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明細書 :新規イオンチャネル様ポリペプチドおよびその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4802331号 (P4802331)
登録日 平成23年8月19日(2011.8.19)
発行日 平成23年10月26日(2011.10.26)
発明の名称または考案の名称 新規イオンチャネル様ポリペプチドおよびその利用
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   9/16        (2006.01)
C07K  16/40        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 9/16 B
C07K 16/40
請求項の数または発明の数 10
全頁数 35
出願番号 特願2006-544779 (P2006-544779)
出願日 平成17年5月13日(2005.5.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 Jpn. J. Physiol.,第54巻、Suppl.(平成16年5月17日)日本生理学会発行第S20ページに発表
国際出願番号 PCT/JP2005/008807
国際公開番号 WO2006/054371
国際公開日 平成18年5月26日(2006.5.26)
優先権出願番号 2004332070
優先日 平成16年11月16日(2004.11.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年4月16日(2008.4.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
発明者または考案者 【氏名】佐藤 矩行
【氏名】岡村 康司
【氏名】岩崎 広英
【氏名】村田 喜理
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】野村 英雄
参考文献・文献 特開2004-057129(JP,A)
特開2004-057127(JP,A)
DEHAL, P. et al.,"The draft genome of Ciona intestinalis: insights into chordate and vertebrate origins.",SCIENCE,2002年12月13日,Vol.298, No.5601,P.2157-2167
調査した分野 C12N 15/09
C07K 1/00-19/00
C12N 9/00-9/99
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
WPI
特許請求の範囲 【請求項1】
電位センサーとして機能し得るポリペプチドであって:
(a)配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~239位;または
(b)配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~239位において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列
からなることを特徴とするポリペプチド。
【請求項2】
電位センサーとして機能し得るポリペプチドであって:
(a)配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~255位;または
(b)配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~255位において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列
からなることを特徴とするポリペプチド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリペプチドをコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号に示されるアミノ酸配列からなることを特徴とするポリペプチド。
【請求項5】
請求項4に記載のポリペプチドをコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項6】
直接のイオン流を必要とすることなく電気的なシグナルを化学的なシグナルに変換し得るポリペプチドであって:
(a)配列番号に示されるアミノ酸配列;または
(b)配列番号に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列
からなることを特徴とするポリペプチド。
【請求項7】
配列番号に示されるアミノ酸配列の第85~96位を含むポリペプチド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリペプチドに結合することを特徴とする抗体。
【請求項9】
イノシトールリン脂質ホスファターゼ活性を有するポリペプチドであって:
(a)配列番号に示されるアミノ酸配列の第256~576位;または
(b)配列番号に示されるアミノ酸配列の第256~576位において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列
からなることを特徴とするポリペプチド。
【請求項10】
請求項9に記載のポリペプチドをコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、直接のイオン流を必要とすることなく電気的なシグナルを化学的なシグナルに変換し得る単一ポリペプチドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオンチャネルは、細胞膜上に存在して細胞へのイオンの透過を制御する。具体的には、イオンチャネルは、細胞膜を貫通する構造を有しており、さまざまな刺激によって開閉することによって、細胞内へのイオンの流入、または細胞外へのイオンの排出を司る。このようなイオンチャネルは、筋収縮、神経伝達物質の放出、インスリンの分泌など重要な生体反応を惹起する分子の1つである。例えば、神経細胞の電気的な情報伝達にはナトリウムチャネルやカリウムチャネルが必要であり、筋肉の収縮にはカルシウムチャネルが不可欠である。イオンチャネルとしては、細胞内外の電位差に応じて開閉する電位依存性イオンチャネル、レセプターと複合体化してそのリガンドの結合に応じて開閉するレセプター作動性イオンチャネルが挙げられる。
【0003】
本発明者らは、これまで、原索動物であるホヤを用いてイオンチャネルを介した電気的活動を解析している。
【0004】
ホヤは、尾索動物群に属する動物であって、頭索動物(例えば、ナメクジウオ)および脊椎動物(例えば、カエル、ヒトなど)とともに、脊索動物門を構成する。脊索動物であるホヤの遺伝子には、脊椎動物のような遺伝子の重複がなく、遺伝子重複前の脊索動物の基本型を保っている。また、ホヤのオタマジャクシ型幼生の体制は、脊索動物の体制の最も単純な型(原型)を表している。したがって、脊索動物であるホヤは、ヒトを含む脊椎動物全般の発生メカニズムの解明に最適のモデル動物であり、ホヤにおいて発現する遺伝子は、遺伝子治療および再生医療などの医療分野、さらには環境分野、食品分野などの種々の分野に、それら遺伝子は応用できると期待されている。
【0005】
本発明者らは、以前、カタユウレイボヤの尾芽胚における遺伝子発現プロファイルを報告している(例えば、非特許文献1を参照のこと)。
【0006】
また、本発明者らは、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)の受精卵、卵割期胚、尾芽胚、幼生、幼若体または精巣で発現する遺伝子のmRNAに対して、3’側76,920および5’側76,250のEST(expressed sequence tag:発現配列タグ)解析を行い、これらの中から約5,000の遺伝子を選んでその発現をin situハイブリダイゼーションによって調べ、約500の遺伝子がホヤの尾芽胚、幼生、または幼若体の組織あるいは器官において特異的に発現することを見出し、さらにそれらの中から261の遺伝子のmRNA(cDNA)の全塩基配列を決定した(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0007】
さらに本発明者は、カタユウレイボヤの尾芽胚および幼生で発現する遺伝子のmRNAに対して、3’側約23,000および5’側約23,000のEST解析を行い、これらの中から約3,000の遺伝子を選んでその発現をin situハイブリダイゼーションによって調べ、約200の遺伝子が、ホヤの神経系(中枢神経系または末梢神経系)で発現することを見出し、さらにそれらの中から108の遺伝子のmRNA(cDNA)の全塩基配列を決定した(例えば、特許文献2を参照のこと)。
【0008】
〔特許文献1〕
特開2004-57129公報(平成16年2月26日公開)
〔特許文献2〕
特開2004-57127公報(平成16年2月26日公開)
〔非特許文献1〕
Development 128,2893-2904(2001)。
【0009】
イオンチャネルに関する研究において、アフリカツメガエルの卵母細胞などに遺伝子導入手法によってイオンチャネルを発現させ、電気生理学の手法で解析する実験系が確立している。このような実験系を用いて、イオンチャネルの機能およびその制御機構、またはイオンチャネル活性に与える薬剤の影響などが調べられている。
【0010】
一般的に、薬剤がイオンチャネルに与える影響を調べるためには、細胞内外にイオンが出入りした際に発生するごく微量の電流を捉える必要があり、細胞膜の電圧を細胞から測定する際には、直接的な電気的測定、または電圧感受性色素などを用いた定量的解析が必要であったが、これらの手法では、細胞における局所の膜電位の情報を得ることは困難であった。特に、精子などの構造が小さく、電気生理学的手法が用いにくい材料については解析が不可能であった。また、このような実験を遂行するためには熟練した技術が必要でありかつ手間もかかる。
【0011】
さらに、酵素またはレセプターに関する研究で用いられているスクリーニング方法は、イオンチャネルに関する研究にはそのまま適用することができない。従って、イオンチャネルに関する創薬の研究は、あまり進んでいない。実際に、イオンチャネルに作用する薬剤として知られているものは、降圧薬としてのカルシウム拮抗薬または局所麻酔薬などのみである。
【0012】
このように、生体の生理機能とイオンチャネル分子との関係がこれまで広範に研究されているものの、全てのチャネル様タンパク質が同定されているとはいえず、解明されていないことが依然として多い。そのため、単純な生物においてゲノムレベルから個体レベルまでチャネル機能を網羅的に解析することは有用である。
【発明の開示】
【0013】
イオンチャネル分子に基づく生理学的事象を理解するために、本発明者らは、原索動物に属する尾索類の動物であるカタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)のゲノム配列においてイオンチャネル遺伝子を網羅的に調べ、そのイオンチャネル分子種のレパートリーを、ショウジョウバエ、ヒトまたはフグのものと比較した。その結果、本発明者らは、電位依存的ナトリウムチャネルに有意な相同性を有する遺伝子を見出した。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、直接のイオン流を必要とすることなく電気的なシグナルを化学的なシグナルに変換し得る単一のタンパク質として新規の膜タンパク質である。このような性質を有する膜タンパク質はこれまで知られていない。さらに本発明者らは、この新規膜タンパク質の特定領域が単独で電位センサーとして機能し得ること、および、別の領域がホスファターゼ活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係るポリペプチドは、電位センサーとして機能し得るポリペプチドであって:
(a)配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~239位;または
(b)配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~239位において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列
からなることを特徴としている。
【0015】
本発明に係るポリペプチドは、電位センサーとして機能し得るポリペプチドであって:
(a)配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~255位;または
(b)配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~255位において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列
からなることを特徴としている。
【0016】
本発明に係るポリヌクレオチドは、上記のポリペプチドをコードすることを特徴としている。
【0017】
本発明に係るポリペプチドは、直接のイオン流を必要とすることなく電気的なシグナルを化学的なシグナルに変換し得るポリペプチドであって:
(a)配列番号に示されるアミノ酸配列;または
(b)配列番号に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列
からなることを特徴としている。
【0018】
本発明に係るポリヌクレオチドは、上記のポリペプチドをコードすることを特徴としている。
【0019】
本発明に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列の第85~96位を含むことを特徴としている。
【0020】
本発明に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのフラグメントでありかつ配列番号に示されるアミノ酸配列の第85~96位を含むことが好ましい。
【0021】
本発明に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列の第85~96位からなることが好ましい。
【0022】
本発明に係る抗体は、上記のポリペプチドに結合することを特徴としている。
【0023】
本発明に係るポリペプチドは、イノシトールリン脂質ホスファターゼ活性を有するポリペプチドであって:
(a)配列番号に示されるアミノ酸配列の第256~576位;または
(b)配列番号に示されるアミノ酸配列の第256~576位において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列
からなることを特徴としている。
【0024】
新規電位センサー分子である本発明に係るポリペプチドを用いれば、細胞内局所の膜電位変化を化学的信号または光学的信号に変換して捉えることができるので、ガラス電極による従来の電気生理学では解析することが不可能であった精子、および/またはアクセスすることが困難な骨細胞などにおける生理機能の解析、ならびに非侵襲的な膜電位の測定または生理機能の解析が可能になる。
【0025】
本発明を用いれば、精子の運動性を制御することが可能となり、避妊あるいは不妊症を治療または予防することができる。また、本発明に係るポリペプチドをコードする遺伝子の相同遺伝子が、マウス、ヒト、ゼブラフィッシュに存在し、ヒトにおける当該相同遺伝子は、肝細胞癌の腫瘍マーカー分子であることが知られている。従って、細胞膜電位を変化させる薬剤を用いれば、肝細胞癌の悪性度を制御することができる。
【0026】
本発明に係るポリヌクレオチドは、上記のポリペプチドをコードすることを特徴としている。
【0027】
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 ホヤ類タンパク質Ci-VSPのトポロジーおよび一次構造を示す。aは、電位依存性でありかつ内向き整流性のカリウムチャネルと比較したCi-VSPポリペプチドのモジュール構造を示す。bは、Ci-VSPポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
【図2】 Ci-VSPの膜貫通ドメインが電位センサーとして作用することを示すグラフである。aは、Ci-VSPを発現するアフリカツメガエルcut-open oocyteから記録した非対称の置換電流の代表例を示す。bは、aで示したゲート電流の電位変化によって運ばれた電荷を各膜電位で比較したグラフである。cは、cut-open oocyte法で記録した、C末端部分全体を欠いた(S1~S4のみにした)短縮型タンパク質の電流置換を示す。dは、Ci-VSP R229Q/R232Qを発現するcut-open oocyteからの記録を示す。
【図3】 Ci-VSPの細胞内ドメインがホスファチジルイノシトールホスファターゼであることを示す図である。aは、Ci-VSPのホスファターゼ活性中心のアミノ酸配列と、いくつかの種からのPTENのホスファターゼ活性中心のアミノ酸配列との比較を示す図である。bは、glutathione S-transferaseとCi-VSPのホスファターゼ様ドメインとの融合タンパク質のイノシトールリン脂質ホスファターゼ活性を示すグラフである。
【図4】 Ci-VSPの酵素活性を調べた結果を示す。aは、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いてCi-VSPの酵素活性を調べた結果であり、b・cは、Malachite greenアッセイによって算出した酵素活性速度を示す。
【図5】 Kチャネル活性のプローブとしてのCi-VSPによるイノシトールリン脂質ダイナミクスの電位依存的変化を示す。aは、一過性の変化を示すGIRK電流の軌跡および電流幅のプロットを示すグラフである。bは、Ci-VSPを同時発現させた場合のIRK1電流軌跡および電流幅の時間依存的な変化のプロットを示すグラフである。cは、Ci-VSPの野生型、C363S変異体またはR229Q/R232Q変異体を発現するoocyteからのKCNQ2/3電流軌跡および電流幅の時間依存的な変化のプロットを示すグラフである。dは、カリウムチャネルの量の電位依存的変化をまとめたグラフである。
【図6】 Kチャネル活性によって検出したホスファターゼの電位依存性を示す図である。aは、Ci-VSPおよびGIRK2を発現するoocyteからのGIRK電流の代表的な記録を示すグラフである。bは、試験パルス間インターバルの膜電位レベルに対するGIRK電流の電流幅のプロットを示す図である。
【図7】 電位センサードメインとホスファターゼドメインとの間のリンカー領域がカップリングに重要であることを示す図である。aは、S4様セグメントとホスファターゼ様ドメインとの間のリンカー領域(MKASSRRTISQNKRRY)を示す図である。bは、試験パルス間のインターバルの間での過分極または脱分極に対するKir電流の一過性変化を示すグラフである。cは、種々の膜電位でのインターバルのシリーズに関するGIRK2(左)またはKCNQ2/3(右)との発現についてのデータを要約したグラフである。
【図8】 精子尾部におけるCi-VSPの局在を示す図である。aは、心臓、体壁筋肉、生殖腺および精巣におけるCi-VSP転写物のRT-PCRを示す図である。b~gは、Ci-VSPのペプチド配列に対するポリクローナル抗体を用いる、Ciona intestinals精子に対する免疫組織化学を示す図である。h~kは、精子鞭毛の生体膜でのCi-VSPの免疫電顕像を示す写真である。
【図9】 Ci-VSPポリペプチドの特性に基づく応用を図式化したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施の一形態について以下に詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0030】
以下、本発明に係るポリペプチド、およびその利用について詳述する。
【0031】
(1)ポリペプチド
本発明者らは、電位依存的ナトリウムチャネルに低い相同性を有する新規遺伝子のcDNAを、若いカタユウレイボヤ成体からRT-PCRによってクローニングした後、コード領域全体を完全に配列決定した。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、4つの膜貫通領域の後に酵素様領域を含む。このタンパク質の4つの膜貫通セグメントは、3アミノ酸毎に周期的に位置する数個の正電荷のアミノ酸残基を含む電位依存的チャネルのS4セグメントに対して非常に高い相同性を示した。この電位依存的チャネルは、膜電位変化に従って膜を横切って移動することが知られている。従って、本発明者らは、このカタユウレイボヤ由来のタンパク質をCi-VSP(電位センサー含有タンパク質)と名付けた。
【0032】
本発明に係るポリペプチドは、図1に示すようなモジュール構造およびアミノ酸配列を有する。図1aに示すように、本発明に係るポリペプチドは、電位依存性チャネルおよび内向き整流性カリウムチャネルとは異なるモジュール構造を有している。また,図1bに示すように、本発明に係るポリペプチドは、電位依存性チャネルのS1~S4セグメントに類似する4つの膜貫通セグメント(下線を付した)およびPTEN様ホスファターゼドメインを含んでいる(ホスファターゼドメインのP-ループを四角で囲む)。
【0033】
上述したように、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるCi-VSPタンパク質は、直接のイオン流を必要とすることなく電気的なシグナルを化学的なシグナルに変換し得る単一のタンパク質である。また、このCi-VSPタンパク質の特定領域(すなわち、配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~239位からなる4つの膜貫通セグメント)は、単独で電位センサーとして機能し得、そのC末端領域(すなわち、配列番号に示されるアミノ酸配列の第256~576位からなるポリペプチド)がホスファターゼ活性を有し、そしてこれらの領域を特定のリンカー領域(すなわち、配列番号に示されるアミノ酸配列の第240~255位(配列番号)からなるポリペプチド)が連結する。本発明に係るCi-VSPポリペプチドは、このような独特の構成を有することによって、電位センサーモジュールが感知した電気的シグナルの変化をリンカー領域が媒介して酵素ドメインでの酵素活性を調節する。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク質」と交換可能に使用される。また、ポリペプチドの「フラグメント」は、当該ポリペプチドの部分断片が意図される。本発明に係るポリペプチドはまた、天然供給源より単離されても、組換え的に生成されてもよい。本明細書中において使用される場合、「Ci-VSPポリペプチド」は「Ci-VSPタンパク質」と置換可能に使用され、Ci-VSPと称する場合もある。
【0035】
用語「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、その天然の環境から取り出されたポリペプチドまたはタンパク質が意図される。例えば、宿主細胞中で発現された組換え産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適切な技術によって実質的に精製されている天然または組換えのポリペプチドおよびタンパク質と同様に、単離されていると考えられる。
【0036】
本発明に係るポリペプチドは、天然の精製産物、原核生物宿主および真核生物宿主(例えば、E.coli細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。組換え産生手順において用いられる宿主に依存して、本発明に係るポリペプチドは、グリコシル化され得る。さらに、本発明に係るポリペプチドはまた、いくつかの場合、宿主媒介プロセスの結果として、開始の改変メチオニン残基を含み得る。
【0037】
1つの局面において、本発明は、VSP活性を有するポリペプチドを提供する。本明細書中で使用される場合、「VSP活性」は、直接のイオン流を必要とすることなく、電気的なシグナルを、リン酸化状態などを含む化学的なシグナルに変換する活性が意図される。
【0038】
一実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが好ましい。別の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの変異体でありかつVSP活性を有するポリペプチドが好ましい。本明細書中において使用される場合、「Ci-VSPポリペプチド」は、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはその変異体が意図される。
【0039】
このような変異体としては、欠失、挿入、逆転、反復、およびタイプ置換(例えば、親水性残基の別の残基への置換、しかし通常は強く親水性の残基を強く疎水性の残基には置換しない)を含む変異体が挙げられる。特に、ポリペプチドにおける「中性」アミノ酸置換は、一般的にそのポリペプチドの活性にほとんど影響しない。
【0040】
ポリペプチドのアミノ酸配列中におけるいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
【0041】
好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性のアミノ酸置換、欠失、または付加を有する。好ましくは、サイレント置換、付加、および欠失であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、本発明に係るポリペプチドのVSP活性を変化させない。
【0042】
代表的に保存性置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中の1つのアミノ酸から別のアミノ酸への置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。
【0043】
上記に詳細に示されるように、どのアミノ酸の変化が表現型的にサイレントでありそうか(すなわち、機能に対して有意に有害な効果を有しそうにないか)に関するさらなるガイダンスは、Bowie, J.U.ら「Deciphering the Message in Protein Sequences: Tolerance to Amino Acid Substitutions」,Science 247:1306-1310 (1990)(本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。
【0044】
当業者は、周知技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸を容易に変異させることができる。例えば、公知の点変異導入法(変異誘発法)に従えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を変異させることができる。また、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体または付加変異体を作製することができる。さらに、本明細書中に記載される方法を用いれば、作製した変異体が所望のVSP活性を有するか否かを容易に決定し得る。
【0045】
1つの局面において、本実施形態に係るポリペプチドは、VSP活性を有するポリペプチドであって、
(a)配列番号に示されるアミノ酸配列;または
(b)配列番号に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列
からなるポリペプチドであることが好ましい。このような変異ポリペプチドは、上述したように、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有するポリペプチドに限定されるものではなく、天然に存在するポリペプチドを単離精製したものであってもよい。
【0046】
他の局面において、本発明は、電位センサーとしての活性を有するポリペプチドを提供する。本明細書中で使用される場合、「電位センサーとしての活性」は、膜電位変化としての電気的シグナルを感知することができる、すなわち、電位センサーとして機能する活性が意図される。
【0047】
1つの実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~239位からなるポリペプチドが好ましい。本実施形態に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(リンカー領域)をさらに含んでもよい。
【0048】
別の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~239位からなるポリペプチドの変異体でありかつ電位センサーとしての活性を有するポリペプチドが好ましい。本実施形態に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをさらに含んでもよい。
【0049】
上述した本発明に係る「Ci-VSPポリペプチド」は、配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~239位を含むので、上述したVSP活性だけでなく電位センサーとしての活性を有する。すなわち、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのフラグメントでありかつ配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~239位を含むポリペプチドまたはその変異体もまた、本発明に係る「電位センサーとしての活性」を有するポリペプチドに包含されることを、当業者は容易に理解する。
【0050】
別の局面において、本発明は、イノシトールリン脂質ホスファターゼ活性を有するポリペプチドを提供する。本明細書中において使用される場合、用語「ホスファターゼ活性」は、リン酸化イノシトールリン脂質を基質とする脱リン酸化酵素が意図される。
【0051】
1つの実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列の第256~576位からなるポリペプチドが好ましい。
【0052】
別の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列の第256~576位からなるポリペプチドの変異体でありかつ電位センサーとしての活性を有するポリペプチドが好ましい。
【0053】
上述した本発明に係る「Ci-VSPポリペプチド」は、配列番号に示されるアミノ酸配列の第256~576位を含むので、上述したVSP活性だけでなくホスファターゼ活性を有する。すなわち、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのフラグメントでありかつ配列番号に示されるアミノ酸配列の第256~576位を含むポリペプチドまたはその変異体もまた、本発明に係る「ホスファターゼ活性」を有するポリペプチドに包含されることを、当業者は容易に理解する。
【0054】
配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるリンカー領域は、電位センサーモジュールが感知した電気的シグナルの変化に基づいて酵素モジュールでの酵素活性を調節するために重要な領域である。従って、Ci-VSPポリペプチドの酵素モジュールをホスファターゼドメイン以外の酵素ドメインと置換しても、電位センサーモジュールが感知した電気的シグナルの変化に基づいて新たな酵素ドメインの活性を調節することができる。
【0055】
本発明に係るポリペプチドについて、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドについて詳述してきたが、異なる局面において、本発明は、本明細書中に記載されるポリペプチドのエピトープ保有部分のアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。本発明に係るポリペプチドのエピトープ保有部分のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、少なくとも6個、7個、8個、9個、10個のアミノ酸を有するポリペプチドの部分を含むが、本発明に係るポリペプチドの全アミノ酸配列の長さまでの任意の長さ(全体を含む)のエピトープ保有部分ポリペプチドもまた含まれる。
【0056】
さらに本発明は、本発明のポリペプチドのエピトープ保有ペプチドを提供する。本明細書から明らかなように、本発明のポリペプチドは免疫原性である。従って、本発明のポリペプチドの抗体応答を惹起するタンパク質のエピトープ部分は、当該分野で公知の方法により同定される。例えば、Geysenら(1984)は、酵素-結合免疫吸着アッセイにおける反応に十分に純粋な何百というペプチドの固体支持体上の迅速な同時合成の手順を開示する。合成ペプチドの抗体との相互作用は、次いで、それらを支持体から除去することなく容易に検出される。この様式において、所望のタンパク質の免疫原性エピトープを保有するペプチドは、当業者により日常的に同定され得る。例えば、口蹄疫ウイルスのコートタンパク質における免疫学的に重要なエピトープは、タンパク質の213のアミノ酸配列全体を覆う全ての208の可能なヘキサペプチドの重複セットの合成による7アミノ酸の解明によりGeysenらによって位置付けされた。次いで、全ての20アミノ酸が順にエピトープ内の各位置で置換されたペプチドの完全な置換セットが合成され、そして抗体との反応のための特異性を与える特定のアミノ酸が決定された。従って、本発明のエピトープ保有ペプチドのペプチドアナログは、この方法により日常的に作製され得る。Geysen(1987)の米国特許第4,708,781号は、所望のタンパク質の免疫原性エピトープを保有するペプチドを同定するこの方法をさらに記載している。
【0057】
「免疫原性エピトープ」は、タンパク質全体が免疫原である場合、抗体応答を誘発するタンパク質の一部として定義される。これらの免疫原性エピトープは、分子上の2、3の焦点に制限されると考えられている。一方では、抗体が結合し得るタンパク質分子の領域は、「抗原性エピトープ」と定義され得る。タンパク質の免疫原性エピトープの数は、一般には、抗原性エピトープの数よりも少ない。例えば、Geysen,H.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998-4002(1984)を参照のこと。
【0058】
本発明の抗原性エピトープ保有ペプチドは、本発明に係るポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を含む抗体を惹起するのに有用である。従って、抗原エピトープ保有ペプチドで免疫化されたドナーからの脾臓細胞の融合により得られるハイブリドーマの大部分は、一般に天然のタンパク質と反応性がある抗体を分泌する。抗原性エピトープ保有ペプチドにより惹起された抗体は、模倣タンパク質を検出するのに有用であり、そして異なるペプチドに対する抗体が、翻訳後プロセシングを受けるタンパク質前駆体の種々の領域の末路を追跡するために使用され得る。免疫沈降アッセイにおいて、短いペプチド(例えば、約9アミノ酸)でさえ、より長いペプチドに結合しそして置換し得ることが示されているので、ペプチドおよび抗ペプチド抗体は、模倣タンパク質についての種々の定性的または定量的アッセイ、例えば、競合的アッセイにおいて使用され得る。例えば、Wilson,I.A.ら、Cell 37:767-778(1984)777を参照のこと。本発明の抗ペプチド抗体もまた、模倣タンパク質の精製(例えば、当該分野で周知の方法を使用して、吸着クロマトグラフィーにより)に有用である。
【0059】
上記のガイドラインに従って設計された本発明の抗原性エピトープ保有ペプチドは、好ましくは本発明に係るポリペプチドのアミノ酸配列内に含まれる少なくとも7、より好ましくは少なくとも9、そして最も好ましくは約15~約30アミノ酸の間の配列を含む。しかし、本発明に係るポリペプチドのアミノ酸配列の約30~約50アミノ酸または全体までの任意の長さおよび全体を含む、本発明に係るポリペプチドのアミノ酸配列のより大部分を含むペプチドまたはポリペプチドもまた、本発明のエピトープ保有ペプチドであると考えられ、そしてまた模倣タンパク質と反応する抗体を誘導するのに有用である。好ましくは、エピトープ保有ペプチドのアミノ酸配列は、水性溶媒中で実質的な溶解性を提供するように選択され(すなわち、その配列は、比較的親水性残基を含み、そして高度な疎水性配列は好ましくは回避される);そしてプロリン残基を含む配列が特に好ましい。
【0060】
好ましくは、本発明に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列の第85~96位を含む。より好ましくは、本発明に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはその変異体のフラグメントでありかつ配列番号に示されるアミノ酸配列の第85~96位を含む。最も好ましくは、本発明に係るポリペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列の第85~96位からなる。
【0061】
本発明に係るポリペプチドは、アミノ酸がペプチド結合しているポリペプチドであればよいが、これに限定されるものではなく、ポリペプチド以外の構造を含む複合ポリペプチドであってもよい。本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド以外の構造」としては、糖鎖およびイソプレノイド基等を挙げることができるが、特に限定されない。
【0062】
また、本発明に係るポリペプチドは、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。付加的なポリペプチドとしては、例えば、His、Myc、Flag等のエピトープ標識ポリペプチドが挙げられる。
【0063】
また、本発明に係るポリペプチドは、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主細胞に導入して、そのポリペプチドを細胞内発現させた状態であってもよいし、細胞、組織などから単離精製されてもよい。
【0064】
他の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、融合タンパク質のような改変された形態で組換え発現され得る。例えば、本発明に係るポリペプチドの付加的なアミノ酸、特に荷電性アミノ酸の領域が、宿主細胞内での、精製の間または引き続く操作および保存の間の安定性および持続性を改善するために、ポリペプチドのN末端またはC末端に付加され得る。
【0065】
本実施形態に係るポリペプチドは、例えば、融合されたポリペプチドの精製を容易にするペプチドをコードする配列であるタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)にN末端またはC末端へ付加され得る。このような配列は、ポリペプチドの最終調製の前に除去され得る。本発明のこの局面の特定の好ましい実施態様において、タグアミノ酸配列は、ヘキサ-ヒスチジンペプチド(例えば、pQEベクター(Qiagen,Inc.)において提供されるタグ)であり、他の中では、それらの多くは公的および/または商業的に入手可能である。例えば、Gentzら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821-824(1989)(本明細書中に参考として援用される)において記載されるように、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製を提供する。「HA」タグは、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)タンパク質由来のエピトープに対応する精製のために有用な別のペプチドであり、それは、Wilsonら、Cell 37:767(1984)(本明細書中に参考として援用される)によって記載されている。他のそのような融合タンパク質は、NまたはC末端にてFcに融合される本実施形態に係るポリペプチドまたはそのフラグメントを含む。
【0066】
別の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、下記で詳述されるように組換え生成されてもよい。
【0067】
組換え生成は、当該分野において周知の方法を使用して行うことができ、例えば、以下に詳述されるようなベクターおよび細胞を用いて行うことができる。
【0068】
このように、本発明に係るポリペプチドは、VSP活性を有するポリペプチドであって、少なくとも、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるかまたはその活性を保持した変異体であるポリペプチド、あるいは当該ポリペプチドのエピトープを保有するポリペプチドであればよいといえる。また、本発明に係るポリペプチドは、電位センサーとしての活性を有するポリペプチドであって、少なくとも、配列番号に示されるアミノ酸配列の第1~239位からなるかまたはその活性を保持した変異体であるポリペプチド、あるいは、ホスファターゼ活性を有するポリペプチドであって、少なくとも、配列番号に示されるアミノ酸配列の第256~576位からなるかまたはその活性を保持した変異体であるポリペプチドも含まれる。すなわち、上記ポリペプチドと特定の機能(例えば、タグ)を有する任意のアミノ酸配列とが連結されたポリペプチドも本発明に含まれることに留意すべきである。また、上記ポリペプチドと特定の機能(例えば、タグ)を有する任意のアミノ酸配列とは、それぞれの機能を阻害しないように適切なリンカーペプチドで連結されていてもよい。ただし、VSP活性を発揮するためには、当該リンカーペプチドは、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであることが好ましい。
【0069】
つまり、本発明の目的は、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチド、あるいは当該ポリペプチドのエピトープを保有するポリペプチドを提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載したポリペプチド作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得されるVSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチド、あるいは当該ポリペプチドのエピトープを保有するポリペプチドも本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
【0070】
(2)ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド
1つの局面において、本発明は、VSP活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはそのフラグメントを提供する。他の局面において、本発明は、電位センサーとしての活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはそのフラグメントを提供する。別の局面において、本発明は、ホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはそのフラグメントを提供する。
【0071】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。また、「ポリヌクレオチドまたはそのフラグメント」とは、各デオキシヌクレオチドA、G、Cおよび/またはTによって示される配列を含むポリヌクレオチドまたはその断片部分が意図される。
【0072】
本発明に係るポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、または、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
【0073】
また本発明に係るポリヌクレオチドは、その5’側または3’側で上述のタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに融合され得る。
【0074】
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドが数個ないし数十個(または数百個以上)結合したものが意図され、「ポリヌクレオチド」と交換可能に使用される。オリゴヌクレオチドは、短いものはジヌクレオチド(二量体)、トリヌクレオチド(三量体)といわれ、長いものは30マーまたは100マーというように重合しているヌクレオチドの数で表される。オリゴヌクレオチドは、より長いポリヌクレオチドのフラグメントとして生成されても、合成されてもよい。
【0075】
本発明に係るオリゴヌクレオチドは、少なくとも12nt(ヌクレオチド)、好ましくは約15nt、そしてより好ましくは少なくとも約20nt、なおより好ましくは少なくとも約30nt、そしてさらにより好ましくは少なくとも約40ntの長さのフラグメントが意図される。例えば、制限エンドヌクレアーゼ切断または超音波による剪断は、種々のサイズのフラグメントを作製するために容易に使用され得る。あるいは、このようなフラグメントは、合成的に作製され得る。適切なフラグメント(オリゴヌクレオチド)が、Applied Biosystems Incorporated(ABI,850 Lincoln Center Dr.,Foster City,CA 94404)392型シンセサイザーなどによって合成される
【0076】
発明に係るオリゴヌクレオチドがVSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードしない場合でさえ、当業者は、本発明に係るポリヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプライマーとして本発明に係るポリペプチドを作製するために使用され得ることを容易に理解する。本発明に係るポリペプチドをコードしない本発明に係るオリゴヌクレオチドの他の用途としては、以下が挙げられる:(1)cDNAライブラリー中のCi-VSP遺伝子またはその対立遺伝子もしくはスプライシング改変体の単離;(2)Ci-VSP遺伝子の正確な染色体位置を提供するための、分裂中期染色体スプレッドへのインサイチュハイブリダイゼーション(例えば、「FISH」)(Vermaら,Human Chromosomes:A Manual of Basic Techniques,Pergamon Press,New York(1988)に記載される);および(3)特定の組織におけるCi-VSPのmRNA発現を検出するためのノーザンブロット分析。
【0077】
本発明に係るポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった1本鎖のDNAまたはRNAを包含する。本発明に係るポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、アンチセンスRNAメカニズムによる遺伝子発現操作のためのツールとして使用することができる。アンチセンスRNA技術によって、内因性遺伝子に由来する遺伝子産物の減少が観察される。本発明に係るポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。
【0078】
本発明に係るポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを取得する方法としては、本発明に係るポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含むDNA断片を単離する種々の公知の方法が挙げられる。例えば、本発明に係るポリヌクレオチドの塩基配列の一部と特異的にハイブリダイズするプローブを調製して、ゲノムDNAライブラリーまたはcDNAライブラリーをスクリーニングすれば、本発明に係るポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを取得することができる。このようなプローブとしては、本発明に係るポリヌクレオチドの塩基配列またはその相補配列の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド(オリゴヌクレオチド)であればよい。このようなハイブリダイゼーションによって選択されるポリヌクレオチドとしては、天然のポリヌクレオチドが挙げられるが、これに限定されない。
【0079】
本発明に係るポリヌクレオチドを取得する別の方法として、PCRを用いる方法が挙げられる。このPCR増幅方法は、例えば、本発明に係るポリヌクレオチドのcDNAの5’側および/または3’側の配列(またはその相補配列)を利用してプライマーを調製する工程、これらのプライマーを用いてゲノムDNA(またはcDNA)等をテンプレートにしてPCR増幅する工程を包含することを特徴としており、本方法を使用すれば、本発明に係るポリヌクレオチドを含むDNA断片を大量に取得することができる。
【0080】
本発明に係るポリヌクレオチドを取得するための供給源としては、特に限定されないが、カタユウレイボヤ成体の精巣組織のような生物材料であることが好ましい。本明細書中で使用される場合、用語「生物材料」は、生物学的サンプル(生物体から得られた組織サンプルまたは細胞サンプル)が意図される。
【0081】
本発明に係るポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを用いれば、ハイブリダイズするポリヌクレオチドを検出することによって、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドを発現する生物または組織(細胞を含む)を容易に検出することができる。
【0082】
本発明に係るポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを検出するハイブリダイゼーションプローブ、あるいはVSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを増幅するためのプライマーとして利用することによって、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドを発現する生物または組織を容易に検出することができる。好ましくは、本発明に係るオリゴヌクレオチドは、配列番号または3に示される塩基配列からなる。なおさらに、上記オリゴヌクレオチドをアンチセンスオリゴヌクレオチドとして使用して、上記生物体またはその組織もしくは細胞におけるVSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドの発現を抑制することができる。
【0083】
別の局面において、本発明は、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドのエピトープを保有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する
【0084】
まり、本発明の目的は、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または当該ポリヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、あるいは当該ポリペプチドのエピトープを保有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載したポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得されるVSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または当該ポリペプチドのエピトープを保有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
【0085】
(3)本発明に係るポリペプチドまたはポリヌクレオチドの利用
(A)ベクター
本発明は、本発明に係るポリペプチドを産生するために使用されるベクターを提供する。本発明に係るベクターは、上述した本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むものであれば、特に限定されないが、RNAポリメラーゼの認識配列を有するプラスミドベクター(pSP64、pBluescriptなど)が好ましい。例えば、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチド(シグナル配列を含んでも含まなくてもよい)をコードするポリヌクレオチドのcDNAが挿入された組換え発現ベクターなどが挙げられる。組換え発現ベクターの作製方法としては、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いる方法が挙げられるが特に限定されない。
【0086】
ベクターの具体的な種類は特に限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターが適宜選択され得る。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に本発明に係るポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明に係るポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。
【0087】
本発明に係る発現ベクターは、導入されるべき宿主の種類に依存して、発現制御領域(例えば、プロモーター、ターミネーター、および/または複製起点等)を含有する。細菌用発現ベクターのプロモーターとしては、慣用的なプロモーター(例えば、trcプロモーター、tacプロモーター、lacプロモーター等)が使用され、酵母用プロモーターとしては、例えば、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター、PH05プロモーター等が挙げられ、糸状菌用プロモーターとしては、例えば、アミラーゼ、trpC等が挙げられる。また動物細胞宿主用プロモーターとしては、ウイルス性プロモーター(例えば、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター等)が挙げられる。発現ベクターの作製は、制限酵素および/またはリガーゼ等を用いる慣用的な手法に従って行うことができる。発現ベクターによる宿主の形質転換もまた、慣用的な手法に従って行うことができる。
【0088】
上記発現ベクターを用いて形質転換された宿主を、培養、栽培または飼育した後、培養物などから慣用的な手法(例えば、濾過、遠心分離、細胞の破砕、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなど)に従って、目的タンパク質を回収、精製することができる。
【0089】
発現ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性遺伝子、およびE.coliおよび他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0090】
上記選択マーカーを用いれば、本発明に係るポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認することができる。あるいは、本発明に係るポリペプチドを融合ポリペプチドとして発現させてもよく、例えば、オワンクラゲ由来の緑色蛍光ポリペプチドGFP(Green Fluorescent Protein)をマーカーとして用い、本発明に係るポリペプチドをGFP融合ポリペプチドとして発現させてもよい。
【0091】
上記の宿主細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、酵母(出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)、線虫(Caenorhabditis elegans)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞、動物細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、およびBowes黒色腫細胞)などが挙げられる。
【0092】
上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。また、例えば、本発明に係るポリペプチドを昆虫で発現させる場合には、バキュロウイルスを用いた発現系を用いればよい。
【0093】
本発明に係るベクターを使用すれば、上記ポリヌクレオチドを生物または細胞に導入すれば、当該生物または細胞中にVSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドを発現させることができる。
【0094】
このように、本発明に係るベクターは、少なくとも、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現用ベクターであればよいといえる。
【0095】
つまり、本発明の目的は、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する発現用ベクターを提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々のベクター種および細胞種、ならびにベクター作製方法および細胞導入方法に存するのではない。したがって、上記以外のベクター種およびベクター作製方法を用いて取得した発現用ベクターも本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
【0096】
(B)形質転換体
本発明は、上述したVSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換体を提供する。本明細書中で使用される場合、用語「形質転換体」は、細胞、組織または器官だけでなく、生物個体をも含むことが意図される。また、形質転換の対象となる生物も特に限定されるものではなく、上記宿主細胞で例示した各種微生物、植物または動物が挙げられる。
【0097】
本発明に係る形質転換体は、上述したVSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドが発現されていることを特徴とする。本発明に係る形質転換体は、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドが安定的に発現することが好ましいが、一過性に発現してもよい。
【0098】
一実施形態において、本発明に係る形質転換体は、本発明に係るベクターを、ポリペプチドが発現され得るように生物中に導入することによって取得される。好ましくは、本発明に係る形質転換体は、本発明に係るポリペプチドを安定して発現する細胞である。
【0099】
(C)ポリペプチドの生産方法
本発明は、本発明に係るポリペプチドを生産する方法を提供する。本発明に係るポリペプチドの生産方法を用いれば、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドを低コストでありかつ環境に低負荷な条件下で提供することが可能となる。また、本発明に係るポリペプチドの生産方法を用いれば、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドを容易に生産することが可能となる。
【0100】
一実施形態において、本発明に係るポリペプチドの生産方法は、本発明に係るベクターを用いることを特徴とする。
【0101】
本実施形態の1つの局面において、本実施形態に係るポリペプチドの生産方法は、生物宿主を用いる組換え発現系を用いることが好ましい。組換え発現系を用いる場合、本発明に係るポリヌクレオチドを組換え発現ベクターに組み込んだ後、公知の方法により発現可能に宿主に導入し、宿主内で翻訳されて得られる上記ポリペプチドを精製するという方法などを採用することができる。組換え発現ベクターは、プラスミドであってもなくてもよく、宿主に目的ポリヌクレオチドを導入することができればよい。好ましくは、本実施形態に係るポリペプチドの生産方法は、上記ベクターを宿主に導入する工程を包含する。
【0102】
このように宿主に外来ポリヌクレオチドを導入する場合、発現ベクターは、外来ポリヌクレオチドを発現するように宿主内で機能するプロモーターを組み込んであることが好ましい。組換え的に産生されたポリペプチドを精製する方法は、用いた宿主、ポリペプチドの性質によって異なるが、タグの利用等によって比較的容易に目的のポリペプチドを精製することが可能である。
【0103】
別の実施形態において、本発明に係るポリペプチドの生産方法は、本発明に係るポリペプチドを天然または組換え的に発現する細胞または組織から当該ポリペプチドを精製することを特徴とする。本発明に係るポリペプチドは、成熟形態で細胞から分泌されるので、本発明に係るポリペプチドを天然または組換え的に発現する細胞の培養上清から回収することができる。このような細胞を用いる場合、本発明に係るポリペプチドの生産方法は、培養上清を回収する工程を包含する。また、本実施形態に係るポリペプチドの生産方法は、上述したポリペプチドを精製する工程をさらに包含してもよい。
【0104】
本発明に係るポリペプチドの生産方法は、本発明に係るポリペプチドを含む細胞または組織の抽出液から当該ポリペプチドを精製する工程をさらに包含することが好ましい。ポリペプチドを精製する工程は、周知の方法(例えば、細胞または組織を破壊した後に遠心分離して可溶性画分を回収する方法)で細胞や組織から細胞抽出液を調製した後、この細胞抽出液から周知の方法(例えば、硫安沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィー)によって精製する工程が好ましいが、これらに限定されない。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製のために用いられる。
【0105】
つまり、本発明の目的は、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドを生産する方法を提供することにあるのであって、上述した種々の工程以外の工程を包含する生産方法も本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
【0106】
(D)抗体
本発明は、本発明に係るポリペプチドに結合する抗体を提供する。本発明に係る抗体を用いれば、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドの検出など広範な種々のアッセイを行うことが可能となる。また、本発明に係る抗体を用いれば、VSP活性、電位センサーとしての活性またはホスファターゼ活性を有するポリペプチドを容易に精製することが可能となる。
【0107】
一実施形態において、本発明に係る抗体は、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することが好ましい。より好ましくは、本発明に係る抗体は、配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのフラグメントでありかつ配列番号に示されるアミノ酸配列の第85~96位を含むポリペプチドに結合する。もっとも好ましくは、本発明に係る抗体は、配列番号に示されるアミノ酸配列の第85~96位からなるポリペプチドに結合する。
【0108】
本発明に係る抗体は、上述したようなエピトープ保有ペプチドをコードするポリヌクレオチドを使用する組換え手段を包含するペプチドを作製するための任意の従来の手段により産生されたポリペプチドを抗原として用いて惹起され得る。このような抗原は、例えば、短いエピトープ保有アミノ酸配列は、組換え体産生および精製の間、ならびに抗ペプチド抗体を産生するための免疫化の間、キャリアとして作用するより大きなポリペプチドに融合され得る。抗原であるエピトープ保有ペプチドはまた、化学合成の公知の方法を使用して合成され得る。
【0109】
本発明に係る抗体は、上述したようなエピトープ保有ペプチドを当該分野に周知の方法に従って使用して誘導される。例えば、Chow,M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:910-914;およびBittle,F.J.ら、J.Gen.Virol.66:2347-2354(1985)を参照のこと。一般には、動物は遊離ペプチドで免疫化され得る;しかし、抗ペプチド抗体力価はペプチドを高分子キャリア(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または破傷風トキソイド)にカップリングすることにより追加免疫され得る。例えば、システインを含有するペプチドは、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)のようなリンカーを使用してキャリアにカップリングされ得、一方、他のペプチドは、グルタルアルデヒドのようなより一般的な連結剤を使用してキャリアにカップリングされ得る。ウサギ、ラット、およびマウスのような動物は、遊離またはキャリア-カップリングペプチドのいずれかで、例えば、約100μgのペプチドまたはキャリアタンパク質およびFreundのアジュバントを含むエマルジョンの腹腔内および/または皮内注射により免疫化される。いくつかの追加免疫注射が、例えば、固体表面に吸着された遊離ペプチドを使用してELISAアッセイにより検出され得る有用な力価の抗ペプチド抗体を提供するために、例えば、約2週間の間隔で必要とされ得る。免疫化動物からの血清における抗ペプチド抗体の力価は、抗ペプチド抗体の選択により、例えば、当該分野で周知の方法による固体支持体上のペプチドへの吸着および選択された抗体の溶出により増加され得る。
【0110】
特定の局面において、本発明は、Ci-VSPポリペプチドの機能を阻害する抗体を提供する。Ci-VSPのS1~S4領域の細胞外領域であるアミノ酸第124~134位、第145~160位、第200~214位、第215~230位の各領域の10~15アミノ酸からなるペプチドを合成し、これらをウサギに免疫して、血清からIgG分画を精製する。アフリカツメガエル卵母細胞系にVSPを発現させた後、当該細胞に得られた抗体を混合したND96溶液を投与する。投与前後でVSPの機能阻害の有無を調べることによって、Ci-VSPの機能阻害抗体を作製することができる。
【0111】
(E)スクリーニング方法および薬学的組成物
本発明は、Ci-VSPポリペプチドの機能を調節する化合物をスクリーニングする方法および当該化合物を含む薬学的組成物(例えば、医薬)を提供する。
【0112】
抗Ci-VSP抗体を用いた免疫組織染色の結果から、Ci-VSPポリペプチドは精子の尾部に局在することが明らかになった。Ci-VSPは、膜電位依存的に酵素活性を変化させるので、電気的信号によって精子の運動を制御すると考えられる。
【0113】
精子におけるCi-VSPポリペプチドの機能を調節する化合物のスクリーニング方法は、
(I)ツメガエル卵母細胞にVSPとGIRKチャネルとを強制発現させる工程;
(II)当該細胞に候補化合物を投与する工程;および
(III)電位依存的Kチャネル活性またはゲート電流を検出する工程
を包含する。さらに精子の運動性を調べる場合は、当該スクリーニング方法によって同定された薬剤を、単離したマウス精子に適用して運動性の変化を調べればよい。
【0114】
具体的には、マウス精子をクレブスリンゲル液へ単離し、50μM~1mMのcAMPアナログおよび100μMのIBMXを含むクレブスリンゲル液で希釈する。5%CO/95%Oの混合ガス下にて、37℃で5~180分間培養した後、最低500匹の精子を80μmの深さの容器に入れて精子画像解析装置(例えば、Hamilton-Thorne Research社製のIVOS Sperm Analyzer)を用いて、薬物存在下または非存在下で運動性が変化するか否かを調べればよい。また、このようなスクリーニング方法によって得られた化合物を、を用いれば、精子の運動性を制御することが可能となり、避妊あるいは不妊症を治療または予防することができる。
【0115】
また、本発明に係るポリペプチドをコードする遺伝子の相同遺伝子が、マウス、ヒト、ゼブラフィッシュに存在し、ヒトにおける当該相同遺伝子は、肝細胞癌の腫瘍マーカー分子であることが知られている。従って、細胞膜電位を変化させる薬剤を用いれば、肝細胞癌の悪性度を制御することができる。
【0116】
ガン細胞の悪性度を制御するための化合物は、以下のようにしてスクリーニングすることができる。
【0117】
ヒトVSP遺伝子を発現する肝癌細胞を、血清10%を含むDMEM培地中にて37℃で培養する。VSPの遺伝子発現を、ヒトVSP特異的なPCRプライマーを用いたRT-PCR反応によって確認する。ヒト肝癌細胞から総RNAを抽出し、約1μgのRNAから逆転写してcDNAを合成する。PCRを、94℃で60秒間、55℃ で45秒間、72℃で60秒間を30サイクル行う。
【0118】
細胞が50%コンフルエントの状態になったら、培養皿の培地を、ATP-Kチャネルの活性化薬であるNicorandil(100μM)またはDiazoxide(0.1mM)を含む培地と交換する。培地交換後、時間を追って、TUNEL法およびトリパンブルー染色を行い、アポトーシスを生じた細胞数を計数する。また、種々の濃度のNicorandilまたはDiazoxideを用いる条件下で同様の定量を行い、アポトーシスとKチャネル活性化薬の濃度との関係を明らかにする。
【0119】
本発明に係る薬学的組成物は、薬理学的に活性な化合物に加えて、適切な薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。このキャリアは、薬学的に用いられ得る調製物中での活性な化合物の処理を容易にする賦形剤および助剤を含む。本発明に係る薬学的組成物中に使用される薬学的に受容可能なキャリアは、薬学的組成物の投与形態および剤型に応じて当業者が適宜選択することができる。
【0120】
経口剤の場合、例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等が薬学的に受容可能なキャリアとして利用される。また経口剤を調製する際、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤滑剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を配合してもよい。
【0121】
非経口剤の場合、当該分野において公知の方法に従って、本発明の有効成分を希釈剤としての注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等に溶解ないし懸濁させ、所望により殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤等を加えることにより調製することができる。
【0122】
本発明に係る薬学的組成物は、製薬分野における公知の方法により製造することができる。本発明に係る薬学的組成物における薬理学的に活性な化合物の含有量は、投与形態、投与方法などを考慮し、当該薬学的組成物を用いて後述の投与量範囲で活性な化合物を投与できるような量であれば特に限定されない。
【0123】
本発明に係る薬学的組成物は、製剤形態に応じた適当な投与経路で投与できる。例えば、本発明に係る薬学的組成物は、経口、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内、または皮内経路による簡便な様式で投与され得る。注射剤は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与することができる。
【0124】
本発明に係る薬学的組成物の投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的および当該医薬の投与対象である患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され一定ではない。投与は、所望の投与量範囲内において、1日内において単回で、または数回に分けて行ってもよい。
【0125】
(F)エキソビボ治療のための方法、組成物およびキット
本発明はさらに、エキソビボで被験体由来の細胞を操作して、被験体を治療するための方法、組成物およびキットを提供する。
【0126】
抗Ci-VSP抗体を用いた免疫組織染色の結果から、Ci-VSPポリペプチドは精子の尾部に局在することが明らかになった。Ci-VSPは、膜電位依存的に酵素活性を変化させるので、電気的信号によって精子の運動を制御すると考えられる。被験体の精子中のCi-VSP遺伝子を操作することによって、Ci-VSPにおける変異に起因して生じる不妊症を治療または予防することができる。
【0127】
例えば、患者由来の細胞は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を用いてエキソビボで操作され得、次いで、操作された細胞はこのポリペプチドで処置されるべき患者に提供される。このような方法は当該分野で周知であり、本明細書中の教示から明らかである。例えば、細胞は、本発明に係るポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルスプラスミドベクターの使用により操作され得る。
【0128】
同様に、細胞は、インビボでのポリペプチドの発現のために、例えば、当該分野で公知の手順によりインビボで操作され得る。例えば、パッケージング細胞は、本発明に係るポリペプチドをコードするRNAを含むレトロウイルスプラスミドベクターで形質転換され、このようにパッケージング細胞は今や目的の遺伝子を含む感染性のウイルス粒子を産生する。これらのプロデューサー細胞は、インビボで細胞を操作するためおよびインビボでのポリペプチドの発現のために、患者に投与され得る。このような方法により本発明に係るポリペプチドを投与するためのこれらの方法および他の方法は、本明細書の記載に基づけば当業者には明らかである。
【0129】
(G)人工血管および/または人工骨
Ci-VSPを公知の遺伝子導入法によって細胞に強制的に発現させれば、細胞内の局所PIP濃度を膜電位依存的に制御することができる。細胞の形態は、細胞内局所のPIPの濃度変化によって制御されていることが知られているので、Ci-VSP発現細胞を一定電場の条件下で培養した場合に、細胞の形態または配置を電気的に制御することができる。この手法を用いれば、移植手術などに用いる多様な形状の人工臓器を開発することができる。Ci-VSPポリペプチドの特性に基づく応用を図式化したものを図9に示す。
【0130】
以下、実施例を示し、本発明についてさらに詳しく説明するが、もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0131】
〔実施例1:実験手順〕
〔プラスミドの作製〕
カタユウレイボヤの成体より単離した総RNAをテンプレートとして、逆転写PCRを行った。プライマー(5’-CGGGATCCGCCACCATGGAGGGATTCGACGGTTCAG-3’(配列番号);5’-ATAGTTTAGCGGCCGCCTAAATGTCTTCAGCATCTG-3’(配列番号))を用いて、96℃10秒間、60℃5秒間、72℃2分間を30~35サイクルの条件でPCRを行った。
【0132】
PCR産物をストラタジーン社のpBluescript vectorのBamHI/NotI部位に挿入してCi-VSPのcDNAをサブクローニングした。ストラタジーン社のQuickChange Site-Directed Mutagenesis Kitを用いて、上記cDNAに点変異または欠失変異を導入した。導入した変異を、配列決定によって確認した。
【0133】
Ci-VSPのcDNAをツメガエル卵母細胞に発現させるために、発現ベクターであるpSD64TR、pSD64TF(T.Snutch博士より供与)またはpGEM HE vector(Promega)を用いた。cRNAの合成を、Ambion社のmMESSAGE mMACHINE kitを製造業者の指示書に従って行った。
【0134】
〔アフリカツメガエル卵母細胞での電気生理実験〕
アフリカツメガエル雌成体を0.15%トリカイン溶液で麻酔した後、卵細胞を外科的に単離した。GIRK2、またはG-タンパク質βサブユニットもしくはγサブユニットを、Ci-VSP RNAに対して、0.3~0.5倍の濃度で卵細胞に注入した。IRK1またはIRK1(R228Q)を、0.1倍の濃度で注入した。
【0135】
卵細胞を、ND96中にて17±1℃で2~4日間培養した。CA1-B(ダーガン社)を用いて、cut-open oocyte電位固定記録を行った。刺激およびデータ獲得を、クランペックス(アクソンインスツルメンツ社)とDigidata 1322A AD/DA変換機を用いて行った。細胞外液として、105mM NMDG-Methansulfonate、2mM CaCl、10mM HEPES(pH7.5)からなる緩衝液を用いた。細胞内液として、105mM NMDG-Methansulfonate、2mM MgCl、0.1mM EGTA、10mM HEPES(pH7.5)からなる緩衝液を用いた。細胞内還流を、シリンジポンプを用いガラス管を介して、2μl/分の速度にて行った。
【0136】
Q-OFF電流を、ワーナーインスツルメント社のOC-725Cを用いて二本微小電極法により計測した。リーク電流と対称性容量電流を、保持電位-80mVからP/-10プロトコールによって差し引いて求めた。二本微小電極法においては、細胞外液として、96mM NMDG-Methansulfonate、3mM MgCl、5mM HEPES(pH7.5)からなる緩衝液を用いた。
【0137】
Ci-VSPとKir電流またはKCNQ2/3電流とを共発現させた場合、二本微小電極電位固定法には、“bath-clamp“アンプであるOC-725Cを用いた。データの取得を、マッキントッシュコンピューターによりITC-16 AD/DA変換機とPulseソフトウェア(HEKA社)を用いて行った。微小電極の抵抗としては、0.1~0.6メガオームのものを用いた。標準的細胞外液として、Kirチャネルの記録には、92mM KCl、3mM MgCl、4mM KOH、5mM HEPES(pH7.4)からなる緩衝液を用いた。
【0138】
KCNQ2/3チャネル電流の場合は、2mM KCl、92mM NaCl、3mM MgCl、4mM NaOH、5mM HEPES(pH7.4)からなる緩衝液を用いた。
【0139】
全てのGIRK cRNAを、Gタンパク質β1およびGタンパク質γ1とともに注入した。Kir電流のリーク電流変化を、100msのランプパルスによりモニタリングした。保持電位0mVまたはランプパルス中に大きなリーク電流を示す細胞を、データから除外した。KCNQ2/3の記録の場合には、-60mVの保持電位で1マイクロアンペア以上の電流を示した細胞を除外した。
【0140】
最終的な出力電流は、1kHzの4ポールのベッセルフィルターによってフィルターした。取り込み周波数は、微小電極電位固定法の場合は13-27.7kHzであり、cut-open oocyte法の場合は、50kHz~100kHzであった。全ての電気記録は、室温(23±2℃)で行われた。Igor Pro(WaveMetrix社)により解析した。Mann-Whitney U-testにおいてp<0.05の条件で統計的有為差を求めた。結果を、平均±SDで示し、図における誤差バーはSDを示す。
【0141】
〔ホスファターゼ活性のインビトロアッセイ〕
N末端側にGSTタンパク質を融合させたCi-VSPの細胞内ドメインを発現させるために、Ci-VSPのアミノ酸248~576位をコードするcDNAをpGEX4T3(Amersham Pharmacia社製)のXbaI-EcoRI部位にサブクローニングした。大腸菌JM109に発現させたGST融合タンパク質を、glutathione sepharose CL-4B(Amersham Pharmacia社製)を用いて精製した。Ci-VSPのホスファターゼ活性を、PTENホスファターゼ計測において用いられている手法に従って行った。
【0142】
〔イムノブロットおよび免疫染色〕
Ci-VSPのアミノ酸85~96位(ENEHGVDDGRME)のペプチド配列に対するウサギポリクローナル抗体を生成した。精子を免疫染色するために、カタユウレイボヤの精子を、0.1M MOPS(pH7.0)、0.5M NaCl、4%パラホルムアルデヒドで固定した後、TritonXで可溶化した。2%ヤギ血清でブロッキングした後、精子を、Ci-VSP抗体(最終濃度2.5μg/ml)と反応させた。ペプチド抗原(最終濃度2.5μg/ml)を用いて、抗体を吸収した。二次抗体には、Alexa 488-conjugated anti-rabbit IgG(Molecular Probe社)を1:1000の希釈で用いた。サンプルを、PermaFluor(Thermo社)でマウントし、laser scanning microscope(LSM510,Zeiss社)を用いて観察した。免疫電顕観察においては、精子を遠心分離によって集めた後、1% glutaraldehyde、0.23Mリン酸緩衝液(pH7.2)中で固定し、アフィニティー精製した抗VSP抗体(60μg/ml)と反応させた後、5nmサイズの金粒子(BioCell,Cardiff社)結合体化ヤギ抗ウサギ二次抗体を反応させた。サンプルを、1%四酸化オスミウムで後固定した後、脱水し、プロピレンオキサイドを通してエポン812に包埋した後、70nmの厚みで切片を作製した。
【0143】
〔細胞表面タンパク質の検出〕
Ci-VSPポリペプチド(野生型またはR229Q/R232Q変異体)が細胞表面に検出していることを、ビオチン化標識法およびウエスタンブロッティングによって行った。表面タンパク質のビオチン化について、Ci-VSPポリペプチド(野生型またはR229Q/R232Q変異体)を発現するoocyteを、ND96中0.5mg/ml NHS-LC-Biotin(Pierce Biochemical)の存在下にて室温で8時間インキュベートした。各cRNAについて40個のoocyteをホモジナイズした。streptavidin beads(Sigma)30μlをこの上清に添加し、そして遠心分離によって回収した。このサンプルをさらに、10% SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、引き続いて抗Ci-VSPポリクローナル抗体(0.1ng/ml)およびhorseradish peroxidase conjugated anti-rabbit immunoglobulin(Amersham)を用いるウエスタンブロッティングを行った。
【0144】
〔実施例2:電位センサーとして機能するCi-VSPの膜貫通ドメイン〕
Ci-VSPの推定の膜貫通領域でのアミノ酸配列が、電位依存性チャネルの電位センサーのものと非常に類似していることは、Ci-VSPが電位依存性チャネルと同様に膜電位変化を感知し得ることを示唆する。このことを検証するための重要な試験の1つとして、電位センサーの陽性に荷電したセグメントの膜貫通シフトに起因する電位依存的電荷移動を検出した。
【0145】
図2aは、Ci-VSPを発現するアフリカツメガエルcut-open oocyteから記録した非対称の置換電流の代表例を示す。パルスを-80mV~+160mVの範囲で10mVずつ増大させて適用した。直線かつ対称な電流を-110mVの保持電位を用いるP/-8手順によって差し引いた。図2bは、図2aで示したゲート電流の電位変化によって運ばれた電荷を各膜電位で比較したグラフであり、電流オフ(■)およびオン(▲)によってcut-open oocyteから運ばれた電位依存的電荷、およびTEVC(n=10)下で記録したオフ電流(●)を示すグラフである。オン電流およびオフ電流の軌跡を、一次指数(I(t)=Ae-t/τ+C)に従って描いた。ここで、Aは、ピーク電流振幅である。運ばれた電荷を、パルスの開始点から3τの持続時間にわたる各電流を積分することによって算出した。TEVCレコーディングからのQ-オフを、再分極開始時から150msにわたる各オフ「ゲート」電流を積分することによって測定した。Q-V曲線を、Boltzmann relationによって描いた:Q=1/[1+exp{Ze(V-V1/2)/kT}](kは、Bolzmann constantであり、eは、最初の電荷である)。cut-open oocyteにおいて、Q-オンおよびQ-オフについて、V1/2は、それぞれ62.7mVおよび71.8mVであり、Zは、それぞれ1.26および1.098である。TEVCレコーディング(n=10)からのQ-オフを、V1/2について68.5mVであり、Zについて1.03で描いた。TEVC下でのオフ電流の最大電荷移動は、40.2±14.2nC(n=10)であった。インセットは、図2aと同一のcut-open oocyteからのQ-オフおよびQ-オンのX-Yプロットを示す。
【0146】
Ci-VSPのcRNAをXenopus oocyteに微小注入し、2電極電位クランプ(TEVC)およびcut-open oocyteを用いて非対称置換電流を記録した。Ci-VSPを発現するoocyteは、脱分極工程の際に強い一過性の即時性外向き電流を示し、電位依存性チャネルのオン電流およびオフ電流に類似した過分極パルスの際に一過性の内向き電流を示した(図2a)。「ゲート」電流の特徴的な特性の1つは、電荷移動が電位依存的に生じることである。オン電流のQ-V曲線を、V1/2について62.7mVおよびZについて1.26であるBoltzmann equationで描いた。これらは、オフ電流についてのもの(V1/2=71.7mV、Z=1.1)と類似した(図2b)。オフ電流またはオン電流のいずれかにおいて運ばれる電荷は、オフ電流について積分した総電荷に対するオン電流について積分した総電荷のX-Yプロットにおいて明確に示されているように、広範な膜電位にわたって互いに十分に一致する(図2bインセット)。従って、脱分極時の電荷移動の一因である同一分子構造は、再分極時の電荷移動の基礎となる。シェイカー型Kチャネルのような電位依存性チャネルと比較する場合、電荷移動の電位依存性は、ポジティブ方向に有意にシフトされ(シェイカー型Kチャネルについて-37.9mVに対してCi-VSPについてV1/2=+60mV)、進行(stepness)は、緩やかである(シェイカー型Kチャネルのオン電流におけるZ=1.8対Ci-VSPのオン電流におけるZ=1.1)。
【0147】
このようなチャネル様「ゲート」電流が膜貫通セグメントに由来することを確認するために、残基256において短縮化されたタンパク質(C末端酵素部分全体を欠失する)を発現させた。図2cは、cut-open oocyte法で記録した、C末端部分全体を欠いた(S1~S4のみにした)短縮型タンパク質の電流置換を示す。S1~S4のみにした短縮型タンパク質も、全長タンパク質と同様の電位センサーとしての性質を有することがわかった。しかし、Q-V曲線は、わずかに右方向にシフトした(示さず)。
【0148】
S4セグメントにおける陽性電荷は電位センサーの電荷移動の基礎となりかつ電位依存性チャネルのゲーティングに不可欠であることが知られている。S4様セグメントにおける陽性電荷が電位依存性チャネルと同様にCi-VSPの「ゲート」電流に必須であるか否かを試験するために、S4様セグメント中の陽性電荷にいくつかの変異を導入した。
【0149】
4つの陽性荷電残基中2つのアラニン(R223およびR226)を中性のグルタミンに変異させた場合、「ゲート」電流を全く検出することができなかった(図2d)。図2dは、Ci-VSP R229Q/R232Qを発現するcut-open oocyteからの記録を示す。Ci-VSPの電位センサーとしての性質は、S4中の塩基性アミノ酸での電荷に依存することがわかった。
【0150】
2つの変異の導入が細胞表面への発現を阻害していないことをチェックするために、細胞表面タンパク質のビオチン化を行った後、抗Ci-VSP抗体を用いるウエスタンブロッティングによって特異的な検出を行った。R229Q/R232Qタンパク質のシグナルを鮮明に検出した。このことは、R229Q/R232Q変異体におけるゲート電流の非存在が、このタンパク質の標的化しそこないに起因するのではないことを示す。
【0151】
以上のように、電位依存性を有する強いゲート電流をCi-VSPから検出した。また、ON電流は、100mVを越えて飽和しなかった。この電圧クランプ技術において、内因性のイオン電流が夾雑したので、正確なG-V関係を評価することが困難であった。この問題を、細胞内灌流を伴う切開(cut-open)卵母細胞電圧クランプ技術によって克服した。この方法を用いると、ON電流のG-V曲線は、OFF電流のものと同程度であった。このことは、Ci-VSPは、ゲート電位の電位依存的固定を示さないことを示した。
【0152】
また、C末端の酵素ドメインを欠く短縮型タンパク質は、なおゲート電流を示したが、電位依存性の右方へのシフトを示した。さらに、S4様セグメント中の正電荷アミノ酸残基4つのうち2つを中性のアミノ酸に変異させた場合、ゲート電流は完全に排除された。これらの結果は、Ci-VSPが、電圧ゲートチャネル中に見出されるものと同様に作動する電位センサーを有することを示す。
【0153】
〔実施例3:イノシトールリン脂質ホスファターゼであるCi-VSPの細胞内ドメイン〕
実施例1に記載の手順に従って、Ci-VSPポリペプチドの細胞内ドメインがイノシトールリン脂質ホスファターゼであることを検証した(図3)。図3aは、Ci-VSPのホスファターゼ活性中心のアミノ酸配列と、いくつかの種からのPTENのホスファターゼ活性中心のアミノ酸配列との比較を示す図である。Ci-VSPポリペプチドは、公知のホスファターゼと同様の活性中心を有する。
【0154】
図3aに示すように、Ci-VSPのホスファターゼ様ドメインは、PTENにかなり相同である。PTENは、イノシトール環の3‘部位で脱リン酸化されるホスファチジルイノシトールを有する。
【0155】
Ci-VSPがPI(3,4,5)Pを基質とするホスファターゼ活性を有するか否かを試験するために、Ci-VSPのC末端細胞内領域全体とGSTとの融合タンパク質を作製した。図3bは、PI(3,4,5)Pを基質として用いるmalachite green assayによる、glutathione S-transferaseとCi-VSPのホスファターゼ様ドメインとの融合タンパク質のイノシトールリン脂質ホスファターゼ活性を示すグラフである。GSTと融合したCi-VSP細胞内ドメイン(GST-Ci-VSPΔTM、2μg/チューブ)(■)との反応を23℃で行い、示した時間で反応を停止し、次いで、放出された無機ホスフェートを、標準無機ホスフェートとの比較によって測定した。不活性な変異体であるGST-Ci-VSPΔTM(C363S)(●)、およびGST(▲)を、ネガティブコントロールとして使用した。BIOMOL GREEN(Biomol,Plymouth Meeting,PA)をサンプルに添加して、HOを参照としてOD600を測定した。各データ点を2連でアッセイし平均をとった。図3bに示すように、Ci-VSPの細胞内ドメインは、イノシトールリン脂質ホスファターゼ活性を示した。また、この酵素活性は、時間依存的であることがわかった。実験を2回反復し、同様の結果を得た。
【0156】
このように、Ci-VSPポリペプチドの酵素ドメインにおける酵素活性の基質は、リン脂質のPIP(癌化、形態変化、細胞死などの、細胞内信号伝達に重要な役割を有する物質)であることがわかった。また、Ci-VSPポリペプチドをGST融合タンパク質として大腸菌に発現させて、PIPホスファターゼ活性を測定すると、PIPからPIPへの脱リン酸化反応を引き起こした。
【0157】
〔実施例4:Ci-VSPの酵素活性〕
薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いてCi-VSPの酵素活性を調べた。実施例3に示すCi-VSPのC末端細胞内領域全体とGSTとの融合タンパク質(GST-Ci-VSP)を、蛍光標識された基質(NBD6-diC-PI(3,4,5)P)とインキュベートした。PI(3,4,5)Pを基質とする酵素活性が存在すると、分解産物PIP(NBD6-diC-PI(4,5)P)が検出される。
【0158】
図4aに示すように、Ci-VSPは所望の活性を有しることが確認されたが、活性中心のシステインをセリンに置換したタンパク質(C363S)またはGSTを基質とインキュベートした場合はPIPのバンドは検出されなかった(図4a)。
【0159】
次いで、Ci-VSPの細胞内ドメインについて、イノシトールリン脂質を基質とする酵素活性の特性をさらに明らかにするために、Malachite greenアッセイを用いて、種々の濃度のPIPを基質とする酵素反応を行い、反応の時間依存性を検討した。
【0160】
Malachite greenは無機リン酸非存在下では薄黄色を呈するが、ammonium molybdateと一緒に無機リン酸を存在させると、濃度依存的に濃緑色を呈する。したがって、Malachite greenの620nmにおける吸光度を測定することにより、PI(3,4,5)PがPI(4,5)Pに分解される際に生じる無機リン酸を定量することが可能である。malachite green存在下で種々の基質濃度でのCi-VSPの酵素活性を測定したところ、図4bに示すように、時間依存的に無機リン酸が遊離されることが確認された。
【0161】
図4bにおけるt=0(分)でのグラフの傾きを算出して、各基質濃度での酵素反応の初速度Vを求め、Vを基質濃度に対してプロットした(図4c)。Michaelis-Mentenの式にフィットさせて、酵素反応最大速度Vmax、およびVmaxの半分に達するのに必要な基質濃度Kmを求めた結果、Vmaxは0.292nmol/min/μg、Kmは36μMであった。これらの値は、PTENにおいて報告されている値に近似し、よって、Ci-VSPの細胞内ドメインからなる領域の酵素活性がPTENの酵素活性に類似することを示す。
【0162】
〔実施例5:Ci-VSPによるイノシトールリン脂質ダイナミクスの電位依存的変化〕
実施例2および3の結果は、Ci-VSPが電位センサーとして機能するだけでなく、イノシトールリン脂質ホスファターゼとして機能することを示す。そこで、このようなCi-VSPの酵素活性が膜電位によって改変されるのか否かを調べるために、実施例1に記載の手順に従って、Ci-VSPポリペプチドの有する脱リン酸化する活性(PIP→PIP)が膜電位によって変化することを検証した。
【0163】
具体的には、PIP感受性タンパク質であるGIRK2、IRK1またはKCNQ2/3のカリウムチャネルを、Ci-VSPの存在下または非存在下でウシGタンパク質のβ1およびγ1とともに発現させ、TEVC法を用いて、Kir電流を記録し、Kチャネル活性をプローブとしてCi-VSPによるイノシトールリン脂質ダイナミクスの電位依存的変化を示した(図5)。
【0164】
図5aは、一過性の変化を示すGIRK電流の軌跡および電流幅のプロットを示すグラフである。代表的な4つの軌跡は、GIRK2のみ、GIRK2+Ci-VSP、GIRK2+Ci-VSP変異体(C363S)、またはGIRK2+Ci-VSP変異体(R229Q/R232Q)を発現する細胞におけるものである。-100mVを150ms、-60mV(左)または0mV(右)のいずれかでのインターバルを10sに設定して、GIRK電流を活性化した。各軌跡の色の濃さは、一連の試験パルスでの記録の順番を示し、より濃い軌跡を後に記録した。図5aに示すように、GIRK2は、野生型VSPと同時発現させたときにのみ、膜電位の変化に応じて電流量を変化させた(過分極で増大、脱分極で減少)。
【0165】
図5bは、Ci-VSPを同時発現させた場合のIRK1電流軌跡および電流幅の時間依存的な変化のプロットを示すグラフである。図5aおよびbの時間連続プロットにおいて、各試験パルス間のKir電流の増幅を、試験パルス間インターバルを-60mVに保持した場合の一連の記録において得た最大増幅によって正規化した。図5bに示すように、PIP感受性の濃度依存性を変化させたIRK1変異体においても同様の変化を確認した。
【0166】
図5cは、Ci-VSPの野生型、C363S変異体またはR229Q/R232Q変異体を発現するoocyteからのKCNQ2/3電流軌跡および電流幅の時間依存的な変化のプロットを示すグラフである。時間連続プロットにおいて、+20mVでの脱分極100msの間の外向き電流ピークの増幅を、-10mVでのインターバル電位を用いたシリーズの第1の試験パルス間の外向き電流ピークの増幅によって正規化した。図5cに示すように、M電流を形成するKCNQ2/3チャネルにおいても、過分極で活性化し、脱分極で減少した。
【0167】
図5dは、カリウムチャネルの量の電位依存的変化をまとめたグラフである。Kirチャネルについてのバー(左)は、同一細胞からの記録の中での最大増幅に対して-100mVでの工程によって刺激した最小内向き電流の平均値を示す。KCNQ2/3についてのバー(右)は、第1の試験パルスによって誘起した外向き電流の増幅によって正規化した、試験パルス間のインターバルを-10mVで行った一連の実験における外向き電流の増幅を示す。星印は、各セットにおいてCi-VSPを発現させなかった細胞の値と比較した場合の統計的有意差を示す。
【0168】
以上のように、Ci-VSPポリペプチドをPIPで活性化されることが知られているGIRKチャネルまたはKCNQ2/3チャネルをVSPとともに発現させると、膜電位変化に応じてこれらのチャネル活性の程度が定量的に変化した。すなわち、膜電位を過分極にすると酵素活性が増加し、膜電位を脱分極にすると酵素活性が減少した。
【0169】
〔実施例6:ホスファターゼ活性の電位依存性〕
チャネル活性によって検出したホスファターゼ活性の電位依存性を調べた(図6)。図6aは、-80mV~20mVにわたる種々の試験パルス間インターバルの膜電位レベルを用いた、Ci-VSPおよびGIRK2を発現するoocyteからのGIRK電流の代表的な記録を示すグラフである。インターバルを60sにセットした。なぜなら、電流幅は、図5に示したほとんどの場合においてこの期間内に一定レベルに達したからである。
【0170】
図6bは、試験パルス間インターバルの膜電位レベルに対するGIRK電流の電流幅のプロットを示す図である。異なる4つの細胞からの記録を、異なる印で表す。-100mVに過分極させる試験パルスの終了時での内向き電流の関数を、試験パルス間インターバルの電位に対してプロットし、以下の式で描いた:I=1/[1+exp(V1/2-V)/k]]+C(ここで、V1/2、kおよびCは、それぞれ半分不活性化電位、電位依存性の勾配、および電流の持続性要素である)。点線は、図2に示したものと同様に、電子センサー移動の正規化したQ-V曲線である。
【0171】
〔実施例7:リンカー領域の役割〕
Ci-VSPポリペプチドの電位センサードメインとホスファターゼドメインとの間のリンカー領域の役割を調べた。
【0172】
図7aは、S4様セグメントとホスファターゼ様ドメインとの間のリンカー領域(MKASSRRTISQNKRRY:配列番号)を示す図である。リンカー領域のN末端半分またはC末端半分を欠失させた(それぞれ、ΔN-L-Ci-VSPおよびΔC-L-Ci-VSP)。そして、GIRK2またはKCNQ2/3とともにoocyte中に同時発現させた。VSDおよびPDは、それぞれセンサードメインおよびホスファターゼドメインを示す。
【0173】
図7bは、試験パルス間のインターバルの間での過分極または脱分極に対するKir電流の一過性変化を示すグラフである。
【0174】
図7cは、種々の膜電位でのインターバルのシリーズに関するGIRK2(左)またはKCNQ2/3(右)との発現についてのデータを要約したグラフである。電流幅を、図5dと同様の様式で正規化した。星印は、ΔN-L-Ci-VSPを有する細胞が、Ci-VSPを発現しない細胞と比較して電流幅の有意差を示さないこと、すなわち、電位センサーとホスファターゼとの間にカップリングがないことを示す。
【0175】
図7a~cに示すように、Ci-VSPポリペプチドは、(1)電位センサーのモジュールと酵素モジュールの両方を含み、これらのモジュールが短いリンカー配列によって連結されていること、および、(2)Ci-VSPポリペプチドの単一分子中に存在する2つのドメイン間のカップリングを介して電位依存的に酵素活性を調節すること、すなわち、電位センサーのモジュールが感知した電気的シグナルに基づいて酵素モジュール(ホスファターゼドメイン)における酵素活性を調節するためにはリンカー配列が必要であることがわかった。
【0176】
〔実施例8:Ci-VSPの局在〕
Ci-VSPの生理学的役割に関する知見を得るために、Ci-VSPの遺伝子発現パターンを調べた。心臓、体壁筋肉、生殖腺および精巣におけるCi-VSP転写物のRT-PCRを行った結果、Ci-VSPポリペプチドが精巣に特異的に発現することがわかった(図8a)。
【0177】
Ci-VSPのC末端ペプチド配列に対するポリクローナル抗体を用いて、カタユウレイボヤの精子の免疫組織化学を行った(図8b~g)。
【0178】
図8b~dは、精子の鞭毛およびミトコンドリアにおいて観察した蛍光を示す。図8e~gは、抗原ペプチドで吸収した抗体を一次抗体として用いた場合を示す。スケールバーは10μmである。図8h~kは、精子鞭毛の生体膜でのCi-VSPの局在を示す免疫電顕像である。鞭毛の横断切片(hおよびi)および縦断切片(jおよびk)を示す。
【0179】
図に示すように、鞭毛軸糸の辺縁部が標識された。別の抗体(N末端ペプチドに対する抗体)を用いた場合もまた、同様のパターンを得た(示さず)。ここで、生体膜の破片が結合している(矢印)。
【0180】
金粒子は、部分的に破壊された生体膜の破片上にのみ観察された(矢印)。しかし、明らかにインタクトな生体膜上には観察されなかった(i中の矢頭)。このことは、Ci-VSPのN末端細胞内ドメインに対して惹起した抗体がアクセス可能であることを反映する。バーは、200nmである(h~jは同一解像度である)。
【0181】
このように、Ci-VSPポリペプチドは精子の尾部に局在することがわかった。
【0182】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用の可能性】
【0183】
本発明に係るポリペプチドの有するホスファターゼドメインと電位センサーとの共役の原理を解明することによって、電気的に酵素活性を制御するツールとして利用することができる。このようなツールは、ナノバイオテクノロジーにおける基礎技術として利用することができる。また、新規電位センサー分子である本発明に係るポリペプチドを用いれば、バイオセンサーまたはバイオ素子として、電気的信号と化学的信号のインターフェースを確立することができる。その結果、生体信号と電子回路とをつなげる医用工学の発展に寄与することができる。すなわち、本発明に係るポリペプチドは、インターフェース的なバイオ素子を開発するための生物材料として非常に有用である。
【配列表】
SEQUENCE LISTING

<110> Kyoto University
National Institutes of Natural Sciences

<120> Novel ion channel-like polypeptide and use thereof

<130> 656JP

<140> JP 2006-544779
<141> 2005-05-13

<150> JP 2004-332070
<151> 2004-11-16

<160> 4

<170> PatentIn Ver. 2.1

<210> 1
<211> 576
<212> PRT
<213> Ciona intestinals

<400> 1
Met Glu Gly Phe Asp Gly Ser Asp Phe Ser Pro Pro Ala Asp Leu Val
1 5 10 15

Gly Val Asp Gly Ala Val Met Arg Asn Val Val Asp Val Thr Ile Asn
20 25 30

Gly Asp Val Thr Ala Pro Pro Lys Ala Ala Pro Arg Lys Ser Glu Ser
35 40 45

Val Lys Lys Val His Trp Asn Asp Val Asp Gln Gly Pro Ser Glu Lys
50 55 60

Pro Glu Thr Arg Gln Glu Glu Arg Ile Asp Ile Pro Glu Ile Ser Gly
65 70 75 80

Leu Trp Trp Gly Glu Asn Glu His Gly Val Asp Asp Gly Arg Met Glu
85 90 95

Ile Pro Thr Thr Gly Val Gly Arg Val Gln Phe Arg Val Arg Ala Val
100 105 110

Ile Asp His Leu Gly Met Arg Val Phe Gly Val Phe Leu Ile Phe Leu
115 120 125

Asp Ile Ile Leu Met Ile Ile Asp Leu Ser Leu Pro Gly Lys Ser Glu
130 135 140

Ser Ser Gln Ser Phe Tyr Asp Gly Met Ala Leu Ala Leu Ser Cys Tyr
145 150 155 160

Phe Met Leu Asp Leu Gly Leu Arg Ile Phe Ala Tyr Gly Pro Lys Asn
165 170 175

Phe Phe Thr Asn Pro Trp Glu Val Ala Asp Gly Leu Ile Ile Val Val
180 185 190

Thr Phe Val Val Thr Ile Phe Tyr Thr Val Leu Asp Glu Tyr Val Gln
195 200 205

Glu Thr Gly Ala Asp Gly Leu Gly Arg Leu Val Val Leu Ala Arg Leu
210 215 220

Leu Arg Val Val Arg Leu Ala Arg Ile Phe Tyr Ser His Gln Gln Met
225 230 235 240

Lys Ala Ser Ser Arg Arg Thr Ile Ser Gln Asn Lys Arg Arg Tyr Arg
245 250 255

Lys Asp Gly Phe Asp Leu Asp Leu Thr Tyr Val Thr Asp His Val Ile
260 265 270

Ala Met Ser Phe Pro Ser Ser Gly Arg Gln Ser Leu Phe Arg Asn Pro
275 280 285

Ile Gly Glu Val Ser Arg Phe Phe Lys Thr Lys His Pro Asp Lys Phe
290 295 300

Arg Ile Tyr Asn Leu Cys Ser Glu Arg Gly Tyr Asp Glu Thr Lys Phe
305 310 315 320

Asp Asn His Val Tyr Arg Val Met Ile Asp Asp His Asn Val Pro Thr
325 330 335

Leu Val Asp Leu Leu Lys Phe Ile Asp Asp Ala Lys Val Trp Met Thr
340 345 350

Ser Asp Pro Asp His Val Ile Ala Ile His Cys Lys Gly Gly Lys Gly
355 360 365

Arg Thr Gly Thr Leu Val Ser Ser Trp Leu Leu Glu Asp Gly Lys Phe
370 375 380

Asp Thr Ala Lys Glu Ala Leu Glu Tyr Phe Gly Ser Arg Arg Thr Asp
385 390 395 400

Phe Glu Val Gly Asp Val Phe Gln Gly Val Glu Thr Ala Ser Gln Ile
405 410 415

Arg Tyr Val Gly Tyr Phe Glu Lys Ile Lys Lys Asn Tyr Gly Gly Gln
420 425 430

Leu Pro Pro Met Lys Lys Leu Lys Val Thr Gly Val Thr Ile Thr Ala
435 440 445

Ile Gln Gly Val Gly Arg Gly Asn Gly Ser Asp Leu Ser Met Gln Ile
450 455 460

Val Ser Glu Arg Gln Glu Val Leu Leu Cys Lys Phe Ala Glu Gly Tyr
465 470 475 480

Asn Cys Ala Leu Gln Tyr Asp Ala Thr Asp Asp Cys Val Thr Cys Glu
485 490 495

Val Lys Asn Cys Pro Val Leu Ala Gly Asp Ile Lys Val Arg Phe Met
500 505 510

Ser Thr Ser Lys Ser Leu Pro Arg Gly Tyr Asp Asn Cys Pro Phe Tyr
515 520 525

Phe Trp Phe Asn Thr Ser Leu Val Glu Gly Asp His Val Thr Leu Lys
530 535 540

Arg Glu Glu Ile Asp Asn Pro His Lys Lys Lys Thr Trp Lys Ile Tyr
545 550 555 560

Arg Asp Asn Phe Thr Val Lys Leu Thr Phe Ser Asp Ala Glu Asp Ile
565 570 575


<210> 2
<211> 36
<212> DNA
<213> Artificial Sequence

<220>
<223> Description of Artificial Sequence:
primer for amplifying CiVSP gene

<400> 2
cgggatccgc caccatggag ggattcgacg gttcag 36


<210> 3
<211> 36
<212> DNA
<213> Artificial Sequence

<220>
<223> Description of Artificial Sequence:
primer for amplifying CiVSP gene

<400> 3
atagtttagc ggccgcctaa atgtcttcag catctg 36


<210> 4
<211> 16
<212> PRT
<213> Ciona intestinals

<400> 4
Met Lys Ala Ser Ser Arg Arg Thr Ile Ser Gln Asn Lys Arg Arg Tyr
1 5 10 15
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8