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明細書 :微細構造体の作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5458241号 (P5458241)
登録日 平成26年1月24日(2014.1.24)
発行日 平成26年4月2日(2014.4.2)
発明の名称または考案の名称 微細構造体の作製方法
国際特許分類 G03F   7/20        (2006.01)
FI G03F 7/20 501
請求項の数または発明の数 4
全頁数 18
出願番号 特願2011-536166 (P2011-536166)
出願日 平成22年10月14日(2010.10.14)
国際出願番号 PCT/JP2010/068047
国際公開番号 WO2011/046169
国際公開日 平成23年4月21日(2011.4.21)
優先権出願番号 2009237709
優先日 平成21年10月14日(2009.10.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年10月4日(2013.10.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 孝明
【氏名】小寺 秀俊
【氏名】神野 伊策
【氏名】平丸 大介
個別代理人の代理人 【識別番号】100114502、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 俊則
審査官 【審査官】佐野 浩樹
参考文献・文献 国際公開第2009/044901(WO,A1)
特開平06-176408(JP,A)
特開平10-305670(JP,A)
特開2008-129558(JP,A)
特表2007-501951(JP,A)
国際公開第2006/098430(WO,A1)
特開平09-283434(JP,A)
特表平06-509530(JP,A)
Manhee Han, Woonseob Lee, Sung-Keun Lee, Seung S. Lee,3D microfabrication with inclined/rotated UV lithography,SENSORS AND ACTUATORS A,米国,ELSEVIER,2004年 3月 1日,Vol.111, issue 1,14-20
花井 計,中原 崇,鈴木 慎也,松本 佳宣,傾斜回転露光法による三次元加工法,電気学会論文誌 E,日本,社団法人 電気学会,2006年 6月 1日,Vol.126, No.6,222-227
調査した分野 B23Q27/00
B81B1/00-7/04
B81C1/00-99/00
B82Y5/00-99/00
G01N33/48-37/00
G03F7/20-7/24
9/00-9/02
H01L21/027
21/30
特許請求の範囲 【請求項1】
未露光の感光性樹脂に沿って、光が透過する透過量が相対的に大きい透光部と光が透過する透過量が相対的に小さい遮光部とを含む第1のマスクパターンを配置するとともに、前記第1のマスクパターンに関して前記感光性樹脂とは反対側に、光が透過する透過量が相対的に大きい透光部と光が透過する透過量が相対的に小さい遮光部とを含む第2のマスクパターンを配置する第1の工程と、
前記感光性樹脂及び前記第1のマスクパターンを貫通する中心軸を回転中心として、前記感光性樹脂及び前記第1のマスクパターンを一体回転させながら、前記第2のマスクパターンに関して前記感光性樹脂及び前記第1のマスクパターンとは反対側で、前記中心軸の方向に対して傾斜した方向から露光光を照射することにより、前記第2のマスクパターンと前記第1のマスクパターンとを透過した前記露光光の光束を、前記感光性樹脂に露光する第2の工程と、
を備えたことを特徴とする、微細構造体の作製方法。
【請求項2】
前記感光性樹脂及び前記第1のマスクパターンは互いに接し、かつ前記感光性樹脂及び前記第1のマスクパターンの界面が前記中心軸に垂直な平面であり、
前記第2の工程において、前記第2のマスクパターンは、前記第1のマスクパターンと平行に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の微細構造体の作製方法。
【請求項3】
前記第2のマスクパターンの前記透光部は、前記中心軸を中心とする円の径方向に延在する一対の線分の間に連続して形成された扇状の形状を有する扇状透光部を含むことを特徴とする、請求項2に記載の微細構造体の作製方法。
【請求項4】
前記感光性樹脂は、光硬化性樹脂であり、
前記第1のマスクパターンの前記透光部は、前記中心軸と同心に、かつ前記中心軸を中心とする円の周方向に間隔を設けて配置された複数の微小な第1透光部を含み、
前記第2のマスクパターンの前記透光部は、前記中心軸を含みかつ前記露光光の方向と平行な仮想平面に直交し、かつ前記中心軸と前記第2のマスクパターンとが交わる中心点を通る仮想線上の前記仮想平面に関して両側に形成された一対の第2透過部を含み、
前記第2の工程において、前記第2透光部と前記第1透光部とを通過した前記露光光の光束によって、前記光硬化性樹脂は、前記中心軸と同心に延在する網目状に露光されることを特徴とする、請求項2に記載の微細構造体の作製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造体の作製方法に関し、詳しくは、マスクパターンを介して感光性樹脂に露光することにより、微小な3次元立体形状を有する微細構造体を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクパターンと光硬化性樹脂とを用いて、微小な3次元立体形状を形成する手法が種々提案されている。
【0003】
例えば図18に示すように、マスクパターン222が形成された透明なマスク板221上の光硬化性樹脂223に、矢印224a,224bで示すように異なる方向から露光し、光硬化性樹脂223の未露光部分224kを除去することによって立体形状を形成する、傾斜露光法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、図19の説明図に示すように露光方向に対して中心軸を傾斜させた回転ステージ上に光硬化性樹脂(SU-8)とマスク板とを載置して露光を行う回転傾斜露光法により、図20の写真に示すように格子状に配列され林立する微細構造体を三次元加工した試作例が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。回転傾斜露光法で用いるマスクパターンを工夫すると、ノズル形状や3次元分岐する流路構造などを形成することができる(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
その他の方法として、特殊な光源を移動させながら立体形状を描く直接描画法や、多数のマスクを用いた多段露光法を組み合わせる方法などが提案されている。
【0006】
傾斜露光法や回転傾斜露光法は、一度の露光で作製でき、工程が少なく、大がかりな設備も不要であり、他の方法と比べ、微細構造体を低コストで製造できる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】国際公開第2006/098430号公報
【特許文献2】国際公開第2009/044901号公報
【0008】

【非特許文献1】花井計、中原崇、鈴木慎也、松本佳宜、「傾斜回転露光法による三次元加工法」、電気学会論文誌E、126巻、6号、p.222—227
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、傾斜露光法や回転傾斜露光法により形成できる微細構造体は、比較的簡単な立体形状に限られており、構造の自由度が低い。そのため、複雑な立体形状の微細構造体を形成したい場合には、露光を繰り返して簡単な立体形状を重ね合わせるように形成する必要があり、少ない工程で形成することができない。
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑み、複雑な立体形状の微細構造体を少ない工程で形成することができる微細構造体の作製方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した微細構造体の作製方法を提供する。
【0012】
微細構造体の作製方法は、(i)未露光の感光性樹脂に沿って、光が透過する透過量が相対的に大きい透光部と光が透過する透過量が相対的に小さい遮光部とを含む第1のマスクパターンを配置するとともに、前記第1のマスクパターンに関して前記感光性樹脂とは反対側に、光が透過する透過量が相対的に大きい透光部と光が透過する透過量が相対的に小さい遮光部とを含む第2のマスクパターンを配置する第1の工程と、(ii)前記感光性樹脂及び前記第1のマスクパターンを貫通する中心軸を回転中心として、前記感光性樹脂及び前記第1のマスクパターンを一体回転させながら、前記第2のマスクパターンに関して前記感光性樹脂及び前記第1のマスクパターンとは反対側で、前記中心軸の方向に対して傾斜した方向から露光光を照射することにより、前記第2のマスクパターンと前記第1のマスクパターンとを透過した前記露光光の光束を、前記感光性樹脂に露光する第2の工程とを備える。
【0013】
上記方法は、第1のマスクパターン及び感光性樹脂を、露光光に対して傾けた状態で回転しながら、露光することで実現される。第2の工程で露光された感光性樹脂を現像することによって、微細構造体を作製することができる。例えば感光性樹脂がネガレジストの場合、露光量(吸光量)が閾値に達しない未露光部分が現像によって除去され、露光部分により微細構造体が形成される。感光性樹脂がポジレジストの場合、露光部分が現像によって除去され、未露光部分により微細構造体が形成される。
【0014】
上記方法によれば、第1のマスクパターンの透光部及び遮光部と、第2のマスクパターンの透光部及び遮光部との組み合わせや、第1のマスクパターンの回転状態によって、感光性樹脂内の所望位置に所望方向から光束を照射することができるので、複雑な立体形状の微細構造体を作製することができる。また、一度の工程で、複雑な立体形状の微細構造体を作製することができる。
【0015】
好ましくは、前記感光性樹脂及び前記第1のマスクパターンは互いに接し、かつ前記感光性樹脂及び前記第1のマスクパターンの界面が前記中心軸に垂直な平面である。前記第2の工程において、前記第2のマスクパターンは、前記第1のマスクパターンと平行に配置されている。
【0016】
この場合、屈折、反射、光の回り込などの影響を抑えることができ、第1のマスクパターン及び第2のマスクパターンの設計や位置調整が容易になるため、微細構造体をより精密に作製することができる。
【0017】
好ましくは、前記第2のマスクパターンの前記透光部は、前記中心軸を中心とする円の径方向に延在する一対の線分の間に連続して形成された扇状の形状を有する扇状透光部を含む。
【0018】
この場合、第2のマスクパターンの透光部の一対の線分は、第2のマスクパターンの扇状透光部を透過した露光光の光束が、回転する第1のマスクパターンの透光部を透過して感光性樹脂の露光を開始又は終了する位置になる。第1のマスクパターンの回転速度が一定の場合、感光性樹脂に露光する露光時間は、第2のマスクパターンの透光部の一対の線分がなす角度に比例する。そのため、第1及び第2のマスクパターンの設計や、露光量の制御が容易になる。
【0019】
好ましい一態様において、前記感光性樹脂は、光硬化性樹脂である。前記第1のマスクパターンの前記透光部は、前記中心軸と同心に、かつ前記中心軸を中心とする円の周方向に間隔を設けて配置された複数の微小な第1透光部を含む。前記第2のマスクパターンの前記透光部は、前記中心軸を含みかつ前記露光光の方向と平行な仮想平面に直交し、かつ前記中心軸と前記第2のマスクパターンとが交わる中心点を通る仮想線上の前記仮想平面に関して両側に形成された一対の第2透過部を含む。前記第2の工程において、前記第2透光部と前記第1透光部とを通過した前記露光光の光束によって、前記光硬化性樹脂は、前記中心軸と同心に延在する網目状に露光される。
【0020】
この場合、中心軸と同心に延在する網目状の構造を有する微細構造体を、容易に作製することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複雑な立体形状の微細構造体を少ない工程で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】露光装置の構成を模式的に示す概略図である。(実施例1)
【図2】露光装置の構成を模式的に示す斜視図である。(実施例1)
【図3】(a)固定マスク板の断面図、(b)回転マスク板等が固定された回転テーブルの要部断面図である。(実施例1)
【図4】マスクパターンの概略図図である。(実施例2)
【図5】マスクパターンの概略図図である。(実施例3)
【図6】微細構造体を模式的に示す斜視図である。(実施例2、3)
【図7】微細構造体のシミュレーション図である。(実施例2、3)
【図8】マスクパターンを示す概略図である。(実施例4)
【図9】微細構造体の要部斜視図である。(実施例4)
【図10】回転マスクパターンのSEM像の写真である(実施例4)
【図11】作製したデバイスのSEM像の写真である(実施例4)
【図12】作製したデバイスのSEM像の写真である(実施例4)
【図13】作製したデバイスのSEM像の写真である(実施例4)
【図14】露光量と断面長さの関係を示すグラフである(実施例4)
【図15】染色体伸長固定後の蛍光像の写真である(実施例4)
【図16】マスクパターンの概略略図である。(変形例)
【図17】微細構造体のシミュレーション図である。(変形例)
【図18】傾斜露光法の説明図である。(従来例1)
【図19】回転傾斜露光法の説明図である。(従来例2)
【図20】回転傾斜露光法による作製例の写真である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図1~図17を参照しながら説明する。

【0024】
<実施例1> 微細構造体を作製するために用いる露光装置10について、図1~図3を参照しながら説明する。

【0025】
図1は、露光装置10の構成を示す概略図である。図2(a)及び(b)は、露光装置10の構成を示す斜視図である。図2(a)は、固定マスク取付板30が取り外された状態を示す。図2(b)は、固定マスク取付板30が取り付けられた状態を示す。図3(a)は、固定マスク板31の断面図である。図3(b)は、回転マスク板21等が固定される回転テーブル20の要部断面図である。

【0026】
図1及び図2に示すように、露光装置10は、基台2に固定される固定ユニット12と、固定ユニット12に固定される傾斜ユニット14とを備えている。

【0027】
傾斜ユニット14は、固定ユニット12に固定される本体部14tに、モータ18により回転駆動される回転テーブル20が設けられている。回転テーブル20の上面20aは、回転テーブル20の中心軸Zに対して垂直になっている。傾斜ユニット14は、中心軸Zが矢印4で示す露光光の照射方向に対して角度θ傾いた状態で、固定ユニット12に固定される。

【0028】
図3(b)に示すように、回転テーブル20の上面20aには、回転マスク板21と支持基板40との間に感光性樹脂42が挟まれた状態で、固定される。

【0029】
回転マスク板21は、透明基板23の一方主面23bに、マスクパターン(以下、「回転マスクパターン」ともいう。)22が形成されている。マスクパターン22は、光の透過を遮断する遮光部と、光が透過する透光部(図示せず)とを含む。

【0030】
回転マスク板21及び支持基板40は互いに平行に配置され、それぞれ、中心軸Zに垂直に、回転テーブル20に固定される。回転マスク板21のマスクパターン22と感光性樹脂42との界面は、中心軸Zに垂直な平面になる。

【0031】
図3(b)において、マスクパターン22は感光性樹脂42に接している場合を示しているが、透明基板23の感光性樹脂42とは反対側の他方主面23aにマスクパターンを形成し、マスクパターンが感光性樹脂42に接しないようにしてもよい。両者を比べると、図3(b)のようにマスクパターンが感光性樹脂に接するようにした方が、露光時に透明基板の介在による屈折、反射、回析などの影響が少なくなり、より精密な微細構造体を作製することができるので、好ましい。

【0032】
図1及び図2に示すように、傾斜ユニット14には、固定マスク取付板30を固定するため、本体部14tの傾斜方向の両端に一対の側板14sが固定され、各側板14sの端面14aには取り付けポスト16が立設されている。固定マスク取付板30は、一対の側板14sの端面14a上に載置され、固定マスク取付板30の両端部に形成された貫通穴34に取り付けポスト16が挿通されて位置決めされた状態で、回転テーブル20及び回転マスク板21との間に間隔を設けて固定される。

【0033】
図2(b)に示すように、固定マスク取付板30には、固定マスク板31が取り付けられる。固定マスク板31は、図3(a)に示すように、透明基板33の一方主面33bに、マスクパターン(以下、「固定マスクパターン」ともいう。)32が形成されている。マスクパターン32は、光の透過を遮断する遮光部と、光が透過する透光部(図示せず)とを含む。

【0034】
固定マスク板31は、透明基板33の一方主面33b、すなわちマスクパターン32が、中心軸Zに垂直に配置される。固定マスク板31は、露光時に透明基板33の影響が小さくなるように、マスクパターン32が形成されている透明基板33の一方主面33bが回転テーブル20及び回転マスク板21側に配置され、マスクパターン32が形成されていない透明基板の他方主面33aが光源側に配置されるように固定することが好ましい。

【0035】
露光装置10は、図1において矢印4で示す方向の露光光が照射されるときに、図2において矢印28で示すように回転テーブル20が回転する。これにより、回転テーブル20上に支持基板40を介して配置された感光性樹脂42には、固定マスク板31のマスクパターン32の透光部を透過した後、回転テーブル20に固定された回転マスク板21のマスクパターン22の透光部を透過して露光光の光束が、感光性樹脂42に達し、感光性樹脂42が露光される。

【0036】
露光後に、感光性樹脂から、露光量(吸光量)が閾値を超えた露光部分又は露光量(吸光量)が閾値に達しない未露光部分の一方を除去し、残った他方によって微細構造体を作製することができる。すなわち、ネガタイプの感光性樹脂の場合には、感光性樹脂から未露光部分を取り除き、露光部分によって微細構造体を作製する。ポジタイプの感光性樹脂の場合には、感光性樹脂から露光部分を取り除き、未露光部分によって微細構造体を作製する。

【0037】
実施例1の露光装置10を用い、回転マスクパターンと固定マスクパターンとの組み合わせによる多重マスクによる部分露光と、回転傾斜露光法とを組み合わせることによって、以下の実施例2~4の微細構造体を作製することができる。実施例2~4では、感光性樹脂として、ネガタイプの光硬化性樹脂を用いている。

【0038】
<実施例2> 図4(a)に示す固定マスクパターン32aと、図4(b)及び(c)に示す回転マスクパターン22aとを組み合わせることによって、図7(a)に示す微細構造体を作製することができる。

【0039】
図4(a)は、図1の線A-Aに沿って見た固定マスクパターンの概略図である。図4(b)及び(c)は、図1の線B-Bに沿って見た回転マスクパターンの概略図である。図2及び図4に示す傾き方向Xs,Xrは、中心軸Zを含み、かつ露光光の方向と平行に延在する仮想平面とマスクパターンを含む平面との交線の方向である。図7(a)は、回転テーブルの回転に伴って感光性樹脂に照射される光束の光路から、感光性樹脂内の各点における露光量(吸光量)を計算し、露光量(吸光量)が所定の閾値を超えた部分によって形成される3次元形状を示している。

【0040】
図4(a)に示すように、固定マスクパターン32aは、中心軸Zが通る中心点Osに関して対称な扇形に形成された一対の透光部32p,32qと、斜線を付した遮光部32xとを含んでいる。透光部32p,32qは、傾き方向Xsの両側に形成されている。透光部32p,32qは、中心軸Zの径方向に延在する一対の線分32m,32nの間に連続して形成された扇状の形状を有する扇状透光部である。

【0041】
図4(b)及び(c)に示すように、回転マスク板のマスクパターン22aは、中心軸Zが通る中心点Orから離れた位置に形成された一つの円形の透光部22pと、斜線を付した遮光部22xとを含んでいる。図4(b)は、回転テーブルの回転に伴って、傾き方向Xsの最下位置に透光部22pが位置するときを示している。図4(c)は、回転テーブルの回転に伴って、傾き方向Xsの最上位置に透光部22pが位置するときを示している。

【0042】
回転テーブルの回転に伴って、回転マスク板に形成された回転マスクパターンの透光部22pは、中心点Orの周りの円周軌道上を移動する。回転マスクパターン上には、固定マスクパターンの透光部を透過した光束が照射される。この光束が照射される回転マスクパターン上の領域内を透光部22pが通過すると、光束は、透光部22pを透過して、感光性樹脂に照射される。

【0043】
回転マスクパターンの透光部22pが、図4(b)に示すように傾き方向の最下位置を通過するときに、図4(a)に示した固定マスクパターンの傾き方向下側の透光部を透過した光束が回転マスクパターン上に照射される領域内を、回転マスクパターンの透光部22pの全部分が通過すると、回転マスクパターンの透光部22pを透過した光束が感光性樹脂内に照射される領域は円筒状となる。

【0044】
この円筒状の照射領域の露光量(吸光量)が閾値を超えると、図6(a)の斜視図に模式的に示すように、棒状の部分44aが形成される。この部分44aは、露光光の照射方向と平行に延在するため支持基板40に対して傾き、先端側が中心軸Zに近付くように傾く。この部分44aは、回転テーブルの回転に伴って移動しても、例えば破線44sで示すように、先端が中心軸に近付くように傾いている。

【0045】
一方、回転マスクパターン22aの透光部22pが、図4(c)に示すように傾き方向の最上位置を通過するときには、図4(a)に示した固定マスクパターンの傾き方向上側の透光部を透過した光束が回転マスクパターンに照射される領域内を、回転マスクパターンの透光部22pの全部分が通過すると、回転マスクパターンの透光部22pを透過した光束が感光性樹脂内に照射される領域は円筒状となる。

【0046】
この円筒状の照射領域の露光量(吸光量)が閾値を超えると、図6(a)の斜視図に模式的に示すように、棒状の部分44bが形成される。この部分44bは、露光光の照射方向と平行に延在するため支持基板40に対して傾き、先端側が中心軸Zから離れるように傾く。

【0047】
図6(a)において実線で分けて示した2つの部分44a,44bは、実際には、支持基板40側の基端が共通になる。したがって、固定マスクパターンと回転マスクパターンとの組み合わせによって、図7(a)のシミュレーション図に示すように、2つの部分44a,44bが互いに中心軸Zに関する径方向反対側に傾いたV字状の微細構造44xが形成される。

【0048】
固定マスクパターン32aの透光部32p,32qの一対の線分32m,32nは、固定マスクパターン32aの透光部32p,32qを透過した露光光の光束が照射される領域を、回転マスクパターン22aの透光部22pが通過を開始又は終了する位置に対応し、感光性樹脂42の露光が開始又は終了する位置になる。回転マスクパターン22aが一定速度で回転している場合、感光性樹脂42に露光する露光時間は、固定マスクパターン32aの透光部32p,32qの一対の線分32m,32nがなす角度に比例する。そのため、透光部32p,32qが一対の線分32m,32nの間に連続して形成された扇状の形状を有する扇状透光部であれば、マスクパターン22a,32aの設計や露光量の制御が容易になる。

【0049】
<実施例3> 図5(a)に示す固定マスクパターン32bと、図5(b)に示す回転マスクパターン22bを組み合わせて用いると、図7(b)に示す微細構造体を作製することができる。

【0050】
図5(a)は、図1の線A-Aに沿って見た固定マスクパターンの概略図である。図5(b)及び(c)は、図1の線B-Bに沿って見た回転マスクパターンの概略図である。図7(b)は、回転テーブルの回転に伴って感光性樹脂に照射される光束の光路から、感光性樹脂内の各点における露光量(吸光量)を計算し、露光量(吸光量)が所定の閾値を超えた部分によって形成される3次元形状を示している。

【0051】
図5(a)に示すように、固定マスクパターン32bは、中心軸Zが通る中心点Osに関して対称な略扇形に形成された一対の透光部32s,32tと、斜線を付した遮光部32yとを含んでいる。透光部32s,32tは、傾き方向Xsに直角な方向Ysの両側に形成されている。透光部32s,32tは、一対の線分の間に連続して形成された扇状の形状を有する扇状透光部である。

【0052】
図5(b)及び(c)に示すように、回転マスク板のマスクパターン22aは、実施例2と同じであり、中心軸Zが通る中心点Orから離れた位置に形成された一つの円形の透光部22pと、斜線を付した遮光部22xとを含んでいる。図5(b)は、回転テーブルの回転に伴って、傾き方向Xsに直角な方向Ysの一方向側に中心点Osから最も離れた第1位置に透光部22pが位置するときを示している。図4(c)は、回転テーブルの回転に伴って、傾き方向Xsに直角な方向Ysの他方向側に中心点Osから最も離れた第2位置に透光部22pが位置するときを示している。

【0053】
回転テーブルの回転に伴って、回転マスク板に形成された回転マスクパターンの透光部22pは、中心点Orの周りの円周軌道上を移動する。回転マスクパターン上には、固定マスクパターンの透光部を透過した光束が照射される。この光束が照射される回転マスクパターン上の領域内を透光部22pが通過すると、光束は、透光部22pを透過して、感光性樹脂に照射される。

【0054】
回転マスクパターンの透光部22pが、図5(b)に示すように第1位置を通過するときに、図5(a)に示した固定マスクパターンの一方の透光部を透過した光束が回転マスクパターン上に照射される領域内を、回転マスクパターンの透光部22pの全部分が通過すると、回転マスクパターンの透光部22pを透過した光束が感光性樹脂内に照射される領域は、円筒状となる。

【0055】
この円筒状の照射領域の露光量(吸光量)が閾値を超えると、図6(b)の斜視図に模式的に示すように、棒状の部分44cが形成される。この部分44cは、露光光の照射方向と平行に延在し、中心軸Z周りの周方向の一方側に傾く。この部分44cは、回転テーブルの回転に伴って移動しても、例えば破線44tで示すように、中心軸Z周りの周方向の一方側に傾く。

【0056】
一方、回転マスクパターン22bの透光部22pが、図6(c)に示すように第2位置を通過するときには、図5(a)に示した固定マスクパターンの他方の透光部を透過した光束が回転マスクパターンに照射される領域内を、回転マスクパターンの透光部22pの全部分が通過すると、回転マスクパターンの透光部22pを透過した光束が感光性樹脂内に照射される領域は、円筒状となる。

【0057】
この円筒状の照射領域の露光量(吸光量)が閾値を超えると、図6(b)に模式的に示すように、棒状の部分44dが形成される。

【0058】
図6(b)において実線で分けて示した2つの部分44c,44dは、実際には、支持基板40側の基端を共通する。したがって、固定マスクパターンと回転マスクパターンとの組み合わせによって、図7(b)のシミュレーション図に示すように、2つの棒状の部分44c,44dが互いに中心軸Z周りの周方向反対側に傾いたV字状の微細構造44yが形成される。

【0059】
<実施例4> 図8(a)の概略図に示す2つの扇形の透光部32u,32vが形成された固定マスクパターン32cと、図8(b)及び(c)の概略図に示すように複数の微小な透光部22tが同心に等ピッチに形成された固定マスクパターン22bとを組み合わせて用いると、図9(a)の要部斜視図に示すように、同心円状に延在する網目状の網目部48を有する微細構造体を作製することができる。

【0060】
図8(a)は、図1の線A-Aに沿って見た固定マスク板のマスクパターンの概略図である。図8(b)は、図1の線B-Bに沿って見た回転マスク板のマスクパターンの概略図である。図8(c)は、図8(b)の部分拡大図である。

【0061】
図8(a)に示すように、固定マスクパターン32cは、中心軸Zが通る中心点Osに関して対称な扇形に形成された一対の透光部32u,32vと、斜線を付した遮光部32zとを含んでいる。透光部32u,32vは、傾き方向Xsに直角な方向Ysの両側に形成されている。透光部32u,32vは、第2透光部である。

【0062】
図8(b)に示すように、固定マスクパターン22bの中心部には、中心軸Zが通る中心点Orと同心に円形の透光部22sが形成されている。この透光部22sの周囲の扇状の領域22qには、図8(c)に示すように、複数の微小な透光部22tが、中心点Orと同心の鎖線で示す同心円上に等ピッチに形成されている。透光部22tは、第1透光部である。固定マスクパターン22bは、透光部22s,22tと、斜線を付した遮光部22y,22zとを含んでいる。

【0063】
固定マスクパターン32cの透光部32u,32vと回転マスクパターン22bの中心の透光部22sとを透過した露光光の光束によって、支持基板40に支持された感光性樹脂42によって、図9(a)に示すように、円筒状の台部46が形成される。

【0064】
また、固定マスクパターン32cの透光部32u,32vと回転マスクパターン22bの周囲の透光部22tとを透過した光束によって、図9(a)に示すように、台部46の外側に、台部46と同心に中心軸49の周方向に延在する網目状の網目部48が同心円状に形成される。

【0065】
網目部48は、実施例3のようなV字状の構造が、中心軸49の周方向に間隔を設けて繰り返し形成されたものである。回転マスクパターン22cの周辺部の透光部22tは、周方向に等ピッチに形成されているので、回転マスクパターン22cの周辺部の各透光部22tに対応して、V字状の構造が周方向に等ピッチに形成される。これらのV字状の構造の重ね合わせによって、中心軸49の周方向に等間隔に配置されたV字状の構造が形成される。V字状の構造の棒状の部分が交差するにように、感光性樹脂の厚みや透光部22tのピッチを選択することにより、図9(a)に示す網目状の網目部48を作製することができる。

【0066】
次に、実施例4の作製例について説明する。

【0067】
回転マスク板と固定マスク板は、ガラスの透明基板の一方主面上にスパッタリングによりCr膜を形成した後、エッチングすることにより、それぞれのマスクパターン22b,32cを形成した。

【0068】
回転マスク板のマスクパターン22bが形成された一方主面上に、厚膜ネガレジストであるSU-8(光硬化性樹脂)を直接塗布し、さらにSU-8の上に支持基板を載せ、脱泡し、回転マスク板が上を向くように全体を反転させた状態で、支持基板と回転マスク板とを露光装置の回転テーブルに固定した。その上には、露光光の入射方向を制限するための固定マスク板を固定した。

【0069】
回転テーブルを露光光の照射方向に対して傾斜させた状態で回転テーブルを回転させながら、回転テーブルに配置されたSU-8に対して、連続して露光を行った。

【0070】
露光後、SU-8をディップ現像すると、同心円状に網目部が形成されたメッシュ構造を有する微細構造体が完成する。

【0071】
次の表1に、露光及び現像の詳細を示す。
【表1】
JP0005458241B2_000002t.gif

【0072】
露光用の光源には、一般に用いられる紫外線光源のみを利用して、かつ一度の露光でウエハサイズ(作製例で使用したランプハウスの露光エリア直径は、100mm)の3次元微細構造体を作製できた。

【0073】
図10は、作製例で用いた回転マスクパターン22bの周辺部の透光部22tのSEM像の写真である。透光部22tは、周方向に10μmのピッチで形成されており、直径は5μmである。

【0074】
図11~図13は、作製例の微細構造体のSEM像の写真である。図11の全体像より、外径15mm程度の同心円状の構造ができていることが分かる。また、中心付近の拡大図である図12と、メッシュ側面の拡大図である図13とより、微細構造体の網目部48が同心円状に配置されている様子が分かる。作製例の微細構造体は、高さ25μm、メッシュ間隔15μmである。

【0075】
加工精度を検証するため、主要な加工パラメータのひとつである露光量を操作対象として、作製したメッシュ内ワイヤの断面(図13のメッシュ構造SEM像内に示したメッシュワイヤの上面におけるワイヤ径a)の変化を測定した。具体的には、ワイヤ露光用の回転マスクパターンの周辺部の透光部22tの微小穴サイズを直径5μmに固定し、塗布するSU-8の膜厚を25μm(±0.8μm程度)とし、を測定した。

【0076】
照射する露光量は、露光毎に照度計(ウシオ電機製:UVD-S405)を用いて測定した照度を基準に、露光時間を変えることにより調節し、200mJ/cm2、300mJ/cm、350mJ/cm、400mJ/cm2、500mJ/cm2、600mJ/cm2の6つの露光条件に対して、3枚ずつのサンプルを作製し、作製したデバイスをSEMで観察して、図13に示すワイヤ径aを計測した。

【0077】
作製したデバイスの形状測定結果を、図14のグラフに示す。図14の横軸は露光量、縦軸はメッシュのワイヤ径である。メッシュワイヤのワイヤ径aの設計値は5μmであり、回転マスクパターンの周辺部の透光部22tの直径と等しい。

【0078】
図14より、露光量とワイヤ径は比例関係にあり、メッシュを形成するワイヤの径は、露光量を調節することにより、数μmの範囲内で制御できることが分かった。図14の比例関係には限界があると考えられるが、今回の露光量範囲内では、ワイヤサイズの制御限界を評価することはできなかった。

【0079】
次に、作製したデバイスを用いた染色体伸張固定実験について説明する。

【0080】
本実験において用いる染色体伸張固定用デバイスには、設計値に近い加工形状が得られた露光量300~350mJ/cm2で作製した作製例の微小構造体を使用した。伸張固定実験用の染色体サンプルとして、ヒトの子宮頸がん細胞であるHeLa細胞から取り出した染色体を用いた。

【0081】
実験手順は、次の通りである。まず、図9(b)の斜視図に示すように、ピペット60の先端から、染色体70を含む懸濁液を台部46上に滴下し、矢印50で示すように、中心軸49の周りをスピンコーターを用いて高速回転(5000rpm,30sec)し、遠心力を作用させる。これにより、符号52で示すように液中に発生する流速分布の作用によって、絡まりあった染色体70を、染色体72のように径方向に引き延ばす。引き延ばされた染色体72は、網目部48の上部の溝に引っ掛かるようにして支持される。次いで、染色体をYO-PRO-1で全体染色し、蛍光顕微鏡を用いて染色体の伸張の様子を観察する。

【0082】
実験結果を、図15に示す。図15は、染色後の染色体の網目部48付近における蛍光像の写真である。図15から、染色体は、網目部のメッシュ構造の上に、伸張された状態で支持されており、染色作業によって網目部48からはがれてはいないことが分かる。

【0083】
<まとめ> 以上に説明したように、固定マスクパターンと回転マスクマスクパターンとを組み合わせることによって多重マスクによる部分露光と回転傾斜露光法とを組み合わせた1回の露光工程を行うことで、複雑な立体形状の微細構造体を、少ない工程で形成することができる。

【0084】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。

【0085】
例えば、実施例1では固定マスクパターンに形成された透光部の配置角度がXs軸に対して0°,180°、実施例2では±90°の場合を例示しているが、これに限るものではなく、任意の配置角度を選択することができる。この場合、感光性樹脂により形成される微小構造の棒状の部分の傾き方向は、固定マスクパターンに形成する透光部の配置角度に対応して決まる。固定マスクパターンの点状の透光部を組み合わせることによって、複雑な形状を合成することができる。

【0086】
図16(a)の概略図に示すように扇形の透光部72aを有する固定マスクパターン70aと、図16(c)の概略図に示すようにリング状の透光部72を有する回転マスクパターン70とを組み合わせ、実施例1、2と同様に、中心点Os,Orを通る中心軸が露光光の方向に対して同じ側に傾斜した状態で、この中心軸を回転軸として回転マスクパターン70を回転しながら感光性樹脂を露光すると、支持基板側の径が大きく、先端側が小さい円錐状の微小構造を形成することができる。

【0087】
一方、図16(b)の概略図に示すように扇形の透光部72bを有する固定マスクパターン70bと、図16(c)の概略図に示す回転マスクパターン70とを組み合わせ、実施例1、2と同様に、中心点Os,Orを通る中心軸が露光光の方向に対して同じ側に傾斜した状態で、この中心軸を回転軸として回転マスクパターン70を回転しながら感光性樹脂を露光すると、例えば図17のシミュレーション図に示すように、支持基板側の径が小さく、先端側の径が大きいすり鉢状の微小構造を形成することができる。

【0088】
固定マスクパターンの透光部を、中心点Os,Orを通る中心軸の傾きに対応して、図16(a)と図16(b)との中間の所定の角度に配置すると、支持基板に対して周壁が直角である円筒形状の微小構造を形成することができる。

【0089】
また、本発明を実施するにあたり、SU-8以外の感光性樹脂を用いてもよい。ネガタイプに限らず、ポジタイプの感光性樹脂を用いてもよい。

【0090】
固定マスクパターンや回転マスクパターンの透光部の形状や配置は、微小構造の立体形状に対応して適宜に選択すればよい。固定マスクパターンや回転マスクパターンには、光を二値的に透過又は遮光するものでなくてもよい。例えばグレイマスクを用いてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 露光装置
20 回転テーブル
21 回転マスク板
22,22a,22b,22c マスクパターン(回転マスクパターン)
22p,22s,22t 透光部
22x,22y,22z 遮光部
24 感光性樹脂
30 固定マスク取付板
31 固定マスク板
32,32a,32b,32c マスクパターン(固定マスクパターン)
32p,32q,32s,32t,32u,32v 透光部
32x,32y,32z 遮光部
40 支持基板
42 感光性樹脂
44a,44b,44c,44d 棒状の部分
46 台部
48 網目部
49 中心軸
Os,Or 中心点
Xr,Xs 傾き方向
Z 中心軸
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
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【図17】
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【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19