている)からなる基材の表面に、酸化クロム等の半導体を担持させたものである。ヒータ52により触媒担持ブロック51全体が加熱され、触媒担持ブロック51の半導体が熱活性化される。浄化装置50の上部には、吸引ファン60を設置する。吸引ファン60は、加熱炉30内のガスを外部に排気する作用をなす。

【0035】
被処理物40は、酸化物触媒体10を収容した容器20に投入し、加熱炉30に収納して加熱することによって分解処理される。容器20に収容されている酸化物触媒体10が加熱炉30内で加熱され、半導体が熱活性化される温度(真性領域になる温度)にまで加熱されることにより、大量に正孔キャリアを生成する。この正孔キャリアは強力な酸化作用を備えており、被処理物40は酸化物触媒体10の表面に被着された半導体に接触する界面において、正孔キャリアによる酸化作用を受ける。この正孔キャリアによる酸化作用によりプラスチック複合材料である被処理物40のポリマー中にはカチオン・ラジカルが生成され、このカチオン・ラジカルは自己増殖しながらポリマー中を伝播し、ポリマーを次々と小分子化していく。

【0036】
カチオン・ラジカルの自己増殖作用は指数関数的に進む作用であり、被処理物40は部分的に酸化物触媒体10に接触するのみで酸化作用が開始され、ポリマー中でカチオン・ラジカルが自己増殖する作用が発生する。被処理物40を酸化する作用は互いに接触している被処理物40同士の間においても発生するから、被処理物40は次々と酸化され、カチオン・ラジカルが伝播して、分解作用が連続する。したがって、図4に示すように、容器20内に被処理物40を積み上げるように収容しておいても、すべての被処理物40を分解することができる。
なお、酸化物触媒体10と被処理物40とを確実に接触させて、被処理物40に確実に酸化作用(分解作用)を作用させるようにするために、撹拌子を用いて、容器20内で酸化物触媒体10と被処理物40とを撹拌する操作を行う方法も有効である。
カチオン・ラジカルの作用により、ポリマーはエチレンやプロパンのような小分子に裁断され、裁断された小分子は空気中の酸素と反応して、最終的に炭酸ガスと水に完全分解される。

【0037】
被処理物40の分解作用は指数関数的に生じるから、加熱炉30への酸素の供給が不十分であったりすると、ポリマーから生じた小分子が完全燃焼せずに外部に放出されることが起こり得る。本実施形態の分解装置では、被処理物40からフラグメントガスが放出された場合でも、浄化装置50によりガスに混じっている放出物(有機物)を完全に分解して排気ガスが浄化される。この浄化作用は、触媒担持ブロック51をヒータ52により加熱し触媒担持ブロック51に担持されている半導体を熱活性化した状態で触媒担持ブロック51に分解ガスを通過させると、触媒担持ブロック51に担持されている半導体の酸化作用によりガスに含まれる放出物(有機物)が分解される作用による。

【0038】
図4では、酸化物触媒体10を収容した容器20に細片状に破砕された形態の被処理物40を投入して分解処理している状態を示す。酸化物触媒体10による分解作用は、酸化物触媒体10と被処理物40とが接触することによって開始されるから、容器20に収容する酸化物触媒体10は被処理物40と接触できるように、その量や、酸化物触媒体10の大きさ(直径)を選べばよい。処理対象物である被処理物40も、その形態や大きさが限定されるものではなく、細片状に破砕されたものの他、ある程度大きなものであっても処理対象とすることができる。また、炭素繊維やガラス繊維等の繊維強化プラスチック材料の他、電子部品や金属部品を内蔵した樹脂成形品、ゴム製品なども対象となる。

【0039】
なお、処理対象物によっては被処理物に内包されているものによって処理温度を調節する必要がある。半導体の熱活性化温度は350~500℃であるから、処理対象物に応じて使用する酸化物触媒体の種類を選択することにより、適切な分解処理を行うことができる。
また、処理対象物の処理量や大きさによって、使用する分解装置の容量等を適宜設計する必要がある。バッチ方式による分解処理の他に、連続搬送式の加熱炉を使用し、酸化物触媒体とともに被処理物を加熱炉内で搬送させて、連続的に被処理物を分解処理する装置構成とすることもできる。

【0040】
(酸化物触媒体の分別)
図4に示すような分解装置を用いて被処理物を分解処理した後には、酸化物触媒体と被処理物が分解された後の残留物(残渣)が残る。図5は、アルミナボールの表面に半導体としてCr2O3を被着させた酸化物触媒体を用いて、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を分解処理した状態を示す。酸化物触媒体の上に、被処理物であるCFRPに内包されていた炭素繊維のみが残留物として残っている。

【0041】
本発明においては、被処理物の分解に使用した酸化物触媒体と被処理物を分解した後の残留物の混合物から酸化物触媒体を分別する方法として、メッシュを用いてふるい分けする分別方法を利用する。
図6は、ふるい分け用のメッシュ体70を用いて分別する方法を示す。メッシュ体70の上に、酸化物触媒体10と被処理物の残留物の混合物をのせてふるい分けすると、被処理物の残留物がメッシュ体70の網目を通過して落下し、酸化物触媒体10がメッシュ体70上に残って分別される。

【0042】
メッシュ体70を用いて分別する方法は、酸化物触媒体10と被処理物の残留物の大きさが大きく隔たっている場合に有効である。したがって、酸化物触媒体10は被処理物の残留物の大きさをあらかじめ想定して、適当な大きさのものを使用すればよい。
図6では、メッシュ体70の上に酸化物触媒体10を残すように分別する例であるが、電子部品のインサート成形品のようにインサート物が比較的大きなものである場合には、酸化物触媒体10をメッシュ体70の網目を通過する大きさとし、インサート物がメッシュ体70上に残るようにして分別してもよい。

【0043】
メッシュ体70を利用して被処理物の残留物との混合物から酸化物触媒体10とを分別して取り出した酸化物触媒体10は、再度、被処理物の分解処理に利用することができる。酸化物触媒体10の表面を被覆する半導体は、酸化物触媒体10の基材表面から剥落しない限り、その触媒作用が失われることはない。したがって、分解処理後、分別処理することによって酸化物触媒体をプラスチック複合材料の分解処理に繰り返し使用することができる。このように、酸化物触媒体10はプラスチック複合材料を分解処理する作用体としてきわめて効果的に使用することができる。

【0044】
上述したメッシュ体を利用するふるい分け方法によって酸化物触媒体を被処理物の残留物との混合物から分別する方法は、きわめて簡単に酸化物触媒体を分別することができるという利点がある。この分別方法は、酸化物触媒体と残留物とを自動的に分別する分別装置として構成することもできる。例えば、酸化物触媒と残留物とをふるい分け用のメッシュ体を備えた分別装置に投入し、メッシュ体を振動させて酸化物触媒体と残留物を分別しながら、酸化物触媒体のみを送り出すといった構成とすることができる。これらの分別装置は、大量のプラスチック複合材料の廃棄物を処理するような場合に有効に利用できる。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
直径5mmのTi/Al2O3ボールを空気中、800℃で加熱し、アルミナボールの表面に被着しているTi層(厚さ約2μm)を酸化してTiO2とした。X線回折の結果、酸化チタンはルチル相であることを確認した。2~3cmの長さに裁断したチップ状のカーボン・ファイバーFRPと直径5mmのTiO2/Al2O3ボールを、体積比で1:1となるように250 mlセラミック製のるつぼに入れ、空気中500℃で30分間、加熱した。その結果、カーボン・ファイバーFRPに内包されていたカーボン・ファイバーはほぼ無傷の形で回収され、網目が2cmのメッシュ体を使用し、TiO2/Al2O3ボールのみをメッシュ体を通過させてカーボン・ファイバーから分離した。
【実施例】
【0046】
(実施例2)
実施例1と同様に、直径2mmのCr/Al2O3ボールを空気中、800℃で加熱し、アルミナボール表面に被着しているCr層(厚さ約2 mm)を酸化して酸化クロムとした。X線回折の結果、薄緑色の酸化物相はCr2O3であることを確認した。2~3cmの長さに裁断したチップ状のカーボン・ファイバーFRPと直径2mmのCr2O3/Al2O3ボールを体積比で1:1となるように250 mlセラミック製のるつぼに入れ、撹拌子で毎分1回転の速度で撹拌しながら、空気中、500℃で30分間、加熱した。その結果、カーボン・ファイバーFRPに内包されていたカーボン・ファイバーはほぼ無傷の形で回収され、網目が1cmのメッシュ体を用いてCr2O3/Al2O3ボールを分離した。
【符号の説明】
【0047】
10 酸化物触媒体
12 基材
14 半導体
20 容器
30 加熱炉
31 ヒータ
40 被処理物
50 浄化装置
51 触媒担持ブロック
52 ヒータ
60 吸引ファン
70 メッシュ体

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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