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明細書 :高分子グラフト微粒子によるコロイド結晶の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4982748号 (P4982748)
登録日 平成24年5月11日(2012.5.11)
発行日 平成24年7月25日(2012.7.25)
発明の名称または考案の名称 高分子グラフト微粒子によるコロイド結晶の製造方法
国際特許分類 C08F 292/00        (2006.01)
B01J  13/00        (2006.01)
FI C08F 292/00
B01J 13/00 Z
請求項の数または発明の数 23
全頁数 21
出願番号 特願2006-512988 (P2006-512988)
出願日 平成17年4月28日(2005.4.28)
国際出願番号 PCT/JP2005/008249
国際公開番号 WO2005/108451
国際公開日 平成17年11月17日(2005.11.17)
優先権出願番号 2004139213
優先日 平成16年5月7日(2004.5.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年10月10日(2007.10.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】大野 工司
【氏名】辻井 敬旦
【氏名】福田 猛
個別代理人の代理人 【識別番号】100105315、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 温
審査官 【審査官】和田 勇生
参考文献・文献 特開2003-252916(JP,A)
特開2002-327030(JP,A)
特開2001-131208(JP,A)
特開2003-327638(JP,A)
調査した分野 C08F 292/00
C08F 291/00
C08F 2/00-44
B01J 13/00
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
リビングラジカル重合により高分子グラフト鎖を微粒子表面に結合させた複合微粒子において、0.1~1.2本鎖/nmのグラフト密度を有し、前記高分子グラフト鎖の分子量分布が1~1.5であると共に、前記微粒子が50nm~1μmの粒径を有する単分散微粒子である合微粒子であって、
前記複合微粒子が、以下の式:
【化1】
JP0004982748B2_000004t.gif
(式中、nは3~10の整数であり、RはC1~C3アルキルを表し、RはC1~C2アルキルを表し、Xはハロゲン原子を表す)で表される化合物を前記微粒子に結合させて前記微粒子表面に重合開始基を形成した後、リビングラジカル重合により高分子グラフト鎖を微粒子表面に結合させたものである、複合微粒子
【請求項2】
0.6~1.2本鎖/のグラフト密度を有する、請求項1に記載の複合微粒子。
【請求項3】
前記高分子グラフト鎖は、微粒子表面上の重合開始基を基点とした、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、スチレン誘導体、酢酸ビニルまたはアクリロニトリルのリビングラジカル重合によって得られる、請求項1または2に記載の複合微粒子。
【請求項4】
前記微粒子は、100nm~1μmの粒径を有する単分散微粒子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合微粒子。
【請求項5】
前記微粒子は、シリカ、金属酸化物または金属硫化物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合微粒子。
【請求項6】
互いに隣接する複合微粒子の複数の高分子グラフト鎖間に化学結合が形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合微粒子。
【請求項7】
前記化学結合は、前記高分子グラフト鎖の側鎖間の架橋または重合により形成される、請求項6に記載の複合微粒子。
【請求項8】
前記化学結合は、前記高分子グラフト鎖を光または熱に曝露することで形成される、請求項7に記載の複合微粒子。
【請求項9】
リビングラジカル重合により高分子グラフト鎖を微粒子表面に結合させた複合微粒子において、0.1~1.2本鎖/nmのグラフト密度を有し、前記高分子グラフト鎖の分子量分布が1~1.5であると共に、前記微粒子が50nm~1μmの粒径を有する単分散微粒子である複合微粒子を溶媒に分散させてなるコロイド結晶構造体。
【請求項10】
0.6~1.2本鎖/nmのグラフト密度を有する、請求項9に記載のロイド結晶構造体。
【請求項11】
前記高分子グラフト鎖は、微粒子表面上の重合開始基を基点とした、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、スチレン誘導体、酢酸ビニルまたはアクリロニトリルのリビングラジカル重合によって得られる、請求項9または10に記載のコロイド結晶構造体。
【請求項12】
前記微粒子は、100nm~1μmの粒径を有する単分散微粒子である、請求項9~11のいずれか1項に記載のコロイド結晶構造体。
【請求項13】
前記微粒子は、シリカ、金属酸化物または金属硫化物である、請求項9~12のいずれか1項に記載のコロイド結晶構造体。
【請求項14】
互いに隣接する複合微粒子の複数の高分子グラフト鎖間に化学結合が形成されている、請求項9~13のいずれか1項に記載のコロイド結晶構造体。
【請求項15】
前記化学結合は、前記高分子グラフト鎖の側鎖間の架橋または重合により形成される、請求項14に記載のコロイド結晶構造体。
【請求項16】
前記化学結合は、前記高分子グラフト鎖を光または熱に曝露することで形成される、請求項15に記載のコロイド結晶構造体。
【請求項17】
前記複合微粒子が、以下の式:
【化1】
JP0004982748B2_000005t.gif
(式中、nは3~10の整数であり、RはC1~C3アルキルを表し、RはC1~C2アルキルを表し、Xはハロゲン原子を表す)で表される化合物を前記微粒子に結合させて前記微粒子表面に重合開始基を形成した後、リビングラジカル重合により高分子グラフト鎖を微粒子表面に結合させた、請求項9~16のいずれか1項に記載のコロイド結晶構造体。
【請求項18】
以下の工程:
a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;および
b)表面に重合開始基を有する微粒子と、モノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が微粒子表面に結合した複合微粒子を得る工程、
を包含する、請求項1~8のいずれか1項に記載の複合微粒子を製造する方法。
【請求項19】
以下の工程:
a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;
b)表面に重合開始基を有する微粒子と、モノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が微粒子表面に結合した複合微粒子を形成する工程;および
c)工程b)で得られた複合微粒子を、溶媒中に分散させる工程、
を包含する、請求項9に記載の複合微粒子のコロイド結晶構造体を製造する方法。
【請求項20】
工程c)における前記複合微粒子の濃度は、該複合微粒子同士が接する濃度である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
以下の工程:
a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;
b)表面に重合開始基を有する微粒子と、光または熱感応性基を有するモノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が微粒子表面に結合した複合微粒子を形成する工程;
c)工程b)で得られた微粒子を、溶媒中に分散させる工程;および
d)工程c)で得られた分散体を光または熱に曝露させ、互いに隣接する該複合微粒子の複数の高分子グラフト鎖間に化学結合を形成する工程、
を包含する、請求項9に記載の複合微粒子のコロイド結晶構造体を製造する方法。
【請求項22】
前記モノマーは、オキセタンメタクリレート、オキセタンアクリレート、シンナモイルエチルアクリレートまたはシンナモイルエチルメタクリレートである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記複合微粒子の濃度が、1~30重量%である、請求項19又は20記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子、およびその複合微粒子から形成されるコロイド結晶構造体に関する。より詳細には、将来、光通信分野、カラー映像機器および高出力レーザー分野等への応用が期待される規則性の高いコロイド結晶に関する。本発明はさらに、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子およびコロイド結晶構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面グラフト重合は、nmからμmオーダーのグラフト層を形成させることが可能であり、また、重合するモノマーの種類を変えることにより多様な表面特性を付与できることから広く行われている表面改質法の一つである。特に、材料表面に導入された重合開始基を用いる場合、高い密度でのグラフト化が期待できる。そして、この表面グラフト重合においては、従来では、表面特性と深く関わるグラフト鎖の分子量、分子量分布およびグラフト密度(グラフト鎖の表面密度)を制御することは困難な状況にあったが、本発明者らは、リビングラジカル重合の簡便性と原理的単純性に着目し、表面グラフト重合への応用の可能性をいち早く見出し、表面開始によるリビング・グラフト重合の検討に着手した。リビングラジカル重合は、ラジカル重合によって分子量分布が狹く、しかも構造の明確な高分子を簡便に合成し得るものとして近年世界的に注目されている重合法で、適用可能なモノマー種が広範であることや操作が簡便であることなど、他のリビング重合系にはない利点を有しているからである。そして、この重合法の適応により本発明者らは、鎖長および鎖長分布の制御された高分子鎖を従来に比を見ない高い密度でグラフトすることに成功し、さらに、隣接グラフト鎖間の立体反発によりグラフト鎖はほぼ伸びきった形態をとり、文字通りのポリマーブラシを形成することを明らかにした(特許文献1参照)。その結果、この方法は、異方性の高い均一性に優れた超薄膜を形成し得る新しい表面修飾法として確立されるに至っている。最近では、超高密度グラフト化表面の構造と物性を系統的に評価し、幾つかの特異な力学的、熱的、レオロジー的性質を発見している。その一例として、この超高密度グラフト膜を良溶媒中に入れると、隣接鎖間の立体反発によりグラフト鎖は表面に垂直な方向にほぼ伸びきった形態をとり、比較的低密度なグラフト膜には認められない圧縮に対する強い反発力を示すことを原子間力顕微鏡による特性解析から明らかにした。
【0003】
このような知見はこれまでに知られていない画期的なものであり、ナノ高分子構造の新しい技術の展開を可能とするものであるが、本発明者らは、さらにこの技術をベースとして、理想的なnmオーダーの高分子グラフト微粒子を合成しこれらを結晶状に規則正しく配列させることができれば、ナノ光学材料として有望な新しい高分子コロイド結晶を提供することができることに着眼した。本発明者らはこれまでに、グラフト鎖層が表面に配設された微粒子を合成し、その複数の高分子グラフト微粒子をナノスケールで二次元または三次元に配列させた高分子グラフト微粒子の秩序構造体の構築を試みてきた(特許文献2参照)。具体的には、100nm以下、さらには50nm以下の金(Au)ナノ微粒子の表面に、重合開始基を有するジスルフィド化合物を自己吸着させ、微粒子の表面に固定していない開始剤化合物の共存下に、リビングラジカル・グラフト重合を行い、得られる高分子グラフト微粒子からLangmuir-Blodget(LB)法による単粒子膜、多層粒子膜、およびキャストフィルムを形成させている。しかしながら、現在のところ入手できる金ナノ粒子は粒径が小さいために、その表面からグラフト重合させる際に粒子の曲率の影響を受け、グラフト化の密度が低くなり、その結果コロイド結晶を形成するまでには至っていない。しかも、金ナノ微粒子は、それ自体が可視光領域に吸収をもつためブラッグ反射が得られず、光通信分野、カラー映像機器および高出力レーザー分野におけるナノ光学材料としては不向きである。

【特許文献1】特開平11-263819
【特許文献2】特開2003-327641
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を合成し、その複合微粒子から将来ナノ光学材料として有望なコロイド結晶構造体を構築することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、微粒子表面上の重合開始基からリビングラジカル重合させて得られるグラフト鎖の高密度化および狭い鎖長分布を確認し、さらにその複合微粒子の分散液がコロイド結晶の形成を示唆するオパール発色を呈することを確認できたことにより、上記課題を解決した。
【0006】
従って、本発明は、以下を提供する。
(1)高分子グラフト鎖が、グラフト鎖間で立体反発が生じるまでに超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子。
(2)0.1~1.2本鎖/nmのグラフト密度を有する、項目(1)に記載の複合微粒子。
(3)上記高分子グラフト鎖は、微粒子表面上の重合開始基を基点とした、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、スチレン誘導体、酢酸ビニルまたはアクリロニトリルのリビングラジカル重合によって得られる、項目(1)または(2)に記載の複合微粒子。
(4)上記高分子グラフト鎖の分子量分布は、1~1.5である、項目(1)~(3)のいずれか1項に記載の複合微粒子。
(5)上記微粒子は、50nm~1μmの粒径を有する単分散微粒子である、項目(1)~(4)のいずれか1項に記載の複合微粒子。
(6)上記微粒子は、100nm~1μmの粒径を有する単分散微粒子である、項目(1)~(4)のいずれか1項に記載の複合微粒子。
(7)上記微粒子は、シリカ、金属酸化物または金属硫化物である、項目(1)~(6)のいずれか1項に記載の複合微粒子。
(8)互いに隣接する複合微粒子の複数の高分子グラフト鎖間に化学結合が形成されている、項目(1)~(7)のいずれか1項に記載の複合微粒子。
(9)上記化学結合は、上記高分子グラフト鎖の側鎖間の架橋または重合により形成される、項目(8)に記載の複合微粒子。
(10)上記化学結合は、上記高分子グラフト鎖を光または熱に曝露することで形成される、項目(9)に記載の複合微粒子。
(11)以下の式:
【0007】
【化2】
JP0004982748B2_000002t.gif
(式中、nは3~10の整数であり、RはC1~C3アルキルを表し、RはC1~C2アルキルを表し、Xはハロゲン原子を表す)で表される化合物が微粒子表面に結合した微粒子の重合開始基を基点とした、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、スチレン誘導体、酢酸ビニルまたはアクリロニトリルのリビングラジカル重合によって得られる、複合微粒子。
(12)高分子グラフト鎖が微粒子表面に結合した複合微粒子のコロイド結晶構造体。
(13)項目(1)~(11)のいずれか1項に記載の複合微粒子のコロイド結晶構造体。
(14)以下の工程:a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;およびb)表面に重合開始基を有する微粒子と、モノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を得る工程、を包含する、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した項目(1)~(11)のいずれか1項)に記載の複合微粒子を製造する方法。
(15)以下の工程:a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;b)表面に重合開始基を有する微粒子と、モノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を形成する工程;およびc)工程b)で得られた複合微粒子を、溶媒中に分散させる工程、を包含する、高分子グラフト鎖が微粒子表面に結合した項目(12)または(13)に記載の複合微粒子のコロイド結晶構造体を製造する方法。
(16)工程c)における上記複合微粒子の濃度は、該複合微粒子同士が接する濃度である、項目(15)に記載の方法。
(17)以下の工程:a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;b)表面に重合開始基を有する微粒子と、光または熱感応性基を有するモノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を形成する工程;c)工程b)で得られた微粒子を、溶媒中に分散させる工程;およびd)工程c)で得られた分散体を光または熱に曝露させ、互いに隣接する複合微粒子の複数の高分子グラフト鎖間に化学結合を形成する工程、を包含する、高分子グラフト鎖が微粒子表面に結合した項目(12)または(13)に記載の複合微粒子のコロイド結晶構造体を製造する方法。
(18)上記モノマーは、オキセタンメタクリレート、オキセタンアクリレート、シンナモイルエチルアクリレートまたはシンナモイルエチルメタクリレートである、項目(17)に記載の方法。
(19)上記工程d)が、開始剤の存在下で行われる、項目(17)に記載の方法。
(20)上記モノマーが、オキセタンメタクリレートまたはオキセタンアクリレートである、項目(19)に記載の方法。
(21)以下の工程:a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;b)表面に重合開始基を有する微粒子と、光または熱感応性基を有さないモノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を形成する工程;c)工程b)で得られた微粒子のグラフト鎖の末端と、光または熱感応性基を有するモノマーとを反応させ、光または熱感応性基を該グラフト鎖の末端に導入する工程;d)工程c)で得られた微粒子を、溶媒中に分散させる工程;およびe)工程d)で得られた分散体を光または熱に曝露させ、互いに隣接する該複合微粒子の複数の高分子グラフト鎖間に化学結合を形成する工程、を包含する、高分子グラフト鎖が微粒子表面に結合した項目(12)または(13)に記載の複合微粒子のコロイド結晶構造体を製造する方法。
(22)上記光または熱感応性基を有するモノマーは、オキセタンメタクリレート、オキセタンアクリレート、シンナモイルエチルアクリレートまたはシンナモイルエチルメタクリレートである、項目(21)に記載の方法。
(23)上記工程d)が、開始剤の存在下で行われる、項目(21)に記載の方法。
(24)上記光または熱感応性基を有するモノマーが、オキセタンメタクリレートまたはオキセタンアクリレートである、項目(23)に記載の方法。
(25)以下の工程:a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;b)表面に重合開始基を有する微粒子と、モノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を形成する工程;c)工程b)で得られた複合微粒子を、溶媒中に分散させる工程;およびd)工程c)で得られた分散体を該溶媒の融点以下に温度を下げる工程、包含する、高分子グラフト鎖が微粒子表面に結合した項目(12)または(13)に記載の複合微粒子のコロイド結晶構造体を製造する方法。
(26)以下の工程:a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;b)表面に重合開始基を有する微粒子と、モノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を形成する工程;c)工程b)で得られた複合微粒子と、多官能性モノマーまたはオリゴマーとを、溶媒中に分散させる工程;およびd)工程c)で得られた分散体を光または熱に曝露させ、該多官能性モノマーまたはオリゴマー間に化学結合を形成する工程、を包含する、高分子グラフト鎖が微粒子表面に結合した項目(12)または(13)に記載の複合微粒子のコロイド結晶構造体を製造する方法。
(27)上記工程d)が、開始剤の存在下で行われる、項目(26)に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を提供することができ、その複合微粒子から将来ナノ光学材料として有望なコロイド結晶構造体を構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の高密度グラフト膜を有するシリカ微粒子の合成方法を示す。
【図2】図2は、重合時間に対するモノマー転化率の一次プロットを示す。
【図3】図3は、モノマー転化率に対する遊離ポリマーおよびグラフトポリマーのM及びM/Mを示す。
【図4】図4は、重合時間とグラフト密度との関係を示す。
【図5】図5は、PMMA-SiPの水面単分子膜のTEM写真(シリカ粒子の直径は130nmであり、グラフトポリマーのMは(a)139000,(b)354000である)を示す。
【図6】図6は、PMMA-SiPのトルエン分散液を示す。
【図7】図7は、高密度グラフト化ローダミン標識シリカ微粒子分散液のCSLM写真を示す。
【図8】図8は、超高密度グラフト鎖が微粒子表面に結合した複合微粒子によるコロイド結晶の構築概念図である。
【図9】図9は、様々な濃度のPMMA-SiP分散液の写真である。
【図10】図10は、図9の結果から得られたPMMA-SiP分散液の相図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0011】
(用語)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0012】
本明細書において「高分子グラフト鎖」とは、微粒子表面から重合反応によって伸長して形成された鎖長が2個以上のポリマー鎖を意味する。
【0013】
本明細書において「グラフト密度」または「密度」とは、微粒子表面の単位面積(nm)あたりの表面に結合したグラフト鎖の本数を意味する。グラフト密度は、元素分析により微粒子表面から伸長して形成された高分子グラフト鎖の量(グラフト量)を求め、その値と微粒子の比重(g/cm)および表面積(nm)、さらにグラフトポリマーのMnを用いて算出される。
【0014】
本明細書において「超高密度」とは、従来に比をみないレベルの高いグラフト密度を意味し、グラフト鎖間で立体反発が生じるまでにグラフト鎖が密集した場合のグラフト鎖の密度を意味し、この場合グラフト鎖は、表面に垂直な方向にほぼ伸びきった形態をとる。例えば、ポリメタクリル酸メチル鎖がグラフトされた場合、0.1本鎖/nm以上の超高密度が達成される。
【0015】
本明細書において「微粒子」とは、50nm~1μmの粒径をもつ単分散型の粒子であれば特に制限はなく、無機物質であってもよいし有機物質であってもよい。
【0016】
本明細書において「複合微粒子」とは、高分子グラフト鎖が微粒子表面に結合して形成されるものを意味し、本明細書では上で定義した「微粒子」と区別して使用される。
【0017】
本明細書において「結合」とは、一般的な化学反応により形成される結合を意味し、具体的には、共有結合およびイオン結合が挙げられる。
【0018】
本明細書において「リビングラジカル重合」とは、連鎖移動反応および停止反応のない、または無視できるほど小さい重合反応では、重合反応終了後でも生成重合体の末端に重合活性を保持しており、モノマーを加えると再び重合反応を開始させることができるような重合を意味する。リビングラジカル重合の特徴としては、モノマーと重合開始剤の濃度比を調節することにより任意の平均分子量をもつ重合体の合成ができること、また、生成する重合体の分子量分布が極めて狭いこと、ブロック共重合体へ応用できること、などが挙げられる。本明細書中では、リビングラジカル重合は「LRP」と略して使用される。また、グラフト鎖を構成するラジカル重合可能なモノマーとして、例えば、MMA(メチルメタクリレート)、スチレン、酢酸ビニル等が例示される。
【0019】
本明細書において「リビングラジカル重合条件下」とは、微粒子の表面上に設けた重合開始基を基点とするリビングラジカル重合が確実にかつ良好に進行するために当業者が適宜選択した重合条件を採用することを意味する。
【0020】
本明細書において「重合開始基」とは、モノマーに少量添加され重合反応の開始の役割を果たす物質を意味し、そのような役割を果たすものであれば、特に限定されない。
【0021】
本明細書において「コロイド結晶」とは、一般にnmオーダーの微粒子が液体中に分散したコロイド分散液中で、その微粒子が結晶状に規則正しく配列したものを意味し、多結晶体のモルフォロジー、核生成、結晶成長機構などどれをとっても結晶と同様の挙動をとる。コロイド結晶内の微粒子は、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子間に反発力が働いた状態でゆらいでいる。コロイド結晶は、特有の構造色を呈する。「構造色」とは、光の波長のオーダーでの規則構造に光が当たって生ずる色調の発現を意味する。構造色は、コロイド結晶が形成されているかどうか確認するための重要な指標となる。
【0022】
本発明において「コロイド結晶を固定化する」とは、上で定義したコロイド結晶内で規則正しく配列した粒子の相対的位置関係が少なくとも一定期間保持されるように処理を施すことを意味する。このようなコロイド結晶の固定化は、例えば、(1)上で定義したコロイド結晶内で規則正しく配列した粒子同士を化学結合によってつなぐ;(2)コロイド結晶を作製した後、分散溶媒の融点以下に温度を下げる;(3)コロイド結晶の分散溶媒中に多官能性モノマーまたはオリゴマーを共存させ、結晶化後、開始剤の存在下または非存在下において光または熱処理する、のいずれかの方法によって行われる。
【0023】
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0024】
1つの局面において、本発明は、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を提供する。高分子グラフト鎖を従来に比を見ない超高密度で微粒子表面にグラフトすることにより、良溶媒中において、系全体の複合微粒子間に圧縮に対する強い反発力が得られ(図8)、これによって複合微粒子はコロイド結晶を形成することができる(図6および7)。このような複合微粒子間に圧縮反発力を生じるには、微粒子表面上のグラフト密度が0.1~1.2本鎖/nmの超高密度であることが好ましく、より好ましくは0.4~1.2本鎖/nmであり、さらにより好ましくは0.6~1.2本鎖/nmである。高分子グラフト鎖は、微粒子表面上の重合開始基を基点としたモノマーのリビングラジカル重合によって得られる。上記モノマーの種類としては、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、スチレン誘導体、酢酸ビニル、アクリロニトリルまたはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されず、当業者の認識する範囲内で適宜選択される。
【0025】
系全体の複合微粒子間に圧縮反発力を均等に作用させるには、高分子グラフト鎖の分子量分布は1~1.5が好ましく、特に1にほぼ近い値がより好ましい。
【0026】
微粒子表面から超高密度でグラフト重合させるためには、50nm~1μmの粒径を有する単分散微粒子であることが好ましく、さらに好ましくは100nm~1μmの粒径を有する単分散微粒子である。粒径が50nmを下回ると、微粒子表面からグラフト重合させる際に粒子の曲率の影響を受けるために、グラフト化の密度が低くなり複合微粒子間に圧縮反発力が得られないため、結果としてコロイド結晶は形成されず、好ましくない。粒径が1μmを上回ると、得られるコロイド結晶の光学特性が悪く、光通信分野、カラー映像機器および高出力レーザー分野におけるナノ光学材料への応用には向いていない。溶媒中での複合微粒子の分散が容易ではなく好ましくない。
【0027】
本発明で使用される微粒子として、代表的に、シリカ等のケイ素酸化物;Au(金)、Ag(銀)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)等の貴金属;Ti、Zr、Ta、Sn、Zn、Cu、V、Sb、In、Hf、Y、Ce、Sc、La、Eu、Ni、Co、Fe等の遷移金属、それらの酸化物または窒化物等の無機物質;あるいは有機物質であるものが挙げられるが、これらに限定されない。高分子グラフト鎖の高密度化の観点において、好ましい微粒子は、シリカ、金属酸化物または金属硫化物であり、0.4~1.2本鎖/nmのグラフト密度が達成される。一方Au(金)などの微粒子を使用すると、せいぜい0.3本鎖/nmのグラフト密度にとどまる。
【0028】
別の局面において、本発明の高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子は、以下の工程を経て製造される:
a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;
b)表面に重合開始基を有する微粒子と、モノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を得る工程。
【0029】
好ましい実施形態において、上記工程a)で、リビングラジカル重合のための重合開始基を微粒子表面に結合させるために、以下の式:
【0030】
【化3】
JP0004982748B2_000003t.gif
で表される、重合開始基含有シランカップリング剤、または重合開始基含有シランカップリング剤と重合開始基を含有しないシランカップリング剤との組み合わせを微粒子表面に結合させるという手順がとられる。
【0031】
式中、スペーサー鎖長nは3~10の整数であることが好ましく、4~8の整数がより好ましく、6が最も好ましい。RはC1~C3アルキルであることが好ましく、C1またはC2アルキルがより好ましい。RはC1またはC2アルキルであることが好ましい。Xはハロゲン原子が好ましく、特にBrが好ましい。本明細書において「アルキル」とは、メタン、エタン、プロパンのような脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にC2n+1-で表される(ここで、nは正の整数である)。アルキルは、直鎖または分枝鎖であり得る。上記の重合開始基含有シランカップリング剤は、一般的な有機化学に基づいて、図1の合成手順により合成することができる。代表的な重合開始基含有シランカップリング剤には、例えば(2-ブロモ-2-メチル)プロピオニルオキシヘキシルトリエトキシシラン(BHE)などが挙げられる(図1)。また、代表的な重合開始基を含有しないシランカップリング剤には、例えば、一般に使用されるアルキルシランカップリング剤などが挙げられる。
【0032】
上記のようにして得られる、表面に重合開始基を有する微粒子と、上に挙げたモノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させることにより、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を得ることができる((工程b))。ここで、表面に重合開始基を有する微粒子と接触させるモノマーの種類は、単独であってもよいし、複数であってもよい。
【0033】
微粒子表面上のグラフト密度は、重合開始基含有シランカップリング剤と重合開始基を含有しないシランカップリング剤との割合を調整することで、自在に変更することができる。シランカップリング剤のうち全てが重合開始基含有シランカップリング剤である場合(図1)、グラフト密度は少なくとも0.7本鎖/nmとなる。
【0034】
本発明における合成において、目的とする生成物は、反応液から夾雑物(未反応減量、副生成物、溶媒など)を、当該分野で慣用される方法(例えば、抽出、蒸留、洗浄、濃縮、沈澱、濾過、乾燥など)によって除去した後に、当該分野で慣用される後処理方法(例えば、吸着、溶離、蒸留、沈澱、析出、クロマトグラフィーなど)を組み合わせて処理して単離し得る。
【0035】
本発明の高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子で構成される二次元配列構造体は、この複合微粒子の水面膜を透過型電子顕微鏡(略称:TEM)用グリットに移しとりTEM観察することによって確認することができる。図5は、PMMA-SiPの水面単分子膜のTEM写真(シリカ粒子の直径は130nmであり、グラフトポリマーのMは(a)139000,(b)354000である)を示す。これより、本発明の複合微粒子が、二次元において凝集することなく単粒子膜を形成していることが確認できた。
【0036】
1つの局面において、本発明のコロイド結晶構造体は、以下の工程を経て製造される:
a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;
b)表面に重合開始基を有する微粒子と、モノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を形成する工程;
c)工程b)で得られた複合微粒子を、溶媒中に分散させる工程。
【0037】
好ましい実施形態において、工程c)における複合微粒子の濃度は複合微粒子同士が接する濃度に調製されることが好ましい。複合微粒子同士が接する濃度として、例えば、1~30重量%が挙げられる。複合微粒子の濃度が1%を下回っても30重量%を上回っても、美しい構造色を呈するようなコロイド結晶は得られない。コロイド結晶が形成できているかどうかは、分散液が構造色を発するか視覚的に確認することによってもできるが、共焦点レーザースキャン顕微鏡(略称:CSLM)による三次元画像によっても確認することができる。CSLMの特徴は、サンプルの焦点面と光学的に共役(コンフォーカル)の位置にピンホール絞りを設けていることにある。これにより、サンプル内部の二次元画像を迷光のない状態で得ることができる。また、サンプルの二次元平面をポイントスキャンし、光学的なスライス画像を作成した後、同様の操作をサンプルのZ軸方向に沿って移動して行う。こうして取り込んだ多数の二次元平面スライス画像から、三次元画像を構築することができる。このようなCSLM測定により、分散液内の複合微粒子の規則配列構造を確認することができる。
【0038】
さらに好ましい実施形態において、上記工程c)の複合微粒子を分散させる溶媒は、微粒子の密度とほぼ同じになるように、任意の適切な溶媒を組み合わせて調整される。これによって、コロイド結晶を構成する微粒子の規則性が良くなり、コロイド結晶の質が良好となる。従来のような沈降法(溶媒より微粒子が重い)を用いてコロイド結晶を作製すると、規則性がなく、結晶サイズが大きくならないという欠点がある。
【0039】
また、本発明では、以下の三通りの手法を用いて、コロイド結晶を固定化することができる。
【0040】
第一には、上記モノマーの1つに、光または熱などの外部刺激による架橋または重合機能を有する官能基を側鎖に導入したモノマーを用い、グラフト化後、光または熱処理することにより、コロイド結晶を固定化する。好ましくは、上記のような架橋または重合機能を有する官能基を側鎖にもたないモノマーのブロック重合を行ったのち、そのグラフト鎖の末端付近に、上記架橋または重合機能を有する官能基を導入し、光または熱処理を行う。この手法によって、コロイドの結晶構造を保持しつつ固定化することができる。このような架橋または重合機能を有する官能基を側鎖に導入したモノマーとして、例えば、オキセタンメタクリレート、オキセタンアクリレート、シンナモイルエチルアクリレートまたはシンナモイルエチルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。上記光または熱処理は、開始剤の存在下または非存在下において行われ、例えば、モノマーとしてオキセタンメタクリレートまたはオキセタンアクリレートなどのオキセタン系モノマーを使用する場合には、開始剤の存在下で光または熱処理され、シンナモイルエチルアクリレートまたはシンナモイルエチルメタクリレートなどのシンナモイル系モノマーを使用する場合には、開始剤の非存在下で非または熱処理される。
【0041】
第二には、コロイド結晶を作製した後、分散溶媒の融点以下に温度を下げコロイド結晶を固定化する。
【0042】
第三には、コロイド結晶の分散溶媒中に多官能性モノマーまたはオリゴマーを共存させ、結晶化後、開始剤の存在下または非存在下において、光または熱処理により結晶を固定化する。上記多官能性モノマーまたはオリゴマーは、分子内に複数の光または熱感応性官能基を有するモノマーまたはオリゴマーであれば、特に限定されない。
【0043】
上記固定化を踏まえた、本発明のコロイド結晶構造体の幾つかの製造方法は、以下の通りである。
【0044】
1つの局面において、本発明のコロイド結晶構造体は、以下の工程を経て製造される:
a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;
b)表面に重合開始基を有する微粒子と、光または熱感応性基を有するモノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を形成する工程;
c)工程b)で得られた微粒子を、溶媒中に分散させる工程;
d)工程c)で得られた分散体を光または熱に曝露させ、互いに隣接する該複合微粒子の複数の高分子グラフト鎖間に化学結合を形成する工程。
【0045】
別の局面において、本発明のコロイド結晶構造体は、以下の工程を経て製造される:
a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;
b)表面に重合開始基を有する微粒子と、光または熱感応性基を有さないモノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を形成する工程;
c)工程b)で得られた微粒子のグラフト鎖の末端と、光または熱感応性基を有するモノマーとを反応させ、光または熱感応性基を該グラフト鎖の末端に導入する工程;
d)工程c)で得られた微粒子を、溶媒中に分散させる工程;
e)工程d)で得られた分散体を光または熱に曝露させ、互いに隣接する該複合微粒子の複数の高分子グラフト鎖間に化学結合を形成する工程。
【0046】
さらに別の局面において、本発明のコロイド結晶構造体は、以下の工程を経て製造される:
a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;
b)表面に重合開始基を有する微粒子と、モノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を形成する工程;
c)工程b)で得られた複合微粒子を、溶媒中に分散させる工程;
d)工程c)で得られた分散体を該溶媒の融点以下に温度を下げる工程。
【0047】
なおさらに別の局面において、本発明のコロイド結晶構造体は、以下の工程を経て製造される:
a)重合開始基を微粒子表面に結合させる工程;
b)表面に重合開始基を有する微粒子と、モノマーとを、リビングラジカル重合条件下で接触させて、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を形成する工程;
c)工程b)で得られた複合微粒子と、多官能性モノマーまたはオリゴマーとを、溶媒中に分散させる工程;
d)工程c)で得られた分散体を光または熱に曝露させ、該多官能性モノマーまたはオリゴマー間に化学結合を形成する工程。
【0048】
本発明では、超高密度グラフト膜を有する微粒子(直径約50nm~1μm)を広範囲に三次元的に規則正しく配列させることに加え、秩序構造内の粒子間隔を微粒子表面のグラフト鎖長により幅広く容易に制御することができる。これは、グラフト鎖の高密度化と狭い鎖長分布を反映し、系全体の粒子間に超高密度グラフト膜特有の圧縮反発力が均等に作用する結果、粒子は秩序構造を形成したと考えられ、高分子ブラシ表面の緻密な構造制御が、新規材料の設計・創製において有用な基盤となることを示す実験的証拠である。
【0049】
さらに本発明は、世界で初めて超高密度グラフト膜を有する微粒子からコロイド結晶を構築することに成功した。従来の微粒子分散系コロイド結晶は、粒子の表面電荷による長距離の静電反発力によって形成されるが、本研究では、微粒子表面の構造制御により粒子間に力学的な立体反発力を均等に作用させるという、従来とは全く異なる創製コンセプトによりコロイド結晶を構築することができた。
【0050】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0051】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【実施例】
【0052】
(実施例1:固定化開始剤(2-ブロモ-2-メチル)プロピオニルオキシヘキシルトリエトキシシラン(BHE)の合成)
BHEの合成は、2段階反応により、行った(図1)。第1段階として、5-ヘキセン-1-オール(43g)、トリエチルアミン(71mL)、テトラヒドロフラン(THF;1L)の混合溶液を氷冷し、その中へ2-ブロモイソブチリルブロマイド(63mL)を滴下した。その後、反応液を0℃で3時間攪拌し、さらに室温で10時間攪拌した。反応液を濾過し、濾液を濃縮した後、得られたものをクロロホルム(500mL)により希釈し、それを1N塩酸水溶液(2×500mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×500mL)、純水(2×500mL)の順で洗浄した。有機層を乾燥、濃縮後、シリカゲルカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=15/1)により精製し、1-(2-ブロモ-2-メチル)プロピオニルオキシ-5-ヘキセン(BPH)を収率90%で得た。
第2段階として、2ッ口フラスコの中へBPH(40g)、トルエン(500mL)、トリエトキシシラン(500mL)、カルステッド触媒(450mL)を順次入れ、その混
合液をアルゴン雰囲気下、室温で12時間攪拌した。トルエンと未反応のトリエトキシシランを減圧除去し、ほぼ定量的にBHEを合成した。
【0053】
(実施例2:シリカ微粒子表面への開始基の導入)
シリカ微粒子表面への開始基の導入は、以下の手順で行った(図1)。シリカ微粒子(略称:SiP、日本触媒製、平均粒径130nm)のエタノール分散液(7.7wt%,30mL)を28%アンモニア水溶液(13.9g)とエタノール(200mL)の混合液中へ加えた。その混合液を40度で2時間攪拌した後、実施例1で合成したBHE(2g)のエタノール溶液(10mL)を滴下し、40度で18時間攪拌した。その後、シリカ微粒子を遠心分離機により回収し、エタノール、アニソールにより洗浄した後、アニソール中で保存した。
【0054】
(実施例3:シリカ微粒子を用いた表面開始リビングラジカル重合)
実施例2で調製した開始基を有するシリカ微粒子(SiP、2wt%)を含むメタクリル酸メチル(20g)、Cu(I)Cl(32mg)、ジノニルビピリジン(268mg)、エチル2-ブロモイソブチレート(EBIB;6mg)をパイレックス(登録商標)製ガラス管に入れ、凍結融解法により脱気し、真空下で封管した後70度で所定時間重合した(図1)。モノマー転化率はNMRにより、EBIBから生成する遊離ポリマーの分子量及び分子量分布はGPCにより求めた。上記重合により得られたポリ(メタクリル酸メチル)をグラフトしたシリカ微粒子(PMMA-SiP)の精製は、遠心分離とTHFへの再分散を繰り返すことにより、行った。グラフト化シリカ微粒子(PMMA-SiP)をフッ化水素により処理することにより、グラフトポリマーをシリカ微粒子から切り出した。
【0055】
図2に重合時間に対するモノマー転化率の一次プロットを示す。直線関係が得られることから、重合期間中ラジカル濃度はほぼ一定に保たれていることがわかる。図3にモノマー転化率に対する遊離ポリマー(図中、黒丸)及びグラフトポリマー(図中、白丸)の数平均分子量(M)及び分子量分布指数(M/M)を示す。両ポリマーの分子量はほぼ等しく、モノマー転化率の増加に伴い大きくなっていることがわかる。M/M値は、いずれの場合も小さな値を示している。図4に重合時間に対するグラフト密度を示す。グラフト密度は、元素分析によりSiP表面にグラフトされたPMMAの量(グラフト量)を求め、その値とSiPの比重(1.9g/cm)および表面積(53200nm)、さらにグラフトポリマーのMnを用い算出した。重合時間に依らずグラフト密度はほぼ一定(約0.7本鎖/nm)であることがわかる。これらの結果は、規制重合の進行と構造の明確な高分子の高密度グラフト化を示すものである。
【0056】
(実施例4:高密度グラフト膜を有するシリカ微粒子の配列制御)
ポリ(メタクリル酸メチル)をグラフトしたシリカ微粒子(PMMA-SiP)のトルエン溶液を水面上に滴下し、PMMA-SiPの水面単分子膜を調製した。それを透過型電子顕微鏡(TEM)用グリッドに移しとりTEM観察を行った結果を図5に示す。微粒子は結晶状に配列し、粒子間隔はグラフト鎖長の増加に伴い大きくなっていることがわかる。
【0057】
PMMA-SiPのトルエン溶液(約15wt%)を静置することにより、その溶液はオパール色を呈した(図6)。蛍光色素(ローダミン)を内含したシリカ微粒子表面を、PMMAにより高密度グラフト化し、その濃厚分散液の内部構造を共焦点レーザースキャン顕微鏡(カールツァイス社製、型番:LSM 5 PASCAL)により観察したところ、図7に示す微粒子の規則配列が観察された。
【0058】
(実施例5:高密度グラフト膜を有するシリカ微粒子の相転移挙動)
屈折率と比重がPMMA-SiPに近い混合溶媒(1,2-ジクロロエタン:クロロホルム:o-ジクロロベンゼン=0.760:0.011:0.0229)にPMMA-SiP(グラフトポリマーのMn=69000、SiPの粒径=130nm)を分散させることで透過度の高い分散液を調製した。様々な濃度のPMMA-SiP分散液をセルに注入・封管後に静置して、溶液の挙動を観察した。静置して数時間後には特定の濃度領域において、ブラッグ反射による構造色を呈する微結晶が確認された。さらに数日が経過すると、液相と結晶相に完全に分離し平衡状態となった(図9)。これは、結晶相が液相よりも比重が大きいことに起因する現象である。液相と結晶相の混在する共存領域は、PMMA-SiPの体積分率(φ)が0.0783~0.0836の範囲において観測され、全体積に対する結晶相の比率は溶液濃度に比例して増加した(図10)。この相転移挙動の存在は、結晶を定義するための重要な規範の一つである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、高分子グラフト鎖が超高密度で微粒子表面に結合した複合微粒子を提供することができ、その複合微粒子から将来ナノ光学材料として有望なコロイド結晶構造体を構築することが可能となる。また、本発明のコロイド結晶は、以下に挙げられるように、従来のコロイド結晶とは異なる幾つかの利点を有する:
第一に、本発明のコロイド結晶は、汎用性・簡便性(生産性)が高い。従来の静電反発力によるコロイド結晶では、媒体として高誘電率溶媒(主に、水)を必要とするうえ、系中の充分な脱塩により粒子表面の電気二重層を広げることが必須であるが、本発明では、基本的に溶媒制限がなく、脱塩などの煩雑な処理を必要としない;
第二に、多種多彩なコロイド結晶を構築することができる。単分散性微粒子作成法に関する本発明者独自の知識と技術を駆使することにより、各種微粒子からコロイド結晶を構築することができることに加え、グラフト鎖長の制御により粒子間距離を容易に制御できることから、幅広い設計が可能である;
第三に、コロイド結晶への機能付与が可能である。LRP法が簡便性・汎用性に優れるために、各種共重合体の導入により、膜厚方向の分子構造を制御することができる。例えば、架橋機能を適切に導入すれば、コロイド結晶を固定化することができ、応用性を意識した材料設計につながる。
図面
【図10】
0
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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