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明細書 :モヤモヤ病関連遺伝子及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5854423号 (P5854423)
登録日 平成27年12月18日(2015.12.18)
発行日 平成28年2月9日(2016.2.9)
発明の名称または考案の名称 モヤモヤ病関連遺伝子及びその利用
国際特許分類 A01K  67/027       (2006.01)
C12N   9/00        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A01K 67/027 ZNA
C12N 9/00
C12Q 1/68 A
C07K 14/47
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 19
全頁数 60
出願番号 特願2011-537321 (P2011-537321)
出願日 平成22年10月22日(2010.10.22)
国際出願番号 PCT/JP2010/068737
国際公開番号 WO2011/049207
国際公開日 平成23年4月28日(2011.4.28)
優先権出願番号 2009244938
優先日 平成21年10月23日(2009.10.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年10月1日(2013.10.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】小泉 昭夫
【氏名】永田 和宏
【氏名】森戸 大介
【氏名】橋本 信夫
【氏名】高島 成二
【氏名】山崎 悟
【氏名】松浦 範夫
【氏名】人見 敏明
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100122688、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 健二
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
審査官 【審査官】山本 晋也
参考文献・文献 特表2005-514903(JP,A)
国際公開第2009/042680(WO,A1)
MINEHARU,Y. et al.,Autosomal dominant moyamoya disease maps to chromosome 17q25.3,Neurology,2008年,Vol.70,p.2357-2363
KANG,H.S. et al.,Neurosurgery,2006年,Vol.58, No.6,p.1074-1080
調査した分野 C12N
BIOSIS/MEDLINE/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
WPI
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号2で表されるアミノ酸配列(ここで、第4810番のアルギニンはリジンに置換されていてもよい)を含むポリペプチドの非ヒトオルソログをコードする遺伝子の機能欠損させることにより得られる、血管新生異常を呈する非ヒト動物。
【請求項2】
血管新生異常の動物モデルとしての、請求項1記載の動物の使用。
【請求項3】
被検物質が以下の(1)~(4)から選択されるいずれかのポリペプチドをコードする遺伝子の発現または機能を調節し得るか否かを評価することを含む、血管新生調節剤の候補物質のスクリーニング方法:
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4810番のアルギニンはリジンに置換されていてもよい);
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列と99.5%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つユビキチンリガーゼ活性及びATPase活性を有するポリペプチド;
(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1~30個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、且つユビキチンリガーゼ活性及びATPase活性を有するポリペプチド;及び
(4)(1)のポリペプチドの非ヒトオルソログ。
【請求項4】
配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドであって、該部分配列は、4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)、232102 G>A(SNP5)、55977 G>A(SNP6)、55712 A>G(SNP7)及び57483 G>A(SNP8)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを含み、該部分配列に含まれる該SNPのアレルはマイナーアレルであり、且つ該部分配列又はその相補配列は少なくとも15ヌクレオチドの長さを有する、モヤモヤ病の発症リスクの診断用ポリヌクレオチドプライマー又はプローブ
【請求項5】
該SNPが、4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)及び232102 G>A(SNP5)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項4記載のポリヌクレオチドプライマー又はプローブ
【請求項6】
該SNPが73097 G>A(SNP2)である、請求項4記載のポリヌクレオチドプライマー又はプローブ
【請求項7】
該SNPが55977 G>A(SNP6)である、請求項4記載のポリヌクレオチドプライマー又はプローブ
【請求項8】
(a)ヒトから採取した生体試料について、配列番号5で表されるヌクレオチド配列における4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)、232102 G>A(SNP5)、55977 G>A(SNP6)、55712 A>G(SNP7)及び57483 G>A(SNP8)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出すること、
(b)少なくとも一方のアレルにおいて該SNPを含むマイナーアレルが検出された場合、該SNPを含むマイナーアレルが検出されない場合と比較して、モヤモヤ病の発症リスクが相対的に高いという基準と、(a)の検出結果とを比較すること
を含む、モヤモヤ病の発症リスクの試験方法。
【請求項9】
該SNPが、4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)及び232102 G>A(SNP5)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
該SNPが73097 G>A(SNP2)である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
該SNPが55977 G>A(SNP6)である、請求項8記載の方法。
【請求項12】
配列番号5で表されるヌクレオチド配列における4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)、232102 G>A(SNP5)、55977 G>A(SNP6)、55712 A>G(SNP7)及び57483 G>A(SNP8)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを特異的に検出し得る核酸プローブ、又は該SNPを含む領域を特異的に増幅し得るプライマーを含む、モヤモヤ病の発症リスクの診断剤。
【請求項13】
該SNPが、4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)及び232102 G>A(SNP5)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項12記載の診断剤。
【請求項14】
該SNPが73097 G>A(SNP2)である、請求項12記載の診断剤。
【請求項15】
該SNPが55977 G>A(SNP6)である、請求項12記載の診断剤。
【請求項16】
(a)ヒトから採取した生体試料について、配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)のSNPを検出すること、及び
(b)少なくとも一方のアレルにおいて該SNP2を含むマイナーアレルが検出された場合、該マイナーアレルを含まない場合と比較して、虚血性心疾患の発症リスクが相対的に高いという基準と、(a)の検出結果とを比較すること
を含む、虚血性心疾患の発症リスクの試験方法。
【請求項17】
配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)のSNPを特異的に検出し得る核酸プローブ、又は該SNPを含む領域を特異的に増幅し得るプライマーを含む、虚血性心疾患の発症リスクの診断剤。
【請求項18】
(a)ヒトから採取した生体試料について、配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)のSNPを検出すること、及び
(b)少なくとも一方のアレルにおいて該SNP2を含むマイナーアレルが検出された場合、該マイナーアレルを含まない場合と比較して、一卵性双生児を分娩する頻度が相対的に高いという基準と、(a)の検出結果とを比較すること
を含む、一卵性双生児の分娩可能性の試験方法。
【請求項19】
配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)のSNPを特異的に検出し得る核酸プローブ、又は該SNPを含む領域を特異的に増幅し得るプライマーを含む、一卵性双生児の分娩可能性の診断剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、モヤモヤ病発症前診断に有用な新規遺伝子及びSNPsに関する。更に、本発明は、該遺伝子の機能的欠損を有する非ヒト動物、該遺伝子の機能的欠損を有する細胞、該遺伝子を利用した、家族性モヤモヤ病発症リスクの判定方法、虚血性心疾患の発症リスクの判定方法、一卵性双生児の出生可能性の判定方法、及びこれらの判定方法の実施に有用な試薬等に関する。
【背景技術】
【0002】
モヤモヤ病(Moyamoya disease: MMD)は、ウィリス動脈輪閉塞症とも呼ばれ、小児期及び成人期に発症する内頸動脈終末部の狭窄病変である。
【0003】
モヤモヤ病は世界中で発症する疾患であるが(非特許文献1)、モヤモヤ病の発症率は、日本、韓国及び中国などの東アジアにおいて特に高い(非特許文献2及び3)。日本においては、最新の罹患率及び年間発症率が、100,000人につき10.5人及び0.94人と報告されている(非特許文献2)。ヨーロッパにおいては、発症率は日本における発症率のおよそ1/10と見積もられている(非特許文献2及び3)。アメリカにおいては、発症率は100,000人につきおよそ0.086人であり、コーカサス系アメリカ人よりも、アジア系アメリカ人及びアフリカ系アメリカ人において高い(非特許文献2及び3)。
【0004】
従来から遺伝的素因が疑われてきたが、感受性遺伝子の同定はなされていない。本発明者らは、これまでの解析において、染色体領域17q25.3がモヤモヤ病の発症と連鎖することを見出している(非特許文献4)。
【0005】
ヒトゲノムの網羅的シークエンスにより、基本的にはヒト染色体の全てのヌクレオチド配列が決定されており、その配列から、上記染色体領域17q25.3においては、CARD14、Raptor、AATK、KIAA1618、C17orf27等を含む数多くの遺伝子の存在が予想されている。
【0006】
Bertinらは、ルシフェラーゼレポーター解析に基づき、CARD14がIKKG(IKBKG;300248)又はIKKBを通してNFKB活性を誘導すること、そしてこの誘導にはCARD14のN末端を要することを示している。CARD14のC末端ドメインの欠損により増強されたNFKB活性が生じることを報告している(非特許文献5)。従って、NFKB媒介経路のためのネガティブ制御機能が存在し、これが免疫反応において鍵となる役割を果たしていることが示唆される。
【0007】
Raptor[regulatory associated protein of mammalian target of rapamycin (mTOR)]は、TORシグナリングに必須の150kDaのmTOR補因子である(非特許文献6)。Raptorは、組織の肥大と関連し(非特許文献7)、hypoxia-inducible factorの制御因子であり(非特許文献8)、HLAクラスI抗体により媒介される血管内皮細胞増殖に関与する(非特許文献9)。
【0008】
AATKは、アポトーシスに関与することが報告されている(非特許文献10)。アポトーシスは、MMDの患者の狭窄病変において観察される現象の1つである(非特許文献11)。
【0009】
KIAA1618及びC17orf27のアミノ酸配列は、それぞれアクセッション番号NP_066005.2及びNP_065965.3として登録され、NCBIのインターネットホームページ上に公開されている。しかしながら、これらの遺伝子は、コンピューターによるヌクレオチド配列解析に基づき構造遺伝子であろうと予測された「予測遺伝子(predicted gene)」であり、独立した2つの遺伝子として開示されているが、機能解析はまったくなされていない。
【0010】
特許文献1において、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが開示されている。該ポリペプチドは膜貫通ドメインを有する膜タンパク質であり、Znフィンガードメイン及びATP結合モチーフA(Pループ)を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】国際公開第2002/094990号
【0012】

【非特許文献1】Neurol Med Chir (Tokyo), vol. 32, pages 883-886, 1992
【非特許文献2】Lancet Neurol, vol. 7, pages 1056-1066, 2008
【非特許文献3】N Engl J Med, vol. 360, pages 1226-1237, 2009
【非特許文献4】Neurology, vol. 70, pages 2357-2363, 2008
【非特許文献5】J Biol Chem, vol. 276, pages 11877-11882, 2001
【非特許文献6】J Biol Chem, vol. 284, pages 14693-14697, 2009
【非特許文献7】Annu Rev Pharmacol Toxicol, vol. 47, pages 443-467, 2007
【非特許文献8】J Biol Chem, vol. 282, pages 20534-20543, 2007
【非特許文献9】J Immunol, vol. 180, pages 2357-2366, 2008
【非特許文献10】Am J Physiol Cell Physiol, vol. 292, pages C1809-C1815, 2007
【非特許文献11】Neurosurgery, vol. 59, pages 894-900, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、モヤモヤ病の発症と相関するSNPsを同定し、それに基づきモヤモヤ病の発症前診断方法を確立することである。更に、本発明は、当該SNPsの情報から、モヤモヤ病の発症に関連する可能性のある遺伝子を取得し、該遺伝子の機能的欠損を含む非ヒト動物や動物細胞を作成し、該遺伝子の機能を明らかにすることを目的とする。また、本発明は、該遺伝子及びSNPsの更なる用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、17のモヤモヤ病家系について詳細な連鎖解析を行い、染色体領域17q25.3の中から、モヤモヤ病の発症と連鎖する、約2.1Mbのコア領域を特定することに成功した。該コア領域には約38個の遺伝子が含まれていた。
このコア領域のヌクレオチド配列を網羅的に解析したところ、5つの新たなSNPsが、KIAA1618(SNP1)、C17orf27(RNF213)(SNP2)、FLJ3520(SNP3)、NPTX1(SNP4)及びKIAA1303(SNP5)の各遺伝子内又はその近傍において同定された。これらのSNPsのマイナーアレルの頻度は、モヤモヤ病の発症とよく相関した。試験を行った全ての家族性のモヤモヤ病患者は、SNP2のマイナーアレルを保有していることから、SNP2のマイナーアレルが、アジア人のモヤモヤ病の創始者変異である可能性が示唆された。
このSNP2が位置する予測遺伝子C17orf27及び、SNP1が位置する予測遺伝子KIAA1618のクローニングを行ったところ、驚くべきことに、C17orf27及びKIAA1618はそれぞれ完全な構造遺伝子ではなく、C17orf27とKIAA1618とが1つにつながって、約5000アミノ酸からなる巨大なタンパク質をコードする1つの構造遺伝子を構成していることが明らかとなった。この新規遺伝子をミステリン(Mysterin)と命名した。
ミステリンの機能を解析したところ、E3リガーゼ活性及びATPase活性を有していた。
生体内でのミステリンの機能を解析するため、ヒトのミステリンに相同なゼブラフィッシュミステリン1のアンチセンスモルフォリノをゼブラフィッシュの受精卵に注入することにより、ミステリン1の蛋白発現が抑制されたゼブラフィッシュを作成した。ミステリン1のアンチセンスモルフォリノを注入した胚においては、初期血管発生は正常に進行したものの、それに続く血管新生に異常が見られた。また、ミステリン1の発現が抑制されたゼブラフィッシュにおいては目の周辺に特徴的な異常血管新生が見られた。これらの表現型から、ヒトのミステリンは血管構築の形成に重要な機能を有することが示唆された。
更に、SNP2が、虚血性心疾患の発症頻度や一卵性双生児の分娩頻度と関連することが示された。
更に、白人の家系においてもモヤモヤ病の発症と相関する新たなSNPsを見出した。
以上の知見に基づき、本発明が完成された。
【0015】
即ち、本発明は以下に関する。
[1]以下の(1)~(3)から選択されるいずれかのポリペプチド:
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4810番のアルギニンはリジンに置換されていてもよい);
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列と45%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つユビキチンリガーゼ活性及びATPase活性を有するポリペプチド;及び
(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1~500個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、且つユビキチンリガーゼ活性及びATPase活性を有するポリペプチド。
[2][1]記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
[3][2]記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[4][3]記載の発現ベクターで形質転換された形質転換体。
[5][1]記載のポリペプチドをコードする遺伝子の機能的欠損を含む非ヒト動物。
[6]血管新生異常の動物モデルとしての、[5]記載の非ヒト動物の使用。
[7][1]記載のポリペプチドをコードする遺伝子の機能的欠損を含む動物細胞。
[8]被検物質が[1]記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現または機能を調節し得るか否かを評価することを含む、血管新生調節剤の候補物質のスクリーニング方法。
[9]配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドであって、該部分配列は、4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)及び232102 G>A(SNP5)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを含み、該部分配列に含まれる該SNPのアレルはマイナーアレルであり、且つ該部分配列又はその相補配列は少なくとも12ヌクレオチドの長さを有する、ポリヌクレオチド。
[10]配列番号5で表されるヌクレオチド配列における4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)及び232102 G>A(SNP5)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出することを含む、モヤモヤ病の発症リスクの判定方法。
[11]該SNPが73097 G>A(SNP2)である、[10]記載の方法。
[12]配列番号5で表されるヌクレオチド配列における4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)及び232102 G>A(SNP5)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを特異的に検出し得る核酸プローブ、又は該SNPを含む領域を特異的に増幅し得るプライマーを含む、モヤモヤ病の発症リスクの診断剤。
[13]該SNPが73097 G>A(SNP2)である、[12]記載の診断剤。
[14]配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)のSNPを検出することを含む、虚血性心疾患の発症リスクの判定方法。
[15]配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)のSNPを特異的に検出し得る核酸プローブ、又は該SNPを含む領域を特異的に増幅し得るプライマーを含む、虚血性心疾患の発症リスクの診断剤。
[16]配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)のSNPを検出することを含む、一卵性双生児の分娩可能性の判定方法。
[17]配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)のSNPを特異的に検出し得る核酸プローブ、又は該SNPを含む領域を特異的に増幅し得るプライマーを含む、一卵性双生児の分娩可能性の診断剤。
[18]以下の(4)~(7)から選択されるいずれかのポリペプチド:
(4)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4013番のアスパラギン酸はアスパラギンに置換されている);
(5)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第3962番のアスパラギンはアスパラギン酸に置換されていてもよい);
(6)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4062番のアルギニンはグルタミンに置換されていてもよい);及び
(7)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列が、R4810K、D4013N、N3962D及びR4062Qからなる群から選択される、2、3又は4個の置換を含んでいてもよい)。
[19][18]記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
[20][19]記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[21][20]記載の発現ベクターで形質転換された形質転換体。
[22]配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドであって、該部分配列は、4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)、232102 G>A(SNP5)、55977 G>A(SNP6)、55712 A>G(SNP7)及び57483 G>A(SNP8)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを含み、該部分配列に含まれる該SNPのアレルはマイナーアレルであり、且つ該部分配列又はその相補配列は少なくとも12ヌクレオチドの長さを有する、ポリヌクレオチド。
[23]配列番号5で表されるヌクレオチド配列における4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)、232102 G>A(SNP5)、55977 G>A(SNP6)、55712 A>G(SNP7)及び57483 G>A(SNP8)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出することを含む、モヤモヤ病の発症リスクの判定方法。
[24]該SNPが55977 G>A(SNP6)である、[23]記載の方法。
[25]配列番号5で表されるヌクレオチド配列における4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)、232102 G>A(SNP5)、55977 G>A(SNP6)、55712 A>G(SNP7)及び57483 G>A(SNP8)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを特異的に検出し得る核酸プローブ、又は該SNPを含む領域を特異的に増幅し得るプライマーを含む、モヤモヤ病の発症リスクの診断剤。
[26]該SNPが55977 G>A(SNP6)である、[25]記載の診断剤。
[27]モヤモヤ病の発症リスクの診断において使用するための、配列番号5で表されるヌクレオチド配列における4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)、232102 G>A(SNP5)、55977 G>A(SNP6)、55712 A>G(SNP7)及び57483 G>A(SNP8)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを特異的に検出し得る核酸プローブ、又は該SNPを含む領域を特異的に増幅し得るプライマー。
[28]該SNPが4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)及び232102 G>A(SNP5)からなる群から選択される少なくとも1つである、[27]記載の核酸プローブ又はプライマー。
[29]該SNPが73097 G>A(SNP2)である、[27]記載の核酸プローブ又はプライマー。
[30]該SNPが55977 G>A(SNP6)である、[27]記載の核酸プローブ又はプライマー。
[31]虚血性心疾患の発症リスクの診断において使用するための、配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)のSNPを特異的に検出し得る核酸プローブ、又は該SNPを含む領域を特異的に増幅し得るプライマー。
[32]一卵性双生児の分娩可能性の診断において使用するための、配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)のSNPを特異的に検出し得る核酸プローブ、又は該SNPを含む領域を特異的に増幅し得るプライマー。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、新規遺伝子ミステリンのポリペプチドや該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、発現ベクター、ミステリンの機能的欠損を含む動物等が提供される。ヒトゲノム遺伝子配列の網羅的な解析から、ミステリンの遺伝子座には、C17orf27及びKIAA1618の2つの独立した構造遺伝子の存在が予測されていたが、C17orf27及びKIAA1618はそれぞれ完全な構造遺伝子ではなく、C17orf27とKIAA1618とが1つにつながってミステリン遺伝子座を構成していることが明らかとなった。
ミステリン遺伝子を発現抑制したゼブラフィッシュの解析等から、ミステリンは血管新生を調節する機能を有することが明らかとなった。従って、ミステリンの発現や機能を調節する物質をスクリーニングすることにより、新規機序に立脚した血管新生調節剤の候補物質を得ることが出来る。
また、本発明により、ミステリン遺伝子座またはその近傍に存在する新たなSNPsが提供される。該SNPsはモヤモヤ病、虚血性心疾患、一卵性双生児の分娩頻度と相関することから、このSNPsを解析することにより、モヤモヤ病や虚血性心疾患の発症リスクや、一卵性双生児の分娩可能性を判定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ヒトミステリンの構造の模式図。
【図2】HEK293細胞におけるヒトミステリンタンパク質の発現。
【図3】Hela細胞におけるヒトミステリンタンパク質の細胞内分布。
【図4】HEK293細胞におけるヒトミステリンの自己ユビキチン化。
【図5】ヒトミステリンの第2359~2613アミノ酸部位の配列。αで示す下線はアルファヘリックスを構成すると予測された領域、βで示す下線はベータシートを構成すると予測された領域をそれぞれ示す。
【図6】ヒトミステリンのWalkerドメインのATPase活性。
【図7】ミステリンMO標的領域のRT-PCRによる増幅。1:野生型胚、2:ミステリンMOを注入した胚。各矢印は、以下の情報を示す。ゲノム:DNA、WTアレル:野生型のPCR産物、spMOアレル:エクソンがスキップされたPCR産物。
【図8】72hpfにおけるfli-EGFPにより可視化された血管構築。A:野性型胚(背側血管)、B:ミステリンMOを注入した胚(背側血管)、C:野性型胚(頭部血管)、D:ミステリンMOを注入した胚(頭部血管)。
【図9】ミステリンAAA周辺配列のマルチプルアライメント。以下の脊椎動物のAAAドメイン周辺配列(ヒトミステリンでは第2412~2910アミノ酸)に相当する配列を抽出し、マルチプルアライメントを行った。「*」は不変サイトをしめす。「:」及び「.」は、化学的性質が類似したアミノ酸のサイトをあらわす。Human;ヒトミステリン、Chimp;チンパンジーミステリン、Mouse;マウスミステリン、Rat;ラットミステリン、Chicken;ニワトリミステリン、Fugu;フグミステリン、Zebra1;ゼブラフィッシュミステリン1、Zebra2;ゼブラフィッシュミステリン2。
【図10】ミステリンRINGフィンガードメインのマルチプルアライメント。以下の脊椎動物のRINGフィンガードメイン配列(ヒトミステリンでは第3997~4035アミノ酸)に相当する配列を抽出し、マルチプルアライメントを行った。「*」は不変サイトをしめす。「:」及び「.」は、化学的性質が類似したアミノ酸のサイトをあらわす。Human;ヒトミステリン、Chimp;チンパンジーミステリン、Mouse;マウスミステリン、Rat;ラットミステリン、Chicken;ニワトリミステリン、Fugu;フグミステリン、Zebra1;ゼブラフィッシュミステリン1、Zebra2;ゼブラフィッシュミステリン2。
【図11】モヤモヤ病家系の家系図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.ミステリンポリペプチド
本発明は、以下の(1)~(3)から選択されるいずれかのポリペプチドを提供するものである:
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4810番のアルギニンはリジンに置換されていてもよい);
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列と45%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つユビキチンリガーゼ活性及びATPase活性を有するポリペプチド;及び
(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、且つユビキチンリガーゼ活性及びATPase活性を有するポリペプチド。

【0019】
更なる局面において、本発明は以下の(4)~(7)のポリペプチドをも提供する:
(4)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4013番のアスパラギン酸はアスパラギンに置換されていてもよい);
(5)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第3962番のアスパラギンはアスパラギン酸に置換されていてもよい);
(6)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4062番のアルギニンはグルタミンに置換されていてもよい);及び
(7)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列が、R4810K、D4013N、N3962D及びR4062Qからなる群から選択される、2、3又は4個の置換を含んでいてもよい)。

【0020】
本明細書において、上記(1)~(3)(更なる局面においては、上記(1)~(7))のポリペプチド、及び該ポリペプチドをコードする遺伝子を「ミステリン(Mysterin)」と総称する。

【0021】
上記(1)のポリペプチドは、代表的なヒトミステリンポリペプチドである。ミステリン遺伝子座内に新たに見出した、アミノ酸置換を伴うSNP(SNP2として、下記に詳述)のため、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4810番のアルギニンはリジンに置換されていてもよい。

【0022】
更なる局面において、上記(4)のポリペプチドにおいては、ミステリン遺伝子座内に新たに見出した、アミノ酸置換を伴うSNP(SNP6として、下記に詳述)のため、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4013番のアスパラギン酸はアスパラギンに置換されていてもよい。

【0023】
更なる局面において、上記(5)のポリペプチドにおいては、ミステリン遺伝子座内に新たに見出した、アミノ酸置換を伴うSNP(SNP7として、下記に詳述)のため、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第3962番のアスパラギンはアスパラギン酸に置換されていてもよい。

【0024】
更なる局面において、上記(6)のポリペプチドにおいては、ミステリン遺伝子座内に新たに見出した、アミノ酸置換を伴うSNP(SNP8として、下記に詳述)のため、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4062番のアルギニンはグルタミンに置換されていてもよい。

【0025】
更なる局面において、上記(7)のポリペプチドにおいては、ミステリン遺伝子座内に新たに見出した、アミノ酸置換を伴う4つのSNPs(SNP2、6、7及び8として、下記に詳述)のため、配列番号2で表されるアミノ酸配列が、R4810K、D4013N、N3962D及びR4062Qからなる群から選択される、2、3又は4個の置換を含んでいてもよい。

【0026】
ミステリンポリペプチドは、ユビキチンリガーゼ活性及びATPase活性を有する。ユビキチンリガーゼ活性の有無は、HA等でタグ標識した目的とするポリペプチドを発現し得る発現ベクターを、ユビキチン(例えば、哺乳動物のユビキチン)を発現し得る発現ベクターとともに、適切な動物細胞(例えば、HEK293細胞)に導入し、該細胞のライセートについて該タグを特異的に認識する抗体を用いて免疫沈降を行った後、ユビキチンを特異的に認識する抗体を用いてウエスタンブロットを行うことにより、導入したポリペプチドが自己ユビキチン化されたか否かを評価することにより決定することができる。

【0027】
ATPase活性の有無は、例えば、以下の方法により決定することができる。目的とするポリペプチドを、マグネシウムイオン(例えば1mMの濃度)及びATP(例えば5mMの濃度)を含む生理的な緩衝液(例えばPBS)に加え、37℃にて30分間インキュベートし、最終濃度1%のPCAを加えることにより、反応を止める。反応混合物にマラカイトグリーンを加え、更に30分間インキュベートする。遊離リン酸とマラカイトグリーンの結合による呈色を620nmの吸光で計測する。試験したポリペプチドがATPase活性を有していると、ATPの加水分解にともなうリン酸の遊離による有意な呈色反応が観察される。

【0028】
上記(2)のポリペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列と45%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは99.5%以上、より更に好ましくは99.9%以上(例えば、99.96%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む。

【0029】
ここで「同一性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する、同一アミノ酸残基の割合(%)を意味する。

【0030】
本明細書におけるアミノ酸配列の同一性は、NCBIのインターネットホームページ上に公開されている相同性計算アルゴリズムBlastp (http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用い、デフォルト条件にて計算することができる。アミノ酸配列の同一性を決定するためのアルゴリズムとしては、例えば、Karlin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877 (1993) に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0) に組み込まれている(Altschul et al., Nucleic Acids Res., 25: 3389-3402 (1997))]、Needleman et al., J. Mol. Biol., 48:444-453 (1970) に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、Myers and Miller, CABIOS, 4: 11-17 (1988) に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム (version 2.0) に組み込まれている]、Pearson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448 (1988) に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられるが、それらに限定されない。

【0031】
上記(3)のポリペプチドに含まれるアミノ酸配列は、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、例えば、(1)配列番号2に示されるアミノ酸配列中の1又は複数(好ましくは1~500個、より好ましくは1~100個、さらに好ましくは1~30個、更により好ましくは1~10個、最も好ましくは1~数(2~5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列に1又は複数(好ましくは1~500個、より好ましくは1~100個、さらに好ましくは1~30個、更により好ましくは1~10個、最も好ましくは1~数(2~5)個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(3)配列番号2に示されるアミノ酸配列に1又は複数(好ましくは1~500個、より好ましくは1~100個、さらに好ましくは1~30個、更により好ましくは1~10個、最も好ましくは1~数(2~5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号2に示されるアミノ酸配列中の1又は複数(好ましくは1~500個、より好ましくは1~100個、さらに好ましくは1~30個、更により好ましくは1~10個、最も好ましくは1~数(2~5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)上記(1)~(4)の変異が組み合わせれたアミノ酸配列(欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸の総数が、好ましくは1~500個、より好ましくは1~100個、さらに好ましくは1~30個、更により好ましくは1~10個、最も好ましくは1~数(2~5)個)である。

【0032】
ユビキチンリガーゼ活性を保持するため、上記(2)及び(3)のポリペプチドにおいては、その活性に重要なRINGフィンガードメイン(配列番号2の第3997~4035アミノ酸に該当する)が保存されていることが好ましい。保存の程度は、アミノ酸配列の同一性として、通常50%以上、好ましくは54%以上、より好ましくは69%以上、更に好ましくは90%以上(例えば97%以上)、最も好ましくは100%である。ヒトのAAAドメイン周辺配列へ欠失、置換、挿入又は付加を導入する場合には、図10に示す「*」のアミノ酸が完全に保持されるように導入を行うことが好ましい。また、ヒトのAAAドメイン周辺配列へ欠失、置換、挿入又は付加を導入する場合には、図10に示す「:」又は「.」のアミノ酸が完全に保持されるか、化学的性質が類似したアミノ酸へ置換されるように導入を行うことが好ましい。「化学的性質が類似したアミノ酸」としては、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換はタンパク質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science,247:1306-1310 (1990)を参照)。

【0033】
また、ATPase活性を保持するため、上記(2)及び(3)のポリペプチドにおいては、その活性に重要なAAAドメイン周辺配列(ヒトの第2412~2910アミノ酸に相当)が保存されていることが好ましい。保存の程度は、アミノ酸配列の同一性として、通常60%以上、好ましくは72%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上(例えば98%以上)、最も好ましくは100%である。ヒトのAAAドメイン周辺配列へ欠失、置換、挿入又は付加を導入する場合には、図9に示す「*」のアミノ酸が完全に保持されるように導入を行うことが好ましい。また、ヒトのAAAドメイン周辺配列へ欠失、置換、挿入又は付加を導入する場合には、図9に示す「:」又は「.」のアミノ酸が完全に保持されるか、化学的性質が類似したアミノ酸へ置換されるように導入を行うことが好ましい。「化学的性質が類似したアミノ酸」の定義は、上述の通りである。

【0034】
1つの好ましい態様において、上記(2)及び(3)のポリペプチドは、動物の天然のミステリンポリペプチドである。「天然の」とは、ポリペプチドを構成するアミノ酸配列が天然に存在することをいう。

【0035】
遺伝子を構成するヌクレオチド配列には通常多型(個体差)が存在することが知られている。上記(2)及び(3)のポリペプチドには、ヒトミステリン遺伝子の多型により生じた上記(1)のポリペプチドとはアミノ酸配列が異なるポリペプチドが含まれる。

【0036】
また、上記(2)及び(3)のポリペプチドには、ヒト以外の動物におけるミステリンのオルソログが含まれる。「ヒト以外の動物」としては、ヒト以外の哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫などを挙げることができる。ヒト以外の哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物;ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜;イヌ、ネコ等のペット;サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。鳥類としては、ニワトリ、ウズラ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、エミュ、ダチョウ、ホロホロ鳥、ハト等を挙げることができる。魚類としては、ゼブラフィッシュ、フグ、メダカ、キンギョ、ドジョウ等が挙げられる。ヒト以外の動物におけるミステリンのオルソログは、本明細書に開示されたヒトミステリンをコードするヌクレオチド配列(配列番号1で表されるヌクレオチド配列)を参照し、ミステリンを特異的に検出し得る核酸プローブやプライマーを設計し、プラークハイブリダイゼーションや、RACE PCR等の周知の遺伝子工学的手法を用いることにより、獲得することが出来る。

【0037】
上記(2)及び(3)のポリペプチドの好適な例としては、例えば、哺乳動物、代表的な鳥類又は魚類のヒトミステリンと相同なミステリンポリペプチドを挙げることができる。進化時間が長くなると、タンパク質への挿入あるいは欠損など変異による種間での多様性のため、必ずしも完全な遺伝子構造の保存は見られない。しかし機能的に重要な部分については種間で高度に保存される。ミステリンのAAAドメイン周辺配列(ヒトの第2412~2910アミノ酸に相当)およびRINGフィンガードメイン配列(ヒトの第3997~4035アミノ酸に相当)をヒト、チンパンジー、マウス、ラット、ニワトリ、フグ、およびゼブラフィッシュ(ゲノム中に2遺伝子存在する)より抽出し、それぞれのドメインについてマルチフルアライメントを行った。アライメントの結果を図9及び10に示す。AAAドメイン周辺配列については、ヒトミステリンアミノ酸配列に対する同一性は、チンパンジー98%、マウス82%、ラット80%、ニワトリ72%、フグ67%、およびゼブラフィッシュ68%、63%(それぞれ、ミステリン1,2に相当)である。RINGフィンガードメイン配列については、ヒトミステリンアミノ酸配列に対する同一性は、チンパンジー97%、マウス69%、ラット74%、ニワトリ54%、フグ51%、およびゼブラフィッシュ53%、42%(それぞれ、ミステリン1,2に相当)である。ゼブラフィッシュにおいては、ミステリン1(zRNF213)、ミステリン2(zRNF213.1)の2種類があり、前者がヒトのミステリンに相当する。ゼブラフィッシュのミステリン1ポリペプチドの代表的なアミノ酸配列を配列番号4に示す。

【0038】
本発明のポリペプチドは、ユビキチンリガーゼ活性及びATPase活性を有する限り、その長さは特に制限されず、使用目的に応じて所望の長さのポリペプチドを選択することが出来る。例えば、本発明のポリペプチドとして、長さが6000アミノ酸以下のもの、5500アミノ酸以下のもの、5400アミノ酸以下のもの、5300アミノ酸以下のもの、5250アミノ酸以下のもの、5220アミノ酸以下のもの、5210アミノ酸以下のもの等を適宜選択することが出来る。本発明のポリペプチドは、通常4800アミノ酸以上、好ましくは5000アミノ酸以上、より好ましくは5200アミノ酸以上、最も好ましくは5207アミノ酸以上の長さを有する。

【0039】
本発明のポリペプチドは、1個以上のタグポリペプチド又はシグナル配列を有していてもよい。

【0040】
タグポリペプチドとは、ポリペプチドの検出や精製等を容易ならしめるために付加されるポリペプチドをいう。タグポリペプチドとしては、エピトープタグ、蛍光ポリペプチド、イムノグロブリンFc領域等を挙げることが出来るがこれらに限定されない。エピトープタグとは、抗体または他の結合パートナーによって特異的に認識されるペプチドをいい、具体的には、Flagタグ、ポリヒスチジンタグ、c-Mycタグ、HAタグ、AU1タグ、GSTタグ、MBPタグ等を挙げることが出来る。蛍光ポリペプチドとしては、GFP、YFP、RFP、CFP、BFP、EGFP等を挙げることが出来る。このようなタグポリペプチドは当業者に周知であり、当該タグポリペプチドを特異的に認識する多様な抗体が市販されている。

【0041】
シグナル配列とは、ポリペプチドの翻訳と同時にまたは翻訳後に、合成部位から細胞内部の特定部位、又は細胞外部へのポリペプチドの運搬や局在を指示するポリペプチド配列をいう。シグナル配列には、ポリペプチドの分泌を誘導するリーダー配列、核移行シグナル配列(例えば、SV40 T抗原の核移行シグナル配列)、核外移行シグナル配列、核小体局在シグナル等を挙げることが出来るがこれらに限定されない。このようなシグナル配列は当業者に周知であり、目的に応じて適宜選択することが出来る。

【0042】
本発明のポリペプチドは修飾されていてもよい。該修飾としては、脂質鎖の付加(脂肪族アシル化(パルミトイル化、ミリストイル化等)、プレニル化(ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化等)等)、リン酸化(セリン残基、スレオニン残基、チロシン残基等におけるリン酸化)、アセチル化、糖鎖の付加(Nグリコシル化、Oグリコシル化)等を挙げることが出来る。

【0043】
また、本発明のポリペプチドは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C等)、酵素(例:β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)、アフィニティタグ(例:ビオチン等)などで標識されていてもよい。

【0044】
また、本明細書において用語「ポリペプチド」は、その塩をも含む意味として用いられる。ポリペプチドの塩としては生理学的に許容される酸(例:無機酸、有機酸)や塩基(例:アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが挙げられる。

【0045】
本発明のポリペプチドは単離又は精製されていることが好ましい。「単離又は精製」とは、目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離又は精製された本発明のポリペプチドの純度(全ポリペプチド重量に対する、本発明のポリペプチドの重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば実質的に100%)である。

【0046】
代表的な本発明のポリペプチドを以下に列挙する:
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4810番のアルギニンはリジンに置換されている);
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4013番のアスパラギン酸はアスパラギンに置換されている);
(d)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第3962番のアスパラギンはアスパラギン酸に置換されている);
(e)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4062番のアルギニンはグルタミンに置換されている);
(f)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列が、以下の群から選択されるいずれか1つの置換の組み合わせを含む;
R4810K+D4013N、
R4810K+N3962D、
R4810K+R4062Q、
D4013N+N3962D、
D4013N+R4062Q、
N3962D+R4062Q、
R4810K+D4013N+N3962D、
R4810K+D4013N+R4062Q、
R4810K+N3962D+R4062Q、
D4013N+N3962D+R4062Q、及び
R4810K+D4013N+N3962D+R4062Q);
(g)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(h)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4810番のアルギニンはリジンに置換されている);
(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4013番のアスパラギン酸はアスパラギンに置換されている);
(j)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第3962番のアスパラギンはアスパラギン酸に置換されている);
(k)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列における第4062番のアルギニンはグルタミンに置換されている);及び
(l)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ここで、配列番号2で表されるアミノ酸配列が、以下の群から選択されるいずれか1つの置換の組み合わせを含む;
R4810K+D4013N、
R4810K+N3962D、
R4810K+R4062Q、
D4013N+N3962D、
D4013N+R4062Q、
N3962D+R4062Q、
R4810K+D4013N+N3962D、
R4810K+D4013N+R4062Q、
R4810K+N3962D+R4062Q、
D4013N+N3962D+R4062Q、及び
R4810K+D4013N+N3962D+R4062Q)。

【0047】
本発明のポリペプチドの製造方法については特に制限はなく、公知のペプチド合成法に従って製造してもよく、また公知の遺伝子組み換え技術を用いて製造してもよい。ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。本発明のポリペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とするポリペプチドを製造することができる。

【0048】
遺伝子組み換え技術を用いて本発明のポリペプチドを製造する場合には、先ず後述するような本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを取得し、該ポリペプチドを発現し得る発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、得られる形質転換体を培養することによって、該ポリペプチドを製造することができる。該ポリヌクレオチド、遺伝子組み換え技術を用いた本発明のポリペプチドの製造方法については後述する。

【0049】
本発明のポリペプチドは、血管新生調節剤の候補物質のスクリーニング、モヤモヤ病の発症リスクの判定、虚血性心疾患の発症リスクの判定、一卵性双生児の分娩可能性の判定、病理組織標本での血管新生の判定等に有用である。

【0050】
2.ミステリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
本発明は上記本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供するものである。

【0051】
本発明のポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。また、該ポリヌクレオチドは二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。

【0052】
本発明のポリヌクレオチドとしては、配列番号1又は3で表されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを挙げることが出来る。配列番号1で表されるヌクレオチド配列はヒトミステリンポリペプチド(配列番号2)を、配列番号3で表されるヌクレオチド配列は、ゼブラフィッシュミステリン1ポリペプチド(配列番号4)をそれぞれコードする。尚、ミステリン遺伝子座内に新たに見出した、アミノ酸置換を伴うSNP(SNP2として、下記に詳述)のため、配列番号1で表されるヌクレオチド配列における第14429番のグアニンはアデニンに置換されていてもよい。

【0053】
更なる局面において、ミステリン遺伝子座内に新たに見出した、アミノ酸置換を伴うSNP(SNP6として、下記に詳述)のため、配列番号1で表されるヌクレオチド配列における第12037番のグアニンはアデニンに置換されていてもよい。

【0054】
更なる局面において、ミステリン遺伝子座内に新たに見出した、アミノ酸置換を伴うSNP(SNP7として、下記に詳述)のため、配列番号1で表されるヌクレオチド配列における第11884番のアデニンはグアニンに置換されていてもよい。

【0055】
更なる局面において、ミステリン遺伝子座内に新たに見出した、アミノ酸置換を伴うSNP(SNP8として、下記に詳述)のため、配列番号1で表されるヌクレオチド配列における第12185番のグアニンはアデニンに置換されていてもよい。

【0056】
更なる局面において、ミステリン遺伝子座内に新たに見出した、アミノ酸置換を伴う4つのSNPs(SNP2、6、7及び8として、下記に詳述)のため、配列番号1で表されるヌクレオチド配列は、g14429a、g12037a、a11884g及びg12185aからなる群から選択される、2,3又は4個の置換を含んでいてもよい。

【0057】
本発明のポリヌクレオチドは、本明細書の配列表に記載された配列情報に基づき、公知の遺伝子組換え技術を利用することにより容易に製造することが出来る。例えば、配列情報に基づき適当なプライマーを設計し、ミステリンを発現する細胞(例えば、293細胞等の腎細胞)から単離した全RNAから調製したcDNAを鋳型とするRT-PCRにより、本発明のポリヌクレオチドを製造することが出来る。或いは、本明細書の配列表に記載された配列情報に基づいて、ポリヌクレオチド合成装置により本発明のポリヌクレオチドを合成してもよい。

【0058】
取得された本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該ポリヌクレオチドはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。

【0059】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは単離又は精製されている。「単離又は精製」とは、目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離又は精製された本発明のポリヌクレオチドの純度(全ポリヌクレオチド重量に対する、本発明のポリヌクレオチドの重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば実質的に100%)である。

【0060】
本発明のポリヌクレオチドは、ミステリンポリペプチドの製造に有用である。また、本発明のポリヌクレオチドに含まれるSNP2やSNP6を解析することにより、モヤモヤ病や虚血性心疾患の発症リスクや、一卵性双生児の分娩可能性を判定することが出来る(下記に詳述)。

【0061】
3.発現ベクター及び形質転換体
本発明は、上記本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び該発現ベクターを含む形質転換体を提供するものである。

【0062】
該発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドを適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に機能可能に連結することにより製造することができる。ベクターの種類としては、プラスミドベクター、ウイルスベクター等を挙げることができ、用いる宿主細胞に応じて適宜選択することが出来る。

【0063】
宿主細胞には、原核生物細胞及び真核生物細胞が含まれる。原核生物細胞としては、エシェリヒア属菌(エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等)、バチルス属菌(バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)等)等が用いられる。真核生物細胞としては、酵母(サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等)、昆虫細胞(夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)等)、哺乳動物細胞(ヒト細胞(293等)、サル細胞(COS-7等)、チャイニーズハムスター細胞(CHO細胞等)等)などが用いられる。

【0064】
哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物;ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜;イヌ、ネコ等のペット;ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。

【0065】
プラスミドベクターとしては、大腸菌由来のプラスミドベクター(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミドベクター(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミドベクター(例、pSH19,pSH15)等を挙げることができ、用いる宿主の種類や使用目的に応じて適宜選択することが出来る。

【0066】
ウイルスベクターの種類は、用いる宿主細胞の種類や使用目的に応じて適宜選択することが出来る。例えば、宿主として昆虫細胞を用いる場合には、バキュロウイルスベクター等を用いることが出来る。また、宿主として哺乳動物細胞を用いる場合には、モロニーマウス白血病ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター等のレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、パルボウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター等を用いることが出来る。

【0067】
また、プロモーターは、用いる宿主細胞の種類に対応して、該宿主細胞内で転写を開始可能なものを選択することが出来る。例えば、宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーターなどが好ましい。宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。宿主が哺乳動物細胞である場合、サブゲノミック(26S)プロモーター、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。

【0068】
本発明の発現ベクターは、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを、それぞれ機能可能な態様で含有していてもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(Ampと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(Neoと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。

【0069】
本発明の発現ベクターは好ましくは単離又は精製されている。

【0070】
本発明の発現ベクターは、適切な宿主細胞内において、本発明のポリペプチドを発現し得るので、本発明のポリペプチドの製造に有用である。

【0071】
上記本発明の発現ベクターを、自体公知の遺伝子導入法(例えば、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション法、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション法、DEAEデキストラン法、Gene Gunによる遺伝子導入法等)に従って上記宿主細胞へ導入することにより、該発現ベクターが導入された形質転換体(本発明の形質転換体)を製造することができる。該形質転換体は本発明のポリペプチドを発現し得る。本発明の形質転換体は、本発明のポリペプチドの製造等に有用である。

【0072】
本発明の形質転換体を、宿主の種類に応じて、自体公知の方法で培養し、培養物から本発明のポリペプチドを単離することにより、本発明のポリペプチドを製造することが出来る。宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体の培養は、LB培地やM9培地等の適切な培地中、通常約15~43℃で、約3~24時間行なわれる。宿主がバチルス属菌である形質転換体の培養は、適切な培地中、通常約30~40℃で、約6~24時間行なわれる。宿主が酵母である形質転換体の培養は、バークホールダー培地等の適切な培地中、通常約20℃~35℃で、約24~72時間行なわれる。宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体の培養は、約10%のウシ血清が添加されたGrace’s Insect medium等の適切な培地中、通常約27℃で、約3~5日間行なわれる。宿主が動物細胞である形質転換体の培養は、約10%のウシ血清が添加されたMEM培地等の適切な培地中、通常約30℃~40℃で、約15~60時間行なわれる。いずれの培養においても、必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。培養物からの本発明のポリペプチドの単離又は精製は、例えば、菌体溶解液や培養上清を、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどの複数のクロマトグラフィーに供することにより達成することができる。

【0073】
4.ミステリンの機能的欠損を含む非ヒト動物
本発明は、上記本発明のポリペプチドをコードする遺伝子(ミステリン遺伝子)の機能的欠損を含む非ヒト動物を提供する。

【0074】
本発明の動物の種としては、ヒト以外の哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫などを挙げることができるが、哺乳動物、鳥類又は魚類が好ましい。ヒト以外の哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物;ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜;イヌ、ネコ等のペット;サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。鳥類としては、ニワトリ、ウズラ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、エミュ、ダチョウ、ホロホロ鳥、ハト等を挙げることができる。魚類としては、ゼブラフィッシュ、メダカ、キンギョ、ドジョウ等が挙げられる。好ましい非ヒト哺乳動物は、マウスである。好ましい鳥類は、ニワトリである。好ましい魚類は、ゼブラフィッシュである。

【0075】
ミステリン遺伝子の機能的欠損とは、ミステリン遺伝子が本来有する正常な機能(ユビキチンリガーゼ活性、ATPase活性等)が十分に発揮できない状態をいい、例えば、ミステリン遺伝子が全く発現していない状態、またはミステリン遺伝子が本来有する正常な機能が発揮できない程度にその発現量が低下している状態、あるいはミステリン遺伝子産物の機能が完全に喪失した状態、またはミステリン遺伝子が本来有する正常な機能が発揮できない程度にミステリン遺伝子産物の機能が低下した状態が挙げられる。

【0076】
本発明の動物は、ミステリン遺伝子の機能的欠損に伴う種々の特徴を有する。例えば、本発明の動物は、野生型動物に比して、胚発生が遅延し、初期の血管発生及びそれに続く血管新生に異常を呈する。さらには、頭部、眼部の血管新生に特に顕著な異常を呈する。

【0077】
一実施形態では、本発明の動物は、ゲノムDNAの改変を伴う動物、いわゆる遺伝子改変動物であり得る。本発明の遺伝子改変動物は、ミステリン遺伝子欠損ヘテロ接合体、又はミステリン遺伝子欠損ホモ接合体であり得る。

【0078】
本発明の遺伝子改変動物は、自体公知の方法により製造できる。先ず、本発明の遺伝子改変動物の作製に有用なキメラ動物の作製法について説明する。なお、本発明の動物は、本発明の遺伝子改変動物の作製に有用なキメラ動物をも含む。

【0079】
本発明のキメラ動物は、例えば下記の工程(a)~(c)を含む方法により製造できる:
(a)ミステリン遺伝子の機能的欠損を含む胚性幹細胞を提供する工程;
(b)該胚性幹細胞を胚に導入し、キメラ胚を得る工程;及び
(c)該キメラ胚を動物に移植し、キメラ動物を得る工程。

【0080】
上記方法の工程(a)では、ミステリン遺伝子の機能的欠損を含む胚性幹細胞(ES細胞)としては、例えば、下記の5.の項に記載した方法にて作製されたものを使用できる。

【0081】
上記方法の工程(b)では、胚が由来する動物種は、本発明の遺伝子改変動物種と同様であり得、また、導入される胚性幹細胞が由来する動物種と同一であることが好ましい。胚としては、例えば胚盤胞、8細胞期胚などが挙げられる。胚はホルモン剤(例えばFSH様作用を有するPMSGおよびLH作用を有するhCGを使用)等により過排卵処理を施した雌動物を、雄動物と交配させること等により得ることができる。胚性幹細胞を胚に導入する方法としては、マイクロマニピュレーション法、凝集法などが挙げられる。

【0082】
上記方法の工程(c)では、キメラ胚が動物の子宮又は卵管に移入され得る。キメラ胚が移植される動物は好ましくは偽妊娠動物である。偽妊娠動物は、正常性周期の雌動物を、精管結紮等により去勢した雄動物と交配することにより得ることができる。キメラ胚が導入された動物は、妊娠し、キメラ動物を出産する。

【0083】
次いで、出生した動物がキメラ動物か否かが確認される。出生した動物がキメラ動物であるか否かは自体公知の方法により確認でき、例えば、体色や被毛色で判別できる。また、判別のために、体の一部からDNAを抽出し、サザンブロット解析やPCRアッセイを行ってもよい。

【0084】
本発明の遺伝子改変動物は、例えば下記の工程(a)~(d)を含む方法により製造できる:
(a)ミステリン遺伝子の機能的欠損を含む胚性幹細胞を提供する工程;
(b)該胚性幹細胞を胚に導入し、キメラ胚を得る工程;
(c)該キメラ胚を動物に移植し、キメラ動物を得る工程;及び
(d)該キメラ動物を交配させ、ミステリン遺伝子欠損ヘテロ接合体を得る工程。

【0085】
上記方法の工程(a)~(c)は、上述したキメラ動物の作製方法と同様にして行うことができる。

【0086】
上記方法の工程(d)では、工程(c)で得られたキメラ動物が成熟した後に交配させる。交配は好ましくは、野生型動物とキメラ動物との間で、又はキメラ動物同士で行われ得る。ミステリン遺伝子欠損が、キメラ動物の生殖系列細胞へ導入され、ミステリン遺伝子欠損ヘテロ接合体子孫が得られたか否かは、自体公知の方法により種々の形質を指標として確認でき、例えば、子孫動物の体色や被毛色により判別できる。また、判別のために、体の一部からDNAを抽出し、サザンブロット解析やPCRアッセイを行ってもよい。さらに、このようにして得られたミステリン遺伝子欠損ヘテロ接合体同士を交配させることにより、ミステリン遺伝子欠損ホモ接合体を作製できる。

【0087】
一般的に、遺伝子改変動物の作製の過程では、胚性幹細胞に由来する遺伝子と、交配に用いた動物に由来する遺伝子とが交雑した遺伝子型を有する子孫動物が得られるため、結果としてミステリン遺伝子が欠損することのみによる特有の効果を調べることが困難となってしまう場合がある。そこで、ミステリン遺伝子欠損特有の効果のみをより適切に抽出するために、得られたミステリン遺伝子欠損動物(ヘテロ接合体またはホモ接合体)を純系の動物系統と、5世代~8世代程度にわたり戻し交配することが好ましい。また、自然交配のみにより戻し交配を行うと長い年月がかかる場合があるので、世代交代を早めたい場合には体外受精技術を適宜用いることもできる。

【0088】
別の実施形態では、本発明の動物は、ゲノムDNAの改変を伴わない動物であり得る。かかる動物は、例えば、ミステリン遺伝子の発現または機能を特異的に抑制する物質(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、これらの核酸を発現し得る発現ベクター)の動物への投与又は動物での強制発現により作製できる。投与は、例えば、マイクロインジェクション、リポソーム等の適切な送達手段を使用して行われ得る。また、細胞特異的なミステリン遺伝子の機能的欠損を達成することも可能である。

【0089】
特に、ミステリン遺伝子を発現抑制した魚類(例、ゼブラフィッシュの場合はミステリン1)の作成においては、操作の簡便性や時間コストの観点から、モルフォリノアンチセンス核酸の使用が有利である(Nucleic Acid Drug Dev., vol. 7, pages 187-195, 1997;Nat Genet., vol. 26, pages 216-220, 2000)。モルフォリノアンチセンス核酸は、ミステリンmRNAの部分配列(ここでは、スプライシングアクセプターおよびドナーの境界配列25塩基の範囲内の部分配列)に相補的な(ミスマッチの数が、通常3塩基以下、好ましくは1塩基以下、最も好ましくは0である)約25塩基長のヌクレオチド配列からなる。合成したモルフォリノアンチセンス核酸を、1~8細胞期の受精卵(胚)の細胞質又は卵黄内にマイクロインジェクションすると、モルフォリノアンチセンス核酸が核内のミステリンmRNAのスプライシングを阻害し、エクソンスキップの結果によるフレームシフトされたタンパク質が産生される。この受精卵(胚)から、ミステリン遺伝子の発現が抑制された個体が生じる。モルフォリノアンチセンス核酸が適切にミステリン遺伝子の発現を抑制しているか否かは、RT-PCR等の方法により、得られた個体におけるミステリン遺伝子の発現パターンを測定することにより確認することが出来る。

【0090】
本発明の動物は、血管新生異常に関連する疾患の動物モデルとして有用である。血管新生の異常に関連する疾患としては、例えば、動脈硬化など閉塞性疾患、動静脈奇形、腫瘍における血管新生、炎症性閉塞疾患、糖尿病性血管障害、加齢性黄斑変性症など多様な要因による血管病変をはじめとし、オスラー病など単一遺伝子による血管構築異常等が挙げられる。

【0091】
本発明の動物はまた、ミステリン遺伝子および血管新生の解析、並びに血管新生を調節し得る物質や、血管新生異常を治療し得る物質のスクリーニングなどに有用である。例えば、本発明の動物における遺伝子発現を網羅的に解析することで、血管新生に関与する他の遺伝子(例えば、ミステリン遺伝子の発現様式と連動する発現様式を示す遺伝子)の同定が可能となる。この場合、例えば、本発明の動物において、遺伝子発現の網羅的解析を可能にする手段(例えば、マイクロアレイ)により遺伝子発現プロフィールが測定され、野生型動物等のコントロール動物(同種又は異種動物)の遺伝子発現プロフィールと比較される。また、本発明の動物の遺伝子発現プロフィールを経時的に追跡し、表現型(血管新生の異常)の発現、進行と遺伝子発現プロフィールの変化との連動性を評価することもできる。

【0092】
5.ミステリンの機能的欠損を含む動物細胞
本発明は、上記本発明のポリペプチドをコードする遺伝子(ミステリン遺伝子)の機能的欠損を含む動物細胞を提供する。

【0093】
本発明の動物の種としては、ヒトを含む哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫などを挙げることができるが、哺乳動物、鳥類又は魚類が好ましい。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物;ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜;イヌ、ネコ等のペット;ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。鳥類としては、ニワトリ、ウズラ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、エミュ、ダチョウ、ホロホロ鳥、ハト等を挙げることができる。魚類としては、ゼブラフィッシュ、メダカ、キンギョ、ドジョウ等が挙げられる。好ましい哺乳動物は、ヒト又はマウスである。好ましい鳥類は、ニワトリである。好ましい魚類は、ゼブラフィッシュである。

【0094】
本発明の動物細胞はまた、任意の組織に由来する細胞であり得、例えば、ミステリン遺伝子が発現している体細胞(例えば心臓、脳、肝臓、膵臓、筋肉、肺、副腎、骨髄、胎盤、前立腺、唾液腺、胸腺、甲状腺、気管、子宮、脾臓、血管を構成している体細胞や、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、膵ランゲルハンス島膵B細胞)、精原細胞、精子、卵子、受精卵等の生殖系列細胞、胚性細胞、並びに胚性幹細胞などが挙げられる。好ましくは、血管を構成している体細胞、血管内皮細胞又は血管平滑筋細胞である。また、本発明の動物細胞は、初代培養細胞、細胞株のいずれであってもよい。なお、胚性細胞とは、胚から採取された細胞とその分裂によって生じた細胞で、胚でないものをいう。

【0095】
一実施形態では、本発明の動物細胞は、ゲノムDNAの改変を伴う細胞、いわゆる遺伝子改変細胞であり得る。本発明の遺伝子改変細胞は、例えば、ミステリン遺伝子欠損ホモ接合体、又はミステリン遺伝子欠損ヘテロ接合体であり得る。

【0096】
本発明の遺伝子改変細胞は、自体公知の方法により製造できる。例えば、本発明の動物細胞は、下記の工程(a)~(c)を含む方法により製造できる:
(a)ミステリン遺伝子の相同組換えを誘導し得るターゲティングベクターを提供する工程;
(b)該ターゲティングベクターを動物細胞に導入する工程;及び
(c)該ターゲティングベクターを導入した細胞から、相同組換えを生じた細胞を選別する工程。

【0097】
上記方法の工程(a)において使用されるミステリン遺伝子の相同組換えを誘導し得るターゲティングベクターは、本明細書の配列表に開示されたミステリンのcDNA配列(配列番号1)や、ゲノムDNA配列(配列番号5)の情報に基づき、所望の動物のミステリン遺伝子のゲノムDNAを取得し、ノックアウトマウス作成において汎用の遺伝子工学的手法に従い、当業者であれば容易に製造することができる。

【0098】
上記方法の工程(b)では、ターゲティングベクターが動物細胞中に導入される。ターゲティングベクターを動物細胞に導入する方法としては、例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法/リポソーム法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。ターゲティングベクターが動物細胞中に導入されると、当該動物細胞中でミステリン遺伝子を含むゲノムDNAの相同組換えが生じる。

【0099】
ターゲティングベクターが導入される動物細胞としては、自体公知の方法で作製したもの、あるいは市販のもの、又は所定の機関より入手可能なものを使用できる。動物細胞の種類は、上述の通りである。

【0100】
例えば、ターゲティングベクターが導入される動物細胞として胚性幹細胞を使用する場合、胚性幹細胞は、任意の動物の胚盤胞から分離した内部細胞塊をフィーダー細胞上で培養することにより樹立してもよいが、市販または所定の機関より既存の胚性幹細胞を入手できる。既存のマウス胚性幹細胞としては、例えば、ES-D3細胞、ES-E14TG2a細胞、SCC-PSA1細胞、TT2細胞、AB-1細胞、J1細胞、R1細胞、E14.1細胞、RW-4細胞などが挙げられる。また、胚性幹細胞としては、現時点で、マウス胚性幹細胞以外に、ヒト、ミンク、ハムスター、ブタ、ウシ、マーモセット、アカゲザル等の哺乳動物由来のものなどが樹立されているので、これらを用いることもできる。

【0101】
また、ターゲティングベクターが導入される動物細胞として腎臓細胞等の体細胞を使用する場合、ターゲティングベクターが導入される体細胞は、初代培養細胞、細胞株のいずれでもよい。初代培養細胞および細胞株は、自体公知の方法により作製できる(例えば、Current Protocols in Cell Biology, John Wiley & Sons, Inc.(2001))。

【0102】
上記方法の工程(c)では、ミステリン遺伝子を含むゲノムDNAで相同組換えが生じた動物細胞を選別するため、ターゲティングベクター導入後の動物細胞がスクリーニングされる。例えば、ポジティブ選別、ネガティブ選別等により選別を行った後に、遺伝子型に基づくスクリーニング(例えば、PCR法、サザンブロットハイブリダイゼーション法)を行う。

【0103】
動物細胞が胚性幹細胞である場合には、好ましくは、組換え胚性幹細胞の核型分析がさらに行なわれる。核型分析では、選別された組換え胚性幹細胞において染色体異常がないことが確認される。核型分析は、自体公知の方法により行うことができる。なお、胚性幹細胞の核型は、ターゲティングベクターの導入前に予め確認しておくことが好ましい。

【0104】
本発明の遺伝子改変細胞はまた、本発明の遺伝子改変動物から単離できる。本発明の遺伝子改変動物はミステリン遺伝子の機能的欠損を含むので、本発明の遺伝子改変動物から単離された遺伝子改変細胞もまた、ミステリン遺伝子の機能的欠損を含む。また、本発明の遺伝子改変動物から単離された細胞を、遺伝子工学的手法等の方法により改変してもよい。細胞の単離および改変は、自体公知の方法により行うことができる(例えば、Current Protocols in Cell Biology, John Wiley & Sons, Inc.(2001))。

【0105】
別の実施形態では、本発明の動物細胞は、ゲノムDNAの改変を伴わない細胞であり得る。かかる細胞は、例えば、ミステリン遺伝子の発現または機能を特異的に抑制する物質(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、これらの核酸を発現し得る発現ベクター)の細胞への導入により作製できる。ミステリン遺伝子の発現または機能を抑制する物質の細胞への導入は、自体公知の方法により行うことができ、例えば、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム法、リポフェクション法/リポソーム法、エレクトロポレーション法などが用いられる。

【0106】
特に、ミステリン遺伝子の機能的欠損を含む魚類(例、ゼブラフィッシュ)の作成においては、操作の簡便性や時間コストの観点から、モルフォリノアンチセンス核酸の使用が有利である(上述の4.の項参照)。

【0107】
本発明の動物細胞は、ミステリン遺伝子および血管新生の解析、血管新生を調節し得る物質や血管新生異常を治療し得る物質のスクリーニング、並びに本発明の動物の製造などに有用である。

【0108】
6.血管新生調節剤の候補物質のスクリーニング方法
後述の実施例に示すように、ミステリンの発現を抑制した動物においては、血管新生の異常が認められる。従って、本発明はまた、被検物質がミステリン遺伝子の発現または機能を調節し得るか否かを評価することを含む、血管新生調節剤の候補物質のスクリーニング方法、ならびに当該スクリーニング方法により得られる血管新生調節剤の候補物質を提供する。

【0109】
スクリーニング方法に供される被検物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。

【0110】
一実施形態(態様I)では、本発明のスクリーニング方法は、下記の工程(a)~(c)を含む:
(a)被検物質とミステリン遺伝子の発現を測定可能な細胞とを接触させる工程;
(b)被検物質を接触させた細胞におけるミステリン遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被検物質を接触させない対照細胞におけるミステリン遺伝子の発現量と比較する工程;及び
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ミステリン遺伝子の発現量を調節する被検物質を選択する工程。

【0111】
上記方法の工程(a)では、被検物質がミステリン遺伝子の発現を測定可能な細胞と接触条件下におかれる。ミステリン遺伝子の発現を測定可能な細胞に対する被検物質の接触は、培養培地中で行われ得る。

【0112】
ミステリン遺伝子の発現を測定可能な細胞とは、ミステリン遺伝子の産物、例えば、転写産物、翻訳産物の発現レベルを直接的又は間接的に評価可能な細胞をいう。ミステリン遺伝子の産物の発現レベルを直接的に評価可能な細胞は、ミステリン遺伝子を天然で発現可能な細胞(例、ミステリン遺伝子を天然で発現している細胞)であり得、一方、ミステリン遺伝子の産物の発現レベルを間接的に評価可能な細胞は、ミステリン遺伝子転写調節領域についてレポーターアッセイを可能とする細胞であり得る。ミステリン遺伝子の発現を測定可能な細胞は、動物細胞、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、サル、ヒト等の哺乳動物細胞、ニワトリ等の鳥類細胞、ゼブラフィッシュ等の魚類細胞であり得る。

【0113】
ミステリン遺伝子を天然で発現可能な細胞(例、ミステリン遺伝子を天然で発現している細胞)は、ミステリン遺伝子を潜在的に発現するものである限り特に限定されない。かかる細胞は、当業者であれば容易に同定でき、初代培養細胞、当該初代培養細胞から誘導された細胞株、市販の細胞株、セルバンクより入手可能な細胞株などを使用できる。ミステリン遺伝子が発現している細胞株としては、例えば、293細胞などが挙げられる。なお、ミステリン遺伝子は、上述の組織または細胞で発現していることが知られているので、このような組織または細胞(例えば、心臓、脳、肝臓、膵臓、筋肉、肺、副腎、骨髄、胎盤、前立腺、唾液腺、胸腺、甲状腺、気管、子宮、脾臓、血管を構成している体細胞や、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、膵ランゲルハンス島膵B細胞)由来の細胞または細胞株を使用してもよい。

【0114】
ミステリン遺伝子転写調節領域についてレポーターアッセイを可能とする細胞は、ミステリン遺伝子転写調節領域、当該領域に機能可能に連結されたレポーター遺伝子を含む細胞である。ミステリン遺伝子転写調節領域、レポーター遺伝子は、発現ベクター中に挿入され得る。ミステリン遺伝子転写調節領域は、ミステリン遺伝子の発現を制御し得る領域である限り特に限定されないが、例えば、転写開始点から上流約2kbpまでの領域、あるいは該領域の塩基配列において1以上の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、且つミステリン遺伝子の転写を制御する能力を有する領域などが挙げられる。レポーター遺伝子は、検出可能な蛋白質又は検出可能な物質を生成する酵素をコードする遺伝子であればよく、例えばGFP(緑色蛍光蛋白質)遺伝子、GUS(β-グルクロニダーゼ)遺伝子、LUC(ルシフェラーゼ)遺伝子、CAT(クロラムフェニコルアセチルトランスフェラーゼ)遺伝子等が挙げられる。

【0115】
ミステリン遺伝子転写調節領域、当該領域に機能可能に連結されたレポーター遺伝子が導入される細胞は、ミステリン遺伝子転写調節機能を評価できる限り、即ち、該レポーター遺伝子の発現量が定量的に解析可能である限り特に限定されない。しかしながら、ミステリン遺伝子に対する生理的な転写調節因子を発現し、ミステリン遺伝子の発現調節の評価により適切であると考えられることから、該導入される細胞としては、ミステリン遺伝子を天然で発現可能な細胞(例、ミステリン遺伝子を天然で発現している細胞)が好ましい。

【0116】
被検物質とミステリン遺伝子の発現を測定可能な細胞とが接触される培養培地は、用いられる細胞の種類などに応じて適宜選択されるが、例えば、約5~20%のウシ胎仔血清を含む最少必須培地(MEM)、ダルベッコ改変最少必須培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地などである。培養条件もまた、用いられる細胞の種類などに応じて適宜決定されるが、例えば、培地のpHは約6~約8であり、培養温度は通常約30~約40℃であり、培養時間は約12~約72時間である。

【0117】
上記方法の工程(b)では、先ず、被検物質を接触させた細胞におけるミステリン遺伝子の発現量が測定される。発現量の測定は、用いた細胞の種類などを考慮し、自体公知の方法により行われ得る。例えば、ミステリン遺伝子の発現を測定可能な細胞として、ミステリン遺伝子を天然で発現可能な細胞を用いた場合、発現量は、ミステリン遺伝子の産物、例えば、転写産物又は翻訳産物を対象として自体公知の方法により測定できる。例えば、転写産物の発現量は、細胞からtotal RNAを調製し、RT-PCR、ノザンブロッティング等により測定され得る。また、翻訳産物の発現量は、細胞から抽出液を調製し、免疫学的手法により測定され得る。免疫学的手法としては、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Methods in Enzymol. 70: 419-439 (1980))、蛍光抗体法などが使用できる。一方、ミステリン遺伝子の発現を測定可能な細胞として、ミステリン遺伝子転写調節領域についてレポーターアッセイを可能とする細胞を用いた場合、発現量は、レポーターのシグナル強度に基づき測定され得る。

【0118】
次いで、被検物質を接触させた細胞におけるミステリン遺伝子の発現量が、被検物質を接触させない対照細胞におけるミステリン遺伝子の発現量と比較される。発現量の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。被検物質を接触させない対照細胞におけるミステリン遺伝子の発現量は、被検物質を接触させた細胞におけるミステリン遺伝子の発現量の測定に対し、事前に測定した発現量であっても、同時に測定した発現量であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した発現量であることが好ましい。

【0119】
上記方法の工程(c)では、ミステリン遺伝子の発現量を調節する被検物質が選択される。ミステリン遺伝子の発現量の調節は、発現量の増加または減少であり得る。例えば、ミステリン遺伝子の発現量を増加させる(発現を促進する)被検物質は、血管新生の異常の予防又は治療剤の候補物質となり得る。一方、ミステリン遺伝子の発現量を減少させる(発現を抑制する)被検物質は、血管新生異常の誘発剤となり得る。従って、ミステリン遺伝子の発現量を指標として、血管新生の異常の予防又は治療剤等の医薬、または血管新生異常の誘発剤等の研究用試薬のための候補物質を選択することが可能となる。

【0120】
別の実施形態(態様II)では、本発明のスクリーニング方法は、下記の工程(a)~(c)を含む:
(a)被検物質をミステリンポリペプチドに接触させる工程;
(b)被検物質の存在下でのミステリンポリペプチドの機能を測定し、該機能を被検物質の不在下におけるミステリンポリペプチドの機能と比較する工程;及び
(c)上記(b)の結果に基づいて、ミステリンポリペプチドの機能を調節する被検物質を選択する工程。

【0121】
上記方法の工程(a)では、被検物質がミステリンポリペプチドと接触条件下におかれる。被検物質の該ポリペプチドに対する接触は、適切な緩衝液中での被検物質とミステリンポリペプチドとの混合により行われ得る。

【0122】
ミステリンポリペプチドは自体公知の方法により調製できる。例えば、上述したミステリン遺伝子の発現組織からミステリンポリペプチドを単離・精製できる。しかしながら、迅速、容易かつ大量にミステリンポリペプチドを調製するためには、遺伝子組換え技術により組換えポリペプチドを調製するのが好ましい。組換えポリペプチドは、上記2.の項に記載した方法により製造することが出来る。

【0123】
上記方法の工程(b)における、ミステリンポリペプチドの機能としては、ユビキチンリガーゼ活性及びATPase活性を挙げることが出来る。ユビキチンリガーゼ活性及びATPase活性は、上記1.の項で説明した方法により測定することが出来る。

【0124】
次いで、被検物質の存在下でのミステリンポリペプチドの機能が、被検物質の不在下でのミステリンポリペプチドの機能と比較される。機能の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。被検物質の不在下でのミステリンポリペプチドの機能の測定は、被検物質の存在下でのミステリンポリペプチドの機能の測定に対し、事前に行われたものであっても、同時に行われたものであってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定するのが好ましい。

【0125】
上記方法の工程(c)では、ミステリンポリペプチドの機能を調節する被検物質が選択される。ミステリンポリペプチドの機能の調節は、機能の促進又は抑制であり得る。例えば、ミステリンポリペプチドの機能を促進させる被検物質は、血管新生の異常の予防又は治療剤の候補物質となり得る。一方、ミステリンポリペプチドの機能を抑制する被検物質は、血管新生異常の誘発剤となり得る。従って、ミステリンポリペプチドの機能を指標として、血管新生の異常の予防又は治療剤等の医薬、または血管新生異常の誘発剤等の研究用試薬のための候補物質を選択することが可能となる。

【0126】
更に、別の実施形態(態様III)では、本発明のスクリーニング方法は、下記の工程(a)~(c)を含む:
(a)被検物質をミステリンポリペプチドに接触させる工程;
(b)被検物質のミステリンポリペプチドに対する結合能を測定する工程;及び
(c)上記(b)の結果に基づいて、ミステリンポリペプチドに結合能を有する被検物質を選択する工程。

【0127】
上記方法の工程(a)では、被検物質がミステリンポリペプチドと接触条件下におかれる。被検物質の該ポリペプチドに対する接触は、適切な緩衝液中での被検物質とミステリンポリペプチドとの混合により行われ得る。

【0128】
上記方法の工程(b)では、ミステリンポリペプチドに対する被検物質の結合能が測定される。結合能の測定は、自体公知の方法、例えば、バインディングアッセイ、表面プラズモン共鳴を利用する方法(例えば、Biacore(登録商標)の使用)により行われ得る。

【0129】
上記方法の工程(c)では、ミステリンポリペプチドに結合能を有する被検物質が選択される。ミステリンポリペプチドに結合能を有する被検物質は、ミステリン遺伝子の機能を調節(例えば、促進または抑制)し得る物質となる可能性がある。従って、本方法論は、例えば、ミステリン遺伝子の機能を調節し得る物質の1stスクリーニングとして有用であり得る。本方法論により得られた物質を上記態様(II)における被検物質として更に評価することにより、効率的にミステリンポリペプチドの機能を調節する被検物質を確実に選択することができる。

【0130】
本発明のスクリーニング方法はまた、被検物質の動物への投与により行われ得る。該動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、サル等の哺乳動物、又は本発明の動物が挙げられる。動物を用いて本発明のスクリーニング方法が行われる場合、例えば、ミステリン遺伝子の発現量を調節する被検物質が選択され得る。

【0131】
本発明のスクリーニング方法は、血管新生の調節剤の候補物質のスクリーニングを可能とする。従って、本発明のスクリーニング方法は、血管新生の異常の予防又は治療剤等の医薬、または血管新生異常の誘発剤等の研究用試薬の開発などに有用である。

【0132】
7.モヤモヤ病に関連するSNPを含むポリヌクレオチド
本発明は、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドであって、該部分配列は、4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917G>A(SNP4)及び232102 G>A(SNP5)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを含み、該部分配列に含まれる該SNPのアレルはマイナーアレルであり、且つ該部分配列又はその相補配列は少なくとも12ヌクレオチドの長さを有する、ポリヌクレオチドを提供する。

【0133】
更なる局面において、本発明は、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドであって、該部分配列は、4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917G>A(SNP4)、232102 G>A(SNP5)、55977 G>A(SNP6)、55712 A>G(SNP7)及び57483 G>Aからなる群から選択される少なくとも1つのSNPを含み、該部分配列に含まれる該SNPのアレルはマイナーアレルであり、且つ該部分配列又はその相補配列は少なくとも12ヌクレオチドの長さを有する、ポリヌクレオチドを提供する。

【0134】
配列番号5は、ミステリン遺伝子及びその周辺領域の遺伝子(FLJ3520、NPTX1、CARD14及びRaptor (KIAA1303))を含むヒト第17番染色体DNAの部分ヌクレオチド配列であり、NCBIに登録されているContig #NT010783.15の第43560001~43795000番目のヌクレオチドに相当する。

【0135】
配列番号5で表されるヌクレオチド配列には、ヒト第17番染色体上に存在する、モヤモヤ病に関連する以下の新規なSNPsが含まれる:
T又はCである第4766位のSNP (本明細書中4766 T>C、又はSNP1と略記する)、
G又はAである第73097位のSNP (本明細書中73097 G>A、又はSNP2と略記する)、
G又はAである第120764位のSNP (本明細書中120764 G>A、又はSNP3と略記する)、
G又はAである第152917位のSNP (本明細書中152917 G>A、又はSNP4と略記する)、及び
G又はAである第232102位のSNP (本明細書中232102 G>A、又はSNP5と略記する)。

【0136】
更なる局面において、配列番号5で表されるヌクレオチド配列には、ヒト第17番染色体上に存在する、モヤモヤ病に関連する以下の新規なSNPも含まれる:
G又はAである第55977位のSNP (本明細書中55977 G>A、又はSNP6と略記する)、
A又はGである第55712位のSNP (本明細書中55712 A>G、又はSNP7と略記する)、及び
G又はAである第57483位のSNP (本明細書中57483 G>A、又はSNP8と略記する)。

【0137】
なお、本明細書において、SNPの位置は、配列番号5で表されるヌクレオチド配列におけるヌクレオチドの位置を基準に記載する。例えば、「第4766位のSNP」は、配列番号5で表されるヌクレオチド配列における第4766位のヌクレオチドにおけるSNPを意味する。「4766 T>C」等と記載する場合、「>」の記号の前にメジャーアレルの塩基(この場合T)を、後にマイナーアレルの塩基(この場合C)を記載することとする。

【0138】
また、本明細書においてヌクレオチド配列は、特にことわりのない限りDNAの配列として記載するが、ポリヌクレオチドがRNAである場合は、チミン(T)をウラシル(U)に適宜読み替えるものとする。

【0139】
本発明のポリヌクレオチドには、上記5つのSNPsからなる群から選択される少なくとも1つ(1、2、3、4又は5つ、好ましくは1つ)のSNPが含まれる。即ち、好ましい態様において、本発明のポリヌクレオチドには、SNP1、SNP2、SNP3、SNP4又はSNP5が含まれる。

【0140】
更なる局面において、本発明のポリヌクレオチドには、上記8つのSNPsからなる群から選択される少なくとも1つ(1、2、3、4、5、6、7又は8つ、好ましくは1つ)のSNPが含まれる。即ち、好ましい態様において、本発明のポリヌクレオチドには、SNP1、SNP2、SNP3、SNP4、SNP5、SNP6、SNP7又はSNP8が含まれる。

【0141】
本発明のポリヌクレオチドに含まれるSNPのアレルはマイナーアレルである。即ち、本発明のポリヌクレオチドにSNP1が含まれる場合、該SNPは「C」であり;SNP2が含まれる場合、該SNPは「A」であり;SNP3が含まれる場合、該SNPは「A」であり;SNP4が含まれる場合、該SNPは「A」であり;SNP5が含まれる場合、該SNPは「A」である。

【0142】
更なる局面において、本発明のポリヌクレオチドにSNP6が含まれる場合、該SNPは「A」であり;SNP7が含まれる場合、該SNPは「G」であり;SNP8が含まれる場合、該SNPは「A」である。

【0143】
本発明のポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよいが、好ましくは一本鎖である。

【0144】
本発明のポリヌクレオチドが、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列の相補配列を含む場合、該相補配列が有する相補性は100%である。

【0145】
本発明のポリヌクレオチドに含まれる、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列の長さは、12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上(例えば、25ヌクレオチド以上)である。また、該部分配列またはその相補配列の長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さや、SNPの検出感度を高くする観点から、該長さは、通常1000ヌクレオチド以下、好ましくは100ヌクレオチド以下、より好ましくは50ヌクレオチド以下、更に好ましくは30ヌクレオチド以下である。

【0146】
本発明のポリヌクレオチドの長さは、少なくとも12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上である。また、本発明のポリヌクレオチドの長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さの観点から、通常1000ヌクレオチド以下、好ましくは100ヌクレオチド以下、より好ましくは50ヌクレオチド以下、更に好ましくは30ヌクレオチド以下である。

【0147】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列に加えて、任意の付加的配列を含んでいてもよい。

【0148】
また、本発明のポリヌクレオチドは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C、32P、33P等)、酵素(例:β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)などで標識されていてもよい。

【0149】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは単離又は精製されている。

【0150】
本発明のポリヌクレオチドは、SNPs1~5を検出するための核酸プローブやプライマーとして使用することができるので、これらのSNPsが関連するモヤモヤ病の発症リスクの診断剤として有用である。また、SNP2は、虚血性心疾患や、一卵性双生児の分娩頻度と相関するため、本発明のポリヌクレオチドがSNP2を含む場合には、該ポリヌクレオチドは、虚血性心疾患の発症リスクや、一卵性双生児の分娩可能性の診断剤として有用である(下記8~10の項を参照)。

【0151】
更なる局面において、本発明のポリヌクレオチドは、SNPs1~8を検出するための核酸プローブやプライマーとして使用することができるので、これらのSNPsが関連するモヤモヤ病の発症リスクの診断剤として有用である。

【0152】
8.モヤモヤ病の発症リスクの判定方法
本発明は、配列番号5で表されるヌクレオチド配列における4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)及び232102 G>A(SNP5)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出することを含む、モヤモヤ病の発症リスクの判定方法を提供する。

【0153】
更なる局面において、本発明は、配列番号5で表されるヌクレオチド配列における4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)、232102 G>A(SNP5)、55977 G>A(SNP6)、55712 A>G(SNP7)及び57483 G>A(SNP8)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出することを含む、モヤモヤ病の発症リスクの判定方法を提供する。

【0154】
一実施形態では、本発明の判定方法は、以下の工程(a)、(b)を含む:
(a)動物から採取した生体試料について、配列番号5で表されるヌクレオチド配列におけるSNP1、SNP2、SNP3、SNP4及びSNP5からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出する工程;
(b)検出したSNPのタイプに基づきモヤモヤ病の発症リスクを評価する工程。

【0155】
更なる局面において、本発明の判定方法は、以下の工程(a’)、(b’)を含む:
(a’)動物から採取した生体試料について、配列番号5で表されるヌクレオチド配列におけるSNP1、SNP2、SNP3、SNP4、SNP5、SNP6、SNP7及びSNP8からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出する工程;
(b’)検出したSNPのタイプに基づきモヤモヤ病の発症リスクを評価する工程。

【0156】
上記方法の工程(a)及び(a’)では、動物(被検者)から採取された生体試料においてSNP1~5(又はSNP1~8)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出し、そのSNPのタイプを測定する。動物としては、上述の5.の項で列挙した哺乳動物が好ましく、ヒトが特に好ましい。

【0157】
ヒトの人種は、特に限定されないが、好ましくは東アジア人(イーストアジアン/モンゴロイド)である。

【0158】
更なる局面において、ヒトの人種は、特に限定されないが、好ましくはコーカソイド(白人)である。

【0159】
SNP1~5からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出する場合、ヒトの人種は好ましくは東アジア人(イーストアジアン/モンゴロイド)である。SNP6、7又は8を検出する場合、ヒトの人種は、好ましくはコーカソイド(白人)である。

【0160】
ここで、人種(race)は、ホモ・サピエンス種の中の、特定のサブグループとして区別可能な集団である。人種は、特有で、区別可能な、遺伝子の組合せを有し、その遺伝子の組合せによって作られる特徴(精神的、肉体的とも)によって同定される。同じ人種のメンバーは、共通の遺伝的祖先を共有し、その結果、類似の遺伝子組合せを共有するため、はっきり区別できる遺伝的特徴を共有している。

【0161】
例えば、世界の主要な人類集団について、23種類の遺伝子の情報に基づき、遺伝的近縁関係が調べられ、アフリカン(ネグロイド)、コーカソイド(白人)、オセアニアン(オーストラロイド)、イーストアジアン(モンゴロイド)及びネイティブアメリカンの5種に分類されている。

【0162】
東アジア人とは、日本、朝鮮、中国、台湾及びモンゴルの人々のいずれかを起源に持つ人という意味である。東アジア人は、好ましくは、日本人、朝鮮人、又は中国人である。

【0163】
当業者であれば、個人の身体的特徴、出身国、先祖の起源に関する情報等に基づいてその個人の人種を容易に特定することが可能である。

【0164】
上記方法の工程(a)及び(a’)において用いられる生体試料としては、ゲノムDNAを採取可能な任意の組織、細胞、体液等を使用することができるが、入手の容易性及び低侵襲性等の観点から、毛髪、爪、皮膚、粘膜、血液、血漿、血清、唾液などが好ましく用いられる。

【0165】
SNPの検出方法は、当該技術分野において周知である。例えば、RFLP(制限酵素切断断片長多型)法、PCR-SSCP(一本鎖DNA高次構造多型解析)法、ASO(Allele Specific Oligonucleotide)ハイブリダイゼーション法、シークエンス法、ARMS(Amplification Refracting Mutation System)法、変性濃度勾配ゲル電気泳動(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)法、RNAseA切断法、DOL(Dye-labeled Oligonucleotide Ligation)法、TaqMan PCR法、primer extension法、インベーダー法などが使用できる。

【0166】
後述の実施例に示すように、上述の新規SNP1~5について、モヤモヤ病との関連解析を行った結果、モヤモヤ病の患者においては、SNP1~5のマイナーアレルの頻度が、健常者と比較して有意に高かった。特に、実施例1及び2において試験を行った全ての家族性のモヤモヤ病患者は、SNP2のマイナーアレルを保有していたことから、SNP2のマイナーアレルが、モヤモヤ病の創始者変異である可能性がある。また、SNP2の変異は、ミステリンのアミノ酸置換を伴うので、このSNP2のマイナーアレルにより生じるミステリンのアミノ酸置換が、モヤモヤ病の発症に影響する可能性がある。従って、本発明の1つの好ましい態様において、SNP2が検出される。

【0167】
これらの結果に基づけば、
SNP1におけるシトシン、
SNP2におけるアデニン、
SNP3におけるアデニン、
SNP4におけるアデニン、及び
SNP5におけるアデニン
からなる群から選択される少なくとも1つ(好ましくは2つ、更に好ましくは3つ、よりこのましくは4つ、最も好ましくは5つ)のマイナーアレルが、当該SNPにおける少なくとも一方のアレルにおいて検出された場合には、該マイナーアレルが検出されない場合と比較して、モヤモヤ病の発症リスクが、相対的に高いと判定することが出来る。特に、SNP2のマイナーアレル(アデニン)が検出された場合には、該マイナーアレルが検出されない場合と比較して、モヤモヤ病の発症リスクが、極めて高いと判定することが出来る。

【0168】
更なる局面において、後述の実施例に示すように、あるモヤモヤ病の家系についてミステリン遺伝子の変異の有無を解析したところ、モヤモヤ病を発症した全ての患者がSNP6のマイナーアレルを保有していた。SNP6の変異は、ミステリンのアミノ酸置換を伴うので、このSNP6のマイナーアレルにより生じるミステリンのアミノ酸置換が、モヤモヤ病の発症に影響する可能性がある。従って、本発明の1つの好ましい態様において、SNP6が検出される。また、孤発例のモヤモヤ病患者についてミステリン遺伝子の変異の有無を解析したところ、SNP7又はSNP8のマイナーアレルを保有している患者を見出した。SNP7又は8の変異は、ミステリンのアミノ酸置換を伴うので、このSNP7又は8のマイナーアレルにより生じるミステリンのアミノ酸置換が、モヤモヤ病の発症に影響する可能性がある。従って、本発明の1つの好ましい態様において、SNP7又は8が検出される。

【0169】
これらの結果に基づけば、
SNP1におけるシトシン、
SNP2におけるアデニン、
SNP3におけるアデニン、
SNP4におけるアデニン、
SNP5におけるアデニン、
SNP6におけるアデニン、
SNP7におけるグアニン、及び
SNP8におけるアデニン
からなる群から選択される少なくとも1つ(好ましくは2つ、更に好ましくは3つ、よりこのましくは4つ、さらにより好ましくは5つ、6つ、7つ、最も好ましくは8つ)のマイナーアレルが、当該SNPにおける少なくとも一方のアレルにおいて検出された場合には、該マイナーアレルが検出されない場合と比較して、モヤモヤ病の発症リスクが、相対的に高いと判定することが出来る。特に、SNP2又はSNP6のマイナーアレル(SNP2のアデニン/SNP6のアデニン)が検出された場合には、該マイナーアレルが検出されない場合と比較して、モヤモヤ病の発症リスクが、極めて高いと判定することが出来る。

【0170】
DNAは通常、互いに相補的な二本の鎖からなる二重らせん構造を有している。従って、本明細書において、便宜的に一方の鎖におけるDNA配列を示した場合であっても、当然の如く、該配列(塩基)に相補的な配列(100%の相補性)も開示したものと解釈される。当業者にとって、一方のDNA配列(塩基)が判れば、該配列(塩基)に相補的な配列(塩基)は自明である。従って、SNP1を例とすると、配列番号:5に記載のヌクレオチド配列の4766位の塩基に対応する相補鎖上の塩基がG(グアニン)である場合も、被検者はモヤモヤ病の発症リスクが、相対的に高いと判定することが出来る。

【0171】
尚、当業者は、本明細書に開示されたヌクレオチド配列(例えば配列番号5で表されるヌクレオチド配列)およびSNPに関する情報を用いれば、配列表に開示されたヌクレオチド配列(配列番号5で表されたヌクレオチド配列またはその連続した部分配列、あるいはそれらの相補配列)と被検者の第17番染色体DNA上の対応部位のヌクレオチド配列との間に若干の相違(欠失、置換、付加、繰り返し配列の個数の増減等)が認められた場合であっても、配列番号5で表されたヌクレオチド配列と被検者由来のヌクレオチド配列とのアライメントを行うことにより、被検者由来のヌクレオチド配列においてどの塩基がSNP1~5に相当するか正確に特定し、当該SNPを検出することが可能である。このような場合も「配列番号5で表されるヌクレオチド配列における4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)及び232102 G>A(SNP5)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出すること」に包含される。

【0172】
更なる局面において、当業者は、本明細書に開示されたヌクレオチド配列(例えば配列番号5で表されるヌクレオチド配列)およびSNPに関する情報を用いれば、配列表に開示されたヌクレオチド配列(配列番号5で表されたヌクレオチド配列またはその連続した部分配列、あるいはそれらの相補配列)と被検者の第17番染色体DNA上の対応部位のヌクレオチド配列との間に若干の相違(欠失、置換、付加、繰り返し配列の個数の増減等)が認められた場合であっても、配列番号5で表されたヌクレオチド配列と被検者由来のヌクレオチド配列とのアライメントを行うことにより、被検者由来のヌクレオチド配列においてどの塩基がSNP1~8に相当するか正確に特定し、当該SNPを検出することが可能である。このような場合も「配列番号5で表されるヌクレオチド配列における4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)、232102 G>A(SNP5)、55977 G>A(SNP6)、55712 A>G(SNP7)及び57483 G>A(SNP8)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出すること」に包含される。

【0173】
本発明の方法においては、SNP1におけるシトシン、SNP2におけるアデニン、SNP3におけるアデニン、SNP4におけるアデニン、及びSNP5におけるアデニンからなる群から選択される少なくとも1つのマイナーアレルが、少なくとも一方のアレルにおいて検出されれば、該マイナーアレルが検出されない場合と比較して、モヤモヤ病の発症リスクが、相対的に高いと判定することが出来る。即ち、本発明の方法においては、被検者の第17番染色体の少なくとも一方について上記SNPを検出すればよい。

【0174】
更なる局面において、本発明の方法においては、SNP1におけるシトシン、SNP2におけるアデニン、SNP3におけるアデニン、SNP4におけるアデニン、SNP5におけるアデニン、SNP6におけるアデニン、SNP7におけるグアニン、及びSNP8におけるアデニンからなる群から選択される少なくとも1つのマイナーアレルが、少なくとも一方のアレルにおいて検出されれば、該マイナーアレルが検出されない場合と比較して、モヤモヤ病の発症リスクが、相対的に高いと判定することが出来る。即ち、本発明の方法においては、被検者の第17番染色体の少なくとも一方について上記SNPを検出すればよい。

【0175】
尚、上述のように、SNP2の変異は、ヒトミステリンの第4810番のアミノ酸置換(アルギニン→リジン)を伴うので、対象者から、ミステリンポリペプチドを単離し、その第4810番のアミノ酸を同定することによっても、モヤモヤ病の発症リスクを判定することが出来る。ミステリンポリペプチドの単離は、抗体カラムクロマトグラフィー等の生化学分野において周知の方法を用いることにより実施することが出来る。また、第4810番のアミノ酸の同定は、ペプチドシークエンサーや、マススペクトル等の生化学分野において周知の方法を用いることにより実施することが出来る。SNP2のメジャーアレルはヒトミステリンポリペプチドの第4810番アミノ酸としてアルギニンを与え、SNP2のマイナーアレルはヒトミステリンポリペプチドの第4810番アミノ酸としてリジンを与える。従って、第4810番のアミノ酸を同定した結果、リジンが検出された場合は、リジンが検出されない場合(即ちアルギニンのみが検出された場合)と比較して、モヤモヤ病の発症リスクが相対的に高いと判定することが出来る。

【0176】
更なる局面において、SNP6、7及び8の変異は、それぞれヒトミステリンの第4013番のアミノ酸置換(アスパラギン酸→アスパラギン)、第3962番のアミノ酸置換(アスパラギン→アスパラギン酸)及び第4062番のアミノ酸置換(アルギニン→グルタミン)を伴うので、対象者から、ミステリンポリペプチドを単離し、それぞれ、その第4013番、第3962番及び4062番のアミノ酸を同定することによっても、モヤモヤ病の発症リスクを判定することが出来る。ミステリンポリペプチドの単離は、抗体カラムクロマトグラフィー等の生化学分野において周知の方法を用いることにより実施することが出来る。また、第4013番、第3962番及び4062番のアミノ酸の同定は、ペプチドシークエンサーや、マススペクトル等の生化学分野において周知の方法を用いることにより実施することが出来る。SNP6のメジャーアレルはヒトミステリンポリペプチドの第4013番アミノ酸としてアスパラギン酸を与え、SNP6のマイナーアレルはヒトミステリンポリペプチドの第4013番アミノ酸としてアスパラギンを与える。従って、第4013番のアミノ酸を同定した結果、アスパラギンが検出された場合は、アスパラギンが検出されない場合(即ちアスパラギン酸のみが検出された場合)と比較して、モヤモヤ病の発症リスクが相対的に高いと判定することが出来る。SNP7のメジャーアレルはヒトミステリンポリペプチドの第3962番アミノ酸としてアスパラギンを与え、SNP7のマイナーアレルはヒトミステリンポリペプチドの第3962番アミノ酸としてアスパラギン酸を与える。従って、第3962番のアミノ酸を同定した結果、アスパラギン酸が検出された場合は、アスパラギン酸が検出されない場合(即ちアスパラギンのみが検出された場合)と比較して、モヤモヤ病の発症リスクが相対的に高いと判定することが出来る。SNP8のメジャーアレルはヒトミステリンポリペプチドの第4062番アミノ酸としてアルギニンを与え、SNP8のマイナーアレルはヒトミステリンポリペプチドの第4062番アミノ酸としてグルタミンを与える。従って、第4062番のアミノ酸を同定した結果、グルタミンが検出された場合は、グルタミンが検出されない場合(即ちアルギニンのみが検出された場合)と比較して、モヤモヤ病の発症リスクが相対的に高いと判定することが出来る。

【0177】
本発明はまた、SNP1~5からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出するための試薬を含む、モヤモヤ病の発症リスクの診断剤を提供する。

【0178】
SNP1~5からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出するための試薬としては、
(1)配列番号5で表されるヌクレオチド配列における4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)及び232102 G>A(SNP5)からなる群から選択される少なくとも1つのSNP(好ましくはSNP2)を特異的に検出し得る核酸プローブ、又は
(2)該SNPを含む領域を特異的に増幅し得るプライマー
等を挙げることが出来る。

【0179】
更なる局面において、本発明は、SNP1~8からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出するための試薬を含む、モヤモヤ病の発症リスクの診断剤を提供する。

【0180】
SNP1~8からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを検出するための試薬としては、
(1’)配列番号5で表されるヌクレオチド配列における4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)、232102 G>A(SNP5)、55977 G>A(SNP6)、55712 A>G(SNP7)及び57483 G>A(SNP8)からなる群から選択される少なくとも1つのSNP(好ましくはSNP2又はSNP6)を特異的に検出し得る核酸プローブ、又は
(2’)該SNPを含む領域を特異的に増幅し得るプライマー
等を挙げることが出来る。

【0181】
本明細書において、「核酸プローブによるSNPの特異的な検出」とは、核酸プローブが配列番号5で表されるヌクレオチド配列からなるDNAの特定のSNPを含む領域にハイブリダイズし、ヒトゲノムDNA中の他の領域にハイブリダイズしないことを意味する。このようなハイブリダイゼーションの条件は、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイゼーションの条件として、例えば低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、5×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、2×SSC、0.1%SDSの条件である。より好ましいハイブリダイゼーションの条件としては、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、0.1×SSC、0.1%SDSである。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては、温度や塩濃度等の複数の要素があり、当業者はこれらの要素を適宜選択することで、同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。

【0182】
(1)又は(1’)の核酸プローブは、好ましくは、当該核酸プローブが標的とするSNPがメジャーアレルである配列番号5で表されるポリヌクレオチドへの親和性と、当該SNPがマイナーアレルである配列番号5で表されるポリヌクレオチドへの親和性との間に差を有しており、適切な条件下(例えば高ストリンジェントな条件)で、メジャーアレル及びマイナーアレルの一方へハイブリダイズするが、他方へはハイブリダイズしない。

【0183】
(1)のプローブとしては、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドであって、該部分配列は、4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)及び232102 G>A(SNP5)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを含み、該部分配列に含まれる該SNPのアレルはメジャーアレル又はマイナーアレルであり、且つ該部分配列又はその相補配列は少なくとも12ヌクレオチドの長さを有する、ポリヌクレオチドが例示される。

【0184】
該ポリヌクレオチドには、上記5つのSNPsからなる群から選択される少なくとも1つ(1、2、3、4又は5つ、好ましくは1つ)のSNPが含まれる。即ち、好ましい態様において、該ポリヌクレオチドには、SNP1、SNP2、SNP3、SNP4又はSNP5が含まれる。SNP1を検出する場合には、該ポリヌクレオチドにはSNP1が含まれ、SNP2を検出する場合には、該ポリヌクレオチドにはSNP2が含まれ、SNP3を検出する場合には、該ポリヌクレオチドにはSNP3が含まれ、SNP4を検出する場合には、該ポリヌクレオチドにはSNP4が含まれ、SNP5を検出する場合には、該ポリヌクレオチドにはSNP5が含まれる。

【0185】
該ポリヌクレオチドに含まれるSNPのアレルはメジャーアレル又はマイナーアレルである。即ち、本発明のポリヌクレオチドにSNP1が含まれる場合、該SNPは「T」又は「C」であり;SNP2が含まれる場合、該SNPは「G」又は「A」であり;SNP3が含まれる場合、該SNPは「G」又は「A」であり;SNP4が含まれる場合、該SNPは「G」又は「A」であり;SNP5が含まれる場合、該SNPは「G」又は「A」である。

【0186】
更なる局面において、(1’)のプローブとしては、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドであって、該部分配列は、4766 T>C(SNP1)、73097 G>A(SNP2)、120764 G>A(SNP3)、152917 G>A(SNP4)、232102 G>A(SNP5)、55977 G>A(SNP6)、55712 A>G(SNP7)及び57483 G>A(SNP8)からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを含み、該部分配列に含まれる該SNPのアレルはメジャーアレル又はマイナーアレルであり、且つ該部分配列又はその相補配列は少なくとも12ヌクレオチドの長さを有する、ポリヌクレオチドが例示される。

【0187】
該ポリヌクレオチドには、上記6つのSNPsからなる群から選択される少なくとも1つ(1、2、3、4、5、6、7又は8つ、好ましくは1つ)のSNPが含まれる。即ち、好ましい態様において、該ポリヌクレオチドには、SNP1、SNP2、SNP3、SNP4、SNP5、SNP6、SNP7又はSNP8が含まれる。SNP1を検出する場合には、該ポリヌクレオチドにはSNP1が含まれ、SNP2を検出する場合には、該ポリヌクレオチドにはSNP2が含まれ、SNP3を検出する場合には、該ポリヌクレオチドにはSNP3が含まれ、SNP4を検出する場合には、該ポリヌクレオチドにはSNP4が含まれ、SNP5を検出する場合には、該ポリヌクレオチドにはSNP5が含まれ、SNP6を検出する場合には、該ポリヌクレオチドにはSNP6が含まれ、SNP7を検出する場合には、該ポリヌクレオチドにはSNP7が含まれ、SNP8を検出する場合には、該ポリヌクレオチドにはSNP8が含まれる。

【0188】
該ポリヌクレオチドに含まれるSNPのアレルはメジャーアレル又はマイナーアレルである。即ち、本発明のポリヌクレオチドにSNP1が含まれる場合、該SNPは「T」又は「C」であり;SNP2が含まれる場合、該SNPは「G」又は「A」であり;SNP3が含まれる場合、該SNPは「G」又は「A」であり;SNP4が含まれる場合、該SNPは「G」又は「A」であり;SNP5が含まれる場合、該SNPは「G」又は「A」であり;SNP6が含まれる場合、該SNPは「G」又は「A」であり;SNP7が含まれる場合、該SNPは「A」又は「G」であり;SNP8が含まれる場合、該SNPは「G」又は「A」である。

【0189】
上記(1)又は(1’)の核酸プローブであるポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよいが、好ましくは一本鎖である。

【0190】
該ポリヌクレオチドが、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列の相補配列を含む場合、該相補配列が有する相補性は、好ましくは、100%である。

【0191】
該ポリヌクレオチドに含まれる、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列の長さは、12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上(例えば、25ヌクレオチド以上)である。また、該部分配列またはその相補配列の長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さや、SNPの検出感度を高くする観点から、該長さは、通常1000ヌクレオチド以下、好ましくは100ヌクレオチド以下、より好ましくは50ヌクレオチド以下、更に好ましくは30ヌクレオチド以下である。

【0192】
該ポリヌクレオチドの長さは、少なくとも12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上である。また、本発明のポリヌクレオチドの長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さの観点から、通常1000ヌクレオチド以下、好ましくは100ヌクレオチド以下、より好ましくは50ヌクレオチド以下、更に好ましくは30ヌクレオチド以下である。

【0193】
該ポリヌクレオチドは、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列に加えて、任意の付加的配列を含んでいてもよい。

【0194】
また、該ポリヌクレオチドは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C、32P、33P等)、酵素(例:β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)などで標識されていてもよい。

【0195】
本明細書において、「プライマーによるSNPの特異的な増幅」とは、プライマーが配列番号5で表されるヌクレオチド配列からなるDNAの特定のSNPを含む領域をPCR増幅するが、ヒトゲノムDNA中の他の領域はPCR増幅しないことを意味する。

【0196】
上記(2)のプライマーには、SNP1~5からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを含むポリヌクレオチド(例えばゲノムDNA)を鋳型として、当該選択したSNP部位に向かって相補鎖合成を開始することができるプライマーが含まれる。該プライマーは、SNP部位を含むポリヌクレオチドにおける、SNP部位の3’側に複製開始点を与えるためのプライマーと表現することもできる。プライマーがハイブリダイズする領域とSNP部位との間隔は任意である。両者の間隔は、SNP部位の塩基の解析手法に応じて、好適な長さを選択することができる。たとえば、DNAチップやダイレクトシークエンシングによる解析のためのプライマーであれば、SNP部位を含む領域として、通常25~500、例えば50~200ヌクレオチドの長さの増幅産物が得られるようにプライマーをデザインすることができる。当業者は、SNP部位を含む周辺DNA領域についてのヌクレオチド配列情報を基に、各解析手法に適したプライマーをデザインすることができる。上記(2)のプライマーを構成するヌクレオチド配列は、配列番号5に記載のヌクレオチド配列の部分配列又はその相補配列に対して完全に相補的なヌクレオチド配列のみならず、適宜改変することができる。

【0197】
更なる局面において、上記(2’)のプライマーには、SNP1~8からなる群から選択される少なくとも1つのSNPを含むポリヌクレオチド(例えばゲノムDNA)を鋳型として、当該選択したSNP部位に向かって相補鎖合成を開始することができるプライマーが含まれる。該プライマーは、SNP部位を含むポリヌクレオチドにおける、SNP部位の3’側に複製開始点を与えるためのプライマーと表現することもできる。プライマーがハイブリダイズする領域とSNP部位との間隔は任意である。両者の間隔は、SNP部位の塩基の解析手法に応じて、好適な長さを選択することができる。たとえば、DNAチップやダイレクトシークエンシングによる解析のためのプライマーであれば、SNP部位を含む領域として、通常25~500、例えば50~200ヌクレオチドの長さの増幅産物が得られるようにプライマーをデザインすることができる。当業者は、SNP部位を含む周辺DNA領域についてのヌクレオチド配列情報を基に、各解析手法に適したプライマーをデザインすることができる。上記(2’)のプライマーを構成するヌクレオチド配列は、配列番号5に記載のヌクレオチド配列の部分配列又はその相補配列に対して完全に相補的なヌクレオチド配列のみならず、適宜改変することができる。

【0198】
上記(2)及び(2’)のプライマーは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよいが、好ましくは一本鎖である。

【0199】
上記(2)及び(2’)のプライマーが配列番号1に記載のヌクレオチド配列又はその相補配列からなる核酸にハイブリダイズし得る領域の長さは、12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上(例えば、25ヌクレオチド以上)である。また、該部分配列またはその相補配列の長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さの観点から、該長さは、通常100ヌクレオチド以下、好ましくは50ヌクレオチド以下、より好ましくは30ヌクレオチド以下である。

【0200】
上記(2)及び(2’)のプライマーの長さは、少なくとも12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上である。また、本発明のポリヌクレオチドの長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さの観点から、該長さは、通常100ヌクレオチド以下、好ましくは50ヌクレオチド以下、より好ましくは30ヌクレオチド以下である。

【0201】
上記(2)及び(2’)のプライマーは、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列に加えて、任意の付加的配列を含んでいてもよい。

【0202】
また、該プライマーは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C、32P、33P等)、酵素(例:β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)などで標識されていてもよい。

【0203】
本発明の診断剤には、SNPの検出方法に応じて、各種の酵素、酵素基質、および緩衝液などを組み合わせることができる。酵素としては、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、あるいは制限酵素などの、上記のSNPの検出方法として例示した各種の解析方法に必要な酵素を示すことができる。緩衝液は、これらの解析に用いる酵素の活性の維持に好適な緩衝液が、適宜選択される。更に、酵素基質としては、例えば、相補鎖合成用の基質等が用いられる。

【0204】
本発明の診断剤を用いると、上記本発明の判定方法により、容易にモヤモヤ病の発症リスクを判定することが出来る。

【0205】
9.虚血性心疾患の発症リスクの判定方法
本発明は、配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)を検出することを含む、虚血性心疾患の発症リスクの判定方法を提供する。

【0206】
一実施形態では、本発明の判定方法は、以下の工程(a)、(b)を含む:
(a)動物(被検者)から採取した生体試料について、配列番号5で表されるヌクレオチド配列におけるSNP2を検出する工程;
(b)検出したSNPのタイプに基づき虚血性心疾患の発症リスクを評価する工程。

【0207】
虚血性心疾患とは、冠動脈の閉塞や狭窄などにより心筋への血流が阻害され、心臓に障害が起こる疾患の総称である。虚血性心疾患としては、心筋梗塞、狭心症等が挙げられる。

【0208】
上記方法の工程(a)では、動物から採取された生体試料においてSNP2を検出し、そのSNPのタイプを測定する。動物としては、上述の哺乳動物が好ましく、ヒトが特に好ましい。ヒトの人種は、特に限定されないが、好ましくは東アジア人(イーストアジアン/モンゴロイド)である。

【0209】
東アジア人とは、日本、朝鮮、中国、台湾及びモンゴルの人々のいずれかを起源に持つ人という意味である。東アジア人は、好ましくは、日本人、朝鮮人、又は中国人である。

【0210】
当業者であれば、個人の身体的特徴、出身国、先祖の起源に関する情報等に基づいてその個人の人種を容易に特定することが可能である。

【0211】
ヒトの性別は特に限定されないが、好ましくは一般的なリスク要因が少ないと思われる女性である。

【0212】
ヒトの年齢は特に限定されないが、好ましくは35~54歳である。

【0213】
上記方法の工程(a)において用いられる生体試料としては、ゲノムDNAを採取可能な任意の組織、細胞、体液等を使用することができるが、入手の容易性及び低侵襲性等の観点から、毛髪、爪、皮膚、粘膜、血液、血漿、血清、唾液などが好ましく用いられる。

【0214】
SNPの検出方法は、当該技術分野において周知である。例えば、RFLP(制限酵素切断断片長多型)法、PCR-SSCP(一本鎖DNA高次構造多型解析)法、ASO(Allele Specific Oligonucleotide)ハイブリダイゼーション法、シークエンス法、ARMS(Amplification Refracting Mutation System)法、変性濃度勾配ゲル電気泳動(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)法、RNAseA切断法、DOL(Dye-labeled Oligonucleotide Ligation)法、TaqMan PCR法、primer extension法、インベーダー法などが使用できる。

【0215】
後述の実施例に示すように、SNP2について、虚血性心疾患との関連解析を行った結果、虚血性心疾患の患者(特に、35~54歳の女性)においては、SNP2のマイナーアレルの頻度が、一般人口における頻度と比較して有意に高かった。

【0216】
これらの結果に基づけば、SNP2において、マイナーアレル(アデニン)が少なくとも一方のアレルについて検出された場合には、該マイナーアレルが検出されない場合と比較して、虚血性心疾患の発症リスクが、相対的に高いと判定することが出来る。

【0217】
DNAは通常、互いに相補的な二本の鎖からなる二重らせん構造を有している。従って、本明細書において、便宜的に一方の鎖におけるDNA配列を示した場合であっても、当然の如く、該配列(塩基)に相補的な配列(100%の相補性)も開示したものと解釈される。当業者にとって、一方のDNA配列(塩基)が判れば、該配列(塩基)に相補的な配列(塩基)は自明である。従って、配列番号:5に記載のヌクレオチド配列の73097位の部位に対応する相補鎖上の部位の塩基種がT(チミン)である場合も、被検者は虚血性心疾患の発症リスクが、相対的に高いと判定することが出来る。

【0218】
尚、当業者は、本明細書に開示されたヌクレオチド配列(例えば配列番号5で表されるヌクレオチド配列)およびSNPに関する情報を用いれば、配列表に開示されたヌクレオチド配列(配列番号5で表されたヌクレオチド配列またはその連続した部分配列、あるいはそれらの相補配列)と被検者の第17番染色体DNA上の対応部位のヌクレオチド配列との間に若干の相違(欠失、置換、付加、繰り返し配列の個数の増減等)が認められた場合であっても、配列番号5で表されたヌクレオチド配列と被検者由来のヌクレオチド配列とのアライメントを行うことにより、被検者由来のヌクレオチド配列においてどの塩基がSNP2に相当するか正確に特定し、SNP2を検出することが可能である。このような場合も「配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)を検出すること」に包含される。

【0219】
本発明の方法においては、SNP2におけるアデニンが、少なくとも一方のアレルにおいて検出されれば、該マイナーアレルが検出されない場合と比較して、虚血性心疾患の発症リスクが、相対的に高いと判定することが出来る。即ち、本発明の方法においては、被検者の第17番染色体の少なくとも一方についてSNP2を検出すればよい。

【0220】
尚、上述のように、SNP2の変異は、ヒトミステリンの第4810番のアミノ酸置換(アルギニン→リジン)を伴うので、対象者から、ミステリンポリペプチドを単離し、その第4810番のアミノ酸を同定することによっても、虚血性心疾患の発症リスクを判定することが出来る。ミステリンポリペプチドの単離は、抗体カラムクロマトグラフィー等の生化学分野において周知の方法を用いることにより実施することが出来る。また、第4810番のアミノ酸の同定は、ペプチドシークエンサーや、マススペクトル等の生化学分野において周知の方法を用いることにより実施することが出来る。SNP2のメジャーアレルはヒトミステリンポリペプチドの第4810番アミノ酸としてアルギニンを与え、SNP2のマイナーアレルはヒトミステリンポリペプチドの第4810番アミノ酸としてリジンを与える。従って、第4810番のアミノ酸を同定した結果、リジンが検出された場合は、リジンが検出されない場合(即ちアルギニンのみが検出された場合)と比較して、虚血性心疾患の発症リスクが相対的に高いと判定することが出来る。

【0221】
本発明はまた、SNP2を検出するための試薬を含む、虚血性心疾患の発症リスクの診断剤を提供する。

【0222】
SNP2を検出するための試薬としては、
(1)配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)を特異的に検出し得る核酸プローブ、又は
(2)SNP2を含む領域を特異的に増幅し得るプライマー
等を挙げることが出来る。

【0223】
(1)のプローブは、好ましくは、SNP2がメジャーアレル(グアニン)である配列番号5で表されるポリヌクレオチドへの親和性と、当該SNP2がマイナーアレル(アデニン)である配列番号5で表されるポリヌクレオチドへの親和性との間に差を有しており、適切な条件下(例えば上述の高ストリンジェントな条件)で、メジャーアレル及びマイナーアレルの一方へハイブリダイズするが、他方へはハイブリダイズしない。

【0224】
(1)のプローブとしては、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドであって、該部分配列は、73097 G>A(SNP2)を含み、該部分配列に含まれる該SNPのアレルはメジャーアレル又はマイナーアレルであり、且つ該部分配列又はその相補配列は少なくとも12ヌクレオチドの長さを有する、ポリヌクレオチドが例示される。

【0225】
該ポリヌクレオチドに含まれるSNP2のアレルはメジャーアレル(グアニン)又はマイナーアレル(アデニン)である。

【0226】
該ポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよいが、好ましくは一本鎖である。

【0227】
該ポリヌクレオチドが、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列の相補配列を含む場合、該相補配列が有する相補性は、好ましくは、100%である。

【0228】
該ポリヌクレオチドに含まれる、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列の長さは、12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上(例えば、25ヌクレオチド以上)である。また、該部分配列またはその相補配列の長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さや、SNPの検出感度を高くする観点から、該長さは、通常1000ヌクレオチド以下、好ましくは100ヌクレオチド以下、より好ましくは50ヌクレオチド以下、更に好ましくは30ヌクレオチド以下である。

【0229】
該ポリヌクレオチドの長さは、少なくとも12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上である。また、本発明のポリヌクレオチドの長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さの観点から、通常1000ヌクレオチド以下、好ましくは100ヌクレオチド以下、より好ましくは50ヌクレオチド以下、更に好ましくは30ヌクレオチド以下である。

【0230】
該ポリヌクレオチドは、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列に加えて、任意の付加的配列を含んでいてもよい。

【0231】
また、該ポリヌクレオチドは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C、32P、33P等)、酵素(例:β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)などで標識されていてもよい。

【0232】
本明細書において、「プライマーによるSNPの特異的な増幅」とは、プライマーが配列番号5で表されるヌクレオチド配列からなるDNAの特定のSNPを含む領域をPCR増幅するが、ヒトゲノムDNA中の他の領域はPCR増幅しないことを意味する。

【0233】
上記(2)のプライマーには、SNP2を含むポリヌクレオチド(例えばゲノムDNA)を鋳型として、SNP2に向かって相補鎖合成を開始することができるプライマーが含まれる。該プライマーは、SNP2を含むポリヌクレオチドにおける、SNP2の3’側に複製開始点を与えるためのプライマーと表現することもできる。プライマーがハイブリダイズする領域とSNP2との間隔は任意である。両者の間隔は、SNPの塩基の解析手法に応じて、好適な長さを選択することができる。たとえば、DNAチップやダイレクトシークエンシングによる解析のためのプライマーであれば、SNP2を含む領域として、通常25~500、例えば50~200ヌクレオチドの長さの増幅産物が得られるようにプライマーをデザインすることができる。当業者においては、SNP2を含む周辺DNA領域についてのヌクレオチド配列情報を基に、解析手法に応じたプライマーをデザインすることができる。上記(3)のプライマーを構成するヌクレオチド配列は、配列番号5に記載のヌクレオチド配列の部分配列又はその相補配列に対して完全に相補的なヌクレオチド配列のみならず、適宜改変することができる。

【0234】
上記(2)のプライマーは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよいが、好ましくは一本鎖である。

【0235】
上記(2)のプライマーが配列番号1に記載のヌクレオチド配列又はその相補配列からなる核酸にハイブリダイズし得る領域の長さは、12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上(例えば、25ヌクレオチド以上)である。また、該部分配列またはその相補配列の長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さの観点から、該長さは、通常100ヌクレオチド以下、好ましくは50ヌクレオチド以下、より好ましくは30ヌクレオチド以下である。

【0236】
上記(2)のプライマーの長さは、少なくとも12ヌクレオチド以上、好ましくは15ヌクレオチド以上、より好ましくは18ヌクレオチド以上、更に好ましくは20ヌクレオチド以上である。また、本発明のポリヌクレオチドの長さの上限は特に限定されないが、合成の容易さの観点から、該長さは、通常100ヌクレオチド以下、好ましくは50ヌクレオチド以下、より好ましくは30ヌクレオチド以下である。

【0237】
上記(2)のプライマーは、配列番号5で表されるヌクレオチド配列の連続した部分配列又はその相補配列に加えて、任意の付加的配列を含んでいてもよい。

【0238】
また、該プライマーは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C、32P、33P等)、酵素(例:β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)などで標識されていてもよい。

【0239】
本発明の診断剤には、SNPの検出方法に応じて、各種の酵素、酵素基質、および緩衝液などを組み合わせることができる。酵素としては、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、あるいは制限酵素などの、上記のSNPの検出方法として例示した各種の解析方法に必要な酵素を示すことができる。緩衝液は、これらの解析に用いる酵素の活性の維持に好適な緩衝液が、適宜選択される。更に、酵素基質としては、例えば、相補鎖合成用の基質等が用いられる。

【0240】
本発明の診断剤を用いると、本発明の判定方法により、容易に虚血性心疾患の発症リスクを判定することが出来る。

【0241】
10.一卵性双生児の分娩可能性の発症リスクの判定方法
本発明は、配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)を検出することを含む、一卵性双生児の分娩可能性の判定方法を提供する。

【0242】
一実施形態では、本発明の判定方法は、以下の工程(a)、(b)を含む:
(a)動物から採取した生体試料について、配列番号5で表されるヌクレオチド配列におけるSNP2を検出する工程;
(b)検出したSNPのタイプに基づき一卵性双生児の分娩可能性を評価する工程。

【0243】
上記方法の工程(a)では、動物から採取された生体試料においてSNP2を検出し、そのSNPのタイプを測定する。動物としては、上述の哺乳動物が好ましく、ヒトが特に好ましい。ヒトの人種は、特に限定されないが、好ましくは東アジア人(イーストアジアン/モンゴロイド)である。

【0244】
東アジア人とは、日本、朝鮮、中国、台湾及びモンゴルの人々のいずれかを起源に持つ人という意味である。東アジア人は、好ましくは、日本人、朝鮮人、又は中国人である。

【0245】
当業者であれば、個人の身体的特徴、出身国、先祖の起源に関する情報等に基づいてその個人の人種を容易に特定することが可能である。

【0246】
上記方法の工程(a)において用いられる生体試料としては、ゲノムDNAを採取可能な任意の組織、細胞、体液等を使用することができるが、入手の容易性及び低侵襲性等の観点から、毛髪、爪、皮膚、粘膜、血液、血漿、血清、唾液などが好ましく用いられる。

【0247】
SNPの検出方法は、当該技術分野において周知である。例えば、RFLP(制限酵素切断断片長多型)法、PCR-SSCP(一本鎖DNA高次構造多型解析)法、ASO(Allele Specific Oligonucleotide)ハイブリダイゼーション法、シークエンス法、ARMS(Amplification Refracting Mutation System)法、変性濃度勾配ゲル電気泳動(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)法、RNAseA切断法、DOL(Dye-labeled Oligonucleotide Ligation)法、TaqMan PCR法、primer extension法、インベーダー法などが使用できる。

【0248】
後述の実施例に示すように、上述の新規SNP2について、一卵性双生児の分娩頻度との関連解析を行った結果、SNP2のマイナーアレルを保持しているヒト(女性)が一卵性双生児を分娩する頻度は、一般的に報告されている頻度よりも有意に高かった。

【0249】
これらの結果に基づけば、SNP2において、マイナーアレル(アデニン)が少なくとも一方のアレルについて検出された場合には、該マイナーアレルが検出されない場合と比較して、一卵性双生児を分娩する頻度が、相対的に高いと判定することが出来る。

【0250】
DNAは通常、互いに相補的な二本の鎖からなる二重らせん構造を有している。従って、本明細書において、便宜的に一方の鎖におけるDNA配列を示した場合であっても、当然の如く、該配列(塩基)に相補的な配列(100%の相補性)も開示したものと解釈される。当業者にとって、一方のDNA配列(塩基)が判れば、該配列(塩基)に相補的な配列(塩基)は自明である。従って、配列番号:5に記載のヌクレオチド配列の73097位の部位に対応する該配列の相補鎖上の部位について、塩基種がT(チミン)である場合も、被検者は一卵性双生児を分娩する頻度が、相対的に高いと判定することが出来る。

【0251】
尚、当業者は、本明細書に開示されたヌクレオチド配列(例えば配列番号5で表されるヌクレオチド配列)およびSNPに関する情報を用いれば、配列表に開示されたヌクレオチド配列(配列番号5で表されたヌクレオチド配列またはその連続した部分配列、あるいはそれらの相補配列)と被検者の第17番染色体DNA上の対応部位のヌクレオチド配列との間に若干の相違(欠失、置換、付加、繰り返し配列の個数の増減等)が認められた場合であっても、配列番号5で表されたヌクレオチド配列と被検者由来のヌクレオチド配列とのアライメントを行うことにより、被検者由来のヌクレオチド配列においてどの塩基がSNP2に相当するか正確に特定し、SNP2を検出することが可能である。このような場合も「配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)を検出すること」に包含される。

【0252】
本発明の方法においては、SNP2におけるアデニンが、少なくとも一方のアレルにおいて検出されれば、該マイナーアレルが検出されない場合と比較して、一卵性双生児の分娩可能性が、相対的に高いと判定することが出来る。即ち、本発明の方法においては、被検者の第17番染色体の少なくとも一方についてSNP2を検出すればよい。

【0253】
尚、上述のように、SNP2の変異は、ヒトミステリンの第4810番のアミノ酸置換(アルギニン→リジン)を伴うので、対象者から、ミステリンポリペプチドを単離し、その第4810番のアミノ酸を同定することによっても、一卵性双生児の分娩可能性を判定することが出来る。ミステリンポリペプチドの単離は、抗体カラムクロマトグラフィー等の生化学分野において周知の方法を用いることにより実施することが出来る。また、第4810番のアミノ酸の同定は、ペプチドシークエンサーや、マススペクトル等の生化学分野において周知の方法を用いることにより実施することが出来る。SNP2のメジャーアレルはヒトミステリンポリペプチドの第4810番アミノ酸としてアルギニンを与え、SNP2のマイナーアレルはヒトミステリンポリペプチドの第4810番アミノ酸としてリジンを与える。従って、第4810番のアミノ酸を同定した結果、リジンが検出された場合は、リジンが検出されない場合(即ちアルギニンのみが検出された場合)と比較して、一卵性双生児の分娩可能性が相対的に高いと判定することが出来る。

【0254】
本発明はまた、SNP2を検出するための試薬を含む、一卵性双生児の分娩可能性の診断剤を提供する。

【0255】
SNP2を検出するための試薬としては、
(1)配列番号5で表されるヌクレオチド配列における73097 G>A(SNP2)を特異的に検出し得る核酸プローブ、又は
(2)SNP2を含む領域を特異的に増幅し得るプライマー
等を挙げることが出来る。

【0256】
(1)のプローブおよび、(2)のプライマーの定義は、9.の項と同一である。

【0257】
本発明の診断剤には、SNPの検出方法に応じて、各種の酵素、酵素基質、および緩衝液などを組み合わせることができる。酵素としては、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、あるいは制限酵素などの、上記のSNPの検出方法として例示した各種の解析方法に必要な酵素を示すことができる。緩衝液は、これらの解析に用いる酵素の活性の維持に好適な緩衝液が、適宜選択される。更に、酵素基質としては、例えば、相補鎖合成用の基質等が用いられる。

【0258】
本発明の診断剤を用いると、本発明の判定方法により、容易に一卵性双生児の分娩可能性を判定することが出来る。

【0259】
本明細書中で挙げられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。

【0260】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0261】
実施例1:新規SNPsの同定及びモヤモヤ病患者における各SNPsのアレル頻度の解析
調査集団
本試験は、京都大学医学部の倫理委員会により承認されたものであり、全ての対象から書面によるインフォームドコンセントを取得した。本試験においては2つのタイプのモヤモヤ病症例参加者が登録された。第1のタイプは、血縁者に1人以上のモヤモヤ病症例が明確に存在するために、本研究へ参加するために選択された家系単位の参加者である。31人の日本人及び3人の韓国人を含む34人のモヤモヤ病家系発端者が本試験に登録された。診断の検証のため、血管病に属する病歴及び危険因子を発端者とその家系メンバーから収集した。京都大学病院又は他の協力病院へ入院した創始者家系のメンバーをリクルートした。患者の同意のもと、試料及び臨床データを採取し、非識別化し、蓄積した。第2のタイプは、家族歴が不明のモヤモヤ病の患者であり、同疾患に罹患した血縁者の存在が不明の症例として個人で本試験に参加した者であり、個人症例として分類された。これらの症例を、京都大学(n = 86)、韓国のソウル国立大学(n = 38)、中国の首都医科大学(n = 10)からリクルートした。対照として、384人の日本人、294人の韓国人、150人の中国人をリクルートした。核磁気共鳴血管撮影(MRA)スクリーニングを、全ての日本人対照について行ったが、韓国人については一部、中国人の対照については行わなかった。家系の創始者又は単発性の参加者についてのモヤモヤ病の診断は、もっぱら日本の診断基準である、いわゆるRCMJ(厚生労働省のモヤモヤ病の検討委員会、日本)診断基準に基づき行った(Clin Neurol Neurosurg, vol. 99, Suppl 2, pages S238-240, 1997)。
【実施例】
【0262】
連鎖解析及びハプロタイプの推定
全部で17のモヤモヤ病家系について、17q25.3のゲノタイプを解析した。ゲノタイピング、マッピング及びハプロタイプ推定を以前記載したように実施した(Neurology vol70: 2357-2363,2008)。端的にいうと、ゲノムDNAを、QIAamp DNA Blood Mini Kit (Qiagen GmbH, Hilden, Germany)を用いて、患者の血液試料から抽出した。17q25-qter連鎖領域について、5.1-Mbの間隔で、全部で13個のマーカー(D17S2195, D17S1847, D17S1806, D17S784, rs2071148, 125 rs2280147, rs2293099, D17S704, D17S668, D17S928, rs2291395, rs2279395 及び 126 rs2292971)についてゲノタイプした(Neurology vol70: 2357-2363,2008)。マーカーの位置は、NCBI Map Viewer (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/mapview/)から取得した。末梢血から抽出したゲノムDNAを蛍光でラベルをしたマーカーと共にPCRにより増幅し、PCR産物をABI Prism 3100 Avant Genetic Analyzer (Applied Biosystems, Foster City, CA)及びGenescanプログラムを用いて解析した。詳細なマッピングマーカーは、NCBI Map Viewer (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/mapview/)からの物理位置情報に従い、デザインした。連鎖解析は、常染色体優性遺伝モデルを仮定した多点パラメトリック連鎖法を用いて行った(J Neurol Neurosurg Psychiatry, vo. 77, pages 1025-1029, 2006及びNeurology vol70: 2357-2363,2008)。以前に報告したように、必然的キャリアーは、発症した者として処理した(Neurology vol70: 2357-2363,2008)。当該家系において、非発症の個人の表現型は、「不明」とし、「非血縁」の配偶者は、「非発症」とした。100,000人あたり6.03人という観察された罹患率に基づけば(Stroke, vol. 39, pages 42-47, 2008)、疾患アレル頻度は、0.00003015に設定されるべきであるが、無症状であっても、磁気共鳴画像(MRI)及びMRAによりモヤモヤ病であると診断された患者の数が近年増加していることに鑑み、そのアレル頻度を、連鎖解析でLOD score を低めに算出する点から、より厳格と考えられる0.0001に設定した(J Clin Neurosci, vol. 13, pages 334-338, 2006;)。表現型模写頻度を0.00001と仮定した。各マイクロサテライトマーカーのアレル頻度は、全ての非血縁配偶者から、Merlinソフトウェアを用いて見積もった(Nat Genet, vol. 30, pages 97-101, 2002)。解析は、GENEHUNTER version 2.0 (http://www.broad.mit.edu/ftp/distribution/software/genehunter/)を用いて実施した(Am J Hum Genet, vol. 58, pages 1347-1363, 1996)。
家系20の個人132は、rs2280147とrs2293099との間での組換えを有していたので、更なる追加的なマーカー、即ち、rs71166116 (CHMP6), rs9896314 (AZI1), rs62075318 (AZI1) 及び P1026P (BAHCC1)により、3’隣接領域を決定した。家系20のハプロタイプは、4つのマーカーのアレル頻度を0.50に設定し、GENEHUNTER(Am J Hum Genet, vol. 58, pages 1347-1363, 1996)を用いて構築した。
【実施例】
【0263】
ダイレクトシークエンシング
KIAA1618、C17orf27(RNF213)、FLJ3520、NPTX1、CARD14、Raptor (KIAA1303)、AATK及びBAHCC1の、全てのコーディングエクソン、イントロン-エクソン境界、仮想的なプロモーター配列及び3’-UTRsを、4人の発症した個人(系統1、2、14及び15における個人12、1411、112及び12)についてのダイレクトシークエンシングにより解析した。コーディングエクソンのためのプライマーは、イントロン-エクソン境界から100ベースペア(bp)より離れたイントロン配列からデザインし、PROLIGO Primers & Probes (Kyoto, Japan; http://www.proligo.com)により商業的に合成した(Neurology vol70: 2357-2363,2008)。Raptorについては、第1エクソンの約2kbp上流の制御領域についてシークエンスした。PCR増幅及び精製の後に、ABI Prism 3100 Avant DNA Sequencer (Applied Biosystems)を用いてシークエンシングを実施した。我々は、Single Nucleotide Polymorphism database (dbSNP)を参考としてチェックした(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/index.html)。
【実施例】
【0264】
シークエンスをした4人の家系性で発症した個人において5つの変異(SNPs)が同定された(表1)。
【実施例】
【0265】
【表1】
JP0005854423B2_000002t.gif

【実施例】
【0266】
上記5つのSNPsのアレルを、全ての参加者について決定した。結果を表2~10に示す。
【実施例】
【0267】
【表2】
JP0005854423B2_000003t.gif

【実施例】
【0268】
【表3】
JP0005854423B2_000004t.gif

【実施例】
【0269】
【表4】
JP0005854423B2_000005t.gif

【実施例】
【0270】
【表5】
JP0005854423B2_000006t.gif

【実施例】
【0271】
【表6】
JP0005854423B2_000007t.gif

【実施例】
【0272】
【表7】
JP0005854423B2_000008t.gif

【実施例】
【0273】
【表8】
JP0005854423B2_000009t.gif

【実施例】
【0274】
【表9】
JP0005854423B2_000010t.gif

【実施例】
【0275】
【表10】
JP0005854423B2_000011t.gif

【実施例】
【0276】
上述の表に示すように、SNP1~SNP5のマイナーアレルの頻度は、非家族性のモヤモヤ病患者において約52%以上であり、家族性のモヤモヤ病患者において約79%以上と極めて高かった。特に、SNP2については、家族性のモヤモヤ病患者の全てがマイナーアレルを保有していた。これに対して、対照群においては、SNP1~SNP5のマイナーアレルの頻度は、2%前後に留まっていた。従って、SNP1~SNP5を決定することにより、モヤモヤ病の発症リスクを判定することが可能であることが示された。また、SNP2のマイナーアレルは、アジア人におけるモヤモヤ病の創始者変異である可能性が示唆された。各SNPsのオッズ比を表11にまとめる。
【実施例】
【0277】
【表11】
JP0005854423B2_000012t.gif

【実施例】
【0278】
実施例2:ミステリンのクローニング及び機能解析
(ミステリンのクローニング)
SNP2が位置する予測遺伝子C17orf27及びSNP1が位置する予測遺伝子KIAA1618のクローニングを行った。
Human Embryonic Kidney 293 細胞株から回収したmRNAから、逆転写により6つのcDNAフラグメントを得た。それらを内在性の制限酵素切断サイトを利用して結合し、全長cDNAを得た。
【実施例】
【0279】
KIAA1618及びC17orf27は、独立した2つの遺伝子としてNCBIのインターネットホームページ上に開示されているが(アクセッション番号:NP_066005.2及びNP_065965.3)、驚くべきことに、C17orf27及びKIAA1618はそれぞれ完全な構造遺伝子ではなく、C17orf27とKIAA1618とが1つにつながって、約5000アミノ酸からなる巨大なタンパク質をコードする1つの構造遺伝子を構成していることが明らかとなった(図1)。この新規遺伝子をミステリン(Mysterin)と命名した。ヒトミステリンのcDNA配列を配列番号1に、アミノ酸配列を配列番号2にそれぞれ示す。
【実施例】
【0280】
(ミステリンのエクソン構造)
NCBIが開示しているKIAA1618及びC17orf27のエクソン構造と、今回同定されたミステリンのエクソン構造を比較した(表12)。KIAA1618のエクソン4及びC17orf27のエクソン13及び27が、ミステリンにおいてはスキップされていることが判明した。また、ストップコドンが存在すると考えられていたKIAA1618のエクソン18と、C17orf27のエクソン1との間に、8つのエクソンが存在することが明らかとなった。
【実施例】
【0281】
【表12】
JP0005854423B2_000013t.gif

【実施例】
【0282】
(ミステリンの発現)
C末端にMycエピトープを融合した全長ヒトミステリンタンパク質を、発現ベクターを用いてHEK293細胞に発現させた。推定550kDaの位置に発現がみられ、また、それらは細胞融解後、可溶性画分に回収された(図2)。
【実施例】
【0283】
(ミステリンの細胞内分布)
HAエピトープを融合した全長ヒトミステリンを、発現ベクターを用いてHela細胞株に発現させ、抗HA抗体を用いて細胞染色を行った。対照に用いたGFPは核を含む細胞質に一様に局在しているのに対してミステリンは主として細胞質ゾルに局在していた(図3)。
【実施例】
【0284】
(ミステリンのユビキチンリガーゼ活性)
HAエピトープを融合した全長ヒトミステリン、あるいはRINGフィンガードメイン欠損ヒトミステリンおよび、Mycエピトープを融合したユビキチンを発現ベクターを用いてHEK293細胞株に共発現させ、抗HA抗体を用いて免疫沈降を行ったのち、抗Myc抗体を用いてウエスタンブロットを行った。自己ユビキチン化されたミステリンのシグナルがRINGフィンガードメイン依存的に検出されたことから、ミステリンがユビキチンリガーゼ活性を持つことが分かった(図4)。
【実施例】
【0285】
(ミステリンのATPase活性)
ヒトミステリンのアミノ酸配列について、BLASTプログラムを用いたホモロジー解析を行った。その結果、第2415-2436アミノ酸および第2481-2494アミノ酸の領域がそれぞれ、既知のモチーフであるWalker AおよびWalker Bモチーフと強い相同性を示した(図5)。これらのモチーフは、ダイニン、プロテアソーム、p97、FtsHなどにおいて保存されたモチーフで、それぞれNTP結合モチーフ、二価陽イオン結合モチーフであり、この二つのモチーフが共役してATPase活性をもつことが知られている。このことから、ミステリンがATPase活性をもつことが予想された。
【実施例】
【0286】
そこで、ヒトミステリンに含まれるこれらのモチーフを含む領域(第2359-2613アミノ酸)のN末端にGSTタグを融合させたタンパク質を大腸菌で発現させ、グルタチオンセファロースを用いて精製し、この融合タンパク質のATPase活性を計測した。融合タンパク質を、図6に示す最終濃度で、マグネシウムイオンおよび最終濃度5mMのATPと混合し、30分間インキュベートし、最終濃度1%のPCAと混合して反応をとめたのち、マラカイトグリーンと30分間インキュベートした。遊離リン酸とマラカイトグリーンの結合による呈色を620nmの吸光で計測したところ、融合タンパク質濃度に依存的なATPの加水分解にともなうリン酸の遊離による呈色が観察された(図6)。従って、ミステリンは、細胞内でATPase活性をもち、何らかの細胞内機能を果たすことが強く示唆された。
【実施例】
【0287】
実施例3:ミステリン欠損ゼブラフィッシュの作成及びその解析
(ミステリン相補DNA断片の部位設定および作成)
ゼブラフィッシュ(Danio rerio)のミステリンオーソログ遺伝子は未同定であったので、ヒトミステリンのcDNA配列に基づき、ゼブラフィッシュのミステリン遺伝子を同定し、cDNAをクローニングした。その結果、2種類のミステリン1(zRNF213)およびミステリン2(zRNF213.1)が存在し、ミステリン1(zRNF213)が、ヒト相同の遺伝子と判明した。ゼブラフィッシュミステリン1のcDNA配列を配列番号3に、アミノ酸配列を配列番号4に、それぞれ示す。尚、配列番号3の第2538~10462位のヌクレオチド(配列番号4では第847~3487位のアミノ酸に相当)については、実際にクローニングを行い、実験的にヌクレオチド配列を決定した。残りの部分については、ゼブラフィッシュのゲノム配列を元にGENSCANにより遺伝子予測を行ったヌクレオチド配列を元に、アミノ酸予測を行った。同定された配列情報を元に、ミステリン遺伝子欠損体作成のための相補DNA断片(以下ミステリンアンチセンスモルフォリノ、以下ミステリンMOと略す)の配列を決定し、合成した。ミステリンMOのヌクレオチド配列を配列番号6及び7に示す。
zRNF213spMO1-A:ACTCGTTGATGTCTGAAGTGATAAA(配列番号6)
zRNF213spMO1-D:AGCTAGGAGAAAGTCCTACCAATTT(配列番号7)
【実施例】
【0288】
(ミステリンMOによるミステリン遺伝子の生体内操作)
ミステリンMOを受精卵に打ち込み、ゼブラフィッシュの発生初期に不完全なミステリンタンパク質を産生させることにより、生体内でミステリンが機能しない個体を作製した。詳細には、以下のようにして、ミステリン欠損ゼブラフィッシュを作成した。
【実施例】
【0289】
5ngのミステリン エクソンアクセプターサイトに対するミステリンMO及びドナーサイトに対するミステリンMOを、1から8細胞段階のゼブラフィッシュ胚に打ち込んだ。この時に使用したゼブラフィッシュ胚の遺伝的背景は、血管内皮細胞特異的にGFPを発現するライン、fli-EGFP(Tg(fli1:egfp))であり(Lawson ND and Weinstein BM, Developmental Biology 243:307-318 (2002))、このラインは血管イメージング分析用ツールとして有用である。
【実施例】
【0290】
ゼブラフィッシュの飼育は、明期14h、暗期10h、28℃という人工条件下で行った。飼育器が暗期に入る前にゼブラフィッシュの雄と雌を隔離し、翌朝、明期になった直後に逆に雄と雌を会わせることにより、交配を行った。受精から30分以内に卵を採集し、上述のアンチセンスモルフォリノを、一試験あたり60-180個の卵にインジェクションを行った。インジェクションを施した卵を、28℃の条件で、メチレンブルー及び0.03% 海水塩を含有する水中でインキュベートした。
【実施例】
【0291】
インジェクションの施された卵をメチレンブルー及び0.03% 海水塩を含有する水ですすぎ、内部温度28.5℃のインキュベーター内で培養した。培養72時間後の発生中の胚において蛍光を観察確認した。
【実施例】
【0292】
(ミステリンMOによるミステリン遺伝子のエクソンスキップの確認)
ミステリンMOをインジェクションした胚およびインジェクションしていない野性型胚より全RNAを抽出し、ABI社の逆転写酵素およびランダムプライマー(High capacity cDNA reverse transcription Kit)を用いて、cDNAを合成した。続いてPCR法により、該当エクソン周辺のcDNAを増幅した。具体的にはタカラ社のtaqポリメラーゼ(eX Tag)を用いて反応系を調整し、ニップンテクノクラスタ社のサーマルサイクラー(Palm-Cycler)を用いてPCR(35サイクル)を行うことにより、エクソンスキップの効果を検証した。その結果、野性型胚ではターゲット配列から予測された通りの長さのPCR産物が得られることが確認された(図7)。一方、ミステリンMOをインジェクションした胚では、エクソンがスキップしたと思われる短いPCR産物が得られる結果となった。それぞれのPCR産物を単離しシークエンスを決定したところ、ミステリンMOは実験デザイン通りに有効に機能していることが示された。
【実施例】
【0293】
(血管新生の観察)
蛍光実体顕微鏡、Leica MZ-16FA(ライカ マイクロシステムズ社)により、経時的にGFPの蛍光を観察した。その結果、野性型胚、ミステリンMOをインジェクションした胚ともに血管新生は生じた。一方、36hpf(hours post fertilization)あたりから、ミステリンMOをインジェクションした胚に発生の遅滞が起きていた。初期血管発生はほぼ正常に進行したものの、それに続く血管新生に異常が見られた(図8A及びB)。また、ミステリン発現抑制ゼブラフィッシュにおいては目の周辺に特徴的な異常血管新生が見られた。これらの表現型から、ミステリンは血管構築の形成に重要な機能を有することが示唆された。尾部および眼内における血管新生の異常は、対照(野性型)100個体を観察した中では全く認められなかったが、これに対して、実験群(ミステリンMO)では100匹中92匹にこの表現型が認められた。以上より、ミステリンは、血管構築に重要な機能を持つことが示唆された。
【実施例】
【0294】
実施例4:虚血性心疾患の発症リスクとSNP2との関連
1998年に厚生労働省により行われた国民基礎生活調査の頻度をもとに虚血性心疾患の有病率を年齢階層でもとめ、観察値と比較した。その結果一般的に虚血性心疾患のリスクが低いと想定される35-54歳の比較的若年の女性で、SNP2のマイナーアレル(創始者変異)を有するものでは虚血性心疾患の有病率が有意に高いことが見いだされた(表13)。
【実施例】
【0295】
【表13】
JP0005854423B2_000014t.gif

【実施例】
【0296】
実施例5:一卵性双生児の分娩可能性とSNP2との関連
SNP2のマイナーアレル(創始者変異)を有する家系では、264分娩中5例で一卵生双生児を認めた。日本における一卵性双生児の出生頻度はおおよそ1000分娩に対して4であると報告されているから(J Prev Soc Med, vol.30, pages 175-179, 1976;Int J Biometeorol, vol. 43, pages 91-95, 1999)、SNP2のマイナーアレルを有していると一卵性双生児の分娩可能性が高くなることが示された(オッズ比=約5、p<0.001)。
【実施例】
【0297】
実施例6:白人家系に見出されたモヤモヤ病に関連する新たなSNP
チェコ共和国の白人家系(CAU-Ped1、図11)とドイツの12の孤発例を対象に遺伝解析を行った。本家系の発端者(CAU_Ped1_12)は30歳時に軽度の虚血性脳卒中を発症しており、また彼の母は虚血性脳卒中により35歳時に死亡している。発端者は、2名の非血縁配偶者との間に4人の子孫をもうけた。第一の配偶者との第2子(CAU_Ped1_122)は5歳時にモヤモヤ病と診断された。第2の配偶者との第1子(CAU_Ped1_123)は9歳時に不随意運動ともなったモヤモヤ病を発症し、第2子(CAU_Ped1_124)は3歳時に虚血性脳卒中で発症しモヤモヤ病と診断された。モヤモヤ病の診断は磁気共鳴画像(MRI)にて行われ、発症者は全て日本のモヤモヤ病の診断基準を満たすことを確認した。遺伝形式から、典型的な常染色体優性遺伝形式に従うものと判断された。また我々はチェコ共和国のパラツキー大学、オロモウツ大学病院、ドイツのテュービンゲン大学、及びCoriell instituteより購入したCoriell Caucasian Panelより314人を白人対照群として解析を行った。対照群の平均年齢は31.8±14.0歳、男女比は129:185であり、MRIスクリーニングは未施行である。
【実施例】
【0298】
発端者である父の血液からゲノムDNAを抽出し、SLC26A11、KIAA1618、LOC100287062、C17orf27、FLJ35220、LOC728991及びNPTX1の7つの遺伝子の全コード領域についてダイレクトシークエンスを行い、165個のvariant(登録済み:133個、未登録:32個)を認めた。それらのvariantのうちコード領域に存在する未登録variantはC17orf27上の1つ (配列番号5の55977位G>A;ヒトミステリンの第4013番のアミノ酸置換(アスパラギン酸→アスパラギン)(D4013N))のみであった。このvariantはモヤモヤ病に罹患している三人の子供に遺伝していた(図11)。
【実施例】
【0299】
ドイツの孤発例でも同様に解析したところ、C17orf27上に以下の2つのvariantを得た:
配列番号5の55712位A>G;ヒトミステリンの第3962番のアミノ酸置換(アスパラギン→アスパラギン酸)(N3962D);及び
配列番号5の57483位G>A;ヒトミステリンの第4062番のアミノ酸置換(アルギニン→グルタミン)(R4062Q)。
【実施例】
【0300】
更に、314人の白人対照者について制限酵素HpyCH4V、HinfIとMspIを用いたRFLP法によるスクリーニングを行ったがD4013N、N3962D、R4062Qアリルは見出されず、白人集団でのアリル頻度は1%以下であり、突然変異と考えられた。以上より、D4013Nアリルが本家系モヤモヤ病の原因となる突然変異であると結論づけた。D4013Nは、RINGフィンガードメインに位置しているが、生化学的な分析では、ユビキチンリガーゼ活性に影響を与えなかった。
【産業上の利用可能性】
【0301】
本発明により、新規遺伝子ミステリンのポリペプチドや該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、発現ベクター、ミステリンの機能的欠損を含む動物等が提供される。ヒトゲノム遺伝子配列の網羅的な解析から、ミステリンの遺伝子座には、C17orf27及びKIAA1618の2つの独立した構造遺伝子の存在が予測されていたが、C17orf27及びKIAA1618はそれぞれ完全な構造遺伝子ではなく、C17orf27とKIAA1618とが1つにつながってミステリン遺伝子座を構成していることが明らかとなった。
ミステリン遺伝子のノックダウンゼブラフィッシュの解析等から、ミステリンは血管新生を調節する機能を有することが明らかとなった。従って、ミステリンの発現や機能を調節する物質をスクリーニングすることにより、新規機序に立脚した血管新生調節剤の候補物質を得ることが出来る。
また、本発明により、ミステリン遺伝子座またはその近傍に存在する新たなSNPsが提供される。該SNPsはモヤモヤ病、虚血性心疾患、一卵性双生児の分娩頻度と相関することから、このSNPsを解析することにより、モヤモヤ病や虚血性心疾患の発症リスクや、一卵性双生児の分娩可能性を判定することが可能である。
本出願は日本で出願された特願2009-244938(出願日:2009年10月23日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
図面
【図1】
0
【図9-1】
1
【図9-2】
2
【図10】
3
【図11】
4
【図2】
5
【図3】
6
【図4】
7
【図5】
8
【図6】
9
【図7】
10
【図8】
11