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明細書 :リフォールディング剤および蛋白質のリフォールディング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5637857号 (P5637857)
登録日 平成26年10月31日(2014.10.31)
発行日 平成26年12月10日(2014.12.10)
発明の名称または考案の名称 リフォールディング剤および蛋白質のリフォールディング方法
国際特許分類 C07K   1/08        (2006.01)
C07K   5/037       (2006.01)
C12N   9/36        (2006.01)
C12N   9/22        (2006.01)
C12N   9/88        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
FI C07K 1/08
C07K 5/037
C12N 9/36
C12N 9/22
C12N 9/88
C07K 14/47
請求項の数または発明の数 9
全頁数 28
出願番号 特願2010-535805 (P2010-535805)
出願日 平成21年10月27日(2009.10.27)
国際出願番号 PCT/JP2009/068438
国際公開番号 WO2010/050485
国際公開日 平成22年5月6日(2010.5.6)
優先権出願番号 2008277109
優先日 平成20年10月28日(2008.10.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年8月7日(2012.8.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
発明者または考案者 【氏名】山口 宏
【氏名】伊藤 廉
【氏名】葛西 祐介
【氏名】山田 英俊
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】吉田 知美
参考文献・文献 特表2007-537150(JP,A)
国際公開第2008/126401(WO,A1)
KWON, D. S. et al.,Dissection of Glutathionylspermidine Synthetase/Amidase from Escherichia coli into Autonomously Fold,J. Biol. Chem.,1997年,Vol.272, No.4,p.2429-2436
BRZEZINSKI, B. et al.,Disulphide bond formation by glutathione via the glutathione-trimethylamine-N-oxide complex,J. Mol. Struct.,1995年,Vol.354,p.127-130
TAO, K. et al.,A New Reagent for Protein Refolding,Peptide Science,2009年 3月,Vol.2008,p.451-454
蛋白質科学会アーカイブ, 1, e035 (2008)
調査した分野 C07K 1/06、1/08、1/14
C07K 5/037
C07K 14/47
C12N 9/22、9/36、9/88
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
還元型グルタチオンのエステル誘導体およびアミド誘導体、それらの塩ならびに溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種と、
酸化型グルタチオンのエステル誘導体およびアミド誘導体、それらの塩ならびに溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種
を有効成分とする、アンフォールディングされた蛋白質のリフォールディング剤。
【請求項2】
下式
【化1】
JP0005637857B2_000011t.gif
〔式中、RおよびR はそれぞれ独立して、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基、または炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す。ただし、R1 とR2とは同時に水酸基ではない。〕
で表される還元型グルタチオン誘導体、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種と
下式
【化2】
JP0005637857B2_000012t.gif
〔式中、R、R、RおよびR6 はそれぞれ独立して、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基、または炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す。ただし、R、R、RおよびRは同時に水酸基ではない。〕
で表される酸化型グルタチオン誘導体、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種
を有効成分とする、請求項1記載のリフォールディング剤。
【請求項3】
還元型グルタチオン誘導体、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種と、酸化型グルタチオン誘導体、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種とを、それぞれ別個に包装された形態で有する、請求項2記載のリフォールディング剤。
【請求項4】
上記還元型または酸化型グルタチオンのエステル誘導体が、還元型または酸化型のグルタチオンエチルエステルまたはグルタチオンメチルエステルであり、還元型または酸化型グルタチオンのアミド誘導体が、還元型または酸化型のグルタチオンアミドである、請求項1または2記載するリフォールディング剤。
【請求項5】
上記還元型グルタチオンのエステル誘導体が還元型グルタチオンのジエチルエステル若しくはジメチルエステル、酸化型グルタチオンのエステル誘導体が酸化型グルタチオンのテトラエチルエステル若しくはテトラメチルエステル、還元型グルタチオンのアミド誘導体が還元型グルタチオンのモノアミド若しくはモノアミドモノエステル、酸化型グルタチオンのアミド誘導体が酸化型グルタチオンのジアミド若しくはジアミドジエステルである、請求項2に記載するリフォールディング剤。
【請求項6】
アンフォールディングされた蛋白質を、請求項1乃至のいずれかに記載するリフォールディング剤の存在下で処理する工程を有する、上記蛋白質のリフォールディング方法。
【請求項7】
請求項に記載するリフォールディング方法を用いて、アンフォールディングされた蛋白質をリフォールディングする工程を含む、蛋白質の再生方法。
【請求項8】
下式
【化3】
JP0005637857B2_000013t.gif
〔式中、Rは炭素数1~4のアルコキシ基を、Rは、炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す。〕で示されるか、または
下式
【化4】
JP0005637857B2_000014t.gif
〔式中、RおよびR11はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルコキシ基を、R10およびR12はそれぞれ独立して 炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す。〕
で表されるグルタチオン誘導体。
【請求項9】
上記グルタチオン誘導体が、式(3)中、Rがメトキシ基、Rがアミノ基である還元型グルタチオンのモノメチルエステルモノアミドである、請求項記載のグルタチオン誘導体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスフォールディングして不活性になった蛋白質を、アンフォールディングした後、活性を有する本来の立体構造に再構築(リフォールディング)するうえで好適に用いられる、蛋白質のリフォールディング剤に関する。また本発明は、当該リフォールディング剤を用いた蛋白質のリフォールディング方法および蛋白質の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子操作を行なった大腸菌などの原核生物や酵母などの真核生物や無細胞抽出系などで人為的に目的蛋白質を発現させる方法において、目的蛋白質はミスフォールディングして不活性になった状態、すなわち封入体(不活性凝集物)として得られることが多い。このため、これを尿素等の変性剤を含む溶液に溶解させることにより、一旦蛋白質をアンフォールディングさせた後、当該溶液を希釈して変性剤の濃度を低下させること等により、蛋白質を本来の立体構造にリフォールディングさせ、再生するという手法が、研究室レベルから工業的生産に至るまでとられている。
【0003】
しかし、かかるリフォールディングの過程で、蛋白質が再び凝集するなど、リフォールディングとミスフォールディングとが並行して生じる場合があり、リフォールディング収率(正常蛋白質回収率)が低下しやすいという問題があった。この問題を解消するため、従来からリフォールディング時の凝集を抑制し、リフォールディング収率を上げるための添加剤が種々報告されている。例えば、非特許文献1~6および特許文献1および2には、アルギニン、L-アルギニンアミドおよびその誘導体、アルギニンエチルエステルやニトロアルギニンエステルなどのアミノ酸エステルが蛋白質のリフォールディング時の凝集抑制剤として有効であることが記載されている。また非特許文献7には、アセトン、アセトアミド、尿素誘導体等の小分子添加剤が蛋白質の凝集抑制およびリフォールディング収率の向上に有効であることが記載されており、さらに非特許文献5および8には、酸化型/還元型グルタチオンおよびpKa値が中性付近のチオール化合物がジスルフィド結合を有する蛋白質のリフォールディング時の凝集抑制剤として有効であることが記載されている。
【0004】
これらは特定の蛋白質に適用可能であるが、色々な性状の蛋白質に対して適用可能という汎用性を有するものではない。また、個々の蛋白質毎に特定のリフォールディング条件を確立する必要があるため煩雑であり、リフォールディング収率もそれほど高いものではなかった。
【0005】
そこで広範囲の蛋白質についてリフォールディングが可能で、しかもリフォールディング収率の高い凝集抑制剤またはリフォールディング剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2005-132771号公報
【特許文献2】特開2007-332093号公報
【0007】

【非特許文献1】K. Shiraki et al., Journal of Biotechnology, 130 (2007) 153-160
【非特許文献2】白木ら、生物工学、84(10), 395 (2006)
【非特許文献3】白木、化学と生物、Vol.43 No.1, Page 43-46 (2005)
【非特許文献4】白木ら、日本化学会バイオテクノロジー部会シンポジウム講演要旨集、Vol.5, Page 16 (2002)
【非特許文献5】白木、生物物理、44(2), Page 87-90 (2004)
【非特許文献6】Shiraki K. et al., Biotechnol. Prog., 2005, 21, 640-643
【非特許文献7】Yasuda M. et al., Biotechnol. Prog., 1998, 14, 601-606
【非特許文献8】Jonathan D. G. et al., J.Am. Chem. Soc., 124, 3885-3892 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、アンフォールディングした蛋白質をリフォールディングさせるうえで、それを促進させる補助剤として有用な「リフォールディング剤」を提供することを目的とする。また本発明は、生体内に広汎に存在するグルタチオンの誘導体を使用するので、広範囲の蛋白質に適用できる可能性が高く、また高いリフォールディング収率が得られる、アンフォールディングした蛋白質に対するリフォールディング方法、および当該蛋白質の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために日夜鋭意検討していたところ、還元型グルタチオンまたは/および酸化型グルタチオンの、エステル誘導体または/およびアミド誘導体の存在下でアンフォールディングした蛋白質を処理することにより、当該蛋白質が有意に高い割合でリフォールディングし、活性を有する正常な蛋白質、すなわち本来の立体構造を有する蛋白質として高収率に再生することができることを見出した。すなわち、本発明者らは、還元型または/および酸化型グルタチオンの、エステル誘導体または/およびアミド誘導体が、アンフォールディングした蛋白質のリフォールディング剤として有用であり、かかるリフォールディング剤によれば、蛋白質のリフォールディング収率を効率よく向上させることができることを確認した。
【0010】
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施態様を包含するものである。
【0011】
(I)リフォールディング剤
(I-1)還元型グルタチオンのエステル誘導体およびアミド誘導体、酸化型グルタチオンのエステル誘導体およびアミド誘導体、ならびにそれらの酸付加塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種を有効成分とする、アンフォールディングされた蛋白質のリフォールディング剤。
【0012】
(I-2)下式
【0013】
【化1】
JP0005637857B2_000002t.gif

【0014】
〔式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基、または炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す。ただし、R1とR2とは同時に水酸基ではない。〕
で表される還元型グルタチオン誘導体、
下式
【0015】
【化2】
JP0005637857B2_000003t.gif

【0016】
〔式中、R、R、RおよびR6 はそれぞれ独立して、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基、または炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す。ただし、R、R、RおよびRは同時に水酸基ではない。〕
で表される酸化型グルタチオン誘導体、ならびに
それらの塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種を有効成分とする、アンフォールディングされた蛋白質のリフォールディング剤。
【0017】
(I-3)還元型グルタチオン誘導体、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種と、酸化型グルタチオン誘導体、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種とを含有する、(I-1)または(I-2)に記載するリフォールディング剤。
【0018】
(I-4)還元型グルタチオン誘導体、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種と、酸化型グルタチオン誘導体、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種とを、それぞれ別個に包装された形態で有する、(I-1)または(I-2)に記載するリフォールディング剤。
【0019】
(I-5)上記還元型または酸化型グルタチオンのエステル誘導体が、還元型または酸化型のグルタチオンエチルエステルまたはグルタチオンメチルエステルであり、還元型または酸化型グルタチオンのアミド誘導体が、還元型または酸化型のグルタチオンアミドである、(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載するリフォールディング剤。
【0020】
(I-6)上記還元型グルタチオンのエステル誘導体が還元型グルタチオンのジエチルエステル若しくはジメチルエステル、酸化型グルタチオンのエステル誘導体が酸化型グルタチオンのテトラエチルエステル若しくはテトラメチルエステル、還元型グルタチオンのアミド誘導体が還元型グルタチオンのモノアミド若しくはモノアミドモノエステル、酸化型グルタチオンのアミド誘導体が酸化型グルタチオンのジアミド若しくはジアミドジエステルである、(I-5)に記載するリフォールディング剤。
【0021】
(II)アンフォールディングされた蛋白質のリフォールディング方法
(II-1)アンフォールディングされた蛋白質を、(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載するリフォールディング剤の存在下で処理する工程を有する、上記蛋白質のリフォールディング方法。
【0022】
(III)アンフォールディングされた蛋白質の再生方法
(III-1)上記(II-1)に記載するリフォールディング方法を用いて、アンフォールディングされた蛋白質をリフォールディングする工程を含む、蛋白質の再生方法。
【0023】
(IV)新規グルタチオン誘導体
(IV-1)下式
【0024】
【化3】
JP0005637857B2_000004t.gif

【0025】
〔式中、Rは炭素数1~4のアルコキシ基を、Rは、炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す。〕で表されるか、または
下式
【0026】
【化4】
JP0005637857B2_000005t.gif

【0027】
〔式中、RおよびR11はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルコキシ基を、R10およびR12はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す。〕
で表されるグルタチオン誘導体。
【0028】
(IV-2)上記グルタチオン誘導体が、式(3)中、Rがメトキシル基、Rがアミノ基である還元型グルタチオンのメチルエステルモノアミドである、(IV-1)記載のグルタチオン誘導体。
【発明の効果】
【0029】
本発明のリフォールディング剤によれば、アンフォールディングした蛋白質の再凝集による不活性化を抑制し、高い割合で正常にリフォールディングさせることができるため、活性を有する正常蛋白質(本来の立体構造を有する蛋白質)を高収率で得ることができる。本発明によれば、これまで還元型グルタチオンまたは/及び酸化型グルタチオンの使用では十分な収率が望めなかった蛋白質についても、より高いリフォールディング収率を得ることが可能である。また、本発明のリフォールディング剤によれば、少量の添加により、高いリフォールディング収率が得られ、蛋白質が高濃度の場合であっても凝集することなくリフォールディングが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0030】

I.リフォールディング剤
本発明のリフォールディング剤は、アンフォールディングされた蛋白質のリフォールディングを補助し、リフォールディング収率を向上させるために用いられるものであり、還元型グルタチオンのエステル誘導体およびアミド誘導体、酸化型グルタチオンのエステル誘導体およびアミド誘導体、ならびにそれらの塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種を有効成分とすることを特徴とする。

【0031】
また、本発明のリフォールディング剤は、好ましくは、下式で示される還元型グルタチオンのエステル誘導体およびアミド誘導体:

【0032】
【化5】
JP0005637857B2_000006t.gif

【0033】
〔式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基、または炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す。ただし、R1とR2とは同時に水酸基ではない。〕、
下式で示される酸化型グルタチオンのエステル誘導体およびアミド誘導体:

【0034】
【化6】
JP0005637857B2_000007t.gif

【0035】
〔式中、R、R、RおよびR6 はそれぞれ独立して、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基、または水素原子が炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す。ただし、R、R、RおよびRは同時に水酸基ではない。〕、
ならびにそれらの塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種を有効成分とすることを特徴とする。

【0036】
ここで炭素数1~4のアルコキシ基としては、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、およびtert-ブトキシ基を挙げることができる。好ましくはメトキシ基およびエトキシ基である。また炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、およびtert-チル基を挙げることができる。好ましくはメチル基である。

【0037】
還元型グルタチオンまたは酸化型グルタチオン(以下、これらを総称する場合は、単に「グルタチオン」と記載する)のエステル誘導体は、グルタチオンの少なくとも1つのカルボキシル基がエステル化されたものであればよい。

【0038】
例えばグルタチオンの1つのカルボキシル基がエステル化された誘導体としては、下記に掲げるグルタチオンのモノ低級アルキルエステルを挙げることができる。

【0039】
モノメチルエステル:式(1)中、RとRの一方がメトキシ基、他方が水酸基またはアミノ基:式(2)中、R~Rのいずれか一つがメトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0040】
モノエチルエステル:式(1)中、RとRの一方がエトキシ基、他方が水酸基またはアミノ基:式(2)中、R~Rのいずれか一つがエトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0041】
モノプロピルエステル:式(1)中、RとRの一方がプロポキシ基、他方が水酸基またはアミノ基:式(2)中、R~Rのいずれか一つがプロポキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0042】
モノイソプロピルエステル:式(1)中、RとRの一方がイソプロポキシ基、他方が水酸基またはアミノ基:式(2)中、R~Rのいずれか一つがイソプロポキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0043】
モノブチルエステル:式(1)中、RとRの一方がブトキシ基、他方が水酸基またはアミノ基:式(2)中、R~Rのいずれか一つがブトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0044】
モノイソブチルエステル:式(1)中、RとRの一方がイソブトキシ基、他方が水酸基またはアミノ基:式(2)中、R~Rのいずれか一つがイソブトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0045】
モノtert-ブチルエステル:式(1)中、RとRの一方がtert-ブトキシ基、他方が水酸基またはアミノ基:式(2)中、R~Rのいずれか一つがtert-ブトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0046】
また、例えば、グルタチオンの2つのカルボキシル基がエステル化された誘導体としては、下記に掲げるグルタチオンのジ低級アルキルエステルを挙げることができる。

【0047】
ジメチルエステル:式(1)中、RとRの両方がメトキシ基:式(2)中、R~Rのいずれか二つがメトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0048】
ジエチルエステル:式(1)中、RとRの両方がエトキシ基:式(2)中、R~Rのいずれか二つがエトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0049】
メチルエチルエステル:式(1)中、RとRの一方がメトキシ基、他基がエトキシ基:式(2)中、R~Rのいずれか二つがそれぞれメトキシ基とエトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0050】
ジプロピルエステル:式(1)中、RとRの両方がプロポキシ基:式(2)中、R~Rのいずれか二つがプロポキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0051】
メチルプロピルエステル:式(1)中、RとRの一方がメトキシ基、他基がプロポキシ基:式(2)中、R~Rのいずれか二つがそれぞれメトキシ基とプロポキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0052】
エチルプロピルエステル:式(1)中、RとRの一方がエトキシ基、他基がプロポキシ基:式(2)中、R~Rのいずれか二つがそれぞれエトキシ基とプロポキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0053】
ジブチルエステル:式(1)中、RとRの両方がブトキシ基:式(2)中、R~Rのいずれか二つがブトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0054】
ジイソプロピルエステル:式(1)中、RとRの両方がイソプロポキシ基:式(2)中、R~Rのいずれか二つがイソプロポキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0055】
ジイソブチルエステル:式(1)中、RとRの両方がイソブチル基:式(2)中、R~Rのいずれか二つがイソブチル基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0056】
また、例えば、グルタチオンの3つのカルボキシル基がエステル化された誘導体としては、下記に掲げる酸化型グルタチオンの低級アルキルエステルを挙げることができる。

【0057】
トリメチルエステル:式(2)中、R~Rの3つがメトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0058】
トリエチルエステル:式(2)中、R~Rの3つがエトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0059】
モノメチルジエチルエステル:式(2)中、R~Rのいずれか1つがメトキシ基、2つがエトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0060】
ジメチルモノエチルエステル:式(2)中、R~Rのいずれか2つがメトキシ基、1つがエトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0061】
トリプロピルエステル:式(2)中、R~Rの3つがプロポキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0062】
モノメチルジプロピルエステル:式(2)中、R~Rのいずれか1つがメトキシ基、2つがプロポキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0063】
ジメチルモノプロピルエステル:式(2)中、R~Rのいずれか2つがメトキシ基、1つがプロポキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0064】
モノエチルジプロピルエステル:式(2)中、R~Rのいずれか1つがエトキシ基、2つがプロポキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0065】
ジエチルモノプロピルエステル:式(2)中、R~Rのいずれか2つがエトキシ基、1つがプロポキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0066】
トリブチルエステル:式(2)中、R~Rの3つがブトキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0067】
トリイソプロピルエステル:式(2)中、R~Rの3つがイソプロポキシ基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0068】
トリイソブチルエステル:式(2)中、R~Rの3つがイソブチル基、残りが水酸基またはアミノ基。

【0069】
また、例えば、グルタチオンの4つのカルボキシル基がエステル化された誘導体としては、下記に掲げる酸化型グルタチオンの低級アルキルエステルを挙げることができる。

【0070】
テトラメチルエステル:式(2)中、R~Rのすべてがメトキシ基。

【0071】
テトラエチルエステル:式(2)中、R~Rのすべてがエトキシ基。

【0072】
ジメチルジエチルエステル:式(2)中、R~Rのいずれか二つがメトキシ基、他の二つがエトキシ基。

【0073】
テトラプロピルエステル:式(2)中、R~Rのすべてがプロポキシ基。

【0074】
ジメチルジプロピルエステル:式(2)中、R~Rのいずれか二つがメトキシ基、他の二つがプロポキシ基。

【0075】
ジエチルジプロピルエステル:式(2)中、R~Rのいずれか二つがエトキシ基、他の二つがプロポキシ基。

【0076】
テトラブチルエステル:式(2)中、R~Rのすべてがブトキシ基。

【0077】
テトライソプロピルエステル:式(2)中、R~Rのすべてがイソプロポキシ基。

【0078】
テトライソブチルエステル:式(2)中、R~Rのすべてがイソブチル基。

【0079】
本発明において、好ましいグルタチオンのエステル誘導体としては、グルタチオンジメチルエステル、グルタチオンジエチルエステル、グルタチオンメチルエチルエステル等の還元型グルタチオン誘導体;並びにグルタチオンテトラメチルエステル、グルタチオンテトラエチルエステル、グルタチオンジメチルジエチルエステル等の酸化型グルタチオン誘導体を挙げることができる。

【0080】
グルタチオンのアミド誘導体としては、グルタチオンの少なくとも1つのカルボキシル基がアミド化されたものであればよい。

【0081】
グルタチオンの1つのカルボキシル基がアミド化された誘導体としては、下記に掲げるグルタチオンのモノアミド、ジアミド、トリアミドおよびテトラアミドを挙げることができる。

【0082】
モノアミド:式(1)中、RとRの一方がアミノ基、他方が水酸基:式(2)中、R~Rのいずれか一つがアミノ基、残りが水酸基。

【0083】
モノアミドモノエステル:式(1)中、RとRの一方がアミノ基、他方が炭素数1~4のアルコキシ基:式(2)中、R~Rのいずれか一つがアミノ基、他の1つ基が炭素数1~4のアルコキシ基。

【0084】
ジアミド:式(1)中、RとRの両方がアミノ基:式(2)中、R~Rのいずれか二つがアミノ基、残りが水酸基。

【0085】
ジアミドジエステル:式(2)中、R~Rのいずれか二つがアミノ基、残りが炭素数1~4のアルコキシ基。

【0086】
トリアミド:式(2)中、R~Rの3つアミノ基、残りが水酸基または炭素数1~4のアルコキシ基。

【0087】
テトラアミド:式(2)中、R~Rの全てがアミノ基。

【0088】
好ましいアミド誘導体としては、下式で示される還元型グルタチオンのアミド誘導体を挙げることができる:

【0089】
【化7】
JP0005637857B2_000008t.gif

【0090】
〔式中、Rは炭素数1~4のアルコキシ基を、Rは、炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す。〕、並びに
下式で示される酸化型グルタチオンのアミド誘導体:

【0091】
【化8】
JP0005637857B2_000009t.gif

【0092】
〔式中、RおよびR11はそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルコキシ基を、R10およびR12はそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す。〕。

【0093】
より好ましくは、式(3)において、Rがメトキシ基、Rがアミノ基である、還元型グルタチオンのモノアミドモノメチルエステル誘導体である。かかる還元型グルタチオンのアミド誘導体は、常法により合成できる。例えば、還元型グルタチオンのチオール基を保護した後、両末端のカルボン酸をエステル化し、次いで、還元型グルタチオンのアミノ基を保護した後、反応性の高い一端のみをアミドに変換し、最終的に脱保護することによって得られる。

【0094】
なお、これらのグルタチンのエステル誘導体およびアミド誘導体は、いずれも塩の形態や溶媒和物の形態を有していてもよい。ここで塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属との塩;マグネシウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;または塩酸、燐酸、硝酸、硫酸、亜硫酸などの無機酸との塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸との塩を挙げることができる。また溶媒和物としては、水和物のほか、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール)、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの溶媒との溶媒和物を挙げることができる。

【0095】
本発明のリフォールディング剤は、前述する還元型および酸化型のグルタチオンのエステル誘導体、アミド誘導体、その塩またはその溶媒和物を少なくとも一種含有するものであればよいが、任意に選択される2種以上を含むこともできる。この場合、組み合わせは特に制限されないが、還元型グルタチオン誘導体(エステル誘導体、アミド誘導体)、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種と、酸化型グルタチオン誘導体(エステル誘導体、アミド誘導体)、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種とを、組み合わせて含むことが好ましい。なお、かかる本発明の好適なリフォールディング剤は、還元型グルタチオン誘導体(エステル誘導体、アミド誘導体)、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種と、酸化型グルタチオン誘導体(エステル誘導体、アミド誘導体)、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種とが、組み合わされた状態で使用されるものであればよく、この限りにおいて、販売形態および流通形態を特に問うものではない。

【0096】
具体的には、本発明の好適なリフォールディング剤には、(1)還元型グルタチオン誘導体(エステル誘導体、アミド誘導体)、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種と、酸化型グルタチオン誘導体(エステル誘導体、アミド誘導体)、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種とが、混合された状態で販売または流通されるもの(混合形態)、(2)還元型グルタチオン誘導体(エステル誘導体、アミド誘導体)、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種と、酸化型グルタチオン誘導体(エステル誘導体、アミド誘導体)、その塩および溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種とが、キットまたはセットなどとして、それぞれ別個に包装された状態で販売または流通されるものが含まれる。

【0097】
アンフォールディングされた蛋白質をリフォールディングするにあたり、使用されるリフォールディング剤の割合としては、制限されないが、対象蛋白質を含む溶液(例えばリフォールディング緩衝液)に配合される還元型グルタチオン誘導体および酸化型グルタチオン誘導体の濃度(総濃度)として、通常0.01~100ミリモル/L、好ましくは0.05~10ミリモル/L、より好ましくは0.1~5ミリモル/Lを挙げることができる。

【0098】
還元型グルタチオン誘導体と酸化型グルタチオン誘導体との配合比は、ジスルフィド結合を有さない蛋白質においては、制限はなく、ジスルフィド結合を有する蛋白質においては、好ましくは還元型:酸化型 = 1:1~20:1、より好ましくは還元型:酸化型 = 2:1~10:1である。

【0099】
ここで、上記対象蛋白質を含む溶液(例えば、リフォールディング緩衝液)中に含まれるアンフォールディング蛋白質の濃度としては、通常0.001~50 mg/mL、好ましくは0.01~10 mg/mL、より好ましくは0.05~3 mg/mLを挙げることができる。

【0100】
本発明において、リフォールディングする対象の蛋白質には、天然または人造(化学合成法、発酵法、遺伝子組み換え法)などの由来や製造方法の別にかかわらず、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、およびこれらの複合体(例えば、(ポリ)ペプチドまたは蛋白質と化合物との複合体、(ポリ)ペプチドまたは蛋白質と糖類との複合体、(ポリ)ペプチドまたは蛋白質と金属との複合体、(ポリ)ペプチドまたは蛋白質と補酵素との複合体など)が含まれる。なお、蛋白質の種類は問わず、例えば細胞内蛋白質、細胞外蛋白質、膜蛋白質、および核内蛋白質がいずれも含まれる。実験例3に示すように、必ずしもジスルフィド結合を有する蛋白質である必要はないが、好適な蛋白質として少なくとも1つのジスルフィド結合を含む蛋白質を挙げることができる。

【0101】
好ましくは、大腸菌などの原核生物や酵母などの真核生物や無細胞抽出系などの異種発現系を用いて遺伝子工学的に生産された組み換え体である。かかる組み換え体は、しばしば不溶性で不活性の凝集体、いわゆる封入体として得られるため、本発明のリフォールディング技術が好適に使用できる。

【0102】
本発明においてアンフォールディングされた蛋白質とは、いかなる方法でアンフォールディングされた蛋白質でもよいが、リフォールディング効果の観点から好ましいのは、塩酸グアニジン、尿素またはこれらの併用でアンフォールディングされた蛋白質である。より好ましくは、塩酸グアニジン、尿素またはこれらの合計の濃度が通常0.5モル/L以上の水溶液中でアンフォールディングされた蛋白質である。なお、蛋白質が、分子内にジスルフィド結合を含むものである場合には、塩酸グアニジンや尿素といった上記アンフォールディング剤以外に、さらに2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、シスチンまたはチオフェノールなどの還元剤を加えてアンフォールディングされた蛋白質であってもよい。

【0103】
本発明において対象とするアンフォールディングされた蛋白質は、その分子量を特に制限するものではないが、通常1,000~10,000,000程度の蛋白質を挙げることができる。リフォールディング効果の点から、好ましくは分子量10,000~250,000の蛋白質である。一般に分子量の大きさとリフォールディングのし難さには相関性があり、分子量の大きな蛋白質(分子量10,000以上程度)になるとリフォールディングが著しく困難になるとされている。本発明のリフォールディング剤を用いたリフォールディング方法によれば、高いリフォールディング効果を得ることができるので、分子量10,000以上の高分子量の蛋白質に対しても有効である。分子量1,000未満の蛋白質は容易に巻き戻すことができるので、本発明のリフォールディング剤を用いたリフォールディング方法は、分子量1,000以上の蛋白質に対して特に好適に使用することができる。なお蛋白質の分子量は、一般的なゲル電気泳動法などで測定することができる。

【0104】
II.リフォールディング方法
本発明のリフォールディング方法は、アンフォールディングされた蛋白質をリフォールディングし、活性を有する正常蛋白質を産生する方法であり、アンフォールディングされた蛋白質を前述する本発明のリフォールディング剤の存在で処理する工程を有することを特徴とする。

【0105】
このリフォールディング工程において、使用されるリフォールディング剤の割合としては制限されないが、前述するように、対象蛋白質を含む溶液(例えば、リフォールディング緩衝液)に配合される還元型グルタチオン誘導体および酸化型グルタチオン誘導体の濃度(総濃度)として、通常0.01~100ミリモル/L、好ましくは0.05~10ミリモル/L、より好ましくは0.1~5ミリモル/Lを挙げることができる。ここで、上記対象蛋白質を含む溶液(例えば、リフォールディング緩衝液)中に含まれるアンフォールディング蛋白質の濃度としては、通常0.001~50 mg/mL、好ましくは0.01~10 mg/mL、より好ましくは0.05~3 mg/mLを挙げることができる。

【0106】
リフォールディングに使用されるリフォールディング緩衝液としては、目的の蛋白質の機能を失わせるような濃度及び組成でなければ特に限定されない。例えば、トリス緩衝液、MES緩衝液およびトリシン緩衝液等のアミン系緩衝液、リン酸緩衝液、または各種Good's bufferなどを挙げることができる。緩衝液は、pH2~12に調整することができるが、好ましくはpH4~10の範囲、より好ましくはpH6~9の範囲である。

【0107】
当該緩衝液には、還元型グルタチオンまたは/および酸化型グルタチオンを添加することができるほか、種々の添加物を添加することが可能である。かかる添加物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等の塩類;クエン酸塩、リン酸塩、および酢酸塩等の緩衝液;水酸化ナトリウム等の塩基類;塩酸や酢酸等の酸類;メタノール、エタノール、プロパノール等の有機溶媒等を挙げることができる。また、上記緩衝剤には、還元型グルタチオンまたは/および酸化型グルタチオン、または種々の添加物のほか、界面活性剤、pH調整剤、または蛋白質安定化剤を配合することもできる。

【0108】
ここで界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤および両性界面活性剤のいずれも使用することができる。

【0109】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールアルキレンオキサイド(以下、「AO」と略記する)付加物[炭素数8~24の高級アルコール(デシルアルコール、ドデシルアルコール、ヤシ油アルキルアルコール、オクタデシルアルコールおよびオレイルアルコールなど)のエチレンオキサイド(以下、「EO」と略記する)1~20モル付加物など]、炭素数6~24のアルキルを有するアルキルフェノールのAO付加物、ポリプロピレングリコールEO付加物およびポリエチレングリコールPO付加物、プルロニック型界面活性剤、および脂肪酸AO付加物、多価アルコール型非イオン性界面活性剤などが挙げられる。好ましくは、蛋白質との相互作用が少ない点で、ノニオン性活性剤である。

【0110】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤およびアミン塩型カチオンカチオン性界面活性剤などが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数8~24の炭化水素基を有する、エーテルカルボン酸またはその塩、硫酸エステルもしくはエーテル硫酸エステルおよびそれらの塩、スルホン酸塩、スルホコハク酸塩、脂肪酸塩、アシル化アミノ酸塩、並びに天然由来のカルボン酸およびその塩(たとえばケノデオキシコール酸、コール酸、デオキシコール酸など)が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型両性界面活性剤およびアミノ酸型両性界面活性剤が挙げられる。

【0111】
界面活性剤を用いる場合、対象蛋白質を含む溶液(例えばリフォールディング緩衝液)中のその含有量としては、通常20重量%以下、好ましくは0.001~10重量%、より好ましくは0.01~5重量%を挙げることができる。

【0112】
pH調整剤としては、Tris(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノエタンスルホン酸)、HEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸)、およびリン酸緩衝剤(例えば、リン酸1水素2ナトリウム+塩酸水溶液、またはリン酸2水素1ナトリウム+水酸化ナトリウム水溶液)などを挙げることができる。本発明において、リフォールディング操作はpH4~9、好ましくはpH6~8で行われる。このため、pH調整剤を添加する場合、その添加量は、このpH範囲に調整するように調節される。例えば対象蛋白質を含む溶液(リフォールディング緩衝液)中のその含有量として、通常20重量%以下、好ましくは0.001~10重量%、より好ましくは0.01~10重量%を挙げることができる。

【0113】
蛋白質安定化剤としては、還元剤、ポリオール類、金属イオン、キレート試薬などが挙げられる。ここで還元剤としては2-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、アスコルビン酸、還元型グルタチオンおよびシステインなどが;ポリオール類としてはグリセリン、ブドウ糖、ショ糖、エチレングリコール、ソルビトールおよびマンニトールなどが;金属イオンとしてはマグネシウムイオン、マンガンイオンおよびカルシウムイオンなどの2価金属イオンが挙げられる。ここで、キレート試薬としてはエチレンジアミン4酢酸(EDTA)およびグリコールエーテルジアミン-N,N,N’,N’-4酢酸(EGTA)などが挙げられる。

【0114】
蛋白質安定化剤を用いる場合、対象蛋白質を含む溶液(リフォールディング緩衝液)中のその含有量として、通常10重量%以下、好ましくは0.001~10重量%、より好ましくは0.01~1重量%を挙げることができる。

【0115】
なお、対象蛋白質を含む溶液(リフォールディング緩衝液)中には、その他、アンフォールディング剤、すなわち変性剤(例えば、グアニジン塩酸や尿素)が含まれていてもよい。この場合、アンフォールディング剤の含有量としては、0.01~200mM、好ましくは0.05~10mM、より好ましくは0.1~5mMを挙げることができる。

【0116】
本発明においてアンフォールディングされた蛋白質をリフォールディング剤の存在下で処理する工程には、該蛋白質とリフォールディング剤とを接触条件におく工程、具体的には両者をリフォールディング緩衝液中に配合して撹拌などにより混合する工程が含まれる。また、その後、リフォールディングをより充分に進めるために必要により一定時間静置することも含まれる。静置時間は例えば1~50時間を挙げることができる。また温度条件としては、0~100℃の範囲で、対象とする蛋白質の熱耐性に応じて適宜選択することができる。通常は4~30℃の範囲である。

【0117】
III.蛋白質再生方法
本発明の蛋白質再生方法は、上記のリフォールディング方法を用いて、アンフォールディングされた蛋白質をリフォールディングする工程を含む方法であり、正常蛋白質を調製する方法と言い換えることもできる。

【0118】
本発明の蛋白質再生方法は、アンフォールディングされた蛋白質を、前述する本発明のリフォールディング剤の存在下で処理する工程を有するものであればよく、他の工程の有無を特に制限するものではない。例えば下記の工程(a)~(b)または(a)~(c)を含む方法であってもよい。

【0119】
(a)蛋白質をアンフォールディングする工程、
(b)上記工程でアンフォールディングされた蛋白質を、本発明のリフォールディング剤の存在下で処理してリフォールディングする工程、
(c)上記工程でリフォールディングされた蛋白質を単離する工程。

【0120】
対象の蛋白質が、例えば大腸菌や酵母や無細胞抽出系などの異種発現系を用いて遺伝子工学的に生産された組み換え体である場合は、本発明の蛋白質再生方法は、下記の(2)~(4)、(1)~(4)または(1)~(5)の工程を含む方法であってもよい。

【0121】
(1)蛋白質産生菌の培養工程:大腸菌などの蛋白質産生菌を培養し、組み換え体を産生する。
(2)溶菌工程:溶菌剤などを用いて蛋白質産生菌体内から蛋白質封入体を取り出す。
(3)アンフォールディング工程;上記蛋白質封入体の懸濁液(例えば10mg蛋白質/mL)に、0.5モル/L以上のアンフォールディング剤(変性剤)、および必要に応じて20ミリモル/L以下の還元剤を加え軽くかきまぜ、室温で数時間放置する。かかる工程により、封入体中に存在する蛋白質の分子内または分子間ジスルフィド結合が化学的に還元され、切断される。
(4)リフォールディング工程:上記工程でアンフォールディングされた蛋白質懸濁液に、本発明のリフォールディング剤を添加してアンフォールディング剤濃度を希釈し低下させるか、またはアンフォールディングされた蛋白質懸濁液を透析してアンフォールディング剤濃度を希釈し低下させ、これに本発明のリフォールディング剤を添加して、リフォールディングを行う。
(5)単離工程:上記で得られた蛋白質懸濁液から、目的とする正常蛋白質(リフォールディング蛋白質)を、カラムクロマトグラフィーなどを用いて単離する。

【0122】
上記の(1)の蛋白質産生菌培養工程における蛋白質産生菌としては、以下の細菌細胞を例示することができる。細菌細胞としては、連鎖球菌属(Streptococci)、ブドウ球菌属(Staphylococci)、エシェリヒア属菌(Escherichia)、ストレプトミセス属菌(Streptomyces)およびバチルス属菌(Bacillus)細胞、真菌細胞:例えば酵母細胞およびアスペルギルス属(Aspergillus)細胞、昆虫細胞:例えばドロソフィラS2(Drosophila S2)、スポドプテラSf9(Spodoptera Sf9)細胞、動物細胞:例えば、CHO、COS、Hela、C127、3T3、BHK、293およびボウズ(Bows)メラノーマ細胞、ならびに植物細胞等が挙げられる。

【0123】
上記(1)工程の蛋白質産生菌の培養方法にあたり、目的蛋白質をコードするcDNAを含有する発現ベクターは、(i)目的蛋白質産生細胞からメッセンジャーRNA(mRNA)を分離し、該mRNAから単鎖のcDNAを、次に二重鎖DNAを合成し、該相補DNAをファージまたはプラスミドに組み込む。(ii)得られた組み換えファージまたはプラスミドで宿主を形質転換し、培養後、目的蛋白質の一部をコードするDNAプローブとのハイブリダイゼーション、あるいは抗体を用いたイムノアッセイ法により目的とするDNAを含有するファージあるいはプラスミドを単離する。(iii)その組み換えDNAから目的とするクローン化DNAを切りだし、該クローン化DNAまたはその一部を発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することによって製造することができる。その後、適当な方法により、宿主を発現ベクターで形質転換し培養する。培養は通常15~43℃で3~24時間行い、必要により通気、攪拌を加えることもできる。

【0124】
上記の(2)の溶菌工程で採用される溶菌方法としては、超音波による物理的破砕、リゾチーム等の溶菌酵素による処理、界面活性剤等の溶菌剤による処理などのいずれもが使用できる。生産性の観点から溶菌剤による処理が好ましい。また、有用な蛋白質を変性させないといった点からは、対イオンがギ酸、酢酸などのカルボン酸イオンである第4級アンモニウム型カチオン性界面活性剤などの溶菌剤を挙げることができる。

【0125】
上記の(3)のアンフォールディング工程において使用されるアンフォールディング剤としては、塩酸グアニジンおよび尿素などの変性剤を挙げることができる。かかる変性剤は、一種単独で使用することもできるが、両者を組み合わせて用いることもできる。なお、蛋白質が、分子内にジスルフィド結合を含む蛋白質である場合には、上記変性剤以外に、還元剤として、さらに2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、シスチンまたはチオフェノールなどを加えてもよい。

【0126】
上記(5)の単離工程において、カラムクロマトグラフィーに使用される充填剤としてはシリカ、デキストラン、アガロース、セルロース、アクリルアミド、ビニルポリマーなどが挙げられる。商業的に入手できる市販品としては、Sephadexシリーズ、Sephacrylシリーズ、Sepharoseシリーズ(以上、Pharmacia社)、Bio-Gelシリーズ(Bio-Rad社)等を挙げることができる。
【実施例】
【0127】
以下、製造例、実験例および実施例を示して本発明を説明するが、本発明はかかる実験例などによって制限されるものではない。
【実施例】
【0128】
製造例1 還元型グルタチオンモノメチルエステルモノアミド(GSHAd)の製造
【実施例】
【0129】
【化9】
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【実施例】
【0130】
1)還元型グルタチオンのTr(トリフェニルメチル)保護
還元型グルタチオン(1)(和光純薬工業(株))(5.0 g, 16.3 mmol) および TrOH(トリフェニルメタノール )(4.2 g, 16.3 mmol) を酢酸 16.5 mL に溶かし、60℃で攪拌しながら BF3・OEt2 (ボロントリフルオリド - エチルエーテル コンプレックス)(2.20mL, 18.0 mmol) を加えた。溶液を 80℃ に昇温して 30 分間攪拌した後、さらに室温で45分間攪拌した。反応液を、25 mL のエタノールが入った三角フラスコに移し、そこに酢酸ナトリウムを4.9 g加えた。水を加え、氷浴中で攪拌すると固体が析出した。析出した固体をろ別した後、減圧下で乾燥させることで、Tr (トリフェニルメチル)保護体 (2) を収率 89% (6.4 g, 11.7 mmol) で得た。
【実施例】
【0131】
2)エステル化
Tr 保護体(2) (5 g, 9.1 mmol) と p-TsOH・H2O(p-トルエンスルホン酸一水和物) (5.2 g, 27.3 mmol) を 227 mL のエタノールに溶解させ、90℃で16時間還流した。TLC で反応の終了を確認した後、減圧下で溶媒を留去した。得られた油状物質を酢酸エチルに溶かし、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水の順で洗浄した。有機相を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (酢酸エチル/メタノール= 9/1) で精製することで、Tr (トリフェニルメチル)保護された還元型グルタチオンのジエチルエステル(3) を収率 76% (4.2 g, 6.9 mmol) で得た。
【実施例】
【0132】
3)Boc(tert-ブトキシカルボニル)保護
上記で得られたジエチルエステル(3) (4.0 g, 6.6 mmol) とトリエチルアミン (2.8 mL, 19.8 mmol) のジクロロメタン溶液 (66 mL) に対し、(Boc)2O(二炭酸ジ-tert-ブチル) (2.3 mL, 9.9 mmol) を加え、室温で2時間攪拌した。その後、溶媒を減圧下で留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル = 1/1) で精製した。得られた固体をヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒を用いて再結晶することにより、上記ジエチルエステルのBoc (tert-ブトキシカルボニル)保護体(4)を収率 86% (4.0 g, 5.7 mmol) で得た。
【実施例】
【0133】
4)アミド化
Boc(tert-ブトキシカルボニル)保護体(4) (3.0 g, 4.3 mmol) にアンモニアのメタノール溶液 (2 M, 60 mL) を加えた。室温で20時間攪拌し、質量分析により反応の終了を確認した。減圧下で溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィー (クロロホルム/メタノール = 30/1) で精製することで、モノメチルエステル・モノアミド体(5) を収率 99% (2.6 g, 4.0 mmol) で得た。
【実施例】
【0134】
5)脱保護
モノメチルエステル・モノアミド体(5)(0.14 g, 0.22 mmol) の無水ジクロロメタン溶液 (1.1 mL) にトリフルオロ酢酸 (1.1 mL) を加えて 30 分間攪拌した後、トリエチルシラン (70.3 μL, 0.44 mmol) を加えた。室温で 30 分間攪拌した後、塩化水素のジエチルエーテル溶液を加え、得られた結晶をろ過することで、還元型グルタチオンのモノメチルエステル・モノアミド(GSHAd)の塩酸塩を収率 97% (0.068 g, 0.021 mmol) で得た。
【実施例】
【0135】
GSHAd のNMRデータは下記の通りである。
1H NMR (400 MHz, D2O) δ 4.48 (1H, t, J = 6.2 Hz), 4.15 (1H, t, J= 6.8 Hz), 3.91 (1H, d, J = 17.1 Hz), 3.90 (1H, d, J = 17.1 Hz), 3.81 (3H, s), 2.95-2.86 (2H, m), 2.64-2.50 (2H, m), 2.29-2.14 (2H, m).; 13C NMR (100 MHz, D2O) δ175.0, 174.5, 173.3, 170.8, 56.5, 54.3, 52.8, 42.7, 31.2, 25.9, 25.8。
【実施例】
【0136】
実験例1
蛋白質としてリゾチーム(生化学工業(株))を用いて、還元型グルタチオン(「GSH」ともいう)、酸化型グルタチオン(「GSSG」ともいう)(以上、和光純薬工業(株))、還元型グルタチオンジエチルエステル(「還元型グルタチオンエチルエステル」または「GSHEE」ともいう)(CAS RN:97451-40-6)、酸化型グルタチオンテトラエチルエステル(「酸化型グルタチオンエチルエステル」または「GSSGEE」ともいう)(CAS RN:113679-45-1)、および還元型グルタチオンモノメチルエステルモノアミド(「還元型グルタチオンアミド」または「GSHAd」ともいう)(製造例1)のリフォールディング剤としての機能を調べた。
【実施例】
【0137】
(1)実験操作
20~40 mgリゾチームを1.5 mLサイズのチューブに秤量し、これに変性試薬(8 M 尿素,40 mM ジチオスレイトール, 0.1 M トリスアミノプロパン (pH 8.0) )(以上、和光純薬工業(株))を1 mL加えて、50℃で 2 時間処理してリゾチームを変性させた。変性したリゾチームを逆相樹脂(コスモシール 140C18-OPN, ナカライテスク(株))に吸着させ、次いで10% アセトニトリル(関東化学(株))/0.05% トリフルオロ酢酸(和光純薬工業(株))で樹脂を洗浄したのち、80% アセトニトリル/0.05% トリフルオロ酢酸で変性リゾチームを溶出した。吸光度計(波長280nm)を用いて変性リゾチームの濃度を測定し、1.5 mLサイズのチューブに1 mgずつ分取し、減圧乾燥を行った。
【実施例】
【0138】
得られた乾燥変性リゾチーム0.3~3.0mgに6 M 尿素/0.05% トリフルオロ酢酸を50 μL加えたのち、下記の組成からなるリフォールディング反応溶液を950 μL加えて、20℃および50℃の各々の条件で16時間静置し、リフォールディング反応を行った。
【実施例】
【0139】
<リフォールディング反応溶液>
(1)50 mM Tris/HCl (pH 8.0)(空気酸化:コントロール)
(2)2 mM GSH, 1 mM GSSG, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(3)5 mM GSH, 5 mM GSSG, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(4)2 mM GSHEE, 1 mM GSSGEE, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(5)5 mM GSHEE, 5 mM GSSGEE, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(6)2 mM GSHAd, 1 mM GSSGEE, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(7)5 mM GSHAd, 5 mM GSSGEE, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)。
【実施例】
【0140】
16時間後、得られた反応液を15,000×g、20℃の条件で遠心分離し、採取した可溶性画分(遠心上清)についてリゾチーム残存濃度およびリゾチーム残存活性の測定を行った。
【実施例】
【0141】
リゾチームの残存濃度は、リゾチームのモル吸光度係数(2.63 mL mg-1 cm-1)、吸光度測定から得られた吸光度を用いて、リゾチームの残存濃度を計算した。なお、リゾチームの残存濃度は、変性前のリゾチーム濃度を100重量%とした場合の相対値(%)として算出した。
【実施例】
【0142】
また、リゾチームの活性は、まず0.5 mg/mLの割合でマイクロコッカスルテウス(Micrococcusluteus)を懸濁した溶液1 mL(和光純薬工業(株))に、リゾチーム溶液(上記で採取した可溶性画分(遠心上清))10μL加えて懸濁したのち、20℃で2分間、波長600 nmの散乱光を測定した(濁度測定)。斯くして得られた濁度の減衰一次関数の傾きから活性値を算出した(参考文献:Biochemistry (1970).9, 5015-5023.)。なお、リゾチームの残存活性は、変性前のリゾチームについて同様に濁度から算出した活性を100重量%とし、これに対する相対値(%)として算出した。
【実施例】
【0143】
(2)実験結果
各種のリフォールディング剤について、リゾチームの残存濃度(%)を測定した結果を図1に、リゾチームの残存活性(%)を測定した結果を図2に、それぞれ示す。
【実施例】
【0144】
蛋白質のリフォールディング反応は、変性状態から天然状態(活性状態)に遷移する際の中間体の溶解性が重要だと考えられている。よって、中間体の溶解性を向上させると、蛋白質間の非特異的な凝集が抑えられ、天然状態の蛋白質を多く得ることができると考えられている。
【実施例】
【0145】
図1では、空気酸化(コントロール)と比べて、還元型/酸化型グルタチオン(GSH/GSSG)の存在下で、リゾチームの残存濃度の増加が確認できる。しかし、初期濃度の約40%前後しかリゾチームは残存しておらず、必ずしもリフォールディングが効率良く行われてはいない。これに対して、リフォールディング反応時に還元型/酸化型グルタチオンエチルエステル(GSHEE、GSSGEE)や還元型グルタチオンアミド(GSHAd)を存在させると、初期濃度の80~90%のリゾチームが残存しており、リフォールディング効率の著しい向上が認められた。特に、リフォールディング剤として5 mM GSHEEおよび5 mM GSSGEEを用いて、50℃で反応させると、ほぼ100%近い割合でリゾチームが回収された。この結果から、還元型/酸化型グルタチオンのエステル誘導体またはアミド誘導体を用いることによりリフォールディング効率を向上させることができ、またリフォールディング条件を適宜調節することで100%またはそれに近いリフォールディング効率が得られる可能性がある。
【実施例】
【0146】
ところで、生体内で生合成され細胞外で機能する蛋白質の多くはジスルフィド結合を有している。このようなジスルフィド結合を有する蛋白質をリフォールディングする際は、酸化還元電位の調節が必要不可欠である。酸化還元電位を調節する試薬が存在しない条件下では、コントロール(空気酸化)の結果から分かるように、リゾチーム(ジスルフィド結合を有する)の活性の復元は、ほぼ0%である。酸化還元電位を調節し、蛋白質科学の研究者が最も頻繁に使用する試薬として、還元型/酸化型グルタチオンが挙げられる。一方、還元型/酸化型グルタチオンは、生体内では小胞体内に多く存在し、生体内での蛋白質のフォールディングに関与していると考えられている。
【実施例】
【0147】
しかし、図2に示すように、かかる還元型/酸化型グルタチオン(GSH/GSSG)を用いてリフォールディング反応を行っても、20~30%のリフォールディング効率しか得られない。これに対して、還元型/酸化型グルタチオンエチルエステル(GSHEE、GSSGEE)や還元型グルタチオンアミド/酸化型グルタチオンエチルエステル(GSHAd、GSSGEE)を用いると、リフォールディング効率が向上し、30~55%のリフォールディング効率を得られた。
【実施例】
【0148】
従来の研究から、最も効率の良いリフォールディング手法としてアルギニンやアルギニンアミドなどの添加剤を加えてリフォールディング反応を行う方法が報告されている。本発明者らは、本発明のリフォールディング剤を用いた場合に得られるリフォールディング収率は、従来の方法で得られるリフォールディング収率と同等またはそれ以上であることを確認している。また、本発明のリフォールディング剤によれば、従来の方法で必要であったリフォールディング反応条件の検索(例えば、添加剤の種類の選択やその使用量の設定など)が不要であり、このため、微量で高価な蛋白質を条件検索のために浪費することを回避できるという利点もある。なお、図2では、還元型ジエチルエステル誘導体、酸化型テトラエステル誘導体の効果を示したものである。しかし、これらの誘導体はいずれも非誘導体であるグルタチオン自体と比べて、顕著な効果を示していることから、モノエチルエステル誘導体などのように、還元型や酸化型グルタチオンの一部のカルボン酸がエステル化されている場合であっても、リフォールディング効率は向上するものと考えられる。
【実施例】
【0149】
実験例2
前述するように、最も効率の良いリフォールディング手法として添加剤としてアルギニンを加えてリフォールディング反応を行う方法が報告されている。そこで、本実験例では、実験例1と同様にして、蛋白質としてリゾチーム(生化学工業(株))を用いて、還元型/酸化型グルタチオン(GSH/ GSSG)、還元型/酸化型グルタチオン(GSH/ GSSG)にアルギニンを添加したもの、還元型/酸化型グルタチオンエチルエステル(GSHEE/ GSSGEE)、および還元型グルタチオンアミド(GSHAd)/酸化型グルタチオンエチルエステル(GSSGEE)のリフォールディング剤としての機能を比較した。なお、各種グルタチオン、グルタチオンエチルエステル、およびグルタチオンアミドはいずれも実験例1で使用したものと同一の化合物を用いた。
【実施例】
【0150】
(1)実験操作
下記の組成からなるリフォールディング反応溶液を950 μL加えて、20℃の条件で16時間静置してリフォールディング反応を行う以外は、実験例1と同様の操作を実施した。
【実施例】
【0151】
<リフォールディング反応溶液>
(1)50 mM Tris/HCl (pH 8.0)(空気酸化:コントロール)
(2)2 mM GSH, 1 mM GSSG, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(3)5 mM GSH, 5 mM GSSG, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(4)5 mM GSH, 5 mM GSSG, 100 mM Arg, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(5)5 mM GSH, 5 mM GSSG, 500 mM Arg, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(6)2 mM GSHEE, 1 mM GSSGEE, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(7)5 mM GSHEE, 5 mM GSSGEE, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(8)2 mM GSHAd, 1 mM GSSGEE, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(9)5 mM GSHAd, 5 mM GSSGEE, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)。
【実施例】
【0152】
16時間後、得られた反応液を15,000×g、20℃の条件で遠心分離し、採取した可溶性画分(遠心上清)について、実験例1と同様にしてリゾチーム残存濃度およびリゾチーム残存活性の測定を行った。
【実施例】
【0153】
(2)実験結果
各種のリフォールディング剤について、リゾチームのリフォールディング活性(%)〔リゾチームの残存濃度(%)、リゾチームの残存活性(%)〕を測定した結果を図3に示す。
【実施例】
【0154】
この図から、還元型/酸化型グルタチオンにアルギニンを併用することで、還元型/酸化型グルタチオンのリフォールディング効果が増強することがわかる。しかしこの場合に使用するアルギニンは500mMといった高濃度であり、試薬に係るコスト面のみならず、リフォールディングした後の活性蛋白質の精製プロセスにも影響を与える。これに対して、本発明のリフォールディング剤(還元型/酸化型グルタチオンエチルエステル(GSHEE/ GSSGEE)、還元型グルタチオンアミド(GSHAd)/酸化型グルタチオンエチルエステル(GSSGEE))によれば、5mM以下の低濃度で、上記高濃度のアルギニンを添加した場合とほぼ同等のリフォールディング効果を得ることができる。これを1mgのリゾチームをリフォールディングするために必要なリフォールディング剤(50mL変性剤溶液中、リフォールディング溶液950μL)の量を絶対量として求めると、5mMのGSHEEおよび GSSGEEはそれぞれ1.8mgおよび3.6mgであるのに対して、500mMのアルギニンは105.3mgにもなる。このように、従来法は、リフォールディング効率を向上するために大量の添加剤を必要としていたのに対して、本発明によれば、かかる添加剤を使用することなく、低濃度のリフォールディング剤でリフォールディング効率を向上させることができる。
【実施例】
【0155】
実験例3
高濃度の蛋白質下における蛋白質のリフォールディングは困難とされている(参考文献:Biosci Biotechnol Biochem. (2000). 64, 1159-65. Journal of Biotechnology 130 (2007) 153-160)。そこで、蛋白質として、種々の濃度(0.1~3mg/ml)のリゾチーム(生化学工業(株))を用いて、各種のリフォールディング剤〔酸化型グルタチオン(GSSG)および還元型グルタチオン(GSH)(以上、和光純薬工業(株)製)、酸化型グルタチオンエチルエステル(GSSGEE)(CAS RN:113679-45-1)および還元型グルタチオンエチルエステル(GSHEE)(CAS RN:97451-40-6)〕が、高濃度の蛋白質溶液下においてリフォールディング反応を促進するかどうかを調べた。
【実施例】
【0156】
(1)実験操作
まず、実験例1と同様の方法により乾燥変性リゾチームを0.1 mg~3.0 mg調製し、これに6 M 尿素/0.05% トリフルオロ酢酸を50μL加えたのち、下記の組成からなるリフォールディング反応溶液を950 μL加えて、20℃の条件で16時間、リフォールディング反応を行った。
【実施例】
【0157】
<リフォールディング反応溶液>
(1)5 mM GSH, 5 mM GSSG, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(2)5 mM GSHEE, 5 mM GSSGEE, 50 mM Tris/HCl (pH8.0)。
【実施例】
【0158】
16時間後、得られた反応液の濁度を600nmの散乱光を用いて測定した。また反応液を15,000×g、20℃の条件で遠心分離し、採取した可溶性画分(遠心上清)について、実験例1に記載する方法に従って、リゾチーム残存濃度およびリゾチーム残存活性を測定した。
【実施例】
【0159】
(2)実験結果
リフォールディング剤(酸化型/還元型グルタチオン、酸化型/還元型グルタチオンエチルエステル)を用いて、各種濃度(0.3~2mg/mL)のリゾチームを処理したときの反応液の濁度(OD600nm)を測定した結果を図4に、リゾチームの残存濃度(%)を測定した結果を図5に、リゾチームの残存活性(%)を測定した結果を図6に、それぞれ示す。
【実施例】
【0160】
蛋白質をリフォールディングする際には、多くの凝集体が得られ、効率の良いリフォールディング反応の構築が望まれる。特に、リフォールディング反応時の蛋白質の濃度が高いと、多くの蛋白質凝集体が生じ、可溶性の天然構造を有する蛋白質を得ようとするリフォールディングの目的に合致しない。
【実施例】
【0161】
図4は、横軸に蛋白質初期濃度(mg/mL)を、縦軸にリフォールディング反応時の濁度(OD600nm)を示したものであり、これから蛋白質初期濃度に応じてリフォールディング反応中に生じる蛋白質の凝集体の割合を確認することができる。還元型/酸化型グルタチオン(GSH/GSSG)を用いた際は、蛋白質初期濃度が増加するにつれて、リフォールディング溶液中の蛋白質の凝集体も増加することがわかる。これに対して、本発明のリフォールディング剤である還元型/酸化型グルタチオンエチルエステル(GSHEE/GSSGEE)を用いると、蛋白質初期濃度の増加に関わらず、リフォールディング溶液中の蛋白質凝集体の生成が著しく抑えられていることが分かる。このことから、本発明のリフォールディング剤によれば、凝集体を生成することによりリフォールディング反応がうまくいかない蛋白質であってもリフォールディングさせ、またその効率を向上させる可能性があることが示唆される。
【実施例】
【0162】
前述するように、蛋白質のリフォールディング反応は、蛋白質初期濃度に依存する。蛋白質初期濃度が高くなれば、リフォールディングする際の蛋白質間の衝突頻度が上がり、凝集体を引き起こしやすくなるからである。このため、リフォールディング効率を上げる戦略として、蛋白質初期濃度を下げることが必要だと考えられている。事実、蛋白質濃度が希薄な溶液では、リフォールディング効率が著しく増加する。しかし、そのような希薄溶液から得られる蛋白質量は少ないため、かかる戦略を採ることは非現実的である。よって、高濃度の蛋白質溶液中で目的蛋白質を大量にリフォールディングさせるための試薬、リフォールディング法の開発が望まれている。
【実施例】
【0163】
図5は可溶性画分のリゾチームの残存濃度を示す。この結果から、リフォールディング剤として還元型/酸化型グルタチオン(GSH/GSSG)用いた場合は、濃度依存的にリゾチームの残存濃度が減少することがわかる。これに対して、発明のリフォールディング剤である還元型/酸化型グルタチオンエチルエステル(GSHEE/GSSGEE)を用いると、大量のリゾチームが可溶性画分に残存することが分かる。これからグルタチオンエチルエステルを用いた場合のリフォールディング効率を算出すると、グルタチオンを用いた場合の約2~12倍となる。またグルタチオンエチルエステルを用いると、従来のリフォールディング剤では不可能と考えられている蛋白質濃度(3 mg/mL以上)でも高いリゾチーム残存濃度を示すことから、本発明のリフォールディング剤は、従来のものに比してより有効なリフォールディング試薬になると考えられる。
【実施例】
【0164】
また図6は可溶性画分のリゾチームの残存活性を示す。この結果からわかるように、リフォールディング剤として本発明の還元型/酸化型グルタチオンエチルエステル(GSHEE/GSSGEE)を用いると、リゾチーム濃度がいずれの濃度条件下(図では、0.1~3mg/mL)でも、還元型/酸化型グルタチオン(GSH/GSSG)を用いた場合よりも高いリフォールディング効率を示した。このことからも、本発明のリフォールディング剤は、有効なリフォールディング剤であると考えられる。
【実施例】
【0165】
実験例4
蛋白質としてリボヌクレアーゼA、カルボニックアンヒドラーゼ、およびアミロイド前駆体蛋白質(膜蛋白質)を用いて、各種のリフォールディング剤〔酸化型グルタチオン(GSSG)および還元型グルタチオン(GSH)(以上、和光純薬工業(株)製)、酸化型グルタチオンエチルエステル(GSSGEE)(CAS RN:113679-45-1)および還元型グルタチオンエチルエステル(GSHEE)(CAS RN:97451-40-6)、酸化型グルタチオンテトラメチルエステル(「酸化型グルタチオンメチルエステル」または「GSSGME」ともいう)(CAS RN:96586-74-2)および還元型グルタチオンジメチルエステル(「還元型グルタチオンメチルエステル」または「GSHME」ともいう)(CAS RN:97451-41-7)〕のリフォールディング効果を確認した。なお、上記蛋白質のうち、リボヌクレアーゼAとアミロイド前駆体蛋白質は、ジスルフィド結合を有する蛋白質であり、カルボニックアンヒドラーゼはジスルフィド結合を有しない蛋白質である。
【実施例】
【0166】
(1)実験操作
(1-1) リボヌクレアーゼA
20~40 mgのリボヌクレアーゼAを1.5 mLサイズのチューブに秤量し、これに変性試薬(8 M 尿素, 40 mM ジチオスレイトール, 0.1 M トリスアミノプロパン (pH 8.0) )(以上、和光純薬工業(株))を1 mL加えて、50℃で 2 時間処理してリボヌクレアーゼAを変性させた。変性したリボヌクレアーゼAを逆相樹脂(コスモシール 140C18-OPN, ナカライテスク(株))に吸着させ、次いで10% アセトニトリル(関東化学(株))/0.05% トリフルオロ酢酸(和光純薬工業(株))で樹脂を洗浄したのち、80% アセトニトリル/0.05% トリフルオロ酢酸で変性リボヌクレアーゼAを溶出した。吸光度計(波長280nm)を用いて変性リボヌクレアーゼAの濃度を測定し、1.5 mLサイズのチューブに1 mgずつ分取し、減圧乾燥を行った。
【実施例】
【0167】
得られた乾燥変性リボヌクレアーゼA1mgに6 M 尿素/0.05% トリフルオロ酢酸を50 μL加えたのち、下記の組成からなるリフォールディング反応溶液を950 μL加えて、20℃の条件で16時間、リフォールディング反応を行った。
【実施例】
【0168】
<リフォールディング反応溶液>
(1)5 mM GSH, 5 mM GSSG, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(2)5 mM GSHEE, 5 mM GSSGEE, 50 mM Tris/HCl (pH8.0)。
【実施例】
【0169】
16時間後、得られた反応液を15,000×g、20℃の条件で遠心分離し、採取した可溶性画分(遠心上清)について、実験例1と同様の方法によりリボヌクレアーゼAの残存濃度を測定した。
【実施例】
【0170】
(1-2) カルボニックアンヒドラーゼ
25 mgのカルボニックアンヒドラーゼに6 M 尿素/0.05% トリフルオロ酢酸(1 mL)を加えて変性させた後に、50μLの変性カルボニックアンヒドラーゼにリフォールディング剤として還元型/酸化型グルタチオン、還元型/酸化型グルタチオンエチルエステル含む下記組成からなるリフォールディング反応溶液を950μL加えて20℃の条件で16時間、リフォールディング反応を行った。
【実施例】
【0171】
<リフォールディング反応溶液>
(1)5 mM GSH, 5 mM GSSG, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(2)5 mM GSHEE, 5 mM GSSGEE, 50 mM Tris/HCl (pH8.0)。
【実施例】
【0172】
16時間後、得られた反応液を15,000×g、20℃の条件で遠心分離し、採取した可溶性画分(遠心上清)について、実験例1と同様の方法によりカルボニックアンヒドラーゼの残存濃度を測定した。
【実施例】
【0173】
(1-3) アミロイド前駆体蛋白質
大腸菌発現系より、アミロイド前駆体蛋白質を大量に発現させ、Niクロマトグラフィー、陰イオン交換より、アミロイド前駆体蛋白質を調製した。これを5 M 尿素, 5 mM メルカプトエタノールにて変性し、得られた変性アミロイド前駆体蛋白質(40μL)にリフォールディング剤として還元型/酸化型グルタチオン、還元型/酸化型グルタチオンエチルエステル、還元型/酸化型グルタチオンメチルエステルを含む下記組成からなるリフォールディング反応溶液を460μL加えて、20℃の条件で16時間、リフォールディング反応を行った。
【実施例】
【0174】
<リフォールディング反応溶液>
(1)5 mM GSH, 5 mM GSSG, 50 mM Tris/HCl (pH 8.0)
(2)5 mM GSHEE, 5 mM GSSGEE, 50 mM Tris/HCl (pH8.0)
(3)5 mM GSHME, 5 mM GSSGME, 50 mM Tris/HCl (pH8.0)。
【実施例】
【0175】
16時間後、得られた反応液を15,000×g、20℃の条件で遠心分離し、採取した可溶性画分(遠心上清)について、実験例1と同様の方法によりアミロイド前駆体蛋白質の残存濃度を測定した。
【実施例】
【0176】
(2)実験結果
結果を図7に示す。リフォールディング効率は、還元型/酸化型グルタチオン存在下でリフォールディング反応した後に検定した蛋白質残存濃度と、本発明のリフォールディング剤である還元型/酸化型グルタチオンエチルエステルまたは還元型/酸化型グルタチオンメチルエステルのそれぞれの存在下でリフォールディング反応した後に検定した蛋白質残存濃度に対する相対値として算出した。
【実施例】
【0177】
蛋白質の種類および機能は多岐に富んでいる。このため、蛋白質科学の分野では、モデル蛋白質(リゾチーム)を用いて効果の検討をするだけではなく、様々な蛋白質においてその効果が実証される必要があると考えられている。
【実施例】
【0178】
この実験では、ジスルフィド結合を有す他の蛋白質としてリボヌクレアーゼA、ジスルフィド結合を有さない蛋白質としてカルボニックアンヒドラーゼ、およびリフォールディングが困難とされている膜蛋白質としてアミロイド前駆体蛋白質を用いて、リフォールディング効率を検討した。その結果、図6に示すように、どの蛋白質においても還元型/酸化型グルタチオンエチルエステルや還元型/酸化型グルタチオンメチルエステルといった還元型/酸化型グルタチオンのエステル誘導体からなる本発明のリフォールディング剤を用いることにより、還元型/酸化型グルタチオンを用いた場合よりも、リフォールディング効率が向上することが確認された。
【実施例】
【0179】
近年、蛋白質科学の分野においては、病気、疾患などに関与する膜蛋白質が注目を集めている。しかし、これらの膜蛋白質の発現は困難を極め、またリフォールディングも困難とされている。この理由として、膜蛋白質は他の蛋白質と比べて高分子量である、他の蛋白質と比べて疎水性のアミノ酸が多く存在すると、いったことが挙げられる。しかし、本実験例の結果から、本発明のリフォールディング剤を用いると、この困難とされる膜蛋白質や高分子量蛋白質についてもリフォールディング効率を向上させることが可能であると考えられる。また、本発明のリフォールディング剤は、疎水性に富む蛋白質においても有効であると考えられる。さらに本発明のリフォールディング剤は、カルボニックアンヒドラーゼのようなジスルフィド結合を有さない蛋白質においても有効であることから、幅広い蛋白質のリフォールディングに有効であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】各種のリフォールディング剤(2mM GSH/1mM GSSG、5mM GSH/5mM GSSG、2mM GSHEE/1mM GSSGEE、5mM GSHEE/5mM GSSGEE、2mM GSHAd/1mM GSSGEE、5mM GSHAd/5mM GSSGEE)を用いて、変性リゾチームを処理し(処理温度20℃および50℃)、得られたリゾチームの残存濃度(%)を比較した結果を示す(実験例1)。
【図2】各種のリフォールディング剤(2mM GSH/1mM GSSG、5mM GSH/5mM GSSG、2mM GSHEE/1mM GSSGEE、5mM GSHEE/5mM GSSGEE、2mM GSHAd/1mM GSSGEE、5mM GSHAd/5mM GSSGEE)を用いて、変性リゾチームを処理し(処理温度20℃および50℃)、得られたリゾチームの残存活性(%)を比較した結果を示す(実験例1)。
【図3】各種のリフォールディング剤(2mM GSH/1mM GSSG、5mM GSH/5mM GSSG、5mM GSH/5mM GSSG+100mM Arg、5mM GSH/5mM GSSG+500mM Arg、2mM GSHEE/1mM GSSGEE、5mM GSHEE/5mM GSSGEE、2mM GSHAd/1mM GSSGEE、5mM GSHAd/5mM GSSGEE)を用いて、変性リゾチームを処理し(処理温度20℃)、得られたリゾチームのリフォールディング効率(%)(残存濃度(%)および残存活性(%))を比較した結果を示す(実験例2)。
【図4】リフォールディング剤(5 mM GSH/5 mM GSSG、5 mM GSHEE/5 mM GSSGEE)を用いて、各種濃度の変性リゾチーム(0.3~2mg/mL)を処理し(処理温度20℃)、得られた反応液の濁度(OD600nm)を比較した結果を示す(実験例2)。
【図5】リフォールディング剤(5 mM GSH/5 mM GSSG、5 mM GSHEE/5 mM GSSGEE)を用いて、各種濃度の変性リゾチーム(アンフォールディングリゾチーム)(0.3~3mg/mL)を処理し(処理温度20℃)、得られたリゾチームの残存濃度(%)を比較した結果を示す(実験例2)。
【図6】リフォールディング剤(5 mM GSH/5 mM GSSG、5 mM GSHEE/5 mM GSSGEE)を用いて、各種濃度の変性リゾチーム(アンフォールディングリゾチーム)(0.1~3mg/mL)を処理し(処理温度20℃)、得られたリゾチームの残存活性(%)を比較した結果を示す(実験例2)。
【図7】リフォールディング剤(5 mM GSH/5 mM GSSG、5 mM GSHEE/5 mM GSSGEE、5 mM GSHME/5 mM GSSGME、)を用いて、異なる変性蛋白質(アンフォールディング・リボヌクレアーゼA、アンフォールディング・カルボニックアンヒロラーゼ、アンフォールディング・アミロイド前駆体蛋白質)を処理し(処理温度20℃)、得られた蛋白質の残存濃度(%)からリフォールディング効率を算出した結果を示す(実験例3)。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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